説明

MPI誘導による薬物送達のための刺激応答性キャリア

本発明は、空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができ、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る磁性粒子を有し、上記造影剤に含まれる上記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、上記磁性粒子は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMn、これらの合金又はこれらのいずれかの酸化物によって構成された当該組成物に関するものである。本発明は、更に、薬物の制御送達のためのキャリアとしてのそのような組成物又は空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物の使用、及びそのような組成物のMPIによる検出又は位置の特定を有する薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法に関係がある。更なる観点では、本発明は、病的状態を治療するためのそのような組成物であって、上記治療は刺激の付与による薬物の放出を有する当該組成物に関係がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができ、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る磁性粒子を有し、上記造影剤に含まれる上記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、上記磁性粒子は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMn、これらの合金又はこれらのいずれかの酸化物によって構成された当該組成物に関する。本発明は、更に、薬物の制御送達のためのキャリアとしてのそのような組成物又は空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物の使用、及びそのような組成物のMPIによる検出又は位置の特定を有する薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法に関する。更なる観点では、本発明は、病的状態を治療するためのそのような組成物であって、上記治療は刺激の付与による薬物の放出を有する当該組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達(drug delivery)は、人間又は動物に対する医学的効果を得るために薬剤的に、治療的に又は診断上有用な化合物を投与する種々の方法又はプロセスを集めたものである。薬物送達技術は、製品の有効性及び安全性並びに患者の利便性及び服薬順守を改善するために、薬物の放出プロファイル、吸収、分布及び/又は薬物の消失を変更することができる。古典的薬物送達は、とりわけ、非侵襲的な経口、局所、経粘膜及び吸入ルートを使用する。典型的な薬物送達の戦略は、望ましくない生体内分布及び毒性のために患者に大きな副作用を引き起こすことが多い薬物の全身投与がベースとなっている。そのような全身の手法の大きな欠点は、治療の有効性が、一方では病変又は標的組織又は器官内における最小限の必要薬物濃度に、他方では体内の非標的部における薬物の毒性作用に依存することである。
【0003】
この問題を克服するために、薬物送達の分野における新たな一面として、キャリア、例えば、リポソーム又は高分子ミセルキャリアを使用した局所的及び刺激性薬物送達が開発された。この技術は、薬剤の局所濃度が増大し、同時に、全身性副作用が避けられるので、古典的な全身的疾患治療プロトコルよりも大きな利点をもたらす。従って、局所的薬物送達は、特に手術のような他の治療手段が適していない又は非常に危険である場合に、多くの病気の又は病的状態に対する選択肢であり得る。
【0004】
キャリアを使用した薬物送達は、典型的には、最初に選択した薬物又は物質をキャリアに取り込み、続いて、外部トリガ、例えば、温度又は圧力の刺激が与えられると、所望の場所において上記取り込まれた物質又は薬物を放出することにより行われる(Torchilin,2005,Nature Reviews Drug Discovery,4,145-160)。
【0005】
キャリアを使用した薬物送達に関する技術は、造影剤の使用とうまく組み合わせられてきた。例えば、刺激応答性リポソームは、リポソームの内腔に造影剤を封入することにより磁気共鳴映像法(MRI)造影剤と結び付けられた(McDannold et al.,2004,Radiology,230,743-752)。MRIは、診断の目的で病院においてよく用いられる重要な診断技術であり、高い空間分解能での軟部組織の非侵襲的画像化を可能にする。この技術は、全ての組織において全身に高い濃度で存在するバルク水分子の画像化に基づいている。造影剤としてガドリニウム又はマンガンイオンの錯体が用いられ、これは、水分子のプロトンの縦緩和時間(T)及び横緩和時間(T)を減らす。その能力のために、MRIは、キャリア構造体に含まれる物質、例えば薬物の送達の監視を可能にすることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、そのような手法では、キャリア内における初期の造影剤濃度が非常に高く、著しいTの短縮及び拡散作用のために治療介入の当初はこれらキャリアの濃度を容易に決定することができない。専ら加熱すると、T造影剤は、MRIにおける陽性の造影を与えるために遊離し、希釈される。同様の事柄が、薬物伝送キャリアと19Fトレーサ又はT磁気共鳴(MR)造影剤を有する造影剤との組み合わせに当てはまる。これらの代替の手法は、薬物の放出の前又は後の造影に関する問題を与え、概して定量化可能な信号値を与えない。従って、これまで臨床的に用いられてきた画像化方法は、薬物送達のために刺激応答性のキャリアを用いる際、治療プロセス全体にわたって定量的情報を与えるのには適していない。
【0007】
従って、治療プロセス全体にわたって定量的情報を与える画像誘導による薬物送達の効率的で信頼性の高い方法及びそのような方法を実行するための手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この要求に応え、刺激応答性キャリアを介した磁性粒子映像法(MPI)誘導による薬物送達のための手段及び方法を提供する。上記目的は、特に、空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができ、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る磁性粒子を有し、上記造影剤に含まれる上記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、上記磁性粒子は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMn、これらの合金又はこれらのいずれかの酸化物によって構成され、より好ましくは、Fe又はFeによって構成された当該組成物によって達成される。
【0009】
そのような組成物は、刺激応答性キャリアの有利な性質、すなわち、適切な信号、刺激又は行為が与えられた後、所定の場所で物質、特に薬物を放出する可能性と、高感度及び高分解能をもたらす非線形再磁化解析から磁性ナノ粒子の空間的分布の直接的な検出を可能にする磁性粒子映像法(MPI)の技術の有利な性質とを兼ね備えている。特に、MPIによって検出され得る造影剤により生成されるMPI画像化信号は、上記組成物又はキャリアへの造影剤の取り込みによって影響を及ぼされないことが分かった。また、上記信号は、キャリアからの造影剤が放出される際、影響を受けないままであることが分かった。従って、MRIを使用する方法とは対照的に、そのような組成物は、薬物の放出の前には磁性粒子映像法を用いて定量的に追跡され、薬物放出後に組成物の内容物の更なる分布が追跡される。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態では、上記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、粒子当たり10ミリ秒よりも少ない再磁化時間を有している。
【0011】
本発明の更に好ましい実施の形態では、上記造影剤は、上記シェル構造の外側若しくは内部と関連しているか、上記薬物と関連しているか又は上記シェル構造の上記空洞部内に埋め込まれている。
【0012】
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記シェル構造は、リポソーム、ポリマソーム、ナノカプセル又はそれらの任意の混合物を構成している。特に好ましい実施の形態では、上記シェルは、感熱性又は感圧性材料を有している。
【0013】
本発明の更に好ましい実施の形態では、上述した外部刺激は、孔部を形成する及び/又は前記シェル構造を分解することができる。
【0014】
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記外部刺激は、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下である。
【0015】
他の観点では、本発明は、薬物の制御送達のためのキャリアとしての(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物の使用に関係がある。
【0016】
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記制御送達は、MPIを用いる検出又は位置の特定を有する。本発明の更なる代替の形態では、上記制御送達は、MPI及び磁気共鳴映像法(MRI)を用いる検出又は位置の特定を有する。
【0017】
本発明の他の好ましい実施の形態では、薬物の制御送達のためのキャリアとしての(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物の使用において、制御される放出(controlled release)が、外部刺激の付与を介した上記シェル構造の内容物の放出を更に有する。本発明の特に好ましい実施の形態では、上記外部刺激は、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激である。
【0018】
更なる観点では、本発明は、シェル構造の内容物を放出する外部刺激が与えられる前、与えられている間及び/又は与えられた後に、(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物のMPIによる検出又は位置の特定を有する薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法に関係がある。
【0019】
本発明の更に好ましい実施の形態では、上記薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法は、MPI及び更にMRIによる検出又は位置の特定を有する。
【0020】
本発明の更に好ましい実施の形態では、上記に定義された薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法は、追加のステップとして、外部刺激の付与を介した上記シェル構造の内容物の放出を有する。本発明の特に好ましい実施の形態では、上記外部刺激は、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激である。
【0021】
更なる観点では、本発明は、病的状態を治療するための組成物であって、空洞部を形成するシェル構造を有し、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は本明細書において上記に定義された当該組成物に関係がある。
【0022】
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記薬物は、刺激が与えられることにより投与されることとなり、上記刺激は、局所熱システム、電界、磁場、焦点式超音波の照射及び/又は高周波の照射を介して伝達され、上記シェル構造から外部への上記薬物の放出をもたらす。
【0023】
本発明の他の好ましい実施の形態では、上記組成物は、MPIを用いて検出可能又は位置特定可能である。本発明の更なる好ましい実施の形態では、上記組成物は、MPI及びMRIを用いて検出可能又は位置特定可能である
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】対応する物質を封入したキャリアからの薬物送達プロセスにおける種々の画像化モダリティの相対的信号強度の模式図である。
【図2】リポソームの作製のために用いられるマイクロカプセル化手段(MCV)技術の模式図である。
【図3】紫外−可視の吸収(ハッチング)及び動的光散乱数(クロスハッチング)を溶出体積の関数として示した図である。
【図4】DNAをロードした溶液のゲル浸透クロマトグラフィ後に採取された部分のアガロースゲル電気泳動(3%アガロースゲル、エチジウムブロマイド染色)の結果を示す画像である。左のライン(A)は参照DNA溶液に対応している。他のラインは、各溶出体積(単位はmL)に従って標識化されている。
【図5】加熱前(A)及び50℃で30分間加熱後(B)のDNAをロードしたリポソーム溶液のアガロースゲル電気泳動(3%アガロースゲル、エチジウムブロマイド染色)の結果を示す画像である。
【図6】15℃/分の加熱及び冷却速度で20℃と60℃との間における加熱/冷却サイクルに曝されたDNA/リゾビストをロードしたリポソーム溶液のサーモグラムである。
【図7】種々の加熱時間において50℃で加熱したDNA/リゾビストをロードしたリポソーム溶液のアガロースゲル電気泳動(3%アガロースゲル、エチジウムブロマイド染色)の結果を示す画像である。ラインAはDNAラダー参照試料を表し、ラインBはニシン精液のDNA参照溶液であり、ラインはDNA/リゾビストをロードしたリポソーム試料の種々の加熱時間(単位は分)に対応して表示されている。
【図8】加熱する前(下側のスペクトル)及び55℃に加熱後(上側のスペクトル)のDNA/リゾビストをロードしたリポソームの31PNMRスペクトルの図である。
【図9】正の温度勾配(点)、負の温度勾配(上向き三角形)、第2の正の温度勾配(下向き三角形)、第2の負の温度勾配(十字)の間に測定されたDNA/リゾビストをロードしたリポソームのRの温度依存性を示した図である。
【図10】MCV法を用いて作製されたリゾビスト/DNAをロードした感熱性リポソームの加熱前(A)、50℃で1分間加熱後(B)及び50℃で30分間加熱後(C)のクライオTEM画像である。黒い点がリゾビスト粒子である。スケールバーは200nmを表している。
【図11】加熱前、50℃で1分、4分及び30分加熱後のDNA/リゾビストをロードした感熱性リポソームの(周波数の関数としての)MPS信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、刺激応答性の組成物又はキャリアを介した磁性粒子映像法(MPI)誘導による薬物送達のための手段及び方法に関連している。
【0026】
本発明は特定の実施の形態に関して説明されるが、この説明は限定的な意味に解釈されるべきではない。
【0027】
本発明の例示的な実施の形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するために重要な定義が与えられる。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「a」及び「an」の単数形は、文脈がそれ以外のことを明らかに規定する場合を除いて、対応する複数形も含んでいる。
【0029】
