説明

MALDI質量分光測定用サンプル担体の製造方法

本発明は複数のMALDIマトリックスポイントを有するサンプル担体を製造する方法、該発明の方法により得られる表面材料、及び長期間にわたり安定な表面材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は多数のMALDIマトリックスポイントを有するサンプル担体の製造方法、本発明により前記方法の過程で得られる表面形成物、および長期にわたり安定している表面形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分光測定が例えばサンプルの分析のために添加物産業あるいは生物学的研究および製造にますます行われるに至った。サンプル中の生体分子を分析する目的で、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使って、イオン化を伴う質量分光測定を実行することが好ましい。
【0003】
MALDI方法のために、特に、生体分子および/あるいは生物学的材料を液滴の状態で例えばピペットで計り、所謂MALDIマトリックスポイント上にのせた後乾燥させる。こうして形成された結晶を例えばMALDI-TOF質量分析計を用いリニアモードあるいはリフレクタモードで調べる。この方法の詳細はノルトホフ (Nordhoff) らの「分子量150,000のダルトン (Dalton)の核酸(DNAおよびRNA)の分析のための新しい方法としてのMALDI-MS、植物の科学研究への最新の質量分析方法の応用」オックスフォード大学出版局 (Oxford University Press)、(1996)、86-101ページに見いだすことができる。これをここで引用し、本開示の一部として扱う。
【0004】
サンプル担体の上に液滴の状態で溶液としてマトリックス物質をつけ、それを放置して乾燥することにより、MALDIマトリックスポイントは従来の技術のとおりに製造される。この方法は、特に、200を超えるMALDIマトリックスポイントをサンプル担体に何度も適用しなければならない一連のテストで、自動化技術にもかかわらず非常に時間がかかる。さらに、MALDIマトリックスポイントは形状一様ではなく、それら自身同士も均質ではない。さらに、サンプル担体上のマトリックスポイントの位置は比較的厳密ではない。2つの隣接ポイントが合体するのを防ぐために、それらの間隔は相応して大きいように選ばれなくてはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、課題は従来の技術の不利を示さない多数のMALDIマトリックスポイントを有する表面形成物を作る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、多数のMALDIマトリックスポイントを有する表面形成物、好ましくはサンプル担体を製造する方法であって、MALDIマトリックスポイントが気相からのMALDIマトリックス物質の該担体への析出によって、サンプル担体に適用される方法によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
当業者は本発明の方法によってどんな数のMALDIマトリックスポイントでも同時に作ることができることを理解したときに驚愕した。MALDIマトリックスポイントはどんな形でも有することができる。それらは非常に再現可能にかつ均質に作ることができ、そして非常に良好なマススペクトルの実現を可能にする表面構造を示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の目的にとり、表面形成物がどんな形状の表面を有するどんな成形体でもよい。しかしながら、表面形成物は理想的に平らな表面を有するプレート、最もふさわしくはサンプル担体であり、どのような凹部も有するべきでない。理想的には、この発明によれば、表面形成物は薄膜である。
【0009】
この発明の目的で、1つのMALDIマトリックスポイントはその大部分が当業者によく知られている少なくとも1種のMALDIマトリックス物質からなる。好ましいMALDIマトリックス物質は3−ヒドロキシピコリン酸、α−シアノ-4−ヒドロキシクマリン酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、シナピン酸、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン・ニトロベンジルアルコール、ニコチン酸、フェルラ酸、コーヒー酸、2-アミノ安息香酸、ピコリン酸、3−アミノ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、6−アザ-2-チオシミン(thiothymine)、尿素、コハク酸、アジピン酸、マロン酸あるいはこれらの混合物である。MALDIマトリックス物質、α-シアノ-4-ヒドロキシクマリン酸が特に好ましい。
