説明

LED照明装置及び養殖用LED照明装置

【課題】水中に沈めて設置可能であり、さらに、水槽に設置した際に、当該水槽内の所定の対象物に対して的確に光を照射可能にする。
【解決手段】複数のLED40を配列したLEDバー部材31をケース体30の内部に固定し、電源ケーブル47を引き出した状態で前記ケース体30を封止すると共に、水を蓄えた水槽内で当該水槽の床面に対して前記ケース体30を所定の姿勢で保持する姿勢保持部としてのケース支持脚32を前記ケース体30に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に設置可能なLED照明装置、及び、海藻類の養殖に用いて好適な養殖用LED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻類の養殖の一つに、海藻類の幼芽等を付着させた養殖用基盤を陸上に設置した養殖槽内に沈め、この養殖槽内で海藻類を育苗し、その後、養殖用基盤を養殖槽から自然海水域に移設し、この自然海水域で育成養殖するという手法が知られている。また、この手法においては、養殖槽内で育苗する過程では、自然の太陽光を養殖用基盤に照射して育苗するのが一般的である。
また、太陽光が当たらない建造物の中での育苗を可能にし、季節や気候による日照時間変動の影響を受け難くするために、LEDを光源とした照明装置により養殖用基盤の幼芽に光を照射する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−178947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の照明装置においては、養殖槽などの水槽に沈めて設置するLED照明装置が無かった。そのため、従来においては、LED照明装置が水没することの無いように、電源ケーブルが接続される側の端部を水面から出した状態で養殖槽の内側壁面に取り付け、この内側壁面から養殖用基盤に向けて光を照射する構成としている。
このような構成においては、内側壁面から養殖用基盤に対して光を照射するため、養殖用基盤の下面などに光が届き難くなり養殖用基盤上で照射むらが生じ易く、これにより幼芽の育苗の度合いに差が生じる、という問題がある。
このように、幼芽の育苗の度合いに差が生じると、すべての幼芽をある程度育苗するまで養殖用基盤を自然海水に移すことができないため、結果として養殖期間が延びてしまうという問題も生じる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、水中に沈めて設置可能であり、さらに、水槽に設置した際に、当該水槽内の所定の対象物に対して的確に光を照射可能なLED照明装置、及び、養殖用LED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のLEDを配列したLEDバー部材をケース体の内部に固定し、電源ケーブルを引き出した状態で前記ケース体を封止すると共に、水を蓄えた水槽内で当該水槽の床面又は内側面に対して前記ケース体を所定の姿勢で保持する姿勢保持部を前記ケース体に設けたことを特徴とするLED照明装置を提供する。
【0005】
また上記目的を達成するために、本発明は、海藻類を養殖するための海水が入った養殖槽の中に配置された養殖用基盤であり海藻類の幼芽が付着した養殖用基盤を、LEDが発する光により照射する養殖用LED照明装置であって、複数のLEDを配列したLEDバー部材をケース体の内部に固定し、電源ケーブルを引き出した状態で前記ケース体を封止すると共に、前記養殖槽内で当該養殖槽の床面又は内側面に対して前記ケース体を所定の姿勢で保持する姿勢保持部を前記ケース体に設けたことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、前記LEDバー部材は、前記養殖槽の上面開口から養殖用基盤を照らす自然光を補う光量、或いは、光量及び波長の光を発することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明に記載の養殖用LED照明装置において、前記LEDバー部材から放射され前記養殖用基盤に向かう光の拡がり角を、前記養殖用基