説明

M2B12H12の合成

【課題】ボランおよび水素化ホウ素塩からM1212を製造する、より効率的な方法を提供する。
【解決手段】水素化ホウ素アルカリ金属およびアミンボランからM1212(式中、Mはアルカリ金属である)を製造する方法。本方法は、水素化ホウ素アルカリ金属を錯化剤と接触している過剰なアミンボランと反応させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、アミンボランおよび水素化ホウ素ナトリウムからM1212を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボランおよび水素化ホウ素ナトリウムからM1212を製造する方法は周知である。例えば、米国特許第3,551,120号はボランおよび水素化ホウ素ナトリウムからのM1212の製造を記載する。しかし、生成物として他の水素化ホウ素種の形成のために、収率は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,551,120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により取り組まれる課題は、ボランおよび水素化ホウ素塩からM1212を製造する、より効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水素化ホウ素アルカリ金属およびアミンボランからM1212(式中、Mはアルカリ金属である)を製造する方法に関する。本方法は、(i)9〜20の環原子を含み、そのなかの少なくとも3つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、N、Sまたはこれらの組み合わせである、環;並びに(ii)水素原子以外の原子を少なくとも4つ有し、そのなかの少なくとも2つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、N、Sまたはこれらの組み合わせであり、当該へテロ原子が2または3つの炭素原子によって隔てられている非環式化合物:からなる群から選択される錯化剤と接触している過剰なアミンボランと、水素化ホウ素アルカリ金属とを反応させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
他に示されない限りは、本明細書における全てのパーセンテージは重量パーセンテージとして示され、温度は℃単位である。100万あたりの部(ppm)としての量は重量/体積に基づく。
【0007】
「アルキル」基は、1〜20の炭素原子を有する飽和ヒドロカルビル基であり、アルキル基は線状、分岐または環式であることができる。本発明のある実施形態においては、アルキル基は線状または分岐であり、あるいはアルキル基は線状である。ある実施形態においては、アルキル基は1〜6つの炭素原子、あるいは1〜4つの炭素原子を有する。
【0008】
水素化ホウ素アルカリ金属とアミンボランとの反応は、Mがナトリウムであり、アミンボランがトリエチルアミンボランである場合についての次の式に示される:
2NaBH+過剰なNEtBH→50〜79%のNa1212+5〜10%のNa+5〜35%のNa1010+1〜50%のNaB1211−x(NEt+10NEt+13H
【0009】
本発明の方法は所望の生成物であるM1212の量を最大化し、競合する水素化ホウ素種の形成を最小限にする。一般に、アミンボランはRNBHとして表され、式中、Rは同じかもしくは異なっているアルキル基および/または水素を表すことができ、ただし、少なくとも2つのアルキル基が存在する。好ましくは、アルキル基は、C−C非環式アルキル基、あるいはメチルもしくはエチルである。好ましくは、Rは水素を表さず、アミンはトリアルキルアミンである。好ましくは、Mはナトリウムまたはカリウムである。
【0010】
本発明のある実施形態においては、錯化剤は、9〜20の環原子を含む環を含む少なくとも1種の化合物である。この環は、O、N、Sおよびこれらの組み合わせから選択される少なくとも3つのヘテロ原子も含む炭素含有環である。本発明のある態様においては、この環を形成する原子は炭素と、O、N、Sおよびこれらの組み合わせから選択されるヘテロ原子とから構成される。本発明のある実施形態においては、この環は共有結合によりポリマー鎖に結合されており、すなわち、このポリマー鎖は1以上の環原子上の置換基である。ある実施形態において、ポリマー−環の組み合わせは水または酸性溶液から沈殿することができ、反応生成物からのその分離を可能にする。本発明のある実施形態においては、錯化剤の環は、別の環の部分である原子を含み、例えば、錯化剤の環は式(I):
【化1】

(式中、XはO、SまたはNHを表す)
の1以上の単位;あるいは少なくとも2つの単位;あるいは4以下の単位を含むことができる。このような場合において、含まれる環の原子は、より大きな錯化剤の環の原子として、この含まれる環からできる限り最も少ない原子数を使用するように数えられ、その結果、式(I)に示される場合においては、Xおよびその隣接する2つの炭素原子は、環が9〜20の原子を有するかどうかを決定する目的のために、および環のヘテロ原子の総数を決定する目的のために、錯化剤の環の部分であると見なされる。本発明のある実施形態においては、錯化剤の環は、式:−(CHCHX)−;(式中、XはO、SまたはNHを表す)の2〜6つ、あるいは3〜6つ、あるいは4〜6つ、あるいは5または6つの単位を含む。本発明のある実施形態においては、芳香環を含む単位、例えば、式(II):
【化2】

