説明

LED点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】複数通りの定格電圧のLEDランプを点灯可能であり、且つランプソケットにLEDランプが脱着されたときに流れる突入電流を抑制してLEDランプの故障を防止する。
【解決手段】出力制御部5が定電流制御を行うことにより、定格電流が一定、且つ定格電圧が異なる複数のLEDランプ、例えば、少なくとも35ボルトから7Oボルトまでの定格電圧を有するLEDランプを同一のLED点灯装置で点灯することが可能となる。また、出力電圧判別部4は、ランプソケット120に接続されたLEDランプ110の定格電圧に応じて異常判定しきい値を変更する。故に、LEDランプ110が外されたときの過電圧を低く抑えることができ、その結果、ランプソケット120にLEDランプ110が装着されたときに流れる突入電流が抑制され、LEDランプ110の故障が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を点灯するLED点灯装置、及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明用の光源として蛍光ランプの代わりにLEDが用いられるようになってきている。例えば、特許文献1には従来の直管形の蛍光ランプに近い形状を有するLEDランプが開示されている。このLEDランプは、帯板状の実装基板に多数のLEDが実装されてなる光源ブロックと、光源ブロックを内部に収納する直管形のガラス管と、ガラス管の両端を閉塞する口金と、口金の側面より突出して光源ブロックに給電するための端子ピンとを備えている。このようなLEDランプは、専用の照明器具に設けられているランプソケットに着脱自在に装着され、当該照明器具に搭載されているLED点灯装置からランプソケットを介して電力(直流電力)が供給されることで点灯する。
【0003】
また、LED点灯装置の従来例として、特許文献2に記載されているものがある。特許文献2記載の従来例では、LEDランプ(ランプソケット)に印加される電圧(出力電圧)と、LEDランプに流れる電流(出力電流)とを検出し、出力電流が目標値(例えば、LEDランプの定格電流)に一致するように出力電圧を調整する制御(定電流制御)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−43447号公報
【特許文献2】特開2006−210271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LEDランプが交換される場合等においては、LED点灯装置が動作している状態のままでランプソケットからLEDランプが外された後、再度、LEDランプがランプソケットに装着されることがある。この場合、ランプソケットからLEDランプが外された直後はLEDランプでの消費電力が瞬時にゼロになることによってLED点灯装置からLEDランプに供給される電圧が定常電圧よりも高い電圧に昇圧してしまう。故に、LEDランプを再度装着した直後においては、LEDランプに定格値を越える過大な電流(突入電流)が流れてしまう虞がある。そして、このような過大な電流が流れてしまうと、LEDランプの発光ダイオードが故障する可能性があった。
【0006】
特許文献2記載の従来例においては、LEDランプが外された場合にLED点灯装置からの供給電圧が定常電圧よりも低電圧となる待機モード、若しくはLED点灯装置が停止する停止モードを設けることで上述の突入電流を回避している。しかしながら、LEDランプが外された直後は供給電圧が十分に低下していないため、LEDランプが瞬間的に接続されると突入電流が流れてしまう虞がある。
【0007】
