説明

PSI処理発生土を含有する培土

【課題】PSI処理発生土を農業利用する新規な手段を提供すること。
【解決手段】ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を含有する培土を提供した。該培土は、浄水処理等の水処理で大量に発生するPSI処理発生土を用いて低コストで製造できる。PSI処理発生土はアルカリ分をほとんど含まず、そのpHは低いため、pHの上昇を回避する必要がある水稲苗への施用も可能である。また、PSI処理発生土はケイ酸栄養源としてシリカゲルに匹敵する即効性を有するので、水稲育苗期や各種植物のケイ酸栄養源として有効活用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリカ鉄(PSI)による被処理水の沈殿凝集処理で生じた発生土を含有する培土、培土の製造方法、及び該発生土を利用した植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸の施用が水稲の健全な生育に寄与することは古くから知られている。その要因として、葉の直立化による受光体勢の改善、気孔開度の低下による過剰蒸散の抑制、葉緑素(クロロフィル)含量の減少抑制による光合成効率の向上が挙げられる。また、稲のケイ酸含量の増加により、いもち病など稲の重要病害の発生が抑制されることが知られている(非特許文献6、13)。
【0003】
以上のようなケイ酸の効果は育苗段階でも同様であり、イネ苗のケイ酸含量が高まることによる苗質の向上(非特許文献1、10、11)とそれによる移植後の初期生育の向上(非特許文献1)および育苗段階で発生する苗いもち病の発生抑制(非特許文献2、8)が報告されている。
【0004】
また、ケイ酸の効果は、水稲のみならず園芸作物においても確認されている。田中ら(2004)はケイ酸を園芸培土に施用することにより、キュウリ苗のケイ酸含量が高まり、その結果キュウリに多発するうどんこ病の発病を抑制したことを報告した(非特許文献14)。イチゴ苗へのケイ酸施用効果も報告されている(非特許文献7、12)。
【0005】
イネ苗のケイ酸含量には育苗培土の可給態ケイ酸含量が影響する(非特許文献4、9)。すなわち、母材が火山灰土であるような土壌を培土として用いた場合はイネ苗のケイ酸含量は高まる傾向にある。しかし、可給態ケイ酸含量が低い土壌を培土として用いる場合はイネ苗のケイ酸含量は低い場合が多く、ケイ酸資材の施用効果が期待される。現在、様々なケイ酸資材が流通しているが、多くのケイ酸資材はアルカリ分を多量に含むため、育苗培土のpHを上昇させる。培土の適正pHは4.5〜5.5であり、これ以上にpHが上昇した場合はムレ苗や立枯病の発生が懸念される。培土のpHを上昇させないケイ酸資材としては、シリカゲルが代表的な資材であり、苗箱に施用可能な肥料として広く用いられている(非特許文献1、特許文献1)。しかし、シリカゲルは元来から高価であることに加えて、近年の肥料価格の高騰により、さらに高価な資材となっている。これに対して三枝ら(2003)は軽量壁材から多量に生成される廃材である多孔質ケイ酸カルシウム(pH10.1)を硫酸処理し、酸性化(pH5.2)した低コストで苗箱施用可能なケイ酸資材を開発した(非特許文献11)。このような低コストのケイ酸資材がさらに求められている。
【0006】
ポリシリカ鉄(Polysilicato-Iron、以下PSI)は、河川水や湖水等の上水道原水に含まれる微細な不純物を凝集沈殿処理により除去するための凝集剤として近年開発されたものであり、塩化第二鉄と高分子の重合ケイ酸を主成分とする(特許文献2、3)。従来、浄水場では、凝集剤として主にポリ塩化アルミニウムが用いられていたが、そのような凝集剤で原水を処理した場合に生じる浄水発生土は活用場面が少ないため埋立て処理割合が高く、浄水場の負担が大きくなっている。
【0007】
一方、PSI処理で生じる発生土に含まれるケイ酸は上述のように水稲の生育向上効果が期待される。堀川ら(2007)はPSI処理発生土を水田本田に施用したところ、水稲のケイ酸吸収量が増加し、収量が増加したことを報告した(非特許文献5)。この非特許文献5には、PSI処理発生土中の全Siの約半分が水溶性Siである旨の記載がある。しかしながら、非特許文献5では、30℃8週間培養という長期間水中に浸漬した条件で水中に溶出するSiを水溶性Siとしている。非特許文献5には、即効性のSi供給源としてのPSI処理発生土の有用性は全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-232666号公報
【特許文献2】特開2001-70708号公報
【特許文献3】特開2005-34746号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】藤井弘志・早坂剛・横山克至・安藤豊1999.シリカゲルの苗箱施用が水稲苗の活着および初期成育に及ぼす影響.土肥誌,70,785〜790.
