LED駆動回路およびLED駆動方法
【課題】音鳴りを発生させること無く、スムースなLED調光制御を行うことができ、かつ、高効率なLED駆動回路を実現する。
【解決手段】DC/DCコンバータ(L202,Q202,D209A,C212)を用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節するDC調光方式によって調光制御を行う。前記特定の調光度以下の調光度の領域では、DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節するPDM調光方式によって調光制御を行う。
【解決手段】DC/DCコンバータ(L202,Q202,D209A,C212)を用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節するDC調光方式によって調光制御を行う。前記特定の調光度以下の調光度の領域では、DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節するPDM調光方式によって調光制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックコンバータタイプまたはバックブーストコンバータタイプのLED(Light Emitting Diode)駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LED駆動回路として、DC/DCコンバータを用いてLEDに定電流を供給し、この電流値を変化させてLEDの調光制御を行うLED駆動回路が知られている。LEDに定電流を供給する方法として、抵抗などによって出力電流を検出し、所望の電流が流れるよう、電圧フィードバックする方法がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では一般的に10%以下の調光領域において、チラつきが発生する問題がある。
【0003】
これを回避するために、バックコンバータやバックブーストコンバータを使用し、PWM(パルス幅変調)調光により調光を行う方法がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−203988号公報(2002年7月19日公開)
【特許文献2】特開2011−70957号公報(2011年4月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM調光周波数に対して、バックコンバータやバックブーストコンバータの発振周波数が十分高くないと、調光を絞った場合、調光レベルの変化が目に見えてしまいスムースな調光性が失われてしまう。一方、このスムース調光性の問題を回避するためにバックコンバータ、バックブーストコンバータの発振周波数を上げると、スイッチングロスにより、効率が悪化するジレンマがあった。
【0006】
例えば、バックコンバータタイプのLED駆動回路に対して、全灯を100%として、n%刻みの調光を実現しようとした場合、発振周波数は最低でも調光周波数の100/n倍の値が必要となる。例えば、コンバータの発振周波数を200kHzと仮定し、スムースな調光性を得るために1%刻みで調光しようとすれば、調光周波数は2kHzとなる。2kHzは可聴周波数であるため、この場合は電子部品からの音鳴りが危惧される。
【0007】
上記音鳴りを無くすためには、調光周波数を可聴周波数以上とすればよい。しかしながら、1%刻みの調光を実現するには、発振周波数は、可聴周波数上限の20kHzの100倍、すなわち2MHzで発振させることが必要となる。発振周波数をこのような高周波数とすることは、スイッチングロスの著しい増加を招き、現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、音鳴りを発生させること無く、スムースなLED調光制御を行うことができ、かつ、高効率なLED駆動回路を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、前記特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節することで調光制御を行うことができるため、調光度を上げる場合であっても、DC/DCコンバータの発振周波数は増加させずに済む。また、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節することで調光制御を行うため、調光度を上げる場合にはDC/DCコンバータの発振周波数は増加するが、このような調光制御を行う調光領域が全調光領域の一部に限定されているため、発振周波数が増大しすぎることを回避できる。その結果、調光度が最小の場合の発振周波数を、音鳴りを発生しないように可聴周波数(例えば20kHz)以上としても、DC/DCコンバータの最大発振周波数が増大しすぎることは無く、スイッチングロスの増加を抑制できる。
【0011】
また、上記LED駆動回路では、可聴最低調光時の平均発振周波数f(dim.min)、最大調光時の平均発振周波数f(dim.max)、および、最大平均発振周波数f(max)は、f(dim.min)>20kHz、かつ、f(max)>f(dim.max)の関係を満たす構成とすることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、f(dim.min)>20kHzとすることで音鳴りを発生を回避することができる。さらに、f(max)>f(dim.max)とすることで、発熱が大きい調光100%に近い領域での発振周波数が抑えられ、スイッチングロスをより低減することができる。
【0013】
また、上記LED駆動回路では、前記DC/DCコンバータのオン期間を、前記DC/DCコンバータによって生成されるパルス電流の波高値と前記DC/DCコンバータに含まれるインダクタのL値による電流傾きとから決定し、前記DC/DCコンバータのオフ期間をアナログ回路的な手法により決定する構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、コンバータのオン期間・オフ期間が時間的な絶対値で指定されることがなく間接的に決定される。その結果、発振周波数に入力電圧の周期的な電圧変動(脈流)によるわずかな周波数の揺らぎを持つ。このことにより、不要輻射の特定周波数への集中を防止し、コンバータのオン期間とオフ期間とを時間的な絶対値としてマイコンなどから直接的に決定する場合に比べ、輻射ノイズレベルを低減することができる。
【0015】
また、上記LED駆動回路では、前記DC/DCコンバータのオフ期間を調節する機能を有する制御ICを使用し、制御信号であるアナログ信号が、前記制御ICのオフ期間を決定する端子に接続されたエミッタフォロワ回路に入力され、オフ期間を調節することにより、オフ期間を調節する構成とすることができる。
【0016】
