説明

NT−proBNP検出用ポリクローナル・モノクローナル・エライサ検定法

種々の体液、血液、血清、血漿、尿およびこれらと同等物である非限定サンプル中に含まれるNT−proBNP量を確認するための特異的で高感度の生体外のエライサ検定法および診断検査キットが開示されている。上記NT−proBNPエライサ検定法は、サンドイッチ・エライサ技術を用いて、ヒト血漿中で循環するNT−proBNPを測定する。ヒトproBNP内の標的アミノ酸配列を関する特異的結合特性を備えた抗体を得るために、組換え型ヒトproBNP(あるいはrhproBNP)を免疫原として使用するために発現させかつ精製した。アミノ酸配列に特異的なポリクローナル抗体(PAb)をその後、配列親和性精製手段によってヤギ血清から精製した。モノクローナル抗体を特定のポリペプチドに対して生成した。ヒトproBNPの定量法の較正に使用する材料を得るために、組換え型ヒトproBNP(あるいはrhproBNP)を発現させかつ精製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液、特にヒト血漿中の脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のN末端(NT−proBNP)濃度を測定するのに特異的で高感度の生体外の測定方法であるNT−proBNP蛋白質エライサ検定法および試験キットに関するものである。特に、この発明は、特に高い診断特異性を有し、これによりうっ血性心不全死の前兆となるように特に示されるNT−proBNP蛋白質エライサ検定法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Bタイプのナトリウム排泄増加性ペプチド(脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、BNP)は、構造的に類似しているが、遺伝的に別種のナトリウム排泄増加性ペプチド(NPs)の系統に属しており、デボールド(de Bold)ら(デボールド(de Bold) AJ.濾胞性心房:水−電解液バランス変化の効果。生物医学学会議事録(Proc Soc Exp Biol Med)1979年、第161巻:508頁〜511頁;デボールド(de Bold) AJ、ボレンスタイン(Borenstein) HB、ベレス(Veress) AT、およびソネンベルグ(Sonnenberg) H。ラットにおける心房性心筋抽出物の静脈注射に対して急速な効果のあるナトリウム排泄増加反応。ライフサイエンス(Life Sci) 1981年、第28巻、89頁〜94頁)によって記述されている。
上記ナトリウム排泄増加性ペプチド(NPs)は、効果のある利尿性、ナトリウム排泄増加性および血管拡張性を有しており、心臓血管性疾患、特にニューヨーク心臓協会(NYHA)における患者のうっ血性心不全(CHF)(ブームスマ(Boomsma) F およびファンデンマイラケル(van den Meiracker) AH。血漿AタイプおよびBタイプのナトリウム排泄増加性ペプチド:生理学、方法論および臨床用途。心臓血管研究(Cardiovasc Res) 2001年、第51巻、442頁〜449頁)のクラスI〜IVに有用な診断用および予後用マーカーとして報告されてきた。
上記脳ナトリウム排泄増加性ペプチド(BNP)の遺伝子は、108個のアミノ酸残基を有する前駆分子、ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体(配列番号1)をコード化する。心筋細胞による分泌前に、このホルモン前駆体の分割は、COOH末端からの生理活性BNPの生成を招く。1995年には、ハント(Hunt)ら(ハント(Hunt) PJ、ヤンドル(Yandle) TG、ニコルス(Nicholls) MG、リチャーズ(Richards) AM、およびエスピナー(Espiner) EA。脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体(ProBNP)のアミノ末端部のヒト血漿中での循環。生物化学生物物理学研究会(Biochem Biophys Res Commun)1995年、第14巻、1175頁〜1183頁;ハント(Hunt) PJ、リチャーズ(Richards) AM、ニコルス(Nicholls) MG、ヤンドル(Yandle) TG、ドウティ(Doughty) RNおよびエスピナー(Espiner) EA。免疫活性アミノ末端脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体(NT−ProBNP):心臓機能障害の新規マーカー。臨床内分泌疾患(Clin Endocrinol)1997年、第47巻、287頁〜296頁)は、分割され、また血漿中で循環したホルモン前駆体、NT−ProBNPおよび同様のBNPのN末端に対応するフラグメントが潜在的に重要であり、心不全としてより識別性の高いマーカーであったことを示した。
【0003】
多くの研究は、アミノ末端脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体(NT−ProBNP)を含むナトリウム排泄増加性ペプチド(NPs)の血漿濃度を測定する臨床的用途を示してきた。ナトリウム排泄増加性ペプチド(NPs)は、心疾患を患う患者の診断およびリスク層別化用に選択されるバイオマーカーとして提案されてきた(クラリコ(Vlerico) A、デルリィ(Del Ry) Sおよびジアネッシ(Giannessi) D。心臓ナトリウム排泄増加性ホルモン(心房ナトリウム排泄増加性ペプチド、脳ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび関連ペプチド)の測定。臨床診療では、新世代の免疫検定法の必要性。臨床化学(Clin Chem)2000年、第46巻、1529頁〜1534頁:マイア(Mair) J、ハンメル−リヒアー(Hammerer−Lercher) Aおよびプシェンドルフ(Puschendorf) B。心不全の診断および管理における心臓ナトリウム排泄増加性ペプチドの定量の効果。臨床化学的医学研究(Clin Chem Lab Med)2001年、第39巻、571頁〜588頁;サグネラ ジーエイ。血漿脳ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび関連ペプチドの測定および意義。臨床生物化学年報2001年、第38巻、83頁〜93頁;セルバイス(Selvais) PL、ドンキエール(Donckier) JE、ロバート エイ(Robert) A、ラルー(Laloux) O、ファンリンデン(van Linden) F、アン(Ahn) S、ケテルスラガーズ(Ketelslegers) JM、およびルソー(Rousseau) MF。