説明

LMO2のLIM2阻害剤

本発明は、タンパク質機能の阻害剤に関する。特に、本発明は、血管新生、造血および胚形成において極めて重要な役割を果たす分子の阻害剤に関する。血管新生および造血の調節におけるこのような阻害剤の使用を記載する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質機能の阻害剤に関する。特に、本発明は、血管新生、造血および胚形成において極めて重要な役割を果たす分子の阻害剤に関する。血管新生、造血および胚形成の調節におけるこのような阻害剤の用途が記載されている。
【背景技術】
【0002】
LMO2は胚形成、造血および血管新生におけるいくつかの主要な経路のマスターレギュレーターであり、LIMドメインに関係するタンパク質−タンパク質相互作用により上記状況においてその機能を実施する。治療的観点からみたLMO2の最も適切な機能は、血管新生における役割であり、LMO2は、例えば、原発性固形腫瘍増殖および転移蓄積の拡大に本質的で、必須であるリモデリング過程を構成する血管内皮分裂および遊走の調節に役割を果たす。タンパク質相互作用においてLMO2の機能を妨害することができる薬剤の開発は、腫瘍におけるなどの異常な血管新生を防止するために治療的に非常に有用となると思われる。
【0003】
染色体転座結合および染色体転座に影響される遺伝子のcDNAコピーの分子クローニングにより、非常に多数の異なる転座が研究された(1に総説が示されている)。T細胞受容体(TCR)β鎖座が第7染色体、バンドq35にマッピングされたとき白血病における染色体転座の研究がさらに実施され、T細胞腫瘍における染色体転座は、正常なリンパ球系統の発生において再配列を受けるTCR遺伝子の本質的な染色体の不安定性によって介在されることが示唆された2。これは、TCRδおよびTCRαによる染色体転座結合部位のLMO1およびLMO2のクローニング36ならびにTCRβによる染色体転座部位のHOX11およびLMO2のクローニング5,710によって確認された。
【0004】
染色体転座が起きた後の遺伝子構造の早期分析は、遺伝子融合または発癌遺伝子活性化(新たな染色体環境による強制的な発現)が生じたことを示した(1に総説が示されている)。さらに、転写因子は染色体転座の頻繁な標的であるが11,12、明白な区別は慢性および急性白血病の染色体転座の間に引くことができると思われ12、後者のカテゴリーだけが転写因子に関与することが1990年代初めに明らかになった。これにより、染色体転座−マスター遺伝子モデルが生じ12、そのモデルでは転写調節因子および発生調節因子が染色体転座の主要な標的であること、ならびにそれらの強制的な発現または遺伝子融合は転写バランスを変更し、それによって罹患細胞における細胞運命の調節に影響を与えることが前提とされた。
【0005】
急性癌の染色体転座−遺伝子は、上流マスター遺伝子であり、その産物は下流経路を調節する。従って、染色体転座の指向性の主要な部分は、染色体転座後に生じる転写因子相互作用の特異性および転写経路に対して結果として生じる影響による。
【0006】
T細胞急性白血病(T−ALL)のLMO2遺伝子は、染色体転座−マスター遺伝子のパラダイムである(13に概説されている)。LMO2は、小型LIMオンリータンパク質をコードする4つの遺伝子ファミリーに属し、その2つはT−ALLを生ずる独立染色体転座に関与する。LMO2は第11染色体、バンドp13に位置し、T細胞において14q11または7q35による染色体転座によって特異的に活性化される。これらの染色体転座のブレークポイントは、天然のLMO2プロモーターの上流に生じ、転座が生じた細胞のLMO2タンパク質の強制的な発現を生じる(タンパク質産物自体はこれによって影響されない)。遺伝子は転写され、各々2つのLIMフィンガーを有する2つの亜鉛結合LIMドメインを含む156ααタンパク質に翻訳される(各LIMフィンガーは、亜鉛原子および約16〜20残基のフィンガーに配位する、4つのシステインまたは3つのシステインプラス1つのヒスチジンまたはアスパラギン酸残基の亜鉛結合モチーフを含む、図1)。LIMドメインはGATA Znフィンガーに構造的に関連するが、LIMドメインの特徴は2つのααだけによる各LIM Znフィンガーの分離である。LIMドメインの機能は、染色体転座−マスター遺伝子産物の一定の特徴であるタンパク質−タンパク質相互作用にある1416。LMO2は、赤血球細胞に見られるDNA結合複合体のTAL1/SCL(別のT−ALL転座関連タンパク質)、LDB1およびGATA−1に結合することができる17。この複合体は、約12塩基対によってGATA部位から分離されたEボックスを含む二連DNA部位に結合することができる。本発明者らは、LMO2の第2のLIMドメインに特異的に結合し、LMO2の細胞機能を阻害することができるペプチドアプタマーセットを単離した。これらの試薬は、腫瘍血管新生を阻害、LMO2介在性T細胞白血病を阻止、虚血、炎症および糖尿病性網膜症などの、血管新生が重要な臨床状態においてLMO2機能を阻害するのに有用であるはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、細菌タンパク質チオレドキシン(Trx)の外部ループに基づいてペプチドアプタマーライブラリーをスクリーニングし、LMO2タンパク質の第2のLIMドメイン(LIM2)に特異的に結合するペプチドセット(「抗LMO2試薬/LIM2阻害剤」として本明細書において知られている)を同定した。これらのペプチドアプタマーは、驚くべきことに、転写因子LMO2に依存する胚形成および血管新生においてLMO2の機能を阻害することが見出された。
【0008】
従って、これらのLIM2阻害剤/抗LMO2試薬は、腫瘍血管新生などの病的状況においてLMO2機能を防止する、LMO2介在性T細胞白血病を阻止する、ならびに虚血、炎症および糖尿病性網膜症などの、血管新生が重要な臨床状態においてLMO2機能を阻害する際において治療的にかなり有用であると考えられている。
【0009】
従って、第一の態様において、本発明は、LMO2のLIMドメインに結合し、LMO2の機能活性を阻害することができる薬剤(LIM2阻害剤/抗LMO2試薬)を提供する。
【0010】
本発明によると、(LMO2の機能活性)「を阻害する」という用語は、本発明の範囲において、好適な対照と比較したときのLMO2の機能活性の有意な阻害を含む。有利には、(LMO2の機能活性)「を阻害する」という用語は、好適な対照と比較するとき、機能活性の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%阻害をいう。最も有利には、(LMO2の機能活性)「を阻害する」は、好適な対照と比較するとき、LMO2の機能活性の95、96、97、98、99または100%阻害をいう。好適な対照は当業者に周知であり、本発明の詳細な説明および実施例にも記載されている。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、全てのLIM2阻害剤ペプチド(LMO2の機能活性を実質的に阻害するペプチド)は、以下に記載するコンセンサス配列を有することを見出した。コンセンサス配列は、LMO2の機能活性を阻害するのに必須であると本発明者らが考えているある構造的特徴をペプチドに与える。
【0012】
従って、本発明の上記の態様の好ましい実施態様において、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
His/CXXC
(式中、Cは亜鉛結合Cysであり、
Hisはヒスチジンを示し、
Xは任意のアミノ酸である)
を含む。
【0013】
本発明の上記の態様によると、有利には、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列
HhHis/CXX1Ch
(式中、hは疎水性アミノ酸を示し、
Hisはヒスチジンを示し、
Cはシステインを示し、
Xは任意のアミノ酸を示し、X1は荷電アミノ酸を示す)
を含む
【0014】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はアプタマーであり、上記のコンセンサス配列を含む。
【0015】
さらに有利には、本発明によるLIM2阻害剤は、図2cにクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上を含む。
【0016】
さらに有利には、本発明によるさらに別のLIM2阻害剤は、図2にクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上である。
【0017】
最も有利には、本発明によるLIM2阻害剤は、図2にクローン207、クローン209、クローン85として図示され、配列番号2、3および4にそれぞれ指定されているペプチド配列の任意の1つ以上である。
【0018】
本発明によるペプチド阻害剤は、拘束されていない形態またはC末端および/またはN末端が足場(スキャホールド)内に拘束されている形態で使用することができる。好適な足場は当業者に周知であり、天然型であってもまたは合成されたものであってもよい。好適な天然型足場は本発明の詳細な説明に記載されている。本発明によると、有利には、足場はタンパク質足場およびチオレドキシンタンパク質である。
【0019】
本発明によると、本発明による阻害剤は、1つ以上の細胞内標的剤を含むことができる。有利には、本発明による細胞内標的剤は核局在化シグナルである。好適な核局在化シグナルは当業者に周知であり、本発明の詳細な説明に記載されている。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による1つ以上のLIM2阻害剤/抗LMO2試薬および製薬学的に許容されうる担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物を提供する。
【0021】
本発明の上記の態様の好ましい実施態様において、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
His/CXXC
(式中、Cは亜鉛結合Cysであり、
Hisはヒスチジンを示し、
Xは任意のアミノ酸である)
を含む。
【0022】
本発明の上記の態様によると、有利には、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
HhHis/CXX1Ch
(式中、hは疎水性アミノ酸を示し、
Hisはヒスチジンを示し、
Cはシステインを示し、
Xは任意のアミノ酸を示し、X1は荷電アミノ酸を示す)
を含む。
【0023】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はアプタマーであり、上記のコンセンサス配列を含む。
【0024】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はアプタマーであり、上記のコンセンサス配列を有する。さらに有利には、本発明によるLIM2阻害剤は、図2cにクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上を含む。最も有利には、本発明によるさらに別のLIM2阻害剤は、図2にクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上である。
【0025】
本発明の上記の態様の別の実施態様において、LIM2阻害剤/抗LMO2試薬は本明細書に規定する抗体である。
【0026】
本発明の上記の実施態様によると、有利には、抗体はscFvである。本発明の上記の態様の別の実施態様において、抗体は本明細書に規定するdAbである。さらに有利には、本発明による抗体LIM2阻害剤は、本明細書に規定する細胞内結合抗体である。最も有利には、それらは細胞内結合scFv分子、重鎖ドメインidAbであってもまたは軽鎖ドメインidAbであってもよいidAb(細胞内結合シングルドメイン抗体)である。本発明のこの態様の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む細胞内結合抗体である。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも2つのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する3つ全てのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、Ser−Glyリンカー以外に、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列を含む細胞内結合scFvである。本発明のこの態様の最も好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列からなる細胞内結合scFvである。
【0027】
従って、さらに別の態様において、本発明は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)を提供する。
【0028】
好ましくは、本発明による抗LMO2抗体は、転座活性を担当するタンパク質のドメインまたは配列に融合または結合する。好適な転座ペプチドの詳細は本発明の詳細な説明に提供されている。
【0029】