さらに考慮すべき点として、LEDランプに実装される発光ダイオードの効率が年々改善されている点がある。LEDランプの定格電圧は、使用されている発光ダイオードの順方向電圧Vfに当該発光ダイオードの個数nを乗じた値(=Vf×n)となる。例えば、現状の効率においては順方向電圧Vfを3.5ボルトとし、必要な光束を得るための発光ダイオードの個数nを20個とすれば、3.5×20=70ボルトが定格電圧となる。ところが、将来的な効率改善によって必要な光束を得るための発光ダイオードの個数nを10個に減らすことができたとすれば、3.5×10=35ボルトが定格電圧となる。LED点灯装置が定電流制御を行えば、定格電圧が35ボルトから70ボルトとなる複数のLEDランプを1台のLED点灯装置で点灯可能である。しかしながら、上述した突入電流を低減するために、LEDランプが外された後に定格電圧(70ボルト)よりも若干高い80ボルトでLED点灯装置を停止し、その後に十分低い電圧に供給電圧を低減する構成を採用したとしても、定格電圧が35ボルトのLEDランプが外された直後は定格電圧の35ボルトよりも過大な供給電圧(80ボルト)が生じてしまい、このときにLEDランプが瞬間的に接続されてしまうと上述した突入電流が流れてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、複数通りの定格電圧のLEDランプを点灯可能であり、且つランプソケットにLEDランプが脱着されたときに流れる突入電流を抑制してLEDランプの故障を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のLED点灯装置は、出力電圧が可変である電力変換部と、当該電力変換部からランプソケットを介してLEDランプに供給される出力電流を検出する電流検出部と、前記ランプソケットを介してLEDランプに印加される前記出力電圧を検出し正常な点灯動作電圧であるか否かを判定する出力電圧判定部と、前記電流検出部で検出される出力電流を目標値に一致させるように前記電力変換部を制御して前記出力電圧を増減する出力制御部と、前記ランプソケットと前記LEDランプとの接続の有無を判定する接続判定部と、前記出力電圧判定部及び前記接続判定部の判定動作を禁止する期間を定めるシーケンス制御部とを備え、前記出力制御部は、前記接続判定部の判定結果が接続無しの場合、及び前記出力電圧判定部の判定結果が異常電圧の場合は前記電力変換部を制御して前記出力電圧を所定の下限値以下に制限し、前記接続判定部の判定結果が接続有りの場合、及び前記出力電圧判定部の判定結果が正常電圧の場合は前記出力電圧を前記下限値以下に制限せず、前記出力電圧判定部は、前記シーケンス制御部で定められるとともに前記電力変換部が動作を開始した直後に設定される所定期間中において、前記ランプソケットに接続された前記LEDランプの点灯電圧に応じて前記異常電圧の判定レべルを設定することを特徴とする。
【0010】
このLED点灯装置において、前記ランプソケットを介して一定電圧を印加する定電圧源と、前記LEDランプにおいて発光ダイオードと並列接続されている抵抗に対し、前記ランプソケットを介して並列接続される検出抵抗とを備え、前記接続判定部は、前記検出抵抗における電圧降下が所定のしきい値未満のときに接続有りと判定し、前記電圧降下が前記しきい値以上のときに接続無しと判定し、少なくとも前記電力変換部からLEDランプに電流が供給されている間は判定動作を停止することが好ましい。
【0011】
このLED点灯装置において、前記出力電圧判定部は、前記電力変換部が動作を開始した直後の前記所定期間中に前記異常電圧の判定レべルを設定し、設定後は設定動作を禁止することが好ましい。
【0012】
本発明の照明器具は、請求項1〜3の何れかのLED点灯装置と、前記ランプソケットと、前記LED点灯装置並びに前記ランプソケットを保持する器具本体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のLED点灯装置及び照明器具は、複数通りの定格電圧のLEDランプを点灯可能であり、且つランプソケットにLEDランプが脱着されたときに流れる突入電流を抑制してLEDランプの故障を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るLED点灯装置の実施形態を示す回路ブロック図である。
【図2】同上の動作説明用のタイミングチャート図である。
【図3】同上における出電圧判定部の動作説明図である。
【図4】本発明に係る照明器具の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係るLED点灯装置の実施形態を示す回路ブロック図である。
【0017】