また、上記LED駆動回路では、3ステートバッファICを使用し、単一の調光PWM信号源で、DC調光とPDM調光を行う構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のLED駆動回路は、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節することで調光制御を行うことができるため、調光度を上げる場合であっても、DC/DCコンバータの発振周波数は増加させずに済む。また、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節することで調光制御を行うため、調光度を上げる場合にはDC/DCコンバータの発振周波数は増加するが、このような調光制御を行う調光領域が全調光領域の一部に限定されているため、発振周波数が増大しすぎることを回避できる。その結果、調光度が最小の場合の発振周波数を、音鳴りを発生しないように可聴周波数(例えば20kHz)以上としても、DC/DCコンバータの最大発振周波数が増大しすぎることは無く、スイッチングロスの増加を抑制できるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、LED駆動回路の構成を示す回路図である。
【図2】従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の構成と、励磁時の電流の経路とを示す回路図である。
【図3】従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の構成と、転流時の電流の経路とを示す回路図である。
【図4】図2,3に示すLED駆動回路を用いてLEDの駆動を行った場合の、LED駆動電流を示す図である。
【図5】図1に示すLED駆動回路を用いてPDM調光を行った場合の、LED駆動電流を示す図である。
【図6】図1に示すLED駆動回路に使用される、電圧値可変のDC電圧源の構成例を示す回路図である。
【図7】図1に示すLED駆動回路を用いて調光制御を行った場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係を示した図である。
【図8】図7に示す調光制御に対し、DC調光領域で発振周波数の変動をさせないように変更した場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係の一例を示した図である。
【図9】図7に示す調光制御に対し、DC調光領域で発振周波数の変動をさせないように変更した場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係の一例を示した図である。
【図10】3ステートバッファICを用いて、単一の調光PWM信号源でDC調光とPDM調光を実現する回路の構成例を示す回路図である。
【図11】図10の回路において、H/L信号の平均出力電流とPWM信号のオンデューティとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(DC/DCコンバータを用いたLED駆動回路の基本構成)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、バックコンバータタイプ、バックブーストコンバータタイプの両方に関し適用できるが、以降の説明ではバックコンバータタイプに適用した場合を例示する。
【0020】
図2および図3は従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の典型的な構成を示す回路図である。この回路は、STマイクロ社製のL6562を制御ICとして使用した定電流回路を示している。図4は、図2および図3に示すLED駆動回路を用いてLEDの駆動を行った場合の、LEDに流れる電流を示した図である。このLED駆動回路は、インダクタL202、トランジスタQ202、ダイオードD209AおよびコンデンサC212からなるバックコンバータタイプのDC/DCコンバータ(以下、単にコンバータと称する)を備えている。
【0021】
図4中、励磁側と記載された増加直線部は、コンデンサC206に蓄えられている電荷をLEDに供給して発光させる場合の電流を示している。尚、このLED駆動回路は、商用電源からダイオードブリッジを用いた整流回路部によって交流電流を直流化し、この直流電流を平滑コンデンサにて平滑してLEDの駆動電流として用いるものとなっている。但し、図2および図3では、上記整流回路部の図示を省略しており、上記平滑コンデンサにあたるコンデンサC206のみを図示している。
【0022】
コンデンサC206の+端子から、LED負荷、インダクタL202、トランジスタQ202、抵抗R233がこの順で直列に接続されている。抵抗R233の他端は接地されている。尚、図2,3では、3つのLEDが直列に接続されてLED負荷を構成しているが、LEDの数は特に限定されるものではない。LEDの個数が多ければ、複数のLEDを直列に接続したLED列をさらに並列に接続してもよい。
【0023】
図4の励磁側電流が流れている期間は、トランジスタQ202がオンしており、コンデンサC206の+端子よりLED負荷→インダクタL202→トランジスタQ202→抵抗R233→コンデンサC206の−端子(GND)の順に電流が流れる。この励磁側電流は、図2の実線矢印にて示すとおり、L202のインダクタを励磁しながら電流が流れるため、その電流波形は傾き一定の増加直線となる。
【0024】
トランジスタQ202と抵抗233との間のノードには抵抗R232が接続されており、抵抗R232のもう一方の端子は制御ICであるIC201のCS端子に接続されている。これにより、上記励磁側電流は、R233端子で電圧に変換されIC201にて監視される。IC201は、CS端子で検知した電圧が予め設定された電圧に達するとトランジスタQ202をオフする。トランジスタQ202をオフする信号は、IC201のCS端子GDから、抵抗R218を介してトランジスタQ202のゲートに与えられる。
【0025】
トランジスタQ202がオフされると、励磁されたインダクタL202は電流を流し続けようとするが、トランジスタQ202はオフされているので、ダイオードD209A経由で転流する。ダイオードD209Aは、コンデンサ206の+端子とLED負荷との間のノードAと、インダクタL202とトランジスタQ202との間のノードBとを接続するように配置されており、ノードA側にカソード、ノードB側にアノードが接続されている。
【0026】
トランジスタQ202がオフしている状態の電流は、図4に示す転流側電流であり、このときの電流経路は、図3の実線矢印にて示すとおり、インダクタL202→ダイオードD209A→LED負荷→インダクタL202の経路となる。転流側電流は、インダクタL202の起電力により流れる電流であるため、図4中、転流側と記載された減少直線部のとおり、電流波形は傾き一定の減少直線となる。
【0027】
また、IC201のGD端子に接続されている信号線は、抵抗R218の手前のノードCで枝分かれしており、枝分かれした先はダイオードD206のアノードに接続されている。ダイオードD206のカソードには、抵抗R215およびR216と、コンデンサC210およびC209とからなる充放電回路が接続されている。上記充放電回路は、ダイオードD206のカソードとGNDとの間に、直列接続された抵抗R215およびR216と、直列接続されたコンデンサC210およびC209とを並列に配置してなる。また、抵抗R215とR216との間のノードと、コンデンサC210とC209との間のノードとは、共にIC201のZCD端子に接続されている。
【0028】
