説明

PPPoEクライアント装置

【課題】PPPoEセッションを早期に確立することができるPPPoEクライアント装置を提供する。
【解決手段】PPPoEサーバから取得したセッションIDに対応するソケットの生成完了前にセッション開始パケットを受信してこれを記憶パケットとして記憶しておき、当該ソケットの生成を完了してから当該記憶パケットの内容に基づいて前記ソケットによる通信セッションを確立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)プロトコルによるデータ通信を行なうPPPoEクライアント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PPPoEサーバとの間でPPPoEセッションを確立してデータ通信を行なうPPPoEクライアント装置が知られている。図1は、一般的なPPPoEセッション確立処理の流れを示すシーケンス図である。PPPoEセッション確立処理は、PPPoEクライアント装置がPPPoEサーバを発見するためのPPPoEディスカバリステージと、PPPoEサーバとの間でPPPセッションを確立するPPPoEセッションステージとからなる。PPPoEディスカバリステージにおいては、PADI(PPPoE Active Discovery Initiation)パケット、PADO(PPPoE Active Discovery Offer)パケット、PADR(PPPoE Active Discovery Request)パケット、及びPADS(PPPoE Active Discovery Session-confirmation)パケットが順に送受信される。PPPoEディスカバリステージからPPPoEセッションステージに移行する際には、PPPoEサーバから送信されるPADSパケットに含まれるセッションIDに対応するソケットをPPPoEクライアント装置が生成する。PPPoEクライアント装置は当該ソケットにより当該セッションIDを含むパケットを送受信してPPPoEサーバとの間でPPPoEセッションを確立する。例えば特許文献1には、PPPoEセッションを確立するまでの時間を短縮することを課題としたPPPoEクライアント装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、PPPoEディスカバリステージからPPPoEセッションステージに移行する際には以下のような問題があった。PPPoEディスカバリステージにおける最後のパケットであるPADSパケットがPPPoEサーバから送信された後、直ぐにPPPoEセッションステージの開始パケットであるLCPCONFIG REQパケットが送信される場合がある。PADSパケットの送信からLCPCONFIG REQパケットの送信までの間隔が例えば0.5ミリ秒などの非常に短い時間となることもある。この場合、PADSパケットに含まれるセッションIDに対応するソケットをPPPoEクライアント装置が生成し終わる前にLCPCONFIG REQパケットがPPPoEクライアント装置に到来する。そうすると、PPPoEクライアント装置はLCPCONFIG REQパケットを受信できなくなってしまう。PPPoEクライアント装置は、PPPoEサーバから再送されるLCPCONFIG REQパケットの到来を待つこともできるが、例えば10秒などの再送間隔の間だけ待機しなければならず、その分だけセッション確立が遅延してしまうという問題あった。また、PPPoEサーバがLCPCONFIG REQパケットの再送を行なわない設定となっている場合には、PPPoEセッションを確立できなくなってしまうという問題あった。
【0005】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、PPPoEセッションを早期に確立することができるPPPoEクライアント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるPPPoEクライアント装置は、通信網を介してPPPoEサーバにセッションID発行要求を発してセッションIDを取得すると共にセッション確立指令を発するセッションID発行要求部と、前記セッション確立指令に応じて前記セッションIDに対応するソケットの生成を開始し、当該生成が完了してから前記PPPoEサーバからのセッション開始パケットに応じて前記PPPoEサーバとの間での前記ソケットによる通信セッションを確立するセッション確立部と、を含むPPPoEクライアント装置であって、前記ソケットの生成完了前に前記セッション開始パケットを取得してこれを記憶パケットとして記憶するパケット取得記憶部を更に含み、前記セッション確立部は、前記記憶パケットの内容に基づいて前記ソケットによる通信セッションを確立することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるPPPoEクライアント装置によれば、PPPoEセッションを早期に確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一般的なPPPoEセッション確立処理の流れを示すシーケンス図である。
