説明

LED点灯装置およびそれを用いた照明器具

【課題】消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減したLED点灯装置およびそれを用いる照明器具を提供する。
【解決手段】LED点灯装置は、整流回路2の出力をスイッチング素子7でスイッチングすることによって所望の電圧値の直流電圧に変換し、LED5に駆動電流を供給する絶縁型フライバックコンバータ3と、電流検出部9によって検出されたLED5の順方向電流が目標値となるようにスイッチング素子7のスイッチング動作を制御する制御回路部11を備える。制御回路部11は、消灯状態のLED5を点灯させるために絶縁型フライバックコンバータ3のスイッチング動作を開始させた時点からLED5への印加電圧が点灯開始電圧に増加するまでの間に、スイッチング素子7のオン時間が相対的に長い第1スイッチング期間を設けた後、スイッチング素子7のオン時間が相対的に短い第2スイッチング期間を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED点灯装置およびそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDを光源としたLED点灯装置およびそれを備えた照明器具があった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたLED点灯装置では、交流電源を整流器によって全波整流した後、降圧チョッパ回路によって一定の電圧に降圧し、降圧チョッパ回路の出力端に接続された定電流回路からLEDに一定の電流を供給してLEDを点灯させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のLED点灯装置では定電流回路によりLEDに一定電流を流しているが、LEDに流れる順方向電流をフィードバックして、順方向電流が所定の目標値となるようにLEDへの出力を制御する電源回路を備えたLED点灯装置もある。
【0006】
図4はLEDに流れる順方向電流をフィードバック制御するLED点灯装置の一例であり、このLED点灯装置は、整流回路2と、絶縁型フライバックコンバータ3と、平滑コンデンサ4と、発光ダイオード(以下、LEDと言う。)5とで構成される。
【0007】
整流回路2は商用交流電源1を全波整流して直流に変換しており、整流回路2によって全波整流された直流電圧が絶縁型フライバックコンバータ3に出力される。
【0008】
絶縁型フライバックコンバータ3は、絶縁トランス6と、例えばFETからなるスイッチング素子7と、ダイオード8とで構成される。絶縁トランス6の一次巻線は、スイッチング素子7と電流検出部10とを介して整流回路2の出力端子間に接続されている。絶縁トランス6の2次巻線の両端間にはダイオード8を介して平滑コンデンサ4が接続され、平滑コンデンサ4の両端間にLED5と電流検出部9とが接続されている。スイッチング素子7は、制御回路部11から入力される駆動信号S2によってオン/オフが制御される。
【0009】
絶縁型フライバックコンバータ3では、スイッチング素子7がオンすると、絶縁トランス6の1次巻線にスイッチング電流I2が流れ、電気エネルギーが磁気エネルギーに変換される。この時、ダイオード8の極性によって絶縁トランス6の二次側には電流が流れず、絶縁トランス6に磁気エネルギーが蓄積される。その後、スイッチング素子7がオフになると、スイッチング素子7のオン期間に絶縁トランス6に蓄積された磁気エネルギーが電気エネルギーに再変換され、絶縁トランス6の2次側から放出されて平滑コンデンサ4を充電する。スイッチング素子7が周期的にオン/オフを繰り返すことによって、絶縁トランス6の2次側には、1次側と絶縁された直流電圧が発生し、平滑コンデンサ4の両端間に発生する直流電圧V1がLED5に印加されて、LED5が点灯する。
【0010】
制御回路部11には、外部から出力電流(LED5の順方向電流I1)の目標値を決定する制御信号S1と、電流検出部9,10の検出信号とが入力される。電流検出部9は、例えばLED5と直列に接続された抵抗器からなり、LED5に流れる順方向電流I1を検出し、順方向電流に応じた大きさの信号を制御回路部11に出力する。電流検出部10は、例えばスイッチング素子7と直列に接続された抵抗器からなり、スイッチング素子7に流れるスイッチング電流I2を検出し、スイッチング電流I2に応じた大きさの信号を制御回路部11に出力する。制御回路部11は、制御信号S1と電流検出部9,10からの検出信号とに基づいて、LED5の順方向電流I1が目標値となるようにスイッチング素子7の動作を制御する。
