説明

LED駆動回路

【課題】LEDアレイを構成する個々のLEDに定格上のバラツキがあった場合においても、LEDアレイの異常検出を可能とする。
【解決手段】電源11からLED駆動部12を介してLEDアレイ14へ電力を供給してLEDを点灯させる。この点灯時に電圧検出器13での検出電圧を初期電圧Vrとして電圧比較検出部16のメモリMに記憶する。電圧比較検出部16では、以降に電圧検出器13で検出される検出電圧VdとメモリMに記憶された初期電圧Vrを比較し、初期電圧Vrに対し所定量の電圧変化の状態をLEDアレイ14の異常と判断するようにした。これにより、LEDアレイ14を構成するLEDのバラツキがあり、これらの組み合わせでLEDアレイ14の電圧にバラツキが発生した場合でも、組み合わせによる正常点灯の値を初期値として判断することで正確にLEDの異常検出を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LEDアレイを駆動するLED駆動回路に関し、特にLEDアレイの異常検出を確実に行うためのものである。
【背景技術】
【0002】
従来のLED駆動回路では、DC/DCコンバータに直結されたLEDアレイが外部環境などによって短絡または開放される場合に発生してしまう過電流/過電圧から回路を保護することが行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−325396公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、LEDの電圧異常を既設定値と比較しているが、複数個のLEDが直列に接続されたLEDアレイ回路ではLEDの電圧バラツキが複数個接続された各LEDに対して発生することから、寿命初期値がLEDアレイを構成して見なければ判断できない、という問題があった。
【0005】
また、LEDアレイに使用されるLEDがカタログ値の最大/最小が揃う場合を想定すると、現実の初期値からかけ離れてしまい、実際の異常が検出できない、という問題があった。
【0006】
この発明の目的は、LEDアレイを構成する個々のLEDにカタログ値上のバラツキがあった場合でも、LEDアレイの異常を検出することが可能なLED駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明のLED駆動回路は、直流電源と、前記直流電源の電圧を、上昇または降下させた電圧を生成するLED駆動部と、前記LED駆動部の出力電圧を印加して点灯させる直列接続された複数のLEDから構成するLEDアレイと、前記LEDアレイが正常点灯したときの電圧を、初期電圧として記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された初期電圧と正常点灯以降の前記LEDアレイの点灯状態に応じた検出電圧とを比較し、前記初期電圧に対して前記検出電圧が所定値以上の電圧変化があった場合を、前記LEDアレイの異常として判断する判断手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、LEDアレイを構成するLEDのバラツキがあり、これらの組み合わせでLEDアレイの電圧にバラツキが発生した場合でも、組み合わせによる正常点灯の値を初期値として判断することで正確にLEDの異常の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のLED点灯装置に関する一実施形態について説明するための概略的な回路構成図である。
【図2】図1の要部について具体的に説明するための回路構成図である。
【図3】この発明のLED点灯装置に関する他の実施形態について説明するための概略的な回路構成図である。
【図4】図3の制御回路をマイクロコンピュータプログラムの処理によって実現した場合の処理手順について説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明に用いるLEDアレイの、図5(a)は他の構成例について説明するための構成図、図5(b)はもう一つの他の構成例について説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1、図2は、この発明のLED点灯装置に関する一実施形態について説明するための、図1は概略的な回路構成図で、図2は図1の要部の具体例について説明するための回路構成図である。
【0012】
図1において、11は例えば100Vの直流電源であり、この電源11の直流電圧を降圧させるDC/DCコンバータの機能を有するLED駆動部12に供給する。LED駆動部12では電圧を、降下させた直流電圧を出力する。
【0013】
LED駆動部12の出力は、電圧検出器13を介して基準電位点に接続する。また、LED駆動部12の出力は、負荷となる例えば直列接続された14個のLED14a〜14nから構成されるLEDアレイ14の最上の電圧が印加されるLED14nのアノードに供給する。LEDアレイ14の最下の電圧が印加されるLED14aのカソードは、電流検出器15を介して基準電位点に接続する。
