説明

PCV2抗原によるブタの処置

本発明は、a)抗PCV2抗体を有し、及び/又はb)1から22日齢の幼若豚である動物で、PCV2感染を治療若しくは予防するための方法、又はPCV2感染によって惹起されるか若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法に関し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む。好ましくは、当該動物はブタ又は幼若豚である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本出願は、米国特許出願60/870,311(2006年12月15日出願)(その教示および内容は参照により本明細書に含まれる)に関し優先権を主張する。
(配列表)本出願は、書類形式およびコンピュータ読み出し可能形式として配列表を含む(その教示および内容は参照により本明細書に含まれる)。本配列リストはまたWO06/072065に取り込まれたものと同一である。
(技術分野)
本発明は、ブタシルコウイルス2型(PCV2)抗原を含む免疫原性組成物を、抗PCV2特異抗体を有する動物で、臨床徴候の予防、重篤度の緩和、感染及び/又は臨床徴候発生の低下、及び種々の症状(疾患)の治療に使用することに関する。好ましくは、これら抗PCV-2特異抗体は移行抗体(maternal antibodies)である。
【背景技術】
【0002】
ブタシルコウイルス2型(PCV2)は、小さな(直径17−22nm)正二十面体のエンベロープをもたないDNAウイルスであり、一本鎖の環状ゲノムを含む。PCV2は、ブタシルコウイルス1型(PCV1)と約80%の配列同一性を共有する。しかしながら、PCV1(一般的に非病毒性である)とは対照的に、近年PCV2によるブタの感染は、ブタシルコウイルス関連疾患(PCVAD)(ブタシルコウイルス症(PCVD)としても知られている)と包括的に呼称される多数の症状と結びついている(Allan et al. 2006, IPVS Congress)。離乳後多器官系消耗症候群(PMWS)は、一般的にはPCVADの主要症状であると考えられている(Harding et al. 1997, Swine Health Prod, 5:201-203;Kennedy et al. 2000, J Comp Pathol, 122:9-24)。PMWSは5−18週齢のブタを冒す。PMWSは、臨床的には、るい痩(wasting)、皮膚の蒼白、発育不全(unthriftiness)、呼吸窮迫、下痢、黄疸(icterus)及び黄疸(jaundice)を特徴とする。いくらかの罹患ブタでは全症状の合併が明白であるが、一方、他の罹患ブタはこれら症状の1つ又は2つを有するのみである(Muirhead, 2002, Vet Rec, 150:456)。剖検時には、顕微鏡的及び肉眼的病巣がまた多数の組織及び器官に出現し、類リンパ系器官が病巣の好発部位である(Allan and Ellis, 2000, J Vet Diagn Invest, 12:3-14)。PCV2核酸又は抗原の量と顕微鏡的類リンパ病巣の重篤度との間で強い相関性が観察された。PCV2感染ブタの死亡率は80%に達しうる。PMWSに加えて、PCV2は、仮性狂犬病、ブタ生殖器及び呼吸器系症候群(PRRS)、グラッサー病(Glasser's disease)、ストレプトコッカス性髄膜炎、サルモネラ症、離乳後大腸菌症、食餌性肝症、及び化膿性気管支肺炎を含む他の種々の感染症と密接に結びついている。しかしながらこれまでの研究では、これらの臨床的症状のいずれが実際のところPCV2感染の直接的帰結であるのかは確認されていない。さらにまた、PCV2に対抗する活性物質によってこれら臨床徴候のいずれが効果的に緩和または治療されうるかは未だ不明である。
【0003】
DNAワクチンによるPCV2感染の治療アプローチが米国特許6,703,023号に記載されている。WO03/049703では、キメラ生ワクチンの製造が記載されてあり、前記ワクチンは、病原性PCV2株の免疫原性遺伝子がPCV-1骨格の一遺伝子に取って代わったPCV-1骨格を含んでいる。WO99/18214は、種々のPCV2株およびPCV2死菌ワクチン製造方法を提供している。しかしながら有効性データは報告されていない。有効なORF-2由来サブユニットワクチンがWO06/072065およびWO2007/028823で報告されている。そのようなワクチンのいずれも3週齢を超えるブタ類またはブタのワクチン接種/治療のために使用することが意図されている。これらのワクチンのいずれも、幼若豚(3または2週齢より若い)での使用については記載されていない。
母親に由来する免疫は、PCV2感染およびPCV2感染に付随する症状に対しある程度の防御を付与することが示された。この防御は力価依存であることが示され、力価が高ければ防御を示すが、低い力価は防御を示さない(McKeown et al. 2005, Clin Diagn Lab Immunol, 12:1347-1351)。離乳動物の平均抗体半減期は19.0日と概算され、集団内のPCV2-受動抗体消滅の幅は比較的広い(Opriessnig et al. 2004, J Swine Health Prod, 12:186-191)。10−12日齢で存在する受動的に獲得された低力価のPCV2抗体は、ほぼ4.9±1.2週齢で消滅することが判明し、中レベルの抗体はほぼ8.1±1.9週齢で消滅することが判明し、高レベルの抗体はほぼ11.1±2.5週齢で消滅することが判明した(Opriessnig et al. 2006, 37th Annual Meeting of the American Association of Swine Veterinarians)。衰退との時宜を得た厳密な相関関係においては、抗体力価は、仔豚がほぼ5週齢から12週齢のときに生じるPCVADの最初の臨床徴候の出現に対抗する(Allan et al. 2000, Vet Diagn Investigation, 12:3-14)。さらにまた、新生豚のリンパ節からPCV2が単離され(Hirai et al. 2001, Vet Record, 148:482-484)、防御能をもつ力価の移行抗体が存在しない場合、より幼若な仔豚でさえもPCVADに罹患しうることが示唆された。抗体力価と防御との間の明瞭な相関関係がスペインの野外試験で証明された。すなわち、7週齢の低い抗体力価を有するブタ(平均抗体力価1:100、範囲は0から1:320)は、より高い抗体力価を有する動物よりもその後の5週間にわたって有意に高い死亡率を示した(Rodriguez-Arrioja et al. Am J Vet Res, 63:354-367)。
【0004】
母親由来抗体は、ウイルス感染に対抗するある程度の防御を与え得るだけでなく(前記はしかしながら予測することができない)、免疫の有効性を損なうこともまた知られている。例えば、古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)に対する高力価の母親由来抗体は、CSFVワクチンに対する細胞媒介性及び液性免疫応答の両方を阻害するが、低力価のものは有意な影響を示さない(Suradhat and Damrongwatanapokin, 2003, Vet Microbiol, 92:187-184)。さらにまた、生PCV2ワクチンの場合、7または8週齢を超える仔豚に投与されるときは、移行抗体はその時点で大半が衰退しているために、それらワクチンは非常に有効に働くことが予想された。移行抗体の干渉は誘引される免疫応答のタイプ(Th1対Th2)によって影響される(免疫応答は、(とりわけ)ワクチンのタイプ、抗原のタイプ、アジュバントのタイプとともに投与抗原量に左右される)。結果として、起こりうる移行抗体の干渉は、たとえワクチンが同じ病原体に対して防御力を示すとしてもワクチンについて多様である可能性がある。総合すれば、母親由来抗PCV2抗体はPCV2に対抗するある程度の防御を付与することができるが、他方でこれらの抗体はいずれのPCV2ワクチンの有効性も損なう可能性がある。
【0005】
能動免疫による動物の防御は、a)母親由来抗体(MDA)の消滅時間が動物間で変動し、さらにb)多くの疾患が抗体消滅後まもなく出現するという事実によりさらに複雑なものとなる。この問題と向き合うために、種々のワクチン戦略で、幼若動物のための2接種ワクチン法が想定されている。すなわち最初のワクチン接種はMDAが低い動物を防御するために出生後初期に投与される。この最初のワクチン接種は、ワクチン抗原との干渉のためにMDA力価が高い動物では有効でない可能性は容認される。これらの動物もまた防御するために、高いMDAレベルが低下したと予想されるとき第二のワクチン接種が要求される。この種のワクチン接種スケジュールは、多くの小動物ワクチン(例えばイヌパルボウイルス症、イヌ肝炎用)、ウマワクチン(例えばウマインフルエンザワクチン用)、およびブタワクチン(例えばアクチノバシルス・プリューロプニューモニアエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)用)で用いられる。5週齢以上の動物におけるPCVADの開始はPCV2抗体の消滅と連鎖しているようであるので(前記は4−11週齢の動物で生じると報告されている)、起こりうる移行抗体の干渉を回避するために、PCVADに対抗する種々のワクチン試作が2接種ワクチン法を用いて報告されている。WO2007/028823では、2接種ワクチン法による、20μg/用量を超える母親由来抗体を有する仔豚のワクチン接種が記載されている。最初のワクチン接種は1−4週齢の間に投与された。全ての動物が最初のワクチン接種後3週間で再接種され、このとき、最初のワクチン接種時に高いMDAレベルを有していた動物で母親由来抗体は低下しているか、または消滅していた。したがって、防御または干渉の程度に対する母親由来の抗PCV2抗体の正確な影響について記述している報告は未だ存在しない。そのため、3週齢前の仔豚を少なくとも1接種ワクチン法でワクチン接種しないように推奨される。3週齢前のワクチン接種は、免疫の有効性に関してある程度の不確実性をもたらす。他方で母親由来の抗PCV2抗体が低レベルである仔豚は3週齢前のPCV2感染に対して十分には防御されない(ただし低レベルとは正確にどのようなものであるかは誰にも分からないが)。換言すれば、3週齢前にワクチン接種を受けていない低MDA力価のブタ群は、十分な免疫状態が欠如しているためにPCV2感染に対し内在的リスクを有する。
さらにまた、既に抗PCV2抗体、好ましくは抗PC2移行抗体を有するブタにおいて、PCV2感染に対する防御免疫を付与するか、またはPCV2感染に付随する任意の臨床徴候を緩和し、その重篤度を軽減し、その発生を軽減し、もしくは完治させるようなワクチンはこれまで記載されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は従来技術に固有の問題を克服し、当分野の現況に明確な進歩を提供する。概括的特徴にしたがえば、本発明は、抗PCV2抗体を有する動物で、PCV2感染を治療若しくは予防するための方法、又はPCV2感染によって惹起されるか若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供する。前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に、PCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物の有効量を投与する工程を含む。抗PCV2抗体、特に母親起源の抗PCV2抗体の存在は、PCV2抗原を含むワクチンの有効性を損なわないということは、予想に反する驚くべき発見であった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ワクチン接種時の抗PCV2抗体の力価クラスを示すグラフである。
【図2】低い(<1:100)及び高い(>1:1000)抗PCV2抗体を有するワクチン接種動物の生体体重を比較するグラフである。
