説明

LED組立体を備えた内視鏡

【課題】大量の熱を発生する光源、制御ノブ、電池動作が不要であり、人体内部疾患の治療に適した高性能、廉価、且つ小型で熱放射性がなく信頼性が高い内視鏡を提供する。
【課題の解決手段】内視鏡の軟性チューブの遠位端がLED組立体、CCDカメラ若しくは画像ガイド束、及び治療用器具を挿入するための作業チャンネルを含み、LED組立体が、ヒートシンク構造を有するプリント回路基板とこのプリント回路基板上に搭載されたLED照明部2,3とからなり、LED照明部2,3には、外部電源と繋断可能に接続するための繋断接続手段104a〜104dと電圧調整手段103a〜103dと過電流遮断手段102a〜102dを備えた電源供給部100から、各LED照明部2,3に適した給電を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性医療用内視鏡においてその遠位端(先端)内部に光源として発光ダイオード(以下、LEDという。)を使用したLED組立体を備えており、光ファイバー導光伝送束のみならず光拡散用導光レンズも熱吸収ヒートシンク用コンデンサロッドレンズも不要である内視鏡に関わる。さらに具体的にいうと、本発明の内視鏡は、人及び動物の体内腔を照明光源を使って可視化するための胃腸内視鏡、結腸内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡、小径光ファイバースコープ、超音波スコープ等の軟性医療用内視鏡であり、可視対象物に最も接近する内視鏡遠位端内部に光源が設けられており、光の透過損失を除去したことにより且つグラスファイバー束の摩耗と破裂をなくしたことにより、対象物の鮮明な像が得られる内視鏡である。前記LED組立体は、LED、LEDを搭載する放熱体(ヒートシンク)である特別仕様のプリント回路基板(以下、PCBという。)を含む。本発明には大量の熱を発生する光源が無い。本発明は、体内に生じた異常を可視化し処置するのに使用する高性能で、廉価で、且つ熱非放射性の信頼度が高い小型内視鏡を与える。
【背景技術】
【0002】
内視鏡とは、治療或いは診断をしながら患者の体内部位を視察するのに使用する医療装置である。内視鏡検査では内視鏡を使って患者の体内腔を検査するが、内視鏡は体内腔とその領域とに応じて胃腸内視鏡、十二指腸内視鏡、結腸内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡等に分類される。
【0003】
一般的な内視鏡は光伝送用のファイバー束を収容する長くて細い柔軟性チューブ(以下、軟性チューブという)と外部光源とからなる医療用装置である。患者の体内器官の映像は見ることが出来、また、医師が再検査できるように記録することができる。内視鏡は生体検査や異物取り出しに使用することができ、また治療を施すために使用することもできる。内視鏡は人体の体内腔の中に直接に挿入することができる。
【0004】
内視鏡は一般的に下記のものから成る。
・剛性または軟性のチューブ、
・検査対象の臓器或いは対象物を照明するための光配送システム(通常、光源は外部的に内視鏡に接続され、光は光ファイバーシステムを介して送られる)、
・内視鏡から観察者へ、スクリーン若しくは光ファイバー画像ガイドに表示できる画像を送信する電子マイクロカメラシステム、及び
・医療器具又は操作器具を挿入可能にするための作業チャンネル。
前記軟性チューブは外部光源から軟性チューブ先端まで光を伝送する光照明ファイバーを内部に備え、それによって患者の体内器官が明瞭に見える。光ファイバーは、芯材と、芯材に光を反射し戻す緩衝塗布材を塗布した被覆材とから成る。現在、体内腔等の中で観察及び治療等を行うための内視鏡は種々存在し、それらは種々の医療とそれに類似する諸用途の分野で使用されている。
【0005】
