説明

Oリング装着治具及びこれを用いたOリング装着方法

【課題】開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための簡便で初期コストの格段に安価なOリング装着治具を提供する。
【解決手段】開孔部11の内周方向に設けられたOリング溝12にOリングを装着するための治具であって、前記開孔部11中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部11に挿入可能な外径d1を有し、かつ前記開孔部底面11aから前記Oリング溝下12aまでの高さH1に略等価な高さh1を有する支持部材1と、前記開孔部11に挿入可能な外径d2を有し、かつ前記Oリング溝上12bから前記開孔部上面11bまでの高さH2より突出する高さh2を有する押込部材2とからなるOリング装着治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための簡便で安価な治具及びこれを用いたOリング装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部材に開孔部が設けられると共に、この開孔部内壁の内周方向にOリング溝が設けられ、前記Oリング溝にOリングを嵌め込むとき、この開孔部径が大きく手を入れることが可能な場合は、治具や装置を用いない手作業でも比較的簡単にOリングを装着可能であるが、前記開孔部内径が小さい場合は、手作業のみでOリングを装着するのは非常に難しい。
【0003】
ところで、OリングをOリング溝へ装着する方法や装置は、軸外周に設けられたOリング溝にOリングを装着する場合は、従来より種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。一方、上記の如く部材に開孔部が設けられると共に、この開孔部内壁の内周方向にOリング溝が設けられ、前記Oリング溝にOリングを嵌め込む方法や装置については従来よりの提案は少なく、例えば、下記に添付図7を用いて説明するOリング組付け装置がある。図7は、従来例に係るOリング組付け装置の一部切欠側面図である。
【0004】
この従来例に係るOリング組付け装置は、Oリング装着孔25の内周面に形成された環状溝24にOリングRを組付けるために、OリングRを保持する円筒状の保持部材21と、OリングRを保持した前記保持部材21を前記Oリング装着孔25に対して挿抜移動させるエアーシリンダ22とを備えたOリング組付け装置であって、前記保持部材21は、その外周にOリング装着溝26を備えると共に、前記Oリング装着溝26内に挿入されたOリングRの一部を係止して、前記保持部材21を前記Oリング装着孔25に対して挿抜移動させる方向と同方向に移動する係止部材23を備えている。
【0005】
そして、前記係止部材23を移動させることにより、前記OリングRの一部を前記Oリング装着孔25に対して挿抜移動させる方向と同方向に屈曲形成して、該OリングRを前記Oリング装着孔25に挿入できる程度に縮径させると共に、前記係止部材23は、円筒状に形成された前記保持部材21の外周面に形成した案内溝に沿ってスライド可能に嵌入されており、該係止部材23の外周面を前記保持部材21の外周面とほぼ面一としたものである(特許文献4参照)。
【特許文献1】実開昭63−169223号のマイクロフィルム
【特許文献2】実公平6−47177号公報
【特許文献3】特許第2797966号公報
【特許文献4】特許第3366944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例に係るOリング組付け装置は、OリングRをOリング装着孔5に挿入できる程度に縮径させることまで考慮されているため、Oリング装着時に前記OリングRのこじれを生じることがないというものの、装置全体が複雑な構造を有する初期コストの高価なものである上、エアーシリンダ等により圧縮空気を消費するのでランニングコストも発生する。
【0007】
従って、本発明の目的は、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための簡便で初期コストの格段に安価なOリング装着治具、及びこれを用いたランニングコストを生じないOリング装着方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るOリング装着治具が採用した手段は、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための治具であって、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記開孔部底面から前記Oリング溝の溝下までの高さに略等価な高さを有する支持部材と、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記Oリング溝の溝上から前記開孔部上面までの高さより突出する高さを有する押込部材とからなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係るOリング装着治具が採用した手段は、請求項1に記載のOリング装着治具において、前記支持部材の上面が、円状または円環状の水平面に形成されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係るOリング装着治具が採用した手段は、請求項1または2に記載のOリング装着治具において、前記押込部材の下面が、円状または円環状の水平面もしくはテーパ面に形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係るOリング装着治具が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載のOリング装着治具において、前記支持部材の上面に上下方向に伸びる棒状部が設けられる一方、前記押込部材の上下方向に前記棒状部が挿入可能な貫通孔が設けられてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るOリング装着方法が採用した手段は、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着する方法であって、前記請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載のOリング装着治具を用い、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に支持部材を挿入した後、前記開孔部からOリングを挿入して、前記支持部材上面に前記Oリングの一部下面を支持されつつ前記Oリング溝に部分的に差し込み、次いで前記開孔部から前記押込部材を押し込んで前記Oリング溝に嵌め込むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係るOリング装着治具によれば、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための治具であって、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記開孔部底面から前記Oリング溝の溝下までの高さに略等価な高さを有する支持部材と、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記Oリング溝の溝上から前記開孔部上面までの高さより突出する高さを有する押込部材とからなるので、簡便で初期コストの格段に安価なOリング装着治具を提供し得る。
【0014】
また、本発明の請求項2に係るOリング装着治具によれば、前記支持部材の上面が、円状または円環状の水平面に形成されてなるので、前記Oリングを指先で把持して前記開孔部に部分的に差し込もうとする際、この開口部に挿入された前記Oリングの下端の一部を前記支持部材の上面で受け止め、Oリング溝方向へ案内するよう作用し得る。
【0015】
更に、本発明の請求項3に係るOリング装着治具によれば、前記押込部材の下面が、円状または円環状の水平面もしくはテーパ面に形成されてなるので、前記開孔部に挿入されOリング溝に部分的に差し込まれた前記Oリングの上端を前記押込部材の下面で押し込む際、前記Oリング溝方向へ案内するよう作用し得る。
【0016】
また更に、本発明の請求項4に係るOリング装着治具によれば、前記支持部材の上面に上下方向に伸びる棒状部が設けられる一方、前記押込部材の上下方向に前記棒状部が挿入可能な貫通孔が設けられてなるので、前記支持部材に設けられた棒状部を指で把持して、この支持部材を前記開口孔に挿入し前記Oリングを装着し得る一方、前記棒状部を把持して引き抜くことによって容易に前記支持部材を抜取り得るため、前記支持部材の前記開口孔への挿入及び抜取りの作業性が改善される。
【0017】
一方、本発明の請求項5に係るOリング装着方法によれば、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着する方法であって、前記請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載のOリング装着治具を用い、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に支持部材を挿入した後、前記開孔部からOリングを挿入して、前記支持部材上面に前記Oリングの一部を支持されつつ前記Oリング溝に部分的に差し込み、次いで前記開孔部から前記押込部材を押し込んで前記Oリング溝に嵌め込むので、簡便な方法によってランニングコストを生じることなく前記OリングのOリング溝への装着が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