【0010】
好ましくは、表面形成物の上に昇華して、人間の目に見える化合物がMALDIマトリックス物質として選ばれる。
【0011】
この発明によれば、MALDIマトリックスポイントは気相からMALDIマトリックス物質の析出によって作り出される。この発明の目的のためのガス相からの析出は、MALDIマトリックス物質が気相から表面形成物に適用されるすべてのプロセスである。例えば、濃縮あるいは昇華が提案される。好ましくは、しかしながら、表面形成物へのMALDIマトリックスポイントの適用は昇華によってである。この発明の目的のために、昇華には、MALDIマトリックス物質が固体物質から気相に移され、そして/あるいは気相から表面形成物上に固体物質として析出することが含まれる。好ましくは、昇華は真空で起きる。昇華のために固体物質を加熱することが特に好ましい。好ましくは、気相からの析出のために、特に昇華で、いくつかのMALDIマトリックス物質が平行してあるいは順次使われることが好ましい。これらのMALDIマトリックス物質は異なった複数のMALDIマトリックスポイントを作るために使うことができる。しかし、一つのMALDIマトリックスポイントが下部構造、例えば、それぞれ互いから離れて存在する部分的なポイント−これらは各々異なったMALDIマトリックス物質から作られている−を示すことも考えられる。下部構造が同心の複数の環からなり、その各々が異なったMALDIマトリックス物質からなっていることもできる。
【0012】
好ましくは、気相から析出−特に好ましくは昇華によって−の際に、成形体、貫通孔を有する所謂マスク、でサンプル担体を覆う。MALDIマトリックス物質は表面形成物の上でこれらの孔のエリアにおいてだけ析出し、そこにMALDIマトリックスポイントあるいは部分的なポイントを形成する。このマスクはどんな数の孔も有することができ、その孔はどんな形でもよい。例えば、孔は、可能ないくつかの形を単に挙げるとすれば、丸、長方形、正方形、三角形あるいは楕円形であり得る。形状は表面形成物の上の各々のMALDIマトリックス物質を区別するために使うことができる。表面形成物を初めにいくつかのマスクによって覆い、該マスクを例えば本発明による表面形成物の異なったエリアに異なったMALDIマトリックス物質を適用するべく、順に1つずつ取り除くこともできる。
【0013】
特にこの発明の好ましい実施形態では、マスクは、そこから情報を表面形成物に移すことができる別の孔を有する。これらの孔のエリアで、MALDIマトリックス物質は表面形成物上に析出し、そこで情報を可視化する。この発明の目的のための情報の例としては、格子の横行および縦列のマーキング、使われたMALDIマトリックス物質のための略号および対応する分析装置で表面形成物の厳密な位置あわせを可能にする位置あわせポイントがあるであろう。
【0014】
好ましくは、MALDIマトリックスポイントは1μm〜10mm2の面積を有する。このような表面の上に液滴を乗せ、そして下向きにひっかけても本発明による表面形成物から脱落しないように固定できることが好ましい。
【0015】
さらに、MALDIマトリックスポイントは好ましくは厳密な格子に沿って配置される。これにより計量そして/あるいは分析の機器の容易な管理が可能になる。MALDIマトリックスポイントはどんな形であってもよい。可能な形の例は直方体、正方形、三角形あるいはだ円の形である。MALDIマトリックスポイントの形はそれらの区別のために使うことができる、なぜならその形は、例えば、分析中に質量分析計の顕微鏡で識別可能であるから。例えば、ある形をあるMALDIマトリックス物質に割り当てることができる。さらに、一つのMALDIマトリックスポイントは好ましくは下部構造を有する。この下部構造はお互いから離れたいくつかの部分的なポイントからできていてもよく、それの各々は好ましくは異なったMALDIマトリックス物質からなる。下部構造は同じくいくつかの同心の環を有することもできる。特に、いくつかの部分的なポイントからなっている実施形態は、分析しようとする物質のただの一滴を一つのMALDIマトリックスポイントに接触させていくつかの部分的なポイントを同時に濡らすと、そのためにいくつかの異なったマトリックス物質を1つのMALDIマトリックスポイントで調べることが可能になる点で有益である。
【0016】
