説明

MFI構造ゼオライト触媒の再生方法

【課題】簡易にMFI構造ゼオライト触媒を再生して、この触媒の寿命を向上させることができるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法を提供する。
【解決手段】本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールからの脱水縮合反応により低級炭化水素を合成する工程で用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテル(以下、「DME」と略すこともある。)またはメタノールのいずれか一方、あるいは、ジメチルエーテルおよびメタノールからオレフィン類を合成する反応(DTO反応/MTO反応)に用いられる代表的な触媒としては、MFI構造ゼオライト触媒やSAPO−34触媒が挙げられる。
DTO反応/MTO反応において、触媒上に炭素質が析出することによって、触媒活性が低下するため、定期的に酸素を含む気流を触媒に供給し、触媒上の炭素質を燃焼させて、触媒活性を回復させる必要がある。
触媒上の炭素質を燃焼させる燃焼反応は発熱反応であるから、構造破壊などの触媒の変質を防止するためや、装置を安定に運転するために、大幅な温度上昇を抑制することが望ましい。そこで、上記の燃焼反応において酸素濃度を低く抑えるために、触媒に供給する空気を水蒸気や窒素などの不活性ガスで希釈する必要がある。
ところが、水蒸気によりゼオライト触媒からの脱アルミニウムが進行して、触媒の長期寿命が低下するため、希釈ガス中の水蒸気濃度を低く抑え、窒素を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許2005/0085375号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、希釈ガスとして窒素を用いる場合、窒素を製造するための深冷空気分離装置などが必要となり、プラントの建設費が増大するという問題があった。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、簡易にMFI構造ゼオライト触媒を再生して、この触媒の寿命を向上させることができるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成する工程を含むことを特徴とする。
【0006】
前記MFI構造ゼオライト触媒を焼成する温度を400℃以上、600℃以下とすることが好ましい。
【0007】
前記MFI構造ゼオライト触媒は、前記MFI構造ゼオライト量に対する前記アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上の含有率が15質量%以上、200質量%以下であることが好ましい。
【0008】
前記MFI構造ゼオライト触媒は、アルカリ土類金属化合物を含み、前記MFI構造ゼオライト量に対する前記アルカリ土類金属化合物の含有率がアルカリ土類金属に換算して0.3質量%以上、10質量%未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成することにより触媒寿命を向上させることができるために、触媒の再生回数が減少し、結果として、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成するためのコストを低減することができる。また、触媒再生処理時に、希釈ガスとして水蒸気を用いることができるので、窒素を製造する深冷空気分離装置などの設備が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成する工程を含む方法である。
なお、MFI構造とは、国際ゼオライト学会において定義された骨格構造名称である。
【0012】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法では、MFI構造ゼオライト触媒を用いて、ジメチルエーテルまたはメタノールのいずれか一方、あるいは、ジメチルエーテルおよびメタノールから低級炭化水素を合成する工程を一定期間行った後、酸素および水蒸気を含む気流中にて、MFI構造ゼオライト触媒を焼成することにより、触媒活性を回復させる。
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法では、酸素および水蒸気を含む気流において、酸素の流量に対する水蒸気の流量の比が、5以上、2000以下であることが好ましく、15以上、1000以下であることがより好ましい。
酸素の流量に対する水蒸気の流量の比が5未満では、酸素の希釈が不十分であり、触媒上の炭素質の燃焼熱によって触媒層の温度が上昇し、構造破壊などの触媒の変質が起きるおそれがある。また、水蒸気による処理効果が十分に得られない可能性がある。一方、酸素の流量に対する水蒸気の流量の比が2000を超えると、酸素濃度が低すぎるために触媒上の炭素質の燃焼が遅く、触媒再生時間が長くなるため好ましくない。
また、本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法では、酸素および水蒸気を含む気流中に、触媒再生中の反応器からの排出ガスをリサイクルしたものや、二酸化炭素やアルゴンなどの不活性ガスを含んでいてもよい。
【0013】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法では、MFI構造ゼオライト触媒を焼成する温度を400℃以上、700℃以下とすることが好ましく、450℃以上、650℃以下とすることがより好ましい。
MFI構造ゼオライト触媒を焼成する温度が400℃未満では、触媒上の炭素質を燃焼させることができず、触媒活性を十分に回復させることができない。一方、MFI構造ゼオライト触媒を焼成する温度が700℃を超えると、構造破壊などの触媒の変質が起きるおそれがある。
【0014】
上記の温度範囲にて、MFI構造ゼオライト触媒を焼成する時間は、3時間以上、300時間以下であることが好ましく、5時間以上、150時間以下であることがより好ましい。
MFI構造ゼオライト触媒を焼成する時間が3時間未満では、触媒上の炭素質を十分に燃焼させることができず、触媒活性を十分に回復させることができない。一方、MFI構造ゼオライト触媒を焼成する時間が300時間を超えると、触媒が酸素および水蒸気を含む気流中に長時間曝されるため、触媒からの脱アルミニウムが進行して、触媒の長期寿命の低下につながる。
