説明

LED電球

【課題】LED素子からの放射方向の光量を維持しつつ、側方への光量を増やすことができ、更に低コストにて側方の光量が確保し得るLED電球を提供する。
【解決手段】複数のLED素子1が面実装されたLEDモジュール6を備えるLED電球L1において、LEDモジュール6における各LED素子1の実装面の中心に仮想的に立てた垂線とグローブ5との仮想的な交点Pを含む予め設定された範囲のグローブ5の部分5Aが透明とされており、交点Pからみて当該範囲より外側のグローブ5の周縁部に、各LED素子1からの放射光の一部を散乱により側方Sに導く側方導光部2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLED電球の技術分野に属し、より詳細には、工事現場等で使用されるLED電球の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー等の観点から、従来のいわゆる白熱電球に変わって、発光素子としてLED(Light Emitting Diode)を用いたLED電球が、主として家庭用として一般化しつつある。家庭用のLED電球は、形状としては口金とグローブとを備える一般の白熱電球と同様であり、通常の家庭用の交流100ボルトで用いられるものである。このようなLED電球としては、例えば下記特許文献にそれぞれ開示されているものがある。
【0003】
一方、従来のLED電球によると、LED素子が有する放射光の直進性に起因して、LED電球の前方(照明として天井に配置される場合にはその直下)では所望の照度が得られるものの、LED電球に対して側方における照度が不足して暗くなるという問題点があった。
【0004】
この問題点に対し、例えば下記特許文献2に記載の発明では、LED素子が面実装されたLEDモジュールを支持する基台部分を階段状に形成し、その階段の側面部分に反射鏡を設けて下段に設けられたLED素子からの放射光を側方へ反射させる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−171104号公報
【特許文献2】特開2010−86946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献2に記載された発明では、LED電球が構造的に複雑となり、製造工程の複雑化及びそれに伴う価格の高騰を招く恐れがあるという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、LED素子からの放射方向の光量を維持しつつ、側方への光量を増やすことができ、更に低コストにて側方の光量が確保し得るLED電球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のLED素子が面実装されたLEDモジュールと、前記LEDモジュールが装着された基体部と、前記LEDモジュールを覆って前記基体部に取り付けられ、各前記LED素子からの放射光を外部に出射するグローブと、前記基体部内に備えられ、各前記LED素子を点灯する点灯回路と、前記基体部の前記グローブの反対側の端部に設けられ、前記点灯回路と電気的に接続された口金と、を備え、前記LEDモジュールにおける各前記LED素子の実装面の中心に立てた垂線と前記グローブとの交点を含む予め設定された範囲の前記グローブの部分が透明とされており、前記交点からみて当該範囲より外側の前記グローブの周縁部に、前記放射光の一部を側方に導く側方導光部が形成されている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、各LED素子の放射方向のグローブの部分が透明とされており、それ以外のグローブの周縁部に側方導光部が形成されているので、本来の放射方向の光量を維持しつつ、側方への光量を増やすことができる。またグローブに側方導光部を形成することで側方への光量が確保し得るので、低コストにて側方の光量が確保し得る。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のLED電球において、前記側方導光部は、前記一部を前記側方に散乱させる散乱部であるように構成される。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、側方導光部が放射光の一部を側方に散乱させる散乱部であるので、簡易な構成で側方への光量を確保することができる。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のLED電球において、前記範囲は、各前記LED素子のそれぞれから前記実装面に対して立てた垂線と前記グローブとの交点が全て含まれる前記グローブの範囲であるように構成される。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加えて、グローブの透明部分の範囲が、各LED素子のそれぞれから実装面に対して立てた垂線とグローブとの交点が全て含まれる範囲であるので、LED電球としての本来の放射方向である前方の光量を十分に確保することができる。
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のLED電球において、前記側方導光部は、当該側方導光部が形成されるべき前記グローブの前記周縁部に塗布されたビーズにより形成されている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、側方導光部が形成されるべきグローブの周縁部に塗布されたビーズにより当該側方導光部が形成されているので、LED電球の側方への光量が十分に確保できる。
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のLED電球において、前記側方導光部が形成されるべき前記グローブの前記周縁部の表面を凹凸形状とすることにより、当該側方導光部が当該周縁部に形成されている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、側方導光部が形成されるべきグローブの前記周縁部の表面を凹凸形状とすることにより、当該側方導光部が当該周縁部に形成されてので、側方への光量が十分に確保し得るLED電球を簡易な工程で製造することができる。