【図3】プラセボ処理コントロール動物(CP)と比較した、ワクチン接種動物における体重の相違を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で用いられる“ワクチン”又は“免疫原性組成物”(両用語は同義語として用いられる)という用語は、PCV2抗原を含む任意の医薬組成物を指し、前記組成物を用いて、PCV2感染に付随する疾患若しくは症状を対象動物で予防又は治療することができる。好ましい免疫原性組成物は、PCV2に対して免疫応答を誘発、刺激又は強化することができる。したがって、前記用語は、下記で述べるようにサブユニット免疫原性組成物とともに全殺滅又は弱毒及び/又は不活化PCV2を含む組成物の両方を包含する。
したがって、別の特徴にしたがえば、本発明は、抗PCV2抗体、特に母親由来の抗PCV2抗体を有する動物で、PCV2感染を治療若しくは予防するための方法、又はPCV2感染によって惹起されるか若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に、PCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物の有効量を投与する工程を含み、この場合、前記免疫原性組成物は、サブユニット免疫原性組成物、全殺滅又は弱毒及び/又は不活化PCV2を含む組成物である。
本明細書で用いられる“サブユニット免疫原性組成物”は、PCV2の抗原の誘導型またはPCV2の抗原と相同な少なくとも1つの免疫原性ポリペプチド又は抗原であるが全抗原ではないものを含む組成物を指す。そのような組成物は完全なPCV2を実質的に含まない。したがって、“サブユニット免疫原性組成物”は、少なくとも部分的に精製又は分画された(好ましくは実質的に精製された)PCV2又はその組換えアナローグ由来免疫原性ポリペプチドから製造される。サブユニット免疫原性組成物は、対象となる1つのサブユニット抗原又は複数のサブユニット抗原を含み、他の抗原又はPCV2由来ポリペプチドを実質的に含まない。好ましい免疫原性サブユニット組成物は、下記で述べるようにPCV2 ORF-2タンパク質を含む。WO06/072065(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)に提供されたPCV2抗原のいずれかを含む免疫原性サブユニット組成物がもっとも好ましい。
【0009】
“免疫応答”は、対象の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体媒介性免疫応答の宿主における発生を意味する(ただし前記に限定されない)。通常、“免疫応答”には1つ以上の以下の作用が含まれる(ただしこれらに限定されない):対象の組成物又はワクチンに含まれる1つの抗原又は複数の抗原に対して特異的に誘導される抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞傷害性T細胞の生成又は活性化。好ましくは、宿主は、新規な感染に対する抵抗性が強化されるように、及び/又は当該疾患の臨床的重篤度が軽減されるように、治療的又は防御的な免疫学的(メモリー)応答を示すであろう。そのような防御は、PCV2感染に付随する症状の数若しくは重篤度の低下又は前記症状の1つ以上の排除、ウイルス血症開始の延期、ウイルス存続の緩和、ウイルス総保持量の減少及び/又はウイルス排出の減少を示すであろう。
本明細書で用いられる“抗原”は、上記に記載した免疫学的応答を誘引するアミノ酸配列を指す。本明細書で用いられる抗原には、任意のPCV2タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、又はその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”という用語は、1つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載した免疫学的応答を誘引するタンパク質フラグメントを指す。そのようなフラグメントは当分野で周知の多数のエピトープマッピング技術によって特定することができる(例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol 66 (Glenn E Morris, Ed. 1996) Humana Press, Totowa, New Jersey)。例えば、直鎖状エピトープは、多数のペプチドを固相上で同時に合成し(前記ペプチドはタンパク質分子の部分に一致する)、前記ペプチドがなお固相に結合しているときに抗体と前記ペプチドを反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号;Geysen et al. 1984, Proc Natl Acad Sci USA 81:3998-4002;Geysen et al. 1986, Molec Immunol 23:709-715。同様に、配座エピトープも、アミノ酸の空間配座を例えばx線結晶学及び二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に特定される(例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい)。
【0010】
合成抗原、例えばポリエピトープ、フランキングエピトープ及び他の組換え体又は合成により誘導された抗原もまたこの定義内に含まれる。例えば以下を参照されたい:Bergmann et al. 1993, Eur J Immunol 23:2777-2781;Bergmann et al. 1996, J Immunol 157:3242-3249;A. Suhrbier, 1997, Immunol and Cell Biol 75:402-408;Gardner et al. 1998, 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998。
さらに別の特徴にしたがえば、本明細書で用いられる免疫原性組成物は、もっとも好ましくはPCV2のORF-2によって発現されるポリペプチド又はそのフラグメントを含む。本組成物の製造のために、及び本明細書で提供されるプロセスにおいて本明細書で用いられるPVC2 ORF-2DNA及びタンパク質はPCV単離体において高度に保存されてあり、それによっていずれのPCV2 ORF-2も、本明細書で用いられるPCV ORF-2DNA及び/又はポリペプチドの供給源として有効であろう。好ましいPCV2 ORF-2タンパク質は本明細書及びWO06/072065号の配列番号:11のタンパク質である。さらに好ましいPCV ORF-2ポリペプチドは、本明細書及びWO06/072065号で配列番号:5として提供されている。しかしながら、この配列は6−10%も配列相同性が変動しうるが、それでもなお免疫原性組成物において前記を有用あらしめる抗原的特徴を保持することは当業者には理解されるところである。免疫原性組成物のこの抗原的特徴は、例えばWO06/072065の実施例4により供給されるチャレンジ試験によって判断することができる。さらにまた、改変抗原が、配列番号:3又は配列番号:4(本明細書及びWO06/072065で提供される)のポリヌクレオチド配列によってコードされるPCV2 ORF-2タンパク質と比較して少なくとも70%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%の防御免疫を付与するとき、前記改変抗原の抗原的特徴はなお保持されている。
【0011】
したがってさらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染を治療若しくは予防するための方法、又は抗PCV2抗体、特に母親由来抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供する。前記方法は、有効量のPCV2抗原、又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物をそのような処置を必要とする当該動物に投与する工程を含み、ここで、前記PCV2抗原は、本明細書及びWO06/072065で提供される配列番号:3又は配列番号:4のポリヌクレオチド配列によってコードされるPCV2 ORF-2と比較したとき、防御免疫の少なくとも70%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%を有するPCV2 ORF-2タンパク質の抗原である。好ましくは、前記PCV2 ORF-2配列は、本明細書及びWO06/072065で提供される配列番号:11又は配列番号:5の配列を有する。
いくつかの形態では、PCV2 ORF-2タンパク質の免疫原性部分は、PCV2抗原を含む免疫原性組成物の抗原性成分として用いられる。本明細書で用いられる“免疫原性部分”という用語は、切端及び/又は置換された形態、又はPCV ORF2タンパク質及び/又はポリヌクレオチドのそれぞれのフラグメントを指す。好ましくは、そのような切端及び/又は置換された形態、又はフラグメントは、完全長ORF-2ポリペプチドに由来する少なくとも6つの連続するアミノ酸を含むであろう。より好ましくは、前記切端及び/又は置換された形態、又はフラグメントは、完全長PCV ORF-2ポリペプチドに由来する少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、さらに好ましくは少なくとも19の連続するアミノ酸を有するであろう。これに関して、2つの好ましい配列が本明細書およびWO06/072065で配列番号:9及び配列番号:10として提供される。そのような配列はより大きなフラグメント又は切端形態の部分であってもよいことはまた理解されよう。
上記で述べたように、さらに好ましいPCV2 ORF-2ポリペプチドは、配列番号:3又は配列番号:4のヌクレオチド配列によってコードされる任意のポリペプチドである。しかしながら、この配列は6−20%もの配列相同性の変動を示すが、免疫原性組成物として前記を有用ならしめる抗原的特徴はなお維持されうることは当業者には理解されよう。いくつかの形態では、このPCV2 ORF-2ポリペプチドの切端若しくは置換形態又はフラグメントは、前記組成物の抗原性成分として用いられる。好ましくは、そのような切端若しくは置換形態又はフラグメントは、例えば配列番号:3又は配列番号:4の完全長PCV2 ORF-2ヌクレオチド配列に由来する少なくとも18の連続するヌクレオチドを含むであろう。より好ましくは、前記切端若しくは置換形態又はフラグメントは、例えば配列番号:3又は配列番号:4の完全長PCV2 ORF-2ヌクレオチド配列の少なくとも30、より好ましくは少なくとも45、さらに好ましくは少なくとも57の連続するヌクレオチドを有するであろう。
【0012】