トランジスタQ202のオン時には、IC201のGD端子からダイオードD206→抵抗R215→コンデンサC209の経路、およびコンデンサC210→コンデンサC209の経路で、コンデンサC209に電荷が蓄積される。また、この電荷は、トランジスタQ202がオフに転じた瞬間から、抵抗R216を介して放電されてゆく。コンデンサC209端の電位がこれが接続されているZCD端子の閾値電位以下となると、IC201はトランジスタQ202を再びオンするように動作する。これによりLEDには図4に示すような脈流が流れ、LEDは連続的に発光しつづけることとなる。
【0029】
上述したように、IC201のCS端子が閾値以上となると、トランジスタQ202がオン→オフに転じ、IC201のZCD端子が閾値以下となるとトランジスタQ202がオフ→オンに転じる。したがって、図2,3に示すコンバータの動作において、LEDの駆動電流は、図4に示すとおり、電流波高値が一定な脈流電流となる。また、この脈流電流の谷の部分は、IC201のGD端子の電位と、ダイオードD206を介して充放電される充放電回路の時定数(R215,C210,R216,C209で決定される)とによって決定される。
【0030】
ここで、MULT端子に入力される信号の電圧レベルにより、IC201内部の乗算器を変化させることで、IC201のCS端子の閾値を変更することが可能である。IC201のCS端子の閾値を変化させると、これに応じて図4に示す電流波形の電流波高値を変化させるDC調光方式により、LEDの調光制御が可能となる。
【0031】
(本実施の形態に係るLED駆動回路の構成)
本実施の形態に係るLED駆動回路は、図1に示すように、図2,3に示されるLED駆動回路に対して、コンデンサC209の充電電荷を放電するための抵抗R216に相当する放電経路にエミッタフォロワ回路を接続して構成される。エミッタフォロワ回路は、トランジスタQ207,抵抗R270,R277,R280から構成されている。より謡的には、トランジスタQ207のコレクタが、抵抗R215とR216との間のノード、およびコンデンサC210とC209との間のノードに接続され、トランジスタQ207のエミッタが抵抗R270を介して接地されている。トランジスタQ207のベースとエミッタとは、抵抗R277を介して接続されている。さらに、トランジスタQ207のベースは、抵抗R280を介して、DC電圧源DC2と接続されている。DC電圧源DC2の電圧レベルを変化させることにより、充放電回路の放電時定数を可変にすることができ、コンバータにおけるオフ期間の調整が行える。
【0032】
さらに、図1に示すLED駆動回路が、図2,3に示されるLED駆動回路と異なる点は、IC201のMULT端子にDC電圧源DC1が接続され、MULT端子の電圧レベルを可変できる点にある。他の構成は、図2,3に示されるLED駆動回路と同じである。
【0033】
図1に示すLED駆動回路では、LEDの調光動作を実現するに当たって、DC調光方式と、コンバータのオフ期間変動による調光方式(PDM(パルス密度変調)方式)のいずれか、あるいは両方により制御することが可能である。
【0034】
図1に示すとおり、本LED駆動回路では、電圧値可変のDC電圧源(DC1,DC2)を2系統有しており、1系統はIC201のMULT端子に入力される。もう1系統はエミッタフォロワ回路に接続される。調光レベルが100%から特定の調光度(ここでは仮に30%とする)の領域では、エミッタフォロワ回路に接続されるDC電圧源DC2DC電圧を上限に固定し、MULT端子に接続されるDC電圧源DC1のDC電圧を1Vから0.3V程度へ変化させる。これにより、調光度が30%以上での領域でのDC調光が実現される。
【0035】
調光度が30%〜0%の領域では、MULT端子に接続されるDC電圧を0.3Vに固定し、エミッタフォロワ回路に接続されるDC電圧源DC2のDC電圧を減じていく。これにより、調光度が30%以下での調光はコンバータの発振のオフ期間を変動させることによってPDM調光を実現する。PDM調光時のLEDに流れる電流波形を図5に示す。尚、DC調光とPDM調光とが切り換わる調光度は特に限定されるものではなく、任意の調光度に設定することができる。
【0036】
上記2系統のDC電圧源は、例えば図6に示すとおり、マイコンから出力されるPWM信号を積分回路によってDC信号へ変換した信号源を利用することができる。
【0037】
ここで、上記コンバータのオン期間とオフ期間とを時間的な絶対値としてマイコンなどから直接的に決定する、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)などを用いて図2,3のトランジスタQ202のオンオフ期間を直接的に決定することでも、図1のLED駆動回路と同様に、DC調光方式とPDM調光方式とを組み合わせた調光制御を実現できる。図1のLED駆動回路と、こうしたコンバータの発振のオン期間・オフ期間を直接的に決定する方法を用いた制御の違いについて述べる。
【0038】
図1のLED駆動回路では、オン期間はパルス電流値の波高値とチョークコイルのL値による電流傾きとから間接的に決定される。また、オフ期間はマイコンなどからのPWM信号を積分回路によりアナログ回路的な手法によりDC電圧に変換し、そのDC電圧を制御ICであるIC201のZCD端子に接続されるエミッタフォロワ回路に入力することにより実現する。このように、図1のLED駆動回路では、コンバータのオン期間・オフ期間の時間的な絶対値で指定しないことより、結果的に発振周波数に入力電圧の周期的な電圧変動(脈流)によるわずかな周波数の揺らぎを持つ。このことにより、不要輻射の特定周波数への集中を防止し、輻射ノイズレベルの低減を可能としている。
【0039】
前記のとおり、2つのDC電圧源を利用し、調光100%〜特定の調光度(例えば30%)まではLED駆動電流の電流波高値を変化させるDC調光方式にて調光を実現し、上記特定の調光度以下ではオフ期間を変動させるPDM調光方式による調光を実現することができる。図1のLED駆動回路では、さらに、その上で、効率の向上を目的として下記制御を追加することも可能である。
【0040】
この場合、可聴最低調光時の発振周波数f(dim.min)、最大調光時の発振周波数f(dim.max)、および最大発振周波数f(max)の間に、f(dim.min)>20kHz,f(max)>f(dim.max)の関係が成り立つようにする(図7参照)。この制御自体は、2つのDC電圧源DC1,DC2を作成するマイコン内のソフトウェアにより実現することができる。
【0041】
尚、本実施の形態のLED駆動回路では、発振周波数をマイコンなどから直接的に決定せず、コンバータのスイッチングのオン期間とオフ期間を異なる方法でコンバータに指示している。従って、それらにより決定されるコンバータの発振周波数は、入力電圧のわずかな変動(脈流)の影響を受け、周期的に変動する。このため、上記発振周波数は、実際にはそのセンター値である平均発振周波数を意味するものであるが、ここでは単に発振周波数と記載する。
【0042】
また、可聴最低調光時とは、電力的に音鳴りが観測される調光率の下限を意味し、従って、この可聴最低調光時未満の調光率の領域では、電力的に音鳴りが観測されないことを意味する。すなわち、音鳴りは発振周波数が可聴周波数以外で観測されないのは自明であるが、可聴周波数帯でも、回路を通過する電力が小さければ発生する音圧が小さく観測されないため、本発明は可聴最低調光時における発振周波数が可聴周波数よりも大きくなるようにしている。