有利には、本発明は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)にそれぞれ指定されているアミノ酸配列を有する3つのCDRを含み、一体として抗原結合部位を形成する抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)を提供する。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)をコードする核酸を提供する。
【0031】
有利には、本発明は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)にそれぞれ指定されているアミノ酸配列を有する3つのCDRを含み、一体として抗原結合部位を形成する抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)をコードする核酸を提供する。
【0032】
本発明のこの態様の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、ser−glyリンカー以外に、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列を含む細胞内結合scFvである。さらに別の態様において、本発明は、本発明によるLIM2阻害剤またはそれを含む組成物の、LMO2の機能活性を阻害する際の使用を提供する。
【0033】
さらに別の態様において、本発明は、LMO2の機能活性を阻害するための医薬品を製造する際の本発明によるLIM2阻害剤の使用を提供する。
【0034】
LMO2は哺乳類において多数の種々の役割を有することを本発明は示した。従って、本明細書に規定するLMO2の「機能活性」という用語は、哺乳類においてLMO2によって実施される作用の1つ以上、数種または全てをいう。さらに、「LMO2の機能活性の阻害」という用語は、哺乳類においてLMO2によって実施される機能の1つ以上、数種または全ての、本明細書に記載する実質的な阻害をいう。
【0035】
本発明者らは、LMO2は、血管新生(病的な血管新生および病的でない血管新生)、胚形成および白血病誘発を含む造血からなる群の状態において何らかの作用をすることを示した。
【0036】
本明細書において言う「血管新生」という用語は、成熟血管系を形成する一次毛細血管リモデリングの過程をいう。一方、「脈管形成」という用語は、一次毛細血管ネットワークが形成される脈管形成の一次過程をいう。重要なことに、LMO2は、血管新生過程において重要な作用を果たすが、脈管形成過程には作用しないことを本発明者らは示した。
【0037】
本明細書において言う「病的な血管新生」という用語は、血管新生が何らかの作用を果たす任意の疾病状態/状況をいう。本発明者らは、「病的な血管新生」は、腫瘍血管新生、腫瘍転移、虚血、炎症および糖尿病性網膜症からなる群から選択される状態に寄与することを示した。従って、本明細書において規定する「病的な血管新生」という用語は、本発明の範囲において、上記にいう状態の全てを含む。有利には、本発明によると、病的な血管新生は腫瘍血管新生および/または腫瘍転移である。
【0038】
「病的な血管新生」におけるLMO2の作用以外に、LMO2は、創傷治癒および月経などのある事象における「病的でない血管新生」においても作用を果たす。本発明によると、「病的でない血管新生」という用語は、本発明の範囲において、創傷治癒および月経を含む。
【0039】
本発明の上記の態様によると、使用はインビトロであってもまたはインビボであってもよい。インビボでの使用が有利である。
【0040】
上記のように、本発明は、LMO2は、血管新生、胚形成および造血などの過程においてある役割を果たすことを示した。従って、本発明によるLIM2阻害剤は、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症、創傷治癒の調節および月経の調節を含む状態を予防および/または治療する際に治療的にかなり有用となると本発明者らは考えている。
【0041】
従って、本発明のさらに別の態様において、医薬品に使用するために、本発明によるLIM2阻害剤またはこれを含む組成物が提供される。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症および創傷治癒からなる群から選択される1つ以上の状態を予防および/または治療するための医薬品を製造する際の本発明による1つ以上のLIM2阻害剤の使用を提供する。
【0043】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による1つ以上のLIM2阻害剤を、このような治療を必要としている患者に投与するステップを含む、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症および創傷治癒からなる群から選択される任意の1つ以上の状態を予防および/または治療するための方法を提供する。
【0044】
本発明の上記の態様によると、有利には、状態は腫瘍形成および/または腫瘍転移である。
【0045】
本発明の上記の態様の好ましい実施態様において、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
His/CXXC
(式中、Cは亜鉛結合Cysであり、
Hisはヒスチジンを示し、
Xは任意のアミノ酸である)
を含む。
【0046】
本発明の上記の態様によると、有利には、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
HhHis/CXX1Ch
(式中、hは疎水性アミノ酸を示し、
Hisはヒスチジンを示し、
Cはシステインを示し、
Xは任意のアミノ酸を示し、X1は荷電アミノ酸を示す)
を含む。
【0047】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はアプタマーであり、上記に示すコンセンサス配列を含む。
【0048】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はアプタマーであり、上記に示すコンセンサス配列を有する。さらに有利には、本発明によるLIM2阻害剤は、図2cにクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上を含む。最も有利には、本発明によるLIM2阻害剤は、図2cにクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202として図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されている10のペプチド配列の任意の1つ以上である。
【0049】
本発明の上記の態様の別の実施態様において、抗体はscFvである。さらに有利には、本発明による抗体LIM2阻害剤は、本明細書に規定される細胞内結合抗体である。最も有利には、それらは細胞内結合scFv分子、重鎖ドメインidAbであってもまたは軽鎖ドメインidAbであってもよいidAb(細胞内結合シングルドメイン抗体)である。本発明のこの態様の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有するCDR少なくとも1つを含む細胞内結合抗体である。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有するCDR少なくとも1つを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有するCDR少なくとも2つを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有するCDR3つ全て(at)を含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様の最も好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列からなる細胞内結合scFvである。
【0050】
本発明の用途および方法は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、サル、ウマからなる群から選択されるものを含むが、これらに限定されるわけではない哺乳類個体を治療するのに好適である。有利には、本発明の使用および方法はヒト個体を治療するのに有用である。
【0051】
本発明は、いかなる場合においても本発明を限定するものと考えるべきではない以下の実施例によって記載される。
【0052】
定義
「LMO2」は転写因子である。重要なことに、LMO2は、胚形成、造血および血管新生におけるいくつかの主要経路のマスターレギュレーターであり、LIMドメインに関係するタンパク質−タンパク質相互作用によりその機能を実行する。
【0053】
「ペプチド」という用語は、各アミノ酸のN末端においてアミド結合によって一体として結合している10以下、15以下、16以下、17以下、18以下、19以下、20以下、25以下、50以下のアミノ酸をいう。本発明によると、有利には、本発明による「ペプチド」という用語は、アミド結合によって互いに結合している25以下のアミノ酸をいう。最も有利には、「ペプチド」という用語は、N末端において一体として結合している20以下のアミノ酸をいう。本発明によるペプチドは分岐鎖状であってもまたは直鎖状であってもよい。有利には、本発明によるペプチドは直鎖状である。
【0054】
「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチド鎖の集合体をいう。本明細書において規定する「ポリペプチド鎖」は、各アミノ酸のN末端においてアミド結合によって一体として結合して鎖を形成している51以上のアミノ酸をいう。本発明のポリペプチド鎖は分岐鎖状であってもまたは直鎖状であってもよい。1つ以上のポリペプチド鎖は、二次および三次構造要素を有するタンパク質分子を含む。これらの構造要素は結果として得られるタンパク質の構造および機能を決定する。
【0055】
「抗LMO2試薬/LIM2阻害剤」は、LMO2のLIM−2ドメインに結合して、LMO2の機能活性を実質的に阻害する薬剤をいう。このような薬剤は天然型であっても合成であってもよい。好適な合成分子は小型分子を含む。好適な天然型分子は、タンパク質、特にモノクローナルまたはポリクローナルであってもよい抗体、ペプチドおよび/または核酸分子を含む。
【0056】
(LMO2の機能活性を)「阻害する」という用語は、好適な対照と比べて、LMO2の機能活性の有意な阻害をいう。有利には、(LMO2の機能活性を)「阻害する」という用語は、好適な対照と比べて、LMO2の機能活性の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%阻害をいう。最も有利には、(LMO2の機能活性を)「阻害する」という用語は、好適な対照と比べて、LMO2の機能活性の95、96、97、98、99または100%阻害をいう。好適な対照は当業者に周知であり、本発明の詳細な説明および実施例にも記載されている。LMO2は哺乳類において多数の種々の役割を有する。従って、本明細書に規定するLMO2の「機能活性」という用語は、細胞においてLMO2によって実施される作用の1つ以上、数種または全てをいう。さらに、「LMO2の機能活性の阻害」という用語は、哺乳類においてLMO2によって実施される機能の1つ以上、数種または全ての、本明細書に記載する実質的な阻害をいう。本発明者らは、LMO2は、血管新生(病的な血管新生および病的でない血管新生を含む)、ある種の形態のT細胞白血病、炎症、創傷治癒、虚血および糖尿病性網膜症からなる群の状態において何らかの作用をすることを示した。
【0057】
本明細書に使用する抗体は、選択された標的に結合することができる抗体断片または完璧な抗体をいい、かつFv、ScFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体およびヒト化抗体を含む改変抗体、ならびにファージディスプレイまたは別の技法を使用して作製され、人工的に選択された抗体を含む。FvおよびScFvなどの小さい断片は、それらの小さいサイズおよび結果として得られる優れた組織分布によって、診断および治療的適用のための有利な特性を有する。好ましくは、本発明によるLIM2阻害剤抗体は、シングル重鎖ドメイン抗体(重鎖ドメインdAb)、シングル軽鎖ドメイン抗体(軽鎖ドメインdAb)またはscFv分子である。さらに好ましくは、本発明によるLIM2阻害剤抗体は、本明細書に規定する細胞内結合シングルドメイン抗体分子(idAb)である。本明細書に規定する「抗体」という用語はまた、本発明の範囲において、少なくとも1つの重鎖可変ドメインおよび少なくとも1つの抗体不変領域ドメインを含む抗原結合部分を含む分子を含む。
【0058】
免疫グロブリン分子重鎖および軽鎖可変ドメインのCDR(相補性決定領域)は、フレームワーク領域残基でなく、可変領域の超可変ループ内に含有されるアミノ酸残基をいう。これらの超可変ループは、免疫グロブリンとリガンドの相互作用に直接関与する。これらのループ内の残基は、フレームワーク領域内と比較して保存の程度が低い傾向がある。
【0059】
