説明

PDE―IV抑制剤としてのキラルフェニルジヒドロフラノン

ラセミ体及びエナンチオマー純粋なキラルフェニルジヒドロフラン、その製造及び薬剤中でのその使用(cAMP−特異的ホスホジエステラーゼIVの選択的抑制)が記載されている。

【発明の詳細な説明】
PDE−IV抑制剤としての キラルフェニルジヒドロフラノン本発明は新規のキラルフェニルジヒドロフラノンの誘導体、その製法及びその薬剤としての使用に関する。
cAMP−特異的ホスホジエステラーゼIVの選択的抑制剤(cAMP−PDEIV抑制剤)が薬理特性を有し、そのことに基づき薬剤調合物中の好適な作用物質であることは公知である。効果を改善するために、数多くの分子変性が試みられたが、所望に効果を上昇させることはできなかった。
ところが意外にも、式Iの化合物は、代謝的に非常に安定で、非常に強力な選択的cAMP−PDE IV抑制剤であることが判明した。
本発明は式I:

[式中、R1は8個までのC−原子を有する炭化水素基を表し、かつ R2はC1〜C4−アルキルを表す]のラセミ化合物及びエナンチオマー純粋な化合物に関する。
炭化水素基R1としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びシクロアルキルアルキルが好適である。
アルキル基R1は、6個までの炭素原子を有するのが有利であり、かつアルキル基R2と同様に直鎖又は分枝鎖であってよく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、2−メチル−ブチル、2,2−ジメチルプロピル及びヘキシルである。
炭化水素基がアルケニル又はアルキニルを表す場合には、例えば4個までのC−原子を有するビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、3−メチル−2−プロペニル及び2−プロピニルを挙げることができる。
シクロアルキル基は3〜7個のC−原子を有し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。
シクロアルキルアルキル基R2としては、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C2−アルキルがこれに該当し、例えばシクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロペンチルメチルが特にこれに該当する。
式Iの化合物は1つ以上のキラル中心を有し、かつラセミジアステレオマー混合物並びに個々の異性体を包含する。
本発明の目的は、式Iの化合物の製法及びその異性体である。
式Iの化合物の製造は、ヨウ化サマリウム(II)
及びプロトン供与体の存在下に式II