【図2】本発明の第1の実施例であるPPPoEクライアント装置の構成をPPPoEサーバ及び通信網と共に示すブロック図である。
【図3】データテーブルの一例を示す図である。
【図4】図2のPPPoEクライアント装置によるセッション確立処理の動作を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の第2の実施例であるPPPoEクライアント装置の構成をPPPoEサーバ、通信網、及びルータと共に示すブロック図である。
【図6】図5のPPPoEクライアント装置によるセッション確立処理の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
<第1の実施例>
図2には、本発明の実施例であるPPPoEクライアント装置1の構成がPPPoEサーバ2及び通信網3と共に示されている。PPPoEクライアント装置1は、PPPoEサーバ2との間でPPPoEセッションを確立し、通信網3を介してパケットを送受信することができる。PPPoEクライアント装置1は、例えばパケット中継機能を備えたルータである。
【0011】
WANポート11は、通信網3を介してPPPoEサーバ2との間でパケットを送受信する。
【0012】
ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEセッション確立処理のうちのPPPoEディスカバリステージ処理を行なう。詳細には、ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEサーバ2との間でPADIパケット、PADOパケット、PADRパケット、及びPADSパケットを順次送受信して当該処理を行なう。
【0013】
また、ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEサーバ2から送信されたPADOパケットがWANポート11によって受信された直後に、PPPoEクライアント装置1を宛先とするLCPCONFIG REQパケットの取得を開始すべき旨の取得開始指令をセッション開始パケット取得部14に対して発する。LCPCONFIG REQパケットは、PPPoEセッションステージの最初のパケットである。以下、当該パケットをセッション開始パケットと称する。
【0014】
また、ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEサーバ2から送信されWANポート11によって受信されたPADSパケットに含まれるセッションIDを取得する。以下、ディスカバリステージ制御部12をセッションID発行要求部とも称する。また、PADSパケットをセッションID発行パケットとも称する。ディスカバリステージ制御部12は、当該セッションIDを取得した直後に、セッションステージ制御部13に対してセッション確立指令を発する。
【0015】
セッションステージ制御部13は、PPPoEセッション確立処理のうちのPPPoEセッションステージ処理を行なう。セッションステージ制御部13は、ディスカバリステージ制御部12によって発せられたセッション確立指令に応じて、WANポート11によって受信されたPADSパケットに含まれるセッションIDに対応するソケットの生成を開始する。セッションステージ制御部13は、ソケットの生成が完了してから、PPPoEサーバ2からのセッション開始パケットに応じてPPPoEサーバとの間での当該ソケットによる通信セッションを確立する。セッションステージ制御部13は、PPPoEサーバ2との間でLCPCONFIG REQパケットすなわちセッション開始パケット、LCP CONFIG ACKパケット、LCP CONFIG REQパケット、及びLCP CONFIG ACKパケットを順次送受信することによって通信セッションを確立する。以下、セッションステージ制御部13をセッション確立部とも称する。
【0016】
セッションステージ制御部13は、ソケットの生成完了後にパケットデータ記憶部15を参照し、当該ソケットに対応するセッションIDが記憶されているか否かを判別する。記憶されていない場合には、セッションステージ制御部13は、当該ソケットに対応するセッションIDが含まれるセッション開始パケットがWANポート11によって受信されるのを待ってPPPoEサーバ2との間でのセッションを確立する。
【0017】
一方、当該生成したソケットに対応するセッションIDがパケットデータ記憶部15に記憶されている場合には、セッションステージ制御部13は、当該セッションIDに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶されているペイロードデータの内容に応じてPPPoEサーバ2との間でのセッションを確立する。
【0018】