盤での照射すべき面積に応じて広げる光学部材を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明に記載の養殖用LED照明装置において、前記光学部材の光出射面に、出射光に散乱を生じさせる梨地を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のLEDを配列し、外部電源に接続される電源ケーブルが引き出されたLEDバー部材をケース体の内部に固定し、前記電源ケーブルを引き出した状態で前記ケース体を封止する構成としたため、LED光源を内蔵した防水構造のLED照明装置が実現される。
さらに、複数のLEDをLEDバー部材で配列しケース体に収めることで、複数のLEDを互いの配置間隔や位置を正確に揃えた状態でケース体に一度に収めて固定することが可能となり、良好な組み立て性を実現することができる。
また、ケース体から電源ケーブルを引き出した状態でLEDバー部材を封止する構成としているため、水を蓄えた水槽にLED照明装置を沈めつつ、水槽外部からLED照明装置のLEDバー部材に電力を供給して点灯させることができる。これにより、LED照明装置のケース体の内部に電源を設ける必要が無いため装置の小型化及び簡略化が図られる。
これに加え、水を蓄えた水槽内で当該水槽の床面に対してケース体を所定の姿勢で保持する姿勢保持部をケース体に設ける構成としているため、水槽内にLED照明装置を設置した際に、ケース体の内部に固定されたLEDバー部材の光照射方向を所定方向に固定することができるため、水槽内の所定の対象物に対して的確に光を照射することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る海藻類養殖装置1の構成を示す図であり、(A)は海藻類養殖装置1の断面を側面からみた図を示し、(B)は平面図を示す。この図に示すように、海藻類養殖装置1は、例えばモズク等の海藻類を養殖するための海水を蓄える養殖槽2と、この養殖槽2の海水中に沈めて設置された複数の養殖用LED照明装置3とを備え、この養殖槽2の海水中に、海藻類の幼芽等を付着させた養殖用基盤4が配置され、また、各養殖用LED照明装置3が養殖用基盤4に対して光を照射して海藻類の養殖が行われる。
【0011】
養殖槽2は、幅Wが約2M(M:メートル)、長さLが約7M、高さが約0.6Mの上面が矩形に開口した直方型に構成され、その材料には例えば剛性、耐久性及び腐食性に優れたコンクリート等が用いられている。このような養殖槽2は、当該養殖槽2の上面全体を自然光たる太陽光S(図2参照)で照らせる程度の大きさの採光窓が天面に設けられた建物内、或いは、天面全体が耐久性に優れたビニルシート等の透過性材料によって構成されたビニルハウス内に設置され、日中には、太陽光Sによって養殖槽2の内部の養殖用基盤4が上面から照らされるようになっている。このとき、この養殖槽2の側面は不透明であるため、側面から内部への太陽光Sの入射は生じない。
【0012】
図1(B)に示すように、養殖槽2の内部には、長さLの方向に延びる2本の載置用支柱5が幅Wの方向に略等間隔に配置され、また、載置用支柱5のそれぞれが、図1(A)に示すように、養殖槽2の長さLの方向に略等間隔に立設された支持脚6により養殖槽2の底床面2Aから所定の高さHaに配置されている。この高さHaは、養殖槽2に蓄えられる海水の水位8よりも低い位置に設定されており、これら2本の載置用支柱5の上に養殖用基盤4を載置することで、養殖用基盤4が養殖槽2の底床面2Aから離間した状態で海水中に保持されることとなる。
【0013】
養殖用基盤4は、例えば1M×1M寸法の矩形の板状に形成された基盤の表裏面に、海藻類の胞子を付着させることができる藻床7A、7Bを貼り付けて形成されている。この藻床7A、7Bは、例えば天然繊維や合成繊維から形成された布状体、或いは、網状態で形成されており、その網目に海藻類の胞子が混入され幼芽が定着することとなる。このような藻床7A、7Bが貼り付けられる基盤は、海水中での浮きを防止可能な程度の質量を有して構成される。そして、このような養殖用基盤4が、図1(A)に示すように、養殖槽2内に、適宜の間隔で海水中に沈められ載置用支柱5に載置される。
