説明

N−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物の製造方法

【課題】優れた反応効率で、簡便にN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物、特に、N−(ヒドロキシアルキル)カルバゾール化合物を製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるピロール化合物の製造方法であって、ピロール化合物とアルキレンオキシドとを、25℃におけるSP値が9.3〜12.5である反応溶媒中で反応させる、製造方法。


(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示し、Rは炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキレン基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロール化合物、なかでも、N−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロール誘導体は、医薬原料や導電性ポリマーの原料として有用な化合物である。特に、ピロールとホルムアルデヒドの環状四量化縮合化合物であるポルフィリンは、有機合成触媒としての性能が確認され、精力的な研究が行なわれている。材料分野においても太陽電池材料、トランジスタ材料、光メモリ材料等の用途への応用が期待されている。また、ピロール環構造を有する多環芳香族化合物であるカルバゾールについても、フォトリフラクティブ性、光導電性、正孔移送性等の光学特性に優れることから、ホログラム材料、あるいは複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成用トナーや画像形成部材、有機ELデバイス等への応用が期待され、精力的な研究が行なわれている。特に、ポリマー中にカルバゾイル基を導入したカルバゾールポリマーは、媒体中に高密度にカルバゾイル基を導入することができ、取り扱いが容易であるので、特にフォトリフラクティブ材料としての研究が行なわれている。
【0003】
一方、カルバゾールポリマーを得るためには、カルバゾール化合物に重合性官能基を導入する必要がある。重合性官能基導入の方法として、窒素原子に有機基を導入することにより、重合性官能基、特に重合性二重結合を付与する方法が従来より提案されている。例えば、カルバゾール化合物とエチレンカーボネートとを触媒である第3級アミンの存在下で反応させる製造方法(特許文献1)、カルバゾール化合物とエチレンオキシドとをフェニルエーテル類中で反応させる製造方法(特許文献2)、カルバゾールアルカリ塩とエチレンオキシドとをカルボニル化合物を含む溶媒中で反応させる製造方法(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、特許文献1および2の方法では、反応効率(収率、選択率、転化率等)の点で問題がある。特許文献3の方法では、反応効率の問題に加えて、出発物質であるカルバゾールアルカリ塩の単離工程を設ける必要があるという問題や、カルバゾールアルカリ塩は吸湿性および分解性が高く、取り扱いが困難であるという問題がある。よって、工業的生産の観点からは、反応効率に優れ、かつ、簡便な製造方法が求められている。
【特許文献1】特開2006−347916号公報
【特許文献2】特公昭49−9468号公報
【特許文献3】特公昭55−36661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた反応効率で、簡便にN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物、特に、N−(ヒドロキシアルキル)カルバゾール化合物を製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表されるピロール化合物の製造方法であって、一般式(2)で表されるピロール化合物とアルキレンオキシドとを、25℃におけるSP値が9.3〜12.5である反応溶媒中で反応させる。
【化1】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示し、Rは炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキレン基を示す。)
【化2】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示す。)
【0006】
好ましい実施形態においては、一般式(1)で表されるピロール化合物が、カルバゾール化合物である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記反応溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、およびジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記アルキレンオキシドが、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた反応効率で簡便にN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物、特に、N−(ヒドロキシアルキル)カルバゾール化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、一般式(1)で表されるピロール化合物(以下、「ピロール化合物(1)」と称する場合がある。)の製造方法であって、一般式(2)で表されるピロール化合物(以下、「ピロール化合物(2)」と称する場合がある。)とアルキレンオキシドとを、25℃におけるSP値が9.3〜12.5である反応溶媒中で反応させる、製造方法である。以下、本発明について具体的に説明する。
【化3】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示し、Rは炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキレン基を示す。)
【化4】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示す。)
【0011】
A.一般式(1)で表されるピロール化合物
本発明において「環状骨格」とは、上記式(1)に示すピロール骨格中α位およびβ位の2つの炭素原子を構成原子に有し、かつ環状の骨格を有する。環状骨格としては、環員数や不飽和数は特に限定されず任意に選択でき、また、単環構造であっても2以上の環が縮合してもよい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素(ただし任意の隣り合う2つの炭素原子にてピロール環と縮合するもの);シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の不飽和環状炭化水素(ただし不飽和結合の2つの炭素原子にてピロール環と縮合するもの);チオフェン、フラン、オキサゾリン、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール等の5員環へテロアリール(ただし任意の隣り合う2つの炭素原子がピロール環と縮合するもの);ピリジン、ピラン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン等の6員環へテロアリール(ただし任意の隣り合う2つの炭素原子がピロール環と縮合するもの)が挙げられる。これらの中でも芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくはベンゼン環である。特にX、Yともにベンゼン環の化合物は、カルバゾール化合物と総称されている。