当分野で公知の“配列同一性”は、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列(すなわち参照配列および参照配列と比較されるべきある配列)間の関係を指す。配列同一性は、そのような配列の一連続部分間の一致によって決定したとき最高度の配列類似性を生じるように配列を最適にアライメントした後で、ある配列を参照配列と比較することによって決定される。そのようなアライメントに際して、配列同一性は1つの位置毎に確認される。例えば、個々の位置でヌクレオチド又はアミノ酸残基が同一であれば、当該位置でそれら配列は同一である。続いてそのような各位置同一性を有する総数を参照配列中のヌクレオチド又は残基の総数で割って%配列同一性が提供される。配列同一性は、公知の方法(以下に記載された方法を含むが、ただしこれらに限定されない:Computational Molecular Biology, A.N. Lesk ed., Oxford University Press, New York (1988);Biocomputing: Informaics and Genomu Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin, and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinge, Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press New York (1991);及びH. Carillo and D. Lipman, SIAM J Applied Math., 1988, 48:1073(前記文献の教示は参照により本明細書に含まれる))によって容易に計算することができる。配列同一性を決定する好ましい方法は、検査される配列間で最大の一致を提供するように考案される。配列同一性を決定する方法は、公開されたコンピュータプログラム(与えられた配列間の配列同一性を決定する)で集大成されている。そのようなプログラムの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):GCGプログラムパッケージ(J. Devereux et al. Nucleic Acids Research, 1984, 12(1):387)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(S.F. Altschul et al. J Molec Biol 1990, 215:403-410)。BLASTXプログラムはNCBI及び他の供給源から公開されている(BLAST Manual, S. Altshul et al. NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894;S.F. Altschul et al. J Molec Biol 1990, 215:403-410(前記文献の教示は参照により本明細書に含まれる))。これらのプログラムは、ある配列と参照配列との間で最高レベルの配列同一性を生じるためにデフォルトギャップ重を用いて配列を最適にアライメントする。例示として、参照ヌクレオチド配列に対して、例えば少なくとも85%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%の“配列同一性”を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、前記与えられたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド毎に15までの点変異、好ましくは10までの点変異、より好ましくは5までの点変異を含みうることを除いて参照配列と同一であるということが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%同一性を有するポリヌクレオチドでは、参照配列の15%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%までのヌクレオチドが欠失しているか又は別のヌクレオチドで置換されるか、又は参照配列中の全配列の15%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%までの数のヌクレオチドが、前記参照配列に挿入されうる。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5'若しくは3'末端の位置又はこれら末端の位置の間の任意の位置に生じるか、参照配列内のヌクレオチド間に個々に若しくは参照配列内で1つ以上の連続する群として点在することができる。同様に、参照アミノ酸配列に対して、例えば少なくとも85%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%の配列同一性を有するあるアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、前記与えられたポリペプチドのアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列の100アミノ酸毎に15まで、好ましくは10まで、より好ましくは5までのアミノ酸変異を含みうることを除いて参照配列と同一であるということが意図される。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%の同一性を有するあるポリペプチドを得るために、参照配列のアミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%までを欠失させるか又は別のアミノ酸で置換するか、又は参照配列のアミノ酸残基の総数の15%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%までの数のアミノ酸を前記参照配列に挿入することができる。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノ若しくはカルボキシ末端の位置又はこれら末端の位置の間の任意の位置に生じるか、参照配列内の残基間に個々に若しくは参照配列内の1つ以上の連続する群として点在することができる。好ましくは同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により相違する。しかしながら、保存的置換は配列同一性を決定するときは一致に算入されない。
【0013】
本明細書で用いられる“配列相同性”は、2つの配列の関連を決定する方法を指す。配列相同性を決定するために、2つ以上の配列が最適にアライメントされ、必要な場合にはギャップが導入される。しかしながら“配列同一性”とは対照的に、保存的アミノ酸置換は配列相同性を決定するとき一致として数えられる。換言すれば、参照配列と95%の配列相同性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチドを得るために、参照配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドの85%、好ましくは90%、より好ましくは95%が一致するか又は別のアミノ酸若しくはヌクレオチドとの保存的置換を含む必要があるか、又は参照配列内の全アミノ酸残基若しくはヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%までの数のアミノ酸残基若しくはヌクレオチド(保存的置換は含まない)を参照配列に挿入することができる。好ましくは、相同配列は少なくとも50、より好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも250、なお好ましくは少なくとも500の一続きのヌクレオチドを含む。
“保存的置換”は、類似の特徴又は特性(サイズ、疎水性などを含む)を有する別のアミノ酸残基又はヌクレオチドとアミノ酸残基又はヌクレオチドとの、全体的機能性を顕著には変化させないようなアミノ酸残基又はヌクレオチドの置換を指す。
“単離” されるとは、“人間の手によって”その天然の状態から変化させることを意味する。すなわち、前記が天然に存在する場合は、それは変化させられてあるか、又はその本来の環境から取り出されてあるか、又はその両方である。例えば、生きている生物に天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは“単離”されていないが、その天然の状態で一緒に存在する物質から分離された前記ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、本用語が本明細書で用いられているように“単離”されてある。
【0014】
したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は抗PCV2抗体、特に母親由来抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供する。前記方法は、有効量のPCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物をそのような処置を必要とする当該動物に投与する工程を含み、ここで前記PCV2 ORF-2タンパク質は上記に記載したもののうち任意のタンパク質である。好ましくは前記PCV2 ORF-2タンパク質は以下である:
i)本明細書又はWO06/072065の配列番号:5、配列番号:6、配列番号:9、配列番号:10又は配列番号:11の配列を含むポリペプチド;
ii)i)のポリペプチドと少なくとも80%相同である任意のポリペプチド;
iii)i)及び/又はii)のポリペプチドの任意の免疫原性部分;
iv)iii)の免疫原性部分であって、本明細書又はWO06/072065の配列番号:5、配列番号:6、配列番号:9、配列番号:10又は配列番号:11の配列に含まれる少なくとも10の連続するアミノ酸を含む、前記免疫原性部分;
v)本明細書又はWO06/072065の配列番号:3又は配列番号:4の配列を含むDNAによってコードされるポリペプチド;
vi)v)のポリヌクレオチドと少なくとも80%相同であるポリヌクレオチドによってコードされる任意のポリペプチド;
vii)v)及び/又はvi)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの任意の免疫原性部分;
viii)vii)の免疫原性部分であって、前記免疫原性部分をコードするポリヌクレオチドが、本明細書又はWO06/072065の配列番号:3又は配列番号:4の配列に含まれる少なくとも30の連続するヌクレオチドを含む、前記免疫原性部分。
好ましくはこれら免疫原性部分のいずれも、本明細書又はWO06/072065の配列番号:3又は配列番号:4の配列によってコードされるPCV2 ORF-2タンパク質の免疫原性特徴を有する。
【0015】
さらに別の特徴にしたがえば、PCV2 ORF-2タンパク質は、所望の免疫応答(すなわちPCV2感染から生じるか又はPCV2感染に付随する1つ以上の臨床徴候の発生の減少、重篤度の軽減又は予防若しくは緩和)を誘発するために有効な抗原含有レベルで免疫原性組成物中に提供される。好ましくは、PCV2 ORF-2タンパク質含有レベルは、最終免疫原性組成物1mL当たり少なくとも0.2μg抗原(μg/mL)、より好ましくは0.2から約400μg/mL、さらに好ましくは約0.3から約200μg/mL、さらに好ましくは約0.35から約100μg/mL、さらに好ましくは約0.4から約50μg/mL、さらに好ましくは約0.45から約30μg/mL、さらに好ましくは約0.5から約18μg/mL、さらに好ましくは約0.6から約15μg/mL、、さらに好ましくは約0.75から約8μg/mL、さらに好ましくは約1.0から約6μg/mL、さらに好ましくは約1.3から約3.0μg/mL、さらに好ましくは約1.4から約2.5μg/mL、さらに好ましくは約1.5から約2.0μg/mL、もっとも好ましくは約1.6μg/mLである。
さらに別の特徴にしたがえば、PCV ORF-2抗原含有量レベルは、最終抗原性組成物の1用量当たり上記に記載のPCV ORF-2タンパク質の少なくとも0.2μg(μg/用量)、より好ましくは約0.2から約400μg/用量、さらに好ましくは約0.3から約200μg/用量、さらに好ましくは約0.35から約100μg/用量、さらに好ましくは約0.4から約50μg/用量、さらに好ましくは約0.45から約30μg/用量、さらに好ましくは約0.5から約18μg/用量、さらに好ましくは約0.6から約15μg/用量、さらに好ましくは約0.75から約8μg/用量、さらに好ましくは約1.0から約6μg/用量、さらに好ましくは約1.3から約3.0μg/用量、さらに好ましくは約1.4から約2.5μg/用量、さらに好ましくは約1.5から約2.0μg/用量、もっとも好ましくは約1.6μg/用量である。驚くべきことに、20μg/用量未満、好ましくは約0.5から18μg/用量のPCV2 ORF−2タンパク質含有レベル(抗原含有量)が、幼若動物及び/又はPCV2抗体陽性動物(特に母親由来の抗PCV2抗体陽性動物)に免疫を付与するために適切であることが見出された。したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は抗PCV2抗体、特に母親由来抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に20μg/用量未満、好ましくは約0.5から18μg/用量のPCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物を投与する工程を含む。前記PCV2抗原はこの特許出願に記載した任意の抗原である。好ましくは、前記PCV2抗原は、任意のPCV2 ORF-2タンパク質、より好ましくは本明細書に記載の任意のPCV2 ORF-2タンパク質である。