【0014】
図2は、図1(B)のX−X線における断面を見た図である。この図に示すように、養殖槽2の底床面2Aには、塩化ビニル製の複数本のエア供給用パイプ9が敷設されている。これらのエア供給用パイプ9には多数の孔が穿設されると共に、養殖槽2の外に設置されたエア供給用ポンプ(不図示)から空気が導入されており、海藻類の養殖時にはエア供給用パイプ9から海水中に適宜に空気が供給されるようになっている。
【0015】
ここで、養殖槽2の載置用支柱5に養殖用基盤4を載置した状態においては、養殖槽2の上面開口から入射する太陽光Sによって養殖用基盤4の上面(上面開口に臨む面)側の藻床7Aが照らされるものの、太陽光Sによって養殖用基盤4の下面(底床面2Aと対向する面)の藻床7Bが照らされることはない。すなわち、下面の藻床7Bにおいては日照不足となり、上面側の藻床7Aと下面側の藻床7Bとの間で日照バランスが崩れ、育苗の度合い(成長の速さ)に差が生じる。そこで、従来においては、養殖用基盤4の上下面を一定期間ごとに手作業で入れ替えて日照バランスを維持するか、或いは、下面側には藻床7Bを設けずに上面側の藻床7Aでのみ養殖を行っているが、手作業で養殖用基盤4を上下入れ替えるには手間がかかり、また、養殖用基盤4の片面側だけを用いた養殖では生産性が悪いといった問題がある。
【0016】
そこで、本実施形態においては、養殖用LED照明装置3によって養殖用基盤4の下面側の藻床7Bを照らすことで、上面側の藻床7Aとの間の日照バランスを補うこととしており、かかる養殖用LED照明装置3の構成について以下に詳述する。
【0017】
図3は養殖用LED照明装置3の概略構成を示す図であり、(A)は全体を示す斜視図であり、(B)はその断面を見た図である。
この図に示すように、養殖用LED照明装置3は、アクリル製の透明な、略60CM程度の長さを有する円筒状のケース体30と、このケース体30の内部に固定されたLEDバー部材31とを有し、さらに、養殖槽2の底床面2Aに対してケース体30の長軸Kが略水平になる姿勢に当該ケース体30を保持する姿勢保持部としてのケース支持脚32と、LEDバー部材31の放射光によって養殖用基盤4の下面の藻床7Bの略全面が照射されるように放射光を制御する透過型の光学部材の一例たる三角プリズム33とを有している。
【0018】
LEDバー部材31は、養殖槽2の上面開口から養殖用基盤4を照らす太陽光Sを補うための光量、或いは、光量及び波長を有した光を発するものであり、少なくとも養殖対象の藻類の成長に効果的に寄与する波長の光を放射する複数のLED40を有して構成されている。このLED40としては白色光を放射するもの、或いは、海藻類の成長に寄与する波長の単色光を放射するものが用いられる。このとき、単色光のLED40を用いる場合には、放射光の波長が異なるLED40を2以上組み合わせて用いることで海藻類の成長をより効果的に促すことができる。
【0019】
LEDバー部材31は、上記のような複数のLED40を基板41の上に2列に配列し、それぞれのLED40を各列ごとに電気的に直列接続(並列接続でも良い)した合計2本のLEDラインデバイス42を直線状に並べて板状の支持柱45に締結して構成されている。また、LEDバー部材31の一端部からは各LEDラインデバイス42に結線されて外部からの電力を供給する電源ケーブル47が引き出され、ケース体30内での移動を規制するために支持柱45に締結具48で締結されている。
【0020】
上記構成のLEDバー部材31をケース体30に組み付ける際には、電源ケーブル47を引き出した状態でケース体30の一端部である挿入端部30Aから内部に挿入し、図2(B)に示すように、支持柱45の両側45Aをケース体30の内周面に当接させてケース体30内部に保持する。このとき、複数のLED40がLEDバー部材31によって直線状に配列されてケース体30に収められるため、各LED40を互いの配置間隔や位置を正確に揃えた状態でケース体30に一度に収めることが可能となり、良好な組み立て性が実現される。
【0021】
そして、ケース体30にLEDバー部材31を収めた後、ケース体30の挿入端部30Aから透明なモールド樹脂材50を流し込んでLEDバー部材31をモールドしてケース体30の内部にLEDバー部材31を固定し、次いで、挿入端部30Aをアクリル樹脂製の蓋材35でケース体30を封止することで、防水可能な養殖用LED照明装置3の組み立てが完了する。
