説明

LED電源装置

【課題】LED負荷の開放状態からいきなり負荷が接続されても、許容される最大電流以上の負荷電流が流れないように負荷電流を制限できるLED電源装置を提供すること。
【解決手段】電源電力によって充電された出力コンデンサCに対して並列接続されたLEDの電源装置であって、LEDに直列接続された電流制限抵抗Rと、この抵抗の両端を結ぶスイッチング素子Qと、負荷電流検出用の抵抗Rと、スイッチング素子の制御回路4を備える。制御回路4は、スイッチング素子の切換を行うスイッチング切換手段68と、負荷電流値を監視してその有無によりLEDの接続状態になったことを判定する電流有無判定手段64と、LEDの接続直後の負荷電流値Iと基準値Iを比較して、負荷電流が基準値まで減衰するタイミングを判別する電流比較手段66を有する。スイッチング切換手段68は前記タイミングでスイッチング素子をオン状態に切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED照明器具の電源装置に関し、電源オンの状態でLED負荷を交換する際の負荷電流の制限機能に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの性能が高くなってきており、寿命が長い等の理由で従来の照明器具がLEDを用いた照明器具に置き換えられる状態にある。今後LEDの性能がますます向上していけば、汎用の照明器具分野でLED照明器具がさらに採用されると期待される。
LED照明器具の電源装置としては、回路効率を改善するためにフライバック方式を用いたAD−DC変換回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のLED照明器具は、商用交流電源(AC電源)をダイオードブリッジにより全波整流して直流電圧(DC)にする。そして、直流電圧を所定電圧の直流電力に電力変換してLED負荷に供給するようになっている。特許文献1では、変換回路に設けられたスイッチング素子をオンオフ駆動して、LED負荷側の電圧降下が所定値となるようにオンデューティー(オン幅)をフィードバック制御している。
【0004】
また、特許文献2には、フライバック方式のAD−DC変換回路においてLED照明とスイッチング素子の直列接続が、出力コンデンサに対して並列に接続されたものが開示されている。このスイッチング素子が人の眼に感じない程度の周期でオンオフ駆動することにより、LED照明の調光が行われる。すなわちLEDへの負荷電流をパルス状にして、その波形の平均値で調光を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130438号公報
【特許文献2】WO2009/054290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2の従来のLED照明用の電源装置において、負荷を開放した状態から負荷を接続した状態へ移行した際の、負荷電流の制御システムに関しては、詳細な検討がなされていなかった。
【0007】
LED負荷は、交流電源によって充電される出力コンデンサに並列接続されており、この出力コンデンサから供給される負荷電流によって点灯が維持される。フライバック方式を用いた一段構成のAC−DC変換回路を用いれば、負荷電流の定電流制御を行うことができる。更に、力率を95%以上確保し、かつ、LED負荷に流れる電流のリップルを小さく抑えようとする場合には、フライバック・トランスの二次側の出力コンデンサの容量を大きくする必要がある。
【0008】
LED負荷は、白熱電球や熱陰極蛍光ランプ等と異なって加熱時間を必要とするフィラメントが存在しないので、フル発光までの立ち上がり時間が非常に短い。しかし、LEDに過大な負荷電流が流れると、LEDの発光結晶自体が変形して発光効率が低下してしまう。
【0009】
汎用の照明器具としてLED照明が普及すれば、電源装置からLED負荷を取り外したり、電源装置にLED負荷を取り付けたりする作業が増える。LED負荷を交換する際、従来の白熱電球のように、LED負荷へ負荷電流が供給されている状態でLED負荷のみを取り外したり、LED負荷を取り付けるタイミングですぐに負荷電流が流れたりする状況が発生し得る。
【0010】