本発明に関しては、「約」という用語は、当業者が当該特徴の技術的効果を依然として確実にすると理解する正確さの幅を意味している。この用語は、典型的には、示された数値からの±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更に好ましくは±5%のずれを示すものである。
【0030】
「有する」という用語は限定的ではないことを理解されたい。本発明のために、「より成る」という用語は、「有する」という用語の好ましい実施の形態であるとみなされる。以下において、あるグループが少なくともある数の具体的表現を有するように規定される場合、これは、好ましくはこれらの具体的表現のみより成るグループを含むことも意味する。
【0031】
また、明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語及びこれらに類する用語は、類似する要素を区別するために用いられており、必ずしも連続する順序又は発生順を説明するために用いられるものではない。そのように用いられている用語は適切な状況下において置き換え可能であり、本明細書で説明される本発明の実施の形態は、本明細書中に説明されている又は示されている順序ではない他の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0032】
「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語が使用又は方法のステップに関係がある場合、本明細書で上記又は以下に記載の適用においてそれ以外のことが示されていない限り、ステップ間に時間又は時間間隔の統一性は存在しない。すなわち、各ステップは、同時に行われてもよいし、そのようなステップの間に秒、分、時間、日、週、月又は更には年の時間間隔が存在してもよい。
【0033】
本発明は、異なっていてもよいものとして本明細書において説明される特定の方法論、プロトコル、試薬等に限定されないことを理解されたい。本明細書において用いられる専門用語は、単に特定の実施の形態を説明する目的であり、専ら添付の特許請求の範囲により限定される本発明の範囲を限定するように意図されてはいないことも理解されたい。特に定義されていない限り、本明細書において用いられる技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有している。
【0034】
上記に示したように、本発明は、一観点では、空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができ、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る磁性粒子を有し、上記造影剤に含まれる上記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、上記磁性粒子は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMn、これらの合金又はこれらのいずれかの酸化物によって構成され、より好ましくは、Fe又はFeによって構成された当該組成物に関係している。
【0035】
本明細書において用いられる「シェル構造」という用語は、典型的には同一の又は類似した化学的、物理的及び/又は生物学的性質を持つ小さい単位又はエンティティから成るエンベロープ型構造を意味する。更に、上記エンベロープ型構造は、空洞部を形成する。すなわち、内部から外部環境を排除し、従って、外部と内部との環境、状態等の境界としての役割を果たす。本発明に係るシェル構造は、好ましくは、疎水性層により構成されている。この層は、単層又は二重層である。二重層構造の各サイドは、異なる性質を有している及び/又は異なるシェル形成単位により構成されている。好ましくは、両サイドが、シェル構造又は膜の内部の方を向いた疎水性の尾部構造を有している。上記シェル構造は、多重層の形態又は単層の形態を有しており、例えば、小さい若しくは大きい多重層小胞、小さい単層小胞又は大きい単層小胞を構成している。上記シェル構造は、任意の適切な形態又は寸法であり、例えば、球形であってもよく、楕円形であってもよく、円形又はナシ形、ダンベル型、扁平形、ピラミッド形等であってもよい。上記シェル構造は、好ましくは、自己集合能を有している。
【0036】
本発明の典型的な実施の形態では、上記シェル形成単位は、疎水性尾部及び親水性頭部により構成されている。シェル構造の内部又は空洞部は、好ましくは、親水性の環境、例えば、水溶液である。代替として、シェル構造の空洞部は、親水性の環境である。シェル構造の空洞部の環境は、外部と同じ又は異なる環境条件を有している。本明細書において用いられる「環境条件」という用語は、pH、有機又は無機イオンの濃度、1つ又はそれ以上の塩の存在、浸透圧の存在等を意味する。例えば、シェル構造の空洞部内のpHは、外部のpHよりも低いか、それと同じであるか、又はそれよりも高く、シェル構造内には、浸透圧が存在する又は浸透圧平衡が存在する等である。
【0037】
シェル形成単位に加えて、シェルは、追加の機能を与える更なる要素を有している。そのような追加の要素の例は標的エンティティであり、これは、シェル構造の化学的、物理的及び/又は生物学的性質を変更する適合要素又は安定化若しくは不安定化要素によるシェル構造の相互作用及び/又は認識を可能にする。これらの要素は、典型的にはシェル構造の外側又は外表面に存在し、シェル構造の内部及び/又はシェル構造の空洞部に突き出ていてもよいし、突き出ていなくてもよい。特定の組織型、特定の器官、細胞若しくは細胞型又は体、特に動物若しくは人間の体の特定の部分にシェル構造の標的を定めることを可能にする要素が特に好ましい。例えば、標的エンティティの存在は、肝臓、腎臓、肺、心臓、膵臓、胆汁、脾臓、リンパ組織、皮膚、脳、筋肉等のような器官にシェル構造及び従って組成物全体の標的を定めることをもたらす。代替として、標的エンティティの存在は、特定の細胞型、例えば、表面において相互作用タンパク質又は認識可能なタンパク質を発現させるがん性細胞に標的を定めることをもたらす。本発明の好ましい実施の形態では、上記シェル構造は、シェル構造の外側及び/又は内側において相互作用面を与えるタンパク質若しくはペプチド又はその断片を有している。そのようなタンパク質又はペプチド要素の例は、受容体分子に結合することができるリガンド、リガンド又は他の受容体と相互作用することができる受容体分子、抗原又はアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチンと相互作用することができる抗体、抗体断片又はその誘導体である。また、例えば、タンパク質、ペプチド若しくはシェル構造単位等のようなビオチン化化合物の形態で存在するか、又はシェル構造自体の内部若しくは外側に存在するビオチンのような結合相互作用物質の存在も本発明により想定されている。上記シェル構造は、また、シェル構造の表面に存在する及び/又はシェル構造及び/又はシェル構造の空洞部に突き出た適合する相互作用物質、例えば、ビタミンを結合するタンパク質又は抗原等と相互作用することができるビタミン又は抗原を有している。
【0038】
上記シェル構造は、また、追加の化合物、好ましくは、シェル構造の安定性及び/又は循環寿命(circulatory life)を高める、生体内分布に影響を与える、免疫学的挙動を変更する等の化合物によって覆われている。そのようなコーティングの例は、炭水化物分子の存在、好ましくは、糖鎖付加パターン、より好ましくは当業者には既知の組織又は細胞型に典型的な生物学的に関連した糖鎖付加パターンの存在、又はシェル構造の外側層又は外部におけるPEG(ポリエチレングリコール)の存在を含んでいる。ポリエチレングリコール2000の使用が特に好ましい。オリゴグリセロール(OG)基の使用が更に特に好ましい。OGで修飾された感熱性リポソームの使用についての一例は、Lindner等の2008,Journal of Controlled Release, 125, 112-120である。
【0039】
シェル構造の典型的なサイズは、約30nmから約1000nmまでである。約50nmから約400nmの間のサイズが好ましい。
【0040】
本明細書において用いられる「シェル構造は薬物を有する」という表現は、薬物が、シェル構造の空洞部、シェル構造の表面、外側と内側とのシェル形成境界領域、例えば、単層又は二重層の境界自体又は同時にこれらの区画の1つ若しくはそれ以上に、例えば、境界部を超えて外側からシェル構造の空洞部内に広がって、境界部からシェル構造の空洞部内に広がって又は境界部から外部に広がって存在することを意味する。上記薬物は、追加として、本明細書において上述した修飾、例えば、グリコシル化、ビオチン化、PEGによるコーティング等の1つ又はそれ以上に従って修飾され得る。代替として、薬物は、シェル構造の表面、境界領域若しくは空洞部に存在することができるように化学的又は生物学的に修飾される。上記薬物は、モノマ、オリゴマ又はポリマとして存在する。上記の存在は、浸透圧の状況、シェル構造の電荷又は当業者には既知の任意の他の適切なパラメータに従って調節される。薬物に加えて、当業者には既知の任意の適切なアクセサリ分子、例えば、安定化分子、アジュバント、分解酵素の阻害剤、電荷安定剤、構造安定剤、塩、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、色素、例えば蛍光色素、画像化化合物等がシェル構造に含まれ得る。
【0041】
本明細書において用いられる「薬物」という用語は、処置、治療、予防、未然防止(prevention)又は病状、例えば病気若しくは疾患の診断に用いられる、又は、それ以外には、物理的、心理的又は精神的に健康な状態を向上させるために用いられる任意の物理的、化学的又は生物学的物質を意味する。この用語は、また、化粧的用途の物質も意味し、これは、栄養補給の目的又はこれらの観点の任意の組み合わせに役立つ。好ましい実施の形態では、この用語は、生物学的活性物質を意味する。ここで用いられる「生物学的活性物質」という用語は、治療薬物、内因性分子及び薬理学的活性物質、例えば、抗体,栄養分子(nutritional molecule),化粧的物質(cosmetic agent),診断用物質及び他の画像化用造影剤を含む生物学的に活性な化学物質を意味する。また、活性物質の薬理学的に許容可能な塩を含む活性物質も含まれる。
【0042】
薬物の例は、ポリヌクレオチド、アンチセンスヌクレオチド(遺伝子治療物質)、RNA分子、DNA分子、siRNA分子、miRNA分子等のような核酸、糖質、タンパク質又はペプチド、小分子、脂質、リポ多糖類、非ペプチド又は非タンパク質薬物を有している。本発明の範囲内において、ポリマの性質の薬物を採用することが可能であるが、1500g/molよりも小さい又は更に500g/molよりも小さい相対的に小さい分子量の薬物を採用することも可能である。
【0043】
従って、本発明に関連して考えられる生物学的活性物質は、治療又は予防効果のある任意の化合物を含んでいる。上記化合物は、組織増殖、細胞増殖、細胞分化に影響を及ぼす若しくは関与する化合物、免疫反応のような生物学的作用を引き起こすことができる化合物又は1つ若しくはそれ以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たす化合物であり得る。非限定的な例のリストは、(抗細菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤を含む)抗菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍物質、トロンビン阻害剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、血管攣縮阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤、血管拡張剤、抗高血圧剤、抗菌剤、抗生剤、表面糖たんぱく質受容体の阻害剤、抗血小板物質、抗有糸分裂剤、微小管阻害剤、抗分泌剤、アクチン阻害剤、リモデリング阻害剤、抗代謝剤、(抗血管新生剤を含む)抗増殖剤、抗がん化学療法剤、抗炎症ステロイド又は非ステロイド性抗炎症剤、免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、成長因子、ドーパミン作動薬、放射線治療薬、細胞外基質成分、ACE阻害剤、遊離基捕捉剤、キレート剤、抗酸化剤、抗ポリメラーゼ及び光線力学的治療剤を含んでいる。
【0044】
相対的に小さいペプチドは、アミノ酸の数によって分類して呼ばれる(例えば、ジ、トリ、テトラペプチド)。相対的に少数のアミド結合を持つペプチドはオリゴペプチドとも呼ばれ(50個のアミノ酸まで)、相対的に多数のペプチド(50個よりも多いアミノ酸)はポリペプチド又はタンパク質と呼ばれる。アミノ酸残基のポリマであることに加えて、あるタンパク質は、更に、所謂四次構造、必ずしもアミド結合によって化学的に結合されてはいないが、静電気力及びファンデルワールス力のような当業者には一般的に知られている力によって結合された幾つかのポリペプチドの集合体によって特徴付けられる。本明細書において用いられるペプチド、タンパク質又はその混合物という用語は、全ての上述した可能性を含むこととなる。一般に、タンパク質及び/又はペプチドは、成長因子である。
【0045】
シェル構造に有利に含まれるペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質を有するエンティティの他の例は、限定されるものではないが以下のものを含む免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質を含んでいるが、これに限定されない。
【0046】
ジフテリア毒素又は破傷風毒素のような毒素。
【0047】
アデノウイルス、エプスタインバーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIV−1、HIV−2、HTLV−III、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、乳頭腫ウイルス、パラミクソウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、ワクシニア(天然痘)ウイルス及び黄熱病ウイルスのようなウイルス表面抗原又はウイルスの一部。
【0048】
百日咳菌、ヘリコバクターピロリ菌、破傷風菌、ジフテリア菌、大腸菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ種、レジオネラニューモフィラ、ウシ結核菌、ハンセン菌、ヒト結核菌、淋菌、髄膜炎菌、プロテウス種、緑膿菌、サルモネラ種、赤痢菌種、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、コレラ菌又はペスト菌のような細菌表面抗原又は細菌の一部。
【0049】
三日熱マラリア原虫(マラリア)、熱帯熱マラリア原虫(マラリア)、卵形マラリア原虫(マラリア)、四日熱マラリア原虫(マラリア)、熱帯リーシュマニア(リーシュマニア症)、ドノバンリーシュマニア(リーシュマニア症)、ブラジルリーシュマニア(リーシュマニア症)、ローデシアトリパノソーマ(睡眠病)、ガンビアトリパノソーマ(睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(シャーガス病)、マンソン住血吸虫(住血吸虫症)、ビルハイツ住血吸虫(住血吸虫症)、日本住血吸虫(住血吸虫症)、旋毛虫(旋毛虫病)、十二指腸糞線虫(鉤虫症)、バンクロフト糸状虫(フィラリア症)、マレー糸状虫(フィラリア症)、ロア糸状虫(フィラリア症)、常在糸状虫(フィラリア症)、メジナ虫(フィラリア症)又は回旋糸状虫(フィラリア症)のような病気を引き起こす寄生生物の表面抗原又は寄生生物の一部。
【0050】
IgG、IgA、IgM、抗狂犬病免疫グロブリン及び/又は抗ワクシニア免疫グロブリンのような免疫グロブリン。