心疾患の診断およびリスク層別化用の心臓ナトリウム排泄増加性ペプチド:心臓ホルモン活性化に対する左心室機能不全および冠状動脈疾患の影響。欧州臨床研究誌(Eur J Clin Invest)1998年、第28巻、636頁〜642頁;マクドノー(McDonagh) TA、カニンガム(Cunninghm) AD、モリソン(Morrison) CE、マクマリーMcMurray JJ、フォード(Ford) I、モートン(Morton) JJおよびダルジエ(Dargie) HJ。左心室機能不全、ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび都市群における死亡率。心臓(Heart)2001年、第86巻、21頁〜26頁)。数種の研究は、NP測定値を使用して、左心室機能不全を患う患者、徴候がない患者(すなわち、NYHAクラスI)であっても、それを確認する実用性を示しており、選別手段としてのNP測定値が高い危険率で、再評価および治療を必要とする心不全群(例えば、冠状動脈疾患、高血圧症、糖尿病、高齢)内に標的患者を効果的に助けることになることが示唆されてきた(ヒューズ(Hughes) D、タルワー(Talwar) S、スクアイア(Squire) IB、デイビス(Davies) JEおよびエヌジー(Ng) LL。NT−proBNPに関する免疫蛍光検定法:左心室機能不全用試験の開発。臨床科学(Clin Sci)1999年、第96巻、373頁〜380頁;オムランド(Omland) T、アークバーグ(Aakvaag) A、ビクモ(Vik−Mo) H。軽度左心室機能障害を患う患者確認用選別試験としての血漿心臓ナトリウム排泄増加性ペプチドの定量。心臓(Heart) 1996年、第76巻、232頁〜237頁;マクドー(McDonagh) TA、ロブ(Robb SD)、マードック(Mordoch) DR、モートン(Morton) JJ、フォード(Ford) I、モリソン(Morrison) CEら。左心室収縮不全の生化学的検出。ランセット(Lancet)1998年、第351巻、9頁〜13頁;シュルツ(Shulz) H、ランビック(Langvik)、ランドセイゲン(Lund Sagen) E、スミス(Smth) J、アーマジ(Ahmadi) Nおよびホール(Hall) C。ヒト血漿中における脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体の放射性免疫検定法。スカンジナビア臨床研究誌(Scan J Clin Lab Invest)2001年、第61巻、33頁〜42頁;タルワー(Talwar) S、スクアイア(Squire) IB、デイビス(Davies) JE、バレット(Barnett) DBおよびエヌジー(Ng) LL。血漿中のNT−proBNPおよび高い危険率群における左心室収縮不全の心電図評価。欧州心臓誌(Eur Heart J)1999年、第20巻、1736頁〜1744頁;ハイスタッド(Hystand) ME、ゲイラン(Geiran) OR、アトラマダール(Attramadal) H、スパークランド(Spurkland) A、ベージ(Vege) A、シモンセン(Simonsen) Sおよびホール(Hall) C。局所的な心性徴候および重篤な慢性心不全を患う患者におけるナトリウム排泄増加性ペプチドの濃度。スカンジナビア生理学集(Acta Physiol Scand) 2001年、第171巻、395頁〜403頁;ホッブス(Hobbs) FDR、デイビス(Davis) RC、ロアルフ(Roalfe) AK、ヘアー(Hare) R、デービス(Davies) MKおよびKenkre(JE)。心不全の診断におけるナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のN末端検定法の信頼性:代表および高い危険率の群落におけるコホート研究。BMJ2002年、第324巻、1498頁)。ナトリウム排泄増加性ペプチド(NPs)については、心不全における疾病率および死亡率の双方に対する良好な予後徴候の値を有することが示されてきた。数種の研究は、左心室機能不全の予知および急性心筋梗塞の生存におけるNP測定値の実用性(リチャーズ(Richards) AM、ニコルス(Nicholls) MG、ヤンドル(Yandle) TG、フラントン(Frampton) C、エスピナー(Espiner) EA、ターナー(Turner) JGら。血漿中のNT−proBNPおよびアドレノメダリン。左心室の新規神経分泌ホルモン性予知剤および心筋梗塞後の予後。リンパ系1998年、第97巻、1921頁〜1929頁;ラチナー(Luchner) A、ヘングステンベルグ(Hengstenberg) C、ロウエル(Lowel) H、トランスキ(Trawinski) J、バウマン(Baumann) M、リーゲル(Riegger) GAJら。心筋梗塞後のNT−proBNP。心臓−腎機能のマーカー。高血圧症(Hypertension)2002年、第39巻、99頁〜104頁;キャンベル(Campbell) DJ、ムニール(Munir) V、ヘネシー(Hennessy) OFおよびデント(Dent) AW。緊急救命部にいる急性冠状症候群を疑われている被験者における血漿脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端量:追跡のために患者を選別する役割を与えることができるか?インターン医学誌(Intern Med J)2001年、第31巻、211頁〜219頁;ニルソン(Nilsson) JC、グロニング(Groenning) BA、ニールセン(Nielsen) G、フリッツ・ハンセン(Fritz−Hnsen) T、トロインスキ(Trawinski) J、ヒルドブラント(Hidebrandt) PRら。急性心筋梗塞後の1年における左心室のリモデリングおよびNT−proBNPの予測値。米国心臓誌(Am Heart J) 2002年、第143巻、696頁〜702頁)。ナトリウム排泄増加性ペプチド(NP)量をモニターすることは、個別の患者の必要な強度を満たすために治療法を調整しかつ治療の有効性をモニターする上でのガイダンスをも与える可能性がある(リチャーズ(Richards) AM、ドーティ(Doughty) R、ニコルス(Nicholls) G、マクマホン(MacMhon) S、シャープ(Sharpe) N、マーフィ(Murphy) Jら。血漿NT−proBNPおよびアドレノメダリン。慢性の虚血性左心室機能不全におけるカーベディロール(Carvedilol)からの恩恵の予後利用および予測。米国心臓学会誌(J Am Cool Cardiol) 2001年、第37巻、1781頁〜1787頁;トルートン(Troughton) RW、フランプトン(Frampton) CM、ヤンドル(Yandle) TG、エスピナー(Espiner) EA、ニコルス(Nicholls) MGおよびリチャーズ(Richards) AM。血漿脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端(N−BNP)の濃度によって誘導された心不全治療。ランセット(Lancet)2000年、第355巻、1126頁〜1130頁)。