フライバック方式のAD−DC変換回路において、交流源電力により出力コンデンサが充電状態にある時に、LED負荷が取り外される(負荷開放状態)と、電源装置で許容される最大電圧が出力コンデンサに印加されて、出力コンデンサがフル充電の状態になる。その状態でLED負荷をいきなり接続する(負荷接続状態)と、許容される最大電流を超える負荷電流がLEDに瞬時に流れ、発光効率が低下してしまうとともに、LEDにダメージを与えてその寿命が著しく短くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、交流電源電力により出力コンデンサがフルに充電されている状態で、LED負荷の開放状態からいきなり負荷が接続されたとしても、許容される最大電流以上の負荷電流が流れないように負荷電流を制限してLED負荷を保護することができ、かつ、負荷電流が安定した後は、負荷電流を制限しない状態で高い効率の点灯を維持できるLED電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明者は、LED負荷に対しては、電流制限抵抗を常時設けると、不必要な電力ロスを増大させてしまうため、負荷を開放状態から接続状態に移行する前後だけ、所望の電流制限抵抗で過大な負荷電流を制限すれば、LED照明の優れた照明特性を維持しつつ、LED照明を保護できることに着目し、そのような制御システムを構築することに取り組んだ。本発明者が鋭意検討を進めた結果、出力コンデンサに対して、LED負荷と電流制限抵抗とを直列接続し、かつ、電流制限抵抗の両端をスイッチング素子で結んで、このスイッチング素子の切換えにより、所望の期間では電流制限抵抗の両端を短絡する制御システムを用いれば、LED照明の保護と照明特性の発揮を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係るLED電源装置は、電源電力によってコンデンサを充電し、該コンデンサに対して並列接続されたLED負荷に負荷電流を供給するLED電源装置であって、LED負荷に直列に接続されて負荷電流を制限する電流制限抵抗手段と、前記電流制限抵抗手段の両端を結ぶスイッチング素子と、前記コンデンサからLED負荷に流れる負荷電流値を検出する負荷電流検出手段と、前記スイッチング素子のオンオフ切換を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、以下のスイッチング切換手段、電流有無判定手段および電流比較手段を有することを特徴とする。
【0014】
前記スイッチング切換手段は、該電源装置からLED負荷が取り外された状態では、前記スイッチング素子をオフ状態で維持する。前記電流有無判定手段は、前記負荷電流値を監視して負荷電流の有無によってLED負荷が接続されたことを判定する。また、前記電流比較手段は、LED負荷の接続直後に前記電流制限抵抗手段に流れる負荷電流値と基準値とを比較して、負荷電流値が基準値よりも高い状態から基準値まで減衰するタイミングを判別する。そして、前記スイッチング切換手段は、前記タイミングでスイッチング素子をオン状態にして前記電流制限抵抗手段の両端を短絡させるのである。
【0015】
また、上記のように負荷電流の基準値(I)を用いてスイッチング切換を行う場合ではなく、一定時間(t)経過したらスイッチング切換を行うようにしてもよい。すなわち、本発明に係るLED電源装置の制御手段は、以下のスイッチング切換手段および電流有無判定手段を有することを特徴とする。
【0016】
前記スイッチング切換手段は、該電源装置からLED負荷が取り外された状態では、前記スイッチング素子をオフ状態で維持する。また、前記電流有無判定手段は、前記負荷電流値を監視して負荷電流の有無によってLED負荷が接続されたことを判定する。そして、前記スイッチング切換手段は、LED負荷の接続が判定されたら、前記スイッチング素子をオフ状態のままにして負荷電流を前記電流制限抵抗手段に一定時間流し、該一定時間経過後、前記スイッチング素子をオン状態にして前記電流制限抵抗手段の両端を短絡させるのである。
【0017】
さらに、本発明のLED照明器具では、前記電流有無判定手段がLED負荷の開放(非接続)状態を判定する機能を有することが好ましい。すなわち、前記電流有無判定手段は、該電源装置からLED負荷が取り外された状態を、負荷電流の有無によって判定する。この判定によって、前記スイッチング切換手段が、前記スイッチング素子をオン状態で維持するとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のLED電源装置によれば、電流制限抵抗手段とスイッチング素子の並列接続回路がLED負荷に対して直列に接続されている。そして、LED負荷の開放状態でいきなり負荷が接続された場合には、一定期間だけスイッチング素子のオフ状態を維持して、過大な負荷電流が瞬時にLED負荷に流れ込むことを防ぐことができる。また、一定期間の後は、スイッチング素子をオン状態に切り替えて、電流制限抵抗手段を介さずに負荷電流をLED負荷に流すことができる。このようにLED負荷を開放状態から接続状態に移行する前後だけ、電流制限抵抗で過大な負荷電流を制限すれば、LED照明の優れた照明特性を維持しつつ、過電流による発光結晶の変形を防いでLED照明を確実に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかるLED電源装置の全体回路図である。