なお、セッションステージ制御部13は、ソケットに対応するセッションIDがパケットデータ記憶部15に記憶されていると判別した後、更に次の処理を行なうこともできる。すなわち、セッションステージ制御部13は、WANポート11によって受信されたPADSパケットに含まれるMACアドレスと、当該セッションIDに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶されているMACアドレスとが一致するか否かを判別する。セッションステージ制御部13は、一致すると判別した場合に、当該セッションIDに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶されているペイロードデータの内容に応じてPPPoEサーバ2との間でのセッションを確立する。つまり、セッションステージ制御部13は、セッションIDとMACアドレスの両方が一致したと判別した場合にセッションを確立する。
【0019】
なお、セッションステージ制御部13は、ソケットの生成が完了したときに、セッション開始パケットの取得を停止すべき旨の取得停止指令をセッション開始パケット取得部14に対して発する。また、セッションステージ制御部13は、LCPCONFIG REQ及びACKパケットの送受信後に、PPPoEサーバ2との間でPAP/CHAPによる認証処理、及び、IPCPCONFIG REQ及びACKの送受信処理も行なう。
【0020】
セッション開始パケット取得部14は、ディスカバリステージ制御部12からの取得開始指令に応じて、PPPoEクライアント装置1を宛先とするLCPCONFIG REQパケットすなわちセッション開始パケットの取得を開始する。セッション開始パケット取得部14は、WANポート11によって受信されたパケットのうちからセッション開始パケットのみを取得する。セッション開始パケット取得部14は、例えばパケットヘッダに含まれる識別子に基づいて当該パケットがセッション開始パケットであることを判別する。当該識別子は、例えば、ETHER_TYPE=0x8864、PPPPROTOCOL=0xc021、PPP LCP Code=0x01からなる。セッション開始パケット取得部14は、セッション開始パケットに含まれるセッションIDの内容にかかわらず、セッション開始パケットを取得する。セッション開始パケット取得部14は、当該取得したセッション開始パケットに含まれるセッションIDとMACアドレスとペイロードデータとを対応付けてパケットデータ記憶部15に記憶させる。また、セッション開始パケット取得部14は、セッションステージ制御部13からの取得停止指令に応じて、セッション開始パケットの取得を停止する。
【0021】
パケットデータ記憶部15は、セッション開始パケット取得部14によって取得されたセッション開始パケットを記憶する(以下、当該記憶されたパケットを記憶パケットとも称する)。詳細には、パケットデータ記憶部15は、記憶パケットに含まれるセッションIDとMACアドレスとペイロードデータとを対応付けて記憶する。パケットデータ記憶部15は、取得されたセッション開始パケット毎にセッションIDとMACアドレスとペイロードデータの組を例えば図3に示されるようなテーブル形式により記憶する。2つ以上のセッション開始パケットが順次受信された場合には、「No.」の1番から順に各セッション開始パケットのセッションID等のデータが記憶される。また、セッションの終了後には、当該セッションに対応するセッションID等のデータがセッションステージ制御部13によって削除されることができる。なお、以下、セッション開始パケット取得部14とパケットデータ記憶部15とをあわせてパケット取得記憶部とも称する。
【0022】
PPPoEクライアント装置1には、例えばCPU、メモリ、HDD、バス、OS(オペレーティングシステム)等のハードウェア及びソフトウェアが含まれている。ディスカバリステージ制御部12、セッションステージ制御部13、及びセッション開始パケット取得部14(以下、これらをまとめてクライアント機能と称する)は、ハードウェアにより構成されても良いし、ソフトウェアにより構成されても良い。ソフトウェアにより構成される場合には、例えば、クライアント機能はライブラリとしてPPPoEクライアント装置1内のメモリ(図示せず)に記憶されており、OSが当該ライブラリをローディングすることにより当該クライアント機能の処理系が構成される。
【0023】
例えば、OS起動時にPPPoEセッションを確立する設定となっている場合には、OS起動時にクライアント機能がローディングされ処理系が構成される。また、OS起動後にPPPoEセッションの確立要求が発生する場合には、OSがイベントドリブン処理としてPPPoEセッションを確立するためにクライアント機能をローディングすることにより、処理系が構成される。クライアント機能については、1つのライブラリとして構成することもできるし、複数のライブラリとして構成することもできる。複数のライブラリとして構成する場合には、ライブラリをローディングする順番がOSに設定されている。PPPoEクライアント装置1が、ディスカバリステージ制御部12、セッションステージ制御部13、セッション開始パケット取得部14をそれぞれ独立したライブラリとして有している場合にはこれらを以下の順番でローディングする。例えば、OSは、最初にセッション開始パケット取得部14に対応するライブラリをローディングしてLCPCONFIG REQパケットを受信できるようにしておき、続いて、ディスカバリステージ制御部12に対応するライブラリ、セッションステージ制御部13に対応するライブラリの順番でローディングする。