【0014】
電圧検出器13で検出された検出電圧Vdは、電圧比較検出部16に供給して一方の比較電圧とするとともに、LEDアレイ14が点灯されたときの初期電圧Vrを初期の正常電圧として記憶手段であるRAM(Random Access Memory) 等の半導体メモリMに取り込み、取り込まれた情報を他方の比較電圧とする。スイッチSはメモリMに初期電圧Vrを取り込むためのもので、スイッチSをオンすることにより、ロー(“L”)レベルにし、メモリMに書き込むようにしている。一旦、メモリMに書き込まれた初期電圧Vrは、電源11がオフした場合もその値を維持する。なお、電圧比較検出部16は、LEDアレイ14が異常であるか否かの判断手段となるものである。
【0015】
電圧比較検出部16の出力は、PWM制御部17に供給し、PWM制御部17のオン/オフ制御情報とする。PWM制御部17には、電流検出器15の検出電流も供給され、ここで検出電流に基づくデューティを有するスイッチングパルスを、LED駆動部12に供給する。LED駆動部12では、PWM制御部17のスイッチングパルスに基づいた出力電圧を生成して出力する。
【0016】
図2の回路構成図を参照しながら図1要部の具体例を説明するとともに、その動作について説明する。
【0017】
すなわち、LED駆動部12は、電源11の正極から例えばMOS型FETトランジスタによるスイッチ素子SWを介してインダクタLの一端とアノードが接地されたダイオードDのカソードにそれぞれ接続する。コイルLの他端は平滑用コンデンサCを介して接地する。
【0018】
電圧検出器13は、LED駆動部12の出力と基準電位点間に、直列接続された抵抗R1,R2から構成し、抵抗R1とR2の接続点を電圧検出器13の検出電圧として出力する。電流検出器15は、抵抗R3で構成され、抵抗R3とLED14aのカソードとの接続点を電流検出器15の検出電流に比例した電圧として出力する。
【0019】
電圧比較検出部16は、LEDアレイ14が正常に点灯したときにスイッチSをオンさせ、電圧検出器13から出力される検出電圧を初期電圧Vrとして記憶させるメモリMとメモリMに記憶された初期電圧Vrと電圧検出器13から都度出力される検出電圧Vdとを比較する比較器161から構成される。
【0020】
いま、LED駆動部12に電源11が供給されると、電源11で供給される電流は、インダクタLを介してLEDアレイ14に供給される。このとき、インダクタLにはエネルギーが蓄積される。スイッチ素子12がオフの場合に、インダクタLに蓄積されたエネルギーによってLEDアレイ14に電源が供給される。
【0021】
PWM制御部17は、電流検出器15で検出された検出電流が予め定めた定電流値に相当するオン/オフ比のデューティでオン/オフを繰り返す、スイッチングパルスにしてLED駆動部12のスイッチ素子SWを制御する。電圧検出器13の抵抗R1,R2の抵抗分割に基づき生成される電圧が電圧比較検出部16から供給され、LED駆動部12のスイッチ素子SWをオンまたはオフを決定することができる。
【0022】
LED駆動部12では、PWM制御部17から供給されるスイッチングパルスのデューティに対応した出力電流をLEDアレイ14に供給する。つまり、LED駆動部12は、LEDアレイ14に流れる電流に対応した電圧を生成する。
【0023】
ところで、LEDアレイ14は、1個のLEDの順方向電圧Vfを、例えば2.1Vとすると、LEDアレイ14の電圧は、2.1V×14=29.4Vとなる。LEDの順方向電圧Vfのバラツキを±20%とすると、全てのLEDが同一バラツキで揃ったとした場合、23.52V〜35.28Vと11.78Vの変化幅があり、LEDの1つが仮にショートしてもバラツキ範囲からは正常電圧として見做されてしまう。
【0024】
そこで、正常に点灯された初期のLEDアレイ14に対応する電圧検出器13から出力される検出電圧は、初期電圧VrとしてスイッチSをオンしてメモリMに取り込まれる。以降は、LEDアレイ14に供給される電圧と対応の電圧を電圧検出器13で検出電圧Vdとして電圧比較検出部16に供給する。
【0025】
電圧比較検出部16では、LEDアレイ14の例えばLED14eがショートした場合に、LEDアレイ14の電圧変化を電圧検出器13が検出し、検出電圧Vdとして供給する。LED14eがショートした場合は、LEDアレイ14の電圧は低下することになり、その結果、検出電圧Vdも低下する。電圧比較検出部16は、メモリMに記憶された初期電圧Vrに対して所定以上に電圧変化があった場合に、比較器161から停止信号を出力し、LED駆動部12の出力を停止させる。これにより、LEDアレイ14への電力供給を停止させることができる。
【0026】
