説明

LED点灯回路

【課題】点灯時の突入電流からのLED保護と低消費電力化を両立し、比較的動作電流の大きいLEDの点灯を可能とするLED点灯回路を提供する。
【解決手段】電源の一端とLEDの一端との間に接続された容量性リアクタンス素子(4)と、第一制御端と一対の第一入出力端を有し、電源の他端とLEDの他端との間に一対の第一入出力端を直列に接続された第一スイッチング素子(18)と、LEDの一端と第一制御端との間に接続された抵抗器(11)と、第一制御端と電源の他端との間に接続されたコンデンサ(16)と、第二制御端と一対の第二入出力端を有し、一対の第二入出力端をコンデンサに対して並列に接続され、第二制御端を抵抗器とコンデンサの間の節点に接続された第二スイッチング素子(15)を備えるLED点灯回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具、照明装置関連技術分野における省エネルギー型で、比較的大きな動作電流を持つLED(発光ダイオード)の点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LED点灯回路の従来技術としては、例えば特開平11−97747号公報(特許文献1)、特開2000−306685号公報(特許文献2)、特開2003―332625号公報(特許文献3)に開示された先行例が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された先行例は、電流制限用リアクタンスとしてコンデンサを利用しているため、電源投入時に突入電流が発生する。この突入電流からLEDを保護する目的で直列に抵抗器を接続するのが一般的であるが、これによるエネルギー損失が起きる。特許文献2に開示された先行例も同様であり、電流制限用リアクタンスに対して直列に抵抗器が接続されている。この抵抗器によるエネルギー損失が発生するため、動作電流の小さいLEDの点灯には有効であるが、比較的大きな動作電流のLEDを点灯すると、直列に接続された抵抗の損失が大きくなり、省エネルギー化は難しくなる。
【0004】
他方、特許文献3に開示された先行例は、抵抗器を省いて電流制限用コンデンサのみとしたものであり、コンデンサの損失は実質ゼロに近く、最高の効率となるが、電源投入時に発生する突入電流でLEDが破壊されるおそれがあるため実用的とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−97747号公報
【特許文献2】特開2000−306685号公報
【特許文献3】特開2003―332625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、点灯時の突入電流からのLED保護と低消費電力化を両立し、比較的動作電流の大きいLEDの点灯も可能とするLED点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明に係る一態様のLED点灯回路は、電源から供給される電力を利用してLEDを点灯させるLED点灯回路であって、(a)前記電源の一端と前記LEDの一端との間に接続された容量性リアクタンス素子と、(b)第一制御端と一対の第一入出力端を有し、前記電源の他端と前記LEDの他端との間に前記一対の第一入出力端を直列に接続されており、前記第一制御端へ電圧が印加されたときに前記一対の第一入出力端が導通する第一スイッチング素子と、(c)前記LEDの一端と前記第一スイッチング素子の前記第一制御端との間に接続された抵抗器と、(d)前記第一スイッチング素子の前記第一制御端と前記電源の他端との間に接続されたコンデンサと、(e)第二制御端と一対の第二入出力端を有し、前記一対の第二入出力端を前記コンデンサに対して並列に接続され、前記第二制御端を前記抵抗器と前記コンデンサの間の節点に接続されており、前記第二制御端へ印加される電圧が実質的にゼロであるときに前記一対の第二入出力端が導通する第二スイッチング素子を備えることを特徴とする。
【0008】
上記のLED点灯回路では、電源投入時には、コンデンサの働きにより第一スイッチング素子の第一制御端の急激な電圧上昇が抑えられる。それにより、容量性リアクタンス素子に印加させる電圧を徐々に減少させることができるので、突入電流が流れることを回避できる。また、電源が切断された時には、第二スイッチング素子が導通状態となることにより、コンデンサに充電された電荷を急速に放電させることができる。それにより、電源のオンオフが短時間に繰り返された場合や電源に瞬断が生じた場合などにおける突入電流の発生を防ぐことができる。以上のことから、上記のLED点灯回路では突入電流防止目的の直列抵抗器を用いずとも点灯時の突入電流からのLED保護が実現される。そして、直列抵抗器が省かれることにより低消費電力化を達成できる。さらに、上記のLED点灯回路によれば動作電流の大きなLEDの駆動も可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点灯時の突入電流からのLED保護と低消費電力化を両立し、極めて高い効率のLED点灯回路が実現できるため、使用電力を大幅に低減することが可能になり、温室効果ガスCO削減に寄与できることはもとより、動作電流の大きいLEDを効率良く点灯する回路へ応用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態のLED点灯回路の回路図である。
【図2】図2は、LED(動作電流500mA)を5個使用した場合における実施例のLED点灯回路の電源電圧と消費電力の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例のLED点灯回路とそれにより駆動されているLEDの外観写真である。