の単位のような、芳香環からの2つの炭素原子を含む単位、および式(III):
【化3】

の単位のような、芳香環からの4つの炭素原子を含む単位;の2〜4つが環に存在することができる。
【0011】
式(II)の単位はある場合には、カテコールもしくは1,2−フェニレンジアミンに由来する。本発明のある実施形態においては、芳香族基が錯化剤の環に結合しており、例えば、この環は式:−(CHZCHX)−;(式中、Zは、少なくとも1つの芳香環を含むC−C16置換基)の少なくとも1つの単位、あるいは少なくとも2つの単位、あるいは6以下の単位、あるいは5以下の単位、あるいは4以下の単位を含む。本発明のある実施形態においては、Zはベンジルオキシ、アルキルもしくはアルコキシ基で置換されているベンジルオキシ、またはナフチルオキシである。置換基はベンジルオキシ基と−(CHZCHX)−単位、例えば、1以上のエチレンオキシもしくはエチレンイミン単位との間に配置されることもできる。上述の様々な構造単位のあらゆる組み合わせが存在しうる。本発明のある実施形態においては、ヘテロ原子はO、Nおよびこれらの組み合わせから選択される。本発明のある実施形態においては、環は少なくとも12の環原子、あるいは少なくとも15の環原子、あるいは18以下の環原子を含む。本発明のある実施形態においては、環は少なくとも4つのヘテロ原子、あるいは少なくとも5つのヘテロ原子を含む。好ましくは、ヘテロ原子は酸素である。特に好ましい環式錯化剤はM=Kの場合には18−クラウン−6、およびM=Naの場合には15−クラウン−5である。これらの錯化剤は、それぞれ、式:−(CHCHO)−の6または5つの単位を含む。
【0012】
本発明のある実施形態においては、錯化剤は水素原子以外の原子を少なくとも4つ有し、そのなかの少なくとも2つがO、N、Sおよびこれらの組み合わせから選択されるヘテロ原子であり、当該へテロ原子が2または3つの炭素原子で隔てられている非環式化合物であり、すなわち、各へテロ原子がその最も近い隣のへテロ原子のそれぞれから、2または3つの炭素原子で隔てられるように、構造:X−C−C−XもしくはX−C−C−C−Xの単位が存在する。非環式化合物は、特定の数および種類のヘテロ原子も含む炭素含有化合物である。このような化合物の例は、エチレングリコールおよびエチレンジアミンの誘導体である。これらの化合物のオリゴマー、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、およびペンタ−エチレングリコール、グリムおよび他のジアルキルグリコールエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレングリコール、およびポリエチレンイミンも好適である。ヘテロ原子がアミンもしくはチオアミン基の部分である化合物、例えば、タンパク質も好適である。本発明のある実施形態においては、錯化剤は少なくとも7つの原子を有し、そのうちの少なくとも3つがO、N、Sまたはこれらの組み合わせである非環式化合物であるか;あるいは少なくとも10個の原子を有し、そのなかの少なくとも4つがO、N、Sまたはこれらの組み合わせである非環式化合物である。本発明のある実施形態においては、錯化剤は、O、Nおよびこれらの組み合わせの中からのみ選択されるヘテロ原子を有する非環式化合物である。
【0013】
錯化剤は環化合物および非環式化合物の組み合わせであり得る。
【0014】
本発明のある実施形態においては、25℃で測定されるナトリウムもしくはカリウムイオンとの錯体についての形成定数の常用対数が少なくとも1、あるいは少なくとも2、あるいは少なくとも3である錯化剤が使用される。
【0015】
本発明のある実施形態においては、錯化剤の量は、水素化ホウ素アルカリ金属の量の0.1%〜10%、あるいは0.5%〜7%、あるいは1%〜5%である。
【0016】
好ましくは、反応は、50℃〜200℃、あるいは少なくとも75℃、あるいは少なくとも90℃、あるいは170℃以下、あるいは150℃以下、あるいは140℃以下、あるいは120℃以下の範囲の温度で起こる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)9〜20の環原子を含み、そのなかの少なくとも3つが、O、N、Sおよびこれらの組み合わせから選択されるヘテロ原子である、環;並びに(ii)水素原子以外の原子を少なくとも4つ有し、そのなかの少なくとも2つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、N、Sまたはこれらの組み合わせであり、当該へテロ原子が2または3つの炭素原子によって隔てられている非環式化合物:からなる群から選択される錯化剤と接触している過剰なアミンボランと、水素化ホウ素アルカリ金属とを反応させることを含む;
水素化ホウ素アルカリ金属およびアミンボランからM1212(式中、Mはアルカリ金属である)を製造する方法。
【請求項2】
Mがナトリウムまたはカリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
錯化剤が12〜20個の環原子を含む環であり、当該環原子の少なくとも4つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、Nまたはこれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
環が、式:−(CHCHX)−;(式中、XはO、SまたはNHを表す)の2〜6つの単位を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
環が15〜18個の環原子を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
XがOである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
錯化剤が非環式化合物であり、当該非環式化合物が水素原子以外の原子を少なくとも7つ有し、そのなかの少なくとも3つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、N、Sまたはこれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
各ヘテロ原子が、その最も近い隣のヘテロ原子のそれぞれから2つの炭素原子によって隔てられている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ヘテロ原子がO、Nおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
錯化剤が水素原子以外の原子を少なくとも10個有し、そのなかの少なくとも4つがヘテロ原子であり、当該へテロ原子がO、Nまたはこれらの組み合わせである、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2010−159205(P2010−159205A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−282399(P2009−282399)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY