説明

Pgro発現ユニット

【課題】遺伝子の転写および発現を制御するための核酸配列の使用、新規のプロモーターおよび発現ユニットそれら自体、遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるかまたは生起させる方法、発現ユニットを含んでなる発現カセット、改変されたまたは生起された転写速度および/または発現速度をもつ遺伝的に改変された微生物、ならびに遺伝的に改変された微生物を培養することによる生合成産物の製造方法を提供する。
【解決手段】遺伝子を転写させるための、A)特定の核酸配列、またはB)該配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ該配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、またはC)該配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、またはD)A)、B)もしくはC)の配列の機能的に等価な断片、を含んでなるプロモーター活性を有する核酸の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の転写および発現を制御するための核酸配列の使用、新規のプロモーターおよび発現ユニットそれら自体、遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるかまたは生起させる方法、発現ユニットを含んでなる発現カセット、改変されたまたは生起された転写速度および/または発現速度をもつ遺伝的に改変された微生物、ならびに遺伝的に改変された微生物を培養することによる生合成産物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な生合成産物、例えばファインケミカル、特にアミノ酸、ビタミン、さらにまたタンパク質などは、天然の代謝プロセスによって細胞内で生産されて化粧品、飼料、食品および製薬産業を含む多岐にわたる産業分野において利用されている。まとめてファインケミカル/タンパク質と呼ばれるこれらの物質には、とりわけ有機酸、タンパク原性および非タンパク原性の両方のアミノ酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、脂質および脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミンおよび補因子、ならびにタンパク質および酵素が含まれる。これらの製造は、所望の特定の物質を大量に産生しかつ分泌する目的で開発された細菌を培養することにより工業規模で行うことが最も好都合である。この目的に特に好適な生物は、コリネ型(coryneform)細菌、グラム陽性非病原性細菌である。
【0003】
アミノ酸をコリネ型細菌の株、とりわけCorynebacterium glutamicum(コリネバクテリウム・グルタミカム)の発酵により製造することは公知である。非常に重要であるので、製造方法を改善するための絶えざる研究が続けられている。製造方法の改善は、発酵技術上の対策、例えば撹拌および酸素供給、または栄養培地の組成、例えば発酵中の糖濃度、または製品を得るための後処理、例えばイオン交換クロマトグラフィーもしくは噴霧乾燥による後処理、または微生物自体の固有の性能特性に関係するものでありうる。
【0004】
組換えDNA技術の方法も同様に、個々の遺伝子を増幅してファイケミカル/タンパク質の生産に及ぼす効果を研究することによってファインケミカル/タンパク質を産生するCorynebacterium株を改良するために、この数年使用されてきている。
【0005】
ファインケミカル、アミノ酸もしくはタンパク質の製造方法を開発するための、または既存のファインケミカル、アミノ酸もしくはタンパク質の製造方法の生産性を向上もしくは改良するための他の方法は、1以上の遺伝子の発現を増加もしくは改変することおよび/または好適なポリヌクレオチド配列によりmRNAの翻訳に影響を与えることである。これに関して、影響を与えるものには、遺伝子発現の増加、低下、または他のパラメーター、例えば経時的発現パターン、が含まれる。
【0006】
細菌の調節配列の様々な構成成分は当業者に公知である。オペレーターとも呼ばれるレギュレーターの結合部位、-35および-10領域とも呼ばれるRNAポリメラーゼホロ酵素の結合部位、およびリボソーム結合部位あるいはシャイン・ダルガルノ(Shine-Dalgarno)配列とも呼ばれるリボソーム16S RNAの結合部位などの区別がなされている。
【0007】
シャイン・ダルガルノ配列とも呼ばれるリボソーム結合部位の配列は、本発明においては、翻訳開始コドンの上流20塩基までに位置するポリヌクレオチド配列を意味する。
【0008】
文献(「大腸菌とネズミチフス菌(E. coli and S. typhimurium)」, Neidhardt F.C. 1995 ASM Press)は、シャイン・ダルガルノ配列のポリヌクレオチド配列の組成、塩基の配列だけでなく、シャイン・ダルガルノ配列に存在するポリヌクレオチドの距離も、翻訳開始速度に相当な影響を与えると報じている。
【0009】