【0016】
本発明にしたがって免疫原性組成物で用いられるPCV2 ORF-2ポリペプチドは、PCV2 ORF-2の単離及び精製、標準的なタンパク質合成、ならびに組換え方法論を含む任意の態様で誘導することができる。PCV2 ORF-2ポリペプチドを入手するための好ましい方法はWO06/072065で提供され、前記文献の教示および内容はその全体が参照により本明細書に含まれる。略記すれば、PCV2 ORF-2 DNAコード配列を含む組換えウイルスベクターを感受性細胞に感染させ、PCV2 ORF-2ポリペプチドを組換えウイルスによって発現させ、発現されたPCV2 ORF-2ポリペプチドをろ過によって上清から回収し、さらに任意の通常的方法(好ましくは二元エチレンイミンを用い、続いて不活化プロセスを停止させるために前記を中和する)によって不活化する。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、及びii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分を含む組成物を指す。さらにまた、免疫原性組成物は、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分、及びiii)細胞培養上清の一部分を含むことができる。
したがって、さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は抗PCV2抗体、特に母親由来抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物を投与する工程を含み、ここで前記PCV2抗原は、組換えPCV2 ORF-2、好ましくはバキュロウイルス発現PCV2 ORF-2である。好ましくは、それら組換え体またはバキュロウイルス発現PCV2 ORF-2は上記に記載の配列を有する。
【0017】
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクター、好ましくは組換えバキュロウイルスの少なくとも一部分、及びiii)細胞培養の一部分を含む組成物を指し、ここで前記成分の約90%は1μmよりも小さいサイズを有する。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、及びiv)組換えウイルスベクターを不活化するための不活化剤、好ましくはBEIを含む組成物を指し、ここで前記成分i)からiii)の約90%は1μmよりも小さいサイズを有する。好ましくは、BEIは、バキュロウイルスを不活化するために有効な濃度で存在し、好ましくは2から約8mMのBEI、好ましくは約5mMの量のBEIが存在する。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化するための不活化剤、好ましくはBEI、及びv)不活化剤によって仲介される不活化を停止させるための中和剤を含む組成物を指し、ここで前記成分i)からiii)の約90%は1μmよりも小さいサイズを有する。好ましくは、不活化剤がBEIの場合、前記組成物は、BEIに対して等価量のチオ硫酸ナトリウムを含む。
【0018】
本ポリペプチドは、PCV2感染に感受性を有する動物に投与することができる組成物に取り入れられる。好ましい形態では、前記組成物はまた当業者に公知の追加の成分を含むことができる(以下もまた参照されたい:Remington's Pharmaceutical Sciences (1990) 18th ed. Mack Publ., Easton)。さらにまた、前記組成物は、1つ以上の獣医が許容できる担体を含むことができる。本明細書で用いられる、“獣医が許容できる担体”には、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌及び抗カビ剤、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。好ましい実施態様では、免疫原性組成物は、本明細書で提供されるPCV2 ORF-2タンパク質を含み(好ましくは上記に記載の濃度で)、前記は、アジュバント(好ましくはカルボポール)及び生理学的食塩水と混合される。
本明細書で用いられる組成物は、公知の注射可能な生理学的に許容される無菌的溶液を含むことができることは当業者には理解されるであろう。非経口注射又は輸液用即席溶液を調製するために、等張水溶液、例えば食塩水又は対応する血漿タンパク質溶液を容易に利用することができる。さらにまた、本発明の免疫原性及びワクチン組成物は、希釈剤、等張剤、安定化剤又はアジュバントを含むことができる。希釈剤は、水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを含むことができる。等張剤は、とりわけ塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール及びラクトースを含むことができる。安定化剤には、とりわけアルブミン及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が含まれる。
【0019】
本明細書で用いられる“アジュバント”には、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc., Cambridge MA)、GP1-0100(Galenica Pharmaceuticals, Inc., Birmingham, AL)、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、水中油中水エマルジョンが含まれえる。エマルジョンは特に以下を基剤にすることができる:液状軽パラフィン油(European Pharmacopea type);イソプレノイド油、例えばアルケン(特にイソブテン又はデセン)のオリゴマー化から生じるスクァラン又はスクァレン油;直鎖状アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ-(カプリレート/カプレート)、又はプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステル。油は、エマルジョンを形成させるために乳化剤と一緒に用いられる。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニドのエステル(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリコールのエステル、ポリグリセロールのエステル、プロピレングリコールのエステル、及びオレイン酸、イソステアリン酸又はヒドロキシステアリン酸のエステル(前記は場合によってエトキシル化される)、並びにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニックの製品、特にL121である(以下を参照されたい:Hunter et al. The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed. D.E.S.Stewart-Tull). John Wiley and Sons. NY, pp51-94 (1995);Todd et al., Vaccine 1997, 15:564-570)。
例えば以下の文献(”Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” M. Powell and M. Newman eds, Plenum Press, 1995)の147ページに記載されているSPTエマルジョン、及び同書の183ページに記載されているエマルジョンMF59を使用することができる。
【0020】
アジュバントのさらに別の例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー並びに無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマーであり、前記は特に糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋される。これらの化合物はカルボマーという用語により知られている(Phameuropa Vol.8, No.2, June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる(前記は、少なくとも3つのヒドロキシル基(好ましくは8個を超えない)を有し、少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子が少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置き換えられている、ポリヒドロキシル化化合物で架橋されたアクリル酸ポリマーを開示する)。好ましいラジカルは、2から4つの炭素原子を含むもので、例えばビニル、アリル及び他のエチレン系不飽和基である。不飽和ラジカルはそれ自体他の置換基、例えばメチルを含むことができる。カルボポール(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売されている製品が特に適切である。それらは、アリルシュクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。それらの中ではカルボポール974P、934P及び971Pを挙げることができる。もっとも好ましいものはカルボポールの使用、特にカルボポール971Pの使用であり、好ましくは約500μgから約5mg/用量の量、より好ましくは約750μgから約2.5mg/用量の量、もっとも好ましくは約1mg/用量の量での使用である。
さらに適切なアジュバントには多くのものの中でとりわけ以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(Cytrx, Atlanta GA)、SAF-M(Chiron, Emeryville CA)、モノホスホリル脂質A、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌由来易熱性エンテロトキシン(組換え体または他の形態)、コレラトキシン、IMS1314、又はムラミルジペプチド。
好ましくは、アジュバントは約100μgから約10mg/用量の量で添加される。より好ましくは、アジュバントは約100μgから約10mg/用量の量で添加される。より好ましくは、アジュバントは約500μgから約5mg/用量の量で添加される。より好ましくは、アジュバントは約750μgから約2.5mg/用量の量で添加される。もっとも好ましくは、アジュバントは約1mg/用量の量で添加される。
【0021】