内視鏡を使用する際、内視鏡制御部は体外に留め、細長い軟性チューブが患者の体内腔へ挿入される。従来の内視鏡では、人体内部へ進入する軟性チューブの先端に光を拡散するための高価な特別仕様のレンズを具備した一本或いはそれ以上の光ファイバーガイドがあり、それによって人体の内部領域を一様に照明し、観ることができる。光源その他の装置は体外で内視鏡に接続される。光照明ファイバー束は,フィラメントランプやキセノンその他の金属ハロゲンランプを含むアーク灯等の光源に接続される。これらの光源は電力を光に変換する上で非常に非効率であり、その結果大量の熱を発生する。これらの光源は多量の熱を発生し、発光に高電力源を必要とするので、光源は内視鏡外部に保持される。近年、多機能内視鏡を使用する場合、診断の強化とそれに伴う処理能力を向上させるために一層高い輝度が必要になっている。
【0006】
いくつかの内視鏡使用例では出血が起き、その場合には光源によるさらなる照明が必要であり、現在,その照明はキセノンを基本的に利用するより高価な照明装置でまかなわれている。そこで特別仕様のLED組立体を内蔵光源として使用する改良型照明を与えることにより外部光源に関連するこれら諸問題を解決する本発明が成された。本発明は大きくて複雑な光源、光伝送ファイバー束、及びレンズを不要にする。本発明は輝度を高め、しかも電力消費は小さい。
【0007】
従来において光源にLEDを使用したものとしては、複数のLEDを設けた基板を内視鏡の挿入ユニットの軸線面(長手方向に伸びる軸線を含む平面)上、もしくはその近傍に配置し、第1対物面の一部も同様の位置に配置することで、LEDを配置するために十分大きな面積を確保するとともに、内視鏡遠位端の外径を可能な限り小さくすることが知られている(特許文献1)。
また、従来、円筒形の長い挿入チューブと、このチューブ遠位端に設けた密封用のキャップと、キャップの凹所内に固定された一対のLEDと、各LEDに接続された二対のリード線と、キャップ入り口を密閉する蓋とを有するプローブにおいて、二対のリード線に交互に駆動電流を流して、一対のLEDを交互に発光させ、自発蛍光を発生する生体細胞を励起する励起光と、対象物を照明する可視光とを、交互に発生させることが知られている(特許文献2)。
さらに、従来、先端光源の電圧を容易に設定し、先端の熱発生を抑制するために、LEDD1及びD2を内視鏡先端に配置し、定電流回路22からLEDD1及びD2に特定の定電流を流すとともに、定電流回路22は第1トランジスタQ1、電流ミラー構成にした第2、第3トランジスタQ2、Q3及び可変抵抗VR1を備え、この可変抵抗VR1を調節することによりLEDD1及びD2への定電流供給を安定かつ容易に行うことが知られている(特許文献3)
【0008】
上述したほか、従来において、光源にLEDを使用し、あるいは光源の光量などを制御する制御機構を備え、あるいは安全性確保のための検出装置を備えた内視鏡として、各種の構成が知られている(特許文献4〜17)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0188177号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0120129号明細書
【特許文献3】特開2001−321336号公報
【特許文献4】国際公開第2009/036300号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0188493号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0039077号明細書
【特許文献7】特開2010−027278号公報
【特許文献8】特開2007−236921号公報
【特許文献9】特開2007−275212号公報
【特許文献10】特開2007−068619号公報
【特許文献11】国際公開第2006/011571号
【特許文献12】特開2006−061685号公報
【特許文献13】特開2002−291697号公報
【特許文献14】国際公開第1998/08430号
【特許文献15】特開平10−118009号公報
【特許文献16】カナダ国特許出願第2094633号明細書