好ましくは、MALDIマトリックスポイントあるいは部分的なポイントは、それらの周囲よりより濡れ易いエリアであって、その各々がより濡れにくい、好ましくは超疎性(ultraphobic)のエリアによって完全に囲まれたエリアを意味する。この実施形態を使うことにより、非常に特定の場所に液滴を付着させることが可能になり、そこに比較的強固に固定することが可能になる。
【0017】
好ましくは、MALDIマトリックスポイントあるいは部分的なポイントの結晶構造は、粒子サイズ<1μ/mである。本発明のこの実施形態は、例えば、テストされる物質のMALDIマトリックスポイントが大変良好にそして一様に描かれ、および/あるいは非常に良好なシグナルが得られるという利点を有する。
【0018】
この発明の目的上、超疎性とは、超疎性の表面の上に存在する水および/あるいはオイルの液滴の接触角が150度を超え、好ましくは160度、理想的に170度を超え、転落角は10度を超えないということを意味する。転落角は、基本的に平面であるが構造化された表面の水平線からの傾斜角であって、該表面を傾斜させたときに、体積10μlの水および/あるいはオイルが重力のために動かされる角度を意味する。このような超疎性の表面は例えばWO98/23549;WO96/04123;WO96/21523;WO00/39369;WO00/39368;WO00/39239;WO00/39051;WO00/38845に開示されている。これらはここに引用し、本開示の一部として扱う。
【0019】
好ましい一実施形態では、超疎性表面は、個々のフーリエ成分のローカル周波数とそれらの振幅(amplitudes)a(f)との関係を与える関数S:
S(log f)=a(f)・f (1)
の積分範囲log(f1/μm-1)=−3からlog(f2/μm-1)=3の間での積分値が少なくとも0.3である表面凹凸形状性(surface topography)を有し、疎水性の材料または特に疎油性(oleophobic)の材料からなるか、あるいは耐久性のある疎水性の材料または特に耐久性のある疎油性の材料でコーティングされている。このような超疎性表面は国際特許出願WO00/39249―これをここで引用し本開示の一部として扱う―に記載されている。
【0020】
本発明による方法は特に多数のMALDIマトリックスポイントを有する表面形成物を作るのに適する。したがって、この表面形成もこの発明の目的である。
【0021】
この発明の一つの好ましい実施形態では、表面形成物は一回きり使用の物として設定される。いくつかの層および超疎性の表面を有する第一の層、および担体層を有する表面形成物であって、第一の層は取外し可能に担体層に適用され、表面形成物の局所的な最大平面偏差(maximum local flatness deviation)が長さ100mmにつき<100μmであり、好ましくは<20μmであるものが、特にこの実施形態に適している。
【0022】
この表面形成物は、超疎性の表面を有する第一の層が前の実験によって汚染されるのをあり得なくするために、1回または数回の使用後に第一の層を担体層から取り外せるようにし、新しい第一の層で置き換えることを可能にするという利点を有する。使い捨てであるようにすると、超疎性の表面を有する第一の層は特に経済である。本発明により定義された平面度(flatness)の結果として、該表面形成物はすべての最新の質量分析計そして/あるいは光学式分析装置で有用であることを保証される。
【0023】
表面形成物の一つの好ましい実施形態では、第一の層が担体層に固定される。
【0024】
さらに、電気的接触が第一の層と担体層の間に好ましくは設けられる。この実施形態は質量分析に特に有利である。
【0025】
本発明による表面形成物は広範な用途を有するが、特に質量分析および/または光学式分析に適している。
【0026】
この発明の別の目的は、少なくとも1つのMALDIマトリックスポイントを有する長い間安定している表面形成物であって、内部が真空で水蒸気を通さない材料からなる中空体によって囲まれていることを特徴とする表面形成物である。
【0027】
表面形成物およびMALDIマトリックスポイントに関する上記開示を引用する。
【0028】
この発明によれば、表面形成物は内部が真空、好ましくは<100ミリバールの圧力である真空である中空体によって完全に囲まれている。
【0029】
さらに、この発明にしたがうと、中空体はガスを通さない材料、特に水蒸気に不透性の材料でできている。
【0030】
中空体は好ましくは光不透性である。
【0031】
さらに、中空体は理想的には少なくとも一方の面においてシールされたプラスチックフィルムから作られている。何よりもまず第一に、プラスチックフィルムはガス障壁層、特に水蒸気対する障壁層である必要がある。好ましくは、この障壁層はアルミニウムから作られている。