細胞内は細胞の内部を意味する。細胞は、原核細胞または真核細胞の任意の細胞であってもよく、好ましくは、細菌細胞、酵母細胞および高等真核細胞からなる群から選択される。酵母細胞および哺乳類細胞が最も好ましい。従って、本明細書において使用する「細胞内」抗体および標的またはリガンドは、細胞(細胞質および核を含む)内に存在する抗体および標的/リガンドである。また、「細胞内」という用語は、細胞内環境に類似しているまたはそれを模倣している環境をいう。従って、「細胞内」は細胞内ではなく、インビトロである環境をいう場合がある。例えば、本発明の方法は、市販品を入手してもまたは天然の系から誘導してもよいインビトロにおける転写および/または翻訳系において実施することができる。従って、本発明による「細胞内結合抗体」は、本明細書において規定する細胞内環境において1つ以上の抗原に特異的に結合することができる、本明細書において規定する抗体である。
【0060】
「血管新生」という用語は、成熟血管系を形成する一次毛細血管リモデリングの過程をいう。一方、「脈管形成」という用語は、一次毛細血管網が形成される脈管形成の一次過程をいう。重要なことに、LMO2は、血管新生過程において重要な作用を果たすが、脈管形成過程には作用しないことを本発明者らは示した。
【0061】
「病的な血管新生」という用語は、血管新生が何らかの作用を果たす任意の疾病状態/状況をいう。本発明者らは、「病的な血管新生」は、腫瘍血管新生、腫瘍転移、虚血、炎症および糖尿病性網膜症からなる群から選択される状態に寄与することを示した。従って、本明細書において規定する「病的な血管新生」という用語は、本発明の範囲において、上記にいう状態の全てを含む。有利には、本発明によると、病的な血管新生は腫瘍血管新生および/または腫瘍転移である。
【0062】
LMO2はまた、創傷治癒および月経などのある種の事象における「病的でない血管新生」に何らかの作用を果たす。従って、本発明によると、「病的でない血管新生」という用語は、本発明の範囲において、創傷治癒および月経を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の詳細な説明
一般的な技法
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技法および生化学における)当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。分子、遺伝子および生化学的方法(参照することにより本明細書に組入れられる、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989年)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1999年)第4版、John Wiley&Sons, Inc.を一般に参照)ならびに化学的方法の標準的な技法を使用する。また、標準的な免疫学的技法のためにHarlow&Lane.,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor、N.Y.に言及する。
【0064】
(A)本発明によるLIM2阻害剤の特徴
第一の態様において、本発明は、LMO2のLIM2ドメインに結合して、その機能活性を阻害することができる薬剤を提供する。
【0065】
本発明によると、「LIM2阻害剤/抗LMO2試薬」は、LMO2のLIM−2ドメインに結合し、LMO2の機能活性を実質的に阻害する薬剤をいう。このような薬剤は天然型であってもまたは合成されたものであってもよい。好適な合成分子は小型分子を含む。好適な天然型分子は、タンパク質(特にモノクローナルまたはポリクローナルであってもよい抗体)、ペプチドおよび/または核酸分子を含む。有利には、本発明による抗LMO2抗体は本明細書に規定するscFv分子またはdAb分子である。さらに有利には、本発明による抗体LIM2阻害剤は本明細書に規定する細胞内結合抗体(細胞内抗体)である。最も有利には、それらは細胞内結合scFv分子、重鎖ドメインidAbであってもまたは軽鎖ドメインidAbであってもよいidAb(細胞内結合シングルドメイン抗体)である。本発明のこの態様の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む細胞内結合抗体である。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも1つのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する少なくとも2つのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有する3つ全てのCDRを含む細胞内結合idAbまたはscFvである。本発明のこの態様のさらに別の好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、Ser−Glyリンカー以外に、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列を含む、有利にはそれからなる細胞内結合scFvである。本発明のこの態様の最も好ましい実施態様において、抗体LIM2阻害剤は、図8に図示され、配列番号12に指定されているアミノ酸配列を含む、有利にはそれからなる細胞内結合scFvである。
【0066】
(i)抗体
抗体作製
LMO2のLIM2ドメインに形成される抗体は、標準的な実験技法を使用して作製することができる。組換えタンパク質または天然起源由来のものを使用して抗体を作製することができる。例えば、サル、ヤギ、ウサギまたはマウスなどの哺乳類をチャレンジするためにタンパク質(すなわち「免疫原」)を投与する。得られた抗体をポリクローナル血清として採取してもよく、またはチャレンジ動物の抗体産生細胞を(例えば、不死化融合パートナーと融合してハイブリドーマを作製することによって)不死化し、次いで細胞にモノクローナル抗体を産生させてもよい。
【0067】
1ai.ポリクローナル抗体
抗原タンパク質は、単独で使用してもまたは免疫原性を増加するために従来のキャリアに結合してもよく、上記に記載するようにペプチド−キャリアコンジュゲート体に対する抗血清を動物において形成する。キャリアタンパク質へのペプチドの結合および免疫化は記載されているように(Dymecki et al.(1992年)J. Biol. Chem.,267:4815)実施することができる。血清は、ELISAまたは別の方法としてドットもしくはスポットブロッティングによってタンパク質抗原に対する抗体価を測定する(Boersma and Van Leeuwen(1994)J. Neurosci. Methods,51: 317)。例えば、Green et al.,(1982)Cell,28:477の手法によるELISAによって、血清は適切なペプチドと強く反応することが示される。
【0068】
1aii.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体を作製するための技法は周知であり、Arnheiter et al.(1981)Nature,294, 278によって記載されているように、好ましくは、キャリアに結合した任意の抗原を使用してモノクローナル抗体を作製することができる。モノクローナル抗体は、典型的には、ハイブリドーマ組織培養液またはハイブリドーマ組織を導入した動物から得られる腹水から得られる。にもかかわらず、モノクローナル抗体は、タンパク質「に対して形成される」またはタンパク質「によって誘導される」と記載されていることがある。
【0069】
モノクローナル抗体は、形成後、数多くの手段のいずれかによって機能および特異性について試験される。同様の手法を使用して、ファージディスプレイまたは他のインビトロ選択技術によって作製される組換え抗体を試験することもできる。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(またはポリクローナル血清)も免疫原に対する抗体結合についてスクリーニングすることができる。特に好ましい免疫学的試験には、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、イムノブロッティングおよび免疫沈降(Voller,(1978)Diagnostic Horizons,2:1,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville, MD;Voller et al.(1978)J. Clin. Pathol., 31: 507;米国再発行特許第31,006号;英国特許第2,019,408号;Butler(1981)Methods Enzymol.,73:482;Maggio,E.(編),(1980)Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, FL参照)またはラジオイムノアッセイ(RIA)(Weintraub, B., Principles of radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March 1986, 1〜5、46〜49および68〜78ページ)が挙げられ、免疫原に対する抗体の免疫原との結合を検出する全ては、このような検出を容易にするために標識される必要がある。抗体分子を標識するための技法は当業者に周知である(Harlow and Lane(1989)Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory,1〜726ページ参照)。
【0070】
(1b)ウェスタン(抗体)ブロット法
抗体結合の特異性を試験するためのウェスタンブロット法は当業者に周知の方法を使用して実施することができ、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989年)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N. Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology(1999年)に詳細に記載されている。
【0071】
細胞内抗体
細胞内抗体(細胞内結合抗体)LIM2阻害剤は、LMO2の機能活性を阻害する際に特に有用である。細胞内環境においてそれらの機能を可能にするこれらの抗体の構造および特徴はPCT/GB2002/003512、PCT/GB2003/001077、GB 0226728.4およびGB0026727.6に記載されている。これらの出願は参照することにより本明細書に組入れられる。有利には、本発明による細胞内抗体(細胞内結合抗体)は、図8に示し、配列番号12として図示するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるscFvである。
【0072】
(ii)LIM2阻害剤としてのペプチド
本発明によると、「ペプチド」という用語は、アミド結合によって各アミノ酸のN末端で結合されている10以下、15以下、16以下、17以下、18以下、19以下、20以下、25以下、50以下のアミノ酸をいう。本発明によると、有利には、本発明による「ペプチド」という用語は、アミド結合により互いに結合されている25以下のアミノ酸をいう。最も有利には、「ペプチド」という用語は、N末端において一体として結合している20以下のアミノ酸をいう。本発明によるペプチドは分岐鎖状であってもまたは直鎖状であってもよい。有利には、本発明によるペプチドは直鎖状である。
【0073】
一方、「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチド鎖の集合体をいう。本明細書において規定する「ポリペプチド鎖」は、各アミノ酸のN末端においてアミド結合によって一体として結合して鎖を形成している51以上のアミノ酸をいう。本発明のポリペプチド鎖は分岐鎖状であってもまたは直鎖状であってもよい。1つ以上のポリペプチド鎖は、二次および三次構造要素を有するタンパク質分子を含む。これらの構造要素は結果として得られるタンパク質の構造および機能を決定する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様において、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
His/CXXC
(式中、Cは亜鉛結合Cysであり、
Hisはヒスチジンを示し、
Xは任意のアミノ酸である)
を含む。
【0075】
有利には、LIM2阻害剤はペプチドであり、コンセンサス配列:
HhHis/CXX1Ch
(式中、hは疎水性アミノ酸を示し、
Hisはヒスチジンを示し、
Cはシステインを示し、
Xは任意のアミノ酸を示し、X1は荷電アミノ酸を示す)
を含む。
【0076】
有利には、本発明によるペプチドLIM2阻害剤はペプチドアプタマー(20mer)であり、上記に示すコンセンサス配列を含む。
【0077】
LIMドメインはタンパク質相互作用のインターフェースを提供し1416、LIMオンリータンパク質LMO2はそのLIMドメインを介していくつかのパートナーに結合することが以前に報告されている。
【0078】
LMO2のLIMドメインタンパク質−タンパク質相互作用を調節することによって、腫瘍血管新生などの内皮リモデリングの重要な特別の段階を調節することができることを本発明者らは示している。
【0079】