【0004】
(先行技術)
ホール(Hall)による国際出願WO93/24531号(特許文献1)(米国特許5,786,163号)(特許文献2)は、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端を同定する免疫学的方法およびこの方法に使用された抗体を記述するものである。上記抗体を得るためには、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端の配列から単独で合成されたペプチドが使用される。ペプチド免疫化による抗体の生成は基本的には可能であるが、分子全体に関する親和性は、概ね検査手順において必要な感度に到達するのに低すぎる。さらに、ペプチドを用いて得られた抗体が、例えば上記ペプチドのC末端を識別することができ、したがって分子全体のフラグメントにのみ結合することができ、これにより抗体が、一般に分子全体に結合することができず、あるいは限定的範囲にのみ結合することができるという結果になる危険性がある。国際出願WO93/24531号(特許文献1)では、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端由来の1つのペプチドに対する抗体が生成されている。生成された抗体が競合検査フォーマットにおける免疫化ペプチド(アミノ酸47〜64)に結合することが示されている。しかしながら、抗体が、サンプル中の分子全体として未変性の脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ末端に結合することができることについては示されていない。さらに、サンプル中に国際出願WO93/24531号(特許文献1)に記述されたサンドイッチ検査法は、適正な標準材料および2つの異なるエピトープに対する抗体が存在しないので、記述されているようには実行することができる。さらに、トレーサとして標識化されたペプチド47〜64がサンプルすなわち標識化されていない標準ペプチド47〜64と競合してラビット血清由来のポリクローナル抗体に結合する、国際特許出願WO93/24531号(特許文献1)で実行された競合検査は、非常に穏やかな競合のみが、約250fmol/mlの下限検出限界が誘導される48時間の培養後に、達成されるという事実に苦慮することになる。これは、健常者と心不全を患う患者とを識別するものではなく、あるいは患者サンプルを心不全の重篤度で識別して層別化するものでもない。さらに、長期培養の競合検査は、自動分析におけるサンプルの定期的な測定を受け入れることができない。
【0005】
ハント(Hunt)ら(臨床内分泌学(Clinical Endocrinology) 1997年、第47巻、287頁〜296頁)は、NT−proBNPを検出する競合検査についても記述するものである。このため、血漿サンプルの複合抽出が測定前に必要であり、これは、分析物の破壊および測定ミスにつながる可能性がある。使用された抗血清は、合成ペプチドの免疫化によって、国際出願WO93/24531号(特許文献1)と同様に生成されており、ハントらは、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のアミノ酸1〜13のN末端の免疫化によって抗血清を生成し、アミノ酸1〜13のペプチドは標準試料として用いられている。このため、長期培養も必要である。24時間の培養後に、1.3fmol/mlの下限検出限界が達成される。
NT−proBNPの同定法という名称でカールらにより出願された国際出願WO00/45176号(特許文献3)は、組換え型のNT−proBNPの免疫原の使用によって分離されたモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を開示するものである。上記参考文献は、体液中のNT−proBNPに対して特異的な上記抗体を使用する検定情報を示唆するものである。より完全に記述されるように、この発明の検定法に対する上記検定法に関する受信者動作特性(ROC)図の曲線下領域(AUC)の比較は、この発明が優れた診断特性を証明することを示している。
ナトリウム排泄増加性ペプチドフラグメントという名称で出願された国際出願WO00/35951号(特許文献4)は、NT−proBNPの配列の異なるエピトープに対する2つの抗体を利用するNT−proBNPの検定法に着目している。この検定法は、抗体が、免疫原としての合成ペプチドフラグメントに対して生成される点で、ホール(Hall)(米国特許第5,786,163号)(特許文献2)の欠陥と同様の欠陥に苦しむことになる。
【特許文献1】国際出願WO93/24531号公報
【特許文献2】米国特許5,786,163号公報
【特許文献3】国際出願WO00/45176号公報
【特許文献4】国際出願WO00/35951号
【発明の開示】
【0006】
この発明で開示されたNT−proBNP蛋白質エライサ検定法および検査キットは、種々の体液、すなわち血液、血清、血漿、尿およびこれらと同等物である非限定サンプル中におけるNT−proBNP濃度を測定することができる特異的で高感度の生体外の検定法である。次の実施例および記述は、ヒト血漿中での検定法の使用を例証することになる。
この明細書で使用されているように、用語「1つまたは複数の抗体」は、任意のアイソタイプ(IgA、IgG、IgE、IgD、IgM)のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体あるいはこれらの抗原結合部位を含むが、F(ab)フラグメントおよびFvフラグメント、単一鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびFab発現ライブラリに限定されるものではない。
