説明

ORP計の管理方法

【課題】ORP計の出力が低下した場合に、出力を容易かつ速やかに回復させることができるORP計の管理方法を提供する。
【解決手段】水系と接しているORP計を間欠的に還元処理した該ORP計の出力を回復させる還元処理は、還元剤水溶液とORP計とを接触させる処理又はORP計と亜鉛などの卑金属電極とを導通させる処理が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はORP(酸化還元電位)計の出力を回復させるORP計の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水系に次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素などの酸化剤を添加し、水中の有機物を分解したり、膜分離装置の膜のバイオファウリングを防止したりすることが広く行われている(特許文献1〜3)。特許文献3には、水中の残留次亜塩素酸濃度の測定にORP計を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−191086
【特許文献2】特開2011−50843
【特許文献3】特開2000−221165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ORP計を水系に連続的に接触させてORPを計測すると、酸化剤濃度が一定であるにも拘わらずORP計の出力が徐々に低下することがある。この出力低下の原因はORP計の電極表面における酸化物皮膜の生成に起因すると考えられている。
【0005】
従来は、ORP計の出力が低下してきた場合、ビーズなどを用いて電極表面を研磨する対策がとられることがあるが、手間がかかると共に、電極を損傷させることもある。
【0006】
本発明は、ORP計の出力が低下した場合に、出力を容易かつ速やかに回復させることができるORP計の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のORP計の管理方法は、水系と接しているORP計を間欠的に還元処理して該ORP計の出力を回復させることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のORP計の管理方法は、請求項1において、前記還元処理は、還元剤水溶液とORP計とを接触させる処理であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のORP計の管理方法は、請求項1において、前記還元処理は、ORP計と卑金属電極とを導通させる処理であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のORP計の管理方法では、出力が低下したORP計を還元処理することにより、その出力を回復させる。この方法は簡便であり、しかも出力を速やかに回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の結果を示すグラフである。
【図3】比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、水系に接しているORP計を間欠的に還元処理して該ORP計の出力を回復させる。
【0013】
この水系としては、上水、各種産業排水やその処理水、海水、開放循環冷却水系などが例示される。
【0014】
ORP計としては、特に限定されることなく各種のものが用いられる。ORP計は、通常白金電極を有しており、還元処理はこの電極に対して施される。
【0015】
還元処理としては、還元剤水溶液と電極とを接触させる方法が好適であるが、ORP計と卑金属電極とを導通させ、両者を水系に接触させ、卑金属電極表面で陽極酸化反応を進行させ、ORP計電極表面で陰極還元反応を進行させるという電気化学的還元処理を行ってもよい。
【0016】
還元剤水溶液を用いる場合、還元剤としてはヒドラジン、重亜硫酸ナトリウムなどの重亜硫酸塩、アルコルビン酸又はその塩、ハイドロサルファイト、チオグリコール酸塩などが挙げられる。還元剤水溶液の濃度は10〜100,000mg/L特に100〜5,000mg/L程度であればよく、還元剤水溶液との接触時間は1〜300min特に5〜60min程度であればよいが、これらに限定されない。なお、水系全体を還元剤含有状態としてもよいが、通常はORP計を取り出して還元剤水溶液と接触させるのが簡便で好適である。
【0017】
卑金属電極と導通させる場合、卑金属としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどが好適であり、処理時間は1〜1440min特に5〜180min程度が好適である。卑金属電極の面積は、ORP計の白金電極の面積の2〜10,000倍特に5〜5,000倍程度であることが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0019】
[比較例1]
電極面積78.5mmの白金電極を有したORP計((株)東興化学研究所製KM101−10)を冷却水系に接触させてORP計の出力(mV)を記録すると共に、該水系の水を採取してDPD法に従って次亜塩素酸濃度を測定した。結果を図3に示す。図3の通り、次亜塩素酸濃度は略一定であるのに対し、ORP計出力電圧は1週間で約100mVの割合で徐々に低下する。
【0020】
[実施例1]
比較例1と同様の水系において、1日1回、1回当り15min、ORP計と亜鉛電極とを水系に接した状態で導通させた。亜鉛電極の面積は3,160mmであり、ORP計の白金電極の面積の40.3倍である。結果を図1に示す。図1の通り、ORP計の出力は1週間にわたって一定となった。
【0021】
[実施例2]
比較例1と同様の水系において、1日1回、1回当たり5min、ORP計の白金電極を還元剤水溶液に接触させた。還元剤水溶液はヒドラジンの1,000mg/L水溶液である。結果を図2に示す。図2の通り、ORP計の出力は1週間にわたって一定となった。
【0022】
以上の実施例及び比較例より、本発明によるとORP計の出力低下を防ぎ、ORP計出力の較正を行うことなく精度の高いORP計測を行うことができることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系と接しているORP計を間欠的に還元処理して該ORP計の出力を回復させることを特徴とするORP計の管理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記還元処理は、還元剤水溶液とORP計とを接触させる処理であることを特徴とするORP計の管理方法。
【請求項3】
請求項1において、前記還元処理は、ORP計と卑金属電極とを導通させる処理であることを特徴とするORP計の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207965(P2012−207965A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72526(P2011−72526)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)