[式中、R1及びR2は前記の意味を有する]の化合物をアクリル酸エステルと反応させ、かつ所望の場合に引き続き異性体に分離することを特徴とする。
ヨウ化サマリウム(II)により誘起されるアクリル酸エステルと式IIの化合物との結合を通常、室温で行い、その際、ヨウ化サマリウム(II)2モル当量と基剤1モル当量とを溶剤中で反応させる。溶剤としては殊にテトラヒドロフランが好適である。サマリウム粉末で安定化されたTHF中の0.1モル溶液の形のヨウ化サマリウム(II)を、ALDRICH社から入手することができる。プロトン供与体としてのアルコール、例えばメタノール、エタノール又はt−ブタノールの添加は副生成物の生成を抑制し、かつ穏やかな条件下に非常に良好な収率で本発明の化合物を製造することを可能にする。反応は数分又は数時間後に終了させることができる。
添加剤、例えばテトラメチルエチレンジアミン又はヘキサメチルホスホルアミドの添加により反応速度を高め、かつ収率を上昇させることができる。アクリル酸のエステルとしては殊に、アルキルエステルが好適であるが、他のエステルも使用可能である。
異性体は慣用の方法で、例えばクロマトグラフィー、結晶化又はキラル助剤を用いてのジアステレオマー混合物への移行によりエナンチオマーに分離することができる。式Iの光学活性フェニルジヒドロフラノンは、相応するラセミ化合物から、キラルカラムでのクロマトグラフィーにより得ることができる。
式Iの新規化合物及びその異性体は、ホスホジエステラーゼIVの抑制剤であり、かつ所定の処置を介してcAMP−代謝で、多様性な生化学反応での情報伝達体の分子基質であるこの重要な細胞内伝達物質の信号機能に影響を及ぼす。作用特性の様々な各アスペクトは、これらの薬理学的ベース構造に帰すことができ、これは、特に消炎作用及び良好な神経心理学的効果に関する説明の基礎をもたらす。
その作用特性に基づき、式Iの化合物は神経変性疾患、例えば痴ほう、パーキンソン病、うつ病、炎症性疾患、例えば関節炎、ショック症状、敗血症、肺疾患、骨吸収障害、HIV−感染、大脳マラリア、多発性硬化症及び炎症性皮膚疾患の治療のために好適である。更に、本発明の化合物は、気管支痙攣鎮痙作用、抗増殖作用、栓球凝集抑制作用及び子宮収縮抑制作用を示す。
式Iの化合物はTNF−生産も抑制し、従ってTNFの活性を経て仲介される疾患の治療のために好適である。
TNFにより仲介される疾患とは、TNFの生産により開始される疾患も、かつTNFにより他のサイトカイン、例えばIl−1又はIl−6が影響を受ける疾患のことである。
TNFとは、TNF−αとTNF−βとのことであり、これらは両方とも、式Iの化合物により拮抗される。TNF−αが有利に抑制される。
式Iの化合物は従って、TNFの刺激により開始される生物での疾患の治療及び予防のために使用される医薬プレパラートの製造のために好適である。過剰又は非制御TNF−刺激により影響される疾患としては例えば、アレルギー及び炎症性疾患、自己免疫疾患、肺疾患、伝染性疾患及び骨吸収障害が公知であり、例えば、リウマチ様関節炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風、敗血症、敗血症性ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症、毒素ショック症候群、ARDS(急性呼吸困難症候群)、肺型サルコイド症、喘息、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、嚢胞性線維症を含む繊維症及びアテローム、熱病(Pyresis)、疼痛、腎炎、珪粉症、悪液質、潰瘍性大腸炎、肉芽腫性大腸炎、クローン病、骨粗鬆症、再潅流後の器官障害である。
更に本化合物は、感染症、例えば、HIV−、ボルナー、エプスタインー、バールー、メーザー(maser)−、アルボウイルスー病原体でのウイルス感染、特に中枢神経系、寄生虫感染症、例えば大脳マラリア、熱病、筋肉痛、HIV、AIDS、悪液質及び狂牛病の治療に好適である。式Iの化合物で治療することができる他の疾患は、多発硬化症、らい病、糖尿病、尿崩症、白血病、全脳炎、大脳障害、例えばうつ病、老人性痴呆、多発梗塞、痴ほう及び卒中発作である。式Iの化合物は、炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、接触性皮膚炎、リウマチ性関節炎、エリテマトーデス、日焼け、湿疹の治療にも使用することができる。
前記の適応症での式Iの化合物の効果は、相応する通常の薬理学的試験で、例えばホスホジエステラーゼタイプIV(PDE IV)−抑制剤を同定するラットの頭部痙縮反応及び毛づくろい反応により示すことができる。雄のウィスターラットに化合物を腹膜内(i.p.)投与し、かつ注射後15分〜75分の頭部痙縮及び毛づくろいの出現を観察により把握する。
中枢神経系への効果を、インビトロ中のラットホモジェネートの放射能マーキングされたロリプラム(Rolipram)の抑制能を測ることにより測定する(Eur.J.Pharmacol.,Vol.127,105-115(1986))。IC50−値(50%抑制効果が生ずる各濃度)を、次の式で算出される抑制定数Kiに変えた: Ki=IC50/[1+(L/KD)]
[式中、Lは放射能トレーサーの濃度を、KDは別に測定される3H−ロリプラム結合の分解定数を表す]。