【図2】前記LED電源装置の制御回路のブロック図である。
【図3】前記LED電源装置においてLED負荷の開放状態から接続状態に移行した場合に負荷電流を制限する処理のシーケンスフロー図である。
【図4】前記LED電源装置において負荷開放状態から負荷接続状態への移行における負荷電流の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。図1に本実施形態に係るLED照明器具の全体構成を示す。LED照明器具は、交流電流を用いて直流電流を生成する直流電源装置1、および、直流電源装置1から負荷電流を供給されて点灯するLED負荷(以降LEDと示す)を有して構成されている。
【0021】
本発明のポイントとなる直流電源装置1の制御システムに関して詳しく説明する。直流電源装置1は、図1に示すように、ダイオードブリッジなどで構成される全波整流回路DBと、LEDに対して並列接続された出力コンデンサC(電解コンデンサ)と、全波整流回路DBの後段に接続され整流電流を電力変換して出力コンデンサCを充電する充電回路2と、この充電回路2を制御する制御手段4とを有する。充電回路2は、フライバック・コンバータと呼ばれ、出力コンデンサCを介して一定電流をLEDに供給する。また、充電回路2は、力率改善回路としても機能し、全波整流回路DBに入力される交流電流を歪みのない正弦波に整形することができる回路である。
【0022】
充電回路2は、具体的にバイパスコンデンサCと、フライバック・トランスTと、充電用スイッチング素子Qと、ダイオードDとを有する。バイパスコンデンサCは、全波整流回路DBの出力端同士を結ぶもので、全波整流回路DBからの整流電流を部分平滑するため、および、充電用スイッチング素子Qのオンオフ駆動により断続された電流の影響がAC電源側に及ぶことを防止するために設けられている。トランスTは、全波整流後の整流電圧Vを一次電圧として二次電圧を出力コンデンサCに印加するように設けられている。
【0023】
充電用スイッチング素子Qは、トランスTの一次巻線T1aに直列接続されていて、オンオフ駆動により二次巻線T1bに二次電圧を誘起させる。充電用スイッチング素子Qのドレイン側端子は、一次巻線T1aに接続され、Qのソース側端子は、全波整流回路DBの負極端子側であるグランドラインに接続されている。スイッチング素子QにはNチャネルのエンハンスメント形のMOSFETを使用する。制御回路4に設けられている駆動回路14からスイッチング素子Qのゲートに駆動電流が供給されてゲート電圧が生じると、ドレイン−ソース間に電流が流れる。この状態をスイッチング素子Qのオン状態という。一方、ゲートに駆動電流が供給されず、ドレイン電流が流れない状態をオフ状態という。ダイオードDは、二次巻線T1bに直列接続されて二次電流を整流し、整流後の二次電流を出力コンデンサCの正極に供給する。
【0024】
充電回路2にはノイズ除去回路3が設けられている。ノイズ除去回路3は、ダイオードDおよびノイズ除去コンデンサCの直列回路と、抵抗Rとを有して構成されている。直列回路(DおよびC)は、トランスT1の一次巻線の両端子を結ぶように接続されている。ここで、ダイオードDのアノード側端子は、一次巻線T1aと充電用スイッチング素子Qの接続点につながれ、カソード側端子はノイズ除去コンデンサCに接続される。ノイズ除去コンデンサCおよび抵抗Rは並列回路を形成している。
【0025】
充電回路2は以上のように構成され、出力コンデンサCに整流電流に基づくエネルギーを蓄積する。そして出力コンデンサCに蓄積されたエネルギーによってLEDに負荷電流Iが供給されるようになっている。この充電回路2は本発明の充電手段に相当する。
【0026】
出力コンデンサCの負極側とLEDとの結線上には、LEDに流れる負荷電流Iを検出するための抵抗Rが配設されている。この抵抗Rが本発明の負荷電流検出手段を構成する。
【0027】
制御回路4は、マイクロコンピュータ(CPU)と、負荷電流Iの検出用のADコンバータと、充電用スイッチング素子Qに駆動電流を供給するFET駆動回路と、ROMおよびRAMを有し、充電用スイッチング素子Qの駆動制御システムを構築している。ADコンバータにより、負荷電流Iの瞬時値の絶対値がアナログデータとして検出される。これがCPUで認識可能なデジタルデータ(数値)に変換され、CPUに向けて出力される。
