説明

PLL回路

【目的】 PLL回路のジッタを評価することを可能とし、PLL回路を形成した半導体装置の性能評価の精度を向上させることを可能とする。
【構成】 位相同期ループ回路10から出力されるジッタをパルス抽出回路751〜754で抽出し、そのジッタであるパルス信号が所定時間内に所定数に達したか否かをカウンタ761〜764で判別し、その判別結果に基づいてサーモメータデコーダ77がジッタの程度を表す評価信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体チップ上に形成されるPLL回路に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、LSI(大規模集積回路)においては、動作が高速化されてきている。ところが、動作の高速化に伴ってLSIの内部クロックの遅延が目立つようになってきており、この内部クロックの遅延は、LSIの高速化を阻害する。このような事情により、内部クロックの遅延を解消するために、内部クロックが外部クロックと同位相で生成するように、内部クロックの位相を外部クロックの位相の基準値にロックさせる制御を行なうPLL回路が、LSIの半導体チップ上に形成されるようになってきている。そして、前記PLL回路のロック状態を検出する回路として、たとえば、特開昭64−24630、特開平2−284521、特開平1−129614、特開平3−159318および特開平3−206725に開示されたようなPLLロック検出回路が前記半導体チップ上に形成されるようになってきている。
【0003】図11は、従来のPLLロック検出回路を含むPLL回路の構成を示すブロック図である。
【0004】まず、位相同期ループ回路10の構成について説明する。位相比較回路2には、入力端子1から基準入力信号Rが与えられるとともにVCO(電圧制御発振器)5からの帰還信号Vが与えられる。位相比較回路2では、基準入力信号Rの位相と帰還信号Vの位相とを比較し、これらの信号の位相を一致させるべくその位相差に応じたパルス幅のパルス信号である、アップ信号U(ローレベル信号)と、ダウン信号D(ハイレベル信号)とを出力する。アップ信号Uは、VCO5の出力信号の位相を進める信号であり、ダウン信号DはVCO5の出力信号の位相を遅らせる信号である。
【0005】チャージポンプ3は、電源電圧を受ける電源端子31と、接地端子32との間にPMOSトランジスタ33およびNMOSトランジスタ34を直列接続してなる。このチャージポンプ3においては、PMOSトランジスタ33のゲートに位相比較回路2からアップ信号Uが与えられ、NMOSトランジスタ34のゲートに位相比較回路2からダウン信号Dが与えられる。チャージポンプ3では、PMOSトランジスタ33およびNMOSトランジスタ34の動作によりアップ信号Uおよびダウン信号Dを電圧パルスに変換し、その電圧パルスをループフィルタ4へ与える。
【0006】ループフィルタ4は、チャージポンプ3から与えられる電圧パルスを積分し、その出力をVCO5へ与える。VCO5は、ループフィルタ4の出力電圧に応じて発振周波数を変化させるものであり、アップ信号Uが出力された場合には発振周波数を上げて出力信号の位相を進め、また、ダウン信号Dが出力された場合には発振周波数を下げて出力信号の位相を送らせる。VCO5の出力信号は、出力端子6から出力されるとともに位相比較器2に帰還される。
【0007】以上のような構成の位相同期ループ回路10には、ロック検出回路7が接続される。ロック検出回路7には、位相比較器2から出力されるアップ信号Uとダウン信号Dとが与えられる。ロック検出回路7では、アップ信号Uとダウン信号Dとに基づいて位相同期ループ回路10のロック状態を検出し、その検出結果を出力する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述のような従来のロック検出回路7では、内部クロックの正確なロックの妨げとなるジッタの程度の評価を行なうことができなかったため、PLL回路を含むLSIなどの半導体装置の製品出荷前にその半導体装置の性能評価を正確に行なうことができないという問題があった。
【0009】本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、PLL回路におけるジッタの程度の評価を行なうことを可能とし、これによって、PLL回路を含む半導体装置の性能評価の精度を向上させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は、半導体チップ上に形成されるPLL回路であって、位相同期ループ手段、複数の信号抽出手段、複数の判別手段および評価信号出力手段を含む。