【0011】
ここで、LED5が消灯している状態から、電源が投入されるか或いは制御信号S1が切り替えられるかして、制御回路部11が絶縁型フライバックコンバータ3のスイッチング動作を開始させて、LED5を点灯状態に切り替える場合の動作を説明する。図5は、消灯状態から点灯状態へと切り替わる間の2次側の出力電圧、すなわちLED5への印加電圧V1と、LED5に流れる順方向電流I1の理想的な経時変化を示している。
【0012】
時刻t1において、絶縁型フライバックコンバータ3が停止状態からスイッチング動作を開始すると、2次側の出力電圧、すなわちLED5の印加電圧V1が略0Vから上昇を始める。そして、時刻t1において印加電圧V1がLED5の点灯開始電圧Vf0に達すると、LED5に順方向電流I1が流れ始め、それ以降は順方向電流I1が制御信号S1に応じた目標値Ifに一致するように制御回路部11がスイッチング素子7の動作を制御し、LED5への印加電圧も電圧Vfで安定する。
【0013】
しかしながら、図5の波形図は理想的な動作を示したものであり、実際には図6の波形図に示すような動作となる。尚、図6(a)はLED5への印加電圧V1(すなわち絶縁型フライバックコンバータ3の出力電圧)の波形図、図6(b)は順方向電流I1の波形図、図6(c)はスイッチング電流I2の波形図である。
【0014】
制御回路部11がスイッチング素子7にスイッチング動作を開始させた時刻t1から時刻t2までの間はLED5は点灯しておらず、順方向電流I1は略0Aである。この期間では順方向電流I1の目標値Ifに対して実績値が足りていないから、制御回路部11は、LED5への印加電圧V1を急速に増加させるため、スイッチング素子7に流れるスイッチング電流が調整範囲内で最大となるような動作モードでスイッチング動作を行わせる。この動作モード(以下、最大負荷モードという。)は、スイッチング素子7のオン期間が定常点灯時(図6の時刻t3以降)に比べて長く、スイッチング電流I2のピーク値も定常点灯時に比べて高くなる。
【0015】
その後、印加電圧V1が上昇し、時刻t2において点灯開始電圧Vf0に達すると、LED5に流れる順方向電流I1が急激に増加し、目標値Ifを大きく上回るIfmaxの順方向電流I1がLED5に流れることになる。この時、電流検出部9によって過大な順方向電流Ifmaxが流れたことが検出されると、制御回路部11は電流検出部9の検出結果に基づいて、スイッチング素子7のスイッチング動作を停止させる。スイッチング素子7がオフされることによって順方向電流I1が急激に低下し、時刻t3において順方向電流I1が目標値Ifよりも低いIfminまで低下する。そして、電流検出部9によって順方向電流I1が目標値Ifを下回ったことが検出されると、制御回路部11は、電流検出部9の検出結果に基づいて、スイッチング素子7のスイッチング動作を再開させる。これにより、時刻t3以降では順方向電流I1が目標値Ifに制御されて、LED5は定常点灯動作に切り替わっており、制御回路部11は、スイッチング素子7のスイッチング動作を継続して行わせる。
【0016】
ところで、LEDには、順方向電圧が一定値以上になって順方向電流I1が流れ始めてからは、順方向電流に比べて順方向電圧があまり変化しないという特性がある。つまり、図6(a)に示すようにLED5への印加電圧V1が点灯開始電圧Vf0に達して、順方向電流I1が流れ始めると、順方向電流I1の落ち込みによって印加電圧V1も若干低下するが、印加電圧V1は点灯開始電圧Vf0で略一定していると言える。これは、過渡的に印加電圧V1が増加すると、順方向電流I1が印加電圧V1の変動に比べて大きく増加し、その結果、LED5の明るさも大きく変化することを意味している。
【0017】
この一連の動作によって発生するLED5の順方向電流I1の変化により、LED5が一瞬明るく点灯し、その後にLED5の明るさが急激に暗くなった後、目標レベルまで明るくなる。したがって、この光出力の変化が閃光となりユーザが視覚的な違和感を感じるという問題があった。尚、時刻t1から時刻t2までの最大負荷モードと時刻t3以降の定常負荷モードとで動作に差異が大きいほど、また順方向電流I1のフィードバック信号を回路動作に反映させるまでの遅れ時間が大きいほど、印加電圧V1が点灯開始電圧Vf0に達した時に発生する順方向電流I1のピーク値が大きくなり、これに対応してユーザが感じる視覚的な違和感も大きくなる傾向がある。