【特許文献17】米国特許第5187572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1で開示された内視鏡では、挿入ユニットの近位端に制御ユニットが設けられ、その制御ユニットには遠位端のLEDから出謝される光量を調節するための光量調節ノブが設けられ、この光量調節ノブを使って最適な光量を得るために頻繁に手で調節することが必要であり、また、患者の検査や手術中にLEDが故障した場合にとるべき安全策は何ら考慮されていない、という不都合がある。また、特許文献2で開示された内視鏡は、ビデオ内視鏡と照明プローブとを有する蛍光観察用のビデオ内視鏡システムとしても使用可能であり、ビデオ内視鏡を挿通する光ガイドを有するが、この光ガイドの光源部は、ランプ、回転フィラー、集光レンズからなり、ランプは白色光を平行光として発射するための反射鏡を有するので、嵩張ってしまい、取り扱いも容易でない、という不都合がある。さらに、特許文献3で開示された内視鏡は、いくつかのLEDが、故障した場合の安全対策が取られておらず、故障発生が検査中や手術中であれば、当該医療行為を完了することができない、という不都合がある。
【0011】
また、従来の一般的な内視鏡は外部光源から検査対象まで光を伝送するのに光ファイバー束を使用するので、その照明装置を連続使用すると、光源が発生する大きな熱量が光ガイドプローブの近位端のカバーガラスを破損しかねず、また光ガイドプローブがその遠位端に光と共に熱を伝達し、その結果、熱伝達が起きる虞れが有り、これが体内熱損傷を起こしかねない。そこで、これら不都合を解消するために、特別仕様のLED組立体を内蔵光源として使用する改良型照明を与えることにより外部光源に関連するこれら諸問題を解決する本発明が成された。本発明は大きくて複雑な光源、光伝送ファイバー束、及びレンズを不要にする。本発明は輝度を高め、しかも電力消費は小さい。
本発明の目的は、人体内部の照明と安全に適した、内部LED組立体と、単一入力電力源を使用した複数出力端をもつ特別仕様の電力源とを具備した内視鏡、例えば胃腸内視鏡、気管支内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡,小直径ファイバー内視鏡、超音波スコープ等を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、放熱体(ヒートシンク)として機能する特別仕様のPCB上に固定された経済的な複数のLEDを軟性チューブの遠位端に具備した内視鏡であって、光伝送用光ファイバー束、合焦レンズ、光ガイド、及び大量の熱を発生する光源を不要にする内視鏡を提供することである。
【0013】
本発明のさらにもう一つの目的は、遠位端に配置されたLEDの一つまたはそれ以上が故障しても、他のLEDは正常に機能して検査を続行できるように、各LEDが電源供給部に接続されている内視鏡を提供するところにある。
【0014】
本発明のさらにもう一つの目的は、熱放射しない内視鏡を提供することである。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的は、電力消費が低い高効率LEDを具備した内視鏡を提供することである。
【0016】
本発明のさらにもう一つの目的は、非効率なランプによる内視鏡遠位端の加熱による体内熱損傷を回避できるよう、熱放射しない内視鏡を提供することである。
【0017】
本発明のさらにもう一つの目的は、内視鏡先端に搭載できて光の一様な拡散と高輝度とを達成できるLEDと、LEDを配置する特別仕様のPCBにより、画像品質が一定している内視鏡を提供することである。
【0018】
本発明のさらにもう一つの目的は、複数のLEDを直列または並列に接続することにより輝度を調整できるようにすることである。
【0019】
本発明のさらにもう一つの目的は、有色LEDの組合せを選択することにより光の色スペクトルを選択することができるようにすることである。
【0020】
本発明のさらにもう一つの目的は、フォトカプラとDC/DCコンバータを使って単一入力電圧から複数出力電圧を与えることにより、最適な性能と光学的安全性が得られるように複数のLEDを作動させる特別仕様の直流電源を与えることである。
【0021】
本発明のさらにもう一つの目的は、内視鏡の遠位端における組立体にLEDを配置することにより、光ファイバー束を不要にして、挿入部の径を小さくした内視鏡を提供することである。
【0022】