【0012】
環状基の置換基の種類は、本発明の反応に対して不活性なものであれば、任意の適切な置換基が採用され得る。具体例としては、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基からなる群より選択される1または2以上が挙げられる。
【0013】
「低級アルキル基」は、代表的には、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルを挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0014】
「低級アルコキシ基」は、代表的には、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素オキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシを挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。
【0015】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が好ましく、塩素原子および臭素原子がより好ましく、臭素原子がさらに好ましい。
【0016】
置換基の数は、環状基上に置換可能であれば特に制限されない。また、置換基が複数存在する場合は、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
一般式(1)中、「独立して」とは、互いに同一であっても異なっていてもよいとの意である。つまり、XとYは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは同一である。
【0018】
一般式(1)中、Rは、好ましくはエチレン基、直鎖または分岐のプロピレン基、または直鎖または分岐のブチレン基であり、より好ましくはエチレン基、分岐のプロピレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
【0019】
B.一般式(2)で表されるピロール化合物
一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ、上記XおよびYと同義である。XとYは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは同一である。
【0020】
ピロール化合物(2)は、目的化合物であるピロール化合物(1)に対応するものを用いればよい。このピロール化合物(2)は、構造が比較的単純であることから、市販されているものを用いることができる。また、市販されているピロール化合物から当業者に公知の方法により合成することもできる。当該公知の方法としては、環状基への置換基の導入や、置換基の官能基変換などが挙げられる。
【0021】
C.アルキレンオキシド
アルキレンオキシドは、炭素数2〜6のアルキレンオキシドであり、好ましくは炭素数2〜4のアルキレンオキシド、より好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド、さらに好ましくはエチレンオキシドである。
【0022】
アルキレンオキシドの使用量の下限値は、ピロール化合物(2)1モルに対し、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.01モル以上、さらに好ましくは1.03モル以上、特に好ましくは1.05モル以上である。上限値は、ピロール化合物(2)1モルに対し、好ましくは3モル以下、より好ましくは2モル以下、さらに好ましくは1.8モル以下、特に好ましくは1.6モル以下である。このような使用量であれば、ピロール化合物(1)を効率良く得ることができる。アルキレンオキシドの使用量が1モルより少ない場合には、収率が低下し、3モルより多い場合には、アルキレンオキシドが2分子付加した副生成物が多く生成するため好ましくない。
【0023】
D.反応溶媒
反応溶媒は、9.3〜12.5のSP値を有し、好ましくは9.9〜12.3、より好ましくは10.8〜12.1のSP値を有する。SP値は、ヒルデブラントの溶解度パラメーターδを意味し、以下の式で定義される。なお、本願では25℃における値を採用する。
【数1】

【0024】
好ましい反応溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(SP値:12.1)、N,N−ジメチルアセトアミド(SP値:10.8)、N−メチルピロリドン(SP値:11.3)、およびジメチルスルホキシド(SP値:12.0)が挙げられる。
【0025】
反応溶媒の使用量の下限値は、ピロール化合物(2)100質量部に対し、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上、特に好ましくは150質量部以上、最も好ましくは200質量部以上である。上限値は、ピロール化合物(2)100質量部に対し、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下、特に好ましくは800質量部以下、最も好ましくは600質量部以下である。このような使用量であれば、ピロール化合物(2)が反応溶媒に十分に溶解し得るので、反応効率を向上することができる。反応溶媒が50質量部より少ない場合には、原料であるピロール化合物(2)の一部が未溶解となって、未反応の原料が残ったり、アルキレンオキシドとのモル比が使用比と合わなくなることがあるので、好ましくない。また、反応溶媒が2000質量部より多い場合には、反応終了までに時間がかかったり、反応後にピロール化合物(1)を単離する際に工程が増える場合があるので、好ましくない。
【0026】
E.反応条件
本発明の製造方法では、代表的には、先ず反応溶媒に原料化合物であるピロール化合物(2)および触媒を溶解させる。単に混合するのみでは溶解できない場合には、適度に加熱してもよい。その後、反応温度を調整する。反応温度は特に制限されず、予備実験などで効率的な温度とすればよい。反応温度の下限値は、例えば、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。上限値は、例えば、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。次いで、温度が調整された反応溶媒中に、アルキレンオキシドを添加することにより、反応を進行させる。反応溶媒や触媒等の沸点以上で反応を行なう場合には、還流してもよく、加圧反応装置を用い、加圧下で反応を行ってもよい。