【0051】
ボツリヌス抗毒素、ジフテリア抗毒素、ガス壊疽抗毒素又は破傷風抗毒素のような抗毒素。
【0052】
口蹄疫に対する免疫反応を引き出す抗原、卵胞刺激ホルモン、プロラクチン、アンギオゲニン、上皮成長因子、カルシトニン、エリスロポエチン、甲状腺刺激放出ホルモン、インスリン、成長ホルモン、インスリン様成長因子1及び2、骨格成長因子、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、神経成長因子、副腎皮質成長ホルモン(ACTH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、バソプレシン、コレシストキニン並びに副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンのようなホルモン及び成長因子、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子のようなサイトカイン、ウロキナーゼ、プラスミノゲン活性化因子のような線維素溶解酵素、プロテインC、第VIII因子、第IX因子、第VII因子又はアンチトロンビンIIIのような凝固因子を含む免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質を含んでいる。
【0053】
他のタンパク質又はペプチドの例は、アルブミン、心房性ナトリウム利尿因子、レニン、スーパーオキシドジスムターゼ、α1−アンチトリプシン、肺サーファクタントタンパク質、バシトラシン、ベスタチン、シクロスポリン、デルタ睡眠誘発ペプチド(DSIP)、エンドルフィン、グルカゴン、グラミシジン、メラノサイト抑制因子、ニューロテンシン、オキシトシン、ソマトスタチン、テプロチド、血清胸腺因子、サイモシン、DDAVP、デルモルフィン、メチオニンエンケファリン、ペプチドグリカン、サチエチン、チモペンチン、フィブリン分解産物、デス−エンケファリン−αエンドルフィン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ロイプロリド、α−MSH又はメトケファミド。
【0054】
アルトレタミン、フルオロウラシル、アムサクリン、ヒドロキシカルバミド、アスパラギナーゼ、イフォスファミド、ブレオマイシン、ロムスチン、ブスルファン、メルファラン、クロラムブシル、メルカプトプリン、クロルメチン、メトトレキサート、シスプラチン、ミトマイシン、シクロホスファミド、プロカルバジン、シタラビン、テニポシド、ダカルバジン、チオテーパ、ダクチノマイシン、チオグアニン、ダウノルビシン、トレオスルファン、ドキソルビシン、チオホスファミド、エストラムシン、ヴィンブラスチン、エトグルシド、ヴィンクリスチン、エトポシド、ヴィンデシン又はパクリタクセルのような抗腫瘍剤。
【0055】
アンピシリン、ナフシリン、アモキシシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリンG、カルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロキサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリンのような抗生物質と、セファクロール、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セフラジン、セファトリジン、セフスロジン、セファゾリン、セフタジジム、セフォラニド、セフトリアキソン、セフォキシチン、セフロキシム、セファセトリル、ラタモキセフ又はセファレキシンのようなセファロスポリン系抗生物質と、アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン又はトブラマイシンのようなアミノグリコシド系抗生物質と、アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ニスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロヴァマイシン、エリトロマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン又はバンコマイシンのようなマクロライド系抗生物質と、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン又はミノサイクリンのようなテトラサイクリン系抗生物質と、クロランフェニコール、リファマイシン、リファンピシン又はチアンフェニコールのような他の抗生物質とを有する抗菌剤。
【0056】
スルホンアミド系、スルファジアジン、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファメトキサゾール、スルファジミジン、スルファメトキシピリダジン、スルファフラゾール、スルファフェナゾール、スルファレン、スルフイソミジン、スルファメラジン及びスルフイソキサゾール及びスルファメトキサゾール又はスルファメトロールを伴うトリメトプリムのような化学療法剤。
【0057】
メタナミン、キノロン(ノルフロキサシン、シノキサシン)、ナリジクス酸、ニトロ化合物(ニトロフラントイン、ニフルトイノール)又はオキソリニック酸のような尿路防腐薬。
【0058】
メトロニダゾールのような嫌気性感染症用薬剤。
【0059】
アミノサリチル酸、イソニアジド、シクロセリン、リファンピシン、エタンブトール、チオカルライド、エチオナミド又はヴァイオマイシンのような結核用薬剤。
【0060】
アミチオゾン、リファンピシン、クロファジミン、ナトリウムスルホキソン、ジアミノジフェニルスルホン(DDS、ダプソン) のようならい病用薬剤。
【0061】
抗真菌剤:アンホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルシトシン、ニスタチン及びグリセオフルビンのような抗真菌剤。
【0062】
アシクロビール、イドクスウリジン、アマンチジン、メチサゾン、サイタラビン、ヴィダラビン又はガンシクロビールのような抗ウイルス剤。
【0063】
クロロキン、インドキノール、クリオキノール、メトロニダゾール、デヒドロエメチン、パロモマイシン、ジロキサニド、フロアテチニダゾール及びエメチンのようなアメーバ症の化学療法剤。
【0064】
クロロキン、ピリメタミン、ヒドロキシクロロキン、キニン、メフロキン、スルファドキシン/ピリメタミン、ペンタミジン、ナトリウムスラミン、プリマキン、トリメトプリム、プログアニルのような抗マラリア剤。
【0065】
アンチモンカリウムタートレート、ニリダゾール、アンチモンナトリウムジメルカプトスクシネート、オキサムニキン、ベフェニウム、ピペラジン、ジクロロフェン、プラジクアンテル、ジエチルカルバマジン、ピランテルパルモエート、ヒカントン、ピリビウムパモエート、レバミゾール、スチボフェン、メベンダゾール、テトラミゾール、メトリホネート、チオベンダゾール又はニクロサミドのような抗蠕虫病剤。
【0066】
アセチルサリチル酸、メフェナミック酸、アクロフェナック、ナプロキセン、アゾプロパノン、ニフルミック酸、ベンジダミン、オキシフェンブタゾン、ジクロフェナック、ピロキシカム、フェノプロフェン、ピルプロフェン、フルルビフロフェン、ナトリウムサリサイクレート、イブプロフェンスリンダック、インドメタシン、チアプロフェニック酸、ケトプロフェン又はトルメチンのような抗炎症剤。
【0067】
コルヒチン又はアロプリノールのような抗痛風剤。
【0068】
アルフェンタニル、メタドン、ベジトラミド、モルフィン、ブプレノルフィン、ニコモルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、コデイン、ペチジン、デキシトロモラミド、ピリトラニド、デキシトロプロポキシフェン、スフェンタニル又はフェンタニルのような中枢作用性(オポイド)鎮痛剤。
【0069】
アルチカイン、メピバカイン、ブピバカイン、プリロカイン、エチドカイン、プロカイン、リドカイン又はテトラカインのような局所麻酔剤。
【0070】
アマンチジン、ジフェンヒドラミン、アポモルフィン、エトプロパジン、ベンズトロピンメシレート、レルゴトリル、ビペリデン、レヴォドーパ、ブロモクリプチン、リスライド、カルビドーパ、メチキセン、クロルフェノキサミン、オルフェナドリン、シクリミン、プロシクリジン、デキセチミド又はトリヘキシフェニジルのようなパーキンソン病用薬剤。
【0071】
バクロフェン、カリソプロドール、クロルメザノン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、ジアゼパム、フェバルバメート、メフェノキサロン、メフェネシン、メトキサロン、メトカルバモール又はトルペリゾンのような中枢性筋弛緩剤。
【0072】
コルチゾール、デゾキシコルチコステロン及びフルロヒドロコルチゾンのようなミネラロコルチコステロイドと、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアンシノロン(アセトニド)のようなグルココルチコステロイドとを有するコルチコステロイド系、ダナゾール、フルオキシメステロン、メステロロン、メチルテストステロン、テストステロン及びこれらの塩のような治療に用いられるアンドロゲンステロイドと、カルステロン、ナンドロロン及びその塩、ドロモスタノロン、オキサンドロロン、エチレストレノール、オキシメトロン、メタンドリオール、スタノゾロール、メタンドロステノロン並びにテストラクトンのような治療に用いられるタンパク質同化ステロイドと、シプロテロンアセテートのような抗アンドロゲンとを有するアンドロゲン系、ジエチルスチルベストロール、エストラジオール、エストリオール、エチニレストラジオール、メストラノール又はキネストロールのような治療に用いられるエストロゲンステロイドと、クロロトリアニゼン、クロミフェン、エタモキシトリフェトール、ナホキシジン及びタモキシフェンのような抗エストロゲンと、アリルエストレノール、デソゲストレル、ジメチステロン、ジドロゲステロン、エチニルエストレノール、エチステロン、エチナジオールジアセテート、エチノジオール、ヒドロキシプロゲステロン、レヴォノルゲストレル、リネストレノール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロールアセテート、ノレチンドロン、ノレチステロン、ノレチノドレル、ノルゲストレル及びプロゲステロンのようなプロゲスチンとを有するエストロゲン系。
【0073】
レヴォチロニン及びリオチロニンのような治療に用いられる甲状腺薬剤と、カルビマゾール、メチマゾール、メチルチオウラシル又はプロピルチオウラシルのような治療に用いられる抗甲状腺薬剤とを有する甲状腺薬剤である。
【0074】
好ましい治療薬は、がん(例えば、抗腫瘍)及び心臓血管疾患の分野におけるものである。
【0075】
シェル構造の形成に適した親油性薬物の誘導体の作製方法は、当業者には既知であり、例えば、リン脂質の脂肪酸鎖への治療薬の共有結合について述べられている米国特許第5,534,499号公報から知られている。
【0076】
本発明の薬物は、また、プロドラッグでもあり得る。本発明は、任意の適切な薬物の組み合わせ、例えば、本明細書において上述した薬物の任意の組み合わせも想定している。
【0077】
本明細書において用いられる「その内容物を外部に放出することができる」という表現は、少なくとも空洞部に含まれる要素の浸出及び/又はシェル構造の全体の崩壊を可能にする程度まで溶解、崩壊又は開放されるシェル構造の能力を意味する。上記浸出は、一部分又は全部である。すなわち、約10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%までの割合の空洞部の内容物が、シェル構造の外部に与えられる。シェル構造の溶解、開放又は崩壊プロセスは、永久的又は可逆的である。特に、自己組織化することができるシェル構造の要素が用いられる場合、可逆的崩壊プロセスが生じる。可逆的崩壊が生じると、ペイロードが空洞部内又はシェル自体の内側に存在しない状態の中空のシェル構造が残る。崩壊又は開放は、更に、刺激の持続時間、タイプ及び形態に依存する。例えば、一回の時間的に制限された刺激は、刺激が終了すると、シェル構造の不可逆的、永久的崩壊又は元の形及び/又は大きさに戻る又は異なる形及び/又は大きさであるが、類似した全体な構造に戻るシェル構造の可逆的崩壊若しくは開放をもたらす。好ましくは、時間的に制限された刺激は、シェル構造の時間的に制限された開放をもたらし、これは空洞部の内容物の一部の放出を可能にする。放出される内容物の部分は、刺激の持続時間に比例するか又はそれに依存する。
【0078】
本明細書において用いられる「外部刺激」という用語は、シェル構造又は組成物に由来するものではなく、本明細書において上記に定義された放出を引き起こすことができる本発明の組成物又はシェル構造の局所部における任意の状態の変化を意味する。そのような状態の変化は、温度、圧力、pH、イオン濃度、流体の移動(movement)のような1つ又はそれ以上のパラメータの変化、磁場変化、電界変化、不安定分子の存在等である。外部からであるために、上記刺激は、シェル構造の外部、組成物の外部、組成物が局在する組織若しくは器官の外部又は有機体若しくは体全体の外部から生じる。好ましくは、上記刺激は、例えば作用する場所において生理学的及び/又は生化学的状態に順応する適切な装置又はデバイスによって与えられる。特に好ましい刺激は、高密度焦点式超音波(HIFU)、高強度高周波(RF)照射又は高速スイッチングの磁場により生成される。これらの刺激は、温度変化、圧力変化又は温度圧力変化の発生をもたらす。更に好ましい代替案では、磁性粒子映像化することができるデバイスが、例えば、用いられるエネルギーの強度又は量を調節することによりそのような刺激を発生させるために用いられる。
【0079】
本明細書において用いられる「造影剤」という用語は、磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る任意の適切な造影剤を意味する。好ましくは、この用語は、個々に又はグループとして磁性粒子映像法によって検出可能な少なくとも1つの磁性粒子、より好ましくは、異なる又は同じ磁性粒子の結合又は数を有する又はより成る薬剤に関係がある。
【0080】
本明細書において用いられる「磁性粒子映像法」又は「MPI」という用語は、強磁性材料の磁化曲線の非直線性及び粒子磁化が特定の磁場強度において飽和状態になることに依存する技術を意味する。磁性造影剤の再磁化は、典型的には、磁性粒子又は磁性組成物その体積及び磁気異方性、全体としての粒子の大きさ及び磁心の大きさ(磁性粒子が1つよりも多い個々の磁心を有する場合には複数の磁心の大きさ)並びにその分布等のようなパラメータに依存する。この用語は、特に、幾つかの空間次元、例えば、ゼロ次元、一次元、二次元又は三次元における上述した磁性粒子映像法の技術又はGleich等の2005,Nature,435,1214-1217から引き出せる技術を意味する。ゼロ次元磁性粒子映像法の一例は、典型的には画像を再構築することなく再磁化信号を与える磁性粒子分光法(MPS)である。一次元磁性粒子映像法の例は、sattel等の2009, Journal of Physics D: Applied physics,42,1-5に記載されている片面デバイスを用いる取得方法である。二次元磁性粒子映像法の例は、上記一次元磁性粒子映像法を二次元に広げた際に実行可能な取得方法である。三次元磁性粒子映像法の例は、古典的MPIである。
【0081】
本明細書において用いられる「磁性粒子映像法によって検出され得る」という表現は、本明細書において上述したMPIによる造影剤の検出、好ましくは診断に適切な又は高分解能の検出を可能にする造影剤における1つ又はそれ以上のパラメータの存在を意味する。1つのそのようなパラメータは、少なくとも1つの磁性粒子としての、好ましくは、異なる又は同じ磁性粒子の結合又は数としての造影剤の固有性(identity)である。上記結合は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又は100までの異なる磁性粒子を有する。本明細書において用いられる「異なる」という用語は、大きさの違い、質量の違い、磁気モーメントの違い、組成の違い、磁気異方性の違い、再磁化時間の違い等又はこれらの違いの組み合わせを意味する。