本実施形態のLED点灯装置によって点灯されるLEDランプ110は、特許文献1記載のLEDランプと類似の構成を有している。すなわち、このLEDランプ110は、多数の発光ダイオード111の直列回路と、当該直列回路に並列接続された抵抗R110と、直管形のガラス管(図4参照)と、ガラス管の両端を閉塞する口金(図示せず)とを備えている。なお、口金には、ランプソケット120を介してLED点灯装置の出力端に接続される一対の端子ピン(図示せず)が突設されている。そして、ランプソケット120から端子ピンを介して発光ダイオード111に直流電流(出力電流Io)が供給される。なお、ランプソケット120と発光ダイオード111の直列回路との間には整流器DB1が接続されるため、ランプソケット120の受け金A1,A2と端子ピンとの組み合わせに制限がなく、どちらの組み合わせで接続されても発光ダイオード111の直列回路に順方向の出力電流Ioが供給される。
【0018】
本実施形態のLED点灯装置は、昇圧チョッパ部1、電力変換部2、電流検出部3、出力電圧判定部4、出力制御部5、接続判定部6、定電圧源7、シーケンス制御部8などを備えている。
【0019】
昇圧チョッパ部1は、商用交流電源100から供給される交流電圧を所望の直流電圧に変換して力率を改善するものである。ここで、昇圧チョッパ部1の出力電圧が400ボルト強に設定されれば、電源電圧値が100ボルトから242ボルトの広範囲の商用交流電源100に対応することができる。
【0020】
電力変換部2は、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタなどの半導体スイッチング素子(以下、スイッチング素子と略す。)Q1、インダクタL1、ダイオードD1、コンデンサC1を具備した従来周知の降圧チョッパ回路からなる。
【0021】
出力電圧判定部4は、電力変換部2の出力端間(コンデンサC1の両端間)に接続された分圧抵抗R1,R2の直列回路と、2つの比較器CP101,CP102と、異常判定部40とを具備する。分圧抵抗R1,R2で分圧された検出電圧(電力変換部2の出力電圧Voに比例した電圧)と比較器CP101,CP102の出力電圧が異常判定部40に入力され、異常判定部40での判定結果がシーケンス制御部8に出力される。分圧抵抗R1,R2で分圧された検出電圧は、異常判定部40において比較器CP101,CP102の出力電圧に応じて設定される異常判定しきい値と比較され、検出電圧が異常判定しきい値よりも大きくなると異常と判定される。異常判定部40とシーケンス制御部8は何れもマイクロコントローラからなり、予めプログラムによって設定された計時動作、判定動作、メモリに記憶されたデータの読み出し、設定した状態の記憶などを行う。
【0022】
電流検出部3は、電力変換部2の負電位側の出力端とランプソケット120の負極側(A2)との間に挿入された検出抵抗R3からなる。そして、出力電流Ioによる検出抵抗R3の電圧降下が検出電圧として電流検出部3から出力制御部5に出力される。
【0023】
出力制御部5は、電力変換部2のスイッチング素子Q1を駆動する駆動回路50、駆動回路50にフィードバック制御を行わせるためのフィードバック回路51、昇圧チョッパ回路1を制御するチョッパ制御回路52などを具備している。この出力制御部5では、電流検出部3で検出される出力電流Ioを目標値に一致させるように電力変換部2を制御して出力電圧Voを増減させる。フィードバック回路51がオペアンプOP100による積分回路で構成される場合、LEDランプ110の定格電流値のデータが予めシーケンス制御部8のメモリに記憶され、当該メモリから読み出されたデータと電流検出部3で検出される検出電圧とが比較演算され、検出電圧がメモリに記憶されている定格電流値(目標値)と一致するようにスイッチング素子Q1のオンデューティ比が調整されて出力電圧Voが増減される。つまり、出力制御部5はLEDランプ110に一定の電流(定格電流)を流す定電流制御を行っている。
【0024】
従来技術で説明したように、LEDランプ110の定格電圧は、使用されている発光ダイオード111の順方向電圧Vfに当該発光ダイオード111の個数nを乗じた値(=Vf×n)となる。例えば、順方向電圧Vfを3.5ボルトとし、発光ダイオード111の個数nを20個とすれば、3.5×20=70ボルトが定格電圧となり、発光ダイオード111の個数nを10個とすれば、3.5×10=35ボルトが定格電圧となる。出力制御部5が定電流制御を行うことにより、定格電流が一定、且つ定格電圧が異なる複数のLEDランプ、例えば、少なくとも35ボルトから7Oボルトまでの定格電圧を有するLEDランプを同一のLED点灯装置で点灯することが可能となる。