上記NT−proBNPエライサ検定法は、ヒト血漿中で循環するNT−proBNPを測定するサンドイッチ・エライサ技術を使用する。ヒトproBNP内の標的アミノ酸配列に対する特異的結合特性を備えた抗体を得るために、組換え型ヒトproBNP(すなわちrhproBNP)は、免疫原として使用するために発現させかつ精製された。配列番号1のproBNP(1〜25、26〜51、52〜76あるいは77〜108)内のアミノ酸配列に特異的なポリクローナル抗体(PAb)は、その後、組換え型ヒトNT−proBNP(すなわちrhNT−proBNP)が発現されかつ精製されるヒトNT−proBNPの定量法の較正に使用する材料を得るために経時的親和的精製手段によってヤギ血清から精製された。モノクローナルは、上記ヤギポリクローナル抗体と対にする際にNT−proBNPエライサ検定に使用する上清から生成された。モノクローナルは、抗NT−proBNP捕捉抗体に結合されたNT−proBNP蛋白質に結合する検出用抗体としてビオチン化されて使用され、これによりサンドイッチを構成することができる。
【0007】
したがって、この発明の目的は、組換え型ヒトproBNPに対して生成され、ヒトproBNP内の標的アミノ酸配列に特異的な親和性を示すように特異的に選択されたヤギポリクローナル抗体を提供することにある。
この発明の他の目的は、ヒトNT−proBNPを定量し、これによって、うっ血性心不全患者の死亡率を精確に予測するための診断/選別ツールを確定することができる定量法を提供することにある。
この発明の他の目的は、先に選択されたヤギポリクローナル抗体と結合したときに、特に高感度で特異的な生体外の診断検定法を提供するのに有用なモノクローナル抗体を提供することにある。
この発明の他の目的は、NT−proBNP量を確定する概略の診断/選別手順を実行する目的のためのエライサ検査キットを提供することにある。
【0008】
(図面の簡単な説明)
図1は、proBNP前駆蛋白質から開始するNT−proBNPおよび標的ペプチドを選択する方法を示す図である。
図2は、ヤギポリクローナル/6G11モノクローナル検定法の受信者動作特性(ROC)曲線を示すグラフである。
図3は、対照量に対するNYHAのクラスIIIおよびIVにおけるNT−proBNP量を示すボックス図である。
図4は、年齢によって階層化された対照被験者におけるNT−proBNP量のボックス図である。
図5は、この発明のヤギポリクローナル/6G11モノクローナル検定法を利用するエライサ手順の概要を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記NT−proBNPエライサ検定法は、ヒト血漿中で循環するNT−proBNPを測定するためにサンドイッチ・エライサ技術を使用する。ヤギポリクローナル抗NT−proBNP捕捉蛋白質で被覆されたマイクロプレート穴は固層を構成する。被験者用血漿、標準品および対照物は上記被覆された穴に添加され、培養緩衝液で培養される。サンプル抽出ステップは必要とされない。仮にNT−proBNP蛋白質が検査サンプル中に存在する場合には、その蛋白質は、上記穴上に被覆されたNT−proBNPに特異的な抗体によって捕捉されることになる。培養および洗浄後、モノクローナル抗NT−proBNP検査用抗体は上記穴に添加される。上記検査用抗体は、上記NT−proBNP蛋白質、あるいはこれらの免疫原性フラグメント、例えば上記抗体によって認識され、抗NT−proBNP捕捉抗体に結合されているポリペプチドフラグメントに結合し、これによりサンドイッチを形成することができる。培養および洗浄後、ワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)で標識化されたポリクローナル・ロバ・抗マウスIgGは上記穴に添加される。培養および洗浄に続けて、酵素基質は上記穴に添加されかつ培養される。酸性溶液は、その後、上記酵素反応を停止するために添加される。固定化されたHRPの酵素活性度は、上記穴中で酸化された酵素生成物の吸光度を450nmで測定することによって確認される。450nmでの吸光度は、被験サンプル中のNT−proBNP量に比例する。NT−proBNP標準品セットは、被験表品および対照物中のNT−proBNP濃度が計算できる、NT−proBNP濃度に対する吸光度の標準曲線を作成するために使用される。免疫反応の検出がこの技術分野において周知の直接法あるいは間接法を介して達成できるものと理解される。
【0010】
ヒトproBNP内の標的アミノ酸配列に対する特異的結合特性を備えた抗体を得るために、組換え型ヒトproBNP(すなわちrhproBNP)は、免疫原として使用するために発現されかつ精製された。proBNP−pUC9プラスミド構成体は、アドルフォ ジェイ.デボールド(Adolfo J. De Bold)博士(オタワ心臓研究所(Ottawa Heart Institute))から入手された。rhproBNPのオープンリーディングフレーム(ORF)の全長は、重合酵素連鎖反応(PCR)およびpET32c(NcoI/HhoI)へのサブクローニングによって得られた。上記pET32cベクターは、最終融合蛋白質がS標識およびエンテロキナーゼ部位を含まないように81個のヌクレオチドを除去することによって修正された。rhproBNPのオープンリーディングフレーム(ORF)のN末端における配列は、チオレドキシン標識およびポリヒスチジン標識およびトロンビン分割部位で構成した。上記C末端には余分な配列が存在しなかった。上記蛋白質は、大腸菌BL21(DE3)中で発現され、未精製の細胞抽出物は非変性条件で調製された。次の親和的精製は、供給者により推奨されたNi−NTAクロマトグラフィによって終了された。注射前に、rhproBNP溶液中のエンドトキシン量は、供給者により推奨されたデトキシゲル(登録商標)エンドトキシン除去用樹脂を用いて許容レベルまで下げられた。
【0011】
ポリクローナル抗体の生成および精製:
ヤギ(ラマンチャまたはトゲンバーグ種)は、精製された組換え型ヒトproBNP(rhproBNP)で免疫化された。完全フロイントアジュバント内に乳化された500μgの精製rhproBNPの複数部位への主要な筋肉内注射が投与され、その後、不完全フロイントアジュバント内に乳化された500μgの精製rhproBNPの複数部位への250μgの筋肉内注射が隔週で投与された。免疫化されたヤギの力価は、ハーフサンドイッチエライサ技術を用いて血清を選別することによって定期的にモニターされた。
配列番号1のproBNP(1〜25、26〜51、52〜76あるいは77〜108)内のアミノ酸配列に特異的なポリクローナル抗体(PAb)は、その後、供給者の推奨に従い、次の蛋白質またはペプチド配列:
1.ヒトIgG(ジャクソン免疫研究社(Jackson ImmunoResearch))
2.マウスIgG(ジャクソン免疫研究社(Jackson ImmunoResearch))
3.キーホールリンペットヘモシニアン(エイディーアイ社(ADI Inc.))に結合された配列番号1のproBNPアミノ酸配列#1〜25(HPLGSPGSASDLETSGLQEQRNHLQ)