【0082】
好ましくは、本発明に係る造影剤は、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くを有し、これは、少なくとも10−18A、より好ましくは、2×10−18、4×10−18、6×10−18若しくは8×10−18Aの又は、更により好ましくは、少なくとも10−17Aの磁気モーメントを有している。より好ましくは、上記造影剤に含まれる磁性粒子の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%(w/w)が、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有している。本発明の他の実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の5%が、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有している。より好ましくは、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%が、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有している。このパラメータは、当業者には既知の任意の適切な方法に従って測定又は検査される。好ましくは、Kotitz等の1995、J. of Magnetism and Magnetic Materials、 149、 42-46に記載されている方法が用いられる。この方法は、また、磁性材料の分野において既知の追加の検査又は分析と組み合わせられ得る。
【0083】
本発明に係る造影剤に含まれる磁性粒子の大きさは、約5nmから50nmの径の間で異なる。好ましくは、磁性粒子の大きさは、約15、20、25、30又は35nmである。15nmよりも大きい径が最も好ましい。本発明の好ましい実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くが、約5nmないし50nmの、好ましくは、15、20、25、30又は35nmの、より好ましくは、15nmよりも大きいサイズを有している。より好ましくは、上記造影剤に含まれる磁性粒子の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%(w/w)が、約5nmないし50nmの、好ましくは、15、20、25、30又は35nmの、より好ましくは、15nmよりも大きいサイズを有している。本発明の他の実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の5%が、約5nmないし50nmの、好ましくは、15、20、25、30又は35nmの、より好ましくは、15nmよりも大きいサイズを有している。より好ましくは、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%が、約5nmないし50nmの、好ましくは、15、20、25、30又は35nmの、より好ましくは、15nmよりも大きいサイズを有している。このパラメータは、当業者には既知の任意の適切な方法に従って測定又は検査される。好ましくは、Kotitz等の1995、 J. of Magnetism and Magnetic Materials、 149、 42-46に記載されている方法が用いられる。この方法は、また、磁性材料の分野において既知の追加の検査又は分析と組み合わせられ得る。他の好ましい方法は、透過電子顕微鏡法である。粒子の大きさを測定するための透過電子顕微鏡法の使用は、当業者には既知である。
【0084】
代替として、本発明に係る造影剤に含まれる磁性粒子の再磁化時間が、粒子当たり約12から0.1ミリ秒の間、好ましくは、粒子当たり約10から0.5ミリ秒の間で異なり、より好ましくは、粒子当たり10又は8ミリ秒よりも少ない。本発明の好ましい実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くが、粒子当たり約12から0.1ミリ秒の、好ましくは、粒子当たり約10から0.5ミリ秒の、より好ましくは、粒子当たり10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を有する。より好ましくは、上記造影剤に含まれる磁性粒子の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%が、粒子当たり約12から0.1ミリ秒の、好ましくは、粒子当たり約10から0.5ミリ秒の、より好ましくは、粒子当たり10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を有する。本発明の他の実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の5%が、粒子当たり約12から0.1ミリ秒の、好ましくは、粒子当たり約10から0.5ミリ秒の、より好ましくは、粒子当たり10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を有する。より好ましくは、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%が、粒子当たり約12から0.1ミリ秒の、好ましくは、粒子当たり約10から0.5ミリ秒の、より好ましくは、粒子当たり10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を有する。このパラメータは、当業者には既知の任意の適切な方法に従って測定又は検査される。好ましくは、Kotitz等の1995、J.of Magnetism and Magnetic Materials、 149、 42-46に記載されている方法が用いられる。この方法は、また、磁性材料の分野において既知の追加の検査又は分析と組み合わせられ得る。
【0085】
これらのパラメータの1つ又はそれ以上は、本発明に係る1つの磁性粒子中に存在する又は与えられる。例えば、本発明に係る磁性粒子は、本明細書において上記に定義された磁気モーメント及び/又は本明細書において上記に定義された大きさ及び/又は本明細書において上記に定義された再磁化時間を示す。本発明の具体的な実施の形態では、本発明に係る磁性粒子は、(i)少なくとも10−18Aの磁気モーメント、15nmよりも大きいサイズを有し、10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を示す。代替として、(ii)本発明に係る磁性粒子は、少なくとも10−18Aの磁気モーメント及び15nmよりも大きいサイズを有する。代替として、(iii)本発明に係る磁性粒子は、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を示す。代替として、(iv)本発明に係る磁性粒子は、15nmよりも大きいサイズを有し、10又は8ミリ秒よりも少ない再磁化時間を示す。本発明の更なる代替案では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる磁性粒子の5%(w/w)が、(i)ないし(iv)において上記に定義されたパラメータの組み合わせを示す。本発明の更なる代替案では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる磁性粒子の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%(w/w)が、(i)ないし(iv)において上記に定義されたパラメータの組み合わせを示す。本発明の更に他の代替案では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の5%が、(i)ないし(iv)において上記に定義されたパラメータの組み合わせを示す。更に他の代替の実施の形態では、本発明に係る組成物に含まれる造影剤に含まれる個々の磁性粒子数の6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70%、更により好ましくは、80、90、95%又は更には100%が、(i)ないし(iv)において上記に定義されたパラメータの組み合わせを示す。
【0086】
本発明に係る磁性粒子は、当業者には既知の任意の適切な材料によって構成されている。好ましくは、上記粒子は、磁性材料によって、より好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn、Mn等又はその化学的誘導体によって構成されている。本発明によって好ましく想定されている典型的な誘導体は、合金又は金属の酸化物、例えば、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMnの合金又は酸化物、又はその任意の組み合わせである。鉄の酸化物、例えば、Fe又はFeが特に好ましい。フェライト材料又はドープ材料によって構成された磁性材料、例えば、Co、Ni、Zn又はMn:Feもまた本発明によって想定されている。
【0087】
本発明の好ましい実施の形態では、本明細書において上述した造影剤は、本明細書において上記に定義されたシェル構造の外側又は内部と関連しているか、本明細書において上記に定義された薬物と関連しているか又は上記シェル構造の空洞部内に埋め込まれている。本明細書において用いられる「関連する」という用語は、シェル構成要素内又はシェル構成要素間における、すなわち、シェル構造の外側と内側との境界領域における又はシェル構造の内側、すなわち、シェル構造の空洞部内における造影剤とシェル構造の外側の構造との空間共有の観点での持続(perpetuation)を意味する。この関連は、例えば造影剤がシェル構造の空洞部に埋め込まれている場合、エンティティの単なる共同表現(co-representation)である。そのような状況では、造影剤と他の含まれる要素、特に本発明に係る薬物との結合又は一体性は存在しない。代替として、造影剤は、シェル構造の空洞部に埋め込まれている又は存在する場合、シェル構造の空洞部に存在する他の化合物、例えば、本明細書において上述した1つ又はそれ以上の薬物と結合、例えば、共有結合又はファンデルワールス力若しくはイオン力による結合をし得る。シェル構造の構成単位、例えば、膜構成要素等への造影剤の結合もまた本発明によって想定されている。対応する結合は、共有結合性であるか、ファンデルワールス力又はイオン力を介しており、好ましくは共有結合である。本発明の代替の実施の形態では、上記造影剤は、シェル構造の表面に又は上記シェル構造に固定され、外部に向けられた要素、例えば、タンパク質ドメイン、ペプチド、糖成分、ビオチン、アビジン等に結合する。対応する結合もまた、共有結合性であるか、ファンデルワールス力又はイオン力を介しており、好ましくは、共有結合である。
【0088】
本発明の他の好ましい実施の形態では、本明細書において定義されたシェル構造は、当業者には既知の1つ又はそれ以上の適切な両親媒性分子によって構成されている。そのような分子の例は、脂質、リン脂質、炭化水素ベースの界面活性剤、コレステロール、糖脂質、胆汁酸、サポニン、脂肪酸、合成両親媒性ブロック共重合体、卵黄リン脂質のような天然産物等である。リン脂質及び合成ブロック共重合体が特に好ましい。本発明の特に好ましい実施の形態では、本発明に係るシェル構造は、リポソーム、ミセル、ポリマソーム、ナノカプセル又はそれらの任意の混合物、より好ましくは、本明細書において上記に定義された両親媒性分子を有する任意のそのような構造を構成している。
【0089】
本明細書において用いられる「リポソーム」という用語は、典型的には脂質、特にリン脂質でできているベシクル型、すなわち、水性の環境において二重層を伴う構造のような膜を形成する分子を意味する。リポソームに関連して用いられる好ましいリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを含んでいる。リン脂質のMPPC、DPPC、DPPE−PEG2000又はリサミンローダミン(Liss Rhod)PEが特に好ましい。リポソームは、典型的には、対応する溶解可能な化合物、例えば、本明細書において上記に定義された親水性の薬物の輸送に用いられる水を含んだ親水性の空洞部を有している。本発明のリポソーム内における薬物の封入又はパッケージングは、当該技術分野における任意の従来の方法を用いて行われる。リポソームは、典型的には球形である。しかしながら、本発明において用いる場合、そのような球形のキャリアが、非球形にされ得る。例えば、リポソームのケースでは、これは、リポソームを高張緩衝液、従って、リポソームの内側における溶液と比較してより高い浸透圧の緩衝液に対する透析プロセスにさらすことにより行われる。上記透析は、リポソームの内側からバルク溶液への正味の水の拡散を引き起こす。これは、リポソームの総内部体積を減少させる。リポソームの表面積は一定のままであるので、体積の減少は、リポソームを変形させ、ディスク形、葉巻形のような非球面形状又は任意の他の非球面形状にする。
【0090】
リポソームは、当業者には既知の任意の適切な方法により、例えば、米国特許第6,726,925号公報に説明されているものと類似した調合に従って作製される。リポソームの作製の場合、好ましくは、作製されるリポソームの薬物ロードが内部水相により与えられる水/油/水(W/O/W)の二重エマルションを利用するマイクロカプセル化ベシクル(MCV)法が用いられる。この方法は、親水性薬物分子を運搬するリポソームの作製に特に適している。
【0091】
本明細書において用いられる「ミセル」という用語は、同様に、典型的には、単分子層構造にまとめられる脂質、特にリン脂質でできてきるベシクル型を意味する。ミセルは、典型的には、対応する溶解可能な化合物、例えば、本明細書において上記に定義された疎水性の薬物の輸送に用いられる疎水性の内部又は空洞部を有している。
【0092】
本明細書において用いられる「ナノカプセル」という用語は、薄い高分子膜により囲まれた油性、水性又はガス状のコア部によって構成される超顕微鏡的コロイド状薬物キャリアシステムを意味する。平易に言うと、これは、親油性薬物が溶解した油滴より成る。この油性のコア部は、球状のポリママトリクスにより囲まれている。ナノカプセルは、当該分野において既知の任意の適切な技術、例えば、モノマの界面重合又は予め形成されたポリマの界面ナノ堆積に従って生成される。ナノカプセルは、ナノベシクル又はナノ粒子の形態及び粘調度(consistency)を有している。「ナノ粒子」は、5nmよりも小さくない球体を含んでいるが、これに限定されない。ナノ粒子は、典型的には空洞部を含んでいない。
【0093】