【0025】
出力制御部5は、制御電源部130から制御電源が供給される。電力変換部2のスイッチング素子Q1に供給される駆動信号を生成するため、制御電源部130からダイオードD101を介してコンデンサC101が充電されている。但し、制御電源部130は従来周知の回路で構成可能であるから、詳細な構成の図示並びに説明は省略する。
【0026】
定電圧源7は、昇圧チョッパ部1の高電位側の出力端に一端が接続された抵抗R4と、抵抗R4の他端にカソードが接続されるとともにアノードがランプソケット120の低電位側(A2)に接続されたツェナーダイオード70とで構成されている。そして、ツェナーダイオード70の両端(カソード−アノード間)に生じる一定電圧(ツェナー電圧Vz)が抵抗R5を介してランプソケット120と接続判定部6にそれぞれ印加される。なお、定電圧源7から印加される一定電圧(ツェナー電圧Vz)は、LEDランプ110の定格電圧よりも低い電圧とする必要がある。さらに定格電圧が異なる複数種類のLEDランプが使用できるようにするためには、定格電圧が最も低いLEDランプを基準として、この定格電圧を下回るよう一定電圧(ツェナー電圧Vz)を設定すればよい。
【0027】
さらにLEDランプ110の定格電圧が危険電圧を上回り、且つ抵抗R5,R6,R7で分圧された電圧が危険電圧を上回る場合においては、定電圧源7から印加される一定電圧(ツェナー電圧Vz)を危険電圧よりも低い電圧としなければならない。なお、危険電圧の電圧値は、公的規格によって若干異なるが、一般的に直流では50ボルトを超える電圧とされている。
【0028】
接続判定部6は、ツェナーダイオード70のカソードとランプソケット120の低電位側(A2)との間に接続された3つの抵抗R5,R6,R7の直列回路と、抵抗(検出抵抗)R7における電圧降下をしきい値電圧Vref1と比較する比較器CP100とを具備している。なお、2つの抵抗R5,R6の接続点がランプソケット120の高電位側に接続されている。ランプソケット120にLEDランプ110が接続されていない状態(無負荷状態)のとき、比較器CP100の正端子にはツェナー電圧Vzが3つの抵抗R5,R6,R7で分圧された電圧(抵抗R7における電圧降下)が入力される。一方、ランプソケット120にLEDランプ110が接続されている状態(有負荷状態)のとき、LEDランプ110の抵抗R110が2つの抵抗R6,R7と並列に接続されることになる。よって、有負荷状態のときの抵抗R7における電圧降下が無負荷状態のときよりも低くなる。ここで、比較器CP100の負端子に入力されるしきい値電圧Vref1が、有負荷状態のときの抵抗R7における電圧降下と無負荷状態のときの抵抗R7における電圧降下の間に設定されている。従って、比較器CP100の出力は、無負荷状態のときにHレべルとなり、有負荷状態のときにLレべルとなる。なお、比較器CP100の出力(接続判定部6の判定結果)はシーケンス制御部8に入力され、シーケンス制御部8の出力に応じて、出力制御部5が動作又は不動作とされ、電力変換部2及び昇圧チョッパ部1が動作又は不動作とされる。
【0029】
次に、本実施形態のLED点灯装置の動作を図2のタイミングチャート図を参照して詳細に説明する。まず、図示しない電源スイッチが時刻t0に投入されて商用交流電源100からの電源供給が開始される。昇圧チョッパ部1が動作を開始する前(時刻t0からt1)の昇圧チョッパ部1の出力電圧は、図2(h)に示すように商用交流電源100の電源電圧を全波整流し平滑した電圧となる。このとき定電圧源7の出力電圧は、図2(b)に示すようにツェナー電圧Vzで決まる一定電圧となり、接続判定部6を構成する比較器CP100の正側入力電圧は、LEDランプ110がランプソケット120に接続されている場合はしきい値Vref1より低い電圧となる。接続判定部6での接続有無の判定結果はシーケンス制御部8に入力される。
【0030】
シーケンス制御部8はタイマ機能を有しており、時刻t1までは出力制御部5を不動作としている。またシーケンス制御部8は、時刻t1まで接続判定部6の判定結果が接続有りと判定された場合、動作信号を出力して出力制御部5の動作を開始させるとともに、時刻t1以降の接続判定を禁止とし、接続判定部6の判定結果が接続無しと判定された場合はタイマ機能を停止して常に時刻t0の状態を維持する。