【0027】
反応時間も特に制限されず、クロマトグラフィによる原料の消費程度や予備実験などにより決定すればよい。例えば1〜12時間程度とすることができる。
【0028】
反応時における系内は、常圧下であってもよく、加圧下であってもよい。加圧する場合、反応系内のケージ圧の下限値は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上、特に好ましくは0.3MPa以上である。上限値は、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.8MPa以下、特に好ましくは0.7MPa以下である。アルキレンオキシドの中には低沸点の化合物が多く、反応溶液に溶解するアルキレンオキシドが反応圧に依存する(ヘンリーの法則)ため、反応圧のコントロールは反応に大きな影響を及ぼすことが多い。上記反応圧に調整し、反応を行なうことにより、安定的に生産することが可能である。
【0029】
触媒としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物、3級アミン等が用いられ得る。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。3級アミンとしては、反応終了後において反応系から容易に除去し得る点で、沸点が50〜250℃である第3級アミン触媒が好ましい。具体的には、トリアルキルアミンが好ましい。トリアルキルアミンのアルキル基の炭素数としては、2〜5が好適に用いられる。これらの触媒の選択によって、高い反応効率でピロール化合物(1)を得ることができる。
【0030】
触媒の使用量の下限値は、ピロール化合物(2)1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.05モル以上、さらに好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.15モル以上、最も好ましくは0.2モル以上である。上限値は、ピロール化合物(2)1モルに対し、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下、さらに好ましくは2.5モル以下、特に好ましくは2モル以下、最も好ましくは1モル以下である。0.01モル未満では反応が速やかに進行しない場合がある一方で、5モルを超えると、触媒の除去効率が低下する場合があるからである。
【0031】
本発明において、触媒や反応溶媒は任意の方法にて除去することができる。例えば、触媒としてアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物を用いた場合には、水洗工程によって除去することが可能である。さらに反応溶媒または抽出溶媒を常圧または減圧留去することにより、未精製のピロール化合物(1)が得られる。一方、触媒として3級アミンを用いた場合には、反応終了後は、水洗を用いることなく比較的温和な条件の減圧留去によって、反応溶媒および3級アミン触媒を除去し、未精製のピロール化合物(1)を得ることができる。一工程にて反応溶媒および触媒を除去できることは工業的な大量合成には非常に有効である。
【0032】
本発明の製造方法にて得られたピロール化合物(1)は、必要に応じて、従来公知の方法にて精製することができる。精製方法は、得られたピロール化合物(1)の物性に応じ、選択すればよい。例えば、N−ヒドロキシエチルカルバゾールの精製には、減圧蒸留法(200℃/2mmHg)や再結晶法(再結晶溶媒:芳香族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン)を用いることができる。
【0033】
また、本発明の製造方法にて得られたピロール化合物(1)は、副生成物が少ないため精製することなく、次工程を行うことも可能である。次工程としては、必要に応じ、任意の反応工程を選択し得る。例えば、脱水反応によりN−ビニル化合物を合成したり、水酸基と反応しうる化合物と縮合反応を行う工程である。
【0034】
本発明では、収率が非常に良好であり、かつ生産性、作業性に優れたピロール化合物(1)の製造方法を提供する。さらに本製造方法によれば、副生成物や未反応の原料であるピロール化合物(2)が少ないピロール化合物(1)をも提供することができる。これら副生成物や未反応の原料の少ないピロール化合物(1)は、場合によっては精製工程が不要となるので、工業的な生産に非常に有利となる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。また、下記実施例および比較例で行ったガスクロマトグラフィー(GC)分析の条件は以下のとおりである。
GC装置:GC−17A (株式会社島津製作所製)
カラム:SPB−5キャピラリー (SUPELCO社製)
検出器:FID
【0036】
収率、選択率および転化率の定義は、以下の通りである。
収率(モル%)=(生成したピロール化合物(1)のモル数)/(供給したピロール化合物(2)のモル数)×100
選択率(モル%)=(生成したピロール化合物(1)のモル数)/(消費したピロール化合物(2)のモル数)×100
転化率(モル%)=(消費したピロール化合物(2)のモル数)/(供給したピロール化合物(2)のモル数)×100
【0037】
[実施例1]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリ−n−ブチルアミンを仕込んだ。反応容器内を80℃に加熱し、窒素で加圧して0.5MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、6時間、80℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.4(モル比)
トリ−n−ブチルアミン/カルバゾール=0.2(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=4.0(質量比)
【0038】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが0.8%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが98.7%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが0.5%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は98.7%、選択率は99.5%、転化率は99.2%であった。
【0039】
[実施例2]
トリ−n−ブチルアミンの代わりに水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0040】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが0.5%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが96.0%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが3.5%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は96.0%、選択率は96.5%、転化率は99.5%であった。