【0028】
CPUでは、例えば、全波整流後の電圧の分圧値に基づいて、スイッチング周期を決定するとともに、抵抗Rを介して検出されるLEDの負荷電流値Iに基づいてオン幅(オン状態の時間)を決定する。CPUは、決定されたスイッチング周期とオン幅の指令信号をスイッチング素子Q用のMOSFET駆動回路に送る。Q用の駆動回路は、指令信号に基づく駆動電流をQへ供給し、これをオンオフ駆動させる。
【0029】
制御回路4は、充電用スイッチング素子Qを駆動させることにより、LEDに流れる電流の定電流制御を行ないつつ力率改善制御も同時に実行するように充電用スイッチング素子Qのスイッチングを高周波数制御する。すなわち、制御回路4は、検出された負荷電流値Iが予め設定されている電流値に近づくように充電用スイッチング素子Qのスイッチングのオン幅を制御する。充電用スイッチング素子Qのオン状態では、全波整流電流がトランスTの磁性体に磁場のエネルギーとして蓄積され、オフ状態では二次側に誘起される二次電圧に基づいて電流が流れ、出力コンデンサCが充電される。制御回路4によるオン幅の調整により、負荷電流Iの定電流制御が実行され、LEDの電流値を安定させている。
【0030】
また、制御回路4は、交流電源ACから流れ込む入力電流の電流波形を正弦波に近似させるために、充電用スイッチング素子Qのスイッチングの周期(スイッチングのオン幅+スイッチングのオフ幅)を例えば、整流電圧の瞬時値に比例するように制御することで力率改善を行なっている。
【0031】
<LEDの開放状態から接続状態に移行した際の負荷電流制御システム>
本発明で特徴的なことは、図1に示すように負荷電流を制限する電流制限抵抗手段として抵抗RをLEDに対して直列接続し、この抵抗Rの両端を結ぶように電流制限解除用スイッチング素子Qを設けた。さらに、上記の制御回路4をベースとしてCPU6に更に、図2のブロック図で示す負荷電流取得手段62、負荷電流の有無判定手段64、負荷電流の比較手段66およびスイッチング切換手段68を設けて、LEDの開放状態から接続状態に移行した際に過大な負荷電流がLEDに瞬時に流れてしまうことを防止する負荷電流制御システムを構築した点にある。
【0032】
負荷電流取得手段62は、ADコンバータ8から負荷電流Iの瞬時値を取得する。電流有無判定手段64は、負荷電流取得手段62により取得された負荷電流Iの瞬時値に基づいて、LEDに負荷電流が流れているかどうかを判定する。電流比較手段66は、電流有無判定手段64によって負荷電流が流れていると判定された場合に、負荷電流Iの瞬時値と予め設定された基準値Iとを比較する。基準値Iには、RAM等に保持された値を用いる。その比較結果に基づき、負荷電流Iが基準値Iまで減衰したかどうかを判断する。
【0033】
スイッチング切換手段68は、電流比較手段66が負荷電流Iの減衰を判断した場合に、電流制限解除用スイッチング素子Qをオフ状態からオン状態に切り替える指令信号をFET駆動回路12に出力する。FET駆動回路12は指令信号に従って、スイッチング素子Qのオン・オフ状態を切換える。
【0034】
図3のシーケンスフロー図を用いて、CPU6の動作を具体的に説明する。電源装置1がオン(S0)で出力コンデンサCの充電を実行中に、LEDが開放状態になるとスイッチング素子Qがオフ状態に切換えられる(S1)。この動作は、例えば、電源装置1がオンの時にはLEDが接続されており(接続状態)、LED点灯動作中に、LEDが取り外された場合(開放状態)、つまり、交換作業などの何らかの要因でLEDの接続状態から解放状態にいきなり移行した場合に、スイッチング素子Qが自動的にオンからオフ状態に切替わることを意味する。
【0035】
次に電流有無判定手段64により負荷電流Iの有無が判定される(S2)。LEDが取り外された状態では、負荷電流無し、と判定され、負荷電流有りと判定されるまでの間、S2の判定処理が繰り返し実行される。ここでLEDが取り付けられて接続状態になると、出力コンデンサCからの負荷電流IがLEDおよび抵抗Rを流れるから、電流有無判定手段64が負荷電流有りと判定する。なお、このS2の処理は、スイッチング素子Qがオフ状態である場合のみ実行される。
【0036】
次に電流比較手段66により負荷電流値Iが、基準値Iと比較される(S3)。LEDの接続状態になった直後の負荷電流Iは、抵抗Rによる制限を受けるが、通常の点灯状態での負荷電流よりも僅かであるが瞬時に増加する。この接続直後の負荷電流Iのピーク値およびピーク値からの減衰速度は、抵抗Rの抵抗値によって決定される。つまり、抵抗値が大きいほどピーク値は小さくなるが、減衰速度は遅くなって負荷電流の減衰カーブはなだらかになる。