【0031】
時刻t1以降、シーケンス制御部8から動作信号が出力されると、出力制御部5のチョッパ制御回路52と駆動回路50は、それぞれ図2(f),(g)に示すように駆動信号の出力を開始する。なお、チョッパ制御回路52は従来周知であって、昇圧チョッパ部1の出力電圧を検出してエラーアンプに入力し、エラーアンプの出力信号に応じてスイッチング素子の導通期間を決めるような制御(PWM制御)を行う。また、駆動回路50は、例えば定電圧バッファ機能を有し、この定電圧バッファ機能の出力端子Plsとグランド間に接続された抵抗R109に流れる電流が増加するのに応じてスイッチング素子Q1の導通期間を短くするように構成されていればよい。
【0032】
さらに、フィードバック回路51のオペアンプOP100の出力端が抵抗R100とダイオードD102の直列回路を介して駆動回路50の出力端Plsに接続されている。従って、電流検出部3から入力される検出電圧が低い場合にはオペアンプOP100の出力電圧が低下して出力端PlsからオペアンプOP100へシンクされる電流量が増加し、電流検出部3から入力される検出電圧が高い場合はオペアンプOP100の出力電圧が上昇して出力端PlsからオペアンプOP100へシンクされる電流量が低下する。これにより、検出電圧がシーケンス制御部8のメモリに記憶されている定格電流値(目標値)と一致するようにスイッチング素子Q1のオンデューティ比を調整することができる。シーケンス制御部8のメモリに記憶されている目標値は、図2(e)に示すように時刻t1においては定格電流値に相当する目標値より低い電圧値であり、シーケンス制御部8のタイマ機能によって決まる時刻t2以降に定格電流値に相当する電圧値に変更される。このような制御を行う理由として、昇圧チョッパ部1の出力電圧は出力電力が大きいほど緩やかな立ち上がりとなり、所定電圧に達するまでに比較的に長い時間を要するため、本実施形態のように昇圧チョッパ部1と電力変換部2の動作を同時に開始する場合においては動作開始直後の電力変換部2からLEDランプ110へ供給される電力を極力小さくして昇圧チョッパ部1の出力電圧を急峻に立ち上げることで短時間で所望電圧に到達させることが望ましいためである。
【0033】
時刻t1からt2において、昇圧チョッパ部1の出力電圧が図2(h)に示すように立ち上がる。このとき電力変換部2の出力端電圧(図2(i)参照)が上昇するのに応じて、接続判定部6を構成する比較器CP100の正側入力電圧(図2(b)参照)、及び出力電圧判定部4を構成する比較器CP101,CP101の正側入力電圧も上昇する(図2(c)参照)。ここで、上述のようにシーケンス制御部8は、時刻t1以降の接続判定を禁止しているため、比較器CP100の正側入力電圧がしきい値Vref1より大きくなっても誤判定することはない。
【0034】
出力電圧判定部4は、図2(d)に示すようにシーケンス制御部8のタイマ機能によって決まる時刻t1からt3までの間、抵抗R1とR2との分圧比によって決まる検出電圧と異常判定しきい値Vth1とを比較して異常判定を行い、シーケンス制御部8のタイマ機能によって決まる時刻t3からt4の間は、出力電圧判定部4を構成する比較器CP101,CP101の出力電圧に応じて異常判定しきい値を再設定する。ここで、比較器CP101と比較器CP102に入力されるしきい値Vref3,Vref4は、Vref3>Vref4の関係であり、図2(c)に示すように抵抗R1とR2との分圧比によって決まる検出電圧が比較器CP102のしきい値Vref4を下回る場合、異常判定部40は定格電圧の低いLEDランプが接続されていると判断し、時刻t4時点で異常判定しきい値をVth1からVth3(但し、Vth1>Vth3)へ再設定する。図示はしていないが、抵抗R1,R2の分圧比によって決まる検出電圧が、しきい値Vref3を下回り且つしきい値Vref4以上である場合は、異常判定しきい値をVth2とし、しきい値Vref3以上である場合は、異常判定しきい値をVth1とすればよい。
【0035】