または
3.キーホールリンペットヘモシニアン(エイディーアイ社(ADI Inc.))に結合された配列番号1のproBNPアミノ酸配列#26〜51(GKLSELQVEQTSLEPLQESPRPTGVW)
または
4.キーホールリンペットヘモシニアン(エイディーアイ社(ADI Inc.))に結合された配列番号1のproBNPアミノ酸配列#52〜76(KSREVATEGIRGHRKMVLYTLRAPR)
5.キーホールリンペットヘモシニアン(エイディーアイ社(ADI Inc.))に結合された配列番号1のproBNPアミノ酸配列#77〜108(BNP−32、SPKMVQGSGCFGRKMDRISSSSGLGCKVLRRH)に結合された臭化シアン活性化セファロース4B(ファルマシア社)を用いてヤギ血清から精製された。
精製されたポリクローナル抗体は、pH7.4の20mMリン酸緩衝生理食塩水に対して透析され、限外ろ過によって濃縮され、−20℃で保存された。
【0012】
組換え型ヒトNT−proBNPの発現
ヒトNT−proBNPの定量方法の検量に使用される材料を得るために、組換え型ヒトNT−proBNP(すなわちrhNT−proBNP)が発現されかつ精製された。上記proBNP−pUC9プラスミド構成体は、アドルフォ ジェイ.デボールド(Adolfo J. De Bold)博士(オタワ心臓研究所(Ottawa Heart Institute))から入手された。rhproBNPのオープンリーディングフレーム(ORF)は、重合酵素連鎖反応(PCR)およびpET32c(NcoI/HhoI)へのサブクローニングによって得られた。上記rhNT−proBNPのN末端における配列は、チオレドキシン、ポリヒスチジンおよびS標識、並びにトロンビンおよびエンテロキナーザ分割部位で構成した。上記C末端には余分な配列が存在しなかった。上記蛋白質は、大腸菌BL21(DE3)中で発現され、未精製の細胞抽出物は非変性条件で調製された。次の親和的精製は、供給者により推奨されたNi−NTAクロマトグラフィによって終了された。
【0013】
モノクローナル抗体の選別
免疫法で使用され、この明細書において6G11−F11−D12および1C3−E11−H9として指定されたハイブリドーマ細胞系によって分泌されたモノクローナル抗体は、ヒト脳ナトリウム排泄増加性因子BNP(1〜25)のN末端のアミノ酸1〜25で構成されたポリペプチドに特異的であり、アドルフォ ジェイ.デボールド(Adolfo J. De Bold)博士から入手された。これらのモノクローナル抗体は、上記ヤギポリクローナル抗体と対をなすNT−proBNPエライサ検定法で使用される上清から生成されたものであり、それぞれ6G11および1C3と指定されている。これらのクローンは、この出願と同日に出願され、参照することによってこの明細書に組み込まれたものとされる米国出願10/299,606号の主題であり、ブダペスト条約に準拠して、それぞれ受託番号PTA−4844およびPTA−4845で、2002年12月5日に、20110−2209米国バージニア州マナサスのブールバード大学10801のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託されたものである。米国連邦規則37CFR1.808に準拠して、寄託者は、寄託された材料の公衆への利用可能性に課される全ての制約が特許許可時に取消し不能に解除されることを保証するものである。寄託者は、さらに寄託された材料が、仮に生育可能なサンプルが寄託によって分散できない場合には、交換されることを保証するものである。
【0014】
選別は、次のように行われた:
i)検出体としてのヤギポリクローナル抗体(PAb)を含む潜在的な捕捉体MAb(s)
融合性ハイブリドーマ培養液の上清を、pH9.6の100mM炭酸緩衝液中に2μg/mlの濃度で含有されたロバ・抗マウスIgG(H+L)イムノグロブリン(ジャクソン免疫研究社(Jackson ImmunoResearch))で被覆された96穴マイクロ滴定プレート(エヌユーエヌシー、マキシソープ(NUNC, MaxiSorp)、GIBCO BRL)に添加した。過剰の結合部位は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中のウシ血清アルブミン(BSA)で阻害された。洗浄用緩衝液(0.05%(v/V)のツイーン20を含有するリン酸緩衝生理食塩水)で上記プレートを洗浄した後、モノクローナル抗体を含有する50μLの各培養上清を、上記プレート上で培養された。炭酸ガス培養器中で37℃、1時間の培養後、上記プレートは洗浄用緩衝液で洗浄した。
組換え型ヒトproBNP(シン−エックス、ファーマ(Syn−X Pharma))を、その後、3ng/mlまたは0ng/mlの濃度で、上記プレートに添加し、このプレートをシェーカ上で2時間、室温(RT)培養した。上記プレートを洗浄した後、proBNPアミノ酸ペプチド配列1〜25、26〜51あるいは52〜76(シン−エックス、ファーマ(Syn−X Pharma))に対する親和性を利用して精製され、0.5%(w/v)ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水で適切に希釈されたビオチン化ヤギポリクローナル抗体を、適切な穴に添加した。ヤギポリクローナル抗体を、製造者により推奨されたロッシュから入手したビオチン標識キットを用いてビオチン化した。シェーカ上で1時間、室温(RT)培養した後、上記プレートを洗浄し、1/5000まで希釈したストレプタビジン・ワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)結合体(ジャクソン免疫研究社(Jackson ImmunoResearch))を添加し、シェーカ上で1時間、室温(RT)培養した。洗浄後、TMB基質溶液(モス)を添加し、8分間、暗所で室温(RT)培養した後、上記反応を1規定の硫酸(H2SO4)で停止し、450nmで吸光度を測定した。クローンを、各ヤギポリクローナル抗体と対をなし、proBNP抗原を含む穴では特異的で高強度信号を生成しかつproBNP抗原を含まない穴では最小の信号を生成する能力に基づいて腹水生成物を選択した。
ii)捕捉体としてのヤギポリクローナル抗体(PAb)を含む潜在的な検出体MAb(s)