本発明による抗LMO2ペプチドアプタマーは、Trxタンパク質足場内のペプチドドメインを含む20のアミノ酸に包埋されているcys−x−x−cysモチーフを保存している207のペプチドによって特徴づけられる。本明細書に記載する抗LMO2ペプチドアプタマーはLMO2 LIMドメインに特異的に結合し、LMOオンリータンパク質のいずれにも効率よく結合しない。LMO2結合はcys/his−x−x−cysモチーフに依存していることならびに隣接する疎水性残基の保存は両側およびその間の荷電残基に依存していることをペプチドアプタマーの分析は示している。赤血球新生アッセイによって例示するように(図4)、207ペプチドは特異的な結合(図3)およびLMO2機能の阻害に有効である。ペプチドアプタマーはLMO2のLIM2ドメインに結合し、ペプチド配列の調査は、この任意の明らかな理由だけでなく、LMOファミリーの他のメンバーを上回るLMO2の特異性の任意の明らかな理由も明らかにしていない。
【0080】
アミノ酸の種類
本明細書に記載する荷電、極性無電荷および疎水性(非極性)アミノ酸を以下の表に分類する。アミノ酸の保存的置換の場合には、第2のカラムの同じブロックのアミノ酸、好ましくは、第3のカラムの同じラインのアミノ酸を互いに置換することができる:
【表1】

【0081】
(iii)本発明によるペプチド阻害剤に使用するタンパク質足場
本発明によるペプチドLMO2阻害剤は拘束されていない形態で使用してもまたは別の方法として足場との1つ以上の結合を介してペプチドのNおよび/またはC末端に拘束されていてもよい。好適な足場は天然型であってもまたは合成されたものであってもよい。有利には、本発明によると、足場はタンパク質足場である。
【0082】
好適な足場は当業者に周知であり、免疫グロブリンドメインに基づいた足場、SpAなどの細菌受容体に基づいた足場、フィブロネクチン、リポカリン(lipcallin)、CTLA4に基づいたものからなる群から選択されるものが挙げられる。他の好適な足場には、フィブロネクチンおよびアフィボディに基づいたものが挙げられる。他の好適な足場には、van den Beuken et al.,J. Mol.Biol.(2001)310,591〜601に記載されているリポカリンおよびCTLA4、ならびに国際公開公報第0069907号(Medical Research Council)に記載されているものなどの足場が挙げられ、これは、例えば、細菌GroELの環構造または他のシャペロンポリペプチドの環構造に基づいている。
【0083】
有利には、本発明によると、足場はTrxタンパク質(細菌タンパク質チオレドキシン)である。
【0084】
liii.核酸抗LMO2試薬/LIM2阻害剤
本発明によると、LIM2阻害剤/抗LOM2試薬は核酸分子を含んでもよい。有利には、このようなLIM2阻害剤はアンチセンスRNAである。このようなRNAを作製する方法およびそれらの使用方法は当業者に周知である。
【0085】
(C)本発明によるLIM2阻害剤/抗LMO2試薬を使用するLMO2の機能活性の阻害
さらに別の態様において、本発明は、LMO2の機能活性を阻害する際における、本発明によるLIM2阻害剤またはそれを含む組成物の使用を提供する。
【0086】
LMO2は哺乳類において多数の種々の役割を有することを本発明は示している。従って、本明細書に規定するLMO2の「機能活性」という用語は、哺乳類においてLMO2によって実施され、本明細書に記載する作用の1つ以上、数種または全てをいう。さらに、「LMO2の機能活性の阻害」という用語は、本明細書に記載する実質的な阻害をいうか、または哺乳類においてLMO2によって実施される機能の1つ以上、数種または全てをいう。
【0087】
本発明により、(LMO2の機能活性)「を阻害する」という用語は、本発明の範囲において、好適な対照と比較した時の、LMO2の機能活性の有意な阻害を含む。有利には、(LMO2の機能活性)「を阻害する」という用語は、好適な対照と比較して、LMO2の機能活性の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%阻害をいう。最も有利には、(LMO2の機能活性)「を阻害する」という用語は、好適な対照と比較して、LMO2の機能活性の95、96、97、98、99または100%阻害をいう。好適な対照は当業者に周知であり、本発明の詳細な説明およびまた実施例に記載されている。
【0088】
本発明者らは、LMO2は、血管新生(病的な血管新生および病的でない血管新生を含む)、胚形成および白血病誘発を含む造血からなる群の状態に何らかの作用をすることを示した。
【0089】
さらに具体的には、LMO2は、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症、創傷治癒および月経からなる群から選択される状態の任意の1つ以上において何らかの影響を及ぼすと本発明者らは考えている。
【0090】
ci)哺乳類におけるLMO2の作用:
(cia)造血細胞運命におけるLMO2の作用
LMO2機能獲得遺伝子導入マウスモデルにおいて生じるT細胞腫瘍を検討することによって、本発明者らは、この場合には、タンデムEボックスを含む二連配列に結合する類似のLMO2関連複合体を検出することができた18。これらの観察により2つの結論に至った。第一に、LMO2は赤血球細胞において検出されるタンパク質複合体の架橋要素であると思われるので、LMO2複合体の要素は造血分化全体を変更する可能性があり、遺伝子セットを調節することによって種々の発生段階依存的な機能を調節することができると思われる。LMO2は造血細胞の運命を調節する際に明確な作用を有するということに帰結する。第二に、T−ALLにおけるLMO2の作用は、おそらく、タンパク質複合体の強制的な形成による(染色体転座後の強制的なLMO2発現の直接の結果)。従って、LMO2複合体を介する遺伝子調節に影響を及ぼすことができる。これは、直接的なDNA結合複合体または通常の作用からのタンパク質の隔絶によって生じうる13
【0091】
正常な造血において細胞運命を調節する際のLMO2の作用は主に遺伝子ターゲティング実験によって証明されている。相同組換えによって胚性幹細胞(ES細胞)においてヌル突然変異を作製し、ヘテロ接合体マウスを作製した。これらのマウスの繁殖によって、卵黄嚢赤血球新生の失敗によりE9〜10期において胚が死亡し19、LMO2はマウス胚形成の原始赤血球新生に必要であることを示している。成体(最終的な)造血におけるLMO2の可能な作用に関しての検討は、キメラマウスを用いて実施され20、LMO2遺伝子が存在しない場合には造血は生じないことを明らかにした。従って、LMO2は最終的な造血の早期段階において細胞内で自律的に機能する。この重要な機能は、多能性幹細胞のレベルであっても、前多能性子孫(immediate multi−potential progeny)レベルであってもまたは場合によっては、中胚葉がこれらの前駆体を生じさせる、その前であってもよい。
【0092】
(cib)胚形成におけるLMO2の作用
本発明者らは、内因性LMO2遺伝子のlacZノックインを使用して、胚形成におけるLMO2発現のためのリポーターシステムを確立して21、E8.5から、LMO2は内皮細胞および血液前駆細胞においてより特異的な胚体内発現パターンを有することを見出した。E10.5では、最終的な造血が大動脈−性腺−中腎(AGM)領域において開始すると考えられる場合には、LMO2は血管系の内皮細胞および多能性血液前駆細胞において発現される21,22。追加の発現部位は肢芽および海馬において観察された。卵黄嚢および血液前駆細胞におけるLMO2の発現パターンは原始的および最終的造血における機能と一致している。最初の胚内造血幹細胞活性はほぼE10.5付近のAGM領域に現れると考えられ、造血幹細胞は、背部大動脈などの大きい動脈の内皮由来である23,24。マウス胚形成では、血管芽細胞(内皮および血液細胞の共通の前駆体であると推定される)は特定されていない後部中胚葉から生じることが提案されており、従って初期毛細血管網はこれらの血管芽細胞から形成される。毛細血管網が形成される脈管構築のこの最初の過程は脈管形成と呼ばれている。さらに成熟した血管系は、血管新生と呼ばれる過程において初期毛細血管網のリモデリングによって形成される25。特に、血管系構築における造血幹細胞の特定前のLMO2の早期作用は、キメラにおいて無LMO2ES細胞の運命を追跡することによって検討された21。無LMO2ES細胞は、E9以前のキメラマウスにおける毛細血管網に寄与しうる。しかし、E10付近では、内皮における無LMO2ES細胞寄与の失敗により、顕著な血管組織崩壊がキメラマウスにおいて観察される。E11以降では、大きい動脈の内皮への無LMO2ES細胞の寄与はない。これらの結果は、LMO2は血管新生に必要であるが、脈管形成には必要でないことを示している。LMO2は内皮細胞および血液前駆細胞において発現され、造血および血管新生において二重の機能を有する。内皮と血液細胞特定化の密接な関係を考えると、マウス発生のこの臨界的な段階におけるLMO2の作用は極めて重要である。このタンパク質のこの主要な作用は、LMO2のヌル変異によって成体の造血が失敗する理由を順に説明することができる。
【0093】
(cic)腫瘍血管新生におけるLMO2の作用
LMO2を欠損するES細胞は腫瘍増殖中に血管新生を支援することができないので、LMO2タンパク質は腫瘍血管新生に必須であることも本発明者らは示している26。創傷治癒または月経ならびに腫瘍血管新生、虚血、炎症および糖尿病網膜症などの病的状態などの、血管新生のこのリモデリング過程が必要とされる数多くの状況が成体に存在する27。癌では、血管新生は固形腫瘍増殖および浸潤(転移)の主要な部分である。全ての細胞と同様に、癌細胞は、酸素と二酸化炭素の交換を必要とし、従って、固形腫瘍は増殖を促進するために血液供給を形成する必要がある28,29。これは、腫瘍血管新生過程において局所的な血管内皮を破壊して25,30、腫瘍沈着物への既存の内皮の芽出を可能にすることによって達成される31
【0094】
この血管新生スイッチは、血管新生刺激因子が相対的に増加する場合に生じ、腫瘍増殖では、がん細胞は血管新生性となり、必要なリモデリング状態を刺激する。さらに、モザイク状血管の概念は、血管壁の大部分が腫瘍細胞から形成される可能性があり32、これらの細胞は血管内腔内に絶えず脱落しており、従って血液循環が転移集団に寄与することを示すデータによって強く支持されている。また、いわゆる血管芽細胞様内皮前駆体は骨髄から採用されることもあり31、血管壁細胞の別の供給源となっている。血管新生のこれらの特徴は、癌において患者を治療するための主要な標的として提案されている28,29。血管芽出過程を刺激するが、血管リモデリングの転写調節因子についてはほとんど知られていない血管内皮増殖因子34などの、血管新生を調節するいくつかの主要な分子が同定されている。その多くは転写因子である新規遺伝子が同定されている、ヒト白血病における染色体転座の検討から得られた候補もある(1に概説されている)。LMO2遺伝子は一例である。この遺伝子はマウス胚の内皮細胞において通常発現され21、その内皮細胞で、この遺伝子が、脈管化が生じた後の血管新生に必要とされる。腫瘍血管新生ではLMO2の発現が増大される。さらに、LMO2が存在しない場合には、ES細胞腫瘍モデルでは、固形腫瘍における成熟した血管系の発生は妨害される。
【0095】
(cii)LMO2の機能活性を試験するアッセイ
LMO2の機能活性を評価するアッセイは当業者に周知である。好適なアッセイは、LMO2のヌル変異が赤血球分化経路を不活性化するとき、LMO2タンパク質の機能に依存することが周知である、インビトロにおけるES細胞の赤血球細胞への分化を測定する19,20。LMO2のヌル変異によって血管新生も生じない38
【0096】
本発明者らは、ES細胞においてTrx207タンパク質を発現することによって赤血球生成に対する影響を阻害することを観察することができた。阻害レベルはESクローン間で異なり、最大レベルは〜70%に達した。この不完全な阻害は、選択したESクローンにおけるTrx207タンパク質発現レベルの変動によると本発明者らは考えた。20merのペプチド(アプタマー)が外側ループに付加されているTrxタンパク質を発現することから生ずる問題もあり(データは示さず)、これは、異なる足場がペプチドを提示する際により有効となりうることを意味する可能性がある。
【0097】
従って、207ペプチドなどの抗LMO2ペプチドアプタマーが異なる足場においてさらに有効である可能性がある。実際、拘束されていないペプチドアプタマーが極めて有効である可能性がある。この証拠は、GAL4−207融合タンパク質は、Trx207タンパク質に匹敵するレベルでLMO2のLIM2ドメインと相互作用することができたという形態で提供される(図3)。
【0098】
(ciii)抗LMO2試薬/LIM2阻害剤の患者の細胞への送達
一般に、本発明によるLIM2阻害剤が細胞に送達される。有利には、それは細胞核に送達される。
【0099】
Ciiia)細胞内発現
このような分子を細胞内環境に導入するために、有利には、1つ以上のLIM2阻害剤をコードする核酸を細胞にトランスフェクションする。
【0100】
このような阻害剤をコードする核酸を発現のためのベクターに組込むことができる。本明細書において使用するベクター(またはプラスミド)は、発現のために異種DNAを細胞に導入するために使用される別個の要素をいう。このような搬送体の選択および用途は当業者の技術の範囲内である。多数のベクターが利用可能であり、適当なベクターの選択は、ベクターの意図された用途、ベクターに挿入される核酸のサイズおよびベクターで形質転換する宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能およびそれが適合する宿主細胞に応じて、種々の要素を含有する。ベクター要素は、一般に、複製開始点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、転写終結配列およびシグナル配列のうち、1つ以上を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0101】