【0011】位相同期ループ手段は、入力信号と帰還信号との位相を比較してその位相差に応じたパルス幅のパルス信号を出力する位相比較手段を含む。複数の信号抽出手段は、前記パルス信号を受け、それぞれについて予め定められたパルス幅以上のパルス幅を有するパルス信号を抽出する。
【0012】複数の判別手段は、前記複数の信号抽出手段に対応して設けられ、各々が対応する信号抽出手段で抽出されたパルス信号を計数し、所定時間内の計数結果が所定数に達したか否かをそれぞれ判別する。評価信号出力手段は、前記複数の判別手段の判別結果に基づいて評価信号を出力する。
【0013】請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の信号抽出手段が、前記パルス信号を受ける直列接続された複数の反転手段と、前記直列接続された複数の反転手段の出力信号および前記パルス信号の論理積をとる論理積手段とを有することを特徴とする。
【0014】請求項3に記載の本発明は、半導体チップ上に形成されるPLL回路であって、位相同期ループ手段、信号選択手段、複数の信号抽出手段、複数の判別手段および評価信号出力手段を含む。
【0015】位相同期ループ手段は、入力信号と帰還信号との位相を比較してその位相差に応じたパルス幅のパルス信号を出力する位相比較手段を含む。信号選択手段は、前記パルス信号、予め定められたテスト用パルス信号およびモード信号を受け、そのモード信号に応じて前記パルス信号および前記テスト用パルス信号の一方を選択的に出力する。
【0016】複数の信号抽出手段は、前記信号選択手段から出力されるパルス信号を受け、それぞれについて予め定められたパルス幅以上のパルス幅のパルス信号のみを抽出する。複数の判別手段は、前記複数の信号抽出手段に対応して設けられ、各々が対応する信号抽出手段で抽出されたパルス信号を計数し、所定時間内の計数結果が所定数に達したか否かをそれぞれ判別する。評価信号出力手段は、前記複数の判別手段の判別結果に基づいて評価信号を出力する。
【0017】
【作用】請求項1に記載の本発明によれば、各信号抽出手段における抽出すべきパルス信号のパルス幅の設定値を、位相同期ループ手段に生じるジッタが信号抽出手段にて複数段階のレベルで検出できるような値に定めておくと、どの判別手段の計数結果が所定数に達したかということを知ることができれば、PLL回路がロック状態になった後のジッタの程度を評価することができる。この評価は評価信号出力手段の評価信号に基づいて行なえる。
【0018】請求項2に記載の本発明によれば、信号抽出手段では、直列接続した複数の反転手段を通過したパルス信号は、これらの反転手段を通過しないパルス信号よりも遅延して論理積手段に与えられる。これにより、論理積手段からは、反転手段による遅延時間以上のパルス幅を有するパルス信号のみが出力される。
【0019】請求項3に記載の本発明によれば、信号選択手段によってテスト用パルス信号を各抽出手段に与えることができるので、信号抽出手段、判別手段および信号評価出力手段の動作テストが行なえる。
【0020】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】図1は、本発明のPLL回路を形成した半導体チップの回路図である。半導体チップ100上には、位相同期ループ回路10、検出回路7および処理回路20が形成される。位相同期ループ回路10には処理回路20へ与える内部クロックの位相の基準値となる基準入力信号(外部クロック)が与えられる。位相同期ループ回路10では前記内部クロックの位相が基準入力信号の位相に一致するように前記内部クロックの位相を制御する。
【0022】位相同期ループ回路10における位相制御用の信号(アップ信号Uおよびダウン信号D)は、検出回路7に与えられる。検出回路7にはその他にもテスト用パルス信号、モード信号およびリセット信号が与えられる。検出回路7では、前記アップ信号U、前記ダウン信号Dおよびリセット信号に基づいて位相同期ループ回路10のロック状態の検出およびジッタの程度の検出を行なう。その他にも検出回路7では、前記モード信号に応じて与えられるテスト用パルス信号と、前記リセット信号に基づいて検出回路7の動作テストを行なう。検出回路7の検出結果は半導体チップ100の外部へ出力される。
【0023】図2は、本発明のPLL回路の構成を示すブロック図である。まず位相同期ループ回路10の構成について説明する。入力端子1から位相比較回路2に基準入力信号Rが与えられ、また、位相比較回路2にはVCO(電圧制御発振器)5からの帰還信号Vが与えられる。位相比較回路2では、基準入力信号Rの位相と帰還信号Vの位相とを比較し、これらの信号の位相を一致させるべくその位相差に応じたパルス幅のパルス信号である、アップ信号U(ローレベル信号)と、ダウン信号D(ハイレベル信号)とを出力する。アップ信号Uは、VCO5の出力信号の位相を進める信号であり、ダウン信号DはVCO5の出力信号の位相を遅らせる信号である。