96穴マイクロ滴定プレートを、proBNPアミノ酸ペプチド配列1〜25、26〜51あるいは52〜76(シン−エックス、ファーマ(Syn−X Pharma))に対する親和性を利用して精製され、pH9.6の100mM炭酸緩衝液中に1μg/mlの濃度で存在するヤギポリクローナル抗体で被覆した。過剰の結合部位は、上記方法(i)と同様に阻害された。洗浄用緩衝液で洗浄した後、組換え型ヒトproBNP(シン−エックス、ファーマ(Syn−X Pharma))を、3ng/mlまたは0ng/mlの濃度で、上記プレートに添加し、このプレートをシェーカ上で2時間、室温(RT)培養した。洗浄後、モノクローナル抗体を含む融合性ハイブリドーマ培養液の上清を添加(穴ごとに50μL)し、上記プレートを炭酸ガス培養器中で37℃、1時間培養した。他の洗浄ステップ後、1/5000まで希釈したワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)結合ロバ・抗マウスIgG(H+L)イムノグロブリン(ジャクソン免疫研究社(Jackson ImmunoResearch))を上記プレートに添加し、シェーカ上で1時間、室温(RT)培養した。TMB基質を添加し、洗浄後、上記プレートを上記方法(i)と同様に培養した。クローンを、各ヤギポリクローナル抗体と対をなし、proBNP抗原を含む穴では特異的で高強度信号を生成しかつproBNP抗原を含まない穴では最小の信号を生成する能力に基づいて腹水生成物を選択した。
【0015】
6G11モノクローナル抗体の最終選択:
選択されたモノクローナル抗体の腹水による生成および、その後の公知の手順を用いて蛋白質G(ファーマシア社(Pharmacia))により精製に続けて、精製された抗体を、ハイブリドーマ上清の選別のためであるが、上記精製された抗体がpH9.6の100mM炭酸緩衝液で適切に希釈し、捕捉体として選別用プレート上に直接被覆するか、あるいは検出体として選別用に0.5%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水で適切に希釈したという現実のために、上述したように再検査した。
組換え型ヒトproBNPおよび組換え型ヒトNT−proBNPに対する最適なエライサの特異性および感度を、捕捉体としてのproBNPアミノ酸ペプチド配列26〜51に対する親和性を利用して精製されたヤギポリクローナル抗体と、検出体としての6G11を指定するMabクローンとの組み合わせを用いて得た。ここで図5を参照すると、この発明の上記エライサ検定法を実行する手順が明らかにされる。
その後、上記手順に従って検査されたヒト血漿サンプル由来のデータ分析を、心不全の患者に対して明らかな健常者のNT−proBNP量を測定する際に、優れた感度および特異性をもたらす上記抗体の組み合わせの有用性を示した。
この発明に従うエライサ検査キットは、上述した手順を実行する目的のために提供されている。
【0016】
試薬供給品:
抗NT−proBNP蛋白質被覆マイクロ滴定細片
マイクロ滴定用96穴を含む1つの細片保持器にヤギポリクローナル抗NT−proBNP抗体で被覆した。期間満了まで、乾燥剤を入れたポーチ内に2〜8℃で保存する。
NT−proBNP蛋白質標準品
次の標準品:0、50、150、375、1500および3000pg/mlのNT−proBNPの1つをそれぞれ含む6つのバイアル瓶が用意される。各バイアル瓶は、0pg/mlの対照物が1.0mlを含むことを除き、0.5mlを含むものである。仮に再検査が望ましい場合には、余分量は、3000pg/ml以上の値を有するサンプルの希釈に余裕をとるものである。−70±10℃で保存する。この温度で維持し、上記標準品は、6ケ月まで、凍結/解凍の少なくとも3回の間で、安定である。
NT−proBNP蛋白質対照物
NT−proBNPを含む各0.5mlの2つのバイアル瓶は、蛋白質の低濃度および高濃度で制御する。−70±10℃で保存する。この温度で維持し、上記標準品は、6ケ月まで、凍結/解凍の少なくとも3回の間で、安定である。
【0017】
培養緩衝液
10mlの培養緩衝液を含む1つのバイアル瓶。期間満了まで2〜8℃で保存する。
検出体としての抗体
10mlの抗NT−proBNP抗体を含む1つのバイアル瓶。期間満了まで2〜8℃で保存する。
ワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)結合体
ワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)で標識化された10mlのロバ抗マウス免疫グロブリンを含む1つのバイアル瓶。期間満了まで2〜8℃で保存する。
クロモゲン溶液
3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液10mlを含む1つのバイアル瓶。期間満了まで2〜8℃で保存する。
濃縮洗浄液
非イオン性界面活性剤を有するリン酸緩衝生理食塩水60mlを含む1つの瓶。使用前に、脱イオン水で25倍に希釈する。2〜8℃で保存する。
停止溶液
1規定の硫酸10mlを含む1つの瓶。2〜8℃で保存する。
【0018】
検定手順:
上記検定法を実行する際に、第1の穴へのサンプル、標準品および対照物の添加と、最終穴へのサンプル、標準品および対照物の添加との間隔が10分を超えるべきである。多くのサンプルに関しては、少量のバッチでエライサを実施して、この時間枠に対応する。
使用されるべきマイクロプレートの穴に印を付ける。
半自動ピペットを用いて、50μlの培養緩衝液を各穴に添加する。
高精度マイクロピペットを用いて、50μlの各検査サンプル、NT−proBNP標準品あるいはNT−proBNP対照物を適切な微小穴に添加する。標準曲線の整合性を保証するために、次のような上記プレートへの添加順が推奨される:検査サンプル、NT−proBNP標準品、NT−proBNP対照物。
正副2つのNT−proBNP標準品およびNT−proBNP対照物で検査することが推奨される。
粘着性プレートカバーを用いて微小穴を覆い、室温で、オービタル型マイクロプレートシェーカ上で2時間、培養する。
適切なマイクロプレート洗浄器を用いて、各穴について3回にわたって吸引しかつ洗浄液で洗浄を行う。吸収材料上に上記プレートを逆さにすることによって乾燥させる。
不完全な洗浄が逆に検定精度に影響を与えるので、マイクロプレート用自動洗浄器の使用は大いに推奨される。これに代えて、仮にマイクロプレート用自動洗浄器が入手できない場合には、洗浄は、微小穴の内容物を吸引しかつ340μlの洗浄溶液を各微小穴に再充填するステップを3回反復することによって手動的に達成することができる。
半自動ピペットを用いて、各穴に100μlの検出用抗体溶液を添加する。
室温で、オービタル型マイクロプレートシェーカ上で1時間、上記穴を培養する。
適切なマイクロプレート洗浄器を用いて、各穴について3回にわたって吸引しかつ洗浄液で洗浄を行う。吸収材料上に上記プレートを逆さにすることによって乾燥させる。
半自動ピペットを用いて100μlのワサビ大根パーキシダーゼ(HRP)結合溶液を各穴に添加する。