さらに、一般的な操作および核酸増幅目的のために、本発明によるLIM2阻害剤をコードする核酸をクローニングベクターに組込むことができる。
【0102】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、一般に、選択した1つ以上の宿主細胞におけるベクターの複製を可能にする核酸配列を含有する。典型的には、クローニングベクターにおいて、この配列は宿主染色体DNAから独立したベクターの複製を可能にするものであり、複製開始点または自己複製配列を含む。種々の細菌、酵母およびウイルスのこのような配列が周知である。プラスミドpBR322の複製開始点はほとんどのグラム陰性細菌に好適であり、2mプラスミド開始点は酵母に好適であり、種々のウイルス開始点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス)は哺乳類細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製開始点要素は、COS細胞などの高レベルDNA複製に適する哺乳類細胞に使用される場合を除いて、哺乳類発現ベクターには必要とされない。
【0103】
ほとんどの発現ベクターはシャトルベクターである、すなわちそれらは少なくとも1つのクラスの生物において複製できるが、発現のために別のクラスの生物にトランスフェクションされることができる。例えば、あるベクターを大腸菌(E.coli)にクローニングし、宿主細胞染色体とは独立に複製できないにしても、このベクターを酵母または哺乳類細胞にトランスフェクションする。DNAは、宿主ゲノムに挿入することによっても複製することができる。しかし、核酸を切断するために制限酵素消化が必要とされるので、ゲノムDNAの回収は外因的に複製されるベクターの回収より複雑である。DNAはPCRによって増幅することができ、任意の複製能力を持たない宿主細胞に直接トランスフェクションすることができる。
【0104】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物に認識され、望ましい核酸に機能的に結合するプロモーターを含有する。このようなプロモーターは誘導的プロモーターであってもまたは構成的プロモーターであってもよい。プロモーターは、起源DNAからプロモーターを取り出し、単離したプロモーター配列をベクターに挿入することによって核酸に機能的に結合される。ペプチドをコードする核酸の増幅および/または発現を誘導するために未変性のプロモーター配列および多数の異種プロモーターを使用することができる。「機能的に結合する」という用語は、前記要素が、意図されたように機能を果たすことを可能にする関係にある近位をいう。コード配列に「機能的に結合する」調節配列は、調節配列に適合する条件下においてコード配列の発現が実施されるようにライゲーションされる。
【0105】
哺乳類宿主におけるベクターからの遺伝子転写は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、伝染性上皮腫、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルスおよびサルウイルス40(SV40)などのウイルスゲノム由来、アクチンプロモーターまたは非常に強力なプロモーター、例えば、リボソームタンパク質プロモーターなどの異種哺乳類プロモーター由来、ならびに免疫グロブリン配列に通常関連するプロモーター由来のプロモーターによって調節されうる。
【0106】
高等な真核生物による核酸の転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加することができる。エンハンサーは比較的に、方向および位置独立的である。哺乳類遺伝子(例えば、エラスターゼおよびグロビン)由来の多数のエンハンサー配列が周知である。しかし、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例として、複製開始部の後期側(bp100〜270のSV40エンハンサーおよびCMV初期プロモーターエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは望ましい核酸の5’または3’位置のベクターにスプライシングされうるが、好ましくは、プロモーターの5’部位に位置する。
【0107】
有利には、真核生物発現ベクターは遺伝子座調節領域(LCR)を含むことができる。LCRは、宿主細胞クロマチンに組込まれた導入遺伝子の高レベルの組込み部位独立的な発現を誘導することができ、特にベクターの染色体組込みが生じた永続的にトランスフェクションされた真核細胞系統に関して遺伝子が発現される予定の場合には、これは特に重要である。
【0108】
真核生物発現ベクターは、転写終結に必要な配列およびmRNAを安定化するのに必要な配列も含有する。このような配列は、通常、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および3’未翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、本発明によるLIM2阻害剤をコードするmRNAの未翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。
【0109】
哺乳類細胞において核酸の一時的な発現を提供する発現ベクターは、本発明を実施する上で特に有用である。一時的な発現は、通常、宿主細胞が発現ベクターの多数のコピーを蓄積し、次いで、高レベルの望ましい遺伝子産物を合成するように、宿主細胞において効率的に複製することができる発現ベクターの使用に関係する。
【0110】
(Ciiib)細胞への直接送達
LIM2阻害剤は、マイクロインジェクションまたは細胞膜と融合することができるリポソームなどの小胞を使用する送達によって細胞に直接導入することができる。ウイルス膜融合性ペプチドは、有利には、それに続く核への転座のために膜融合および細胞の細胞質への送達を促進するために使用される。
【0111】
(Ciiib1)核局在化シグナル
核局在化シグナルは、核に抗原を標的化することを担当するシグナルである。このような標的配列は、Baker et al.,1996,Biol Rev Camb Philos Soc 71,637〜702に一般的に概説されている。核局在化配列には、SV40ラージT抗原コンセンサス配列PKKKRKV(Dingwall,et al.,1991,Trends Biochem. Sci.16,478〜481に概説されている)またはヌクレオプラスミンタンパク質によって例示される二分核定位配列(bipartite nuclear localization)(Dingwall,et al.,1987,EMBO J. 6,69〜74;Robbins,et al.,1991,Cell 64,615〜623)が挙げられる。当業者は、細胞核に本発明によるペプチドを標的化する際に使用するのに好適な他の核局在化シグナルについて承知している。
【0112】
抗体は、マイクロインジェクションまたは細胞膜に融合することができるリポソームなどの小胞を使用する送達によって細胞に直接導入することができる。ウイルス融合ペプチドは、有利には膜融合および細胞の細胞質への送達を促進するために使用される。
【0113】
好ましくは、本発明による抗LMO2抗体は、細胞膜輸送活性を担当するタンパク質のドメインまたは配列に融合または結合される。好ましい輸送ドメインおよび配列には、HIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)、ショウジョウバエ(Drosophila)のアンテナペディアホモドメインタンパク質、および単純ヘルペス−1ウイルスVP22タンパク質のドメインおよび配列が挙げられる。この手段によって、本発明による抗LMO2抗体は、細胞の近くに導入されると、細胞またはその核に進入することができる。
【0114】
外から加えられたHIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)は、細胞膜を通過して、核に達し、ウイルスゲノムをトランス活性化することができる。輸送活性は、HIV−Tatのアミノ酸37〜72(Fawell et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 91, 664〜668)、37〜62(Anderson et al., 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 194,876〜884)および49〜58(塩基配列RKKRRQRRRを有する)において同定されている。Vives et al. (1997), J. Biol Chem 272,16010−7は、輸送、核局在化および細胞遺伝子のトランス活性化に重要であると思われるアミノ酸48〜60(CGRKKRRQRRRPPQC)からなる配列を同定した。β−ガラクトシダーゼおよびHIV−TATタンパク質トランスフェクションドメインからなる融合タンパク質を腹腔内注射すると、マウスの全組織に生物学的に活性な融合タンパク質が送達される(Schwarze et al., 1999, Science 285, 1569−72)。
【0115】
ショウジョウバエのアンテナペディアホモドメインタンパク質の第3ヘリックスも同様の特性を有することが示されている(Prochiantz, A., 1999, Ann N Y Acad Sci, 886,172−9に概説されている)。アンテナペディアの輸送を担当するドメインは、配列RQIKIWFQNRRMKWKKを有する塩基性アミノ酸に富むアミノ酸16の長さのペプチドに局在化されている(Derossi, et al. , 1994, J Biol Chem, 269,10444−50)。このペプチドは、培養中の細胞の細胞質および核に生物学的に活性な物質を誘導するために使用されている(Theodore,et al., 1995,J.Neurosci 15,7158−7167)。アンテナペディアホモドメインの第3ヘリックスの細胞内移行は受容体非依存的であると思われ、輸送過程は膜リン脂質との直接相互作用に関係することが示唆されている(Derossi et al., 1996, J Biol Chem, 271,18188−93)。
【0116】
単純ヘルペスウイルスのVP22テグメントタンパク質は細胞間輸送が可能であり、細胞の亜集団において発現されるVP22タンパク質は集団の他の細胞に広がる(Elliot and O’Hare, 1997,Cell 88, 223−33)。GFP
(Elliott and O’Hare, 1999, Gene Ther 6,1
49−51)、チミジンキナーゼタンパク質(Dilber et al. , 1999, Gene Ther 6,12−21)またはp53(Phelan et al. , 1998, Nat Biotechnol 16, 440−3)とVP22とからなる融合タンパク質は、この方法で細胞に標的化(ターゲッティング)されている。
【0117】
核および/または細胞膜を通過して輸送することができるタンパク質の特定のドメインまたは配列は突然変異誘発または欠失検討によって同定することができる。または、候補配列を有する合成または発現ペプチドをリポーターに結合し、輸送をアッセイすることができる。例えば、Vives et al. (1997), J Biol Chem 272,16010−7に記載されている方法によって、合成ペプチドをフルオレセインに結合し、輸送を蛍光顕微鏡によってモニターすることができる。または、緑色蛍光タンパク質をリポーターとして使用することができる(Phelan et al. , 1998, Nat Biotechnol 16, 440−3)。
【0118】
上記に記載するまたは輸送活性を有すると同定されているドメインまたは配列のいずれかを使用して、細胞の細胞質または核に免疫グロブリンを誘導することができる。ペネトラチンとしても周知の上記のアンテナペディアペプチドは、HIV Tatと同様に好ましい。輸送ペプチドは、N末端またはC末端を本発明によるシングルドメイン免疫グロブリンに融合することができる。N末端融合が好ましい。
【0119】
TLMペプチドも細胞への抗体の送達に有用である。TLMペプチドは、HBVのPre−S2ポリペプチド由来である。Oess S, Hildt E Gene Ther 2000 May 7: 750−8参照。抗DNA抗体技術も有用である。抗DNA抗体ペプチド技術は、Alexandre Avrameas et al. , PNAS val 95, pp 5601−5606, May 1998; Therese Ternynck etal., Journal of Autoimmunity (1998) 11,511−521 ;及びBioconjugate Chemistry (1999), vol 10 Number 1, pp 87−93に記載されている。
【0120】
(D)本発明によるLIM2阻害剤/抗LMO2試薬の用途.