【0043】
また、最大発振周波数は、全調光領域の中で、コンバータの発振周波数が最大となる時の周波数である。図7に示す制御を行う場合は、調光方式を切り換える時の調光度(例えば30%)に最大発振周波数となる。
【0044】
図7に示す制御により、発熱が大きい調光100%に近い領域での発振周波数が低いため、スイッチングロスが低減され、スイッチング素子(図1のQ202,D209A)での発熱が効果的に抑制できる。
【0045】
また、DC調光とPDM調光との切り換わる調光領域近辺での発振周波数を、調光100%に近い領域の発振周波数より高くすることにより、この時点での発振周波数が最大発振周波数となる。そして、より調光が低い領域では、この最大発振周波数を基準とし、この最大発振周波数との比率で調光度が決定されるため、最も調光が小さい制御時の発振周波数を高くすることができる。例えば、DC調光とPDM調光との切り換わる調光度が30%で、1%刻みの調光を行うとすれば、可聴最低調光時における発振周波数f(dim.min)を20kHzとしても、最大発振周波数f(max)はその30倍の600kHzで良い。
【0046】
図7に示すような発振周波数の制御を行わない場合、調光100%時のコンバータの発振周波数を、図7と同程度の発振周波数とすると、調光を絞った際に、可聴調光率の領域で可聴周波数領域となってしまい、構成される電子部品からの音鳴りが問題となる(図8参照)。
【0047】
また、図9に示すように、可聴調光率の領域で可聴周波数領域とならないような発振周波数とし、DC調光を行う領域での発振周波数を変化させないとすると、DC調光を行う領域では常に最大発振周波数となる。この場合は、図7の制御に比べて、調光100%時の発振周波数が高くなる。しかしながら、この場合であっても、最大発振周波数は可聴周波数上限の20kHzの30倍で済み(DC調光とPDM調光との切り換わる調光度が30%で、1%刻みの調光を行う場合)、全調光領域でPWM調光を行う従来技術に比べると十分にスイッチングロスを低減する効果が得られるため、図9の制御も本発明に含まれる。
【0048】
(本実施の形態に係るLED駆動回路の変形例)
図10は、図1中のDC調光率とPDM調光率を制御するDC信号源、DC1,DC2を1つの調光PWM信号源から作り出す変形例である。
【0049】
図10中における回路部1は、図1に示したLED駆動回路と同等の回路である。また、図10中における回路部2,3は、図5に示したものと同等の回路である。図10中の右側にある、H/L信号とPWM信号とが制御信号である。H/L信号は、3ステートバッファIC U705に直接入力され、そのG1端子では内部で反転されるため、H/L信号がhighの場合はA2端子,Y2端子がアクティブとなり、A2端子の入力がY2端子に出力される。一方、Y1端子はA1端子の状態によらずハイインピーダンスとなる。
【0050】
これに従い、図10の回路はDC調光を選択したことになり、この状態でのPWM信号は、U705のA2端子に入力され、そのままY2端子から出力される。Y2端子から出力される信号は、R738,C726で形成される積分回路であるPWM/DC変換回路2によりPWM→DC変換され、IC201のMULT端子へ入力される。前記のとおり、IC201のMULT端子は乗算器入力であり、この端子の電圧レベルによりLEDに流れる電流を調節することができる。図10のR272,R273からなる回路は、MULT端子の絶対値を補正するDCレベル補正回路である。このDCレベル補正回路は、また、後述するH/L信号をLowとしてPDM調光が選択された場合、U705のY2端子がハイインピーダンスになった場合の、IC201のMULT端子の電位を確定する。従って、R272,R273の抵抗値で分圧され決定される電圧値は後述するPDM調光時のLEDに流れる電流の最大値を決定していることとなる。
【0051】
一方、H/L信号がlowの場合は、A1端子、Y1端子がアクティブとなり、A1端子の入力がY1端子にて出力される。一方、Y2端子はA2端子の状態によらずハイインピーダンスとなる。これに従い、図10の回路はPDM調光を選択したことになり、この状態でPWM信号は、Q706とR757とで形成されるPWM反転回路を通じ、3ステートバッファIC U705のY2端子に入力され、U705のA2端子から出力される。このA2端子から出力されるPWM信号が、R746でレベル補正された後、R704,C707で形成される積分回路であるPWM/DC変換回路3でPWM→DC変換され、R280を介してQ207で形成されるエミッタフォロワ回路へ入力される。
【0052】
図10右側のPWM信号のオンデューティと調光率の関係は図11に示すとおりとなる。すなわち、図11は、H/L信号の平均出力電流とPWM信号のオンデューティとの関係の一例を示している。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、バックコンバータタイプまたはバックブーストコンバータタイプのLED駆動回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
L202 インダクタ(DC/DCコンバータ)
Q202 トランジスタ(DC/DCコンバータ)
D209A ダイオード(DC/DCコンバータ)
C212 コンデンサ(DC/DCコンバータ)
IC201 制御IC
U705 3ステートバッファIC
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックコンバータタイプまたはバックブーストコンバータタイプのLED(Light Emitting Diode)駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LED駆動回路として、DC/DCコンバータを用いてLEDに定電流を供給し、この電流値を変化させてLEDの調光制御を行うLED駆動回路が知られている。LEDに定電流を供給する方法として、抵抗などによって出力電流を検出し、所望の電流が流れるよう、電圧フィードバックする方法がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では一般的に10%以下の調光領域において、チラつきが発生する問題がある。
【0003】
これを回避するために、バックコンバータやバックブーストコンバータを使用し、PWM(パルス幅変調)調光により調光を行う方法がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−203988号公報(2002年7月19日公開)
【特許文献2】特開2011−70957号公報(2011年4月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM調光周波数に対して、バックコンバータやバックブーストコンバータの発振周波数が十分高くないと、調光を絞った場合、調光レベルの変化が目に見えてしまいスムースな調光性が失われてしまう。一方、このスムース調光性の問題を回避するためにバックコンバータ、バックブーストコンバータの発振周波数を上げると、スイッチングロスにより、効率が悪化するジレンマがあった。
【0006】