先ず、本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具について、以下添付図1,2を参照しながら説明する。図1は本発明の対象とするOリング溝を説明するための縦断面図であり、図(a)は開孔部が非貫通孔の場合、図(b)は開孔部底面に連通孔を有する場合、図(c)は開孔部が貫通孔の場合を夫々示す。図2は本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具を示し、図(a)は図1(a)のOリング溝に対応するOリング装着治具を説明するための縦断面図、図(b)は図1(c)のOリング溝に対応するOリング装着治具を説明するための縦断面図である。
【0019】
本発明の対象とするOリング溝12は、部材10に形成された開孔部11にOリングを装着するため内周方向に設けられたものであって、図1(a)に示す如く非貫通の開孔部11の内周方向に設けられたOリング溝12、同図(b)に示す如く底面11aに連通する連通孔13を有する開孔部11の内周方向に設けられたにOリング溝12、或いは同図(c)に示す如く貫通する開孔部11の内周方向に設けられたにOリング溝12等、特に開孔部11の構成に限定されるものではない。
【0020】
以降、上記何れの構成に係る部材10の開孔部11においても、この開孔部11の中心を上下方向に向けた状態で、前記開孔部11の内径をD1、開孔部底面11aからOリング溝12の溝下12aまでの高さをH1、Oリング溝12の溝幅をw、このOリング溝12の溝上12bから前記開孔部11の上面11bまでの高さをH2と表すこととする。但し、上記何れの構成の部材10においても、これらの符号D1,H1,w及びH2が同一符号であるとしても、必ずしも等価であることを意味するものではない。
【0021】
そして、本発明に係るOリング装着治具は、上記何れの構成に係る開孔部11であっても、これら開孔部11の内周方向に設けられたOリング溝12にOリングが装着可能な装着治具である。即ち、図1(a)及び(b)に示すOリング溝12に対応する本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具1は、図1(a)に対応した図として代表的に示す図2(a)に示す如く、部材10に形成された開孔部11の中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部11に事前に挿入される支持部材1と、後述する如くOリング溝12に部分的に差し込まれた図示しないOリングを、前記Oリング溝12に押し込むための押込部材2とからなる。
【0022】
前記支持部材1の外径d1は、前記開孔部11の内径D1未満(即ち、d1<D1)であって、前記開孔部11に挿入可能に形成されると共に、次式(1)を満足するものであることが肝要である。
(D1−d1)<w (1)
支持部材2の外径d1が上式(1)を満足すれば、Oリングを前記Oリング溝12に装着する際、前記開口部11の内周とこの支持部材1の外周間の隙間に、前記Oリングが嵌まり込む恐れがないためである。
【0023】
同時に、前記支持部材2の高さh1は、前記開孔部11の底面11aからOリング溝下12aまでの高さH1に略等価に形成されている。ここで、前記支持部材1の高さh1がH1と略等価な高さとは、前記支持部材11の高さh1が、H1に対してOリング溝幅w寸法の±20%以内の差異であれば等価と見做すことを意味している。
【0024】
そして、前記支持部材1の上面1aは、円状の水平面に形成されているのが好ましい。前記支持部材上面1aが円状の水平面であると、Oリングを把持して開孔部11に挿入した際に、前記Oリングの下端の一部を前記支持部材上面1aで受け止め、Oリング溝12方向へ案内する作用を有するからである。
【0025】
一方、前記押込部材2の外径d2も前記支持部材1と同様、前記開孔部11の内径D1未満(即ち、d2<D1)であって、前記開孔部11に挿入可能に形成されると共に、前記支持部材1と同一の理由により、次式(2)を満足するものであることが肝要である。
(D1−d2)<w (2)
同時に、前記押込部材2の高さh2は、前記Oリング溝上12bから前記開孔部上面11bまでの高さH2より突出する高さ(h2>H2)に形成されるのが、この押込部材2を把持して取り扱う点から好ましい。
【0026】
ここで、前記押込部材2は、その外径d2を全高h2に亘って同一とすることなく、上部にd2より小径の取っ手部2aを形成されたものが、この押込部材2を把持して取り扱う点から更に好ましい。
【0027】
また、前記押込部材2の下面2bも、円状の水平面に形成されているのが好ましい。前記押込部材下面2bが円状の水平面であると、前記開孔部11に挿入されOリング溝12に部分的に差し込まれた前記Oリングを前記押込部材2の下面2bで押し込んだ際、前記Oリング溝12方向へ案内する作用を有するからである。
【0028】