【0015】
本発明によって再生されるMFI構造ゼオライト触媒は、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されている。
MFI構造ゼオライトとしては、プロトン型MFI構造ゼオライトまたはアンモニウム型が挙げられる。
MFI構造ゼオライトのSi/Alモル比が15未満では、MFI構造ゼオライトの有効酸点が増加し、MFI構造ゼオライト触媒への炭素質析出が促進されて、触媒寿命が短くなる。一方、MFI構造ゼオライトのSi/Alモル比が300を超えると、MFI構造ゼオライトの有効酸点が減少し、触媒活性が低下する。
【0016】
アルミニウムの酸化物としては、γ-アルミナ(Al)などが挙げられる。
アルミニウムの水酸化物としては、ベーマイト(AlO(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、アルミナゾルなどが挙げられる。
シリコンの酸化物としては、酸化ケイ素(SiO2)が用いられる。
シリコンの水酸化物の形態としては、オルト珪酸(H4SiO4)、メタ珪酸(H2SiO3)などが挙げられる。
粘土としては、カオリン、ベントナイトなどが用いられる。
【0017】
また、MFI構造ゼオライト触媒において、MFI構造ゼオライト量に対するアルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上の含有率は15質量%以上、200質量%以下であることが好ましい。
MFI構造ゼオライト量に対するアルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上の含有率が15質量%未満では、触媒の強度が低く使用時に一部粉化するなどの問題が発生する。一方、MFI構造ゼオライト量に対するアルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上の含有率が200質量%を超えると、DTO反応/MTO反応に主に活性を示すMFI構造ゼオライトの割合が小さくなり、触媒としての性能が低下する。
【0018】
さらに、MFI構造ゼオライト触媒は、アルカリ土類金属化合物を含み、MFI構造ゼオライト量に対するアルカリ土類金属化合物の含有率が、アルカリ土類金属に換算して0.3質量%以上、10質量%未満であることが好ましい。
MFI構造ゼオライト量に対するアルカリ土類金属化合物の含有率が、アルカリ土類金属に換算して0.3質量%未満では、触媒としての酸性質の制御が不十分となる。一方、MFI構造ゼオライト量に対するアルカリ土類金属化合物の含有率が、アルカリ土類金属に換算して10質量%以上では、過剰量のアルカリ土類金属化合物(主に酸化物、炭酸塩)によるメタノール/ジメチルエーテルの分解活性が発現し、副生成物であるメタン、CO、水素の収率増加につながる。
【0019】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、炭酸マグネシウム(MgCO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、酢酸マグネシウム((CHCOO)Mg)、硝酸マグネシウム(Mg(NO))、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、オルト珪酸マグネシウム(MgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、酸化カルシウム(CaO)、酢酸カルシウム((CHCOO)Ca)、硝酸カルシウム(Ca(NO))、アルミン酸カルシウム(CaAl)、オルト珪酸カルシウム(CaSiO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、酸化ストロンチウム(SrO)、酢酸ストロンチウム((CHCOO)Sr)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、珪酸ストロンチウム、炭酸バリウム(BaCO)、水酸化バリウム(Ba(OH))、酸化バリウム(BaO)、酢酸バリウム((CHCOO)Ba)、硝酸バリウム(Ba(NO))、アルミン酸バリウム(BaAl)、珪酸バリウムなどが挙げられる。
【0020】
このような構成のMFI構造ゼオライト触媒は、以下に示す調製方法により調製されたものである。
まず、乳鉢、ライカイ機、ニーダーなどにより、少なくとも上記のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とからなる構成物と極性溶媒を混合、混練し、少なくとも上記のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上と、極性溶媒とからなる混合体を調製する(混合・混練工程)。
極性溶媒としては水が最適であるが、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類やジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、スルホキシド類などの極性有機溶媒を用いることもできる。
なお、必要に応じて、MFI構造ゼオライト触媒には、上記のアルカリ土類金属化合物やグラファイト、セルロース類、その他の添加物を加えてもよい。
【0021】
次いで、混合・混練工程にて得られた混合体を、押出機を用いた押出成型、マルメライザーによる球状体成型などによって成型し、成型体を得る(成型工程)。
【0022】
次いで、成型工程にて得られた成型体を、乾燥機によって乾燥した後、マッフル炉、トンネル炉などの焼成炉によって焼成することにより複合体を調製する(乾燥・焼成工程)。
この乾燥・焼成工程において、混練体の乾燥を、80℃以上、150℃以下にて、0.5時間以上、30時間以下行うことが好ましい。
また、この乾燥・焼成工程において、乾燥後の混練体の焼成を、350℃以上、750℃以下にて、1時間以上、50時間以下行うことが好ましい。
【0023】
次いで、乾燥・焼成工程にて得られた複合体を、水蒸気または水蒸気を体積割合で0.1以上含有する空気および/あるいは不活性ガス(窒素、炭酸ガスなど)などに接触させるか、もしくは、水蒸気を生成する反応雰囲気に接触させる(水蒸気処理工程)。この水蒸気処理工程においては、条件によって水蒸気が部分的に液体状の水として存在してもかまわない。また、ここで乾燥・焼成工程と水蒸気処理工程を同時に進行させることも可能である。これにより、MFI構造ゼオライト触媒を得る。