【非特許文献2】早坂剛・藤井弘志・安藤豊・生井恒雄2000.イネ苗いもちのケイ酸資材シリカゲル育苗土混和による発病抑制.日植病報,66,18〜22.
【非特許文献3】早坂剛・藤井弘志2004.イネ育苗期におけるいもち病抵抗性に対するイネ体ケイ酸含有率の影響.山形農事研報,37,45〜51.
【非特許文献4】平内央紀・三枝正彦2006.水稲用育苗培土の可給態ケイ素量とケイ酸資材の施用効果.土肥誌,77,41〜46.
【非特許文献5】堀川拓未・伊藤豊彰・長谷川孝雄・増田靖・新井忠男・三枝正彦2007.ポリシリカ鉄凝集剤(PSI)浄水ケーキの特性と水稲生育およびメタン放出に及ぼす影響.土肥誌,78,261〜267.
【非特許文献6】石田博・白石道夫1971.珪カルの施用といもち病の防除効果.農業および園芸,46,779〜783.
【非特許文献7】神頭武嗣・長田靖之・三好昭宏1997.水耕栽培におけるイチゴうどんこ病菌に対するケイ酸カリ施用効果.日本植物病理学会報,63,521.
【非特許文献8】前川和正・渡辺和彦・相野公孝・岩本豊2001.各種ケイ酸資材施用による育苗期のイネいもち病の発病抑制.土肥誌,72,56〜62.
【非特許文献9】新妻成一・久保省三2002.可給態ケイ酸量の異なる水稲用育苗培土におけるシリカゲル肥料の施用効果について.土肥要旨集,48,213.
【非特許文献10】三枝正彦・平内央紀・渋谷暁一・岡崎仁志・吉田一男2002.育苗培土のケイ酸供給能とシリカゲルの施用効果.土肥誌,73,291〜292.
【非特許文献11】三枝正彦・平内央紀・渋谷暁一・岡崎仁志・吉田一男2003.酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物の苗箱施用が水稲苗の生育・養分吸収に及ぼす影響.土肥誌,74,333〜337.
【非特許文献12】高橋英一1987.ケイ酸植物と石灰植物,作物の個性をさぐる.P137〜150,農文協,東京.
【非特許文献13】竹内徹1997.イネの窒素およびケイ酸栄養といもち病抵抗力との関係.北日本病虫研報,48.23〜26.