また、上記蓋材35には引出孔35Aが形成されており、この引出孔35Aから電源ケーブル47が引き出され、また、電源ケーブル47と引出孔35Aとの隙間を埋めるためのシール部材49が引出孔35Aに嵌め込まれており、これにより、ケース体30の防水性の向上が図られている。
【0022】
上述の通り、ケース体30の外側には、養殖槽2の底床面2Aに対してケース体30の長軸Kが略水平になる姿勢に当該ケース体30を保持する姿勢保持部としてのケース支持脚32が設けられている。このケース支持脚32は、養殖槽2の底床面2Aに対してケース体30を支持した際に、LEDバー部材31が備える各LED40の光照射方向が上方に向くようにケース体30に取り付けられており、これにより、養殖槽2内にケース体30を沈めるだけで、LEDバー部材31の各LED40によって、養殖用基盤4の下面の藻床7Bに対して的確に光が照射されることとなる。
【0023】
LEDバー部材31の各LED40の放射光Yは、各LED40と対向するようにケース体30の外側に設けられたアクリル製の上記三角プリズム33に入射し、照射範囲が広がるように照射方向が偏向されて当該三角プリズム33から出射される。このとき、三角プリズム33から出射される放射光Yの拡がり角θ(図2参照)は、養殖用基盤4の下面の藻床7Bの略全領域を照射可能にすべく、養殖用基盤4と養殖用LED照明装置3との相対的な配置関係、及び、養殖用基盤4の下面の藻床7Bの広さ等によって規定される。
【0024】
また、三角プリズム33を構成する2つの面である光出射面33Aの表面は梨地に形成されており、各光出射面33Aから出射される光に散乱が生じるため比較的広いエリアを均一に照射することが可能となる。
なお、三角プリズム33とケース体30とをアクリル樹脂等で一体的に形成しても良いことは勿論である。
【0025】
海藻類養殖装置1においては、以上のように構成された複数台の養殖用LED照明装置3が、前掲図1及び図2に示すように、養殖槽2の底床面2Aの略中心線に沿って直線状に並べて配置されている。養殖用LED照明装置3の各々から引き出された電源ケーブル47の端部は、養殖槽2の外部に設置された不図示の電源に接続され、当該電源からの電力供給により、各養殖用LED照明装置3が点灯する。
このとき養殖用LED照明装置3への電力供給は、太陽光による日照に合わせて行われる。具体的には、例えば、当日の日の出時刻に電力供給を開始し、日の入り時刻に電力供給を停止する電源制御装置や、当日の日照時間をカウントしてオン/オフするタイマ装置、或いは、照度センサと連動し、太陽光が養殖槽2を照らしている間だけ電力供給を行う電源制御装置等を用いて、太陽光Sの日照に応じた電力供給が行われ、これにより、太陽光Sの日照量に略比例した時間だけ養殖用LED照明装置3が点灯される。
【0026】
養殖用LED照明装置3が点灯した際には、当該養殖用LED照明装置3から出射方向に沿って約100mm離れた点での放射光Yによる照度が約5000lx(ルクス)程度となるだけの光量の光を発生し、このような強さの放射光Yで養殖用基盤4の下側の藻床7Bが照らされる。海藻類においては、光合成量と呼吸量が等しくなる光の強さである光補償点が最も光補償点が低い海藻類でも1lx程度であるため、海水中での光の減衰を考慮しても、光合成に十分な強さの光で藻床7Bが照らされることとなる。
【0027】
なお、LEDバー部材31は、少なくとも1lux以上の照度で養殖用基盤4の下側の藻床7Bを照らせる程度の光量の光を発する程度にLED40を有していればよい。
また、養殖用LED照明装置3の照射よって養殖用基盤4の下側の藻床7Bにおける照度が、太陽光の照射による上側の藻床7Aの照度よりも強くなる場合には、藻床7Bの育苗の度合いを藻床7Aと合わせるために、各養殖用LED照明装置3の点灯時間が短縮されることとなる。
【0028】
次いで、海藻類養殖装置1を用いた海藻類の養殖について説明する。なお、以下では、海藻類の一例たるモズクを日本の気候に合わせて養殖する場合の一例について説明する。