さらにまた、組成物は、1つ以上の医薬的に許容できる担体を含むことができる。本明細書で用いられる、“医薬的に許容できる担体”には任意の全ての溶媒、分散媒体、コーティング、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌及び抗カビ剤、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。もっとも好ましくは、本明細書で提供される組成物は、in vitro培養細胞の上清から回収されるPCV2 ORF-2タンパク質を含む。この場合、前記細胞を、PCV2 ORF-2 DNAを含み、PCV2 ORF-2タンパク質を発現する組換えウイルスベクターに感染させ、さらに、前記細胞培養を、約2から8mMのBEI、好ましくは約5mMのBEIで処理してウイルスベクターを不活化し、さらに等価濃度の中和剤、好ましくはチオ硫酸ナトリウム溶液で、最終濃度約2から約8mM、好ましくは約5mMの最終濃度で処理した。
本発明はまた以下を含む免疫原性組成物に関する:i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化するための不活化剤(好ましくはBEI)、v)不活化剤によって仲介される不活化を停止させるための中和剤、好ましくはBEIに対して等価の量のチオ硫酸ナトリウム、及びvi)適切なアジュバント、好ましくは上記記載の量のカルボポール971、ここで前記成分i)からiii)の約90%は1μmよりも小さいサイズを有する。さらに別の特徴にしたがえば、この免疫原性組成物はさらに、医薬的に許容できる塩、好ましくはリン酸塩を生理学的に許容できる濃度で含む。好ましくは、前記免疫原性組成物のpHは生理学的pH(約6.5から7.5の間を意味する)に調節される。
【0022】
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた1mL当たり以下のi)−vii)を含む組成物を指す:i)上記記載のPCV2 ORF-2タンパク質の少なくとも1.6μg、好ましくは20μg未満、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するバキュロウイルスの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)約2から8mMのBEI、v)BEIに対して等価の量のチオ硫酸ナトリウム、vi)約1mgのカルボポール971、及びvii)生理学的に許容される濃度のリン酸塩、ここで前記成分i)からiii)の約90%は1μmよりも小さいサイズを有し、さらに前記免疫原性組成物のpHは約6.5から7.5に調節される。
免疫原性組成物はさらに、1つ以上の免疫調節剤(例えばインターロイキン、インターフェロン又は他のサイトカイン)を含むことができる。免疫原性組成物はまたゲンタマイシン及びマーチオレートを含むことができる。本発明の状況で有用なアジュバントならびに添加物の量及び濃度は当業者には容易に決定できるが、本発明は、ワクチン組成物の1mL用量当たり約50μgから約2000μgのアジュバント、好ましくは約250μgを含む組成物を意図している。したがって、本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、約1μg/mLから約60μg/mLの抗生物質、より好ましくは約30μg/mL未満の抗生物質を含む組成物を指す。
【0023】
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、i)上記に記載のPCV2 ORF-2タンパク質のいずれか(好ましくは上記に記載の濃度で)、ii)前記PCV2 ORF-2タンパク質を発現するウイルスベクターの少なくとも一部分、iii)細胞培養の一部分、iv)組換えウイルスベクターを不活化するための不活化剤(好ましくはBEI)、v)不活化剤によって仲介される不活化を停止させるための中和剤、好ましくはBEIに対して等価の量のチオ硫酸ナトリウム、vi)適切なアジュバント、好ましくは上記記載の量のカルボポール971、vii)医薬的に許容できる濃度の塩性緩衝剤、好ましくはリン酸塩、及びviii)抗菌活性剤を含む組成物を指し、ここで前記成分i)からiii)の約90%は1μmよりも小さいサイズを有する。
本明細書で用いられる免疫原性組成物はまた、Ingelvac(商標)CircoFLEXTM(Boehringer Ingelheim Vetmedica Inc. St Joseph, MO, USA)、CircoVac(商標)(Merial SAS, Lyon, France)、CircoVent(Intervet Inc., Millsboro, DE, USA)、又はSuvaxyn PCV-2 One Dose(商標)(Fort Dodge Animal Health, Kansas City, KA, USA)を指す。
したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染を治療若しくは予防するための方法、又は抗PCV2移行抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供する。前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含み、ここで、前記免疫原性組成物は、CircoFLEXTM、CircoVac(商標)、CircoVent、又はSuvaxyn PCV-2 One Dose(商標)である。もっとも好ましくは、前記免疫原性組成物はIngelvac(商標)CircoFLEXTMであり、及び/又はPCV2抗原はPCV2 ORF-2、好ましくはバキュロウイルス発現PCV2 ORF-2、もっとも好ましくはIngelvac(商標)CircoFLEXTMに含まれるものである。
【0024】
PCV2抗原と移行抗体との起こりうる干渉を解明するために、調査動物の抗体力価をワクチン接種時に決定し、続いてそれらを低、中等度、高抗体クラスに分類する調査を実施した。すなわち、相乗平均力価が<1:100は低抗体力価と考えられ、1:100から1:1000は中等度抗体力価と考えられ、>1:1000の力価は高抗体と考えられた。この分類パターンはカナダの野外調査で実施されたものと類似し、カナダ野外調査では1:80の抗体力価は低抗体、1:640の抗体力価は中等度、及び>1:1280の抗体力価は高抗体と考えられた(Larochelle et al. 2003, Can J Vet Res, 67:114-120)。ウイルス血症に対するワクチン接種時における低、中等度、高抗体力価の影響を分析するために、ワクチン接種及びプラセボ処理動物を、ウイルス血症の開始、終結、期間、陽性サンプル日数及びウイルス保持量に関して比較した。驚くべきことに、抗PCV2抗体(特に母親由来抗体)の存在は、これらのパラメーターのいずれにも有意な影響を与えないことが見出された。換言すれば、驚くべきことに、PCV2感染の治療若しくは予防、又はPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候の緩和におけるPCV2抗原の有効性は、ワクチン接種の日に抗PCV2抗体の存在によって、好ましくは1:100までの抗PCV2抗体力価、好ましくは1:100を超える、より好ましくは1:250を超える、さらに好ましくは1:500を超える、さらに好ましくは1:640を越える、さらに好ましくは1:750を超える、もっとも好ましくは1:1000を超える抗PCV2抗体力価によって影響を受けないことが見出された。この効果はワクチン1回接種試験で示され、前記は、PCV2抗原がただ1回投与され、その後のPCV2抗原の投与は全くないことを意味している。
【0025】
抗PCV2抗体を検出及び定量する方法は当分野で周知である。例えば、PCV2抗体の検出及び定量は、以下に記載されたように間接免疫蛍光によって実施することができる:Magar et al. 2000, Can J Vet Res, 64:184-186;又はMagar et al. 2000, J Comp Pathol 123:258-269。抗PCV2抗体の検出のためのさらに別のアッセイはOpriessingらの論文に記載されている(37th Annual Meeting of the American Association of Swine Veterinarians, 2006)。さらに、例示2はまた当業者が使用することができる間接免疫蛍光アッセイについても記載している。論争が存在する事例及び疑いが存在するいずれの事項においても、本明細書の抗PCV2力価は、実施例2に記載のアッセイによって判定されるか/判定可能な力価を指す。
したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は抗PCV2抗体、特に移行抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原、好ましくは20μg/用量未満のPCV2抗原を投与する工程を含み、ここで前記動物は、1:100まで、好ましくは1:100を超える、より好ましくは1:250を超える、さらに好ましくは1:500を超える、さらに好ましくは1:640を越える、さらに好ましくは1:750を超える、もっとも好ましくは1:1000を超える検出可能な抗PCV2抗体力価を有する。好ましくは、そのような抗PCV2抗体力価は、特異的な抗PCV2免疫アッセイ、好ましくは実施例2に記載のアッセイで検出可能及び定量可能である。より好ましくは、それら抗PCV2抗体は母親由来抗体である。もっとも好ましくは、PCV2抗原は1回のみ、好ましくは20μg/用量未満の用量で投与されるだけである。
【0026】
低力価(<1:100)又は中等度力価(<1:1000)の母親由来抗PCV2抗体をもつ仔豚は、3週齢前に発生するPCV2感染に対しては十分には防御されない。したがって、誕生後非常に早期のワクチン接種が望ましい。本明細書で提供する、抗PCV2抗体とPCV2抗原との干渉が存在しないことを示す予想不能でかつ予想に反する結果により、3週齢前の動物のワクチン接種/治療が現実的になった。さらにまた、驚くべきことに、1:1000を超える抗PCV2抗体力価は、既存の最初の抗体力価レベルに関係なくPCV2ワクチンの有効性に対して影響を与えなかった。例えば、高力価動物(抗PCV2抗体力価>1:1000)のワクチン接種は、9.5日のウイルス血症期間の短縮、11.9日早いウイルス血症の終結、1.9日少ないウイルス血症サンプリング日数、及びワクチン非接種コントロール動物と比較してゲノム等価物総量/mLでほぼ2倍の減少をもたらした。ワクチンを接種した“高”、“中等度”及び“低”力価動物を比較したとき、PCV2ウイルス血症の種々のパラメーターに関して有意な相違は観察されなかった。これらの結果は、高い抗PCV2抗体力価の存在下でもまた、ワクチン接種に用いられるPCV2抗原はなお血液のウイルス血症(ウイルス血症の終結、ウイルス血症の期間、ウイルス保持量)を有意に緩和することができることを示している。この発見と一致して、ワクチン接種群で低力価動物と高力価動物とを比較したとき生体の体重に関して相違を見出すことはできなかった。さらにまたワクチン接種時/治療時に高い抗PCV2抗体力価(>1:1000)を有するワクチン接種動物はまた、最初の高抗体力価をもつプラセボ処置動物と比較したとき、ウイルス血症開始後に有意に高い体重を示した(図3参照)。結果として、1日齢以上の動物のPCV2抗原によるワクチン接種/治療が可能である。しかしながら、ワクチン接種は最初の8週齢以内、好ましくは最初の7週齢以内に実施するべきである。したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又はPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を動物で緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする動物に、1日齢以降に、好ましくは8週齢に(ただし前記より遅くならない)有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む。好ましい実施態様にしたがえば、20μg/用量未満のPCV2抗原がそのような動物に免疫を付与するために必要である。より好ましい実施態様にしたがえば、PCV2抗原(好ましくは20μg/用量未満)はただ1回だけそのような処置を必要とする動物に投与される。