例えば、バックコンバータタイプのLED駆動回路に対して、全灯を100%として、n%刻みの調光を実現しようとした場合、発振周波数は最低でも調光周波数の100/n倍の値が必要となる。例えば、コンバータの発振周波数を200kHzと仮定し、スムースな調光性を得るために1%刻みで調光しようとすれば、調光周波数は2kHzとなる。2kHzは可聴周波数であるため、この場合は電子部品からの音鳴りが危惧される。
【0007】
上記音鳴りを無くすためには、調光周波数を可聴周波数以上とすればよい。しかしながら、1%刻みの調光を実現するには、発振周波数は、可聴周波数上限の20kHzの100倍、すなわち2MHzで発振させることが必要となる。発振周波数をこのような高周波数とすることは、スイッチングロスの著しい増加を招き、現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、音鳴りを発生させること無く、スムースなLED調光制御を行うことができ、かつ、高効率なLED駆動回路を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、前記特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節することで調光制御を行うことができるため、調光度を上げる場合であっても、DC/DCコンバータの発振周波数は増加させずに済む。また、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節することで調光制御を行うため、調光度を上げる場合にはDC/DCコンバータの発振周波数は増加するが、このような調光制御を行う調光領域が全調光領域の一部に限定されているため、発振周波数が増大しすぎることを回避できる。その結果、調光度が最小の場合の発振周波数を、音鳴りを発生しないように可聴周波数(例えば20kHz)以上としても、DC/DCコンバータの最大発振周波数が増大しすぎることは無く、スイッチングロスの増加を抑制できる。
【0011】
また、上記LED駆動回路では、可聴最低調光時の平均発振周波数f(dim.min)、最大調光時の平均発振周波数f(dim.max)、および、最大平均発振周波数f(max)は、f(dim.min)>20kHz、かつ、f(max)>f(dim.max)の関係を満たす構成とすることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、f(dim.min)>20kHzとすることで音鳴りを発生を回避することができる。さらに、f(max)>f(dim.max)とすることで、発熱が大きい調光100%に近い領域での発振周波数が抑えられ、スイッチングロスをより低減することができる。
【0013】
また、上記LED駆動回路では、前記DC/DCコンバータのオン期間を、前記DC/DCコンバータによって生成されるパルス電流の波高値と前記DC/DCコンバータに含まれるインダクタのL値による電流傾きとから決定し、前記DC/DCコンバータのオフ期間をアナログ回路的な手法により決定する構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、コンバータのオン期間・オフ期間が時間的な絶対値で指定されることがなく間接的に決定される。その結果、発振周波数に入力電圧の周期的な電圧変動(脈流)によるわずかな周波数の揺らぎを持つ。このことにより、不要輻射の特定周波数への集中を防止し、コンバータのオン期間とオフ期間とを時間的な絶対値としてマイコンなどから直接的に決定する場合に比べ、輻射ノイズレベルを低減することができる。
【0015】
また、上記LED駆動回路では、前記DC/DCコンバータのオフ期間を調節する機能を有する制御ICを使用し、制御信号であるアナログ信号が、前記制御ICのオフ期間を決定する端子に接続されたエミッタフォロワ回路に入力され、オフ期間を調節することにより、オフ期間を調節する構成とすることができる。
【0016】
また、上記LED駆動回路では、3ステートバッファICを使用し、単一の調光PWM信号源で、DC調光とPDM調光を行う構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のLED駆動回路は、特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節することで調光制御を行うことができるため、調光度を上げる場合であっても、DC/DCコンバータの発振周波数は増加させずに済む。また、前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節することで調光制御を行うため、調光度を上げる場合にはDC/DCコンバータの発振周波数は増加するが、このような調光制御を行う調光領域が全調光領域の一部に限定されているため、発振周波数が増大しすぎることを回避できる。その結果、調光度が最小の場合の発振周波数を、音鳴りを発生しないように可聴周波数(例えば20kHz)以上としても、DC/DCコンバータの最大発振周波数が増大しすぎることは無く、スイッチングロスの増加を抑制できるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、LED駆動回路の構成を示す回路図である。
【図2】従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の構成と、励磁時の電流の経路とを示す回路図である。
【図3】従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の構成と、転流時の電流の経路とを示す回路図である。
【図4】図2,3に示すLED駆動回路を用いてLEDの駆動を行った場合の、LED駆動電流を示す図である。
【図5】図1に示すLED駆動回路を用いてPDM調光を行った場合の、LED駆動電流を示す図である。
【図6】図1に示すLED駆動回路に使用される、電圧値可変のDC電圧源の構成例を示す回路図である。
【図7】図1に示すLED駆動回路を用いて調光制御を行った場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係を示した図である。
【図8】図7に示す調光制御に対し、DC調光領域で発振周波数の変動をさせないように変更した場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係の一例を示した図である。
【図9】図7に示す調光制御に対し、DC調光領域で発振周波数の変動をさせないように変更した場合の、コンバータの発振周波数とLEDの調光度との関係の一例を示した図である。
【図10】3ステートバッファICを用いて、単一の調光PWM信号源でDC調光とPDM調光を実現する回路の構成例を示す回路図である。
【図11】図10の回路において、H/L信号の平均出力電流とPWM信号のオンデューティとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(DC/DCコンバータを用いたLED駆動回路の基本構成)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、バックコンバータタイプ、バックブーストコンバータタイプの両方に関し適用できるが、以降の説明ではバックコンバータタイプに適用した場合を例示する。
【0020】