本明細書において用いられる「ポリマソーム」という用語は、典型的には、ブロック共重合体両親媒性物質、すなわち、脂質の両親媒性と類似した両親媒性を有する合成両親媒性物質によって構成されたベシクル型を意味する。(より親水性の頭部及びより疎水性の尾部を有する)両親媒性によって、ブロック共重合体は、リポソームに似た頭−尾及び尾−頭の二層構造に自己組織化することができる。リポソームと比較して、ポリマソームは、典型的には1000から100,000、好ましくは2500から50,000、より好ましくは5000から25000に及ぶ数平均分子量を持つ非常に大きい分子量を有しており、典型的には、化学的により安定であり、漏出しにくく、生体膜に干渉する傾向が少なく、より低い臨界凝集濃度のためにあまり動的ではない。これらの性質は、より小さいオプソニン作用及びより長い循環時間をもたらす。ブロック共重合体の両親媒性に関連して用いられる「より親水性の」及び「より疎水性の」という表現は、相対的な意味で用いられる。すなわち、ブロック間の極性の差が本発明に係るポリマソームの形成に十分であれば、両者は、どちらかが親水性であり、どちらかが疎水性である。水が取り入れられる空洞部の生成を考慮して、ポリマのより親水性の末端が本質的に親水性であることが好ましい。更に、薬物キャリアとして使用することを考慮して、疎水性薬物もまたポリマソームに組み込まれることが望ましい。この目的のために、ポリマの疎水性の末端は本質的に疎水性であることが好ましい。ブロック共重合体の両親媒性は、好ましくは、より親水性の単量体単位によって構成されたブロック(A)とより疎水性の単位によって構成されたブロック(B)とを有するとともに、A(n及びmは、5から5000まで、好ましくは10ないし1000、より好ましくは10ないし500の整数である。)の一般的な構造を持つブロック共重合体の形で実現される。1つ又はそれ以上の更なる単位又はブロック、例えば、A(n及びmは上述した通りであり、pは、5から5000まで、好ましくは10ないし1000、より好ましくは10ないし500の整数である。)の一般的な構造を持つ三元重合体(terpolymer)を生じさせるために中間的な親水性を持つ単位Cが組み込まれることも考えられる。いかなるブロックもが、それ自体、共重合体である。すなわち、それぞれ必要な親水性及び疎水性の異なる単量体単位を有する。ブロック自体はホモポリマであることが好ましい。ブロックのいすれか、特に、より親水性のブロックが、電荷を運ぶ。電荷の数及び型は、当該環境のpHに依存する。いかなるブロックについての正電荷及び/又は負電荷の任意の組み合わせもが本発明により考えられている。
【0094】
薬物送達のための薬剤における適用性を考慮して、高分子ブロックは薬剤的に許容可能なポリマでできていることが好ましい。この例は、例えば、米国特許出願公開番号2005/0048110公報に開示されているようなポリマソームである。ポリマソーム様構造は、好ましくは、空洞部を囲むシェル構造を形成する性質を本質的に有するブロック三元重合体のようなブロック共重合体をベースにして生成される。
【0095】
本発明に係る造影剤の使用と組み合わせて、シェルの高分子特性は、種々の所望の単位を採用することによって有利に用いられる。従って、例えば、更なるコントラストの向上を達成するために、ポリマ自体は、強磁性の単位の取り込み、金属、金属合金若しくは金属酸化物を伴う高分子の単位の強化又はそれらの組み合わせによって常磁性にされる。この手法の一例は、鉄若しくは鉄酸化物含有脂質をリポソーム若しくはポリマソーム構造に含ませることによる強化又は鉄若しくは鉄酸化物含有共重合体の使用である。金属ポリマ(metallopolymer)に関する一般的な参考文献は、D.Wohrle, A. D. Pamogailo“Metal Complexes and Metals in Macromolecules” Wiley-VCH: Weinheim, 2003及びR. D. Archer“Inorganic and Organometallic Polymers” Wiley-VCH: New York, 2001から得られる。好ましくは、上記金属ポリマは、高磁性モーメントを持つ1つ又は種々のタイプの磁気単位を有している。磁気単位は、用いられる脂質又は高分子骨格の一部であってもよいし、又は金属を封入するリガンドにポリマ鎖を結合させるリンカーを介してポリマ鎖に結合されていてもよい。
【0096】
ポリマソームは、更に、マクロファージの取り込みを起こしにくいので、長く循環している。この性質は、対応するコーティング及び/又は表面修飾によって強化又は変更される。
【0097】
本発明の更なる実施の形態では、ポリマソームは半透性である。ここで用いられる「半透性」という用語は、選択的に透過性、部分的に透過性又は透過性が異なるシェル構造の性質を意味する。これは、ある分子又はイオンが拡散によって通過することを可能にする、完全には開放されている壁部ではないという意味で基本的には閉じられ、好ましくはほとんど閉じられた壁部(このケースでは、空洞部を囲んでいるシェル)である構造を示している。
【0098】
本発明のポリマソームは、具体的な実施の形態では、生分解性及び/又は環境感受性でもある。この挙動は、共重合体ブロックの化学的構造によって制御される又は影響を受ける。
【0099】
ポリマソームに関連して説明された同様の修飾は、リポソーム、ミセル若しくはナノカプセル又は当業者には既知の任意の他の適切なシェル構造に関しても行われ得る。
【0100】
シェル構造、特にポリマソーム及びその製造についての更なる詳細は、Antonietti等の2003、Adv.Mater.、15、No.16又はSoo等の2004、J. Pol.Sci., Part B: Polymer Phisics、Vol.42、923-938から得られる。
【0101】
構造のタイプ及び/又は構成要素又はリポソーム、ミセル、ポリマソーム及び/又はナノカプセルは、本発明の具体的な実施の形態では、例えば、シェル構造又は組成物の所望のサイズ、標的のタイプ、疎水性の程度、pH、イオン濃度等に従って適宜に混合される。
【0102】
本発明の更に好ましい実施の形態では、本発明に係るシェル構造、例えば、リポソーム、ミセル、ポリマソーム又はナノカプセルは、環境感受性材料を有している。ここで用いられる「環境感受性材料」という用語は、外部からの影響又は刺激によって影響を受けるシェル構造全体又はシェル構造に含まれる構成要素の材料を意味する。上記影響は、例えば、シェル構造の完全性の変化、特に、シェル構造の崩壊又はシェル構造の部分的破壊である。そのような外部からの影響又は刺激は、温度変化、特に加熱、圧力変化、pH、イオン濃度、流体の移動、高周波照射の使用、焦点式超音波照射の使用、磁場変化、電界変化、高周波照射、不安定分子の存在等を含んでいる。そのような刺激の典型的な例は、腫瘍細胞内の典型的には低下したpHである。特に好ましい刺激は、高密度焦点式超音波(HIFU)、高強度高周波(RF)照射又は高速スイッチングの磁場により生成される。これらの刺激は、温度変化、圧力変化又は温度圧力変化の発生をもたらす。
【0103】
更に、環境感受性は、シェル構造の生体内変性(biodegenerable nature)又は生分解性に起因するものである。従って、シェル構造の生体内変性又は生分解性を制御又は予測すると、構造の完全性が弱められ又は破壊され、これは、本明細書において上述した薬物分子の放出をもたらす。
【0104】
シェル構造に感熱性及び/又は感圧性の材料を使用することが特に好ましい。本明細書において用いられる「感熱性材料」という用語は、シェル構造の物理的又は化学的状態がその温度に依存する材料を意味する。典型的には、感熱性材料は、関心のある分子、例えば薬物をパッケージし、標準的な体温(例えば、約37℃)では損傷を受けていないが、対象物によって許容され得ない任意の他の平熱ではない体温において破壊、開放又は崩壊される。熱的に引き起こされる薬物の放出、すなわち、シェル構造の開放又は崩壊は、好ましくは、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃又は50℃の温度で起こり、好ましくは約42度で起こる。感熱性材料は、とりわけ、感熱性の微粒子及びナノ粒子、感熱性ポリマソーム、感熱性リポソーム又は感熱性ナノカプセルを含んでいる。
【0105】
感熱性リポソームは、MPPC、DPPC、DPPE−PEG2000若しくはリサミンローダミンPE又はこれらの任意の組み合わせによって構成されている。10(MPPC):85(DPPC):5(DPPE−PEG2000)の割合が特に好ましい。10(MPPC):84.9(DPPC):5(DPPE−PEG2000):0.1(リサミンローダミンPE)の割合が更に好ましい。
【0106】
感熱性材料の破壊、開放又は崩壊を促進するよう感熱性材料の温度を上げるために必要な熱は、組織の種類、器官、表面と標的領域との距離等の状況に合わせて変化する。熱は、当業者には既知の任意の生理学的に許容可能なやり方で加えられ、好ましくは、高度な局所温熱療法を引き起こすことができる集束エネルギー源を用いることにより加えられる。上記エネルギーは、例えば、マイクロ波、超音波、磁気誘導、赤外線又は光エネルギーによって与えられる。
【0107】
本明細書において用いられる「感圧性材料」という用語は、シェル構造の物理的又は化学的状態が当該材料に対する圧力に依存する材料を意味する。典型的には、感圧性材料は、関心のある分子、例えば薬物をパッケージし、通常の圧力では損傷を受けていないが、任意の他の圧力において破壊、開放又は崩壊される。圧力は、シェル構造内から又は外部からもたらされる。局所的圧力の変化は、温度のような他のパラメータの変化と組み合わせて引き起こされる。例えば、局所的温度を上昇させることにより、シェル構造の崩壊又は開放をもたらすシェル構造の圧力もまた確立される。圧力の変更は、マイクロ波、超音波又は磁気誘導によって与えられる。
【0108】
本発明の更なる実施の形態では、本明細書において上記に定義された外部刺激、例えば、温度、圧力、pH、イオン濃度、流体の移動のような1つ又はそれ以上のパラメータの変化、磁場変化、電界変化、高周波照射の使用、焦点式超音波照射の使用、不安定分子の存在等は、孔部を形成する及び/又は上記シェル構造を分解することができる。本明細書において用いられる「孔部を形成する」という用語は、シェル構造におけるホールの生成、好ましくは、空洞部から外部への薬物分子の流出を可能にするサイズのホールの生成を意味する。また、そのような孔部を介して、造影剤、例えば、本発明に係る磁性粒子の流出が可能になる。上記孔部は、一時的に存在するか又は永久的である。すなわち、孔部は、刺激が終了した後に閉じられるか、又は刺激が終了した後も開いたままである。本明細書において用いられる「シェル構造を分解する」という用語は、シェル構造の完全な崩壊を意味する。シェル構造の崩壊は、空洞部に含まれる化合物の放出及び膜領域又はシェル構造の境界部自体に含まれる化合物、例えば、薬物分子の放出をもたらす。シェル構造の分解は、好ましくは、不可逆的である。すなわち、シェル構造は、刺激が終了した後にリフォーム又は再形成されない。本発明の代替の実施の形態では、例えば、自己組織化することができる構成単位が含まれている場合、シェル構造の分解は可逆的である。シェル構造の孔部の形成と分解とは、また、組み合わせられてもよく、例えば、まず、あるタイプの刺激を介して孔部が形成され、続いて、異なるタイプの刺激が与えられることによりシェル構造が完全に崩壊される。そのような手法は、例えば、一方はシェル構造の空洞部に含まれ、他の薬物は膜又はシェル構造自体に含まれる2つの異なるタイプの薬剤を放出するために使用される。上記放出プロセスは、それらの開始に関連して分離される。すなわち、最初に、孔部の形成が引き起こされ、ある期間の後、例えば数分後に、シェル構造の分解が引き起こされる。
【0109】
本発明の好ましい実施の形態では、上記外部刺激は、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇又は圧力の低下である。本明細書において用いられる「上昇」という用語は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%又はそれ以上のデフォルトすなわち標準の温度又は圧力の増大を意味する。本明細書において用いられる「低下」という用語は、1%、2%、3%、4%、5%又はそれ以上のデフォルトすなわち標準の温度又は圧力の減少を意味する。上記「デフォルトすなわち標準の温度」という用語は、例えば、人間の場合には約37℃の典型的な体温を意味する。この典型的な体温は、当業者が知っているように他の有機体、例えば、哺乳類では異なる。上記「デフォルトすなわち標準の圧力」という用語は、典型的な内部体圧、例えば、血管若しくは動脈内の圧力又は器官若しくは組織内の圧力を意味している。
【0110】
更なる観点では、本発明は、薬物の制御送達のためのキャリアとしての(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物の使用に関連している。本明細書において用いられる「薬物の制御送達」という用語は、好ましくは磁性粒子映像法による本発明に係る組成物の位置の認定又は検出及び/又は本発明に係る組成物の動きの検出に関連している。従って、本明細書において述べられた組成物、すなわち、薬物、例えば、本明細書において上述した薬物の1つ又はそれ以上を有するシェル構造は、選択した部位への上記薬物の輸送又は送達に用いられ得る。そのような標的部位又は選択部位の輸送、選別及び/又は認定は、例えば、リガンド、抗体、抗原等のようなシェル構造に含まれる相互作用物質分子の存在により又は開始点、すなわち、制御送達の初めにおける組成物の局在により影響を及ぼされ制御され及び/又は引き起こされる。そのような開始点の例は、典型的には医薬組成物の投与に、特に造影剤を与えるために用いられる人間又は動物の体の全ての主要な入り口点である。心臓血管系、例えば、動脈、静脈又は任意の適切な血管における開始点が好ましい。動物又は人間の体の器官又は組織、例えば、肝臓、肺、脾臓、心臓、脳、筋組織等における開始点も好ましい。従って、本発明に係る組成物は、輸送され、この輸送中、開始点から開始点の付近又は開始点からある距離、例えば、数cm、10cm、50cm、75cm等若しくは1mかそれ以上の距離の標的点まで監視及び制御される。従って、本発明に係る組成物は、動物又は人間の体の全体又は一部、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%等を横断する。そのような輸送又は送達は監視、追跡され、輸送プロセスは、磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る造影剤、好ましくは、本明細書において上記に定義された磁気粒子を有する造影剤によって観察及び記録される。例えばMPSのようなゼロ次元MPI又は古典的三次元MPIによって検出可能なMPI信号は、MPIの画像化ボクセル又は測定ボリューム内において受け取られ、従って、造影剤及びその結果、該造影剤と関係のある組成物又はシェル構造の定量的決定を可能にする。従って、上記信号は、画像化ボクセル内の全体の造影剤濃度の定量的な反映は測定として用いられる。特に、本明細書において用いられる「制御」は、ある部位における局所の造影剤又は磁気粒子の絶対濃度を決定する可能性、すなわち、定義された場所における造影剤及び従って組成物及び従って薬物の濃度の定量的決定の可能性を意味している。
【0111】
信号の検出は、アプローチの必要性、使用時の装置の能力、医療的健康管理状況における時間管理、組成物の組成及び/又は大きさ及び/又は造影剤の固有性及び性質及び/又は薬物の固有性及び性質等に依存して任意の適切な時点において行われる。例えば、信号は、1ミリ秒毎から60分毎までの間、例えば、1ミリ秒、2ミリ秒、5ミリ秒、10ミリ秒、20ミリ秒、30ミリ秒、50ミリ秒、100ミリ秒、200ミリ秒、500ミリ秒、700ミリ秒、1秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、5分、7分、10分、15分、20分、30分毎等で検出される。従って、信号は、当業者には既知の適切なデバイス、ツール又はプログラムを用いて記録及び解析される。
【0112】
信号の品質を最適化する又は向上させるために、信号の品質に依存して、MPIの受信パラメータが適応される又は変化する。従って、得られるパラメータ又は情報は、更なる今後の利用のための改善された開始情報としても用いられ得る。
【0113】