【0037】
電流比較手段66は、負荷電流値Iと基準値Iを比較して、負荷電流Iが基準値Iより大きい場合は、S3の比較処理を繰り返し実行する。そして負荷電流がピーク値から減衰していく過程で、負荷電流値Iが基準値Iまで減衰すると、スイッチング素子Qをオフ状態からオン状態に反転して、抵抗Rを短絡させる(S4)。その後、再びLEDが開放状態になるまで通常の点灯動作が実行される(S5)。
【0038】
なお、本実施形態ではLEDの開放状態が自動的に検知されるようになっている。すなわち、スイッチング素子Qがオン状態であるときは、常時、電流有無判定手段64が負荷電流を監視している。そして、電流有無判定手段64が負荷電流無しの判定結果を一定時間継続して出力することを条件に、スイッチング素子Qがオンからオフ状態に切換わるようになっている。このようにすれば、LEDがいきなり取り外された場合などに、自動的に抵抗Rを短絡させて、次にLEDが接続された場合に備えることができる。
【0039】
以下、図4を用いて、本発明に係る電流制限抵抗Rの具体的な抵抗値の最適値について説明する。同図は、電源装置のオン状態で、負荷開放状態から負荷接続状態に移行した場合の負荷電流Iの時間変化(ピーク値および減衰カーブ)を示す特性図である。発明者は、図1に示す直流電源回路1の構成をベースにして、本発明の負荷電流制御処理を実行した。ここで、LED照明の駆動電流を0.6Aとして、この電流値を本発明の基準値Iとした。また、抵抗Rの抵抗値を0(無し)〜33Ωの範囲で5パターンを選択して、それぞれの抵抗値での負荷電流の変化をシミュレーションした。その結果を表1に示す。なお、ピーク電流値は、LEDを接続した直後の最大電流値である。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果によれば、本発明の電流制限制御システムを用いることで、負荷電流のピーク値を許容最大電流以下まで抑えることができることが判る。従って、少なくとも、電流制限抵抗Rの抵抗値は、LEDを接続した直後の最大電流がLEDの許容最大電流以下となるように設定する。
【0042】
また、図4のグラフで示すように、スイッチング素子Qをオンにして抵抗Rを短絡させた直後にも、僅かであるが負荷電流Iが一時的に増えることが判る。この突出電流は0.7A未満であり、抵抗Rの抵抗値を零(抵抗なし)とした場合のピーク値(7.3A)に対して非常に小さい。このような突出電流が生じることから、電流制限抵抗Rの抵抗値は、LEDを接続した直後の最大電流がLEDの許容最大電流以下となるとともに、最大電流がスイッチング素子Qをオンした直後の突出電流と同じ程度になるように設定すると、さらに良い。例えば、図4では抵抗値が33Ωの時が最適となる。LEDを接続した直後の最大電流は0.67Aであり、この値はスイッチング素子Qをオンした直後の突出電流とほぼ同じになっている。
【0043】
LEDの結晶構造には、もともと構造欠陥(結晶としての不完全性や欠損)が多く存在するため、結晶構造が過電流により変形すると、発光効率が低下してしまうという弱点がある。さらに、照明用のLEDが、過電流に対する余裕がほとんどない状態にまで、最大限の性能を発揮するように設計されている場合には、過電流を必要な時だけ制限できるシステムが必要になる。本発明の負荷電流制御システムを用いれば、電源がオンである状態でLED負荷を接続した場合にLEDへの過電流を制限することができるから、過大な負荷電流からLEDを確実に保護することができる。
【0044】
本実施形態でのスイッチング素子Qは、電流制限解除用として使用する他に、DUTY調光用としても使用できる。すなわち、通常の点灯状態でスイッチング素子Qを高速にオンオフ駆動させる。オン時は抵抗Rを短絡する負荷電流(短絡電流と呼ぶ)が流れる。オフ時は、抵抗Rにより制限された負荷電流(制限電流と呼ぶ)が流れる。制御回路4によりスイッチング素子Qのオン幅を増減させれば、短絡電流と制限電流の総和である負荷電流量をオン幅に応じた値に調整できるので、これによってLED照明のDUTY調光が可能となる。
【0045】
なお、電源オン状態でLED負荷を開放した際、充電回路2による出力コンデンサCの印加電圧は許容最大電圧以下に電圧制御されるので、出力コンデンサCに過大な電圧が掛かる心配は無い。また、電流的には、出力コンデンサCが一時的な大電流の充放電に耐えられるようになっており、本発明の負荷電流制御システムを用いても出力コンデンサが破損などすることは無い。