図2および図3は従来のPWM調光方式を採用するLED駆動回路の典型的な構成を示す回路図である。この回路は、STマイクロ社製のL6562を制御ICとして使用した定電流回路を示している。図4は、図2および図3に示すLED駆動回路を用いてLEDの駆動を行った場合の、LEDに流れる電流を示した図である。このLED駆動回路は、インダクタL202、トランジスタQ202、ダイオードD209AおよびコンデンサC212からなるバックコンバータタイプのDC/DCコンバータ(以下、単にコンバータと称する)を備えている。
【0021】
図4中、励磁側と記載された増加直線部は、コンデンサC206に蓄えられている電荷をLEDに供給して発光させる場合の電流を示している。尚、このLED駆動回路は、商用電源からダイオードブリッジを用いた整流回路部によって交流電流を直流化し、この直流電流を平滑コンデンサにて平滑してLEDの駆動電流として用いるものとなっている。但し、図2および図3では、上記整流回路部の図示を省略しており、上記平滑コンデンサにあたるコンデンサC206のみを図示している。
【0022】
コンデンサC206の+端子から、LED負荷、インダクタL202、トランジスタQ202、抵抗R233がこの順で直列に接続されている。抵抗R233の他端は接地されている。尚、図2,3では、3つのLEDが直列に接続されてLED負荷を構成しているが、LEDの数は特に限定されるものではない。LEDの個数が多ければ、複数のLEDを直列に接続したLED列をさらに並列に接続してもよい。
【0023】
図4の励磁側電流が流れている期間は、トランジスタQ202がオンしており、コンデンサC206の+端子よりLED負荷→インダクタL202→トランジスタQ202→抵抗R233→コンデンサC206の−端子(GND)の順に電流が流れる。この励磁側電流は、図2の実線矢印にて示すとおり、L202のインダクタを励磁しながら電流が流れるため、その電流波形は傾き一定の増加直線となる。
【0024】
トランジスタQ202と抵抗233との間のノードには抵抗R232が接続されており、抵抗R232のもう一方の端子は制御ICであるIC201のCS端子に接続されている。これにより、上記励磁側電流は、R233端子で電圧に変換されIC201にて監視される。IC201は、CS端子で検知した電圧が予め設定された電圧に達するとトランジスタQ202をオフする。トランジスタQ202をオフする信号は、IC201のCS端子GDから、抵抗R218を介してトランジスタQ202のゲートに与えられる。
【0025】
トランジスタQ202がオフされると、励磁されたインダクタL202は電流を流し続けようとするが、トランジスタQ202はオフされているので、ダイオードD209A経由で転流する。ダイオードD209Aは、コンデンサ206の+端子とLED負荷との間のノードAと、インダクタL202とトランジスタQ202との間のノードBとを接続するように配置されており、ノードA側にカソード、ノードB側にアノードが接続されている。
【0026】
トランジスタQ202がオフしている状態の電流は、図4に示す転流側電流であり、このときの電流経路は、図3の実線矢印にて示すとおり、インダクタL202→ダイオードD209A→LED負荷→インダクタL202の経路となる。転流側電流は、インダクタL202の起電力により流れる電流であるため、図4中、転流側と記載された減少直線部のとおり、電流波形は傾き一定の減少直線となる。
【0027】
また、IC201のGD端子に接続されている信号線は、抵抗R218の手前のノードCで枝分かれしており、枝分かれした先はダイオードD206のアノードに接続されている。ダイオードD206のカソードには、抵抗R215およびR216と、コンデンサC210およびC209とからなる充放電回路が接続されている。上記充放電回路は、ダイオードD206のカソードとGNDとの間に、直列接続された抵抗R215およびR216と、直列接続されたコンデンサC210およびC209とを並列に配置してなる。また、抵抗R215とR216との間のノードと、コンデンサC210とC209との間のノードとは、共にIC201のZCD端子に接続されている。
【0028】
トランジスタQ202のオン時には、IC201のGD端子からダイオードD206→抵抗R215→コンデンサC209の経路、およびコンデンサC210→コンデンサC209の経路で、コンデンサC209に電荷が蓄積される。また、この電荷は、トランジスタQ202がオフに転じた瞬間から、抵抗R216を介して放電されてゆく。コンデンサC209端の電位がこれが接続されているZCD端子の閾値電位以下となると、IC201はトランジスタQ202を再びオンするように動作する。これによりLEDには図4に示すような脈流が流れ、LEDは連続的に発光しつづけることとなる。
【0029】
上述したように、IC201のCS端子が閾値以上となると、トランジスタQ202がオン→オフに転じ、IC201のZCD端子が閾値以下となるとトランジスタQ202がオフ→オンに転じる。したがって、図2,3に示すコンバータの動作において、LEDの駆動電流は、図4に示すとおり、電流波高値が一定な脈流電流となる。また、この脈流電流の谷の部分は、IC201のGD端子の電位と、ダイオードD206を介して充放電される充放電回路の時定数(R215,C210,R216,C209で決定される)とによって決定される。
【0030】
ここで、MULT端子に入力される信号の電圧レベルにより、IC201内部の乗算器を変化させることで、IC201のCS端子の閾値を変更することが可能である。IC201のCS端子の閾値を変化させると、これに応じて図4に示す電流波形の電流波高値を変化させるDC調光方式により、LEDの調光制御が可能となる。
【0031】
(本実施の形態に係るLED駆動回路の構成)
本実施の形態に係るLED駆動回路は、図1に示すように、図2,3に示されるLED駆動回路に対して、コンデンサC209の充電電荷を放電するための抵抗R216に相当する放電経路にエミッタフォロワ回路を接続して構成される。エミッタフォロワ回路は、トランジスタQ207,抵抗R270,R277,R280から構成されている。より謡的には、トランジスタQ207のコレクタが、抵抗R215とR216との間のノード、およびコンデンサC210とC209との間のノードに接続され、トランジスタQ207のエミッタが抵抗R270を介して接地されている。トランジスタQ207のベースとエミッタとは、抵抗R277を介して接続されている。さらに、トランジスタQ207のベースは、抵抗R280を介して、DC電圧源DC2と接続されている。DC電圧源DC2の電圧レベルを変化させることにより、充放電回路の放電時定数を可変にすることができ、コンバータにおけるオフ期間の調整が行える。
【0032】
さらに、図1に示すLED駆動回路が、図2,3に示されるLED駆動回路と異なる点は、IC201のMULT端子にDC電圧源DC1が接続され、MULT端子の電圧レベルを可変できる点にある。他の構成は、図2,3に示されるLED駆動回路と同じである。
【0033】
図1に示すLED駆動回路では、LEDの調光動作を実現するに当たって、DC調光方式と、コンバータのオフ期間変動による調光方式(PDM(パルス密度変調)方式)のいずれか、あるいは両方により制御することが可能である。
【0034】