更に、図1(c)に示すOリング溝12に対応する本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具は、図2(b)に示す如く、部材10に形成された開孔部11の中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部11に挿入される支持部材1と、前記Oリング溝12に部分的に差し込まれた図示しないOリングを押し込むための押込部材2とからなる。そして、前記支持部材1及び押込部材2に関する特徴的な事項は、図2(a)を用いて説明した上記と全く同一であるため省略する。
【0029】
ここで、前記支持部材1及び押込部材2のその他の態様例について、添付図3,4を参照しながら説明する。図3は本発明の実施の形態1に係る支持部材の他の態様例を説明するための縦断面図、図4は本発明の実施の形態1に係る押込部材の他の態様例を説明するための縦断面図である。
【0030】
前記支持部材1としては、図2において説明した様な円柱形状以外、図3に示す如く、円筒形状(同図(a)参照)、有底逆円筒形状(同図(b)参照)、底面に開孔部を有する有底逆円筒形状(同図(c)参照)、T字断面形状(同図(d)参照)等が適用可能である。そして、前記支持部材1の構成上、その上面1aが、図(b)及び(d)の如く円状、または図(a)及び(c)の如く円環状の水平面に形成されているのが好ましい。前記支持部材上面1aが円状または円環状の水平面であると、前記Oリングを把持して開孔部11に挿入した際に、前記Oリングを前記支持部材上面1aで受け止め、Oリング溝12方向へ案内する作用を有するからである。
【0031】
また、前記押込部材2としては、図2において説明した様な逆T字断面形状以外、図4に示す如く、その下面2bが円状で中心方向に下降するテーパ面を有する逆T字断面形状(同図(a)参照)、円筒形状(同図(b)参照)、有底円筒形状(同図(c)参照)、底面に開孔部を有する有底円筒形状(同図(d)参照)等が適用可能である。そして、前記押込部材2の構成上、その下面2bが、図(a)及び(c)の如く円状、または図(b)及び(d)の如く円環状の水平面またはテーパ面に形成されているのが好ましい。
【0032】
前記押込部材下面2bが円状または円環状の水平面もしくはテーパ面であると、前記開孔部11に挿入されOリング溝12に部分的に差し込まれた前記Oリングを前記押込部材下面2bで押し込んだ際、前記Oリング溝12方向へ案内する作用を有するからである。
【0033】
前記押込部材下面2aをテーパ面に形成する態様は、その下面2aが円状に形成された図(a)または(c)だけでなく、下面2aが円環状に形成された図(b)または(d)でも適用可能である。また、前記押込部材2には、図2や図4(a)に示す如く、取っ手部2aが形成されたものが手の指で把持し易いので好ましいが、外径d2が小さいものでは必ずしも形成する必要はない。
【0034】
以上の通り、本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具によれば、前記開孔部11中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部11に挿入可能な外径d1を有し、かつその高さh1が、前記開孔部底面11aから前記Oリング溝下12aまでの高さH1に略等価な支持部材1と、前記開孔部11に挿入可能な外径d2を有し、かつ前記Oリング溝上12bから前記開孔部上面11bまでの高さH2より突出する高さh2を有する押込部材2とからなるので、簡便で初期コストの格段に低いOリング装着治具を提供し得る。
【0035】
次に、本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具を用いたOリング装着方法について、以下添付図5を参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具を用いた装着工程を示す縦断面図であり、図(a)は支持部材の挿入工程、図(b)はOリングの差込工程、図(c)はOリングの押込工程、図(d)は装着治具の抜取工程を示す。
【0036】
本発明の実施の形態1に係るOリング装着方法は、先ず、部材10に形成された開孔部11中心を上下方向に向けた状態において、Oリング装着治具の一つである支持部材1の外周を把持して、前記開孔部11に上方より挿入する(図5(a)参照)。
【0037】
次いで、Oリング3を手の指で把持して前記開孔部11から挿入して、この開孔部11に挿入した前記支持部材上面1aに前記Oリング3の円周上の一部を支持されつつ、前記Oリング溝12に部分的に差し込む(図5(b)参照)。
【0038】
その後、押込部材2の取っ手部2aを把持して前記開孔部11から押し込んで、前記Oリング3のOリング溝12への未嵌入部を、溝方向に移動させて前記Oリング溝12に嵌め込む(図5(c)参照)。
【0039】
前記Oリング溝12へのOリング3の装着が完了したら、押込部材2の取っ手部2aを把持して前記開孔部11から抜き取る。最後に、部材10を上下逆向きにして、支持部材1をその自重により前記開孔部11から抜き取ってOリング装着作業を完了する(図5(d)参照)。
【0040】