【0046】
本実施形態では、負荷電流の基準値(I)を用いてスイッチング切換を行う場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば一定時間(t)経過したらスイッチング切換を行うようにしてもよい。すなわち、変形例に係る制御回路としては、スイッチング切換手段および電流有無判定手段を有し、スイッチング切換手段はLED負荷の開放状態においてスイッチング素子をオフ状態で維持する。また、電流有無判定手段は、負荷電流値を監視して負荷電流の有無によってLED負荷が接続されたことを判定する。そして、スイッチング切換手段は、スイッチング素子をオフ状態のままにして負荷電流を電流制限抵抗手段に一定時間tだけ流し、この一定時間t経過後、スイッチング素子をオン状態にして電流制限抵抗手段の両端を短絡させるようになっている。このようにすれば、前述の実施形態と同様の効果を発揮できる。
【符号の説明】
【0047】
1 直流電源装置(LED電源装置)
2 充電回路(充電手段)
4 制御回路(制御手段)
6 CPU
64 電流有無判定手段
66 電流比較手段
68 スイッチング切換手段
AC 交流電源
バイパスコンデンサ
ノイズ除去コンデンサ
出力コンデンサ(本発明に係るコンデンサ)
DB 全波整流回路(ダイオードブリッジ)
ダイオード
LED LED負荷
フライバック・トランス
充電用スイッチング素子
電流制限解除用、兼、DUTY調光用スイッチング素子(本発明に係るスイッチング素子)
抵抗(負荷電流検出手段)
抵抗(電流制限抵抗手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電力によってコンデンサを充電し、該コンデンサに対して並列接続されたLED負荷に負荷電流を供給するLED電源装置であって、
LED負荷に直列に接続されて負荷電流を制限する電流制限抵抗手段と、
前記電流制限抵抗手段の両端を結ぶスイッチング素子と、
前記コンデンサからLED負荷に流れる負荷電流値を検出する負荷電流検出手段と、
前記スイッチング素子のオンオフ切換を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
該電源装置からLED負荷が取り外された状態では、前記スイッチング素子をオフ状態で維持するスイッチング切換手段と、
前記負荷電流値を監視して負荷電流の有無によってLED負荷が接続されたことを判定する電流有無判定手段と、
LED負荷の接続直後に前記電流制限抵抗手段に流れる負荷電流値と基準値とを比較して、負荷電流値が基準値よりも高い状態から基準値まで減衰するタイミングを判別する電流比較手段と、を有し、
前記スイッチング切換手段は、前記タイミングでスイッチング素子をオン状態にして前記電流制限抵抗手段の両端を短絡させることを特徴とするLED電源装置。
【請求項2】
電源電力によってコンデンサを充電し、該コンデンサに対して並列接続されたLED負荷に負荷電流を供給するLED電源装置であって、
LED負荷に直列に接続されて負荷電流を制限する電流制限抵抗手段と、
前記電流制限抵抗手段の両端を結ぶスイッチング素子と、
前記コンデンサからLED負荷に流れる負荷電流値を検出する負荷電流検出手段と、
前記スイッチング素子のオンオフ切換を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
該電源装置からLED負荷が取り外された状態では、前記スイッチング素子をオフ状態で維持するスイッチング切換手段と、
前記負荷電流値を監視して負荷電流の有無によってLED負荷が接続されたことを判定する電流有無判定手段と、を有し、
前記スイッチング切換手段は、LED負荷の接続が判定されたら、前記スイッチング素子をオフ状態のままにして負荷電流を前記電流制限抵抗手段に一定時間流し、該一定時間経過後、前記スイッチング素子をオン状態にして前記電流制限抵抗手段の両端を短絡させることを特徴とするLED電源装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のLED電源装置において、
前記電流有無判定手段は、該電源装置からLED負荷が取り外された状態を、負荷電流の有無によって判定し、
前記スイッチング切換手段は、LED負荷の取り外しが判定されたら、前記スイッチング素子をオン状態で維持することを特徴とするLED電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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