【非特許文献14】田中達也・冨士真・新妻成一・久保省三・森国博全2004.接木キュウリ苗へのケイ酸施用によるうどんこ病抑制効果.土肥要旨集,50,141.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、PSI処理発生土を農業利用する新規な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、即効性のケイ酸栄養が必要とされる水稲育苗期においてもPSI処理発生土の施用が有効であること、従ってPSI処理発生土が即効性のSi供給源としても有用であり、各種植物のケイ酸栄養源として有効活用できることを見出し、本願発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を含有する培土を提供する。また、本発明は、乾燥された、ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を粉砕し、培土中に混和させることを含む、培土の製造方法を提供する。さらに、本発明は、ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を植物に施用することを含む植物の栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、PSI処理発生土を植物のケイ酸栄養源として有効利用する手段が提供された。PSI処理発生土はアルカリ分をほとんど含まず、そのpHは低いため、pHの上昇を回避する必要がある水稲苗への施用も可能である。培土のpHを上昇させないケイ酸資材として、シリカゲルが広く用いられているが、シリカゲルは高価な資材である。一方、本発明の培土は、浄水処理等の水処理で大量に発生するPSI処理発生土を用いて低コストで製造できる。さらに、下記実施例に記載されるように、PSI処理発生土はケイ酸栄養源としてシリカゲルに匹敵する即効性を有する。本発明によれば、シリカゲルに匹敵する即効性を有し、培土や土壌のpHを上昇させないケイ酸栄養の供給手段を安価に提供することができるとともに、浄水場で大量に発生する浄水発生土の有効利用を促進することができ、農業及び環境保全に大いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】各処理区の水稲苗の地上部(左)及び地下部(右)のケイ酸含量を示す図である。異なるアルファベット間で有意差あり(Tukey法,p<0.05)。
【図2】資材に由来するケイ酸の吸収量(資材施用区の計算吸収量−無資材区のケイ酸吸収量)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、浄水処理等の水処理において、ポリシリカ鉄(PSI)を用いた被処理水の凝集沈殿処理により生じる発生土(以下、「PSI処理発生土」又は「PSI発生土」という)を用いる。発生土とは、被処理水中に存在する土壌粒子等の微細な不純物(混入物)が凝集剤処理により凝集・沈殿したものを指す。発生土は、被処理水の種類によっては土壌粒子を含まない場合もあるが、そのような発生土でも使用可能であり、土壌粒子を多量に含有するものに限定されない。PSIは水道機工株式会社が開発した公知の凝集剤であり(特許文献2、3)、塩化第二鉄と高分子の重合ケイ酸を主成分とする。PSIは既に実用化され、浄水場への導入が進んでいるため、PSI処理発生土はPSIを使用している浄水場から容易に入手可能である。重合ケイ酸の含量に応じて複数種類のPSIが市販されているが、これらのうちのいずれを用いたものであってもよい。PSI自体は、浄水処理のみならず工業用水処理、下水処理、排水処理等の水処理においても、被処理水の凝集沈殿処理工程で使用できる。従って、本発明で用いるPSI処理発生土は、これらの各種水処理で生じた発生土を広く包含する。具体的には、これらに限定されないが、製紙工場や食品工場での排水処理で生じた発生土、浄水場での浄水処理で生じた発生土が挙げられ、中でも浄水処理における凝集沈殿処理工程で生じた発生土(浄水発生土)を好ましく用いることができる。
【0016】
PSI発生土は、乾燥したものを培土や土壌に混和するのに適当な程度の粒径になるように粉砕して用いる。発生土を塊状になるまで風乾後、粉砕器等で粉砕して用いればよい。浄水場から得られる浄水発生土は、脱水されたいわゆる浄水ケーキの形態である場合が多いため、PSI発生土を浄水ケーキ形態で入手した場合には改めて該発生土を乾燥する必要はなく、そのまま粉砕して用いることができる。粉砕後のPSI発生土は、そのまま培土や土壌に混合させてもよいし、あるいは、単独で又は他の培土成分(原土、肥料等)と混合して公知の手法により造粒してもよい。