なお、水蒸気を生成する反応とはMTO反応/DTO反応やアルコール脱水反応のように本触媒上で反応物の脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。
この水蒸気処理工程において、複合体を水蒸気に接触させるか、もしくは、水蒸気を生成する反応雰囲気に接触させる時間は、1時間以上、50時間以下であることが好ましい。
【0024】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成することにより触媒寿命を向上させることができるために、触媒の再生回数が減少し、結果として、ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成するためのコストを低減することができる。また、触媒再生処理時に、希釈ガスとして水蒸気を用いることができるので、窒素を製造する深冷空気分離装置などの設備が不要となる。
【0025】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0026】
[ゼオライト触媒の調製]
「実験例1」
Si/Alモル比が75のアンモニウム型MFI構造ゼオライト(Zeolyst社製、CBV15014G)100gと、ベーマイト(Al相当の含有量70質量%)28gとを混合し、さらに適量のイオン交換水を加えて混練し、これらの混合体を調製した。
この混合体を直径3.6mmの押出機を用いて押出成型した。
次いで、押出成型により得られた成型体を120℃にて乾燥した後、550℃にて12時間、空気焼成し、触媒を得た。この触媒を触媒Aとした。
【0027】
「実験例2」
前記アンモニウム型MFI構造ゼオライト100gと、前記ベーマイト28gと、炭酸カルシウム(CaCO)5.0gとを混合し、さらに適量のイオン交換水を加えて混練し、これらの混合体を調製した。
この混合体を直径3.6mmの押出機を用いて押出成型した。
次いで、押出成型により得られた成型体を120℃にて乾燥した後、550℃にて12時間、空気焼成し、触媒を得た。この触媒を触媒Bとした。
【0028】
「実験例3」
特許文献(特開2005−138000号公報)に開示されているゼオライト触媒の調製方法に従って、微粒化したカルシウム含有MFI構造ゼオライト触媒を得た。この触媒を触媒Cとした。
【0029】
[触媒性能試験]
実験例1〜3で得られた触媒A〜Cについて触媒性能を測定するために、これらの触媒A〜Cを用いて、ジメチルエーテルから低級炭化水素を合成した。
ここでは、低級炭化水素の合成反応開始時からジメチルエーテルの転化率が99.0%未満になるまでの経過時間を「触媒寿命」と定義した。
【0030】
「比較例1」
触媒Aに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Aを用いて、等温反応器において触媒性能試験を行った。
ジメチルエーテルを1272Ncm/時間および窒素を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度530℃、常圧で触媒と接触させた。触媒量に対する原料のジメチルエーテル(DME)供給量比である重量基準空間速度(WHSV)については、9.6g−DME/(g−ゼオライト・時間)とした。ジメチルエーテルの転化率が5%以下になるまで、ジメチルエーテルおよび窒素を供給した。
「比較例2」
空気を143Ncm/時間および窒素を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、比較例1で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
比較例1の触媒寿命を100として、比較例1に対する比較例2の相対触媒寿命を表1に示す。
【0031】
「実施例1」
触媒Aに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Aを用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
「実施例2」
空気を143Ncm/時間および水蒸気を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、実施例1で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
実施例1の触媒寿命を100として、実施例1に対する実施例2の相対触媒寿命を表1に示す。
【0032】
「比較例3」
触媒Bに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Bを用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
「比較例4」
空気を143Ncm/時間および窒素を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、比較例3で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
比較例3の触媒寿命を100として、比較例3に対する比較例4の相対触媒寿命を表1に示す。
【0033】
「実施例3」
触媒Bに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Bを用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
「実施例4」
空気を143Ncm/時間および水蒸気を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、実施例3で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
実施例3の触媒寿命を100として、実施例3に対する実施例4の相対触媒寿命を表1に示す。
【0034】
「比較例5」
触媒Cに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Cを用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