【0027】
さらに別のより全般的な特徴にしたがえば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、有効量のPCV2抗原をそのような処置を必要とする当該動物に投与する工程を含む。
本明細書で用いられる“幼若動物”という用語は1から22日齢の動物を指す。好ましくは、幼若動物という用語は1から20日齢の動物を意味する。より好ましくは、幼若動物は、1から15日齢、さらに好ましくは1日齢から14日齢、さらに好ましくは1から12日齢、さらに好ましくは1から10日齢、さらに好ましくは1から8日齢、さらに好ましくは1から7日齢、さらに好ましくは1から6日齢、さらに好ましくは1から5日齢、さらに好ましくは1から4日齢、さらに好ましくは1から3日齢、さらに好ましくは1又は2日齢の動物、もっとも好ましくは1日齢の動物を指す。したがってさらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする1から22日齢の動物、好ましくは1から20日齢、より好ましくは1から15日齢、さらに好ましくは1日齢から14日齢、さらに好ましくは1から12日齢、さらに好ましくは1から10日齢、さらに好ましくは1から8日齢、さらに好ましくは1から7日齢、さらに好ましくは1から6日齢、さらに好ましくは1から5日齢、さらに好ましくは1から4日齢、さらに好ましくは1から3日齢、さらに好ましくは1又は2日齢の動物、もっとも好ましくは1日齢の動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む。例えば、19から22日齢でのワクチン接種/治療が、高いワクチン接種の有効性を示すことの証拠が提供される。さらにまた、12から18日齢、好ましくは12から14日齢でのワクチン接種/治療もまた、PCV2感染に付随する臨床徴候の緩和、総ウイルス保持量の減少、ウイルス血症期間の短縮、ウイルス血症開始の延期、及び体重増加に非常に有効であることが示された。さらにまた、1週齢でのワクチン接種もまた、PCV2感染に付随する臨床徴候の緩和、総ウイルス保持量の減少、ウイルス血症期間の短縮、ウイルス血症開始の延期、体重増加に非常に有効であることが示された。好ましくは20μg/用量未満のPCV2抗原がそのような幼若動物に免疫を付与するために必要である。より好ましい実施態様にしたがえば、PCV2抗原(好ましくは20μg未満)は、そのような処置を必要とする当該幼若動物に1回のみ投与される。
【0028】
野外におけるPCV2の遍在性ゆえに、幼若豚の大半がPCV2に関して血清陽性である。したがってさらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又はワクチン接種日に抗PCV2抗体を有する幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする1から22日齢、好ましくは1から20日齢、より好ましくは1から15日齢、さらに好ましくは1日齢から14日齢、さらに好ましくは1から12日齢、さらに好ましくは1から10日齢、さらに好ましくは1から8日齢、さらに好ましくは1から7日齢、さらに好ましくは1から6日齢、さらに好ましくは1から5日齢、さらに好ましくは1から4日齢、さらに好ましくは1から3日齢、さらに好ましくは1又は2日齢の動物、もっとも好ましくは1日齢の動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む。好ましくは、前記幼若動物は、ワクチン接種/治療日に、1:100まで、好ましくは1:100を超える、より好ましくは1:250を超える、さらに好ましくは1:500を超える、さらに好ましくは1:640を越える、さらに好ましくは1:750を超える、もっとも好ましくは1:1000を超える検出可能な抗PCV2抗体力価を有する。好ましくは20μg/用量未満のPCV2抗原がそれら幼若動物に十分な免疫を付与するために必要である。より好ましい実施態様にしたがえば、PCV2抗原(好ましくは20μg未満)は、そのような処置を必要とする当該幼若動物に1回のみ投与される。
【0029】
上記に記載したように、PCV2抗原による幼弱動物のワクチン接種/治療は、非ワクチン接種コントロール動物と比較したときウイルス血症期の短縮をもたらした。平均短縮期間は、同じ種の非ワクチン接種コントロール動物と比較して9.5日であった。したがって、さらに別に特徴によれば、本発明はまた、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含み、ここで、前記治療又は予防は、同じ種の非ワクチン接種コントロール群の動物と比較して5日以上、好ましくは6日以上、より好ましくは7日以上、さらに好ましくは8日以上、さらに好ましくは9日以上、さらに好ましくは10日以上、さらに好ましくは12日以上、さらに好ましくは14日以上、もっとも好ましくは16日以上のウイルス血症期の短縮をもたらす。いくつかの事例では、ウイルス血症期は20日以上短縮される。一般的には、幼若仔豚のワクチン接種は、体重減少の緩和、ウイルス血症期間の短縮、ウイルス血症の早期終結、及びウイルス保持量の減少をもたらした。したがってさらに別の特徴によれば、本発明はまた、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含み、ここで、前記PCV2感染の治療又は予防は、同じ種の非処置コントロール群の動物と比較して、体重増加の低下の緩和、ウイルス血症期間の短縮、ウイルス血症の早期終結、ウイルス保持量の減少又は前記の組合せから成る群から選択されるワクチン有効性パラメーターにおける改善をもたらす。好ましくは20μg/用量未満のPCV2抗原が、上記に記載したいずれかのワクチン有効性パラメーターの改善を生じるために必要である。さらに、そのようなワクチン有効性パラメーターの改善は、ただ1用量の1回投与によって達成される。
【0030】
本明細書で用いられる“有効量”という用語は、前記有効用量のPCV2抗原を投与される動物で免疫応答を誘引するか又は誘引することができる抗原の量(ただし前記に限定されない)を意味する。好ましくは、有効量とは、少なくとも10週、好ましくは少なくとも12週、より好ましくは少なくとも15週、もっとも好ましくは少なくとも20週の免疫持続期間(DOI)を付与する抗原量と定義される。
有効な量は、ワクチンの成分及び投与スケジュールに左右される。典型的には、不活化ウイルス又は改変生ウイルス調製物がコンビネーションワクチンとして用いられるときは、約102.0から約109.0 TCID50/用量、好ましくは約103.0から約108.0 TCID50/用量、より好ましくは約104.0から約108.0 TCID50/用量を含むワクチン量が用いられる。特に改変生PCV2が用いられるときは、感受性動物に投与される推奨用量は、好ましくは約103.0TCID50(組織培養感染用量50%終末点、tissue culture infective dose 50% end point)/用量から約106.0 TCID50/用量、より好ましくは約104.0 TCID50/用量から約105.0 TCID50/用量である。精製抗原が用いられるときは、一般的には、抗原の数量は0.2から5000マイクログラムで、102.0から約109.0 TCID50、好ましくは約103.0から約106.0 TCID50、より好ましくは約104.0から約105.0 TCID50である。
サブユニットワクチンは、通常は、少なくとも0.2μg抗原/用量、好ましくは約0.2から約400μg/用量、より好ましくは約0.3から約200μg/用量、さらに好ましくは約0.35から約100μg/用量、さらに好ましくは約4.0から約50μg/用量、さらに好ましくは約0.45から約30μg/用量、さらに好ましくは約0.5から約18μg/用量、さらに好ましくは約0.6から約16μg/用量、さらに好ましくは約0.75から約8μg/用量、さらに好ましくは約1.0から約6μg/用量、さらに好ましくは約1.3から約3.0μg/用量の抗原含有レベルで投与される。
【0031】
予期に反して、上記で述べた免疫原性組成物の予防的使用は、PCV2感染によって引き起こされるか又はPCV2感染に付随する臨床徴候の緩和に、好ましくは幼若動物で、及び/又は処置の日にPCV2に対して受動免疫を有する動物で有効であることが見出された。特に、本明細書に記載の免疫原性組成物、及び特にPCV2 ORF-2抗原を含む組成物の予防的使用は、PCV2に感染し、治療/ワクチン接種の日に抗PCV2移行抗体を有する動物で、リンパ節腫脹、類リンパ枯渇及び/又は多核/巨大組織球増殖症の緩和に有効であることが見出された。さらにまた、本明細書に記載の免疫原性組成物、及び特にPCV2 ORF-2抗原を含む組成物の予防的使用は、(1)肺葉間水腫を有する間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状肝萎縮、(4)胃潰瘍、(5)腎炎、(6)生殖器異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など、(7)軟膜様病巣、ローソニアイントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)感染に付随することが一般的に知られている、(回腸炎)、(8)リンパ節腫脹、(9)類リンパ枯渇、及び/又は(10)多核/巨大組織球増殖症、(11)ブタ皮膚炎腎症症候群(PDNS)、(12)PCVAD関連死亡率、(13)PCVAD関連体重減少、(14)成長変動性の縮小、(15)‘発育不良動物’の頻度の減少、(16)ブタ生殖器呼吸器系疾患症候群(PRRSV)との同時感染の低下の緩和に有効であることが見出された。そのような免疫原性組成物はまた、経済的に重要な成長パラメーター(例えば屠殺までの期間、屠殺体の重量、及び/又は赤身肉比)の改善に有効である。したがって、本明細書で用いられる“臨床徴候”は以下を意味する(ただしこれらに限定されない):(1)肺葉間水腫を有する間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状肝萎縮、(4)胃潰瘍、(5)腎炎、(6)生殖器異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など、(7)軟膜様病巣、ローソニアイントラセルラーリス感染に付随することが一般的に知られている(回腸炎)、(8)リンパ節腫脹、(9)類リンパ枯渇、及び/又は(10)多核/巨大組織球増殖症、(11)ブタ皮膚炎腎症症候群(PDNS)、(12)PCVAD関連死亡率、(13)PCVAD関連体重減少、(14)成長変動性の縮小、(15)‘発育不良動物’の頻度の減少、(16)ブタ生殖器呼吸器系疾患症候群(PRRSV)との同時感染の低下。さらにまた、本明細書に記載の抗原性組成物は、シルコウイルス総保持量を低下させ(ウイルス血症の開始が遅いこと、ウイルス血症期間の短縮、早期終結、及びウイルス保持量の減少を含む)、さらに幼若動物(特にワクチン接種の日に抗PCV2抗体を有する動物)で免疫抑制作用を低下させ、したがってより高レベルの全般的耐病性及びPCV2関連疾患及び症状の緩和をもたらす。
【0032】