本発明のさらに別の態様において、医薬品に使用するための本発明によるLIM2阻害剤またはそれを含む組成物が提供される。
【0121】
さらに別の態様において、本発明は、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症および創傷治癒からなる群から選択される1つ以上の状態を予防および/または治療するための医薬品を製造する際の、本発明による1つ以上のLIM2阻害剤の使用を提供する。
【0122】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による1つ以上のLIM2阻害剤を、治療を必要としている患者に投与するステップを含む、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症および創傷治癒からなる群から選択される1つ以上の状態を予防および/または治療するための方法を提供する。
【0123】
本発明による抗LMO2試薬/LIM2阻害剤は、インビボにおける治療的および予防的適用、インビトロおよびインビボにおける診断的適用、インビトロにおけるアッセイおよび試薬適用、機能的ゲノム学適用等に使用することができる。
【0124】
LMO2は、造血、血管新生および白血病誘発においてタンパク質相互作用によって機能する。従って、LMO2の阻害剤は、前者の検討のため、腫瘍増殖または血管リモデリングが重要である他の状態においておよび特定の白血病を治療する際に血管新生を予防および/または治療するための研究ツールとなる。本明細書に記載する抗LMO2ペプチドアプタマーはこれらの種々の状況のいずれかに使用することができる。
【0125】
本発明による抗LMO2試薬/LIM2阻害剤および組成物の治療的および予防的用途は、ヒトなどのレシピエント哺乳類に上記を投与することに関係する。好ましくは、それらは、哺乳類の細胞内環境への投与に関係する。
【0126】
少なくとも90〜95%の均一性のそれらを含む実質的に純粋なペプチドおよび/または足場分子が哺乳類への投与に好ましく、特に、哺乳類がヒトである場合には、98〜99%またはそれ以上の均一性が製薬学的な用途に最も好ましい。部分的にまたは望ましい均一性まで精製されたら、免疫グロブリン分子は診断的もしくは治療的に使用されても(体外的を含む)または当業者に周知の方法を使用してアッセイ手法を開発し、実施する際に使用されてもよい。
【0127】
例示的な適用において、「予防」という用語は、疾病の誘発前の防御組成物の投与に関係する。「抑制」は、疾病の誘発事象後であるが、臨床発現の前の組成物の投与をいう。
【0128】
本発明の選択した抗LMO2/LIM2阻害剤はインビボにおいてタンパク質機能を混乱させ、典型的には、炎症状態、腫瘍形成および/または転移、LMO2介在性T細胞白血病、虚血および糖尿病性網膜症を予防、抑制または治療する際に用途を見出している。また、抗LMO2試薬/LIM2阻害剤は、創傷治癒および/または月経の調節に用途を見出している。
【0129】
本発明による抗LMO2試薬/LIM2阻害剤、特に抗LMO2ペプチド/LIM2阻害剤ペプチドまたは抗LMO2細胞内抗体(拘束されていない形態または本明細書に言及する足場分子によってNおよび/またはC末端が拘束されている)は、有利には、核局在化シグナルをさらに含む。このような分子は、有利には、上記に言及する1つ以上の状態を治療する際の治療薬として使用される。
【0130】
疾病から防御するまたは疾病を治療する際に、本発明の選択した免疫グロブリンの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。
【0131】
一般に、本発明の選択した抗LMO2試薬/LIM2阻害剤は、純粋な形態で、薬理学的に適当な担体と共に使用される。典型的には、これらの担体として、水性またはアルコール/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、いずれも生理食塩液および/または緩衝媒体を含む。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムならびに乳酸加リンガーが挙げられる。ポリペプチド複合体を懸濁状態に維持するのに必要である場合には、生理学的に許容される好適な補助剤は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。
【0132】
静脈内賦形剤には、リンガーデキストロース系のものなどの流体および栄養補給剤ならびに電解質補給剤が挙げられる。保存剤ならびに抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどの他の添加剤も含有されてもよい(Mack (1982) Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版)。
【0133】
本発明の選択した阻害剤は、別個に投与される組成物として使用してもまたは他剤と併用使用してもよい。これらには、シクロスポリン、メトトレキセート、アドリアマイシンまたはシスプラチンおよびイムノトキシンなどの種々の免疫療法剤を挙げることができる。医薬組成物には、種々の細胞毒性剤または他の薬剤を本発明による抗LMO2試薬/LIM2阻害剤または場合によっては、本発明による選択した阻害剤の組み合わせと併用した「カクテル」を挙げることができる。
【0134】
本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に通常周知のもののいずれであってもよい。治療のためには、本発明による選択した阻害剤組成物は標準的な技法により任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路または適宜カテーテルを用いる直接注入を含む任意の適当な様式によってもよい。投与量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬剤の併用投与、禁忌(counterindications)および臨床医が考慮べき他のパラメーターに依存する。
【0135】
本発明の選択した阻害剤は、保存のために凍結乾燥して、使用時に好適な担体で再構成することができる。周知の凍結乾燥および再構成技法を使用することができる。凍結乾燥および再構成により種々の程度の機能活性の損失が生じることがあることならびに補正のために使用レベルを上方に調節する必要がある場合があることは当業者に理解されている。
【0136】
本発明の選択した抗LMO2試薬/LIM2阻害剤を含有する組成物またはそれらのカクテルは予防的および/または治療的治療のために投与することができる。ある治療適用において、選択した細胞集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅またはいくつかの他の測定可能なパラメーターを実施するのに十分な量は「治療的に有効な量」と規定される。この用量を達成するのに必要な量は、疾病の重症度および患者自身の免疫系の一般的な状態に依存するが、一般に体重1キログラムあたり0.005〜5.0 mgの選択した免疫グロブリンの範囲であり、さらに一般的には0.05〜2.0 mg/kg/用量の用量が使用される。予防的な適用のためには、本発明の選択した阻害剤分子を含有する組成物またはそれらのカクテルは、ほぼ同じまたはわずかに少ない量を投与することもできる。
【0137】
本発明による選択した1つ以上の抗LMO2試薬/LIM2阻害剤分子を含有する組成物は、哺乳類の選択した標的細胞集団の変更、不活性化、死滅または除去の助けとするために予防的および治療的状況に使用することができる。また、本明細書に記載するポリペプチドの選択したレパートリーは、標的細胞集団を選択的に死滅、欠損させる、または細胞の不均一な収集物から標的細胞集団を効果的に取り出すために体外的にまたはインビトロにおいて使用することができる。
【0138】
本発明は、以下の実施例により記載されるが、これは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0139】
実施例1:材料と方法
酵母2−ハイブリッドアッセイを使用するLMO2のペプチドライブラリーのスクリーニング
ライブラリーベクターは酵母選択マーカーとしてTRP1遺伝子を含有していたので、トリプトファン欠損培地において耐性を示す酵母TRP1の選択マーカーがロイシン欠損培地において耐性を示すLEU遺伝子と交換されているpBTM116ベクターの改良型のLexA DNA結合ドメインに切断型のマウスLMO2(aa 28−150)を融合した。このLexA−LMO2構築物をベイトとして使用して、L40酵母株を使用し、39に記載されているプロトコールにより、20merペプチドライブラリーの3×106の形質転換体35(親切にもDr. R. Brentによる提供を受けた)をスクリーニングした。109を超えるメンバーを含むこのライブラリーでは、大腸菌(E.coli)チオレドキシン(Trx)の活性部位ループを、20merペプチドを提示する足場として使用する。
【0140】
哺乳類2−ハイブリッドアッセイ
酵母Trx−ペプチド配列は、VP16活性化ドメインとの融合として哺乳類VP16ベクターpMVN(Clontech)にサブクローニングしたが、LMO2ベイトはpMベクターのGAL4 DNA結合ドメインに融合した40。LMO2とペプチドの相互作用をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において試験した。10%FCS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したαMEMにおいてCHO細胞を増殖させた。トランスフェクションの16〜24時間前にCHO細胞を6つのウェルプレート(ウェルあたり3×105細胞)に播種した。トランスフェクションは、polyfectトランスフェクション試薬(Qiagen)10μl、pMおよびpVP16ベクター各々500 ng、pG5ルシフェラーゼリポーターベクター500 ngならびにpRL−CMV(Dual−Luciferase Reporter Assay System, Promega)50 ngを使用して実施した。トランスフェクションしてから24〜36時間後に細胞を回収し、製造業者によりルシフェラーゼ活性アッセイを実施した。良好なペプチド3つを、GAL4 DNA結合ドメインとの融合としてpMベイトベクターにサブクローニングし、LMO2の異なる部分、他のLIMオンリータンパク質および他のジンクフィンガータンパク質との相互作用を試験した。
【0141】
抗LMO2ペプチドアプタマーを発現するES細胞系統の作製
KZ26およびH16細胞系統は以前に記載されており20、それぞれ、LMO2+/−(LMO2の一方の対立遺伝子にlacZ遺伝子がノックインされている)またはLMO2−/−である。AF6およびBB4細胞系統は、野生型ES細胞系統CCBのLMO2の一方の対立遺伝子に、それぞれ、Trx207またはTrxをノックインすることによって作製した。6B23細胞系統は、CMV−Trx207発現クローンが安定してトランスフェクションされているAF6のサブクローンであるが、G1およびA5細胞系統は、それぞれ、EFα−Trx207およびEFα−Trxを安定してトランスフェクションすることによってKZ26から作製された。
【0142】
胚様体の分化および赤血球新生アッセイ
異なるESクローンの胚様体(EB)へのインビトロにおける分化は、組換えヒト血管内皮成長因子は10ng/mlで使用し、マウスエリスロポイエチンは1単位/mlで使用し、ヒト塩基性線維芽細胞成長因子2は25ng/mlで使用し、マウスインターロイキン6は5ng/mlで使用したことをのぞいて以前に記載されているように41、実施した。11日間の培養後にEBが形成され、回収し、1.5mgのコラゲナーゼを含有する1mlのDMEM中で30分分離し、赤血球マーカーTer119の発現についてFACSによって細胞を分析した。
【0143】
実施例2:抗LMO2ペプチドアプタマーは、LIMフィンガーの要素と相同である
LMO2がGAL4 DNA結合ドメイン(DBD)に融合しているLMO2ベイトを用いて酵母ペプチドアプタマーライブラリー35,36をインビボにおいてスクリーニングした。酵母ペプチドアプタマーライブラリーは、ペプチドと標的タンパク質間の相互作用に好適な細菌チオレドキシン(Trx)タンパク質の外側ループに組込まれているランダムペプチド(20mer)を発現するさまざまなセットのクローンからなった。250のクローンが酵母スクリーニングにおいて同定され、再スクリーニング後にこれらのうちの15を特異的な結合物と指定した。DNAをこれらのプラスミドから単離し、配列データを得た(図2)。これらの配列の顕著な特徴は、15クローンのうち13クローンにモチーフcys−x−x−cysまたはhis−x−x−cysが存在することである(図2A)。哺乳類ルシフェラーゼ2−ハイブリッド転写活性化アッセイを使用してこれらのペプチドアプタマーを再評価したとき(以下参照、図3に示されている)、このモチーフを欠損する2つのクローン由来のタンパク質はこのさらに厳密なアッセイではLMO2ベイトと相互作用しなかったが、他は2−ハイブリッドアッセイにおいて種々の活性効率を示したことが見出された。各々哺乳類2−ハイブリッドアッセイにおいて得られたレベルのルシフェラーゼリポーター遺伝子の転写活性を有する、これらの誘導されたペプチドアプタマー配列の比較を図2Bに示す(ペプチドは、cys/his−x−x−cysモチーフに従って整列されている)。抗LMO2ペプチドのcys/his−x−x−cysモチーフは、LMO2の第2のLIMドメインの第1のLIMフィンガー(すなわち、his−leu−glu−cys)の一部との相同性が高いことが重要である(図2B)。