モズク養殖業者は、例えば秋(9月下旬〜10月上旬)にモズクの母藻を採取し、この母藻を、養殖用の海水で満たした養殖槽2に養殖用基盤4と共に入れる。そして、エア供給用パイプ9に空気を供給しながら通気培養を数日間行うことで母藻から胞子が放出され、この胞子が養殖用基盤4の藻床7A、7Bに着生し種付けが完了する。養殖用基盤4への種付け期間においては、養殖のために光照射を行う必要がないため、養殖用LED照明装置3への通電は行われない。
【0029】
上記種付けの後、1mmほどの芽生えが養殖用基盤4の藻床7A、7Bに出現するまで中間育成を行い(例えば20日間)、そして、この幼芽が数cmの藻体になるまで、略20日の間、養殖槽2内で25〜26℃の育成温度(水温)で養殖を行う。この養殖期間においては、養殖用LED照明装置3による照射が行われ、また、養殖用基盤4の上側の藻床7Aと下側の藻床7Bとの間で光照射量が略同一になるように養殖用LED照明装置3の照射量が適宜に制御される。この結果、藻床7Aと藻床7Bとの間で幼芽の成長の速度がほぼ同じとなる。なお、養殖用LED照明装置3を点灯させることで発熱が生じるが、この発熱による養殖槽2内の海水の温度上昇は僅かであり育苗に問題にならない程度である事が発明者らの実験により明らかにされている。
そして、幼芽が藻体になった後に、例えば沖合いへ養殖用基盤4を移設し、3月から5月にかけて藻体が20〜30cmほどに伸びたときに、ポンプを用いて養殖用基盤4の藻床7A、7Bを吸引してモズクを採取する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のLED40を配列したLEDバー部材31をケース体30の内部に固定し、電源ケーブル47をケース体30から引き出した状態で封止する構成とした。この構成により、防水可能な照明装置が提供されると共に、複数のLED40を互いの配置間隔や位置を正確に揃えた状態でケース体30に一度に収めて固定することが可能となり、良好な組み立て性を実現することができる。
【0031】
さらに、本実施形態によれば、ケース体30から電源ケーブル47を引き出した状態でLEDバー部材31を封止する構成としているため、養殖槽2に養殖用LED照明装置3を沈めつつ、養殖槽2の外部からLEDバー部材31に電力を供給して各LED40を点灯させることができる。これにより、養殖用LED照明装置3のケース体30の内部に電源を設ける必要が無いため装置の小型化及び簡略化が図られる。
これに加え、本実施形態によれば、養殖槽2内で当該養殖槽2の底床面2Aに対してケース体30の姿勢を保持する姿勢保持部としてのケース支持脚32を設ける構成としたため、養殖槽2内に養殖用LED照明装置3を設置した際に、LEDバー部材31の光照射方向を一定の方向に固定することができる。これにより、養殖槽2内に配置された養殖用基盤4に対して的確に光を照射することが可能となる。
【0032】
また本実施形態によれば、LEDバー部材31は、養殖槽2の上面開口から養殖用基盤4を照らす自然光を補う光量、或いは、光量及び波長の光を発する構成としたため、養殖槽2の上面開口から養殖用基盤4を照らす太陽光Sが当該養殖用基盤4の下側(裏面側)の藻床7Bに届かなくとも養殖用LED照明装置3により補光され、これにより、養殖用基盤4の上側の藻床7Aと下側の藻床7Bとの間での光照射量を等しくし育苗の度合いの均一化を図ることが可能となる。
また、これにより、太陽光Sが届かない下側の藻床7Bだけ海藻類の成長が遅くなる事もないため、日照不足により養殖期間が延びてしまう事もない。
さらに、養殖用LED照明装置3は、育苗に必要な全ての光を賄うものではなく、あくまでも太陽光Sの補光を行うものであるため、その補光に必要な程度の出力及び個数のLED40を有すれば良く、LEDバー部材31の小型化、低発熱、及び、省電力化を図りつつ、養殖期間の遅延を防止することができる。
【0033】
また本実施形態によれば、LEDバー部材31の放射光の拡がり角θを広げる三角プリズム33をケース体30に設けたため、養殖用基盤4の広い範囲を照明することができる。特に、三角プリズム33の光出射面33Aに梨地を形成して散乱を生じさせる構成としているため、比較的広いエリアを均一に照射することが可能となる。