プロモーター活性を有する核酸配列は様々な方法でmRNAの形成に影響を与えうる。その活性が生物の生理的成長期に依存しないプロモーターは構成的と呼ばれる。また、他のプロモーターは酸素、代謝物、熱、pHなどの外部の化学的・物理的刺激に応答する。またさらに他のプロモーターは、様々な成長期におけるその活性に強い依存性を示す。例えば、微生物の指数増殖期や微生物の静止期に特に顕著な活性を示すプロモーターが文献に記載されている。プロモーターの両方の特徴は、代謝経路に応じて、ファインケミカルおよびタンパク質製造の生産性に有利な効果を与えうる。
【0010】
例えば、ある遺伝子の発現を増殖中にスイッチオフするが、最適な増殖後にそれをスイッチオンするプロモーターを用いて、代謝産物の生産を制御する遺伝子を調節することができる。そうすると、改変された株は、出発株と同じ増殖パラメーターを示すものの、細胞当たりより多くの産物を産生する。このタイプの改変は、力価(g 産物/リットル)とC収率(g 産物/g C原料)の両方を増加することができる。
【0011】
Corynebacterium種において、遺伝子発現を増加または低下させるために利用することができるヌクレオチド配列を単離することは既に可能となっている。これらの調節されたプロモーターは、遺伝子が転写される速度を、細胞の内部および/または外部条件に応じて、増加または低下させることができる。いくつかの事例では、インデューサーとして知られる特定の因子の存在がプロモーターからの転写速度を刺激することができる。インデューサーはプロモーターからの転写に直接的または間接的に影響を与えうる。サプレッサーとして知られる他のクラスの因子は、プロモーターからの転写を低下または抑制することができる。インデューサーと同様に、サプレッサーも直接的または間接的に作用しうる。しかし、温度調節されたプロモーターも公知である。従って、かかるプロモーターの転写レベルは、例えば増殖温度をその細胞の通常の増殖温度より高くすることにより、増加または低下させることができる。
【0012】
C. glutamicum由来のプロモーターはこれまでに少数が記載されている。C. glutamicum由来のリンゴ酸合成酵素遺伝子のプロモーターがDE 4440118に記載されている。このプロモーターをあるタンパク質をコードする構造遺伝子の上流に挿入した。この構築物をコリネ型細菌中に形質転換した後、プロモーター下流の構造遺伝子の発現を調節できるようになる。適当なインデューサーを培地に加えると、構造遺伝子の発現が直ぐ誘導される。
【0013】
Reinscheidら, Microbiology 145:503 (1999)は、C. glutamicum由来のpta-ackプロモーターとレポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)との間の転写融合体を記載している。かかる転写融合体を含有するC. glutamicum細胞は、酢酸含有培地上で増殖させると、レポーター遺伝子の発現の増加を示した。これに対して、グルコース上で増殖させた形質転換細胞は、このレポーター遺伝子の発現の増加を示さなかった。
【0014】
Pa'tekら, Microbiology 142:1297 (1996)は、C. glutamicum細胞中のレポーター遺伝子の発現を増強することができるC. glutamicum由来のいくつかのDNA配列を記載している。これらの配列は、C. glutamicumプロモーターのコンセンサス配列を規定するために互いに比較された。
【0015】
遺伝子発現を調節するために利用しうる、さらなるC. glutamicum由来のDNA配列が特許WO 02/40679に記載されている。これらの単離されたポリヌクレオチドは、遺伝子発現を増加あるいは低下させるために利用しうるCorynebacterium glutamicum由来の発現ユニットに相当する。この特許はさらに、Corynebacterium glutamicum由来の発現ユニットを異種遺伝子と関連させた組換え体プラスミドを記載している。ここに記載された、Corynebacterium glutamicum由来のプロモーターを異種遺伝子と融合させる方法は、特にアミノ酸生合成の遺伝子を調節するために使用することができる。
【特許文献1】DE 4440118
【特許文献2】WO 02/40679
【非特許文献1】E. coli and S. typhimurium, Neidhardt F.C. 1995 ASM Press
【非特許文献2】Reinscheidら, Microbiology 145:503 (1999)
【非特許文献3】Pa'tekら, Microbiology 142:1297 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、有利な特性をもつプロモーターおよび/または発現ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、この目的が、
遺伝子を転写させるために、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) 配列番号1の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) 配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸を使用することによって達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「転写」は、本発明によれば、DNAテンプレートから出発して相補的RNA分子が作られるプロセスを意味する。RNAポリメラーゼ、いわゆるσ因子および転写調節タンパク質などのタンパク質がこのプロセスに関与している。合成されたRNAは次いで翻訳プロセスにおけるテンプレートとして使用され、その後生合成的に活性のあるタンパク質をもたらす。