【0017】
PSI発生土には鉄とケイ酸が多く含まれており、本発明ではPSI発生土はケイ酸資材として用いられる。従って、本発明の培土を製造する際には、PSI発生土以外にケイ酸供給源を添加する必要はない。その他の成分は基本的に公知の培土と同様であってよく、特に限定されない。PSI発生土は、低pHでSiの溶解性が高まると考えられるため、低pH(例えば3.5〜6.5程度)の培土に含有させることでPSI発生土のSi溶解性を高めることができ、これが即効性に寄与しているものと考えられる。培土中のPSI発生土の含量は、特に限定されないが、通常、培土1kg当たり乾燥重量で1g〜999g程度、例えば25g〜250g程度である。
【0018】
本発明の培土は、園芸用培土又は水稲育苗用培土として好ましく用いることができる。使用時には、本発明の培土をそのまま用いてもよいし、適宜他の培土や肥料と混合して用いてもよい。PSI発生土の量(乾燥重量)が培土1kg当たり1g〜999g程度、例えば25g〜250g程度となるように植物に施用すれば、植物に好ましいケイ酸栄養を供給することができる。園芸作物の圃場等、水田本圃以外の圃場に施用する場合、PSI発生土の量(乾燥重量)が圃場10a当たり0.01t〜10t程度、例えば0.1t〜2t程度となるようにすればよい。
【0019】
PSI発生土は、非特許文献5に記載されるように、水稲の栽培後期(移植2ヶ月後)のケイ酸栄養の改善のために本田に施用することができるほか、本願発明者らが初めて見出した通り、即効性のケイ酸栄養を必要とし、pHの上昇を回避する必要がある育苗期にも用いることができる。水稲の育苗培土の適正pHは4.5〜5.5であり、これ以上に上昇するとムレ苗や立枯病が発生するおそれがある。PSI発生土自体のpHは5.2程度であり、下記実施例では、PSI発生土を用いた育苗後の培土のpHが適正値であることが確認されている。また、下記実施例に記載される通り、PSI発生土は、水稲苗に施用後わずか3週間でも水稲苗のケイ酸栄養を改善できており、シリカゲルに匹敵するほどの即効性が確認されている。
【0020】
さらに、非特許文献7、12、14に記載されるように、キュウリ、イチゴ等の園芸作物でもケイ酸栄養の向上が生育向上や病害発生抑制に有効であることが知られている。従って、PSI発生土は各種園芸作物のケイ酸源としても有用であり、水稲苗のみならず各種園芸作物にも好ましくケイ酸栄養を供給することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
1.材料および方法
1)育苗試験
育苗培土には市販の粒状培土(肥料入り)を用いた。培土量は2800g/箱とした。PSI発生土は越生浄水場にて発生したものを風乾後に粉砕(<500μm)したものを育苗箱あたり100g施用した(PSI100区)。なお、使用されたPSIは鉄:ケイ酸モル比が4:1又は1:0.25のものであった。また、対象としてシリカゲル肥料を育苗箱あたり50g、100g施用した区(SG50区、SG100区)および無資材区を設けた。各資材の特性を表1に、処理区の概要を表2に示した。培土に各資材を混和後、全体の2/3を床土として、1/3を覆土として使用した。水稲の品種にはキヌヒカリ(Oryza sativa L. cv. Kinuhikari)を用い、2009年5月13日に箱当たり催芽籾で180g播種し、加温出芽(30℃、2日間)させ、全国農業協同組合連合会営農・技術センター内ガラス温室にて20日間育苗した。試験は2反復で行った。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
2)調査・分析方法
育苗後の苗(20個体)の草丈、葉齢、葉色(SPAD値)を測定した。また、約200個体を採取し、その地上部および地下部の乾物重を求めた。さらに、地上部および地下部の養分含量を求めた。NCアナライザー(Smigraph NC-900、住化分析センター)により窒素含有率を求めた。乾式灰化-塩酸抽出液をICP(730-ES、バリアン製)発光分析法により分析し、リン酸、塩基(カリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム)および微量要素(鉄、亜鉛、銅、マンガン)含有率を求めた。また、ケイ酸は乾式灰化、塩酸抽出洗浄、再灰化後、重量法により粗ケイ酸を定量した。
【0026】
2.結果および考察
1)苗質調査
表3には苗質調査の結果を示した。資材を処理した区は無処理区と比較して、乾物重(地上部・地下部)、草丈および葉齢が高くなる傾向であった。PSI100区では無処理区と比較して葉色値(SPAD値)および葉齢が有意に高くなった。