LEDアレイ14がショートした場合だけでなく、断線した場合も同様に、電圧変化を検出し、それに基づいてLED駆動部12を停止させることができる。なお、断線の場合は、検出電圧Vdの変化量がより大きいものとなる。
【0027】
この実施形態では、正常点灯した場合のLEDアレイの両端電圧を予めメモリに記憶させておき、メモリに記憶された電圧値に対して所定以上の電圧変化があった場合にLEDアレイが異常であることを確実に認識することが可能となる。
【0028】
図3、図4は、この発明の放電灯点灯装置に関する他の実施形態について説明するためのもので、図3は回路構成図、図4は図3の制御回路として、マイクロコンピュータプログラムを用いた場合における処理手順について説明するためのフローチャートである。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでの説明は省略することにする。
【0029】
この実施形態は、電圧比較検出部16を、例えばマイクロコンピュータで構成される制御回路31に置き換えたものである。
【0030】
図3において、制御回路31には、電圧検出器13からの検出電圧情報が入力され、ここで、検出電圧情報に基づいて処理される。さらに、制御回路31には初期電圧Vrを記憶して置くための記憶手段であるRAM等の半導体メモリMが配置される。このメモリMには、取り込まれた初期電圧Vrを、制御回路31内でデジタルデータに変換し、制御回路31内で予め設定された書き込み用のアドレスに基づいて書き込まれる。
【0031】
初期電圧Vr情報がメモリMに書き込まれた以降は、電圧検出器13から出力される検出電圧Vdを制御回路31に供給し、ここでデジタルデータに変換する。
【0032】
そして制御回路31では、初期電圧Vrと検出電圧Vdとの比較処理が行われ、初期電圧Vrに対して所定量の変化範囲内にある場合は、PWM制御部17への駆動電圧を供給する。LEDアレイ14への電力供給を継続する。この間は、LEDアレイ14の電流を電流検出器15で検出し、変化に応じてPWM制御部17から出力されるスイッチングパルスのデューティを制御させるようにしている。
【0033】
初期電圧Vrに対して所定量よりも上あるいは下側に検出電圧Vdの値が変化した場合は、LEDアレイ14が異常と判断し、PWM制御部17への駆動電圧供給の停止を行い、LED駆動部12の駆動を停止させる。LEDアレイ14の異常としては、LEDアレイ14を構成する少なくとも1個のLEDがショートあるいは切断が生じた場合が考えられる。
【0034】
次に、図4を参照しながら、制御回路31の処理手順について説明する。
【0035】
まず、制御回路31は、スイッチSがオン状態かどうかを確認する(S1)。LEDアレイ14が正常に点灯したことが確認された場合に、スイッチSをオンし、スイッチSが接続されたラインがLレベルになった場合に制御回路31は、電圧検出器13の検出電圧を初期電圧Vrとして取り込む(S2)。
【0036】
次に、制御回路31は、電圧検出器13の検出電圧Vdとして取り込み(S3)、初期電圧Vrとの比較対象とする。検出電圧Vdと初期電圧Vrを比較し、その差が例えば10%以内であれば通常点灯状態であると判断し、差が±10%を超えた場合は、異常状態であると判断する(S4)。ステップS4で異常状態であると判断した場合は、PWM制御部17への駆動電圧の供給を停止する(S5)。
【0037】
このようにして、初期電圧Vrを取り込み、この初期電圧Vrと以降のLEDアレイ14の状態に基づき生成される検出電圧Vdとの比較を制御回路31で行い、検出電圧Vdが初期電圧の所定値の上または下側に電圧が変化した場合を異常として判断することができる。
【0038】
この実施形態においても、初期電圧を記憶しておき、以降のLEDアレイの点灯に対応した検出電圧とを制御回路で比較判断することにより、LEDアレイの異常を確実に検出することが可能となる。これにより、LEDのバラツキが発生しいろいろな組み合わせで発生した場合でも、組み合わせによる正常点灯の値を初期値として判断することで正確にLEDの異常検出を実現することができる。
【0039】
図5(a),(b)は、それぞれLED駆動部12の負荷となるLEDアレイの、図5(a)は他の具体例について説明するための構成図、図5(b)はもう一つの他の具体例について説明するための構成図である。
【0040】
まず、図5(a)に示すLEDアレイ141は、14a〜14nの14個のLEDを直列接続した3列のLED群1411〜1413を並列接続したものである。LED群1411〜1413のそれぞれのLED14nのアノードは、共通接続してLED駆動部12の出力に、LED群1411〜1413のLED14aのカソードは、それぞれ共通接続して電流検出器15を介して基準電位点に接続する。
【0041】