本発明のさらにもう一つの目的は、いずれかのLEDが機能不全に陥ったときには適切な輝度レベルを維持することができて内視鏡の使用を完了させることができるように、他のLEDが正常に機能して緊急代替が可能となる内視鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡は、複数のLEDとPCBからなるLED組立体を内蔵した経済的な改良型内視鏡で、胃腸内視鏡、結腸内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡、小径ファイバースコープ、超音波スコープ等の形で使われるものである。
【0024】
さらに特定すると、本発明は、内視鏡の軟性チューブの遠位端にLED組立体を備えた改良型内視鏡であって、光ファイバー導光伝送束も光拡散用導光レンズも不要である。
【0025】
使用する光源は複数のLEDからなるLED照明部であり、光伝送損失とグラスファイバー束の摩耗及び破裂とが回避できるように、LEDは視察対象物に極めて近接するように搭載される。
【0026】
LED組立体は単一または複数のLED照明部と、該LED照明部を搭載するための特別仕様の放熱体(ヒートシンク)、かつ電子プリント回路基板として機能するPCBとからなる。
【0027】
本発明は、輝度と光の一様性においてキセノンランプ及びハロゲンランプに匹敵しながら電力消費が低く且つより高効率であるLED照明部を備える。
【0028】
本発明は、光伝送と光拡散のための高価な光ファイバー束や光分散レンズが不要である。また、光源であるLEDに必要な電力は、キセノンランプやハロゲンランプに必要な電力よりも小さい。
【0029】
本発明は、一つの共有入力を使って多様な標準出力を出すことができ、この多様な出力は繋断接続手段であるフォトカプラーと電圧調整手段であるDC/DCコンバータを各複数組備えた電源供給部を使って生成されている。
【0030】
本発明のLED組立体に使用するLED照明部は必要に応じて単色になるようにも多色になるようにも構成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、付随するグラスファイバー束の摩耗や破裂を伴わないので、内視鏡の寿命を延ばすことができる。
本発明はまた、一つの共有入力を使って各LED照明部に適した多様な出力を出すことができる電源供給部を使用することにより、如何なるLED損傷をも起こさない安全性を与える。
さらに、本発明はLED組立体と電源供給部とを使って電力消費を低く抑えながらキセノンランプに匹敵する輝度を達成することができる。すなわち、使用するLED組立体に応じてDC/DCコンバータで電源電圧を適切な電圧に調整することにより、電力消費の低い調光照明が得られる。
またさらに、本発明は、内視鏡遠位端に固定して搭載されたLED光源によって一定の画像品質を与えることができ、且つこの光源は放熱体(ヒートシンク)として機能するPCB上に設けられて、一様な光拡散と高い輝度を与えることができる。
さらにまた、本発明は光ファイバー束の使用を不要にし、且つ光源であるLEDを搭載するPCBが放熱体(ヒートシンク)となる非熱発生材料であり、安全な電源回路を使うことにより内視鏡の遠位端で過度の熱伝達の起きる可能性はない。それゆえ体内熱損傷の虞れは無い。
加えて、本発明は光ガイド、レンズ、制御ノブ、電池駆動、及び光ファイバー束の使用を不要にするので、取扱が容易であり、修理効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】胃腸内視鏡、結腸内視鏡、超音波スコープ等の内視鏡の遠位端(先端)部の一実施例を示す斜視図。
【図2】同じく一つのLED組立体の断面図。
【図3】同じく他のLED組立体の断面図。
【図4】同じくLED照明部に給電する電源供給部の回路図。
【図5】LED照明部の他の実施例を示す回路図。
【図6】十二指腸内視鏡の遠位端に設けたLED組立体を示す概略図。
【図7】気管支内視鏡の遠位端に設けたLED組立体を示す概略図。
【図8】小径光ファイバー内視鏡の遠位端に設けたLED組立体を示す概略図。