【0024】
パケットデータ記憶部15は、例えばRAM等のメモリやHDDにより構成され得る。パケットデータのインターフェースを考慮して、パケットデータ記憶部15をRAM等のメモリによって構成する場合がある。この場合、ディスカバリステージ制御部12及びセッションステージ制御部13に対応するライブラリをローディングしたときにも、セッションIDを含むPADSパケットを高速且つ確実に保持することができるようにするために、メモリ内のヒープエリアを確保することが望ましい。
【0025】
セッション開始パケット取得部14に対応するライブラリは、いわゆるパケットキャプチャ機能を有するライブラリである。例えばLinux等の一般的なOSにおいては、イーサフレームの処理をOS(Kernel)上で行なうことが想定される。詳細には、PPPoEクライアント装置1に到来するパケットを取り込むべきか否かの判断をOSが行い、パケットの受信及び破棄を適宜行なっている。ライブラリとしてローディングされたセッション開始パケット取得部14は、OSからパケットを受け取る設定をする。かかる設定により、セッション開始パケット取得部14は、WANポート11によって受信されたパケットのうちから、セッション開始パケットであることを示す識別子を含むパケットを取得すなわちキャプチャできる。
【0026】
以下、図4を参照しつつ、PPPoEクライアント装置1によるセッション確立処理の動作について説明する。
【0027】
先ず、ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEディスカバリステージ処理の開始に当たり、PPPoEサーバ2に対してPADIパケットをWANポート11から送信する(ステップS1)。なお、この時点においては、図3に示されるデータテーブルには、セッションID等のデータは未だ記憶されていない。
【0028】
次に、ディスカバリステージ制御部12は、当該PADIパケットに対してPPPoEサーバ2から送信されたPADOパケットをWANポート11を介して受信する(ステップS2)。
【0029】
次に、ディスカバリステージ制御部12は、PPPoEサーバ2に対してPADRパケットをWANポート11から送信すると共に、取得開始指令をセッション開始パケット取得部14に対して発する(ステップS3及びS4)。
【0030】
セッション開始パケット取得部14は、当該取得開始指令に応じて、WANポート11によって受信されたパケットのうちからLCPCONFIG REQパケットすなわちセッション開始パケットのみの取得を開始する(ステップS5)。
【0031】
次に、ディスカバリステージ制御部12は、当該PADRパケットに対してPPPoEサーバ2から送信されたPADSパケットをWANポート11を介して受信する(ステップS6)。
【0032】
ディスカバリステージ制御部12は、PADSパケットを受信した直後に、セッション確立指令をセッションステージ制御部13に対して発する(ステップS7)。
【0033】
セッションステージ制御部13は、当該セッション確立指令に応じて、当該PADSパケットに含まれるセッションIDに対応するソケットの生成を開始する(ステップS8)。
【0034】
セッション開始パケット取得部14は、セッションステージ制御部13がソケットを生成している間に、PPPoEサーバ2から送信されたLCPCONFIG REQパケットすなわちセッション開始パケットをWANポート11を介して取得する(ステップS9)。PADSパケットの送信直後にLCPCONFIG REQパケットが送信された場合であっても、セッション開始パケット取得部14はステップS4の時点から取得を開始しているのでLCPCONFIG REQパケットを受信できる。なお、ステップS9の時点においては、ディスカバリステージ制御部12によるソケットの生成が完了していないので、ディスカバリステージ制御部12はLCPCONFIG REQパケットを受信しない。
【0035】
セッション開始パケット取得部14は、当該取得したLCP CONFIG REQパケットに含まれるセッションIDとMACアドレスとペイロードデータとを対応付けてパケットデータ記憶部15に記憶する(ステップS10)。セッションIDとMACアドレスとペイロードデータとは、例えば図3に示されるデータテーブル形式により互いに対応付けられて例えば「No.1」の欄に記憶される。
【0036】
セッションステージ制御部13は、ソケットの生成を完了したときに、セッション開始パケット取得部14に対して取得停止指令を発する(ステップS11)。これ以降、当該セッションIDを含むパケットについては、セッションステージ制御部13によって処理される。
【0037】
セッション開始パケット取得部14は、当該取得停止指令に応じてセッション開始パケットの取得を停止する(ステップS12)。
【0038】