図1に示すとおり、本LED駆動回路では、電圧値可変のDC電圧源(DC1,DC2)を2系統有しており、1系統はIC201のMULT端子に入力される。もう1系統はエミッタフォロワ回路に接続される。調光レベルが100%から特定の調光度(ここでは仮に30%とする)の領域では、エミッタフォロワ回路に接続されるDC電圧源DC2DC電圧を上限に固定し、MULT端子に接続されるDC電圧源DC1のDC電圧を1Vから0.3V程度へ変化させる。これにより、調光度が30%以上での領域でのDC調光が実現される。
【0035】
調光度が30%〜0%の領域では、MULT端子に接続されるDC電圧を0.3Vに固定し、エミッタフォロワ回路に接続されるDC電圧源DC2のDC電圧を減じていく。これにより、調光度が30%以下での調光はコンバータの発振のオフ期間を変動させることによってPDM調光を実現する。PDM調光時のLEDに流れる電流波形を図5に示す。尚、DC調光とPDM調光とが切り換わる調光度は特に限定されるものではなく、任意の調光度に設定することができる。
【0036】
上記2系統のDC電圧源は、例えば図6に示すとおり、マイコンから出力されるPWM信号を積分回路によってDC信号へ変換した信号源を利用することができる。
【0037】
ここで、上記コンバータのオン期間とオフ期間とを時間的な絶対値としてマイコンなどから直接的に決定する、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)などを用いて図2,3のトランジスタQ202のオンオフ期間を直接的に決定することでも、図1のLED駆動回路と同様に、DC調光方式とPDM調光方式とを組み合わせた調光制御を実現できる。図1のLED駆動回路と、こうしたコンバータの発振のオン期間・オフ期間を直接的に決定する方法を用いた制御の違いについて述べる。
【0038】
図1のLED駆動回路では、オン期間はパルス電流値の波高値とチョークコイルのL値による電流傾きとから間接的に決定される。また、オフ期間はマイコンなどからのPWM信号を積分回路によりアナログ回路的な手法によりDC電圧に変換し、そのDC電圧を制御ICであるIC201のZCD端子に接続されるエミッタフォロワ回路に入力することにより実現する。このように、図1のLED駆動回路では、コンバータのオン期間・オフ期間の時間的な絶対値で指定しないことより、結果的に発振周波数に入力電圧の周期的な電圧変動(脈流)によるわずかな周波数の揺らぎを持つ。このことにより、不要輻射の特定周波数への集中を防止し、輻射ノイズレベルの低減を可能としている。
【0039】
前記のとおり、2つのDC電圧源を利用し、調光100%〜特定の調光度(例えば30%)まではLED駆動電流の電流波高値を変化させるDC調光方式にて調光を実現し、上記特定の調光度以下ではオフ期間を変動させるPDM調光方式による調光を実現することができる。図1のLED駆動回路では、さらに、その上で、効率の向上を目的として下記制御を追加することも可能である。
【0040】
この場合、可聴最低調光時の発振周波数f(dim.min)、最大調光時の発振周波数f(dim.max)、および最大発振周波数f(max)の間に、f(dim.min)>20kHz,f(max)>f(dim.max)の関係が成り立つようにする(図7参照)。この制御自体は、2つのDC電圧源DC1,DC2を作成するマイコン内のソフトウェアにより実現することができる。
【0041】
尚、本実施の形態のLED駆動回路では、発振周波数をマイコンなどから直接的に決定せず、コンバータのスイッチングのオン期間とオフ期間を異なる方法でコンバータに指示している。従って、それらにより決定されるコンバータの発振周波数は、入力電圧のわずかな変動(脈流)の影響を受け、周期的に変動する。このため、上記発振周波数は、実際にはそのセンター値である平均発振周波数を意味するものであるが、ここでは単に発振周波数と記載する。
【0042】
また、可聴最低調光時とは、電力的に音鳴りが観測される調光率の下限を意味し、従って、この可聴最低調光時未満の調光率の領域では、電力的に音鳴りが観測されないことを意味する。すなわち、音鳴りは発振周波数が可聴周波数以外で観測されないのは自明であるが、可聴周波数帯でも、回路を通過する電力が小さければ発生する音圧が小さく観測されないため、本発明は可聴最低調光時における発振周波数が可聴周波数よりも大きくなるようにしている。
【0043】
また、最大発振周波数は、全調光領域の中で、コンバータの発振周波数が最大となる時の周波数である。図7に示す制御を行う場合は、調光方式を切り換える時の調光度(例えば30%)に最大発振周波数となる。
【0044】
図7に示す制御により、発熱が大きい調光100%に近い領域での発振周波数が低いため、スイッチングロスが低減され、スイッチング素子(図1のQ202,D209A)での発熱が効果的に抑制できる。
【0045】
また、DC調光とPDM調光との切り換わる調光領域近辺での発振周波数を、調光100%に近い領域の発振周波数より高くすることにより、この時点での発振周波数が最大発振周波数となる。そして、より調光が低い領域では、この最大発振周波数を基準とし、この最大発振周波数との比率で調光度が決定されるため、最も調光が小さい制御時の発振周波数を高くすることができる。例えば、DC調光とPDM調光との切り換わる調光度が30%で、1%刻みの調光を行うとすれば、可聴最低調光時における発振周波数f(dim.min)を20kHzとしても、最大発振周波数f(max)はその30倍の600kHzで良い。
【0046】
図7に示すような発振周波数の制御を行わない場合、調光100%時のコンバータの発振周波数を、図7と同程度の発振周波数とすると、調光を絞った際に、可聴調光率の領域で可聴周波数領域となってしまい、構成される電子部品からの音鳴りが問題となる(図8参照)。
【0047】
また、図9に示すように、可聴調光率の領域で可聴周波数領域とならないような発振周波数とし、DC調光を行う領域での発振周波数を変化させないとすると、DC調光を行う領域では常に最大発振周波数となる。この場合は、図7の制御に比べて、調光100%時の発振周波数が高くなる。しかしながら、この場合であっても、最大発振周波数は可聴周波数上限の20kHzの30倍で済み(DC調光とPDM調光との切り換わる調光度が30%で、1%刻みの調光を行う場合)、全調光領域でPWM調光を行う従来技術に比べると十分にスイッチングロスを低減する効果が得られるため、図9の制御も本発明に含まれる。
【0048】
(本実施の形態に係るLED駆動回路の変形例)
図10は、図1中のDC調光率とPDM調光率を制御するDC信号源、DC1,DC2を1つの調光PWM信号源から作り出す変形例である。
【0049】
図10中における回路部1は、図1に示したLED駆動回路と同等の回路である。また、図10中における回路部2,3は、図5に示したものと同等の回路である。図10中の右側にある、H/L信号とPWM信号とが制御信号である。H/L信号は、3ステートバッファIC U705に直接入力され、そのG1端子では内部で反転されるため、H/L信号がhighの場合はA2端子,Y2端子がアクティブとなり、A2端子の入力がY2端子に出力される。一方、Y1端子はA1端子の状態によらずハイインピーダンスとなる。
【0050】