【図9】PCB上のLEDの配置の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の用途は添付の図面を参照して良く理解できよう。ただし添付図面は本発明を例示するためのものであり、本発明の技術範囲を限定するものではないことを理解されたい。添付の図面は内視鏡の遠位端に搭載したLED組立体を、胃腸内視鏡、結腸内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡、小径光ファイバースコープ、超音波スコープ等のいろいろの内視鏡にどのように使用できるかを示す、いくつかの具体例およびLED照明部に給電する電源供給部の回路図を示すものである。
【0034】
本発明は、内視鏡の遠位端内部に内蔵光源としてLEDを具えた軟性医療用内視鏡であって、光伝送用の光ファイバー束及び光拡散用の導光レンズを必要としない内視鏡に関わる。本発明は光伝送用の光ファイバー束を使用しないので、より柔軟性に富み、使い勝手が良い。
【0035】
本発明は胃腸内視鏡、結腸内視鏡、十二指腸内視鏡、気管支内視鏡、或いは小径光ファイバー内視鏡、超音波スコープ等の、内蔵LEDを具備した改良型廉価内視鏡である。本発明は、可視化対象物に最も接近する内視鏡遠位端にLEDを設けた軟性医療内視鏡であって、特別仕様のLED組立体を利用することにより光の透過損失がなく、且つグラスファイバー束の摩耗と破裂がなく、そのために対象物の鮮明な像が得られる医療用内視鏡である。本発明は大量の熱を発生する光源を使わない、高性能、廉価、低熱放射性の内視鏡で、体内疾患の治療に対して高い信頼性を有する。
【0036】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は内視鏡1の軟性チューブの遠位端に設けたLED組立体の一例を示す。図1において,符号2は2個のLED2a,2bを一組にしたLED照明部(図2参照)、3は3個のLED3a,3b,3cを一組にしたLED照明部(図3参照)を示す。使用する光源は、単色光または多色光のLED照明部2,3である。
【0037】
電源は通常商用電源を降圧、整流して使用するが、電源供給部(図4参照)のDC/DCコンバータを備えた電源供給回路で電源電圧を適切な電圧に調整することにより、調光したLED照明が得られる。改良型光源のLED照明部2,3は点灯すべきLEDの個数に応じて、一つまたはそれ以上の特別仕様の、LED照明部2,3とはフォトカプラーで外部電源と電気的に分離されたDC/DCコンバータを備えた電源供給回路から各別に供給される調整された電源電圧で点灯することができる。
【0038】
熱の過剰発生及び熱損傷の発生を完全に防止するため、これら特別仕様の電源供給回路は熱遮断回路若しくは過電流防止装置としてのヒューズを具えた設計になっている。もしもいずれかのLEDが使用中に故障したとしても、直列に或いは並列に接続したそのような一つ以上の電源供給回路を組み合わせることによって、選んだLED照明部2,3により対象物の観察に必要な適切な光を得ることができ、光照明が可能になる。また、電源供給回路の電流を調整することにより、光の強度を制御することも可能である。
【0039】
4はCCDカメラまたは光ファイバー画像ガイドのカバーガラスで、前記CCDカメラまたは光ファイバー画像ガイドは患者の体内器官の画像を捕捉するのに使用される。5は手術用器具を挿入可能にするための作業チャンネルである。6はCCDカバーガラス洗浄ノズルである。
【0040】
図2に示すように、LED照明部2は、PCB7の表面上に設けられた2つのLED2a,2bからなり、PCB7を貫通した給電線8a,8bを介して電源供給部100(図4参照)に接続されている。前記LED2a,2bと前記PCB7は、金属製の筒9内に配置され、筒9の先端にはカバーガラス10が設けられている。
【0041】
また、図3に示すように、LED照明部3は前記LED照明部2と同様に構成されており、PCB7の表面上に設けられた3つのLED3a,3b,3cからなり、PCB7を貫通した給電線11a,11bを介して電源供給部100(図4参照)に接続されている。前記LED3a,3b,3cと前記PCB7は、金属製の筒12内に配置され、この筒12の先端にはカバーガラス10が設けられている。
【0042】