【0018】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減したLED点灯装置およびそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本願のLED点灯装置は、スイッチング電源部と、電流検出部と、制御回路部とを備える。スイッチング電源部は、直流電源からの入力をスイッチング素子でスイッチングすることによって、所望の電圧値の直流電圧に変換して、LEDに駆動電流を供給する。電流検出部はLEDに流れる順方向電流を検出する。制御回路部は、定常点灯状態においては電流検出部の検出電流が目標値となるようにスイッチング素子のスイッチング動作を制御する。また制御回路部は、消灯状態のLEDを点灯させるためにスイッチング電源部のスイッチング動作を開始させた時点からLEDへの印加電圧が点灯開始電圧に増加するまでの間に、スイッチング素子のオン時間が相対的に長い第1スイッチング期間を設けた後、スイッチング素子のオン時間が第1スイッチング期間に比べて相対的に短い第2スイッチング期間を設けることを特徴とする。
【0020】
このLED点灯装置において、制御回路部は、スイッチング動作を開始させた時点から所定時間が経過するまでの期間を第1スイッチング期間とし、所定時間が経過すると第2スイッチング期間に切り替えることも好ましい。
【0021】
このLED点灯装置において、LEDへの印加電圧を検出する電圧検出部を備えることも好ましい。制御回路部は、スイッチング動作を開始させた時点から電圧検出部の検出電圧が点灯開始電圧よりも低い所定の閾値電圧に達するまでの期間を第1スイッチング期間とし、検出電圧が閾値電圧を超えると第2スイッチング期間に切り替える。
【0022】
このLED点灯装置において、閾値電圧が、定常点灯状態におけるLEDへの印加電圧の50%以上且つ80%以下の値であることも好ましい。
【0023】
本願の照明器具は、上述した何れかのLED点灯装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減することができ、閃光の発生によってユーザに与える視覚的な違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のLED点灯装置の回路図である。
【図2】同上の動作波形図であり、(a)はスイッチング電流の波形図、(b)は駆動信号S2の波形図、(c)は点灯電力の波形図である。
【図3】同上の消灯状態から点灯状態への切り替え時における波形図であり、(a)はLEDへの印加電圧の波形図、(b)は順方向電流の波形図、(c)はスイッチング電流の波形図である。
【図4】従来のLED点灯装置の回路図である。
【図5】同上の消灯状態から点灯状態への切り替え時における理想的な波形図であり、(a)はLEDへの印加電圧の波形図、(b)は順方向電流の波形図である。
【図6】同上の消灯状態から点灯状態への切り替え時における実際の波形図であり、(a)はLEDへの印加電圧の波形図、(b)は順方向電流の波形図、(c)はスイッチング電流の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態のLED点灯装置およびそれを用いた照明器具について図面を参照して説明する。
【0027】
図1はLED点灯装置の回路図であり、このLED点灯装置は、整流回路2と、絶縁型フライバックコンバータ3と、平滑コンデンサ4と、LED(発光ダイオード)5とを主要な構成として備えている。尚、本実施形態のLED点灯装置では、負荷として2個のLED5が直列に接続されているが、LEDの個数は2個に限定されるものではなく、1個でも3個以上でもよいし、複数のLEDが並列に接続されていてもよい。
【0028】
整流回路2は、商用交流電源1を全波整流して直流に変換しており、整流回路2によって全波整流された直流電圧が絶縁型フライバックコンバータ3に出力される。ここにおいて、整流回路2によって、スイッチング電源たる絶縁型フライバックコンバータ3に直流電力を供給する直流電源が構成される。
【0029】