粘着性プレートカバーを用いて微小穴を覆い、室温で、オービタル型マイクロプレートシェーカ上で30分間、培養する。
微小穴について3回にわたって吸引しかつ洗浄液で洗浄を行う。吸収材料上に上記プレートを逆さにすることによって乾燥させる。
半自動ピペットを用いて100μlのTMB溶液を各穴に添加する。
室温で、5分間で暗所中の穴を培養する。直接に日光に曝すことを避ける。
半自動ピペットを用いて100μlの停止溶液(1規定の硫酸)を各穴に添加する。
マイクロプレート読取器を用いて450nmで上記溶液の吸光度を測定する。
【0019】
計算結果:
標準品、対照物あるいは被験血漿を含む穴ごとに平均吸光度を計算する。
x軸(一次)にとったNT−proBNP濃度(pg/ml)に対するy軸(二次)にとった標準品のグラフに平均吸光度をプロットする。
正副の点の平均を通過するように、最適な標準曲線を引く。
上記標準曲線に書き入れることによって、被験血漿および対照物の各NT−proBNP濃度を確認する。
被験血漿試料の読みは、最も低い標準品より低いものとして報告されるべきである。
これに代えて、コンピュータプログラムは、エライサタイプのデータを取り扱って被験血漿および対照物の各NT−proBNP濃度を評価するのに使用されてもよい。
次のデータは、この検定法を用いて用量反応曲線例を示すものである。
【0020】
【表1】

注意:上記値は、標準曲線に代えて使用されるべきではなく、検定時に調製されるべきである。
【0021】
特徴的性能
標準品の品質管理を保証するために、上記キット内に用意され、低品質および高品質を示す2つの対照物が各検定法において分析されなければならない。各研究所が各検定例の変動用に追加の対照物を使用することが推奨される。
ヤギポリクローナル6G11モノクローナルエライサ検定用のNT−proBNP臨床データの概要
データは、融合性心不全(NYHAのクラスIIIおよびクラスIV)であると診断された209人の被験者および101人の健常者対照被験者から提供されている。受信者動作特性(ROC)曲線は図2に示されており、0.974の曲線下領域(AUC)はこれに対応する0.008の標準誤差(s.e.)を含むようにして得られた。図3は、対照被験者および心不全被験者におけるNT−proBNPのボックスプロットを示すものであり、上記心不全被験者に関する診断感度は90.4%(カットオフ上の上記NT−proBNPを有する被験者209人中189人)であり、上記対照被験者に関する診断感度は94.1%(カットオフ下の上記NT−proBNPを有する被験者101人中95人)であった。
【0022】
他のNT−proBNPおよびBNP検定との比較:
バイオサイトトリアージBNP検査への生成挿入物(トリアージ(Triage)(著作権)脳ナトリウム排泄増加性ペプチド(BNP)検査、生成挿入物、バイオサイト診断社(Biosite Diagnostics, Inc.)、2001年)において、804人の心不全被験者および1286人の対照被験者から得られた臨床データにおける受信者動作特性(ROC)曲線の分析は、0.955の曲線下領域(AUC)(標準誤差=0.0053)を示した。ヘンリー(Hanley)およびマクニール(McNeil)(ヘンリー(Hanley) JAおよびマクニール(McNeil) Jの手順(1982年)「受信者動作特性(ROC)曲線下の領域の意図および用途」放射線医学(Radiology)第143巻、29頁〜36頁)に続けて、ここに開示されたNT−proBNP検定の曲線下領域(AUC)と上記曲線下領域(AUC)を比較すると、ここに開示されたNT−proBNP検定が優れた診断特性を示す、著しく高い曲線下領域(AUC)(p<0.001)を有することが分かる。
【0023】
フィッシャー(Fischer)ら(フィッシャー(Fischer) Y、フィルツマイア(Filzmaier) K、スチーグラー(Stiegler) H、グラフ(Graf) J、フース(Fuhs) S、フランク(Franke) A、ジャンセンス(Janssens) Uおよびグレスナー(Gressner) AM(2001年)、「脳ナトリウム排泄増加性ペプチドの定量に関する新規で高速ベッドサイド検査」、臨床化学第47巻、591頁〜594頁)は、潜在的な心臓疾患および疑わしい心不全を患う93人の被験者に関するロッシュ診断に由来するNT−proBNP検査に上記トリアージBNP検査を比較したデータ特性を与えた。心室機能を低下させた被験者を、心室機能を維持した被験者から識別する際に、0.91(標準誤差±0.033)の曲線下領域(AUC)が上記トリアージBNP検査で得られ、0.86(標準誤差±0.040)の曲線下領域(AUC)がロッシュNT−proBNP検定で得られた。同一ケース由来の曲線下領域(AUC)を比較し、NT−proBNP検定がロッシュNT−proBNP検定(p<0.005)よりも著しく高い曲線下領域(AUC)を有することが分かる、ヘンリーおよびマクニール(ヘンリー(Hanley) JAおよびマクニール(McNeil) BJ)の手順(1983年)「同一ケース由来の受信者動作特性(ROC)曲線下の領域を比較する方法」放射線医学第148巻、839頁〜843頁)に続けて、r=0.947の2つの神経ホルモン測定値間の報告された相関関係が与えられた。
【0024】
ハーメル・レチェ(Hammerer−Lercher)ら(ハーメル・レチェ(Hammerer−Lercher) A、ニューバル(Neubauer) E、ミューラ(Muller) S、パチンゲル(Pachinger) O、プチェンドル(Puschenodorf) Bおよびメイア(Mair) J(2001年)、「診断中の左心室機能不全における脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のN末端、脳ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび動脈ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のN末端の競合比較」、臨床化学第310巻、193頁〜197頁)は、安定した慢性心不全を患う57人の患者の同一人数に関して、シオノギIMRA BNP検定を、生物医学EIANT−proBNP検定と比較した。心室機能を低下させた被験者を、心室機能を維持した被験者から識別する際に、0.75(標準誤差±0.06)の曲線下領域(AUC)が上記BNP検査で得られ、0.67(標準誤差±0.07)の曲線下領域(AUC)が生物医学NT−proBNP検定で得られた。ヘンリー(Hanley)およびマクニール(McNell)(ヘンリー(Hanley) JAおよびマクニール(McNeil) BJ)の方法(1983年)「同一ケース由来の受信者動作特性(ROC)曲線下の領域を比較する方法」放射線医学(Radiology)第148巻、839頁〜843頁)に続けて、シオノギBNP検定が生物医学NT−proBNP検定よりも著しく高い曲線下領域(AUC)を有することが分かる、