【0144】
抗LMO2ペプチドアプタマーの相同性はcys/his−x−x−cysモチーフの外側に延在する。種々の抗LMO2ペプチドアプタマーの比較(図2C)は、cys/his−x−x−cysモチーフの保存されている領域は、この領域の両側に数残基延在しており、一般にコアモチーフのN末端側の2つの疎水性残基、C末端側の1つの疎水性残基であることを示している。さらにしばしば、荷電アミノ酸はcys/his−x−x−cysの中心の2アミノ酸の2番目として存在する(図2C)ことが重要であり、これはLMO2 LIM2ドメインの相当領域の特徴である(図2B)。最後に、LMO2 LIM2cys/his−x−x−cysに隣接するval−tyrジペプチド(LMO2 LIM2ドメインの完全な要素はval−tyr−his−leu−glu−cys−pheである)はペプチドアプタマーの2つに保存されているが、LMO2と最も大きな相互作用を示す2つでは保存されていない(すなわち、207および209、図2B)。概して、抗LMO2ペプチドアプタマーの保存領域は疎水性−疎水性−cys−x−荷電−cys−疎水性残基である(図2C)。
【0145】
実施例3:抗LMO2ペプチドアプタマーはLMO2の第2のLIMドメインに特異的に結合する
酵母において発現されるランダムペプチドライブラリーから抗LMO2ペプチドアプタマーを単離した。抗LMO2ペプチドアプタマーとCHO細胞において発現されるLMO2タンパク質ベイトの相互作用後に報告されたルシフェラーゼの活性に基づいた哺乳類アッセイにおいて、LMO2との相互作用の活性および特異性をチェックした。活性レベルの結果を図2Bに要約し、DBD−Trxアプタマー融合を発現するクローン(ベイトと命名)およびVP16転写活性化ドメインに融合したLMO2を発現するクローン(プレイと命名)の同時トランスフェクション後に観察されるルシフェラーゼ活性の倍増加として表す各ペプチドアプタマーの活性を示す。最も高いレベルの活性を生ずる4つのアプタマーは、クローンTrx207、209、85および81から作製された。
【0146】
Trx−抗LMO2ペプチドアプタマー207(図3A)、209(図3C)および85(図3D)またはTrx足場を含まない抗LMO2ペプチドアプタマー207が融合されているGAL4 DBDを含む種々のベイトが、VP16転写トランス活性化ドメインに融合した種々の標的タンパク質と同時発現されている哺乳類リポーターアッセイにおいて抗LMO2ペプチドアプタマーによる結合の特異性を評価した。これらの「プレイ」は、LMO2、LMO2の個々のLIMドメイン(すなわち、LIM1またはLIM2)、関連するLIMオンリータンパク質LMO1およびLMO4、LMO相互作用タンパク質LDB1およびGATA1を含んだ(図3)。LMO2にだけまたはLMO2の第2のLIMドメイン(LIM2)に結合する抗LMO2ペプチドアプタマーはこのタンパク質とわずかに相互作用することができるが、Trx207はGATA1、Trx209および85との有意な結合を示さないことを本発明者らは観察した。3つ全ての場合において、LMO2の単離されたLIM2ドメインとの結合は、無傷のLMO2との結合よりはるかに良好であった。さらに、抗LMO2ペプチドアプタマーは、エストロゲン受容体α(ジンクフィンガータイプC4)またはプロテインキナーゼTTK(ジンクフィンガータイプC22)に見られるジンクフィンガードメインとの結合を示さなかったので、LIMドメインジンクフィンガーに特異的であった。
【0147】
酵母およびCHO相互作用アッセイを用いて得られたデータは、チオレドキシンタンパク質足場にN末端およびC末端の両方が拘束されているペプチドアプタマーを使用した。本発明者らは、LMO2と結合するための正確な配列要件を知らないので、拘束されていないペプチドの能力はこの分析段階では評価が困難であった。中間試験として、207ペプチドのN末端にだけGAL4 DBDが融合されている融合タンパク質ベイトをデザインした。このタンパク質を、VP16に融合されているLIMタンパク質を含むプレイタンパク質アレイと共にCHOリポーターアッセイに使用した(図3B)。このアッセイにおいて、本発明者らは、拘束されていない207ペプチドは、LMO2に特異的に結合する際にインビボにおいて同様に効果的であることおよびこのペプチドは、完全なLMO2タンパク質に結合するよりもさらに効率的にLMO2のLIM2ドメインに結合することを見出した。207ペプチドは、Trx内の構造的な拘束とは関係のないLIM2ドメイン領域に特異的に結合する配列を有することをこれらのデータは示している。
【0148】
実施例4:抗LMO2ペプチドアプタマーはLMO2タンパク質機能を阻害する。
LMO2は、造血、血管新生および白血病誘発37を含む機能的な状況の各々においてタンパク質相互作用によって機能するタンパク質相互作用モジュールである15,17。LMO2機能を阻害する抗LMO2ペプチドアプタマーの可能な用途を、LMO2に依存的であることが周知の、胚性幹(ES)細胞の赤血球型への分化を使用するLMO2依存的インビトロ培養アッセイにおいてアッセイした19。野生型ES細胞が分化するとき(図4A、CCB)、約20〜25%の細胞が赤血球細胞に分化し(赤血球表面タンパク質Ter119の発現によって測定)、ほぼ同じ数字が、LMO2+/−ES細胞を使用して得られた(図4A、ESクローンKZ2620,26)。一方、以前に記載されているように20、無LMO2突然変異体ES細胞は赤血球新生を受けなかった(図4A、ESクローンH16、LMO2−/−)。内因的LMO2転写プロモーターの制御下において(LMO2遺伝子のノックインとして、図4A、ESクローンAF6)またはLMO2遺伝子のこのノックインプラスCMVプロモーターのLMO2を発現する導入遺伝子(図4A、ESクローン6B23)またはEFαプロモーターのTrx207を発現する導入遺伝子(図4A、ESクローンG1)の制御下において、Trx207抗LMO2ペプチドアプタマーが分化中のES細胞において発現されるとき、赤血球細胞数の減少が生じた。ペプチド挿入のないTrxを発現する対照ESクローンでは赤血球分化の損失は生じなかった(図4A、ESクローンBB4およびA5)。従って、Trx207融合を発現するESクローンは、野生型レベルの約50〜70%に至る赤血球コロニー形成の阻害を示し(図4B)、この阻害には、207ペプチドアプタマーの存在が必要である。従って、抗LMO2ペプチドアプタマー207を発現するES細胞において特異的に赤血球新生が生じないのは、LMO2機能の阻害を示しており、この阻害は207ペプチドによって表されるペプチド配列に介在されることを示している(図4)。
【0149】
実施例5:抗LMO2細胞内抗体(抗LMO2 #14と指定されている)はマウス胚を発生する際に血管新生を遮断することができる。
結果および考察
細胞内捕獲方法(Tanaka et al., 2003; Tse et al., 2002a; Tse et al., 2002b; Visintin et al., 1999)によって、抗LMO2細胞内抗体を単離した。1つの細胞内抗体(抗LMO2 #14)は、哺乳類細胞リポーターアッセイにおいて複数のLMO2 LIMドメインに特異的に結合する(CHN & THR、未発表)。抗LMO2 #14はLMO2の生物学的機能を妨害することができるかどうかを判定することを本発明者らは望んだ。最初に、本発明者らは、培養中におけるESの赤血球または初期内皮細胞への分化を含むインビトロにおけるES細胞アッセイを使用した。記載されているように(Keller et al., 1993)、ES細胞に、抗LMO2 #14を発現するクローンをトランスフェクションし、これらの細胞および対照の未トランスフェクションES細胞に成長因子依存的分化を生じさせた。必要な培養期間後、表面マーカーTer119(赤血球特異的表面タンパク質)またはCD31(Pecam,pan−endothelialタンパク質)の発現について細胞を調査した。Ter119の存在は赤血球分化を示し、CD31の存在は血管内皮細胞のデノボ形成(脈管新生)を示す。血管新生はES細胞培養物において生じない。
【0150】
図5は、ES細胞の赤血球系統へのインビトロにおける分化の結果を示す。Lmo2の一方の対立遺伝子にlacZ遺伝子がノックインされ、Lmo2発現についてはその対立遺伝子を無発現にするが、Lmo2プロモーターの制御化におけるβ−ガラクトシダーゼ発現を可能にする(Lmo2発現のリポーターとして作用する)樹立ES系統であるサブクローンKZ26及び正常なES細胞(CCB)で、赤血球細胞へのほぼ同じレベルの分化が見られた(Yamada et al., 1998)。一方、Lmo2のホモ接合型ヌル突然変異を有するES細胞は赤血球新生を受けず(クローンH16)(Yamada et al., 1998)、抗LMO2ペプチドアプタマーを発現するESクローンは、赤血球級新生能力が激しく阻害されている(クローン6B23)。ES細胞において抗LMO2細胞内抗体#14を発現する影響は、Lmo2遺伝子のヌル突然変異と同様の影響を生じることである。ESクローン3Aは、pEF−BOSプロモーターの制御下で抗LMO2#14を発現する。成長因子を使用して、培養中に分化するようにこれらの細胞を誘導したとき、非常に低いレベル(対照の〜10%)のTer119−赤血球コロニーが見られた。抗LMO2#14細胞内抗体は赤血球新生においてLmo2機能を阻害すると本発明者らは結論づける。
【0151】
ES細胞アッセイにおけるLmo2機能の抗LMO2#14阻害の特異性の対照として、本発明者らは、ES分化アッセイにおいてCD31(Pecam)を発現する細胞の発生を評価した。これらの細胞は、Lmo2のヌル突然変異によってあまり影響されないES細胞の脈管新生過程中に形成する(Yamada et al., 2000)(図6、ESクローン H16)。ESクローンKZ26(Lmo2遺伝子のヘテロ接合型)、6B23(抗Lmo2アプタマーを発現する)または抗LMO2#14細胞内抗体を発現する3Aで、同様のレベルのCD31+細胞が観察された。従って、図5および図6のデータは、抗LMO2#14細胞内抗体は赤血球新生においてLmo2の機能に影響を与えることができるが、デノボ脈管新生に影響を与えないことを示している(ジーンターゲティング検討においてLmo2機能を規定する結果と同等である(Warren et al., 1994;Yamada et al., 1998;Yamada et al., 2000)。
【0152】
Lmo2は、既存の血管からの血管内皮のリモデリングにおいて何らかの作用を有するが(血管新生)、毛細血管のデノボ発生においては作用を持たない(脈管新生)(Yamada et al., 2000)。従って、LMO2のこの機能は、血管新生に関係する臨床的徴候の治療標的である。抗LMO2#14細胞内抗体が血管新生を遮断できる可能性があることを示すために、マウス胚における血管新生に基づいたアッセイを使用した(Yamada et al., 2000)。ドナー胚盤胞に注入され、偽妊娠レシピエントに導入されたES細胞はキメラ胚を発生し、注入されたES細胞から実質的な割合の細胞が誘導された。KZ26 ES細胞(Lmo2−lacZノックインについてヘテロ接合型)を胚盤胞に注入し、β−ガラクトシダーゼ活性について胚を染色するとき(Lmo2発現細胞において特異的に青色を示す)、本発明者らは発生中の脈管に染色を観察した(Yamada etal., 2000)。図7は、リモデリング中の血管の内皮細胞が、Lmo2遺伝子プロモーター発現により青に染色している胚日齢E10.5のキメラ胚標本を示す(左のパネル)。Lmo2のヌル突然変異を有するES細胞を用いて作製されたキメラ胚の同様の分析は、Lmo2が存在しない場合の毛細血管網の血管新生(リモデリング)の失敗により青い血管新生を示さなかった(図7、右のパネル)。抗Lmo2細胞内抗体を発現するES細胞を用いてキメラ胚を作製したとき、同じ所見が得られた(図7、中央のパネル)。この細胞内抗体がインビボにおいてLmo2タンパク質と結合すること(CHN & THR、未発表)およびそれがES細胞アッセイにおいてLMO2機能を遮断すること(図5および6)を示したので、抗Lmo2細胞内抗体は、Lmo2に結合し、そのタンパク質が血管内皮細胞において機能を発揮しないようにすることによって血管新生を防止すると本発明者らは結論づけた。
【0153】
抗LMO2細胞内抗体(scFv抗体断片を含む)が血管新生の血管新生セグメントにおいてLMO2機能を妨害することができるが、デノボ血管内皮細胞形成には影響を与えないことを本発明者らの結果は示す。示したデータは、血管新生におけるLmo2機能のキメラ胚アッセイを使用し、創傷治癒などの正常な状況または癌などの臨床的徴候などの血管新生が生じる他のインビボ状況に対し推論することができる。この抗LMO2細胞内抗体、その誘導体または同様の作用をする他の薬剤(例えば、抗LMO2細胞内抗体結合部位の知識に基づいて誘導される小型の化学物質)を使用することは、ヒトおよび動物の疾病において血管新生を管理する重要な方法を示唆している。
【0154】
上記の明細書に記載されている全ての刊行物は参照により本明細書に組み入れられる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、記載されている本発明の方法およびシステムの種々の改良および変更は当業者に明らかである。本発明は具体的な好ましい実施態様に関連して記載されているが、主張されている発明はこのような具体的な実施態様に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、分子生物学または関連する分野の当業者に明らかである、本発明を実施するために記載されている様式の種々の改良は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。