【0018】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のLED電球において、各前記LED素子が前記実装面の中心を中心とした放射状に配置されている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、各LED素子がLEDモジュールの実装面の中心を中心として放射状に配置されているので、側方への光量が十分に確保し得る。
【0020】
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のLED電球において、各前記LED素子が前記実装面の中心を中心とした方形状に配置されている。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、各LED素子がLEDモジュールの実装面の中心を中心とした方形状に配置されているので、側方への光量が十分に確保し得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各LED素子の放射方向のグローブの部分が透明とされており、それ以外のグローブの周縁部に側方導光部が形成されているので、本来の放射方向の光量を維持しつつ、側方への光量を増やすことができる。またグローブに側方導光部を形成することで側方への光量が確保し得るので、低コストにて側方の光量が確保し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のLED電球の構成を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図2】第2実施形態のLED電球の構成を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、主として工事現場で用いられるLED電球に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0025】
(I)第1実施形態
初めに、本発明に係る第1実施形態について図1を用いて説明する。なお図1は第1実施形態のLED電球の構成を示す図であり、図1(b)においては、右半面を側面透視図としている。
【0026】
図1に示すように、第1実施形態に係るLED電球L1は、複数のLED素子1が面実装されたLEDモジュール6と、LEDモジュール6が装着された基体部3と、LEDモジュール6を覆って基体部3に取り付けられ、各LED素子1からの放射光を外部に出射するグローブ5と、基体部3内に備えられ、各LED素子1を点灯する点灯回路4と、基体部3のグローブ5の反対側の端部に設けられ、点灯回路4と電気的に接続された口金7と、を備えている。このときのグローブ5は、例えばアクリル樹脂により形成されている。またLEDモジュール6においては、図1(a)に示すように十六個のLED素子1が方形状に配置されている。点灯回路4は従来と同様の回路構成により、各LED素子1を点灯させる。この場合の点灯回路4は、工事現場における感電防止の観点から、例えば24ボルトの電源により駆動される。また、例えば非破壊検査を行う工事現場で使用されるLED電球L1では、その発光色は昼光色(白色)であることが望ましい。
【0027】
そして、第1実施形態に係るLED電球L1においては、LEDモジュール6における各LED素子1の実装面の中心に仮想的に立てた垂線とグローブ5との仮想的な交点Pを含む予め設定された範囲(グローブ5の天頂部を含む範囲)のグローブ5の部分5Aが、透明とされている。この部分5Aの範囲は、例えば各LED素子1のそれぞれからLEDモジュール6の実装面に対して仮想的に立てた垂線とグローブ5との交点が全て含まれるグローブ5の範囲とされる。この部分5Aの範囲は、後述する側方導光部2の高さhを変えることにより、LED電球L1が使用される場所の特性等に応じて、より広く形成したり、より狭く形成したりすることが可能である。
【0028】
一方、第1実施形態のLED電球L1においては、グローブ5上の交点Pからみて部分5Aより外側のグローブ5の周縁部に、各LED素子1から出射された放射光の一部を側方Sに導く側方導光部2が形成されている。この側方導光部2は、放射光の一部を側方Sに散乱させる散乱部としての機能を有し、より具体的には、側方導光部2が形成されるべきグローブ5の周縁部の表面に塗布された微細なビーズにより当該側方導光部2が形成されている。このビーズは、例えば白色であることが望ましい。なおこの他に例えば、側方導光部2が形成されるべきグローブ5の周縁部の表面に付けられた多数の微細キズにより、当該側方導光部2が形成されていてもよい。更に例えば、側方導光部2が形成されるべきグローブ5の周縁部の表面に、例えばいわゆる切り子模様を形成するように多数付けられたスジにより、当該側方導光部2を形成するように構成することもできる。この場合、グローブ5の表面における当該周縁部と部分5Aとの境界線と、切り子模様を形成するグローブ5の表面上のスジと、がなす角度を変えることにより、各LED素子1からの放射光の側方Sへの散乱の態様や側方Sでの明るさが制御し得ることを、本願の発明者らは確認済みである。このような側方導光部2が形成されていることにより、各LED素子1から出射された放射光は、本来の出射方向である前方Mの方向に透明な部分5Aを透過して出射されると共に、散乱部である側方導光部2により散乱されて側方Sへも出射される。本発明の発明者らによる実験では、出力1ワットのLED素子1を図1(a)に例示するように十六個配置した場合、LED電球L1の前方1メートルの位置で116ルクスの照度を得、一方、側方においては11.5ルクスの照度を得ることが確認されている。
【0029】
なお、第1実施形態に係るLED電球L1の基体部3の外周には、複数のフィン状の放熱部8が形成されており、この放熱部8によりLEDモジュール6から発せされる熱が効率的に放熱できるようにされている。
【0030】
以上説明したように、第1実施形態に係るLED電球L1によれば、各LED素子1の放射方向のグローブ5の部分5Aが透明とされており、それ以外のグローブ5の周縁部に側方導光部2が形成されているので、本来の放射方向の光量を維持しつつ、側方Sへの光量を増やすことができる。またグローブ5に側方導光部2を形成することで側方Sへの光量が確保し得るので、低コストにて側方Sの光量が確保し得る。