【0032】
本発明による表面形成物は、特に表面形成物の上のMALDIマトリックスポイントが少なくとも数カ月の期間にわたってまったくあるいは最小の老化しか受けないという利点を有する。
【実施例】
【0033】
以下において、この発明を例1および図1-5によって説明する。これらの説明はただ例示であって、この発明の一般の概念を限定しない。
【0034】
図1は、いくつかの層を有する、本発明による表面形成物の断面を示す。
【0035】
図2は、本発明による表面形成物の表面を示す。
【0036】
図3は、本発明による表面形成物を製造する方法を実施するためのマスクを示す。
【0037】
図4は、本発明による方法で得られるMALDIマトリックスポイントを示す。
【0038】
図5は、液体クロマトグラフィーとMALDI試験の結合に本発明による表面形成物の使用することを示す。
【0039】
例1:
サンプル担体が次のように作られた:
ロール研磨した26 x 76mm2の表面および0.15mmの厚さを有するAlシート(99.9%)を、初めにクロロホルム(p.a)で室温において、次にNaOH水溶液(5g/l)で50℃において20秒間脱脂した。
【0040】
その後それをH3PO4(100g/l)中で前もって20秒間酸洗浄し、蒸留水で30秒間すすぎ、35℃において35Vの交流下120mA/cm2でHCl/H3BO3(各4g/l)の混合物中で90秒間電気化学的に洗浄した。
【0041】
水中で30秒すすぎ、そしてNaOH水溶液(5g/l)中でアルカリ性のすすぎを別に30秒間行った後、30秒間蒸留水で再びすすいだのち、50V直流電流下、30mA/cm2で、25℃において硫酸(H2SO4)(200g/l)で90秒間陽極酸化を行った。
【0042】
その後、それを蒸留水で30秒間すすぎ、次にNaHCO3(20g/l)中で40℃で60秒間すすぎ、そして次に再び30秒間蒸留水中ですすぎ、そして乾燥キャビネット内で80℃において1時間乾燥した。
【0043】
このように処理されたシートを高真空で陰極蒸着(cathodic evaporation)を使って厚さ約50nmの金層で被覆した。最終的に、サンプルは閉じた容器内で室温でベンゾ三弗化物に溶かしたチオールCF3-(CF2)7-(CH2)2-SHの溶液(p.a.1g/l)中に24時間浸漬して単一層(monolayer)で被覆し、その後ベンゾ三弗化物(p.a)ですすぎ、乾燥した。
【0044】
該表面は水に対して178度の静止接触角(static contact angle)を有する。この表面を<2度傾けたら体積10μlの水滴が転落する。
【0045】
マトリックスポイントを次のようにしてサンプル担体の上に昇華させた:
高真空蒸発システム(エドワーズE306 (Edwards E306))内で、α−シアノ-4−ヒドロキシクマリン酸0.5gを、直径10mmの開口を上部に有する加熱できる石英るつぼの中に満たした。サンプル担体を150mmの間隔をおいて取り付け、図3にしたがってマスクで覆う。<10-5ミリバールのベース圧力までポンプで排気した後、石英るつぼを外部に配置されたタングステンコイルを使って加熱する。
【0046】
固体物質の温度は熱電対によって充填粉末中で180℃に調節する。 α−シアノ-4−ヒドロキシクマリン酸からなる堆積した薄膜の層厚は水晶層厚計測装置−これは絶対層厚テスト(例えば原子間力顕微鏡)によってあらかじめ検量線が作成されている−を使って測定される。昇華が1μmの層厚において止める。
【0047】
得られたMALDIマトリックスポイントは図4に例示する。このMALDIマトリックスポイントの質量スペクトルを次のようにして得た:
【0048】
単純なプロトン化ペプチド(1-7)のMALDI質量スペクトル:直径800μmの調製したMALDIマトリックスポイントから記録された、人間のアンジオテンシンIおよびII、サブスタンスP-メチルエステル、ニュ−ロテンシン(アミノ酸1−11)、ニュ−ロテンシン、ACTH(アミノ酸1-17)およびACTH(アミノ酸18-39)。これらのペプチドは次のように質量分光分析のために調製された:5fmolのペプチド類1−6および1fmolのペプチド7を1容量パーセントのトリフルオロ酢酸、および1mMの非イオン性界面活性剤n-オクチル−β−D−グルコピラノシドとともに含む水溶液0.5μlを、MALDIマトリックスポイントにピペットでのせた。溶媒が完全に蒸発した後、このように調製したサンプルを、該サンプル担体全体を2秒間0.1%トリフルオロ酢酸に浸漬することによって、そしてその後すぐに10秒間窒素ガス流にすぐに保持して残っている液体全部を取り除くことによって、1度洗浄した。正の分子イオンの質量スペクトルは、ブルーカー・ダルトニク(Bruker Daltonik)、ブレーメン(Bremen)、によって製造されたMALDI飛行時間(TOF)型質量分析計(Scout-MTP Autoflex)で、リフレクタ操作モード、時間遅延イオン採収(遅延時間:70ナノ秒)および20kV加速度ポテンシャルにおいて記録した。100回のシングルショットによるスペクトルをSN比を改善するために合計した。