ここで、時刻t5でLEDランプ110がランプソケット120から外されたとき、LEDランプ110に流れる電流Ioは図2(j)に示すようにゼロとなり、電力変換部2の出力端電圧(図2(i)参照)が上昇を開始する。抵抗R1,R2の分圧比によって決まる検出電圧が、時刻t5で異常判定しきい値Vth3を上回ると、異常判定部40は負荷異常(無負荷)が発生したと判定し、シーケンス制御部8へ停止信号を出力するとともに以降の負荷異常の判定を停止する。シーケンス制御部8は、停止信号に応じて出力制御部5の動作を停止するように動作信号の出力を変更し、昇圧チョッパ部1及び電力変換部2が動作を停止する。
【0036】
電力変換部2が動作を停止すると、図2(i)に示すように電力変換部2の出力電圧Voが低下するが、電力変換部2のコンデンサC1が放電するまでの時間は接続判定部6による接続判定禁止が維持され、シーケンス制御部8のタイマ機能によって決まる時間(時刻t6から時刻t7までの時間)が経過すると、接続判定部6による接続判定が再開される。この時点でシーケンス制御部8のタイマ機能がリセットされて初期状態に戻る。
【0037】
ここで、無負荷状態のときに電力変換部2からLEDランプ110の定格電圧以上の電圧が出力されていた場合、ランプソケット120にLEDランプ110が接続された直後に定格値を超える過大な電流が流れてしまう虞がある。しかしながら、本実施形態のLED点灯装置では、接続判定部6がLEDランプ110の接続の有無を判定するまで出力制御部5が電力変換部2の動作を停止し、接続判定部6が接続有り(有負荷状態)と判定した後に、出力制御部5が電力変換部2の動作を開始するので、LEDランプ110に定格電圧以上の電圧が印加されることがない。さらに出力電圧判別部4の異常判定部40では、ランプソケット120に接続されたLEDランプ110の定格電圧に応じて異常判定しきい値を変更しているので、LEDランプ110が外されたときの過電圧を低く抑えることができる。その結果、ランプソケット120にLEDランプ110が装着されたときに流れる突入電流が抑制されるので、LEDランプ110の故障が防止できる。
【0038】
さらに、LEDランプ110がランプソケット120から外されて電力変換部2を停止した直後は、ランプソケット120に高電圧が発生している。しかしながら、抵抗R5の抵抗値が比較的小さい値に設定されていれば、抵抗R5とツェナーダイオード70を介して電流が流れることにより、急峻に電圧を低下させることができるため、突入電流をさらに抑制することができる。
【0039】
以上、LEDランプ110がランプソケット120から外された場合について説明したが、電力変換部2が動作している状況でLEDランプ110に故障が生じた場合については、上述したようにランプソケット120からLEDランプ110が外されたときと実質的に同じ状況である。よって、LEDランプ110に断線などの故障が生じた場合、出力制御部5が電力変換部2の動作を停止させるので、故障したLEDランプ110が使用され続けることを防ぐことができる。ここでLEDランプ110内の線路が短絡する故障の場合は、発光ダイオード111の実質的な個数が減少することになるから、出力制御部5が定電流制御を行うことで電力変換部2の出力電圧Voが低下するために不安全な故障とはならない。但し、出力電圧判定部4で検出される出力電圧が所定値(<定格電圧)を下回ったときに出力制御部5が定電流制御を中止して電力変換部2を停止するような制御を付加してもかまわない。
【0040】
なお、本実施形態では無負荷時や故障時に出力制御部5が電力変換部2を停止させているが、必ずしも停止させる必要は無い。例えば、無負荷時や故障時には、出力制御部5が電力変換部2を制御し、出力電圧VoをLEDランプ110の定格電圧よりも充分に低い下限値以下に制限しても構わない。また、本実施形態のLED点灯装置は1つのLEDランプ110を点灯するものであるが、直列に接続された複数のLEDランプ110を同時に点灯させることも勿論可能である。
【0041】
さらに、出力電圧判定部4の異常判定部40において、図3に示すような電力変換部2の出力電圧と異常判定しきい値との関係式から異常判定しきい値を設定してもよい。また、異常判定部40と2つの比較器CP101,CP102、及びシーケンス制御部8をひとつのマイコンで構成してもよい。
【0042】
ところで、本実施形態のLED点灯装置は、例えば、図4に示す照明器具に搭載される。この照明器具は、天井に直付けされる器具本体130と、器具本体130に設けられた一対のランプソケット120,120とを備えている。器具本体130は、長手方向から見た側面形状が台形である長尺の角筒状に形成され、その内部にLED点灯装置が収納されている。そして、器具本体130の下面における長手方向両端部にそれぞれランプソケット120,120が配設されている。このランプソケット120,120は、従来周知である直管形の蛍光ランプ用のランプソケットと同一構造を有している。