したがって、さらに別の特徴によれば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物及び/又は抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原又はPCV2抗原を含む免疫原性組成物を投与する工程を含み、ここでそれら臨床徴候は以下から成る群から選択される:(1)肺葉間水腫を有する間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状肝萎縮、(4)胃潰瘍、(5)腎炎、(6)生殖器異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など、(7)軟膜様病巣、ローソニアイントラセルラーリス感染に付随することが一般的に知られている(回腸炎)、(8)リンパ節腫脹、(9)類リンパ枯渇、及び/又は(10)多核/巨大組織球増殖症、(11)ブタ皮膚炎腎症症候群(PDNS)、(12)PCVAD関連死亡率、(13)PCVAD関連体重減少、(14)成長変動性の縮小、(15)‘発育不良動物’の頻度の減少、(16)ブタ生殖器呼吸器系疾患症候群(PRRSV)との同時感染の低下。さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するための方法を提供し、前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含み、ここでそれら臨床徴候は以下から成る群から選択される:(1)肺葉間水腫を有する間質性肺炎、(2)皮膚蒼白又は黄疸、(3)斑状肝萎縮、(4)胃潰瘍、(5)腎炎、(6)生殖器異常、例えば流産、死産、ミイラ化胎児など、(7)軟膜様病巣、ローソニアイントラセルラーリス感染に付随することが一般的に知られている(回腸炎)、(8)リンパ節腫脹、(9)類リンパ枯渇、及び/又は(10)多核/巨大組織球増殖症、(11)ブタ皮膚炎腎症症候群(PDNS)、(12)PCVAD関連死亡率、(13)PCVAD関連体重減少、(14)成長変動性の縮小、(15)‘発育不良動物’の頻度の減少、(16)ブタ生殖器呼吸器系疾患症候群(PRRSV)との同時感染の低下。
【0033】
本発明の組成物は、経口的に、皮内に、気管内に又は膣内に投与又は適用することができる。組成物は好ましくは、筋肉内に又は鼻内にもっとも好ましくは筋肉内に投与又は適用される。動物体では、上記に記載の医薬組成物を静脈注射又は標的組織への直接注射により適用するのが有利であることを証明することができる。全身適用のためには、静脈内、血管内、筋肉内、鼻内、動脈内、腹腔内、経口、又は脊髄内ルートが好ましい。より局所的な適用は、皮下、上皮内、皮内、心臓内、肺葉内、骨髄内、肺内で、又は治療するべき組織内若しくは組織(結合組織、骨組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織)近くで実施することができる。所望される治療の期間及び有効性にしたがって、本発明の組成物は、ただ1回若しくは数回、又は間歇的に、例えば数日間、数週間、若しくは数ヶ月間毎日、さらに種々の投薬量で投与することができる。
好ましくは、上記に記載の免疫原性組成物の1用量が、その必要がある対象動物の筋肉内に投与される。さらに別の特徴にしたがえば、PCV2抗原又は本明細書に記載のPCV2抗原のいずれかを含む免疫原性組成物をビンに入れ、1mL/用量で投与する。したがって、さらに別の特徴によれば、本発明はまた、PCV2感染の治療若しくは予防のために、又は幼若動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するために、本明細書に記載のPCV2抗原を含む1mLの免疫原性組成物を提供する(前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む)。さらに別の特徴にしたがえば、本発明はまた、PCV2感染の治療若しくは予防のために、又は抗PCV2抗体を有する動物でPCV2感染によって引き起こされるか、若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候を緩和するために、本明細書に記載のPCV2抗原を含む1mLの免疫原性組成物を提供する(前記方法は、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む)。
【0034】
さらに別の特徴にしたがえば、上記に記載の免疫原性組成物の少なくとも1用量が少なくとももう1回その必要がある対象動物に投与され、ここで、2回目又はそれ以降のいずれの投与も、最初の投与から又はいずれの前回投与からも少なくとも14日後で与えられる。好ましくは、免疫原性組成物は免疫刺激剤とともに投与される。好ましくは、前記免疫刺激剤は少なくとも2回投与される。好ましくは、少なくとも3日、より好ましくは少なくとも5日、さらに好ましくは少なくとも7日が、免疫刺激剤の第1回目と第2回目の投与又はそれ以降の任意の投与の間に置かれる。好ましくは、免疫刺激剤は、本明細書で提供される免疫原性組成物の最初の投与から少なくとも10日、好ましくは15日、より好ましくは20日、さらに好ましくは少なくとも22日後で与えられる。好ましい免疫刺激剤は例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)であり、前記は、好ましくは不完全フロイントアジュバントで乳化される(KLH/ICFA)。しかしながら、当業者に公知のいずれの他の免疫刺激剤も用いることができることはこれにより理解されよう。本明細書で用いられる“免疫刺激剤”という用語は、好ましくは特異的な免疫応答(例えば特定の病原体に対する免疫応答)を開始又は高めることなく、免疫応答を始動させることができる任意の物質又は組成物を意味する。免疫刺激剤の適切な用量での投与はさらにまた別に指示される。
本明細書で用いられる“動物”とはブタ類、ブタ又は仔豚を意味する。
【0035】
好ましい実施態様の説明
以下の実施例は、本発明の好ましい材料及び方法を説明する。本明細書に記載する材料及び方法に類似又は等価であるいずれのものも本発明の実施又は試験で用いることができるが、好ましい方法、装置及び材料をこれから述べる。しかしながら、これらの実施例は単に例示のために提供され、その中のいずれも本発明の全体的範囲を限定するものと解されるべきでないことは理解されよう。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
PCV2 ORF-2抗原の調製
液体窒素保存の最初のSF+細胞培養は、Excell420培養液(JRH Biosciences, Inc., Lenexa, KS)中で、定常的に攪拌される無菌的スピナーフラスコで浮遊させながら増殖させた。培養は、25から150mLの血清無添加Excell420培養液を含む100mLから250mLのスピナーフラスコで増殖させた。細胞が、1.0−8.0x106細胞/mLの細胞密度に増殖したとき、前記細胞を0.5−1.5x106細胞/mLの播種密度で新しい容器に分割した。その後の拡張培養は、サイズが36リットルまでのスピナーフラスコ、又は300リットルまでのステンレススチールのバイオリアクターで、25−29℃で2−7日間増殖させた。
播種後、フラスコを27℃で4時間インキュベートした。続いて、各フラスコにPCV2 ORF-2遺伝子(配列番号:4)を含む組換えバキュロウイルスを接種した。PCV2 ORF-2遺伝子(配列番号:4)を含む組換えバキュロウイルスは、WO06/072065に記載されたように作製した。バキュロウイルスを接種後、続いてフラスコを27±2℃で7日間インキュベートし、この期間中再び100rpmで攪拌した。フラスコには通気キャップを用い空気の流通を可能にした。
インキュベーション後、生じた上清を採集し、細胞屑を除去するためにろ過し、さらに不活化した。上清は、その温度を37±2℃にし、二元エチレンイミン(BEI)を最終濃度5mMで上清に添加することによって不活化した。続いて、サンプルを72時間から96時間持続的に攪拌した。1.0Mのチオ硫酸ナトリウム溶液を最終濃度5mMになるように添加して、一切の残留BEIを中和した。不活化後、PCV2 ORF-2をリン酸緩衝液で緩衝させ、カルボポールを約0.5から2.5mg/用量になるように添加した。最終用量は約16μgのPCV2 ORF-2抗原を含む。
【0037】
(実施例2)
抗PCV-2免疫アッセイ
PK15(例えばATCC CCL-33)又はWO02/07721に記載のVIDO R1細胞を96ウェルプレートに播種した(約20,000から60,000細胞/ウェル)。単層細胞がほぼ65から85%コンフルエントになったとき、細胞にPCV2単離株を感染させる。感染細胞を48時間インキュベートする。培養液を取り出し、ウェルを2回PBSで洗浄する。洗浄緩衝液を捨て、細胞を冷50/50メタノールアセトン固定液(〜100μL/ウェル)で約15分、約-20℃で処理する。前記固定液を捨て、プレートを風乾する。ブタ血清サンプルの連続希釈をPBSで調製して前記プレートに添加し、血清サンプル中の抗体(存在するとして)を結合させるために約1時間36.5±1℃でインキュベートする。さらにまた、抗PCV2陽性及び陰性コントロールサンプル(陽性コントロールサンプル及び陰性コントロールサンプル)の連続希釈を平行して検査する。続いて前記プレートを3回PBSで洗浄する。このPBSを捨てる。続いてプレートを市販のヤギ抗ブタFITCコンジュゲート(PBSで1:100に希釈)で染色し、約1時間36.5±1℃でインキュベートする(前記操作は感染細胞に結合した抗体の検出を可能にする)。インキュベーションが完了した後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出し、前記コンジュゲートを捨て、プレートをPBSで2回洗浄する。UV顕微鏡を用いて前記プレートを読み取り、個々のウェルは陽性又は陰性を示す。陽性コントロール及び陰性コントロールサンプルを用いて検査系を管理する。コントロールが予想範囲内にあれば、検査結果は検査方法パラメーターに関して認容することができる。特異的IFA反応性を示す最高希釈及び各希釈の陽性ウェル数を用いて血清抗体力価を算出するか、又は50%終末点を適切なリード-ミュンヒ(Reed-Muench)の式を用いて算出する。
【0038】
(実施例3)
低い又は高い抗PCV2抗体を有する幼弱動物でのPCV2 ORF-2(Ingelvac(商標)CircoFLEXTM)の有効性
ワクチンと移行抗体との起こりうる干渉を解明するために試験を実施した。この試験では、ワクチン接種時に全試験動物の抗体力価を決定し、続いてそれら動物を低、中等度及び高抗体クラスに分類した。すなわち、相乗平均力価が<1:100は低抗体力価と考えられ、1:100から1:1000は中等度抗体力価と考えられ、>1:1000の力価は高抗体と考えられた。
試験手順
ほぼ500頭の動物を試験に含めた。試験動物を秤量し、開始時体重及び同腹仔アサインメントに関して両処置群間で均等に分けた。20日齢で全試験動物にPCV2ワクチン(Investigational Veterinary Product, IVP)の1用量(1mL)、又はアジュバント添加細胞培養上清を含むプラセボ(コントロールプロダクト, CP)の1用量(1mL)を頸部の右側に筋肉内注射により投与した。試験動物は肥育終了まで観察を続けた。全試験動物の血液サンプルを採集し、引き続いてワクチン接種時の抗体力価の決定のためにIFATによって分析した。これに続いて、開始時抗体力価と体重増加との相関性を調べた。さらにまた、開始時抗体力価にしたがい、動物を3つのクラスに分類し(低、中等度、高開始時抗体力価)、両処置群の‘高力価’動物を続いて体重増加及びウイルス血症に関して起こりうる相違について比較した。
結果
開始時抗体力価
ワクチン接種時に、大半の動物は、中等度抗体力価(1:100から1:1000と定義)又は高抗体力価(>1:1000と定義)を有していた。ほぼ13%の動物のみが低抗体力価(<1:100と定義)を有していた。試験開始時にPCV2感染は存在しないので、試験0日目の抗体力価はおそらく母親に由来したものと考えることができる。2つの処置群間で試験0日目の抗体力価に有意な相違は観察されなかった。各力価クラス当たりの動物のパーセンテージに関する概略は図1に提供される。
ワクチン接種時の抗体力価と血中ウイルス血症との相関性
ワクチン接種時の高抗体力価(>1:1000)がウイルス血症に対して影響を有するか否かを決定するために、開始時高抗体力価を有するワクチン接種及びプラセボ処置動物を、ウイルス血症の開始、終結、期間、陽性サンプリング日数及びウイルス保持量に関して比較した。表1は、両処置群から得られた‘高力価動物’のウイルス血症パラメーターの比較の要旨である。
【0039】
表1:‘高力価動物’における両処置群ウイルス血症パラメーターの比較