【0049】
結果を次のグラフに示す。
【0050】

【0051】
図1〜5を以下説明する。
【0052】
図1は超疎性の表面3を有する第一の層2と担体層4とからなる表面形成物1を示す。第一の層2は接着剤層5を使って担体層に固定される。当業者が接着剤層5が必ずしも存在しなければならないものではないことに気付くであろう。接着剤層5は電気的伝導性の材料からなり、第一の層2と担体材料の間に電気的接触がある。
【0053】
図2は本発明による表面形成物であって、その上にいくつかのMALDIマトリックスポイントが格子状に昇華させられたものを示す。横行1−4のMALDIマトリックスポイントは異なった形であり、ユーザーに対して異なったMALDIマトリックス物質が各々の横行で使われたことを象徴している。 MALDIマトリックスポイント2Dは、4つの部分的なポイント8からなることを示すように拡大して示されている。これらの部分的なポイント8は異なるMALDIマトリックス物質から形成され、4つの異なった分析がこのMALDIマトリックスポイントですることができるようになっている。さらに、マーキング7がMALDIマトリックスポイント4Dの下にある表面形成物に付けられ、ユーザーにこの横行で使われたMALDIマトリックス物質についての情報を与える。さらに、該表面形成物は2つの中心決め十字9を示す。
【0054】
マーキングおよび中心決め十字は、対応する孔を有しているマスクを表面材料の上に置くことによって、表面形成物上に、MALDIマトリックスポイントのように、昇華させられる。当業者は格子の横行1-4が一度に製造されたものであることを認めるであろう。
【0055】
図3は、直径0.8mmで中心点間が2.25mm離れている(寸法は実物比ではない)、8×8個の穴12を有するマスクを示す。
【0056】
図4は図3のマスクで得られたマトリックススポットの光学顕微鏡記録を示す。
【0057】
本発明によるサンプル担体の格別に有益な用途は液体クロマトグラフィーとMALDI試験の結合(LC-MALDI結合)への用途であり、図5に示す。
【0058】
物質の混合物はMALDI試験の前に初めにクロマトグラフィーにより分離されることが多い。一例は酵素学的(例えばトリプシン)ペプチド縮小によって作られるペプチド混合物であろう。クロマトグラフィ分離の後に、溶出物のフラクションが次に同じサンプル担体のMALDIマトリックス6に付けられる。
【0059】
この例では、お互いに非常に近くに存在しているが、完全に超疎性エリアに囲まれているMALDIマトリックスポイント6が使われる。好ましくは、MALDIマトリックスポイント同士の間隔は(中心点から中心点まで計られ)それらの直径の1.5倍である。
【0060】
マスクを介した昇華によって製造されたMALDIマトリックスポイントを使うことによって、それらの位置および大きさは非常に正確に確定される。これにより、液体が、MALDIマトリックスポイントに適用されるように、LCコラム10の出口穴11から絶えず流れる出ることが可能となる。各フラクションを各容器に別々に採集しその後各マトリックスポイントにピペットでのせたり、あるいは、あるMALDIマトリックスポイントの上で出口穴をひとまずふさぎ、すばやく次のMALDIマトリックスポイントに移動したりして、フラクションを非連続的につくることは、必要ない。
【0061】
サンプル担体1は出口穴11の下で一定の速度で動かされる。すべてのMALDIマトリックスポイントも今や出口穴から分配される一定容量の液体を取り込む。この過程はポイントAで始まって、すべてのポイントを曲がりくねって横切ってポイントEまで続く。すると、MALDIマトリックスポイントは、MALDIマトリックスポイントA〜Eに、各MALDIマトリックスポイントが受け入れる一定した容量で、フラクションとしてクロマトグラフィーの全溶出物を含むことになる。出口穴11の下で担体1を動かす速度を変えることにより、この容量を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】いくつかの層を有する、本発明による表面形成物の断面を示す断面図。