【0031】
更に、側方導光部2が各LED素子1からの放射光の一部を側方Sに散乱させる散乱部であるので、簡易な構成で側方Sへの光量を確保することができる。
【0032】
また、グローブ5の部分5Aの範囲が、各LED素子1のそれぞれから実装面に対して仮想的に立てた垂線とグローブ5との交点が全て含まれる範囲であるので、LED電球L1としての本来の放射方向である前方Mの光量を十分に確保することができる。
【0033】
更にまた、側方導光部2が形成されるべきグローブ5の周縁部に塗布されたビーズにより側方導光部2が形成されている場合には、LED電球L1の側方Sへの光量が十分に確保できる。
【0034】
また、側方導光部2が形成されるべきグローブ5の周縁部に付けられた微細キズ又はスジにより側方導光部2が形成されている場合には、アクリル樹脂により形成されているグローブ5に微細キズ又はスジをつけるだけで側方導光部2が形成できるので、側方Sへの光量が十分に確保し得るLED電球L1を簡易な工程で製造することができる。
【0035】
更に、各LED素子1がLEDモジュール6の実装面の中心を中心とした方形状に配置されているので、側方Sへの光量が十分に確保し得る。
【0036】
(II)第2実施形態
次に、本発明に係る他の実施形態である第2実施形態について、図2を用いて説明する。なお図2は第2実施形態のLED電球の構成を示す図であり、図2(b)においては、右半面を側面透視図としていている。また以下の説明において、第1実施形態に係るLED電球と同様の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0037】
上述した第1実施形態においては、複数のLED素子1は、LEDモジュール6の実装面に方形状に配置されていた。これに対して第2実施形態に係るLED電球L2では、図2(a)に上面図を示すように、LEDモジュール6において八個のLED素子1が、実装面の中心を中心とした放射状に配置されている。この点以外のLED素子1、基体部3、部分5A並びに側方導光部2が形成されたグローブ5、点灯回路4及び口金7の構成は、基本的には第1実施形態に係るLED電球L1と同様であるので、細部の説明は省略する。なお、第2実施形態に係るLED電球L2の基体部3の外部には、第1実施形態に係るLED電球L1における放熱部8のような放熱部は設けられていない。これは、第2実施形態に係るLED電球L2においては、LED素子1の数が少なく、放熱部を設ける必要がないことによる。
【0038】
以上説明した第2実施形態に係るLED電球L2の構成によっても、第1実施形態に係るLED電球L1と同様の効果を奏し得る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上それぞれ説明したように、本発明はLED電球の分野に利用することが可能であり、特に工事現場で用いられるLED電球の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 LED素子
2 側方導光部
3 基体部
4 点灯回路
5 グローブ
5A 部分
6 LEDモジュール
7 口金
8 放熱部
L1、L2 LED電球
P 交点
M 前方
S 側方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED(Light Emitting Diode)素子が面実装されたLEDモジュールと、
前記LEDモジュールが装着された基体部と、
前記LEDモジュールを覆って前記基体部に取り付けられ、各前記LED素子からの放射光を外部に出射するグローブと、
前記基体部内に備えられ、各前記LED素子を点灯する点灯回路と、
前記基体部の前記グローブの反対側の端部に設けられ、前記点灯回路と電気的に接続された口金と、
を備え、
前記LEDモジュールにおける各前記LED素子の実装面の中心に立てた垂線と前記グローブとの交点を含む予め設定された範囲の前記グローブの部分が透明とされており、前記交点からみて当該範囲より外側の前記グローブの周縁部に、前記放射光の一部を側方に導く側方導光部が形成されていることを特徴とするLED電球。
【請求項2】
請求項1に記載のLED電球において、
前記側方導光部は、前記一部を前記側方に散乱させる散乱部であることを特徴とするLED電球。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED電球において、
前記範囲は、各前記LED素子のそれぞれから前記実装面に対して立てた垂線と前記グローブとの交点が全て含まれる前記グローブの範囲であることを特徴とするLED電球。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のLED電球において、
前記側方導光部は、当該側方導光部が形成されるべき前記グローブの前記周縁部に塗布されたビーズにより形成されていることを特徴とするLED電球。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のLED電球において、
前記側方導光部が形成されるべき前記グローブの前記周縁部の表面を凹凸形状とすることにより、当該側方導光部が当該周縁部に形成されていることを特徴とするLED電球。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のLED電球において、
各前記LED素子が前記実装面の中心を中心とした放射状に配置されていることを特徴とするLED電球。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のLED電球において、
各前記LED素子が前記実装面の中心を中心とした方形状に配置されていることを特徴とするLED電球。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−138288(P2012−138288A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290738(P2010−290738)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】