【0024】チャージポンプ3は、電源電圧を受ける電源端子31と、接地端子32との間にPMOSトランジスタ33およびNMOSトランジスタ34を直列接続してなる。このチャージポンプ3においては、PMOSトランジスタ33のゲートに位相比較回路2からアップ信号Uが与えられ、NMOSトランジスタ34のゲートに位相比較回路2からダウン信号Dが与えられる。チャージポンプ3では、PMOSトランジスタ33およびNMOSトランジスタ34の動作によりアップ信号Uおよびダウン信号Dを電圧パルスに変換し、その電圧パルスをループフィルタ4へ与える。
【0025】ループフィルタ4は、チャージポンプ3から与えられる電圧パルスを積分し、その出力をVCO5へ与える。VCO5は、ループフィルタ4の出力電圧に応じて発振周波数を変化させるものであり、アップ信号Uが出力された場合には発振周波数を上げて位相を進め、また、ダウン信号Dが出力された場合には、発振周波数を下げて位相を遅らせる。VCO5の出力信号は出力端子6から出力されるとともに、帰還信号Vとして位相比較器2に帰還される。
【0026】次に、検出回路7の構成について説明する。アップ信号Uはインバータ71を介して第1信号選択器72に与えられ、ダウン信号Dはそのまま第2信号選択器73に与えられる。また、第1信号選択器72および第2信号選択器73には、入力端子7aから入力されるテスト用パルス信号と、入力端子7bから入力されるモード信号とが与えられる。
【0027】第1信号選択器72では、モード信号がローレベルである場合には、インバータ71で反転されたアップ信号Uをオアゲート74の第1の入力端子に与え、モード信号がハイレベルである場合には、テスト用パルス信号をオアゲート74の第1の入力端子に与える。また、第2信号選択器73では、モード信号がローレベルである場合には、ダウン信号Dをオアゲート74の第2の入力端子に与え、モード信号がハイレベルである場合には、テスト用パルス信号をオアゲート74の第2の入力端子に与える。
【0028】オアゲート74の出力信号はパルス抽出回路751,752,753,754にそれぞれ与えられる。パルス抽出回路751〜754は、予め定められたパルス幅以上のパルス幅を有するパルス信号を抽出する回路であり、これらが抽出するパルス信号のパルス幅の設定値はパルス抽出回路751,752,753,754の順に大きい値になっている。これらのパルス抽出回路751〜754によりそれぞれ異なる幅のジッタが抽出される。パルス抽出回路751で抽出されたパルス信号はカウンタ761に与えられる。パルス抽出回路752で抽出されたパルス信号はカウンタ762に与えられる。パルス抽出回路753で抽出されたパルス信号はカウンタ763へ与えられる。パルス抽出回路754で抽出されたパルス信号はカウンタ764へ与えられる。またカウンタ761〜764のそれぞれには入力端子7cから入力されるリセット信号が与えられる。このリセット信号は所定周期で入力される。
【0029】カウンタ761〜764は、それぞれが対応するパルス抽出回路751〜754で抽出されたパルス信号をカウントし、リセット信号の1入力周期内にカウント結果が所定数に達したか否かをそれぞれ判別する。そして、前記カウント結果が所定数に達した場合には、サーモメータデコーダ77へその次のリセット信号の入力周期の間ハイレベル信号を与える。
【0030】サーモメータデコーダ77は、カウンタ761〜764からの入力信号をデコードし、そのデコード結果をPLL回路のジッタを評価するための評価信号またはPLL回路のロック状態を表す信号として出力する。
【0031】次に、以上のように構成されたPLL回路の動作の概略について説明する。位相同期ループ回路10では、位相比較回路2において基準入力信号Rと帰還信号Vとの間に位相差がある場合には、その位相差を解消するために位相比較回路2からアップ信号Uまたはダウン信号Dが出力される。アップ信号Uがローレベルとなった場合は、PMOSトランジスタ33がオンし、チャージポンプ3から出力される電圧パルスがハイレベルとなり、VCO5が発振周波数を上げて出力信号の位相を進める。また、ダウン信号Dがハイレベルとなった場合は、NMOSトランジスタ34がオンし、チャージポンプ3から出力される電圧パルスがローレベルとなり、VCO5が発振周波数を下げて出力信号の位相を遅らせる。このようにして、位相同期ループ回路10では、出力信号の位相が制御される。
【0032】検出回路7では、モード信号がローレベルとなっている場合には、第1信号選択器72および第2信号選択器73の選択動作と、オアゲート74の動作により、アップ信号Uがローレベルとなったときまたはダウン信号Dがハイレベルとなったときにパルス抽出回路751〜754にパルス信号が与えられる。