また、本実施形態によれば、LEDバー部材31は、藻床7Bに照射される光の照度が、海藻類の育苗に必要な少なくとも略1lx以上となる光量を発するため、海藻類が十分に光合成することができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、全体が透明なケース体30を用いたが、ケース体30は、少なくともLED40との対向面が透明であれば全体が透明でなくとも良い。
また例えば、上述した実施形態では、ケース支持脚32をケース体30と別体に設けたが、例えばケース体30に平らな面を形成し、この面で姿勢を保持する構成しても良い。
また例えば、養殖用LED照明装置3を養殖槽2の床面ではなく、養殖槽2の内側面にケース支持脚32で所定の姿勢を保持するように設置・固定して、この内側面から養殖用基盤4を照射する構成としても良い。
また例えば、上述した実施形態では、略矩形の板状の養殖用基盤4を用いる構成としたが、養殖用基盤4には、例えば円柱状(ロール型)といった任意の形状のものを用いることが可能である。そして、いかなる形状の養殖用基盤4であっても、太陽光Sが届き難い養殖用基盤4の下側を、養殖用LED照明装置3により効率よく照らし、養殖用基盤4における照射光量の均一化を図ることができる。
また養殖用LED照明装置3を、水槽やプール等に沈めてイルミネーションに用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る海藻類養殖装置の構成を示す図であり、(A)は断面を見た図を示し、(B)は平面図を示す。
【図2】図1(B)のX−X線における断面を示す図である。
【図3】養殖用LED照明装置の概略構成を示す図であり、(A)は全体を示す斜視図であり、(B)は断面を見た図である。
【符号の説明】
【0036】
1 海藻類養殖装置
2 養殖槽
3 養殖用LED照明装置
4 養殖用基盤
7A、7B 藻床
30 ケース体
31 LEDバー部材
32 ケース支持脚
33 三角プリズム
33A 光出射面
40 LED
47 電源ケーブル
50 モールド樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを配列したLEDバー部材をケース体の内部に固定し、電源ケーブルを引き出した状態で前記ケース体を封止すると共に、水を蓄えた水槽内で当該水槽の床面又は内側面に対して前記ケース体を所定の姿勢で保持する姿勢保持部を前記ケース体に設けたことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
海藻類を養殖するための海水が入った養殖槽の中に配置された養殖用基盤であり海藻類の幼芽が付着した養殖用基盤を、LEDが発する光により照射する養殖用LED照明装置であって、
複数のLEDを配列したLEDバー部材をケース体の内部に固定し、電源ケーブルを引き出した状態で前記ケース体を封止すると共に、前記養殖槽内で当該養殖槽の床面又は内側面に対して前記ケース体を所定の姿勢で保持する姿勢保持部を前記ケース体に設けたことを特徴とする養殖用LED照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の養殖用LED照明装置において、
前記LEDバー部材は、前記養殖槽の上面開口から養殖用基盤を照らす自然光を補う光量、或いは、光量及び波長の光を発することを特徴とする養殖用LED照明装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の養殖用LED照明装置において、
前記LEDバー部材から放射され前記養殖用基盤に向かう光の拡がり角を、前記養殖用基盤での照射すべき面積に応じて広げる光学部材を備えることを特徴とする養殖用LED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−22197(P2009−22197A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187826(P2007−187826)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】