【0041】
[実施例3]
N,N−ジメチルホルムアミドの代わりにN,N−ジメチルアセトアミドを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0042】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが0.5%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが99.0%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが0.5%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は99.0%、選択率は99.5%、転化率は99.5%であった。
【0043】
[実施例4]
N,N−ジメチルホルムアミドの代わりにN−メチルピロリドンを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0044】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが0.2%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが94.8%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが5.0%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は94.8%、選択率は95.0%、転化率は99.8%であった。
【0045】
[実施例5]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリ−n−プロピルアミンを仕込んだ。反応容器内を40℃に加熱し、窒素で加圧して0.2MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、6時間、40℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=2(モル比)
トリ−n−プロピルアミン/カルバゾール=5(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=15(質量比)
【0046】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は89%、選択率は89%、転化率は100%であった。
【0047】
[実施例6]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリ−n−プロピルアミンを仕込んだ。反応容器内を50℃に加熱し、窒素で加圧して0.3MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、2時間、50℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.8(モル比)
トリ−n−プロピルアミン/カルバゾール=3(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=10(質量比)
【0048】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は92%、選択率は92%、転化率は100%であった。
【0049】
[実施例7]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリエチルアミンを仕込んだ。反応容器内を60℃に加熱し、窒素で加圧して1MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、1時間、60℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.6(モル比)
トリエチルアミン/カルバゾール=2(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=8(質量比)
【0050】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は90.5%、選択率は90.5%、転化率は100%であった。
【0051】
[実施例8]
反応容器内に、カルバゾール、N−メチル−2−ピロリドン、トリ−n−ブチルアミンを仕込んだ。反応容器内を150℃に加熱し、窒素で加圧して0.8MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、4時間、150℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.05(モル比)
トリ−n−ブチルアミン/カルバゾール=0.15(モル比)
N−メチル−2−ピロリドン/カルバゾール=0.5(質量比)
【0052】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は92.5%、選択率は95.4%、転化率は97%であった。
【0053】
[実施例9]
反応容器内に、カルバゾール、ジメチルスルホキシド、トリ−iso−ブチルアミンを仕込んだ。反応容器内を180℃に加熱し、窒素で加圧して1MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、4時間、180℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.03(モル比)
トリ−iso−ブチルアミン/カルバゾール=0.1(モル比)
ジメチルスルホキシド/カルバゾール=0.8(質量比)
【0054】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は90.0%、選択率は94.7%、転化率は95.0%であった。
【0055】
[実施例10]
反応容器内に、カルバゾール、N−メチル−2−ピロリドン、トリ−iso−プロピルアミンを仕込んだ。反応容器内を200℃に加熱し、窒素で加圧して2MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、4時間、200℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.01(モル比)
トリ−iso−プロピルアミン/カルバゾール=0.05(モル比)
N−メチル−2−ピロリドン/カルバゾール=1(質量比)
【0056】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は80.0%、選択率は92.4%、転化率は92.0%であった。
【0057】
[実施例11]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリ−n−ブチルアミンを仕込んだ。反応容器内を100℃に加熱し、窒素で加圧して0.5MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、4時間、100℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.2(モル比)