本発明の更に好ましい実施の形態では、制御送達は、MPI及び追加として磁気共鳴映像法(MRI)を用いる本明細書において上記に定義された組成物の検出又は位置の特定を有している。従って、MPIのための本明細書において上記に定義された造影剤、特に磁性粒子は、典型的には全身に高い濃度で存在するバルク水分子の画像化に基づく磁気共鳴映像法にも用いられ得る。本発明の具体的な実施の形態では、MRI用の典型的に好適な造影剤、例えば、化学シフト造影剤、例えば、lipoCESTH造影剤、ガドリニウム若しくはマンガン錯体造影剤、MRI鉄酸化物粒子造影剤又は好ましくは化学シフト造影剤と組み合わせられた19トレーサが、MPIにより検出可能な造影剤とともに用いられる。これらの造影剤の1つ又はそれ以上は、本明細書において上記に定義された組成物又はシェル構造に含まれている。本明細書において上記に定義された組成物を本明細書において上記に定義された1つ又はそれ以上の薬物を有し得るMRI造影剤を有する組成物とともに使用することも本発明によって想定されている。これらの組成物は、一緒に用いられる場合、好ましくは有機体に同じ有機体における開始点を持つべきであり、更なる実施の形態では、追加として、同じ又は類似したサイズ及び/又は同じ又は類似した、すなわち、同じシェル構造構成要素、例えば、脂質、リン脂質、共重合体によって構成された組成物及び/又は同じ又は類似した質量を有し、従って、生体系内、典型的には、動物又は人間の体内において類似した又は同一の分布パターンが生成される。
【0114】
本発明の更に好ましい実施の形態では、薬物の送達制御のためのキャリアとしての本明細書において上述した空洞部を形成するシェル構造を有する組成物の使用は、更に、外部刺激の付与を介した上記シェル構造の内容物の放出を有している。従って、本発明に係る薬物を有する組成物の輸送又は分布及び/又は位置特定の調査監視(surveillance)に続いて、所定の標的領域又は選択部位に達すると又は代替として所定の時間が経過した後、上位薬物の周囲への放出が引き起こされる。代替又は追加として、放出プロセス自体が、シェル構造の空洞部内の造影剤、シェル構造自体に結合した造影剤又はシェル構造から放出された薬物に結合した造影剤の存在に基づいてMPIによって観察又は制御される。正確な位置特定及び造影剤の結合様式に依存して、選択部位内又はその付近の薬物分子の分布、造影剤自体の分布又は放出後のシェル構造の残留物の分布が検出される。
【0115】
本明細書において上述したMPIとMRIとの組み合わせが特に好ましく、MPIは、好ましくは、ある部位における局所粒子の絶対濃度を決定するために組成物からの放出が引き起こされると使用され、MRIは、それ自体好ましくは、薬物放出イベントを視覚化するために用いられる。この手法は、MPI及びMRIにより検出され得る1種類の造影剤のみ、例えば、リゾビストのような種々の大きさ又は種々の磁気モーメント若しくは再磁化時間の磁気粒子を有する造影剤を用いて、又は、本明細書において上記に定義された典型的なMPI造影剤と典型的なMRI造影剤とを組み合わせることにより行われる。薬物の放出前、放出中及び/又は放出後のMPI及び/又はMRIによる検出を介して得られるデータ及び情報は、放出自体の制御のために、例えば、放つ刺激を増やす、放つ刺激を抑制又は停止する等のためにフィードバック情報として更に用いられる。従って、得られたMPI及び特にMRIのデータがゆっくりとした又は不完全な放出を示した場合、与えられる刺激は変更される。すなわち、時間若しくは強度が増やされる又は一度若しくは数回繰り返される。代替として、上記放出プロセスは、例えば、薬剤の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%が放出された後、好ましくは孔部を塞ぐこと又はシェル構造の再構成をもたらす刺激を終了することによって中断される。そのような部分的に放出された組成物は更に輸送及び分散され、これはMPIによって制御及び監視される。その後、選択した異なる場所又は部位において放出プロセスが続行され、再び放出又はシェル構造のペイロードの全部若しくは一部、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%等がもたらされる。この部分的な放出は、一回又はそれ以上の回数、例えば1回、2回、3回、4回、5回又は10回まで繰り返される。
【0116】
外部刺激は、例えば、温度変化、特に加熱、圧力変化、pH、イオン濃度、流体の移動、高周波照射の使用、焦点式超音波照射の使用、磁場変化、電界変化、高周波照射の使用及び/又は不安定分子の存在を含む本明細書において上述した刺激である。シェル構造からの内容物の放出に関する好ましい外部刺激は、本明細書において上記に定義された温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激である。そのような刺激は、当業者には既知である生理学的に許容可能なやり方で与えられ、好ましくは、高度な局所温熱療法を引き起こすことができる集束エネルギー源を用いることにより与えられる。上記圧力の刺激は、当業者に既知の任意の適切な技術によって、例えば、マイクロ波、超音波又は磁気誘導によって与えられる。特に好ましい刺激は、高密度焦点式超音波(HIFU)、高強度高周波(RF)の照射又は高速スイッチングの磁場により生成される。これらの刺激は、温度変化、圧力変化又は温度圧力変化の発生をもたらす。
【0117】
更なる観点では、本発明は、(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物のMPIによる検出又は位置の特定を有する薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法であって、上記組成物は、外部刺激が与えられる前、与えられている間及び/又は与えられた後に、上記シェル構造の上記内容物を放出する当該方法に関連している。本明細書において用いられる「薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集」という表現は、好ましくは磁性粒子映像法を用いた本発明に係る組成物の場所及び所在及び/又は本発明に係る組成物の動きに関する情報の蓄積に関係がある。動物又は人間の体の全体又は一部、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%等を横断する本発明に係る組成物は、監視、追跡され、輸送プロセスの状況及び速さは、磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る造影剤、好ましくは、本明細書において上記に定義された磁気粒子を有する造影剤によって観察及び記録される。例えばMPSのようなゼロ次元MPI又は古典的三次元MPIによって検出可能なMPI信号は、MPIの画像化ボクセル又は測定ボリューム内において受け取られ、従って、造影剤及びその結果、該造影剤と関係のある組成物又はシェル構造の定量的決定を可能にする。従って、上記信号は、画像化ボクセル内の全体の造影剤濃度の定量的な反映又は測定として、すなわち、組成物の定義又は粒子の位置の特定に関するデータ入力として用いられる。特に、本明細書において用いられる「制御」は、ある部位における局所の造影剤又は磁気粒子の絶対濃度を決定する可能性、すなわち、好ましくは生態系内、例えば動物又は人間の体内の定義された場所における造影剤及び従って組成物及び従って薬物の濃度の定量的決定の可能性を意味している。本明細書において用いられる「薬物送達プロセス」は、以下の連続するステップ又は行為、すなわち、本発明に係る組成物の生態系、例えば動物又は人間の体への導入、上記生体内における組成物の分散又は輸送及び生態系又は体の所定の領域、区域、器官、組織、細胞層、構造等への到着を有する連続するステップ又は行為のうちの少なくとも1つのステップを意味する。上記組成物の位置の特定及び上記組成物中の造影剤の濃度は、特に、本明細書において上述したように外部刺激が与えられる前、すなわち、選択した部位への到着までに及び/又は外部刺激が与えられている間及び/又は外部刺激が与えられた後に監視される。これらのステップのそれぞれは、MPIによって監視、記録、解析及び操作される。従って、得られた情報は、薬物放出の決定のため又は診断の目的のために用いられ得る。
【0118】
本発明の具体的な実施の形態では、生態系内の全組成物の全て又はある割合、例えば、20%、40%、60%、80%の位置の特定及び分散についてのデータが収集される。従って、得られた情報は、本明細書において上述したような一般的な開始点から始まる組成物の動き及び分布の実態を与える。代替として、上記情報は、組成物又は関連する薬物が全身に広がったかどうかを調べるため又は開始材料、すなわち開始点における組成物の何パーセントが選択した行き先、例えば、特定の器官又は組織に達したかを検出するために用いられる。
【0119】
本発明の特に好ましい実施の形態では、上記薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法は、MPI及びMRIによる本明細書において上記に定義された組成物の検出又は位置の特定を含んでいる。MPIとMRIとを組み合わせて使用すること及び対応する適用例及び利点は、本明細書において上記に述べられている。
【0120】
本発明の更なる実施の形態では、上記薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法は、追加のステップとして、外部刺激の付与を介した上記シェル構造の上記内容物の放出を有している。内容物、特に本明細書において上記に定義された薬物の放出は、本明細書において上述した組成物の検出及び位置の特定の間に得られるデータと連携している。すなわち、放出は標的部位又は選択部位に達した時に引き起こされる。また、放出プロセス自体の監視及び上記の本発明の使用に関連して説明された組成物、すなわちシェル構造の所在の監視が行われる。用いられる刺激は、好ましくは、本明細書において上述した温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激である。
【0121】
更なる実施の形態では、本発明は、外部刺激、好ましくは、選択した行き先又は位置における温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激の付与及び外部刺激の付与を介した上記シェル構造の内容物の放出の前、間及び/又は後に、(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は(ii)本明細書において上記に定義された組成物のMPIによる検出又は位置の特定を含む制御された薬物送達プロセスを有する、好ましくは動物又は人間の体の病的状態又は罹患した器官若しくは組織の治療及び/又は診断のための方法に関係がある。この方法は、適切な部位における本明細書において上述した組成物の例えば血管への導入と、該組成物の動きの監視と、第2の部位における薬物ペイロードの放出、好ましくは放出の行為の監視を伴う放出とを有している。上記方法は、代替として、組成物の動きを監視するステップ及び第2の部位において薬物ペイロードを放出するステップのみを有する。上記方法は、代替として、適切な部位において本明細書において上述した組成物を例えば血管に導入するステップ及び第2の部位において薬物ペイロードを放出するステップのみを有する。
【0122】
他の観点では、本発明は、病的状態を治療するための組成物であって、空洞部を形成するシェル構造を有し、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は本明細書において上記に定義された当該組成物に関連している。
【0123】
更なる実施の形態では、本発明は、病的状態を診断するための組成物であって、空洞部を形成するシェル構造を有し、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は本明細書において上記に定義された当該組成物に関連している。
【0124】
更に他の実施の形態では、本発明は、空洞部を形成するシェル構造を有し、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる病的状態の治療のための医薬組成物又は本明細書において上記に定義された病的状態の治療のための医薬組成物の作製方法に関連している。
【0125】
更に他の実施の形態では、本発明は、空洞部を形成するシェル構造を有し、上記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、上記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、上記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる病的状態の診断のための医薬組成物又は本明細書において上記に定義された病的状態の診断のための医薬組成物の作製方法に関連している。
【0126】
本明細書において用いられる「病的状態」という用語は、任意のタイプの病気、疾患、組織又は器官の機能不全等を意味し、これは本明細書において上記に定義された組成物によって標的を設定可能である。例えば、病的状態は、罹患した領域若しくは区域又は機能不全の区域が心臓血管系とつながりがある場合、特に、心臓血管系が本発明に係る組成物又はシェル構造を通す場合に標的を設定可能である。典型的な例は、上記組成物が血管に注入された場合に到達し得る全ての病気である。代替として、病的状態は、罹患した領域若しくは区域又は機能不全の区域がリンパ系とつながりがある場合、特に、心臓血管系が本発明に係る組成物又はシェル構造を通す場合に標的を設定可能である。更なる代替案では、病的状態は、罹患した領域若しくは区域又は機能不全の区域が脳脊髄液系とつながりがある場合、特に、脳脊髄液系が本発明に係る組成物又はシェル構造を通す場合に標的を設定可能である。
【0127】
本発明に係る組成物を用いて治療され得る病的状態は、免疫系の欠損又は疾患、例えば、免疫細胞の増殖、分化又は動員(走化性)を含んでいるが、これらに限定されない。また、造血細胞の欠損又は疾患も含まれる。免疫不全症候群の例は、血液中のタンパク質の疾患(例えば、無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症)、毛細血管拡張性運動失調症、一般的な種々の免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球粘着不全症、リンパ球減少症、貪食殺菌機能障害、重度複合免疫不全症(SCID)、ウィスコットアルドリッチ障害、貧血症、血小板減少症又はヘモグロビン尿症を含んでいるが、これらに限定されない。
【0128】
更に、血液凝固障害(例えば、無フィブリノゲン血症、因子欠乏症)又は血小板異常(例えば、血小板減少症)、心臓発作(梗塞)、脳卒中又は梗塞前の状態が含まれる。
【0129】