スイッチング電源部たる絶縁型フライバックコンバータ3は、絶縁トランス6と、スイッチング素子7と、ダイオード8とで構成される。絶縁トランス6の一次巻線は、スイッチング素子7(例えばFETからなる)と電流検出部10とを介して整流回路2の出力端子間に接続されている。絶縁トランス6の2次巻線の両端間にはダイオード8を介して平滑コンデンサ4(例えば大容量の電解コンデンサからなる)が接続され、平滑コンデンサ4の両端間にLED5と電流検出部9とが接続されている。また、絶縁型フライバックコンバータ3の出力端子間には、出力電圧(LED5への印加電圧V1)と所定の閾値電圧との高低を検出する電圧検出部15が接続されている。尚、スイッチング電源部は絶縁型フライバックコンバータ3に限定されるものではなく、他の回路形式のものでもよい。
【0030】
絶縁型フライバックコンバータ3のスイッチング素子7は、制御回路部11から入力される駆動信号S2によってオン/オフが制御される。制御回路部11からの駆動信号S2によってスイッチング素子7がオンになると、絶縁トランス6の1次巻線にスイッチング電流I2が流れ、電気エネルギーが磁気エネルギーに変換される。この時、ダイオード8の極性によって絶縁トランス6の二次側には電流が流れず、絶縁トランス6に磁気エネルギーが蓄積される。その後、駆動信号S2によってスイッチング素子7がオフになると、スイッチング素子7のオン期間に絶縁トランス6に蓄積された磁気エネルギーが電気エネルギーに再変換され、絶縁トランス6の2次側から放出されて平滑コンデンサ4を充電する。スイッチング素子7が周期的にオン/オフを繰り返すことによって、絶縁トランス6の2次側には、1次側と絶縁された直流電圧が発生し、平滑コンデンサ4の両端間に発生する直流電圧がLED5に印加されて、LED5が点灯する。
【0031】
次に制御回路部11について説明する。制御回路部11には、外部から出力電流(LED5の順方向電流I1)の目標値を決定する制御信号S1と、電流検出部9,10の検出信号と、電圧検出部15の検出出力とが入力されている。電流検出部9は、例えばLED5と直列に接続された電流検出用の抵抗器からなり、順方向電流I1に応じた大きさの信号を制御回路部11に出力する。電流検出部10は、例えばスイッチング素子7と直列に接続された電流検出量の抵抗器からなり、スイッチング電流I2に応じた大きさの信号を制御回路部11に出力する。電圧検出部15は分圧回路12と基準電源13とコンパレータ14とを備える。分圧回路12は、絶縁型フライバックコンバータ3の出力端子間に接続された抵抗12a,12bの直列回路からなり、抵抗12aの抵抗値と抵抗12bの抵抗値との比率に応じた分圧比でLED5への印加電圧V1を分圧する。コンパレータ14は、分圧回路12によって分圧された分圧電圧と、基準電源13の基準電圧との高低を比較し、分圧電圧が基準電圧よりも高ければHレベルの信号を、分圧電圧が基準電圧よりも低ければLレベルの信号を制御回路部11に出力する。尚、基準電源13の基準電圧は上記の閾値電圧に対応した値に設定されており、印加電圧V1が閾値電圧よりも高ければ、電圧検出部15の出力はHレベルとなり、印加電圧V1が閾値電圧よりも低ければ、電圧検出部15の出力はLレベルとなる。
【0032】
制御回路部11は、スイッチング素子7のオン時間(オンデューティ又はスイッチング周波数)を変化させることによって、絶縁型フライバックコンバータ3の出力電力(すなわちLED5に供給される点灯電力)を調整することができる。図2は点灯電力が大小異なる2つの点灯モードM1,M2での動作波形を示し、図2(a)はスイッチング電流I2の波形図、同図(b)は駆動信号S2の波形図、同図(c)は点灯電力W1の波形図である。また、図2中の左側は点灯電力W1が相対的に大きい点灯モードM1における動作波形、図2中の右側は点灯電力W1が相対的に小さい点灯モードM2における動作波形である。図2の動作波形より、点灯電力W1が大きい点灯モードM1では、点灯電力W1が小さい点灯モードM2に比べて、スイッチング素子7のオン期間が長く、スイッチング電流I2のピーク値が高くなっている。上述のように、スイッチング素子7のオン時にスイッチング素子7を介して絶縁トランス6の1次巻線に電流が流れることによって、電気エネルギーが磁気エネルギーに変換されて絶縁トランス6に蓄積される。その後、スイッチング素子7がオフになると、スイッチング素子7のオン時に絶縁トランス6に蓄積された磁気エネルギーが電気エネルギーに再変換されて、二次側から放出される。トランスには、巻線に流れる電流の増加とともにエネルギーが蓄積する性質があるため、スイッチング素子7のオン時に絶縁トランス6の1次巻線及びスイッチング素子7に流れる電流は徐々に増加していく。また電流の増加に伴い、絶縁トランス6に蓄積されて、絶縁トランス6の二次側に放出されるエネルギも大きくなるため、オン期間が長く、スイッチング電流I2のピーク値が大きい点灯モードM1の方が点灯モードM2に比べて点灯電力W1も大きくなるのである。