トリ−n−ブチルアミン/カルバゾール=1(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=6(質量比)
【0058】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は93%、選択率は92%、転化率は100%であった。
【0059】
[実施例12]
反応容器内に、カルバゾール、N,N−ジメチルホルムアミド、トリ−n−ブチルアミンを仕込んだ。反応容器内を120℃に加熱し、窒素で加圧して0.5MPa(ゲージ圧力)に調整した。該反応容器内にエチレンオキシドを30分間かけて吹き込んだ。その後、4時間、120℃で熟成を行った。仕込み量は、以下のとおりである。
エチレンオキシド/カルバゾール=1.2(モル比)
トリ−n−ブチルアミン/カルバゾール=0.3(モル比)
N,N−ジメチルホルムアミド/カルバゾール=2(質量比)
【0060】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は92%、選択率は92%、転化率は100%であった。
【0061】
[比較例1]
N,N−ジメチルホルムアミドの代わりにトルエンを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0062】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが45.0%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが37.0%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが16.8%、2−(2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エトキシ)エタノールが1.2%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は37.0%、選択率は67.3%、転化率は55.0%であった。
【0063】
[比較例2]
N,N−ジメチルホルムアミドの代わりにトルエンを用いたこと、および、トリ−n−ブチルアミンの代わりに水酸化カリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0064】
得られた反応組成物をGC分析に供したところ、該組成物中のカルバゾール化合物のGC面積百分率は、カルバゾールが40.3%、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールが40.4%、2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エタノールが17.7%、2−(2−(2−(N−カルバゾール)エトキシ)エトキシ)エタノールが1.9%であった。また、カルバゾールからN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの収率は40.4%、選択率は67.7%、転化率は59.7%であった。
【0065】
[比較例3]
カルバゾール(167g、1.0モル)と炭酸エチレン(106g、1.2モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(400g、5.5モル)に加え、140℃まで加熱することにより溶解した。ここへ、トリ(n−プロピル)アミン(72g、0.5モル)を加え、同温度で6時間攪拌した。反応液をGC分析したところ、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの転化率は94%、選択率は85%、収率は80%であった。
【0066】
[比較例4]
カルバゾール(167g、1.0モル)と炭酸エチレン(106g、1.2モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(400g、5.5モル)に加え、150℃まで加熱することにより溶解した。ここへトリ(n−ブチル)アミン(185g、1モル)を加え、同温度で6時間攪拌した。反応液をGC分析したところ、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールへの転化率は98%、選択率は80%、収率は78%であった。
【0067】
上記実施例の結果から分かるとおり、本発明の製造方法によれば、優れた反応効率で簡便にN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物(ピロール化合物(1))を得ることができる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、所定のSP値を有する反応溶媒を用いることにより、反応初期段階でピロール化合物(2)が十分に溶解されるので、逐次反応が起こり難くなる。その結果、高い選択率でN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物が得られる。また、このような反応溶媒とアルキレンオキシドとを組み合わせて用いることが、高い選択率、転化率および収率の実現に寄与すると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、優れた反応効率で簡便にN−(ヒドロキシアルキル)ピロール化合物、特に、N−(ヒドロキシアルキル)カルバゾール化合物が得られることから、例えば、N−ビニルカルバゾール化合物の製造分野において好適に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるピロール化合物の製造方法であって、一般式(2)で表されるピロール化合物とアルキレンオキシドとを、25℃におけるSP値が9.3〜12.5である反応溶媒中で反応させる、製造方法。
【化1】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示し、Rは炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキレン基を示す。)
【化2】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立して水素または置換基を有する環状骨格を示す。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるピロール化合物が、カルバゾール化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、およびジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−91294(P2009−91294A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263305(P2007−263305)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】