【0033】そして、パルス信号の入力があると、パルス抽出回路751〜754が、それぞれのパルス幅の設定値に応じてパルス信号を抽出し、抽出されたパルス信号がカウンタ761〜764に与えられる。カウンタ761〜764では、1リセット周期内において、与えられるパルス信号のカウント値が所定数以上になった場合にハイレベル信号をサーモメータデコーダ77へ与える。
【0034】サーモメータデコーダ77は各カウンタ761〜764から与えられる論理信号を2進数データに変換して出力する。この2進数データは、どのカウンタの出力がハイレベルになっているのかという情報を表すものである。パルス抽出回路751〜754がそれぞれ異なる幅のジッタを抽出できるように設定されているので、どのカウンタの出力がハイレベルになったかということが分かれば、そのパルス幅の設定値からジッタの程度を知ることができる。したがって、この2進数データによりPLL回路のジッタの程度を評価することが可能である。
【0035】以下に、PLL回路の各部の具体的構成について説明する。図3は、位相比較回路2の構成を示す回路図である。位相比較回路2は、2入力のナンドゲート21〜26と、3入力のナンドゲート28,29と、4入力のナンドゲート27と、インバータ20とから構成されている。第1入力端子2aから基準入力信号R、第2入力端子2bから帰還信号Vが入力される。また、第1出力端子1uからアップ信号Uが出力され、第2出力端子1dからダウン信号Dが出力される。
【0036】次に、位相比較回路2の動作について説明する。図4(a),(b)は、位相比較回路2の動作を示すタイミングチャートであり、図4(a)には、基準入力信号Rの位相に対して帰還信号Vの位相が遅れている場合の動作を示し、図4(b)には、基準入力信号Rの位相に対して帰還信号Vの位相が進んでいる場合の動作を示す。帰還信号Vの位相が進んでいる場合は、図4(a)に示されるように基準入力信号Rが立下るとアップ信号Uがローレベルに立下り、帰還信号Vが立下るとアップ信号Uがハイレベルに立上がる。すなわち、位相の遅れ分だけアップ信号Uがローレベルとなる。また、基準入力信号Rの位相が進んでいる場合は、図4(b)に示されるように帰還信号Vが立下るとダウン信号Dがハイレベルに立上り、基準入力信号Rが立下るとダウン信号Dがローレベルに立下る。すなわち、位相の進み分だけダウン信号Dがハイレベルとなる。
【0037】図5は、パルス抽出回路751〜754の各回路の構成を示す回路図である。入力端子75iとアンドゲート75bの第1の入力端子とが接続され、入力端子75iが、直列接続されたインバータ75aa,75ab,75ac,75adよりなるインバータチェイン75aを介してアンドゲート75bの第2の入力端子に接続される。アンドゲート75bの出力端子は出力端子75dに接続される。
【0038】次に、このような構成のパルス抽出回路751〜754の動作について説明する。図6は、パルス抽出回路751〜754の動作を示すタイミングチャートであり、入力75iから入力されるパルス信号X、インバータチェイン75aの出力Yおよびアンドゲート75bの出力Zを示す。パルス信号Xよりもインバータチェイン75aの遅延時間tdの分だけ遅れて出力Yがハイレベルとなる。そして、出力Zは、パルス信号Xと出力Yとが同時にハイレベルとなった時間だけハイレベルとなる。すなわち、パルス抽出回路751〜754は、パルス信号Xのパルス幅がインバータチェイン75aの遅延時間tdよりも大きい場合にのみ出力Zであるパルス信号を出力する。
【0039】図7は、カウンタ761〜764のそれぞれの構成を示す回路図である。カウンタ76aは、4ビットカウンタであり、クロック入力端子CLKにパルス抽出回路の出力であるパルス信号が与えられ、入力端子LDにリセット信号が与えられる。カウンタ76aの出力端子CoutはRSフリップフロップ回路76cのセット入力端子Sに接続される。カウンタ76aのロードバリューLVはすべて0に設定されており、リセット信号が入力されるとカウント値は0になる。
【0040】Dフリップフロップ回路76bは、入力端子Dにリセット信号が与えられる。Dフリップフロップ回路76bの出力端子QはRSフリップフロップ回路76cのリセット入力端子Rと接続される。RSフリップフロップ回路76cの出力端子Qはアンドゲート76dの第1の入力端子と接続され、反転出力端子/Qがアンドゲート76eの第2の入力端子と接続される。
【0041】アンドゲート76dの第2の入力端子およびアンドゲート76eの第2の入力端子にはリセット信号が与えられる。アンドゲート76dの出力端子はRSフリップフロップ回路76fのセット入力端子Sと接続され、アンドゲート76eの出力端子はRSフリップフロップ回路76fのリセット入力端子Rと接続される。RSフリップフロップ回路76fの出力端子Qは、サーモメータデコーダ77の入力端子に接続される。