このLED141がLED駆動部12の負荷として接続された場合は、LED群1411〜1413の例えばLED群1412の中のLEDがショートした場合には、ショートしたLEDが消灯となるだけで、他は点灯する。しかし、ショートに伴い、LEDアレイ141の電圧変化することになり、この変化がショートしたLEDが正常であった場合の電圧変化量との比較が所定値以上となったことを検出することができる。
【0042】
例えば、LED群1412の中のLEDが断線した場合は、LED群1412全体が消灯となる。この場合もLEDアレイ141の異常の検出が可能となる。
【0043】
図5(b)に示すLEDアレイ142は、14a〜14nの14個のLEDを直列接続するとともに、3並列接続したLED群1421〜1423から構成される。LED群1421〜1423のそれぞれのLED14nのアノードは、共通接続してLED駆動部12の出力に、LED群1421〜1423のLED14aのカソードは、それぞれ共通接続して電流検出器15を介して基準電位点に接続する。
【0044】
このLED142がLED駆動部12の負荷として接続された場合は、LED群1421〜1423の例えばLED群1423の中のLEDがショートした場合には、ショートしたLEDが消灯となるだけで、他は点灯する。しかし、ショートに伴い、LEDアレイ142の電圧変化することになり、この変化がショートしたLEDが正常であった場合の電圧変化量との比較が所定値以上となったことを検出することができる。
【0045】
例えば、LED群1422の中のLEDが断線した場合にも、LED群1423全体が消灯することはない。この場合もLEDアレイ142の異常の検出が可能となる。
【0046】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えばLEDアレイは直列方向に14個の例を挙げたが、これ以上であっても、これ以下であっても構わない。また、メモリに正常時の電圧を取り込むタイミングは、手動によるスイッチとしたが、外部からの電気信号に同期させて自動的に行っても構わない。
【0047】
さらに、LED駆動部の出力電圧は、電源電圧を降下させる例について説明したが、上昇させてもよく、要は負荷であるLEDアレイの順方向電圧に基づき決定されるものである。
【符号の説明】
【0048】
11 直流電源
12 LED駆動部
13 電圧検出器
14,141,142 LEDアレイ
14a〜14n LED
15 電流検出器
16 電圧比較検出部
17 PWM制御部
M メモリ
S スイッチ
1411〜1413,1421〜1423 LED群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源の電圧を、上昇または降下させた電圧を生成するLED駆動部と、
前記LED駆動部の出力電圧を印加して点灯させる直列接続された複数のLEDから構成するLEDアレイと、
前記LEDアレイが正常点灯したときの電圧を、初期電圧として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された初期電圧と正常点灯以降の前記LEDアレイの点灯状態に応じた検出電圧とを比較し、前記初期電圧に対して前記検出電圧が所定値以上の電圧変化があった場合を、前記LEDアレイの異常として判断する判断手段とを具備したことを特徴とするLED駆動回路。
【請求項2】
前記判断手段は、前記初期電圧を基準とする正常点灯時の検出電圧との比較により、検出電圧が所定値の変化に基づき、前記LEDアレイが異常であるかを判断することを特徴とする請求項1記載のLED駆動回路。
【請求項3】
前記LEDアレイは、複数のLEDを直列接続して構成したものであることを特徴とする請求項1または2記載のLED駆動回路。
【請求項4】
前記LEDアレイは、複数のLEDの直列接続をLED群とし、該LED群の複数を並列接続したことを特徴とする請求項1または2記載のLED駆動回路。
【請求項5】
前記LEDアレイは、複数のLEDの直列接続をLED群とし、該LED群の複数を並列接続するとともに、各LED群のLEDのカソード同士を接続したことを特徴とする請求項1または2記載のLED駆動回路。
【請求項6】
LEDの点灯電圧の記憶は、前記LEDアレイが最初に点灯動作したときの電圧として取得することを特徴とする請求項1または2記載のLED駆動回路。
【請求項7】
LEDの点灯電圧の記憶は、手動スイッチにより行うことを特徴とした請求項1または2記載のLED駆動回路。
【請求項8】
LEDの点灯電圧の記憶は、外部からの電気信号に同期させて行うことを特徴とした請求項1または2記載のLED駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−181616(P2011−181616A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42922(P2010−42922)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】