【0043】
ここで、2つのランプソケット120,120のいずれか一方からLEDランプ110へ直流電流を供給する場合においては、蛍光ランプが誤装着されたときにフイラメント部に直流電流が供給されてしまう虞がある。しかしながら、上述のように出力電圧Voが所定値(<定格電圧)を下回ったと出力電圧判定部4で判定されたときに電力変換部2が停止するので、蛍光ランプがランプソケット120に誤装着された場合でも不安全な現象やLED点灯装置の故障などを発生する虞はない。
【0044】
ここで、使用者はランプソケット120,120に蛍光ランプが誤装着されても安全か否かを見分けることができないため、LEDランプ110の口金部の電極形状を蛍光ランプと異なる形状として誤装着を防止し、ランプソケット120,120の構造を、LEDランプ110の口金部の電極形状に合致した構造としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
2 電力変換部
3 電流検出部
4 出力電圧判定部
5 出力制御部
6 接続判定部
8 シーケンス制御部
110 LEDランプ
120 ランプソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧が可変である電力変換部と、当該電力変換部からランプソケットを介してLEDランプに供給される出力電流を検出する電流検出部と、前記ランプソケットを介してLEDランプに印加される前記出力電圧を検出し正常な点灯動作電圧であるか否かを判定する出力電圧判定部と、前記電流検出部で検出される出力電流を目標値に一致させるように前記電力変換部を制御して前記出力電圧を増減する出力制御部と、前記ランプソケットと前記LEDランプとの接続の有無を判定する接続判定部と、前記出力電圧判定部及び前記接続判定部の判定動作を禁止する期間を定めるシーケンス制御部とを備え、
前記出力制御部は、前記接続判定部の判定結果が接続無しの場合、及び前記出力電圧判定部の判定結果が異常電圧の場合は前記電力変換部を制御して前記出力電圧を所定の下限値以下に制限し、前記接続判定部の判定結果が接続有りの場合、及び前記出力電圧判定部の判定結果が正常電圧の場合は前記出力電圧を前記下限値以下に制限せず、
前記出力電圧判定部は、前記シーケンス制御部で定められるとともに前記電力変換部が動作を開始した直後に設定される所定期間中において、前記ランプソケットに接続された前記LEDランプの点灯電圧に応じて前記異常電圧の判定レべルを設定することを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
前記ランプソケットを介して一定電圧を印加する定電圧源と、前記LEDランプにおいて発光ダイオードと並列接続されている抵抗に対し、前記ランプソケットを介して並列接続される検出抵抗とを備え、前記接続判定部は、前記検出抵抗における電圧降下が所定のしきい値未満のときに接続有りと判定し、前記電圧降下が前記しきい値以上のときに接続無しと判定し、少なくとも前記電力変換部からLEDランプに電流が供給されている間は判定動作を停止することを特徴とする請求項1記載のLED点灯装置。
【請求項3】
前記出力電圧判定部は、前記電力変換部が動作を開始した直後の前記所定期間中に前記異常電圧の判定レべルを設定し、設定後は設定動作を禁止することを特徴とする請求項1又は2記載のLED点灯装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかのLED点灯装置と、前記ランプソケットと、前記LED点灯装置並びに前記ランプソケットを保持する器具本体とを備えたことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59422(P2012−59422A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199326(P2010−199326)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】