【図4】図4は、実施例における電源投入時と電源オフ時の波形図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用した一実施形態のLED点灯回路の回路図である。図1に示す本実施形態のLED点灯回路は、交流電源(又は商用電源)1から電力供給を受けてLED19を点灯させるためのものであり、主要な構成要素として容量性リアクタンス素子4およびスイッチ回路21を含んで構成されている。
【0013】
容量性リアクタンス素子4は、一端がヒューズ2を介して電源1と接続され、他端がダイオードブリッジ6、インダクタンス素子7およびスイッチ回路21を介してLED19の接続されている。この容量性リアクタンス素子4は、定常状態におけるLED19に流れる電流値を決めるための電流制限素子であり、具体的には低損失のコンデンサである。
【0014】
スイッチ回路21は、交流電源1とLED19の間に接続されている。このスイッチ回路21は、抵抗器11、13、コンデンサ14、16、ツェナーダイオード12、17、ジャンクション型FET15、パワーMOSFET18を有して構成されている。
【0015】
抵抗器11は、一端がLED19の一端と接続され、他端がツェナーダイオード12、抵抗器13およびコンデンサ14からなる並列回路と接続されている。ツェナーダイオード12等からなる並列回路は、図示のように一端が抵抗器11と接続され、他端がコンデンサ16と接続されている。コンデンサ16は、一端がパワーMOSFET18のソース電極と接続され、他端がパワーMOSFET18のゲート電極と接続されている。ツェナーダイオード17は、コンデンサ16と並列に接続されている。図示のように、コンデンサ16の他端とともにツェナーダイオード17の一端はパワーMOSFET18のゲート電極と接続されている。
【0016】
ジャンクション型FET15は、抵抗器11とツェナーダイオード12等の並列回路との間の節点にゲート電極が接続され、ツェナーダイオード12等の並列回路とコンデンサ16との間の節点にソース電極が接続され、コンデンサ16およびツェナーダイオード17の他端にドレイン電極が接続されている。
【0017】
パワーMOSFET18は、コンデンサ16とツェナーダイオード17の各一端にゲート電極が接続され、コンデンサ16およびツェナーダイオード17の他端にソース電極が接続され、LED19の他端にドレイン電極が接続されている。
【0018】
ここで、LED点灯回路に含まれる他の回路要素についても説明する。ヒューズ2は、LED点灯回路に不具合が発生した場合に流れる過大電流に備え、安全目的に使用されるものである。このヒューズ2は、電流動作型ヒューズに限らず温度動作型ヒューズを用いてもよい。バリスタ3は、交流電源1と並列にして一端がヒューズ2に接続され、他端が電源スイッチ22と接続されており、LED点灯回路を過電圧から保護する。抵抗器5は、容量性リアクタンス素子4に充電された電荷を放電させるためのものであり、電撃防止を目的に容量性リアクタンス素子4と並列に接続されている。
【0019】
ブリッジダイオード6は、電源1から供給される交流電力を全波整流して直流電力に変換する。インダクタンス素子7は、LED19の一端とブリッジダイオード6との間に接続されている。インダクタンス素子9は、LED19の他端とブリッジダイオード6との間に接続されている。これらのインダクタンス素子7、9は、外来ノイズ防止を目的に使用されている。ダイオード8は、インダクタンス素子7と並列に接続されている。同様にダイオード10は、インダクタンス素子9と並列に接続されている。これらのダイオード8、10は、電源オフ時の過電圧発生防止用である。バリスタ20は、LED19を保護する目的でLED19と並列に接続されている。
【0020】
次に、本実施形態のLED点灯回路の動作について詳細に説明する。
【0021】
まず、電源投入時における動作は次のようになる。電源スイッチ22がオン(閉状態)となると交流電源1から電力が供給される。このとき、パワーMOSFET18のゲート電極とソース電極間に接続されたコンデンサ16が急激なゲート電極の電圧上昇を抑え、徐々に増加させる。このため、容量性リアクタンス素子4を通して突入電流が流れることはない。以後、この動作を「スロースタート動作」と呼ぶ。
【0022】
ゲート電極の電圧上昇の速度は、抵抗器11の値、ツェナーダイオード12の電圧、コンデンサ16の値を適宜に設定することで調整することができる。パワーMOSFET18のドレイン電極、ソース電極間の等価抵抗値は、ゲート電極とソース電極間の電圧の上昇に従って遮断時の高い値から飽和抵抗値RDS(ON)に向かって低くなる。このため、容量性リアクタンス素子4に印加される電圧も徐々に減少し、突入電流を流すことなく定常電流値に到達させることができる。
【0023】
ところで、電源スイッチ21の短時間のオンオフの繰り返し又は瞬断などに対しては、スロースタート動作が働かず、LED19が破損するおそれがある。このため、電源スイッチ22がオフ(開状態)となり、交流電源1の電圧の印加が無くなったときに、コンデンサ16の電荷を放電させ、LED19に流れる電流を急速に遮断させる必要がある。以後、この動作を「ファーストストップ動作」と呼ぶ。ジャンクション型FET15はこのファーストストップ動作を実現するために用いられる。以下にその動作を説明する。
【0024】
LED19に定常電流が流れている状態においては、パワーMOSFET18のゲート電極には、抵抗器11と、抵抗器13、コンデンサ14並びにツェナーダイオード12の並列回路を介してバイアス電圧が供給され、コンデンサ16はツェナーダイオード17の電圧まで充電されている。コンデンサ14の値と抵抗器13の値については、LED19に定常電流が流れている間はジャンクション型FET15がオンにならないように選ぶ必要がある。ツェナーダイオード17の電圧は、パワーMOSFET18が十分オンになる値とする。