【0025】
ルヒナー(Lercher)ら(ルヒナー(Lercher) A、ヘングステンベルグ(Hengstenberg) C、ロウエル(Lowel) H、トランスキ(Trawinski) J、バウマン(Baumann) M、リーゲル(Riegger) G、シュンカールト(Schunkekrt) Hおよびホルマー(Holmer) S(2002年)、「心筋梗塞後の脳ナトリウム排泄増加性ペプチド前駆体のN末端」、高血圧症(Hypertension)第39巻、99頁〜104頁)は、594人の心筋梗塞被験者および449人の健常被験者を含む被験者中において、心室機能を低下させた被験者を予測するロシュEIA NT−proBNP検定の機能を確定するために大規模臨床研究を行った。上記作成者は、35%未満の左心室駆出率を有する被験者を、より高い駆出率の被験者から識別する際に、NT−proBNPに関する0.77(標準誤差±0.057)の曲線下領域(AUC)を引用した。この曲線下領域(AUC)は、ここに開示されたNT−proBNP検定(p=0.0001)に関して引用されたものより著しく低い。
したがって、曲線下領域(AUC)分析を基準にしてNT−proBNPの存在を確認するための種々の利用可能な検定の定量化に基づいて、この発明の検定法は優れた診断特性を示すことが期待される。
【0026】
この明細書に記述された全ての特許および刊行物は、この発明の属する技術分野における当業者のレベルで示されている。全ての特許および刊行物は、仮に各刊行物が参照することによって組み込まれるように詳細にかつ個別的に示された場合に、参照することによってこの明細書に組み込まれる。
この発明の特定の形態が示されているが、この明細書に記述されかつ示された特定の形態あるいは配置に限定されるものではないことは理解されるべきである。この発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされてもよく、この明細書に示されかつ記述された事柄に限定されるものとみなされるべきではないことは、この技術分野における当業者にとって明白なことである。この技術分野における1人の当業者は、この発明が、目的を実行し、本来の目的および利点ばかりでなく、上述した目的および利点を得るのに適していることは容易に正当評価されるはずである。この明細書に記述された実施の形態、方法、手順および技術は、好適な実施の形態の現在、代表的なものであり、当該実施の形態は実施例と意図されたものであり、その実施例の範囲に限定されるものとして意図されたものではない。その変更および他の用途は、この発明の精神の範囲内に包含されかつ添付の請求項の範囲によって規定されたものと、この技術分野における当業者が考えるはずである。この発明が特定の好適な実施の形態に関連して記述されたが、請求項に記述された発明が上記特定の実施の形態に必要以上に限定されるべきでないと理解されるべきである。実際は、この技術分野における当業者にとって明白であり、この発明を実施するための記述されたモードの種々の修正は、次の請求項の範囲内にあるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】proBNP前駆蛋白質から開始するNT−proBNPおよび標的ペプチドを選択する方法を示す図である。
【図2】ヤギポリクローナル/6G11モノクローナル検定法の受信者動作特性(ROC)曲線を示すグラフである。
【図3】対照量に対するNYHAのクラスIIIおよびIVにおけるNT−proBNP量を示すボックス図である。
【図4】年齢によって階層化された対照被験者におけるNT−proBNP量のボックス図である。
【図5】この発明のヤギポリクローナル/6G11モノクローナル検定法を利用するエライサ手順の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うっ血性心不全を患う患者を診断し、階層化し、その死亡率の予測に有用な酵素結合免疫吸着検査法(エライサ)であって、配列番号1のアミノ酸1〜25、配列番号1のアミノ酸26〜51および配列番号1のアミノ酸52〜76からなる群より選択されたアミノ酸配列に特異的な分離ポリクローナル抗体を採取するステップと、上記群より1つのポリクローナル抗体を選択しかつ上記ポリクローナル抗体を固形支持体に付着させ、NT−proBNPの免疫原フラグメントを含む疑わしい臨床サンプルを上記分離ポリクローナル抗体に反応させるステップと、上記ポリクローナル抗体によって認識されたアミノ酸配列とは別で異なるアミノ酸配列を認識するものとして選択されたモノクローナル検知抗体を与えるステップと、免疫反応を引き起こすステップと、上記免疫反応を検出するステップを含む、検定法。
【請求項2】
上記ポリクローナル抗体は、配列番号1のアミノ酸26〜51からなるアミノ酸配列に特異的なものとして選択されている、請求項1記載の検定法。
【請求項3】
上記ポリクローナル抗体は、配列番号1のアミノ酸52〜76からなるアミノ酸配列に特異的なものとして選択されている、請求項1記載の検定法。
【請求項4】
上記ポリクローナル抗体は、ATCC#PTA−4844に対応しかつ配列番号1のアミノ酸1〜25からなるポリペプチドに特異的なハイブリドーマ細胞系6G11−F11−D12から生成されている、請求項1記載の検定法。
【請求項5】
上記ポリクローナル抗体は、ATCC#PTA−4845に対応しかつ配列番号1のアミノ酸1〜25からなるポリペプチドに特異的なハイブリドーマ細胞系1C3−E11−H9から生成されている、請求項1記載の検定法。
【請求項6】
上記検出ステップは直接的である、請求項1記載の検定法。
【請求項7】
上記検出ステップは間接的である、請求項1記載の検定法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−521535(P2006−521535A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570255(P2004−570255)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001771
【国際公開番号】WO2004/046194
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504198957)シン.クス ファーマ、インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】