この様に、本発明の実施の形態1に係るOリング装着方法によれば、前記開孔部11の中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部11に支持部材1を挿入した後、前記開孔部11からOリング3を挿入して、前記支持部材上面1aに前記Oリング3の一部下面を支持されつつ前記Oリング溝12に部分的に差し込み、次いで前記開孔部11から前記押込部材2を押し込んで前記Oリング溝12に嵌め込むので、簡便な方法によってランニングコストを生じることなく、前記Oリング3のOリング溝12への装着が可能となった。
【0041】
次に、本発明の実施の形態2に係るOリング装着治具及びこれを用いた装着方法について、以下添付図6を参照しながら説明する。図6は本発明の実施の形態2に係るOリング装着治具及びこれを用いた装着工程を説明するための縦断面図であり、図(a)は支持部材の挿入工程、図(b)はOリングの差込工程、図(c)はOリングの押込工程、図(d)は嵌入治具の抜取工程を示す。
【0042】
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、支持部材と押込部材の構成及びこれらを用いた装着方法の一部に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0043】
即ち、上記実施の形態1に係るOリング装着治具の支持部材1が、図2に示す円柱状の部材或いは図3に示す他の態様の部材から構成されているのに対し、本実施の形態2の支持部材1には、その上面1aに上下方向に伸びる棒状部4が設けられている。また、上記実施の形態1に係るOリング装着治具の押込部材1が、図2に示す逆T字断面状の部材或いは図3に示す他の態様の部材から構成されているのに対し、本実施の形態2の押込部材2には、その上下方向に前記棒状部1bが挿入可能な貫通孔5が設けられている。
【0044】
そして、上記実施の形態1に係るOリング装着方法では、支持部材の挿入工程において、支持部材1の外周を把持して上方より挿入するのに対し、本実施の形態2のOリング装着方法は、支持部材の挿入工程において、部材10に形成された開孔部11中心を上下方向に向けた状態において、支持部材上面1aに設けられた棒状部4を把持して、前記開孔部11に上方より挿入する(図6(a)参照)。
【0045】
また、上記実施の形態1に係るOリング装着方法では、Oリングの押込工程において、押込部材2の取っ手部2aを把持して前記開孔部11から押し込んで、Oリング溝12に前記Oリング3の未嵌入部を嵌め込むのに対し、本実施の形態2のOリング装着方法は、Oリングの押込工程において、押込部材2の取っ手部2aを把持して、前記支持部材に設けられた棒状部4に押込部材2の貫通孔5を差し込み、部材10の開孔部11から押し込んで、前記Oリング3の未嵌入部を溝方向に移動させて前記Oリング溝12に嵌め込む(図6(c)参照)。
【0046】
更に、上記実施の形態1に係るOリング装着方法では、装着治具の抜取工程において、押込部材2の取っ手部2aを把持して前記開孔部11から抜き取った後、部材10を上下逆向きにして、支持部材1の自重により前記開孔部11から抜き取るのに対し、本実施の形態2のOリング装着方法は、装着治具の抜取工程において、押込部材2の取っ手部2aを把持して前記開孔部11から抜き取り、次いで、支持部材1の棒状部4に沿って上方に持ち上げて押込部材2を外し取った後、前記支持部材1の棒状部4を把持して前記開孔部11から抜き取る(図6(d)参照)。
【0047】
本発明の実施の形態2に係るOリング装着治具によれば、前記支持部材上面1aに上下方向に伸びる棒状部4が設けられる一方、前記押込部材2の上下方向に前記棒状部4が挿入可能な貫通孔5が設けられてなるので、前記支持部材1に設けられた棒状部4を指で把持して、この支持部材1を前記開口孔11に挿入或いは取出しできるので、前記支持部材1の前記開口孔11への挿入或いは取出しの作業性が改善された。
【0048】
以上説明した通り、本発明に係るOリング装着治具によれば、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための治具であって、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつその高さが前記開孔部底面から前記Oリング溝の溝下までの高さに略等価な支持部材と、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記Oリング溝の溝上から前記開孔部上面までの高さより突出する高さを有する押込部材とからなるので、簡便で初期コストの格段に安価なOリング装着治具を提供し得る。
【0049】