PCB7は、放熱体(シートシンク)として機能する積層構造を有し、絶縁基材の裏面に金属箔を設けてなり、熱伝導率が1.0W/mK程度であり、高い熱伝導性を有している。前記絶縁基材としては、例えばガラス不織布とエポキシ樹脂の複合体が好適である。また、前記金属箔としては、例えば銅箔が好適であり、絶縁基材の表裏面に設けることもできる。PCB7が高い熱伝導性を有することによって、LED照明部2,3から発生した僅少量の熱を速やかに吸収し、筒9,12に放熱して、さらに筒9,12から軟性チューブ全体に放熱することで、内視鏡1先端部の加熱を防止することができる。
【0043】
続いて、図4に基づいて、LED照明部2,3に外部電源からの電源電圧を供給する電源供給回路を備えた電源供給部について説明する。LED照明部2の2個のLED2a,2bは並列に接続され、それらのアノード側は給電線8aを介して電源供給部100の出力部101における出力端子101cに接続される一方、それらのカソード側は給電線8bを介して前記出力部101における出力端子101dに接続されている。前記給電線8a,8bと前記出力端子101c,101dとの接続は固定的接続でもよいが、これを必要に応じて接続可能に構成してもよい。例えば、各給電線8a,8bの接続端にプラグを設け、各出力端子101c,101dをジャックとして構成し、プラグをジャックに着脱することで、接続状態と非接続状態を容易に選択可能となる。
【0044】
LED照明部3の3個のLED3a,3b,3cは互いに並列に接続され、上述したLED照明部2の2個のLED2a,2bと同様に構成されている。前記LED3a,3b,3cは各給電線11a,11bを介して各出力端子101e,101fと接続されている。そして、前記給電線11a,11bと前記出力端子101e,101fとの接続も、上述の給電線8a,8bと前記出力端子101c,101dとの接続と同様に構成されている。
【0045】
上述したように、各LED照明部2,3は、複数のLED2a,2b,3a,3b,3cを並列に接続したので、あるLED2a,2b,3a,3b,3cが損傷して点灯不能となっても、他のLED2a,2b,3a,3b,3cは点灯可能である。また、この機能は、図示してはいないが、直列接続と並列接続との組み合わせによっても実現可能である。複数のLED2a,2b,3a,3b,3cは同一の発光色(通常は白色)でもよいし、異なる発光色の組み合わせでもよい。例えば、赤、青、緑の各発光色を組み合わせて白色の発光色とすることができる。また、特定のLED照明部2,3を選択して、特定色の光スペクトルを出力するよう構成することもできる。
【0046】
なお、出力部101には、上述した出力端子101c,101d,101e,101fのほかに、出力端子101a,101b,101g,101hが設けられ、前記出力端子101a,101bはLEDが1個のLED照明部を接続するためのものであり、前記出力端子101g,101hはLEDが3個のLED照明部を接続するためのものである。したがって、電源供給部100は、上述した各LED照明部2,3に加えて、LEDが1個のLED照明部と、LEDが3個のLED照明部との4つのLED照明部を同時に接続することが可能である一方、いずれか一つのLED照明部のみ、あるいはいずれか2つまたはいずれか3つのLED照明部を組み合わせて接続することも可能である。このように、電源供給部100は、内視鏡1のLED照明部の各種態様に対応することができる。
【0047】
図5はLED照明部の他の例を示すもので、3個のLEDを、1個のLEDと並列に接続した2個のLEDに分離して構成したものである。このLED照明部を単独でPCB7上に設けて使用する場合は、1個のLEDのアノード側を、例えば出力端子101aに接続し、2個のLEDの並列に接続したアノード側を、例えば出力端子101cに接続し、3個のLEDの並列に接続したカソード側を、例えば出力端子101bに接続すればよいものである。
【0048】
また、この図5に示すLED照明部を上述のLED照明部2,3とともにPCB7上に設けて使用する場合は、1個のLEDのアノード側を出力端子101aに接続し、2個のLEDの並列に接続したアノード側を出力端子101gに接続し、3個のLEDの並列に接続したカソード側を出力端子101bまたは101hに接続すればよいものである。このように、LED照明部におけるLEDの個数や接続構成は、内視鏡の使用目的に応じて、適宜選択される。