「比較例6」
空気を143Ncm/時間および窒素を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、比較例5で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
比較例5の触媒寿命を100として、比較例5に対する比較例6の相対触媒寿命を表1に示す。
【0035】
「比較例7」
触媒Cに温度530℃、水蒸気分圧0.08MPa、24時間の水蒸気処理を施した。
この水蒸気処理を施した触媒Cを用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
「比較例8」
空気を143Ncm/時間および水蒸気を1272Ncm/時間の流量で混合させて反応管に送り、温度550℃、常圧で、比較例7で用いた触媒上の炭素質を燃焼させた。
その後、この触媒を用いて、比較例1と同様にして、等温反応器において触媒性能試験を行った。
比較例7の触媒寿命を100として、比較例7に対する比較例8の相対触媒寿命を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果から、比較例1、2では、触媒Aを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/窒素気流中にて、この触媒の再生処理を行うと、触媒寿命が低下することが分かった。
実施例1、2では、触媒Aを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/水蒸気気流中にて、この触媒の再生処理を行うと、触媒寿命が向上することが分かった。
比較例3、4では、触媒Bを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/窒素気流中にて、この触媒の再生処理を行うと、触媒寿命が低下することが分かった。
実施例3、4では、触媒Bを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/水蒸気気流中にて、この触媒の再生処理を行うと、触媒寿命が向上することが分かった。
比較例5、6では、触媒Cを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/窒素気流中にて、この触媒の再生処理を行っても、触媒寿命はほとんど変わらないことが分かった。
比較例7、8では、触媒Cを水蒸気処理してジメチルエーテルから低級炭化水素への合成反応に用いた後、空気/水蒸気気流中にて、この触媒の再生処理を行っても、触媒寿命はほとんど変わらないことが分かった。
【0038】
以上の結果から、次のようなことが言える。
アルミニウムの酸化物および/または水酸化物とMFI構造ゼオライトからなる触媒A、および、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物と炭酸カルシウムとMFI構造ゼオライトからなる触媒Bは、触媒再生処理時に空気と水蒸気を共存させることにより、再生後の触媒寿命を向上させることができる。
また、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物を含まないカルシウム含有MFI構造ゼオライト触媒からなる触媒Cは、触媒再生処理時に空気と窒素を共存させる場合と、空気と水蒸気を共存させる場合のどちらであっても触媒寿命に与える影響は小さく、触媒再生処理の前後で触媒寿命は大きく変動しない。
これらのことから、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物とMFI構造ゼオライトからなる触媒A、および、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物と炭酸カルシウムとMFI構造ゼオライトからなる触媒Bに対して、触媒再生処理時に空気と水蒸気を共存させるのが有効であると言える。これは、水蒸気がアルミニウムの酸化物および/または水酸化物に作用することによって、触媒寿命が向上するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法は、メタノールを原料とするガソリン合成反応(MTG反応)、クラッキングなどのプロセスにおける触媒再生工程にも適用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルおよび/またはメタノールから低級炭化水素を合成する際に用いられるMFI構造ゼオライト触媒の再生方法であって、
少なくともSi/Alモル比が15以上、300以下のMFI構造ゼオライトと、アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上とから構成されるMFI構造ゼオライト触媒を、酸素および水蒸気を含む気流中にて焼成する工程を含むことを特徴とするMFI構造ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項2】
前記MFI構造ゼオライト触媒を焼成する温度を400℃以上、600℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項3】
前記MFI構造ゼオライト触媒は、前記MFI構造ゼオライト量に対する前記アルミニウムの酸化物および/または水酸化物、シリコンの酸化物および/または水酸化物、粘土の群から選択された1種または2種以上の含有率が15質量%以上、200質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項4】
前記MFI構造ゼオライト触媒は、アルカリ土類金属化合物を含み、前記MFI構造ゼオライト量に対する前記アルカリ土類金属化合物の含有率がアルカリ土類金属に換算して0.3質量%以上、10質量%未満であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のMFI構造ゼオライト触媒の再生方法。



【公開番号】特開2008−80238(P2008−80238A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262554(P2006−262554)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】