一方、本発明に係るOリング装着方法によれば、開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着する方法であって、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に支持部材を挿入した後、前記開孔部からOリングを挿入して、前記支持部材上面に前記Oリングの一部を支持されつつ前記Oリング溝に部分的に差し込み、次いで前記開孔部から前記押込部材を押し込んで前記Oリング溝に嵌め込むので、簡便な方法によってランニングコストを生じることなく前記OリングのOリング溝への装着が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の対象とするOリング溝を説明するための縦断面図であり、図(a)は開孔部が非貫通孔の場合、図(b)は開孔部底面に連通孔を有する場合、図(c)は開孔部が貫通孔の場合を夫々示す。
【図2】本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具を示し、図(a)は図1(a)のOリング溝に対応するOリング装着治具を説明するための縦断面図、図(b)は図1(c)のOリング溝に対応するOリング装着治具を説明するための縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る支持部材の他の態様例を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る押込部材の他の態様例を説明するための縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るOリング装着治具を用いた装着工程を示す縦断面図であり、図(a)は支持部材の挿入工程、図(b)はOリングの差込工程、図(c)はOリングの押込工程、図(d)は装着治具の抜取工程を示す。
【図6】本発明の実施の形態2に係るOリング装着治具及びこれを用いた装着工程を説明するための縦断面図であり、図(a)は支持部材の挿入工程、図(b)はOリングの差込工程、図(c)はOリングの押込工程、図(d)は嵌入治具の抜取工程を示す。
【図7】従来例に係るOリング組付け装置の一部切欠側面図である。
【符号の説明】
【0051】
D1:開孔部内径,
H1:開孔部底面からOリング溝下までの高さ,
H2:Oリング溝上から開孔部上面までの高さ,
h1:支持部材の高さ, d1:支持部材の外径,
h2:押込部材の高さ, d2:押込部材の外径,
w:Oリング溝幅,
1:支持部材, 1a:支持部材上面,
2:押込部材, 2a:取っ手部, 2b:押込部材下面,
3:Oリング, 4:棒状部, 5:貫通孔,
10:部材,
11:開孔部, 11a:開孔部底面, 11b:開孔部上面,
12:Oリング溝, 12a:Oリング溝下, 12b:Oリング溝上,
13:連通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着するための治具であって、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、
かつ前記開孔部底面から前記Oリング溝の溝下までの高さに略等価な高さを有する支持部材と、前記開孔部に挿入可能な外径を有し、かつ前記Oリング溝の溝上から前記開孔部上面までの高さより突出する高さを有する押込部材とからなることを特徴とするOリング装着治具。
【請求項2】
前記支持部材の上面が、円状または円環状の水平面に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のOリング装着治具。
【請求項3】
前記押込部材の下面が、円状または円環状の水平面もしくはテーパ面に形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のOリング装着治具。
【請求項4】
前記支持部材の上面に上下方向に伸びる棒状部が設けられる一方、前記押込部材の上下方向に前記棒状部が挿入可能な貫通孔が設けられてなることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載のOリング装着治具。
【請求項5】
開孔部の内周方向に設けられたOリング溝にOリングを装着する方法であって、前記請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載のOリング装着治具を用い、前記開孔部中心を上下方向に向けた状態において、前記開孔部に支持部材を挿入した後、前記開孔部からOリングを挿入して、前記支持部材上面に前記Oリングの一部下面を支持されつつ前記Oリング溝に部分的に差し込み、次いで前記開孔部から前記押込部材を押し込んで前記Oリング溝に嵌め込むことを特徴とするOリング装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43717(P2010−43717A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209989(P2008−209989)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】