【0025】
このとき、ジャンクション型FET15のゲート電極とソース電極間には、ツェナーダイオード12の電圧が逆方向に印加されているため、ジャンクションFET15はオフの状態を保っている。なお、ツェナーダイオード12は、ジャンクション型FET15のカットオフ電圧より少し高い電圧のものを用いる。
【0026】
電源スイッチ22がオフになると、抵抗器11を流れる電流が瞬時にゼロとなり、続いてジャンクション型FET15のゲート電極とソース電極間の電圧がゼロとなり、ジャンクション型FETが導通状態となる。それにより、コンデンサ16の電荷を急速に放電させ、パワーMOSFET18を遮断状態とすることができる。
【0027】
このように、スロースタート動作とファーストストップ動作を実現可能なスイッチ回路21を利用することにより、突入電流を防止するために従来用いていた抵抗器を省くことが可能となる。それにより、極めて効率が高く、大きな動作電流のLEDの駆動に対応できるLED点灯回路を実現できる。また、サイリスタ、トライアックなどの位相制御素子や高周波のインバータを用いないため、ノイズの発生の少ないLED点灯回路を実現できる。
【0028】
図2は、本発明の一実施例で、LED(動作電流500mA)を5個使用した場合のLED点灯回路の電源電圧と消費電力の関係を示すグラフである。図2に示すように、例えば電源電圧が100Vにおける消費電力は7.5Wであり、非常に低消費電力であることが分かる。この実施例のLED点灯回路とそれにより駆動されているLEDの外観写真を図3に示す。また、この実施例における電源投入時と電源オフ時の波形図を図4に示す。図4(a)は電源投入時の波形図、図4(b)は電源オフ時の波形図であり、それぞれ電源電圧の波形が図中の上段に示され、LEDに流れる電流の波形が下段に示されている。図4(a)に示すように、電源投入時には電源電圧の上昇から約300ミリ秒経過した後にLEDに電流が流れ始めている、すなわちスロースタート動作が実現されることが分かる。また、図4(b)に示すように、電源オフ時には電源電圧の低下に対応してLEDへの電流がすぐにゼロとなっている、すなわちファーストストップ動作が実現されていることが分かる。
【0029】
なお、本発明は上記した内容に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施することができる。例えば、上記したLED点灯回路におけるスイッチング素子としてのパワーMOSFETは、バイポーラトランジスタに置き換えてもよい。また、上記したLED点灯回路におけるジャンクション型FETは、常閉接点(b接点)を有する機械的リレー又は電子的リレーなどに置き換えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、比較的動作電流の大きいLEDの点灯回路への応用に特に適しているため、家庭用照明器具にとどまらず、公共施設、オフィス、工場などあらゆる分野で利用できるものである。併せて、極めて効率が高いので、エネルギー削減効果が期待される。
【符号の説明】
【0031】
1 交流電源
2 ヒューズ
3 バリスタ
4 容量性リアクタンス素子(低損失コンデンサ)
5 放電用抵抗器
6 ダイオードブリッジ
7 インダクタンス
8 ダイオード
9 インダクタンス
10 ダイオード
11 抵抗器
12 ツェナーダイオード
13 抵抗器
14 コンデンサ
15 ジャンクション型FET
16 コンデンサ
17 ツェナーダイオード
18 パワーMOSFET
19 LED
20 バリスタ
21 スイッチ回路
22 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電力を利用してLEDを点灯させるLED点灯回路であって、
前記電源の一端と前記LEDの一端との間に接続された容量性リアクタンス素子と、
第一制御端と一対の第一入出力端を有し、前記電源の他端と前記LEDの他端との間に前記一対の第一入出力端を直列に接続されており、前記第一制御端へ電圧が印加されたときに前記一対の第一入出力端が導通する第一スイッチング素子と、
前記LEDの一端と前記第一スイッチング素子の前記第一制御端との間に接続された抵抗器と、
前記第一スイッチング素子の前記第一制御端と前記電源の他端との間に接続されたコンデンサと、
第二制御端と一対の第二入出力端を有し、前記一対の第二入出力端を前記コンデンサに対して並列に接続され、前記第二制御端を前記抵抗器と前記コンデンサの間の節点に接続されており、前記第二制御端へ印加される電圧が実質的にゼロであるときに前記一対の第二入出力端が導通する第二スイッチング素子、
を備えることを特徴とするLED点灯回路。
【請求項2】
前記第一スイッチング素子がMOSFETである、請求項1に記載のLED点灯回路。
【請求項3】
前記第二スイッチング素子がジャンクション型FETである、請求項1又は2に記載のLED点灯回路。
【請求項4】
前記抵抗器と前記コンデンサの間に接続されたツェナーダイオードを更に含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のLED点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−178292(P2012−178292A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41203(P2011−41203)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】