セッションステージ制御部13は、ソケットの生成完了後にパケットデータ記憶部15を参照し、当該ソケットに対応するセッションIDが記憶されているか否かを判別する(ステップS13)。
【0039】
記憶されていない場合には、セッションステージ制御部13は、当該ソケットに対応するセッションIDが含まれるセッション開始パケットがWANポート11によって受信されるのを待って、PPPoEサーバ2に対してLCPCONFIG ACKパケットを送信する(ステップS14)。
【0040】
一方、当該生成したソケットに対応するセッションIDがパケットデータ記憶部15に記憶されている場合には、セッションステージ制御部13は、当該セッションIDに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶されているペイロードデータの内容に応じてPPPoEサーバ2との間でセッションの確立を開始する。なお、セッションステージ制御部13は、WANポート11によって受信されたPADSパケットに含まれるMACアドレスと、当該セッションIDに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶されているMACアドレスとが一致すると判別した場合に、PPPoEサーバ2との間でのセッションの確立を開始することもできる。
【0041】
先ず、PPPoEサーバ2に対してLCP CONFIG ACKパケットを送信する(ステップS14)。
【0042】
次に、セッションステージ制御部13は、PPPoEサーバ2に対してLCP CONFIG REQパケットを送信する(ステップS15)。
【0043】
次に、セッションステージ制御部13は、当該LCP CONFIG REQパケットに対してPPPoEサーバ2から送信されたLCP CONFIG ACKパケットをWANポート11を介して受信する(ステップS16)。
【0044】
次に、セッションステージ制御部13は、PPPoEサーバ2との間でPAP/CHAPによる認証を行なう(ステップS17)。
【0045】
その後、セッションステージ制御部13は、PPPoEサーバ2との間でIPCP CONFIG REQパケット及びIPCP CONFIG ACKパケットを送受信するなどしてPPPoEセッションステージ処理を継続する(これらのパケットについては図示せず)。
【0046】
上記したように、本実施例によるPPPoEクライアント装置1においては、セッションIDを含むPADSパケットを受信してから当該セッションIDに対応するソケットの生成を開始する。PADSの送信直後にPPPoEサーバ2からLCPCONFIG REQパケットが送信された場合には、セッションステージ制御部13による当該セッションIDに対応するソケットの生成が完了していない場合も考えられる。このような場合であっても、セッション開始パケット取得部14が、PPPoEサーバ2よるPADSパケットの送信前からLCPCONFIG REQパケットの到来を待ち受けており、ソケットの生成完了前であってもPPPoEクライアント装置1に到来したLCPCONFIG REQパケットを取得することができる。当該パケットに含まれるセッションIDとMACアドレスとペイロードデータとは互いに対応付けられてパケットデータ記憶部15に記憶される。セッションステージ制御部13は、ソケットの生成完了後にパケットデータ記憶部15を参照する。当該ソケットに対応するセッションIDが記憶されている場合には、セッションステージ制御部13は、当該セッションIDに対応付けられているペイロードデータの内容に応じてLCPCONFIG ACK等のパケットを送信してPPPoEセッションステージ処理を行なうことができる。
【0047】
かかる動作により、PADSの送信直後にPPPoEサーバ2からLCP CONFIG REQパケットが送信されて当該PADSに含まれるセッションIDに対応するソケットの生成が完了する前に当該LCPCONFIG REQパケットがPPPoEクライアント装置1に到来した場合であっても、PPPoEセッションステージ処理を継続することができる。すなわち、PPPoEディスカバリステージ処理からPPPoEセッションステージ処理へ移行する際にPPPoEクライアント装置1が取り込むべきLCPCONFIG REQパケットの取りこぼしを防止することができる。それ故、LCP CONFIG REQパケットを受信できずにPPPoEサーバ2による当該パケットの再送を待つということがないので、早期にセッションを確立できる。また、ソケット生成完了前からLCPCONFIG REQパケットを受信できるので、PPPoEサーバ2が当該パケットを再送しない場合であっても、セッションを確実に確立できるという効果も奏する。
【0048】
<第2の実施例>
図5には、本実施例であるPPPoEクライアント装置1の構成がPPPoEサーバ2、通信網3、及びルータ4と共に示されている。本実施例のPPPoEクライアント装置1は、例えば通信機能を備えたパーソナルコンピュータであり、ブリッジ機能を備えたルータ4に収容されている。本実施例のPPPoEクライアント装置1の構成は第1の実施例と同様に図2に示されている。WANポート11、ディスカバリステージ制御部12、セッションステージ制御部13、セッション開始パケット取得部14、及びパケットデータ記憶部15の構成及び動作は第1の実施例と同様である。