薬剤を慣用の方法で製造するが、その際、作用物質を好適な担持剤、助剤及び/又は添加物を用いて、腸内又は腸管外投与に好適な薬剤プレパラートの形にした。こうして得られた調合物は、ヒト及び獣医学において薬剤として使用することができる。投与は、経口又は舌下でカプセル又は錠剤の形の固体として、又は溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾル又はエマルジョンの形の液体として、又は座薬の形で直腸で、又は場合により使用可能な注射溶液の形で皮下、筋肉内又は静脈内で、又は局所又はくも膜下で行うことができる。所望の薬剤処方のための助剤としては、当業者に公知の不活性有機及び無機担持剤、例えば水、ゼラチン、アラビアゴム、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、チョーク、植物油、ポリアルキレングリコール等が好適である。場合により更に、貯蔵剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤又は浸透圧を変えるための塩又は緩衝剤を含むことができる。
薬剤プレパラートは固体の形で、例えば錠剤、糖衣丸、坐剤、カプセルとして、又は液体の形で、例えば溶液、懸濁液又はエマルジョンとして存在してよい。
担持剤系として、界面活性助剤、例えば塩、コレステリン酸又は動物性リン脂質又は植物性リン脂質及びそれらの混合物並びにリポソーム又はその成分を使用することもできる。
経口投与のためには殊に、タルク及び/又は炭化水素担持剤又は−バインダー、例えばラクトース、トウモロコシデンプン又は馬鈴薯デンプンを含む錠剤、糖衣丸又はカプセルが好適である。この投与は、液体の形で、例えば場合により甘味剤を添加したジュースとして行うこともできる。
式Iの化合物を、TNF−生産を通常又は低めた値に低下させるために十分な用量で投与する。
作用物質の用量は、投与方法、患者の年齢及び体重、治療すべき疾患の種類及び重度及び類似のファクターにより変動しうる。一日用量は0.1〜25mg、有利に0.5〜5mgであり、その際用量を一回投与単独用量として、又は2回以上の一日用量に分けて投与することができる。
出発化合物の製造が記載されていない場合には、これらは、文献から公知であるか、又は公知の化合物と同様に又はここに記載されている方法で製造することができる。
次の例で本発明を詳述する。
出発化合物: 3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシアセトフェノン エタノール60ml中の3−ヒドロキシ−4−メトキシアセトフェノン2.0gの溶液に、炭酸カリウム3.0gの添加の後に撹拌下に、ブロムシクロペンタン2.0mlを滴加し、引き続き還流下に5時間沸騰加熱する。塩の濾別の後に、溶剤を真空下に蒸発させ、かつ残留物を170℃及び0.15ミリバールで、球管を用いて2回蒸留する。収量2.4g、融点56℃。
3−シクロブチルオキシ−4−メトキシアセトフェノン 無水ジメチルホルムアミド60ml中の3−ヒドロキシ−4−メトキシアセトフェノン3.0gの溶液に窒素下に、55%水酸化ナトリウム−オイル懸濁液1.31gを添加し、かつ60℃で30分間撹拌する。ブロムシクロブタン3.0gの添加の後に、反応混合物を110℃に3時間加熱し、引き続き真空中で、半分に濃縮し、かつNaCl−含有氷水中に撹拌導入する。ジエチルエーテルを用いて抽出し、抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で濃縮させた。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。1.77g(融点72℃)が溶離される。
3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−プロピオフェノン ジエチルエーテル5ml中のマグネシウム1.1gの懸濁液に、ジエチルエーテル11.5ml中のヨウ化エチル3mlの溶液を滴加する。相応するグリニャール−反応試薬が形成される。この溶液中に1時間かけて、ジエチルエーテル65ml中の3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンズアルデヒド6.61gの溶液を滴下する。引き続き、反応混合物に飽和塩化アンモニウム溶液10mlを添加するが、その際生じる沈殿物を吸引濾過し、かつエーテル相の濾液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。粗製1−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−プロパノール6.5gからなる残留物を純粋なアセトン45ml中に溶かし、かつ氷冷下にそれに8Nジョーンズ試薬7mlを滴下する。室温で15分撹拌し、水を添加し、かつ酢酸エチルで抽出する。抽出物を乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。油状生成物として3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−プロピオフェノン5.23gが溶離される。
例1 5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素排除下に、テトラヒドロフラン10ml中の3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシアセトフェノン1.0g、アクリル酸エチルエステル500mg及びt−ブタノール350mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で15時間放置し、引き続き、20%塩酸100ml中に注入する。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。黄色油状物の残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。結晶の(R,S)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン805mgが溶離される:融点59.6℃。
B. (R,S)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−

m)で、ヘキサン−ジオキサン混合物(15:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。油状の(R)−(+)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン170mg:[α]D=+24.5°(CHCl3)並びに油状の(S)−(−)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン220mg:[α]D=−24.2°(CHCl3)が溶離される。
例2 5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン5ml中の4−メトキシ−3−プロポキシアセトフェノン860mg、アクリル酸メチルエステル500mg及びt−ブタノール350mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で2時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。(R,S)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン770mgが溶離される:融点67.0℃。
B. (R,Z)−5(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノ

キサン−ジオキサン混合物(15:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。
(R)−(+)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン242mg:融点82.3℃、[α]D=+27.4°(CHCl3)並びに(S)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン190mg:融点83.3℃、[α]D=−24.2°(CHCl3)が溶離される。
例3 5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン10ml中の3−イソブチルオキシ−4−メトキシアセトフェノン1.35g、アクリル酸エチルエステル850mg及びt−ブタノール595mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で3時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。(R,S)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン890mgが油状生成物として溶離される。
B. (R,S)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−