【図2】本発明による表面形成物の表面を示す図。
【図3】本発明による表面形成物を製造する方法を実施するためのマスクを示す図。
【図4】本発明による方法で得られるMALDIマトリックスポイントを示す図。
【図5】液体クロマトグラフィーとMALDI試験の結合に本発明による表面形成物の使用することを説明する図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のMALDIマトリックスポイントを有する表面形成物、好ましくはサンプル担体を製造する方法であって、MALDIマトリックスポイントが気相からのMALDIマトリックス物質の析出によって、好ましくは昇華によって、サンプル担体に適用されることを特徴とする上記製造方法。
【請求項2】
気相からの析出の間プレートがサンプル担体お覆い、該プレートは貫通孔を有し、それらの孔の断面積は各々のMALDIマトリックスポイントの断面積に対応することを特徴とする請求項1に係る方法。
【請求項3】
プレートが少なくとも一つの別の貫通孔を有し、そこから、気相からのMALDIマトリックス物質の析出によってサンプル担体に情報が移されることを特徴とする請求項2に係る方法。
【請求項4】
情報が、例えば、MALDIマトリックス物質の組成および/または位置合わせ点に関するものを含むことを特徴とする請求項3に係る方法。
【請求項5】
MALDIマトリックスポイントが格子に沿って配置されることを特徴とする前のすべての請求項の1項に係る方法。
【請求項6】
MALDIマトリックスポイントが下部構造を有することを特徴とする前のすべての請求項の1項に係る方法。
【請求項7】
MALDIマトリックスポイントがいくつかの部分的なポイント、好ましくは相互に離れたいくつかの部分的なポイントに分けられていることを特徴とする請求項6に係る方法。
【請求項8】
異なったMALDIマトリックス物質が一つのサンプル担体に適用されることを特徴とする前のすべての請求項の1項に係る方法。
【請求項9】
それぞれ1つのMALDIマトリックス物質からなる、少なくいくつかのMALDIマトリックスポイントまたは部分的なポイントが形成されることを特徴とする請求項8に係る方法。
【請求項10】
α-シアノ-4-ヒドロキシクマリン酸がMALDIマトリックス物質として使われることを特徴とする前のすべての請求項の1項に係る方法。
【請求項11】
サンプル担体が超疎性の表面を有することを特徴とする前のすべての請求項の1項に係る方法。
【請求項12】
MALDIマトリックスポイントまたは部分的なポイントが、超疎性のエリアによって囲まれる親水性のエリアを意味することを特徴とする請求項11に係る方法。
【請求項13】
請求項1〜12の1項に係る方法で得られる表面形成物。
【請求項14】
いくつかの層を有することを特徴とする請求項13に係る表面形成物。
【請求項15】
超疎性の表面(3)を有する第一の層(2)と担体層(4)とを有することを特徴とする請求項14に係る表面形成物(1)。
【請求項16】
第一の層(2)が担体層(4)に取外し可能に適用され、該表面形成物の長さ100mmでの局所的な最大平面偏差が<100μmである請求項15に係る表面形成物。
【請求項17】
第一の層(2)が担体層(4)に接着剤で付けられることを特徴とする請求項16に係る表面形成物。
【請求項18】
第一の層(2)および担体層(4)の間に電気的接触があることを特徴とする請求項16あるいは17に係る表面形成物。
【請求項19】
少なくとも1つのMALDIマトリックスポイントを有する長期安定表面形成物であって、内部が真空であり、かつ水蒸気を通さず、さらに好ましくは光を通さない材料からなる中空体によって囲まれていることを特徴とする表面形成物。
【請求項20】
MALDIマトリックスポイント上にさらに生物学的材料を有することを特徴とする請求項19に係る表面形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−514738(P2006−514738A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560406(P2004−560406)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014230
【国際公開番号】WO2004/055857
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(501254003)ズニクス・サーファス・ナノテクノロジース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】