【0033】
制御回路部11に入力される制御信号S1は、所定周波数のパルス信号のオン時間を、LED5に流れる順方向電流I1の目標値に応じて変調させたPWM信号である。制御回路部11は、電流検出部9が検出した順方向電流I1の実績値が、制御信号S1から生成した直流の基準信号の信号レベル(順方向電流I1の目標値)と一致するように、スイッチング素子7に出力する駆動信号S2を調整して、点灯電力を調整する。すなわち、制御回路部11は、電流検出部10によって検出されたスイッチング電流I2のピーク値が、順方向電流I1の目標値と実績値との差をもとに決定された閾値を超えると、スイッチング素子7をターンオフさせている。
【0034】
以上の動作を纏めると、制御回路部11は、外部から入力される制御信号S1から得た基準信号の信号レベルと電流検出部9の検知信号とを比較し、定常点灯状態においてはLED5の順方向電流I1が制御信号S1に応じたレベルとなるように、スイッチング素子7をターンオフさせる閾値を変化させており、これによってオン時間(すなわち点灯電力W1)が制御されるのである。一方、LED5を消灯状態から点灯状態に切り替える場合、LED5には順方向電流I1が流れていないので、制御回路部11は、スイッチング素子7を最大負荷モードで動作させて、印加電圧V1を短時間で増加させるような制御を行うのであるが、印加電圧V1が所定の閾値電圧まで上昇すると、絶縁型フライバックコンバータ3の出力電力を低下させて、消灯状態から点灯状態に切り替わる際の閃光を低減する。そのために本実施形態では、制御回路部11に、LED5に印加される印加電圧V1を検出する電圧検出部15の検出出力が入力されている。電圧検出部15のコンパレータ14は印加電圧V1を分圧回路12で分圧した電圧と基準電源13から与えられる基準電圧(上記の閾値電圧に対応して設定された電圧)との高低を比較し、印加電圧V1を分圧した電圧が基準電圧を超えると、コンパレータ14の出力がLレベルからHレベルに切り替わる。制御回路部11では、電圧検出部15の出力に応じて、上述したスイッチング電流I2の閾値を切り替えており、電圧検出部15の出力がLレベルからHレベルに切り替わると(すなわち印加電圧V1が閾値電圧を超えると)、スイッチング電流I2の閾値をそれまでよりも低い値へと切り替え、出力電力を低下させている。
【0035】
ここで、LED点灯装置の動作を図3の波形図をもとに説明する。尚、図3(a)はLED5への印加電圧V1の波形図、同図(b)はLED5に流れる順方向電流I1の波形図、同図(c)はスイッチング素子7に流れるスイッチング電流I2の波形図である。
【0036】
時刻t11において、LED点灯装置に電源が投入されるか、或いは、外部から入力される制御信号S1が切り替えられるかすると、制御回路部11は消灯中のLED5を点灯させるようにスイッチング素子7のスイッチング動作を開始させる。スイッチング動作が開始されることによって印加電圧V1は増加していくが、印加電圧V1が点灯開始電圧Vf0に達する時刻t13までの間はLED5は点灯しておらず、順方向電流I1は略0Aである。そして、印加電圧V1が所定の閾値電圧Vf1(例えば定常点灯状態における印加電圧Vf0の約80%の電圧)に達するまでの間(時刻t11〜t12)、制御回路部11には電圧検出部15からLレベルの信号が入力されており、制御回路部11は調整範囲内でオン時間を最大とする最大負荷モードでスイッチング素子7を動作させる。これにより、時刻t11〜t12までの期間では、その後の期間(時刻t12〜t13)に比べて印加電圧V1が急激に上昇する。その後、時刻t12においてLED5への印加電圧V1が閾値電圧Vf1を超えると、制御回路部11には電圧検出部15からHレベルの信号が入力され、制御回路部11は、電圧検出部15から入力される信号をもとにスイッチング電流I2の閾値をそれまでの期間(時刻t11〜t12)に比べて低い値に制限する。これにより、時刻t12からLED5が点灯するまでの期間(この期間が第2スイッチング期間T2となる)では、時刻t11から時刻t12までの期間(この期間が第1スイッチング期間T1となる)に比べてスイッチング素子7のオン時間が短い時間に切り替えられるから、印加電圧V1の増加割合が第1スイッチング期間T1に比べて緩やかになる。