【0042】次に、カウンタ761〜764の動作について説明する。図8はカウンタ761〜764の動作を示すタイミングチャートであり、パルス信号、リセット信号、Dフリップフロップ回路76bの出力端子Qの出力S1、カウンタ76aの出力端子Coutの出力S2、RSフリップフロップ回路76cの出力端子Qの出力S3、アンドゲート76dの出力S4およびRSフリップフロップ回路76fの出力端子Qの出力S5を示す。
【0043】リセット信号が入力されると、カウンタ76aでパルス信号のカウントが開始され、Dフリップフロップ回路76bの出力S1がハイレベルになると、RSフリップフロップ回路76cの出力S3が立下り、ローレベルに保持される。この状態では、アンドゲート76dの出力S4はローレベルであり、RSフリップフロップ回路76fの出力S5もローレベルである。
【0044】そして、このような状態において、カウンタ76aが、予め定められた数のパルス信号をカウントすると、カウンタ76aの出力S2が所定時間ハイレベルとなり、RSフリップフロップ回路76cの出力S3が立上り、ハイレベルに保持される。
【0045】その後、次のリセット信号が入力されると、アンドゲート76dの入力がともにハイレベルとなり、アンドゲート76dの出力S4は、リセット信号の継続時間だけハイレベルとなる。これにより、RSフリップフロップ回路76fの出力S5は立上り、ハイレベルに保持される。また、これと同時にリセット信号の入力によってカウンタ76aのカウント値がクリアされるとともに、出力S1が所定時間ハイレベルになり、RSフリップフロップ回路76cの出力S3がローレベルに立下り、前述のような動作が繰返される。
【0046】すなわち、リセット信号の入力の1周期中にパルス信号が所定数入力されると、その次のリセット信号の周期中に出力S5がハイレベルとなるのである。一方、リセット信号の入力の1周期中にパルス信号が所定数以上入力されない場合は、出力S2がハイレベルにならないので、その次のリセット信号の周期中はS5がローレベルになる。
【0047】次に、サーモメータデコーダ77について説明する。図9(a)〜(e)は、サーモメータデコーダ77における評価信号の変換の態様を示す図である。図9においては、カウンタ761〜764から入力される信号を最下位ビットLSB〜最上位ビットMSBに対応付けて表しており、この入力信号が図中の矢印の先に表された2進数に変換される態様を表している。すなわち、最下位ビットLSB〜最上位ビットMSBまでの入力信号がハイレベル(1)である個数を2進数で表しているのである。
【0048】具体的に説明すると、すべての入力信号がローレベル(0)である場合は、図9(a)に示すように評価信号は000で表される。最下位ビットLSBの入力信号のみがハイレベル(1)である場合は、図9(b)に示されるように評価信号は001で表される。入力信号が最下位ビットLSBから2つ目までハイレベル(1)になった場合は、図9(c)に示されるように評価信号は010となる。入力信号が最下位ビットSBから3つ目までハイレベル(1)になった場合は、評価信号は011となる。入力信号がすべてハイレベル(1)になった場合には、評価信号は100となる。
【0049】このように得られる評価信号はカウンタ761〜764のうちどのカウンタまで出力信号がハイレベルになったかを表しており、そのカウンタに対応するパルス抽出回路のパルス信号の抽出幅が予め定められているので、サーモメータデコーダ77から出力される評価信号に基づいてPLL回路のジッタの程度を知ることができる。このようなサーモメータデコーダの構成は、たとえば、図10のようになっている。図10はサーモメータデコーダ77の構成の一例を示す回路図である。図10においては、サーモメータデコーダ77の入力信号がA(LSB)〜D(MSB)で表され、評価信号が(γ,β,α)の2進数で表される。
【0050】αは、入力信号Aと入力信号Dの反転信号(インバータ86を解したもの)の論理積をとるアンドゲート81と、入力信号Bと入力信号Cとの排他的論理NORをとるイクスクルーシブノアゲート82と、これらの出力の論理積をとるアンドゲート83とにより得られる。
【0051】βは、入力信号A、入力信号Bおよび入力信号Dの反転信号の論理積をとるアンドゲート84により得られる。
【0052】γは、入力信号A,B,C,Dの論理積をとるアンドゲート85により得られる。なお、これらの回路の構成の妥当性は、図10に示すα,β,γの理論式により裏付けられる。