これに従い、図10の回路はDC調光を選択したことになり、この状態でのPWM信号は、U705のA2端子に入力され、そのままY2端子から出力される。Y2端子から出力される信号は、R738,C726で形成される積分回路であるPWM/DC変換回路2によりPWM→DC変換され、IC201のMULT端子へ入力される。前記のとおり、IC201のMULT端子は乗算器入力であり、この端子の電圧レベルによりLEDに流れる電流を調節することができる。図10のR272,R273からなる回路は、MULT端子の絶対値を補正するDCレベル補正回路である。このDCレベル補正回路は、また、後述するH/L信号をLowとしてPDM調光が選択された場合、U705のY2端子がハイインピーダンスになった場合の、IC201のMULT端子の電位を確定する。従って、R272,R273の抵抗値で分圧され決定される電圧値は後述するPDM調光時のLEDに流れる電流の最大値を決定していることとなる。
【0051】
一方、H/L信号がlowの場合は、A1端子、Y1端子がアクティブとなり、A1端子の入力がY1端子にて出力される。一方、Y2端子はA2端子の状態によらずハイインピーダンスとなる。これに従い、図10の回路はPDM調光を選択したことになり、この状態でPWM信号は、Q706とR757とで形成されるPWM反転回路を通じ、3ステートバッファIC U705のY2端子に入力され、U705のA2端子から出力される。このA2端子から出力されるPWM信号が、R746でレベル補正された後、R704,C707で形成される積分回路であるPWM/DC変換回路3でPWM→DC変換され、R280を介してQ207で形成されるエミッタフォロワ回路へ入力される。
【0052】
図10右側のPWM信号のオンデューティと調光率の関係は図11に示すとおりとなる。すなわち、図11は、H/L信号の平均出力電流とPWM信号のオンデューティとの関係の一例を示している。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、バックコンバータタイプまたはバックブーストコンバータタイプのLED駆動回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
L202 インダクタ(DC/DCコンバータ)
Q202 トランジスタ(DC/DCコンバータ)
D209A ダイオード(DC/DCコンバータ)
C212 コンデンサ(DC/DCコンバータ)
IC201 制御IC
U705 3ステートバッファIC
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、
特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、
前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴とするLED駆動回路。
【請求項2】
可聴最低調光時の平均発振周波数f(dim.min)、最大調光時の平均発振周波数f(dim.max)、および、最大平均発振周波数f(max)は、
f(dim.min)>20kHz、かつ、f(max)>f(dim.max)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のLED駆動回路。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータのオン期間を、前記DC/DCコンバータによって生成されるパルス電流の波高値と前記DC/DCコンバータに含まれるインダクタのL値による電流傾きとから決定し、前記DC/DCコンバータのオフ期間をアナログ回路的な手法により決定することを特徴とする請求項1または2に記載のLED駆動回路。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータのオフ期間を調節する機能を有する制御ICを使用し、制御信号であるアナログ信号が、前記制御ICのオフ期間を決定する端子に接続されたエミッタフォロワ回路に入力されることにより、オフ期間を調節することを特徴とする請求項3に記載のLED駆動回路。
【請求項5】
3ステートバッファICを用いて、単一の調光PWM信号源で、DC調光とPDM調光を行うことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のLED駆動回路。
【請求項6】
DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動方法であって、
特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、
前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴とするLED駆動方法。
【請求項1】
DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動回路であって、
特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、
前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴とするLED駆動回路。
【請求項2】
可聴最低調光時の平均発振周波数f(dim.min)、最大調光時の平均発振周波数f(dim.max)、および、最大平均発振周波数f(max)は、
f(dim.min)>20kHz、かつ、f(max)>f(dim.max)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のLED駆動回路。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータのオン期間を、前記DC/DCコンバータによって生成されるパルス電流の波高値と前記DC/DCコンバータに含まれるインダクタのL値による電流傾きとから決定し、前記DC/DCコンバータのオフ期間をアナログ回路的な手法により決定することを特徴とする請求項1または2に記載のLED駆動回路。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータのオフ期間を調節する機能を有する制御ICを使用し、制御信号であるアナログ信号が、前記制御ICのオフ期間を決定する端子に接続されたエミッタフォロワ回路に入力されることにより、オフ期間を調節することを特徴とする請求項3に記載のLED駆動回路。
【請求項5】
3ステートバッファICを用いて、単一の調光PWM信号源で、DC調光とPDM調光を行うことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のLED駆動回路。
【請求項6】
DC/DCコンバータを用いてLEDの調光制御を行うLED駆動方法であって、
特定の調光度以上の調光度の領域では、LED駆動電流の波高値を調節する調光方式によって調光制御を行い、
前記特定の調光度以下の調光度の領域では、前記DC/DCコンバータの発振のオフ期間を調節する調光方式によって調光制御を行うことを特徴とするLED駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−45753(P2013−45753A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185146(P2011−185146)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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