で、ヘキサン−ジオキサン混合物(15:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。油状の(R)−(+)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン190mg:[α]D=+23.1°(CHCl3)並びに(S)−(−)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン180mg:[α]D=−24.
0°(CHCl3)が溶離される。
例4 5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン10ml中の3−シクロブチルオキシ−4−メトキシアセトフェノン1.30g、アクリル酸メチルエステル890mg及びt−ブタノール625mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で16時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)
で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。(R,S)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン1.0gが溶離される:融点67.
6℃。
B. (R,S)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2

)で、ヘキサン−ジオキサン混合物(15:1)を用いてクロマトグラフィ一処理する。(R)−(+)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン310mg:融点75.7℃、[α]D=+30.3°(CHCl3)並びに(S)−(−)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン210mg:融点75.7℃、[α]D=−28.6°(CHCl3)が溶離される。
例5 5−(3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン15ml中の3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシアセトフェノン1.06g、アクリル酸メチルエステル890mg及びt−ブタノール625mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で1時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。(R,S)−5−(3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン840mgが溶離される:融点88.2℃。
B. (R,S)−5−(3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチルージヒドロ

μm)で、ヘキサンージオキサン混合物(15:1)を用いクロマトラフィ一処理する。(R)−(+)−5−(3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン310mg:融点110.4℃、[α]D=+23.0°(CHCl3)並びに(S)−(−)−5−(3−シクロプロピルメトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン270mg:融点109.4℃、[α]D=−24.5°(CHCl3)が溶離される。
例6 5−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン5ml中の3−エトキシ−4−メトキシアセトフェノン710mg、アクリル酸メチルエステル500mg及びt−ブタノール350mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で2時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。(R,S)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン570mgが溶離される:融点71.2℃。
例7 5−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、テトラヒドロフラン8ml中の3−エトキシ−4−メトキシアセトフェノン1.12g、アクリル酸メチルエステル890mg及びt−ブタノール625mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で15時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。
(R,S)−5−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン540mgが油状生成物として溶離される。
例8 5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−エチル−ジヒドロ−2−フラノン A. テトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(II)の0.1M溶液100mlに、厳密な酸素遮断下に、10mlテトラヒドロフラン中の3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシプロピオフェノン1.0g、アクリル酸エチルエステル500mg及びt−ブタノール350mgの溶液を添加する。反応溶液を十分に混合し、室温で5時間放置し、引き続き20%塩酸100ml中に注ぐ。室温で2時間撹拌し、かつジエチルエーテルを用いて抽出する。エーテル相をチオ硫酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ真空中で蒸発させる。黄色油状残留物をシリカゲルカラム(Kromasil 100/10μm)で、ヘキサン−t−ブチルメチルエーテル混合物(4:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。油状(R,S)−5−(3-シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−エチル−ジヒドロ−2−フラノン770mgが溶離される。

【特許請求の範囲】
1.式I

[式中、R1は8個までのC−原子を有する炭化水素基を表し、かつ R2はC1〜C4−アルキルを表す]のラセミ化合物又はエナンチオマー純粋な化合物。
2. 請求項1に記載の(R,S)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−メチルージヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチルージヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチルージヒドロ−2−フラノン、 (R)−(+)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (S)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R)−(+)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (S)−(−)−5−(3−イソブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(3−シクロプロピルメチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R)−(+)−5−(3−シクロプロピルメチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (S)−(−)−5−(3−シクロプロピルメチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R)−(+)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (S)−(−)−5−(3−シクロブチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R,S)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (R)−(+)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン、 (S)−(−)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−ジヒドロ−2−フラノン。
(R,S)−5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−エチル−ジヒドロ−2−フラノン。
3. 請求項1又は2に記載の化合物を含有する薬剤。
4. 腫瘍壊死因子の活性により伸介される疾患を治療するための薬剤を製造するための請求項1又は2に記載の化合物の使用。
5. 多発性硬化症を治療するための薬剤を製造するための請求項1又は2に記載の化合物の使用。
6. 請求項1に記載の化合物の製法において、ヨウ化サマリウム(II)及びプロトン供与体の存在下に式II:

[式中、R1及びR2は前記の意味を有する]の化合物をアクリル酸エステルと反応させ、かつ所望の場合には引き続き異性体を分離することを特徴とする、請求項1に記載の化合物の製法。

【公表番号】特表2000−510105(P2000−510105A)
【公表日】平成12年8月8日(2000.8.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−537603
【出願日】平成9年4月22日(1997.4.22)
【国際出願番号】PCT/DE97/00826
【国際公開番号】WO97/40032
【国際公開日】平成9年10月30日(1997.10.30)
【出願人】
【氏名又は名称】シエーリング アクチエンゲゼルシヤフト