【0049】
図6には、PPPoEクライアント装置1によるセッション確立処理の動作を示すシーケンスが示されている。PPPoEクライアント装置1とPPPoEサーバ2との間では、第1の実施例と同様のPPPoEディスカバリステージ処理及びPPPoEセッションステージ処理が実行される(ステップS1〜S17)。PPPoEクライアント装置1とPPPoEサーバ2との間で送受信される全てのPPPoEディスカバリパケット及びPPPセッションパケットをルータ4がPPPoEクライアント装置1とPPPoEサーバ2との間でブリッジする点が第1の実施例と異なる。
【0050】
かかる構成によれば、PPPoEクライアント装置1がパケット中継等のルータ機能を有しない情報通信端末である場合にも、PPPoEサーバ2との間でセッションを確立することができる。
【0051】
なお、上記実施例は、PADRパケットの送信時にディスカバリステージ制御部12がセッション開始パケット取得部14に対して取得開始指令を発する例であるが、これに限られない。ディスカバリステージ制御部12は、例えばPADIパケットの送信時やPADOパケットの受信時等、セッションIDを含むPADSの受信前の任意の時点において取得開始指令を発することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 PPPoEクライアント装置
2 PPPoEサーバ
3 通信網
11 WANポート
12 ディスカバリステージ制御部(セッションID発行要求部)
13 セッションステージ制御部(セッション確立部)
14 セッション開始パケット取得部(パケット取得記憶部)
15 パケットデータ記憶部(パケット取得記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介してPPPoEサーバにセッションID発行要求を発してセッションIDを取得すると共にセッション確立指令を発するセッションID発行要求部と、
前記セッション確立指令に応じて前記セッションIDに対応するソケットの生成を開始し、当該生成が完了してから前記PPPoEサーバからのセッション開始パケットに応じて前記PPPoEサーバとの間での前記ソケットによる通信セッションを確立するセッション確立部と、を含むPPPoEクライアント装置であって、
前記ソケットの生成完了前に前記セッション開始パケットを取得してこれを記憶パケットとして記憶するパケット取得記憶部を更に含み、
前記セッション確立部は、前記記憶パケットの内容に基づいて前記ソケットによる通信セッションを確立することを特徴とするPPPoEクライアント装置。
【請求項2】
前記セッション確立部は、前記ソケットに対応するセッションIDと前記記憶パケットに含まれるセッションIDとが一致すると判別した場合に前記ソケットによる通信セッションを確立することを特徴とする請求項1に記載のPPPoEクライアント装置。
【請求項3】
前記セッション確立部は、前記PPPoEサーバから前記セッションIDと共に送信されたMACアドレスと、前記記憶パケットに含まれるMACアドレスとが一致すると判別した場合に前記ソケットによる通信セッションを確立することを特徴とする請求項2に記載のPPPoEクライアント装置。
【請求項4】
前記セッションID発行要求部は、前記セッションIDの取得に先立って前記セッション開始パケットの取得を開始すべき旨の取得開始指令を前記パケット取得記憶部に発し、
前記パケット取得記憶部は、前記取得開始指令に応じて前記セッション開始パケットの到来を待ってこれを取得することを特徴とする請求項3に記載のPPPoEクライアント装置。
【請求項5】
前記セッション確立部は、前記ソケットの生成を完了したときに前記セッション開始パケットの取得を停止すべき旨の取得停止指令を前記パケット取得記憶部に発し、
前記パケット取得記憶部は、前記取得停止指令に応じて前記セッション開始パケットの取得を停止することを特徴とする請求項4に記載のPPPoEクライアント装置。
【請求項6】
前記セッションID発行要求部は、前記PPPoEサーバからPADOパケットを受信したときに前記取得開始指令を発することを特徴とする請求項4又は5に記載のPPPoEクライアント装置。
【請求項7】
前記通信セッションの確立後に前記PPPoEサーバからのパケットを中継する中継部を更に含むことを特徴とする請求項6に記載のPPPoEクライアント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62673(P2013−62673A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199609(P2011−199609)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
2.Linux
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】