【0049】
図4において、各出力端子101a,101c,101e,101gは過電流を遮断するための過電流遮断手段であるヒューズ102a,102b,102c,102dを介して、接続された各LED照明部2,3に適した大きさの電圧を供給するDC/DCコンバータ103a,103b,103c,103dの出力端子VOUTに接続されている。これら各DC/DCコンバータ103a,103b,103c,103dが電圧調整手段を構成する。前記各ヒューズ102a,102b,102c,102dは、例えばLEDの不具合により、過電流による温度上昇が発生した場合、内視鏡の遠位端も高温化して患者が火傷を被る虞があるが、この温度上昇時に断裂して高温化を防止する。
【0050】
各DC/DCコンバータ103a,103b,103c,103dには、各LED照明部2,3の明るさを2段階で調整する各LEDハイ/ロウ切替え用フォトカプラ104a,104b,104c,104dから明るさ切替え信号が入力するとともに、各LED照明部2,3をオンオフ制御するLEDオン/オフ用フォトカプラ105から各DC/DCコンバータ103a,103b,103c,103dの入力端子VINにオンオフ信号が入力する。前記各フォトカプラ104a,104b,104c,104d,105が外部電源と繋断可能に接続するため繋断接続手段を構成する。なお、図4中106,107は入力部である。
【0051】
このように、各LED照明部2,3は、各別の独立した電源供給回路によって給電されるので、例えば、LED照明部2の電源供給回路が過電流によってヒューズ102bが切れるなどの故障を生じても、LED照明部3は何の影響を受けることなく、正常動作を行なうことができる。なお、図5に示すLED照明部の場合も、1個のLEDと2個のLEDは各別の独立した電源供給回路によって給電されるので、例えば1個のLEDが故障しても2個のLEDは正常動作をする。ここにおいて、電源供給回路に電流制御手段を設けて、各LED2a,2b,3a,3b,3cに供給する電流を制御し、各LED2a,2b,3a,3b,3cの明るさを制御することも可能である。
【0052】
各LEDハイ/ロウ切替え用フォトカプラ104a,104b,104c,104d及びLEDオン/オフ用フォトカプラ105の各外部電源側の電源供給回路はアース接地(GNDA)されている。一方、各出力端子101b,101d,101f,101hと、各DC/DCコンバータ103a,103b,103c,103dと、各LEDハイ/ロウ切替え用フォトカプラ104a,104b,104c,104d及びLEDオン/オフ用フォトカプラ105の各LED照明部2,3側の電源供給回路は、電源供給部100が収納された金属製ケースに接続されてフレーム接地(GNDB)されている。
【0053】
このように、各LEDハイ/ロウ切替え用フォトカプラ104a,104b,104c,104d及びLEDオン/オフ用フォトカプラ105において、各外部電源側の電源供給回路はアース接地(GNDA)、各LED照明部2,3側の電源供給回路はフレーム接地(GNDB)という異なった接地構成にして、各フォトカプラ104a,104b,104c,104d,105の各外部電源側と各LED照明部2,3側の電気的分離をより確実に保証し、外部電源である商業電源電圧が直接的に各LED照明部に印加されることを阻止して、各LED照明部2,3が過電圧で損傷しないように、万全の安全対策を施している。
【0054】
図6は十二指腸内視鏡21の遠位端に搭載するLED組立体の一例を示す。図6では十二指腸内視鏡21の先端部に配置したLED照明部22は3個のLED22a,22b,22cからなる。23はCCDカメラを示し、24は作業チャンネルを示す。25はLEDのカバーガラス、26はPCBであり、上述のPCB7と同一構成である。
【0055】
図7は気管支内視鏡の遠位端に搭載するLED組立体を示す。この図7では単一LEDのLED照明部32,33が配置されている。34はCCDカメラ、35は器具を挿入する作業チャンネルを示す。36はLED照明部32,33を搭載した特別仕様で上述のPCB7と同一構成のPCB、37はLEDのカバーガラスである。