gE:1mL当たりのゲノム等価物の合計
P:群間比較のためのウィルコクソンマン-ホイットニー検定;
ns:有意ではない、p>0.05;**有意である、p≦0.01;***有意である、p≦0.001
【0040】
プラセボ処置の高力価動物と比較して、ワクチン接種高力価動物は、試験の全過程でウイルス血症期間の9.5日短縮、ウイルス血症の11.9日早い終結、ウイルス血症サンプリング日数の1.9日減少、及びゲノム等価物合計/mLのほぼ2倍低下を示した。これらの結果は、高い移行抗体の存在下でもまたIVPはなお血中ウイルス血症(ウイルス血症の終結、ウイルス血症の期間、ウイルス保持量)を有意に低下させることができることを示している。
【0041】
ワクチン接種時の抗体力価と体重増加との相関性
次に、開始時抗体力価が試験の全過程で体重増加に何らかの影響を有するか否かを調べた。表2は、スペァマン順位係数及びp値の計算によって決定した、種々の時間間隔における開始時抗体力価と体重増加の相関性を示す。
高い移行抗体力価は飼育期の体重増加進行に負の影響を与えることを示す、統計的に有意な負の相関性が、抗体力価と体重増加との間で試験0週から7週で両処置群について見出された。種々の時間間隔における開始時抗体力価と体重増加との間のその他の統計的に有意な相関性は見出されなかった。したがって、移行抗体力価レベルは、ワクチン接種動物においてもプラセボ処置動物においても体重増加に対して10週齢(試験7週)以降影響を及ぼさないと結論することができる。
【0042】
表2:試験全過程におけるワクチン接種時のPCV2抗体力価と体重増加との相関性

r:スペァマン順位相関係数
P:r=0に対する検定のp値;ns:有意ではない、p>0.05;**有意である、p≦0.01
n:動物数
【0043】
この発見と一致して、ワクチン接種群の低力価及び高力価動物を比較したとき、生体体重に関して相違を見出すことはできなかった。図2は、ウイルス血症開始後(試験17週及び22週)の体重増加は開始時抗体力価レベルとは無関係に類似していることを示す(図2)。
さらに、ワクチン接種時に高い抗体力価(>1:1000)を有するワクチン接種動物はまた、高い開始時抗体力価を有するプラセボ処置動物と比較して、ウイルス血症開始後に有意に高い体重を示した。図3で認められるように、試験17週及び試験22週の体重(LSMean)は実際、プラセボ処置‘高力価動物’よりもワクチン接種‘高力価動物’で有意に高かった(試験17週:1.55kg、p=0.0328;試験22週:3.06kg、p=0.0007)。これらの発見を総合すれば、IVPとワクチン接種時の抗体力価との干渉は存在しないことが示されている。
結論
起こりうる移行抗体干渉の分析のために、開始時抗体力価と2つの有効性パラメーター、血中ウイルス血症及び生体体重との相関性を調べた。プラセボ処置‘高力価動物’と比較して、以下の統計的に有意な発見がワクチン接種‘高力価動物’について認められた。
−体重増加の低下の緩和
−ウイルス血症期間の短縮及びウイルス血症の早期終結
−ウイルス保持量の低下
【0044】
(実施例4)
抗PCV2抗体を有する幼弱動物における類リンパ枯渇、類リンパの炎症及び類リンパの免疫組織化学(IHC)に関するPCV2 ORF-2(Ingelvac(商標)CircoFLEXTM)の有効性
このワクチン接種−チャレンジ盲検の目的は、母親由来ブタシルコウイルス2型(PCV2)抗体の存在下で、ブタシルコウイルスワクチン(2型、死滅バキュロウイルスベクター)を接種されたブタはどの日齢で免疫を確立させるかを判定することであった。チャレンジ後に3つの主要パラメーターについて分析した。これら3パラメーターには類リンパ枯渇、類リンパの炎症、及び類リンパの免疫組織化学(IHC)が含まれていた。母親由来のPCV2抗体の存在下で免疫を明示するためには、通常的に飼育し、3週齢又は8週齢でPCV2ワクチンを接種したブタが、3週齢でコントロールプロダクトにより処置されたチャレンジコントロールブタと比較して類リンパ枯渇、類リンパの炎症、及び類リンパIHCについて統計的に有意な相違(p<0.05)を示さなければならない。
試験手順
120頭の通常的に飼育したブタ(0日目(D0)に21日齢)を完全に無作為に5処置群の1つに振り分けた。D0に、血液サンプルを全てのブタから採集した。
−群1aは3週齢で研究用獣医プロダクト(IVP;PCV2参照ワクチン)で処置された。
−群1bは8週齢で研究用獣医プロダクト(IVP;PCV2参照ワクチン)で処置された。
−群2は3週齢でコントロールプロダクト(CP)で処置された。
ワクチン接種後D-1からD59までブタを臨床アセスメントについて観察した。さらに追加のチャレンジ前血液サンプルをD14、D28、D42、D56及びD63に採集した。チャレンジ前の群のPCV2血清学的相乗平均力価(GMT)の要旨は下記の表3に示されている。
【0045】
表3:群のチャレンジ前PCV2血清学的相乗平均力価

【0046】
残りのブタはいずれも、不完全フロイントアジュバント(ICFA)に乳化させたキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の2.0mLをIMでD60(ポストチャレンジ日(DPC)-3)及びD66(DPC3)に投与された。D63(DPC0)に、残りのブタは、PCV2アイオワ州立大学獣医診断研究室(ISUVDL)チャレンジ材料の1.0mL(4.75 log10 TCID50/mL)をIMで、及び同じ材料の1.0mLをINで投与された。体重、直腸温度、臨床観察、鼻汁スワブをチャレンジの日及びチャレンジ後定期的に採集した。各ブタの剖検時に、肉眼病巣を記録し、肺及び類リンパ組織サンプルを採集した。肺及び類リンパ組織を、病巣についてはISUVDLによって顕微鏡的に、PCV2抗原の存在についてはIHC検査によって調べた。本試験のチャレンジ期の一般的な記述は下記の表4に示されている。
【0047】
表4:試験のチャレンジ期

【0048】
D86に、相乗平均力価は、それぞれ906.6、2447.1、2014.9であった。
結果
D63にPCV2チャレンジ暴露及びその後の剖検の後、群1aは、群2と比較したときいずれも、類リンパ枯渇について陽性のブタの統計的に有意に低い割合(p=0.0084)、類リンパの炎症について陽性のブタの低い割合(p=0.0079)、及びIHC陽性類リンパ組織を有するブタの低い割合(p=0.0031)を示した。PCV2チャレンジに続いて、群1bは、群2と比較したときいずれも、類リンパ枯渇について陽性のブタの統計的に有意に低い割合(p=0.0148)、類リンパの炎症について陽性のブタの低い割合(p=0.0036)、及びIHC陽性類リンパ組織を有するブタの低い割合(p=0.0013)を示した。群1a、1b及び2の主要な有効性パラメーターの結果の要旨は下記の表5に示されている。
【0049】
表5:群2と比較した群1a及び1bの主要な有効性パラメーターの結果の要旨

*群2と比較したp値−フィッシャー精密検定
【0050】
顕微鏡的な肺の炎症について群2と比較して群1a及び1b間に有意な相違があったが(p≦0.0407)、IHC検査によってPCV2抗原について陽性を示す肺組織検査に関してこれらの群間で有意な相違は存在しなかった(p≧0.2317)。群2と比較して、群1a及び1b間でワクチン接種後臨床アセスメント、ADG、チャレンジ後臨床徴候、発熱、鼻のPCV2排出、%総肺スコア及びリンパ節症について有意な相違は存在しなかった。
結論すると、群1a(3週齢でワクチン接種、さらにワクチン接種時に556.6のGMTを有する)は、群2と比較して、類リンパ枯渇、類リンパの炎症、およびIHC検査によるPCV2抗原陽性類リンパ組織検査から有意に防御された。群1b(8週齢でワクチン接種、さらにワクチン接種1週間前に151.6のGMTを有する)は、群2と比較して、類リンパ枯渇、類リンパの炎症、およびIHC検査によるPCV2抗原陽性類リンパ組織検査から有意に防御された。母親由来のPCV2抗体を有するブタは、3週齢でワクチン接種したとき、ブタシルコウイルス関連疾患(PCVAD)から防御された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PCV2抗体を有し、及び/又は1から22日齢である動物における、
a)PCV2感染の治療若しくは予防のための方法、又は
b)PCV2感染によって惹起されるか若しくはPCV2感染に付随する臨床徴候の緩和のための方法であって、前記方法が、そのような処置を必要とする当該動物に有効量のPCV2抗原を投与する工程を含む、前記治療若しくは予防又は緩和のための方法。
【請求項2】
前記抗PCV2抗体が移行抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が、PCV特異的免疫アッセイで1:100を超える抗PCV2抗体力価を有する、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記動物が、PCV特異的免疫アッセイで1:1000を超える抗PCV2抗体力価を有する、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
前記治療される動物が、PCV2抗原が投与される時点で当該抗PCV2抗体力価を有する、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記PCV2抗原が7日齢以降に投与される、請求項1から5のいずれかの項に記載の方法。
【請求項7】
前記PCV2抗原が14日齢以降に投与される、請求項1から6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
前記PCV2抗原が7週齢を過ぎないで投与される、請求項1から7のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療又は予防が、同じ種の未処置コントロール群の動物と比較したとき、5日以上のウイルス血症期の短縮をもたらす、請求項1から8のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
前記PCV2抗原が、PCV2のORF-2と少なくとも80%相同性を有するポリペプチドである、請求項1から9のいずれかの項に記載の方法。
【請求項11】
前記PCV2抗原が、組換えバキュロウイルスによって発現されるPCV2のORF-2である、請求項1から9のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
前記PCV2抗原がIngelvac(商標)CircoFLEXTMである、請求項1から11のいずれかの項に記載の方法。
【請求項13】
前記PCV2抗原の0.5から18μg/用量が、そのような処置を必要とする当該動物に投与される、請求項1から12のいずれかの項に記載の方法。
【請求項14】
PCV2抗原の1用量のみが、そのような処置を必要とする当該動物に投与される、請求項1から13のいずれかの項に記載の方法。
【請求項15】
前記PCV感染の治療又は予防が、同じ種の未処置コントロール群の動物と比較して、体重増加の低下の軽減、ウイルス血症期間の短縮、ウイルス血症のより早期の終了、ウイルス保持量の低下、又はその組合せから成る群から選択されるワクチン有効性パラメーターにおける改善をもたらす、請求項1から14のいずれかの項に記載の方法。
【請求項16】
前記動物がブタである、請求項1から15のいずれかの項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513315(P2010−513315A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541620(P2009−541620)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/087628
【国際公開番号】WO2008/076915
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】