更に、動脈動脈瘻、動静脈瘻、脳動静脈奇形、先天性心臓欠陥、肺動脈閉鎖症及びシミター症候群のような心臓血管の病気、障害又は疾患及び/又は心臓血管の異常が含まれる。先天性心臓欠陥は、大動脈縮窄、三心房心、冠血管異常、十字交差心臓、右胸心、動脈管開存、エブステイン奇形、アイゼンメンゲル症候群、左心低形成症候群、左胸心、ファロー四徴症、大血管転位症、両大血管右室起始症、三尖弁閉鎖、総動脈幹開存及び大動脈肺動脈中隔欠損、心内膜床欠損症、リュタンバシェ症候群、ファロー三徴、心室中隔欠損症のような心中隔欠損を含んでいる。心臓血管の病気、障害及び/又は疾患は、また、不整脈、カルチノイド心疾患、高心拍出量、低心拍出量、心タンポナーデ、(細菌性心内膜炎を含む)心内膜炎、心室瘤、心停止、鬱血性心不全、鬱血性心筋症、発作性呼吸困難、心臓性浮腫、心肥大、鬱血性心筋症、左室肥大、右室肥大、梗塞後心破裂、心室中隔破裂、心臓弁膜症、心筋疾患、心筋虚血、心嚢液貯留、(収縮性心膜炎及び結核性心膜炎を含む)心膜炎、心膜気腫、心膜切開後症候群、肺性心、リウマチ性心疾患、心室機能不全、充血、心疾患系妊娠合併症、シミター症候群、心血管梅毒及び心血管結核のような心疾患も含んでいる。不整脈は、洞不整脈、心房細動、心房粗動、徐脈、期外収縮、アダムス・ストークス症候群、脚ブロック、洞房ブロック、QT延長症候群、副収縮、ラウン・ギャノン・レバイン症候群、マハイム型早期興奮症候群、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、洞不全症候群、頻脈及び心室細動を含んでいる。頻脈は、発作性頻脈、上室性頻脈、頻拍性心室調律、房室結節リエントリ性頻脈、異所性心房頻脈、異所性接合部頻脈、洞房結節リエントリ性頻脈、洞性頻脈、多形性心室頻脈(Torsades de Pointes)及び心室頻脈を含んでいる。心臓弁膜症は、大動脈弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、心雑音、大動脈弁逸脱、僧帽弁逸脱、三尖弁逸脱、僧帽弁閉鎖不全、僧帽弁狭窄、肺動脈閉鎖、肺動脈弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄、三尖弁閉鎖、三尖弁閉鎖不全及び三尖弁狭窄を含んでいる。心筋疾患は、アルコール性心筋症、鬱血性心筋症、肥大型心筋症、大動脈弁下狭窄、肺動脈弁下狭窄、拘束型心筋症、シャーガス心筋症、心内膜線維弾性症、心内膜心筋線維症、カーンズ症候群、心筋再灌流傷害及び心筋炎を含んでいる。心筋虚血は、狭心症、冠動脈瘤、冠動脈硬化、冠動脈血栓、冠動脈攣縮、心筋梗塞及び心筋気絶のような冠疾患を含んでいる。心臓血管疾患は、動脈瘤、血管形成異常、血管腫症、細菌性血管腫症、ヒッペル・リンダウ病、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、血管神経性浮腫、大動脈疾患、高安動脈炎、ルリッシュ症候群、動脈閉塞性疾患、動脈炎、動脈内膜炎、結核性多発動脈炎、脳血管性の病気、障害及び/又は疾患、糖尿病性血管障害、糖尿病性網膜症、塞栓症、血栓症、肢端紅痛症、痔核、肝静脈閉塞性疾患、高血圧、低血圧、虚血、抹消血管疾患、静脈炎、肺静脈閉塞性疾患、レイノー病、クレスト症候群、網膜静脈閉塞症、シミター症候群、上大静脈症候群、末梢血管拡張、末梢血管拡張性運動失調、遺伝性出血性末梢血管拡張、精索静脈瘤、静脈瘤、静脈瘤性潰瘍、脈管炎及び静脈不全のような血管疾患を含んでいる。動脈瘤は、解離性大動脈瘤、偽性動脈瘤、感染性動脈瘤、破裂動脈瘤、大動脈瘤、脳動脈瘤、冠動脈瘤、心室瘤及び腸骨動脈瘤を含んでいる。動脈閉塞性疾患は、動脈硬化症、間欠性跛行、頸動脈狭窄、線維筋性形成異常、腸間膜脈管閉塞、もやもや病、腎動脈閉塞、網膜動脈閉塞及び閉塞性血栓血管炎を含んでいる。脳血管性の病気、障害及び/又は疾患は、頸動脈疾患、脳アミロイド血管症、脳動脈瘤、脳無酸素症、脳動脈硬化、脳動静脈奇形、大脳動脈疾患、脳卒中及び脳血栓、頸動脈血栓、静脈洞血栓、ワレンベルグ症候群、脳溢血、硬膜外血腫、硬膜下血腫、くも膜下出血、脳梗塞、(一過性を含む)脳虚血、鎖骨下動脈盗血症候群、脳室周囲白質軟化症、血管性頭痛、群発頭痛、片頭痛及び椎骨脳底動脈循環不全を含んでいる。塞栓症は、空気塞栓、羊水塞栓、コレステロール塞栓、青趾症候群、脂肪塞栓症、肺塞栓症及び血栓塞栓症を含んでいる。血栓症は、冠動脈血栓症、肝静脈血栓症、網膜静脈閉塞、頸動脈血栓症、静脈洞血栓症、ワレンベルグ症候群及び静脈血栓症を含んでいる。虚血は、脳虚血、虚血性大腸炎、コンパートメント症候群、前コンパートメント症候群、心筋虚血、再灌流傷害及び末梢肢虚血を含んでいる。血管炎は、大動脈炎、動脈炎、ベーチェット症候群、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚粘膜リンパ節症候群、閉塞性血栓血管炎、過敏性血管炎、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病、アレルギー性皮膚血管炎及びウェゲナー肉芽腫症を含んでいる。
【0130】
更に、アジソン病、溶血性貧血、抗リン脂質症候群、関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎、眼炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター病、スティフマン症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性肺炎症、ギラン・バレー症候群、インスリン依存性糖尿病又は自己免疫性炎症性眼疾患のような自己免疫障害が含まれる。追加として、喘息(特に、アレルギー喘息)又は他の呼吸器官の問題のようなアレルギー反応及び状態と、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼球、頭部及び頸部、神経(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部並びに尿生殖路に位置する新生物、がん又は腫瘍のような新生物、がん又は腫瘍を含む過剰増殖性障害とが含まれる。治療され得る過剰増殖性障害の更なる例は、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性疾患、異常タンパク血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球増殖症及び先に列挙した器官系に位置する任意の他の過剰増殖性疾患である。
【0131】
更に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、トゥレット症候群、脳炎、脱髄性疾患、末梢神経障害、外傷、先天性形成異常、脊髄損傷、虚血、動脈瘤、出血、統合失調症、躁病、認知症、偏執症、強迫障害、鬱病、パニック障害、学習障害、ALS、精神病、摂食障害、睡眠パターン障害、平衡障害又は知覚障害を含む変容行動を含むがこれらに限定されない神経変性疾患の状態、行動障害又は炎症性疾患が含まれる。
【0132】
追加として、感染症によって引き起こされる病的状態が含まれる。ウイルスが、疾患又は症状引き起こす感染因子の一例である。ウイルスの例は、以下のDNA及びRNAウイルス系、すなわち、アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス科、ビマウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、シルコウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科(肝炎)、(サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、帯状疱疹のような)ヘルペスウイルス、モノネガウイルス(例えば、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス属、ラブドウイルス科)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザ)、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、(天然痘又はワクシニアのような)ポックスウイルス科、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、)及びトガウイルス科を含むがこれらに限定されない。これらの科に含まれるウイルスは、関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(例えば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、肝炎(A、B、C、E、慢性活動性、デルタ)、髄膜炎、日和見感染症(例えば、エイズ)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、流行性鼻下腺炎、パラインフルエンザ、狂犬病、風邪、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚疾患(例えば、カポジ、疣贅)及びウイルス血症を含むがこれらに限定されない種々の疾患又は症状を引き起こす。
【0133】
同様に、グラム陰性及びグラム陽性のバクテリア科及び真菌のような細菌又は真菌因子によって引き起こされる感染症:放線菌目(例えば、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、ノカルジア)、アスペルギルス症、バシラス科(例えば、炭疽菌、クロストリジウム属)、バクテロイデス科、ブラストミセス症、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ症、カンジダ症、カンピロバクター属、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、皮膚真菌症、腸内細菌科(クレブシエラ属、サルモネラ属、セラチア属、エルシニア属)、エリジペロスリクス属、ヘリコバクター属、レジオネラ症、レプトスピラ症、リステリア菌、マイコプラズマ目、ナイセリア科(例えば、アシネトバクター属、淋病、髄膜炎菌性)、バスツレラ科感染症(例えば、アクチノバチルス、ヘモフィルス、パスツレラ)、ジュードモナス菌、リケッチア科、クラミジア科、梅毒及びブドウ球菌が含まれる。これらの細菌又は真菌系は、以下の疾患又は症状、すなわち、菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染症(例えば、エイズ関連感染症)、爪囲炎、プロステーシス関連感染症、ライター病、百日咳又は蓄膿のような気道感染症、敗血症、ライム病、猫引っかき病、赤痢、パラチフス、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、クラミジア、梅毒、ジフテリア、らい病、ヨーネ病、結核、ループス、ボツリヌス中毒症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染症、皮膚疾患(例えば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒血症、尿路感染症又は創傷感染を含むがこれらに限定されない疾患又は症状引き起こす。
【0134】
更に、大腸菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、大便連鎖球菌、肺炎桿菌、緑膿菌、エンテロコッカス・フェシウム、肺炎連鎖球菌、スタフィロコッカス・キャピティス、クレブシエラ・オキシトカ、ストレプトコッカス・アガラクチア、ミラビリス変形菌、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、アシネトバクターバウマンニ、腸球菌属、プロテウス・ブルガリス、セラチアマルセッセンス、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・ホミニス、ストレプトコッカス・アンギノサス、ストレプトコッカス・ミティス、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・レンタス、G群β溶血連鎖球菌、F群β溶血連鎖球菌、ストレプトコッカス・ゴルドニ、D群連鎖球菌、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・パラサンギス、ストレプトコッカス・サリバリウス、シトロバクター・フロインディ、リステリア・モノサイトゲネス、ミクロコッカス・ルテウス、アシネトバクター・ジュニィ、バチルス・セレウス、バクテロイデス・カッカエ、バクテロイデス・ユニフォルミス、バクテロイデス・ブルガタス、ウェルシュ菌、偽ジフテリア菌、コリネバクテリウム属、コリネバクテリウム・ウレアリティクム、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ミクロコッカス属、パスツレラ・ムルトシラ、プロテウニバクテリウム・アクネス、ラルストニア・ピッケティ、サルモネラ系パラチフスB菌又はエルシニア・エンテロコリチカによって引き起こされる感染症又は疾患が含まれる。
【0135】
加えて、治療されるアメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外寄生生物、ジアルジア症、蠕虫症、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症及びトリコモナスを含むがこれらに限定されない寄生虫疾患によって引き起こされる感染症、疾患又は症状が含まれる。これらの寄生生物は、疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(例えば、赤痢、ジアルジア症)、肝疾患、肺疾患、日和見感染症(例えば、エイズ関連日和見感染症)、マラリア、妊娠合併症及びトキソプラズマ症を含むがこれらに限定されない種々の疾患又は症状を引き起こす。
【0136】
本明細書において上述した病的状態の治療は、他の治療法、例えば、口、静脈、鼻等を介して既知の薬剤又は医薬組成品、例えば、同じ病気又は関連した病的状態の治療に効果的であると知られた薬剤を適用する古典的治療法と組み合わせられ得る。例えば、古典的治療法は病気の側面を全身的に治療するために用いられ、本発明の係る組成物は、同時に又は同じ治療計画において病的状態を局所的に治療するために用いられる。
【0137】
本発明の特に好ましい実施の形態では、上記組成物、例えば、本明細書において定義された医薬若しくは診断用組成物又はその中に含まれる薬物は、上記組成物又はシェル構造から外部への前記薬物の放出をもたらす刺激が与えられることにより投与されることとなる。上記刺激は、好ましくは外部刺激であり、より好ましくは温度の上昇若しくは低下又は圧力の上昇若しくは低下である。そのような刺激は、任意の適切な技術又は当業者には既知の装置によって、例えば、局所熱システム、電界、磁場、焦点式超音波の照射及び/又は高周波の照射を介して伝達される。特に好ましい刺激は、高密度焦点式超音波(HIFU)、高強度高周波(RF)照射又は高速スイッチングの磁場により生成される。これらの刺激は、温度変化、圧力変化又は温度圧力変化の発生をもたらす。
【0138】
例えば局所熱システムを介した熱刺激の使用が特に好ましい。更なる好ましい実施の形態では、熱刺激を与えることもまた、局所温熱療法及びその結果として生じる治療効果に基づく追加の治療手段と組み合わせられる。
【0139】
更に好ましい実施の形態では、本発明に係る組成物、例えば、本明細書において定義された医薬又は診断用組成物又はその中に含まれる薬物は、本明細書において上述したMPI又はMPIとMRIとの組み合わせにより検出可能である。従って、治療前、治療中及び/又は治療後の上記組成物の局在が、決定又は検出される。更に、組成物又はシェル構造の残留物の所在が、投与ステップの後に検出される。そのような検出は、排泄の速さ、生体力学プロセスの評価、対応する毒性パラメータの評価等に有用である。更に、上記投与ステップ、すなわち、薬物の放出は、例えば放出の程度に依存するフィードバックループを介して放出中制御され、影響を及ぼされる又は操作される。このプロセス自体は、本明細書において上述したように制御される。
【0140】
本発明の更に具体的な実施の形態では、本発明の組成物は、アブレーションプロセス中、例えば、特定の組織、好ましくはがん性組織又は器官の部分のアブレーションプロセス中に用いられる。そのようなアブレーションは、当業者には既知の任意の適切な手段により、例えば、高密度焦点式超音波(HIFU)及び/又はMRI技術によって行われる。従って、本発明の組成物は、焼灼されるべき領域内において標的とされる及び/又は位置特定される。その後、上記組成物は、焼灼された組織において捕捉される。上記組成物中に存在する造影剤は、組成物の内側に保たれるか、又は例えば刺激又はアブレーションプロセス自体を介して放出される。造影剤の捕捉のため、MPIが焼灼された領域を区別するために、すなわち、焼灼された領域を正式に定義するために用いられる。この情報は、その後の診断又は治療ステップ、例えば、アブレーションプロセスの繰り返しに用いられる。更に、上記組成物は、焼灼の目的に従って治療効果を与える薬物を有しており、例えば、化学療法剤又は抗がん剤が局所化され、その後、放出される。