【0027】
【表3】

【0028】
2)水稲苗の養分含量(ケイ酸以外)
水稲苗の地上部および地下部養分含量をそれぞれ、表4および表5に示した。地上部のリン酸含量はPSI100区で他区と比較して有意に低くなったが、これはPSIのリン酸吸着力が高いため、培土中のリン酸を吸着したためと考えられた。しかし、PSI100区のリン酸含量の低下は問題になるレベルではなかった。また、浄水発生土の農業利用においてはマンガン過剰が問題となることが多い。本試験におけるPSI100区の地上部マンガン含量は無資材区と同等であり、問題は見られなかった。地下部ではPSI100区で鉄含量が非常に高かったが、これは根が吸収した鉄に加えて根表面に付着した鉄がカウントされているためであろう。鉄は水田では根圏を酸化的に保つ役割もあることから、PSI施用による高含量の鉄も何らかの効果を奏していると考えられる。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
3)水稲苗のケイ酸含量
水稲苗の地上部および地下部のケイ酸含量を図1に示した。また、資材由来ケイ酸吸収量を図2に示した。無資材区では地上部ケイ酸含量は3.0%であったのに対し、PSI100区、SG50区およびSG100区ではそれぞれ、4.9、5.7および7.5%となった。PSI100区の培土へのケイ酸施用量(18.3gSiO2/箱)はSG50区(45gSiO2/箱)の半分以下であったのにも関わらず、PSI100区の資材由来の地上部ケイ酸吸収量はSG50区の約7割に達した(図2)。このことはPSI発生土のケイ酸供給能が高いことを示すものである。堀川ら(2007)の試験ではPSI(乾燥)の施用量は150〜2000gm-2であったが、これは土壌1kgあたりに換算すると0.12〜16gとなる。一方、本試験では土壌(培土)1kgあたり35.7gであり、本田に施用する場合よりも多量に施用した。PSIを本田に施用する場合は、過剰害の回避や施用作業の効率から2000gm-2(2t 10a-1)程度が限界と思われるが、育苗段階では少なくとも本試験で行った35.7gkg-1(100g 箱-1)程度の施用は可能であり、水稲苗に効率的にケイ酸を供給できるであろう。
【0032】
早坂ら(2004)は水稲苗のケイ酸含量が5%以上となった場合、いもち病の発生が顕著に抑制されたことを報告した。本試験におけるPSI100区の地上部ケイ酸含量はほぼこの値に近かった。施用量を増やすことでより水稲苗のケイ酸含量を高めることは可能であろう。
【0033】
4)育苗培土の理化学性
育苗後の培土の理化学性を表6に示した。pHは4.3〜4.6の範囲にあり、適正な値であった。可給態リン酸含量はPSI100区で低く、水稲苗のリン酸含量が低いことと一致したが、問題になるレベルではないと考えられた。
【0034】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を含有する培土。
【請求項2】
前記発生土は浄水処理における凝集沈殿処理工程で生じた浄水発生土である請求項1記載の培土。
【請求項3】
園芸培土又は水稲育苗培土である請求項1又は2記載の培土。
【請求項4】
前記発生土の含量が1kg当たり乾燥重量で1g〜999gである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の培土。
【請求項5】
乾燥された、ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を粉砕し、培土中に混和させることを含む、培土の製造方法。
【請求項6】
ポリシリカ鉄による被処理水の凝集沈殿処理で生じた発生土を植物に施用することを含む植物の栽培方法。
【請求項7】
植物へのケイ酸の供給方法である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記植物が園芸作物又は水稲苗である請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記発生土を培土1kg当たり1g〜999g又は圃場10a当たり0.01t〜10t施用する請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−211932(P2011−211932A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81481(P2010−81481)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】