【0053】以上のようなPLL回路では、パルス抽出回路751〜754の抽出するパルス信号の幅がPLL回路のジッタを検出できるような設定になっているので、サーモメータデコーダから出力される評価信号に基づいて前記ジッタの程度を評価することが可能となる。またパルス抽出回路751〜754のいずれかのパルス幅の設定を位相同期ループ回路10のPLL信号のアンロック状態を検出できるような設定値にすれば、前記アンロック状態の検出を行なうことも可能である。
【0054】なお、本実施例においては、パルス抽出回路およびカウンタを4つずつ設けたが、これに限らずこれよりも多く設けてもよい。
【0055】
【発明の効果】請求項1に記載の本発明によれば、評価信号出力手段の評価信号に基づいて、信号抽出手段および判別手段により検出された、PLL回路のジッタの程度が評価できるので、PLL回路を形成した半導体装置の性能評価の精度を向上させることができる。
【0056】請求項2に記載の本発明によれば、信号抽出手段は、複数の反転手段と、論理積手段とにて構成されているため、反転手段の数を変更することにより信号抽出手段における、抽出すべきパルス信号のパルス幅を容易に変更することができる。
【0057】請求項3に記載の本発明によれば、信号切換手段によってテスト用パルス信号を各抽出手段に与えることができるので、信号抽出手段、判別手段および評価信号出力手段の動作の検証を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PLL回路を形成した半導体装置の回路図である。
【図2】PLL回路の構成を示すブロック図である。
【図3】位相比較回路の構成を示す回路図である。
【図4】位相比較回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】パルス抽出回路の構成を示す回路図である。
【図6】パルス抽出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】カウンタの構成を示す回路図である。
【図8】カウンタの動作を示すタイミングチャートである。
【図9】サーモメータデコーダにおける評価信号の変換態様を示す図である。
【図10】サーモメータデコーダの構成の一例を示す回路図である。
【図11】従来のPLLロック検出回路を含むPLL回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
7 検出回路
10 位相同期ループ回路
72,73 信号選択器
74 オアゲート
75a インバータチェイン
75b アンドゲート
77 サーモメータデコーダ
100 半導体チップ
751〜754 パルス抽出回路
761〜764 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体チップ上に形成されるPLL回路であって、入力信号と帰還信号との位相を比較してその位相差に応じたパルス幅のパルス信号を出力する位相比較手段を含む位相同期ループ手段と、前記パルス信号を受け、それぞれについて予め定められたパルス幅以上のパルス幅を有するパルス信号を抽出する複数の信号抽出手段と、前記複数の信号抽出手段に対応して設けられ、各々が対応する信号抽出手段で抽出されたパルス信号を計数し、所定時間内の計数結果が所定数に達したか否かをそれぞれ判別する複数の判別手段と、前記複数の判別手段の判別結果に基づいて評価信号を出力する評価信号出力手段とを備えた、PLL回路。
【請求項2】 前記信号抽出手段は、前記パルス信号を受ける直列接続された複数の反転手段と、前記直列接続された複数の反転手段の出力信号および前記パルス信号の論理積をとる論理積手段とを有する、請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】 半導体チップ上に形成されるPLL回路であって、入力信号と帰還信号との位相を比較してその位相差に応じたパルス幅のパルス信号を出力する位相比較手段を含む位相同期ループ手段と、前記パルス信号、予め定められたテスト用パルス信号およびモード信号を受け、そのモード信号に応じて前記パルス信号および前記テスト用パルス信号の一方を選択的に出力する信号選択手段と、前記信号選択手段から出力されるパルス信号を受け、それぞれについて予め定められたパルス幅以上のパルス幅のパルス信号のみを抽出する複数の信号抽出手段と、前記複数の信号抽出手段に対応して設けられ、各々が対応する信号抽出手段で抽出されたパルス信号を計数し、所定時間内の計数結果が所定数に達したか否かをそれぞれ判別する複数の判別手段と、前記複数の判別手段の判別結果に基づいて評価信号を出力する評価信号出力手段とを備えた、PLL回路。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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