そして、印加電圧V1が点灯開始電圧Vf0に達した時刻t13において、LED5に電流が流れ始めると、LED5の順方向電流I1が急峻に立ち上がり、順方向電流I1の目標値Ifを超える電流Ifmaxが瞬間的に流れることになる。しかしながら、第2スイッチング期間T2では第1スイッチング期間T1に比べてオン時間が短い時間に切り替えられることで、スイッチング電流I2のピーク値が低減され、定常点灯状態との差が小さくなっているので、第2スイッチング期間T2と定常点灯状態とで出力電力の差も小さくなっている。したがって、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する順方向電流I1のピークIfmaxを従来に比べて低減できるから、LED5が消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光が抑制され、ユーザに与える視覚的な違和感を抑制することができる。
【0037】
以上説明したように本実施形態のLED点灯装置は、スイッチング電源部(絶縁型フライバックコンバータ3からなる)と、電流検出部9と、制御回路部11とを備える。スイッチング電源部は、直流電源(整流回路2からなる)からの入力をスイッチング素子7でスイッチングすることによって、所望の電圧値の直流電圧に変換して、LED5に駆動電流を供給する。電流検出部9はLED5に流れる順方向電流を検出する。制御回路部11は、定常点灯状態においては電流検出部9の検出電流が目標値となるようにスイッチング素子7のスイッチング動作を制御する。また制御回路部11は、消灯状態のLED5を点灯させるためにスイッチング電源部のスイッチング動作を開始させた時点からLED5への印加電圧V1が点灯開始電圧Vf0に増加するまでの間に、スイッチング素子7のオン時間が相対的に長い第1スイッチング期間T1を設けた後、スイッチング素子7のオン時間が第1スイッチング期間T1に比べて相対的に短い第2スイッチング期間T2を設けることを特徴とする。
【0038】
これにより、第2スイッチング期間T2では第1スイッチング期間に比べてスイッチング素子のオン時間を短くすることで、スイッチング電源部からLEDへの出力電力が低減されているから、LED5が消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する順方向電流I1のピーク値を低減することができる。これによって、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減することができ、閃光の発生によってユーザに与える視覚的な違和感を低減することができる。
【0039】
このLED点灯装置において、制御回路部11が、スイッチング動作を開始させた時点から電圧検出部15の検出電圧が点灯開始電圧Vf0よりも低い所定の閾値電圧Vf1に達するまでの期間を第1スイッチング期間T1とし、検出電圧が閾値電圧Vf1を超えると第2スイッチング期間T2に切り替えることも好ましい。
【0040】
例えば、スイッチング動作を開始させた時点から所定時間が経過すると第1スイッチング期間T1から第2スイッチング期間T2に切り替える場合は、所定時間を計時するタイマ回路を構成するコンデンサの容量減退などの回路部品の劣化や電源開閉時などでコンデンサに電荷が残っているなどして、第2スイッチング期間T2に切り替わるタイミングが変動する可能性があるが、検出電圧が閾値電圧Vf1を超えると第2スイッチング期間T2に切り替えているので、点灯開始電圧に達する前に第2スイッチング期間T2に確実に切り替えることができ、閃光の発生を確実に低減できる。
【0041】
このLED点灯装置において、閾値電圧が、定常点灯状態におけるLEDへの印加電圧の50%以上且つ80%以下の値であることも好ましい。
【0042】
実機検討の結果、閾値電圧を、定常点灯状態におけるLEDへの印加電圧の50%以上且つ80%以下の値に設定することによって、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を確実に低減できる。また閾値電圧を低くしすぎると、印加電圧が点灯開始電圧に達するまでの時間が長くなって、LED5が点灯するまでの時間が遅くなるが、閾値電圧を50%以上とすることで、LED5が点灯するまでの時間が長くなりすぎるという弊害が起こりにくいという利点もある。
【0043】
なお、上記の実施形態では印加電圧V1が閾値電圧Vf1に達すると、制御回路部11が第1スイッチング期間T1から第2スイッチング期間T2に切り替えているが、制御回路部11は、スイッチング動作を開始させた時点から所定時間が経過するまでの期間を第1スイッチング期間T1とし、所定時間が経過すると第2スイッチング期間T2に切り替えることも好ましい。
【0044】
この場合は、RC回路の時定数を利用したり、他の制御に使用しているマイコンのクロックを共用するなど、比較的簡単な回路の追加で、第1スイッチング期間T1から第2スイッチング期間T2に切り替えるタイミングを検出して、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減することができる。
【0045】
また本実施形態の照明器具は、光源であるLED5と、LED5を点灯させる上述のLED点灯装置とを、例えば天井直付け型の器具本体(図示せず)に取り付けることによって構成される。
【0046】
これにより、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に発生する閃光を低減し、ユーザに与える視覚的な違和感を抑制した照明器具を実現するkとおができる。
【0047】
尚、照明器具としては、天井直付け型のものに限らず、天井から吊り下げられるペンダント型の器具本体にLED5と上述のLED点灯装置とを保持させたものでもよいし、壁に取り付けられる器具本体にLED5と上述のLED点灯装置とを保持させたものでもよいし、スタンド型の器具本体にLED5と上述のLED点灯装置とを保持させたものでもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 商用交流電源
2 整流回路(直流電源)
3 絶縁型フライバックコンバータ(スイッチング電源部)
5 LED
7 スイッチング素子
9,10 電流検出部
11 制御回路部
15 電圧検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの入力をスイッチング素子でスイッチングすることによって、所望の電圧値の直流電圧に変換して、LEDに駆動電流を供給するスイッチング電源部と、
前記LEDに流れる順方向電流を検出する電流検出部と、
定常点灯状態においては前記電流検出部の検出電流が目標値となるように前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路部とを備え、
前記制御回路部は、消灯状態の前記LEDを点灯させるために前記スイッチング電源部のスイッチング動作を開始させた時点から前記LEDへの印加電圧が点灯開始電圧に増加するまでの間に、前記スイッチング素子のオン時間が相対的に長い第1スイッチング期間を設けた後、前記スイッチング素子のオン時間が前記第1スイッチング期間に比べて相対的に短い第2スイッチング期間を設けることを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記スイッチング動作を開始させた時点から所定時間が経過するまでの期間を前記第1スイッチング期間とし、前記所定時間が経過すると前記第2スイッチング期間に切り替えることを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記LEDへの印加電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御回路部は、前記スイッチング動作を開始させた時点から前記電圧検出部の検出電圧が前記点灯開始電圧よりも低い所定の閾値電圧に達するまでの期間を前記第1スイッチング期間とし、前記検出電圧が前記閾値電圧を超えると前記第2スイッチング期間に切り替えることを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。
【請求項4】
前記閾値電圧が、定常点灯状態における前記LEDへの印加電圧の50%以上且つ80%以下の値であることを特徴とする請求項3記載のLED点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のLED点灯装置を備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69766(P2013−69766A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206018(P2011−206018)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】