【0056】
図8は小径光ファイバー内視鏡に設けるLED組立体を示す。この図8で42は上述のPCB7と同一構成のPCB46上に搭載した単一LEDからなるLED照明部、43は画像捕捉用の光ファイバー束、44は器具を挿入できる作業チャンネル、45はLEDのカバーガラスである。
【0057】
図9はPCB上の複数のLEDの配置例を示す。この図9で51及び52は、ヒートシンクとしての構造を有する上述のPCB7と同一構成のPCB53に搭載されているLED照明部である。黒く塗りつぶした部分54はLED組立体に防水性を与える樹脂で、この中に前記LED照明部51,52およびPCB53が配置されている。また、55はLED組立体のカバーガラス、56,57はLED照明部51,52に繋がる給電線である。
【0058】
なお、図示してはいないが、体内腔を特定波長の光で観察できるようにするため、スイッチで特定の有色LEDを選択可能に構成すれば、それに応じた当該対象物照明用の光が発光される。また、各LED照明部2,3,22,32,33,42,51,52からいくらかの熱が発生するが、その熱はLED照明部2,3,22,32,33,42,51,52を搭載するのに使われるPCB7,26,36,46,53によって吸収される。
【0059】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的思想の範囲内で、多くの設計変更が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の体内腔の照明及び治療に供するためのLED組立体を内蔵し、該LED組立体が内視鏡の軟性チューブ遠位端に支持された内視鏡であって、
前記軟性チューブの該遠位端がLED組立体、CCDカメラ若しくは画像ガイド束、及び治療用器具を挿入するための作業チャンネルを含み、
前記LED組立体が、ヒートシンクとしての構造を有するプリント回路基板とこのプリント回路基板上に搭載されたLED照明部とからなり、
前記LED照明部には、外部電源と繋断可能に接続するための繋断接続手段と電圧調整手段と過電流遮断手段を具えた電源供給部から前記LED照明部に適した給電を行なう
ことを特徴とするLED組立体を内蔵した内視鏡。
【請求項2】
前記LED組立体が、高い熱伝導性を有するプリント回路基板と、このプリント回路基板上に搭載された複数のLED照明部とからなる
ことを特徴とする前記請求項1に記載のLED組立体を内蔵した内視鏡。
【請求項3】
前記電源供給部は、繋断接続手段であるフォトカプラと電圧調整手段であるDC/DCコンバータと過電流遮断手段であるヒューズとを備えた電源供給回路を有する
ことを特徴とする前記請求項1または請求項2に記載のLED組立体を備えた内視鏡。
【請求項4】
前記電源供給回路は、LED照明部ごとに設け、対象となるLED照明部に適した電源電圧を供給するよう構成した
ことを特徴とする前記請求項3に記載のLED組立体を備えた内視鏡。
【請求項5】
前記フォトカプラの外部電源側の電源供給回路の接地と、前記フォトカプラのLED照明部側の電源供給回路の接地を、相対的にアース接地とフレーム接地とに区別して、前記電源供給回路におけるフォトカプラの外部電源側とLED照明部側の電気的分離を保証し、外部電源電圧が直接的にLED照明部に印加されないように構成した
ことを特徴とする前記請求項3または請求項4に記載のLED組立体を備えた内視鏡。
【請求項6】
前記LED照明部は複数の有色LEDからなり、特定色の光スペクトルを得るよう前記LED照明部を選択して給電する
ことを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のLED組立体を内蔵した内視鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90924(P2013−90924A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231321(P2012−231321)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(512270667)
【Fターム(参考)】