【0141】
以下の実施例及び図面は、例示の目的のために与えられる。従って、実施例及び図面は限定するように解釈されるべきではないことが理解される。当業者は、明らかに本明細書で挙げられた原理の更なる変更を目論むことができるであろう。
【実施例1】
【0142】
実施例1−DNAをロードした感熱性リポソームの作製
典型的なDNAをロードした感熱性リポソームを作製するために、6.3mg(8.5μmol)のDPPC、0.5mg(1.0μmol)のMPPC、1.4mg(0.5μmol)のDPPE−PEG2000及びCHCl中において1mg/mLのLiss Rhod PE溶液25μLをCHCl中に溶解し、10mMの濃度の脂質を有する1.0mLのCHCl溶液を得た。DNA(ニシン精液、シグマアルドリッチ社)は、HEPESバッファ(135mMNaCl、20mMHEPES、pH7.40)、リゾビスト原液又は両者の混合物中に溶解した。そのようにして得た水溶液0.3mLをCHCl溶液と混合し、0.3:1の水/油(W/O)比を得た。以下の表1に説明されているように水相の構成を変化させた。

【0143】
得られた上記混合物は、20kHzの周波数、108Wの振幅、20℃の温度で5分間QEX600超音波処理デバイスを用いて超音波処理した。得られたW/Oエマルションは、25mLの三角フラスコ中において8mLのHEPESバッファ溶液に流し込んだ。粗リポソーム溶液をもたらすCHClのゆっくりとした蒸発を可能にするために、この混合物を室温で一晩攪拌し、わずかな封入されていないリゾビスト粒子を得た。これらは、次のステップにおいてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって除去した。
【0144】
GPC(カラムの寸法は、長さ11cm、径3cm、用いた最初のセファクリルS−1000の懸濁液90mL)の準備をするために、セファクリルS−1000(GEヘルスケア社)により通常のガラスカラムをロードした。カラムは、HEPESバッファ(135mMNaCl、20mMHEPES、pH7.40)の1つのカラム体積で2回洗浄した。5mLの粗リポソーム溶液をゲルベッドに注意深くロードした。このゲルベッドの上部は1mLのバッファで2回洗浄し、カラムはバッファで満たした。それぞれ2mLの部分を採取した。分離は、図3に示されているように動的光散乱(DLS)及び紫外−可視分光法により制御された。DLSはリポソームの検出に特に好適であり、DNAが260nmにおいて特徴的な吸収ピークを有しているので、紫外−可視分光法はDNAの存在を評価するのに非常に適している。遊離DNAからのリポソームの良好な分離が、アガロースゲル電気泳動法により確認された。1.5gのアガロースを50mLのバッファ(0.09Mトリスホウ酸塩/0.09Mホウ酸/0.001MEDTA)に溶解することにより、3%アガロースゲルを調製した。溶液が透明になるまで懸濁液を電子レンジで煮沸した。得られた溶液を約50℃まで冷却した。0.5μg/mLのEB溶液を得るために、この溶液にエチジウムブロマイド(EB)を加えた。そのために、50mLのアガロース溶液に2.5μLのEB(10mg/mL)を加えた。気泡が形成されないように混合物を注意深く振った。ゲルをカセットにロードし、15分間セットした。サンプルをロードした後、50Vで40分間電気泳動を行った。ゲルのUV吸収は、UV濃度測定により視覚化された(図4参照)。
【0145】
これらの条件下では、リポソームはゲル上で動かず、遊離したDNAは遊離したニシン精液のバッファ溶液とともにロードした参照線Aにおいて観察されたように動いた。封入されていない遊離したDNAは、UV解析によって既に決定されたように約36から48mLの溶出体積について観察されたが、リポソームを含有しているより初期の部分ではDNAは観察されなかった。おそらく、リポソームに封入されたDNAは、EBによって十分に染色されず、帯電した極性分子であり、それ自体はDNA分子に達するように脂質二重層を横切ってリポソーム中に拡散することができなかった。
【実施例2】
【0146】
実施例2−DNAをロードした感熱性リポソームの代替の作製
上記のようにアガロースゲル上のリポソームの存在を視覚化するために脂質組成物に(DPPCの0.1%を置換した0.1%)Liss Rhod PE蛍光脂質を加えたことが異なるが、実施例1と同様にしてリポソームを作製した。選択された初期脂質濃度は10mM(CHCl)であり、内部の水部分を形成するために用いられる30mg/mLのDNAを含有するDNA溶液を用いた。得られた精製リポソーム溶液は100kDaアミコン遠心分離ユニットを用いて10倍濃縮された。
【0147】
温度誘導性のDNAの送達は、上記溶液を30分間50℃に加熱することによりテストした。封入されたDNAの放出の効率を調べるため、加熱前及び加熱後に溶液試料のゲル電気泳動を行った(図5参照)。加熱前(ラインA)は、ゲルの起源において1つの主な点のみが残っており、弱いバックグランド信号が各ラインにわたって検出された。加熱後(ラインB)は、放出されたDNAに対応する強い追加の点がはっきりと検出された。両方の試料において、ゲルネットワーク中で動かないリポソームの存在が脂質二重層の蛍光標識によって確認された。30分間の加熱後、DNAは明らかに放出された。
【実施例3】
【0148】
実施例3−薬物放出の確認
ロードする水相中においてDNAとリゾビストとの混合物を用いて実施例1において説明したようなDNA/リゾビスト誘導性のリポソームを作製した。選択された初期脂質濃度は10mM(CHCl)であり、使用した内部の水部分は、15mg/mLのDNA及びリゾビスト(0.25mMFe)を含んでいた(表1参照)。精製後、試料は100kDaアミコン遠心分離ユニットを用いて10倍濃縮された。
【0149】
リポソーム脂質二重層の融解相転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。試料は、15℃/分の加熱及び冷却速度で20℃と60℃との間における加熱/冷却サイクルに曝され、関連する熱流量を監視した。得られたサーモグラム(図6参照)から、融解相転移温度は2つの連続する熱サイクルにおいて40.8℃であると決定され、これは、この脂質組成物に関して予想される41℃の融解相転移と十分に一致していた。
【0150】
DNA−リゾビストをロードしたリポソームを有する同じ溶液の他の試料は、30分間50℃で加熱した。試料は、加熱開始後、0から30分に間の種々の時点で採取し、ゲル電気泳動に曝した。図7に示されているように、封入されたDNAの大部分は、30秒後に既に放出された。DNAの放出は、本質的には1分以内に完了した。DNAの放出は、更に、31PNMR分光法を用いて証明された(図8)。55℃で30分間加熱した後、DNA−リゾビストをロードしたリポソームの緩衝液のスペクトルを得た。加熱前、リポソーム内のDNAのリン原子の広範囲のラインの広がりのために信号は検出されなかった。感熱性リポソームの融解転移温度よりも高い温度に加熱した後のみDNAのリンの磁気共鳴が明らかになり、従って、感熱性リポソームの融解相転移温度よりも高い温度でのDNAの放出が証明された。
【0151】
DNA−リゾビストをロードしたリポソームからのDNAの温度誘導性の放出を確認した後、第2のステップでは、リゾビストの温度誘導性の放出を調べた。この目的に向かって、各溶液の縦緩和時間(T)が温度の関数としてNMR分光法によってモニタリングされた。0.5K/分の加熱速度でRTから55℃まで加熱するステップと、その後、RTまで冷却するステップとを有する2つの連続する加熱サイクルが実行された(図9)。第1の加熱の際、脂質二重層の融解相転移温度の付近で緩和速度R(R=1/T)の著しい増加が測定され、封入されたリゾビスト粒子の放出が示された。55℃から25℃までの冷却の際は、Rは同じく融解相転移温度の付近で始めの初期値よりも著しく高い最終値に達した(1.5s−1対0.8s−1)。この結果は、リゾビストの放出は効果的であったが、リゾビスト粒子の中にはリポソームの内部に残っているものもあったことを示している。更なる加熱サイクルが行われ、融解相転移温度の付近における残りのRの変化は、リポソーム内に封入された幾らかの残存するリゾビスト粒子の存在による可能性が最も高いことを示した。内在するリポソーム水は、融解相転移温度よりも高い温度においてのみバルク水とやりとりする状態にあり、これは、第2の加熱サイクルにおいてさえものRの残りの増加を説明するのに好適である。
【0152】
図10にまとめられているように、その融解相転移温度よりも高い温度におけるリポソームキャリアからの鉄酸化物粒子の放出を、クライオTEM解析において単独で確認した。加熱前、リゾビストを高くロードした感熱性リポソームが存在し、遊離したリゾビスト粒子は観察されなかった(A)。50℃で1分間加熱した後(B)、封入されたリゾビスト粒子の一部が放出された。その結果、封入されていないリゾビストと、満たされたリポソーム及び中身が空のリポソームの両方とが観察された。同じ温度での加熱の30分後(C)、中身が空のリポソーム及び遊離したリゾビストのみが観察され、これは全てのリゾビスト粒子が放出されたことを示唆している。この結果は、上記ゲルの解析及びNMRの経験に基づいて得られる結論を裏付けている。
【0153】
MRIとは対照的に、各磁性粒子分光法(MPS、0次元MPI)の実験において
信号強度の変化は観察されなかった。リポソーム内のリゾビストの閉じ込め及び同じリポソーム内のDNAとリゾビストとの共同の閉じ込めは、鉄の総量(従って、全粒子濃度)に標準化されると、信号強度の変化をもたらさない。その結果、感熱性リポソームから封入されたリゾビストの放出は、MPS信号の変化を生じさせなかった。
【0154】
詳細には、DNA及びリゾビストナノ粒子がロードされたリポソームの緩衝液を50℃で加熱した。試料は、種々の時点で採取し、氷浴中でRTまで素早く冷却した。DNA/リゾビストをロードした感熱性リポソームの測定されたMPS信号は、加熱した際、著しい変化を示さず、従って、感熱性リポソームからの封入されたリゾビストの放出は、図11に明らかに示されているようにMPS信号に影響を及ぼさなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、前記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、前記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができ、前記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出され得る磁性粒子を有し、前記造影剤に含まれる前記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くは、少なくとも10−18Aの磁気モーメントを有し、前記磁性粒子は、好ましくは、Fe、Co、Ni、Zn若しくはMn、これらの合金又はこれらのいずれかの酸化物によって構成され、より好ましくは、Fe又はFeによって構成された、当該組成物。
【請求項2】
前記磁性粒子の少なくとも5%(w/w)よりも多くが、粒子当たり10ミリ秒よりも少ない再磁化時間を持つ、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記造影剤が、前記シェル構造の外側若しくは内部と関連している、前記薬物と関連している又は前記シェル構造の前記空洞部内に埋め込まれた、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記シェル構造が、リポソーム、ポリマソーム、ナノカプセル又はそれらの任意の混合物を構成し、好ましくは、感熱性又は感圧性材料を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記外部刺激が、孔部を形成する及び/又は前記シェル構造を分解することができる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記外部刺激が、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
薬物の制御送達のためのキャリアとしての
(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、前記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、前記造影剤は磁性粒子映像法(MPI)によって検出されることが可能であり、前記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物、又は
(ii)請求項1ないし6のいずれか一項に記載の組成物
の使用。
【請求項8】
前記制御送達が、MPI及びオプションで磁気共鳴映像法(MRI)を用いる検出又は位置の特定を有する、請求項7記載の使用。
【請求項9】
制御される放出は、外部刺激の付与を介した、好ましくは、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激を介した前記シェル構造の内容物の放出を更に有する、請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記シェル構造の内容物を放出する外部刺激が与えられる前、与えられている間及び/又は与えられた後に、
(i)空洞部を形成するシェル構造を有する組成物であって、前記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、前記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、前記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物、又は
(ii)請求項1ないし6のいずれか一項に記載の組成物
のMPIによる検出又は位置の特定を有する薬物送達プロセスの制御のためのデータ収集方法。
【請求項11】
前記検出又は位置の特定は、更にMRIを使用する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
追加のステップとして、外部刺激の付与、好ましくは、温度の上昇、温度の低下、圧力の上昇及び/又は圧力の低下の刺激を介した前記シェル構造の内容物の放出を有する、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
病的状態を治療するための組成物であって、空洞部を形成するシェル構造を有し、前記シェル構造は薬物を有し、当該組成物は少なくとも1つの造影剤と関連し、前記造影剤はMPIによって検出されることが可能であり、前記シェル構造は、外部刺激が与えられるとその内容物を外部に放出することができる当該組成物又は請求項1ないし6のいずれか一項に記載の当該組成物。
【請求項14】
前記薬物は、刺激が与えられることにより投与されることとなり、前記刺激は、局所熱システム、電界、磁場、焦点式超音波の照射及び/又は高周波の照射を介して伝達され、前記シェル構造から外部への前記薬物の放出をもたらす、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
MPI及びオプションでMRIを用いて検出可能又は位置特定可能である、請求項13又は14記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−532120(P2012−532120A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518140(P2012−518140)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052918
【国際公開番号】WO2011/001351
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】