【0155】
[文献]
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】LIMドメイン:構造および機能を示す。LMO2機能の興味深い態様は、この小さい分子(アミノ酸156)がこのような主要な作用を有する可能性があることである。これは、2つのLIMドメイン(B)を含む5その構造によって部分的に説明され、LIMドメイン(B)は、各々自体が2つの亜鉛結合LIMフィンガーからなり、1つの亜鉛原子がシステイン(cys)、ヒスチジン(his)またはアスパラギン酸(asp)残基の間に配位されている(A)4244。LIMドメインはタンパク質相互作用モジュールであり14,15、LMO2は、正常細胞またはT細胞白血病細胞の異なる組成のDNA結合複合体において結合作用を果たす多用途のタンパク質パートナーであると思われる1518,45
【図2】LMO2タンパク質に結合するペプチドの配列を示す。(足場として使用される)Trxタンパク質に融合される20merペプチドを含むペプチドライブラリーを、LMO2ベイトを発現するクローンに対してスクリーニングした。LMO2相互作用Trx−ペプチドをコードするクローンを単離し、ペプチドの配列を得た。単離したペプチド配列を示す。3×106形質転換体から、LMO2と相互作用するペプチドアプタマーを発現する15のプラスミドを単離した。A.酵母2−ハイブリッドアッセイにおいてLMO2と相互作用する15のペプチドクローンの配列である。保存されているcys(C)およびhis(H)残基は太字の下線つきで示す。B.酵母2−ハイブリッドアッセイにおいてLMO2と相互作用し、CHO細胞を使用する哺乳類細胞2−ハイブリッドアッセイにおいても活性な10のペプチドの配列である。保存されているシステイン(C)およびヒスチジン(H)残基は太字の下線つきで示し、保存されている疎水性残基には下線をつけ、LMO2 LIM2のモチーフと同一の残基はによって示す。各Trxペプチドを用いる哺乳類2−ハイブリッドアッセイにおいて形成されるルシフェラーゼの折りたたみ刺激活性を図のLHSに示す(+/−標準偏差)。C.LMO2と相互作用する10のペプチドの配列である。保存されているシステイン(C)およびヒスチジン(H)残基は太字の下線つきで示す。保存されている短いアプタマーモチーフはダイアグラムのトップに示し、保存されている疎水性残基には下線をつけている。Cはアプタマーモチーフの保存されている荷電残基をいう。
【図3】抗LMO2ペプチドアプタマーの哺乳類相互作用アッセイを示す。 GAL4 DBD−Trx−ペプチド(pMベクター)を発現するクローンをベイトとして使用して、それらの相互作用を、ルシフェラーゼリポータークローンと共にCHO細胞に同時トランスフェクションしたプレイタンパク質(VP16融合ベクター)を発現する種々のクローンに対して試験した。ルシフェラーゼ活性を24時間後に測定した。示されている値は、空のpMベイトベクター単独と比較した折りたたみ刺激である。使用したVP16プレイクローンはベクターのみ(pVP16+)、LMO2、LMO2の個々のLMIドメイン(LIM1またはLIM2)、LMO4、LMO1、プロテインキナーゼTTK(ジンクフィンガータイプC22)、エストロジェン受容体α(ジンクフィンガータイプC4)(VP16−ER)、Ldb1またはGata1であった。(NB:Gal4−207はTTK、ERα、Ldb1およびGata1に対して試験しなかった。)A.Trx207の哺乳類ツー−ハイブリッドデータB.足場内にない207のペプチドの哺乳類ツー−ハイブリッドデータC.Trx209の哺乳類ツー−ハイブリッドデータD.Trx85の哺乳類ツー−ハイブリッドデータ
【図4】ES細胞由来胚様体の赤血球分化を示す。 胚性幹細胞(ES)をインビトロにおいて培養して、赤血球分化を生じ、赤血球細胞数を赤血球マーカーTer119の発現によって測定した。ESクローンは野生型(CCB);ヌルLMO2細胞(H16);ヘテロ接合型LMO2(lacZ遺伝子ノックインLMO2、クローンKZ26);Trx207がLMO2の一方の対立遺伝子にノックインされているES細胞(AF6)またはCMVプロモーター駆動性Trx207(6B23)が安定にトランスフェクションされた同一クローン;TrxがLMO2の一方の対立遺伝子にノックインされているES細胞(BB4);EFαプロモーター駆動性Trx207(G1)が安定にトランスフェクションされているヘテロ接合型LMO2(KZ26)またはEFαプロモーター駆動性Trxのみ(A5)が安定にトランスフェクションされているヘテロ接合型LMO2(KZ26)であった。A.分離した11日齢の胚様体においてTer119を発現する細胞の割合。B.分離した11日齢の胚様体においてTer119を発現する細胞の阻害の割合。
【図5】ESの赤血球系統へのインビトロにおける分化を示す。40%のメチルセルロース、20%のFBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、100μMのMTG、10μg/mlのヒトインスリン、2mMのL−グルタミン、10ng/mlの組換えマウスVEGF,1U/mlの組換えマウスEpo、25ng/mlの組換えヒトFGF及び5ng/mlの組換えマウスIL−6を含有するIMDM中で各ES細胞を11日間増殖させた。FACS分析のために胚様体をコラゲナーゼAで単一のES細胞に分離した。ビオチン化抗マウス赤血球細胞mAb(Ter−119)およびストレプトアビジン−フィコエリトリンコンジュゲート体を用いてFACS分析を実施した。各アッセイはデュープリケートで実施した(黒塗りまたは白抜きの四角で示してある)。
【図6】ES細胞分化過程における血管内皮細胞のデノボ発生(脈管形成)である。図5に記載するように各ES細胞を増殖させた。胚様体をコラゲナーゼAで分離し、ビオチン化抗マウスCD31mAbおよびストレプトアビジン−フィコエリスリンコンジュゲート体を用いてFACS分析を実施した。各アッセイはデュープリケートで実施した(黒塗りの四角または白抜きの四角で示してある)。
【図7】血管新生中のES細胞由来内皮細胞におけるβ−ガラクトシド発現を示す。C57BL/6胚盤胞の内側細胞集団にES細胞を注入し、雌レシピエントに植え込んだ。10.5日目に胚を単離し、記載されているように(Yamada et al.,1998)Xgalで染色し、全載写真を得た。
【図8】LMO2のLIM2ドメインに結合し、LMO2の機能活性を阻害するscFv(抗LMO2抗体)のアミノ酸配列を示す。VH CDRは下線および影をつけ、(a)、(b)および(c)と称する。VL CDRは影をつけ、(a)、(b)、(c)と称する。Gly−Serリンカーの配列に下線をつけてある。scFvの配列は配列番号12と称する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LMO2のLIM2ドメインに結合して、LMO2の機能活性を阻害することができるLIM2阻害剤。
【請求項2】
ペプチドであり、コンセンサス配列:
His/CXXC
(式中、Cは亜鉛結合Cysであり、
Hisはヒスチジンを示し、
Xは任意のアミノ酸である)
を含む、請求項1に記載のLIM2阻害剤。
【請求項3】
ペプチドであり、コンセンサス配列:
HhHis/CXX1Ch
(式中、hは疎水性アミノ酸を示し、
Hisはヒスチジンを示し、
Cはシステインを示し、
Xは任意のアミノ酸を示し、X1は荷電アミノ酸を示す)
を含む、請求項2に記載のLIM2阻害剤。
【請求項4】
ペプチドアプタマーである、請求項2または3に記載のLIM2阻害剤。
【請求項5】
ペプチドが足場内に拘束されている、請求項3または4に記載のLIM2阻害剤。
【請求項6】
ペプチドは、少なくともペプチドのN末端で足場内に拘束されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項7】
ペプチドは、少なくともペプチドのC末端で足場内に拘束されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項8】
ペプチドがチオレドキシンタンパク質(Trx)の足場内に拘束されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項9】
図2に図示され、配列番号2〜11にそれぞれ指定されているクローン207、クローン209、クローン85、クローン81、クローン63、クローン72、クローン247、クローン90、クローン69およびクローン202からなるペプチドアプタマー群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項10】
図2に図示され、配列番号2、3、4にそれぞれ指定されているクローン207、クローン209、クローン85からなるペプチドアプタマーからなる群から選択される、請求項9に記載のLIM2阻害剤。
【請求項11】
抗体である、請求項1に記載のLIM2阻害剤。
【請求項12】
図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)に指定されているアミノ酸配列を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項11に記載のLIM2抗体阻害剤。
【請求項13】
図8に図示され、配列番号12(a)、12(b)および12(c)にそれぞれ指定されているアミノ酸配列を有するCDRを3つ全て含み、一体として抗原結合部位を形成する、請求項12に記載の抗LMO2抗体。
【請求項14】
scFvまたはdAbである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)。
【請求項15】
scFvである、請求項14に記載の抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)。
【請求項16】
細胞内抗体(細胞内結合抗体)である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか1項に記載の抗LMO2抗体(LIM2阻害剤)をコードする核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
核局在化シグナルをさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項21】
細胞膜輸送活性を担当するタンパク質のドメインまたは配列に融合またはコンジュゲートする、請求項1〜20のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤。
【請求項22】
細胞膜輸送活性を担当するタンパク質のドメインまたは配列が、HIV−1−トランス活性化タンパク質(Tat)、ショウジョウバエのアンテナペディアホメオドメインタンパク質および単純ヘルペスウイルス1型VP22タンパク質からなる群から選択されるもの1つ以上である、請求項21に記載のLIM2阻害剤。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の1つ以上のLIM2阻害剤および製薬学的に許容されうる担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物。
【請求項24】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤または請求項20に記載の組成物の、LMO2の機能活性を阻害するための使用。
【請求項25】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤または請求項20に記載の組成物の、LMO2の機能活性を阻害するための医薬品の製造への使用。
【請求項26】
医薬品に使用するための、請求項1〜16のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤または請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
腫瘍形成、腫瘍転移、炎症、LMO2介在性T細胞白血病および糖尿病性網膜症からなる群から選択される状態のうち1つ以上を予防および/または治療するための医薬品を製造する際の、請求項1〜16のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤1つ以上または請求項23に記載の組成物の使用。
【請求項28】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のLIM2阻害剤1つ以上を、治療を必要としている患者に投与するステップを含む、腫瘍形成、腫瘍転移、LMO2介在性T細胞白血病、炎症、虚血、糖尿病性網膜症からなる群から選択される任意の状態1つ以上を予防および/または治療するための方法。
【請求項29】
状態が腫瘍形成および/または腫瘍転移である、請求項26に記載の使用または請求項27に記載の方法。
【請求項30】
状態がLMO2 T細胞介在性白血病である、請求項26に記載の使用または請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−510625(P2007−510625A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534813(P2006−534813)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004299
【国際公開番号】WO2005/039613
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)