【0019】
生合成的に活性のあるタンパク質が生産される生成速度は、転写速度および翻訳速度の積である。本発明によって両方の速度に影響を与えることができ、ひいては微生物における産物の生成速度に影響を及ぼす。
【0020】
「プロモーター」または「プロモーター活性を有する核酸」は、本発明によれば、転写すべき核酸と機能的に連結された状態で、この核酸の転写を調節する核酸を意味する。
【0021】
「機能的な連結」は、本発明では、例えば本発明のプロモーター活性を有する核酸の1つと、転写すべき核酸と、適宜にさらなる調節エレメント(例えば核酸の転写を確実にする核酸配列およびターミネーターなど)の連続配置であって、それぞれの調節エレメントが該核酸配列の転写においてその機能を果たしうるような、連続配置を意味する。そのために、化学的意味での直接的連結が絶対に必要というわけではない。例えば、エンハンサー配列などの遺伝子制御配列は、より離れた位置からでもまたは他のDNA分子からでも、標的配列に対してその機能を果たすことができる。転写すべき核酸配列が本発明のプロモーターの後ろに(すなわち、3'末端に)配置され、結果的にこれら2つの配列が共有結合で一緒に連結されるような配置が好ましい。これに関連して、プロモーター配列と遺伝子導入により発現される核酸配列との間の距離は、好ましくは200塩基対未満、さらに好ましくは100塩基対未満、特に好ましくは50塩基対未満である。
【0022】
「プロモーター活性」は、本発明によれば、ある特定の時間にプロモーターにより生成されたRNAの量、すなわち転写速度を意味する。
【0023】
「比プロモーター活性」(specific promoter activity)は、本発明によれば、それぞれのプロモーターについての、ある特定の時間内にそのプロモーターにより生成されたRNAの量を意味する。
【0024】
用語「野生型」は、本発明によれば、適切な出発微生物を意味する。
【0025】
用語「微生物」は、状況に応じて、出発微生物(野生型)もしくは本発明の遺伝的に改変された微生物、またはそれらの両方を意味する。
【0026】
好ましくは、そして特に微生物または野生型を明確に指定することができない場合は、「野生型」は、プロモーター活性または転写速度を改変させるかまたは生起させること、発現活性または発現速度を改変させるかまたは生起させること、および生合成産物の含量を増加させることに対して、それぞれの事例における基準生物を意味する。
【0027】
ある好ましい実施形態においては、この基準生物はCorynebacterium glutamicum ATCC 13032である。
【0028】
好ましい実施形態において、使用する出発微生物は既に所望のファインケミカルを産生する能力があるものである。これに関係して、特に好ましいコリネバクテリウム(Corynebacterium)属の細菌の微生物および特に好ましいファインケミカルのL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンのなかでも、既にL-リシン、L-メチオニンおよび/またはL-トレオニンを産生することができる出発微生物が特に好適である。これらは特に好ましくは、アスパルトキナーゼをコードする遺伝子(ask遺伝子)が調節解除されているか、またはフィードバック抑制がきかないかもしくは低下しているコリネバクテリアである。かかる細菌は、例えばフィードバック抑制を低下させるかもしくはきかなくする突然変異(例えば、ask遺伝子の突然変異T311Iなど)を有する。
【0029】
野生型と比較して、ある遺伝子に関する「生起されたプロモーター活性」または転写速度の場合には、従って、野生型と比較して、野生型にはこのような方式で存在しなかったRNAの形成が生起される。
【0030】
野生型と比較して、ある遺伝子に関する改変されたプロモーター活性もしくは転写速度の場合には、従って、野生型と比較して、ある特定の時間内に生成されるRNAの量が改変される。
【0031】
「改変された」は、本明細書では、好ましくは増加したもしくは低下したを意味する。
【0032】
これは、例えば本発明の内因性プロモーターの比プロモーター活性を増加もしくは低下させる(例えば、プロモーターを突然変異させるかまたはプロモーターを刺激もしくは抑制する)ことによって行うことができる。
【0033】
さらなる可能性は、増加したプロモーター活性もしくは転写速度を、例えば本発明のプロモーター活性を有する核酸によりまたは増加した比プロモーター活性をもつ核酸により微生物内での遺伝子の転写を調節することによって、達成することであり、この場合、その遺伝子はプロモーター活性を有する核酸に対して異種である。
【0034】
本発明のプロモーター活性を有する核酸によりまたは増加した比プロモーター活性をもつ核酸により微生物内での遺伝子の転写を調節することは、好ましくは、以下により達成される:
本発明のプロモーター活性(適宜改変された比プロモーター活性)を有する1以上の核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された本発明のプロモーター活性(適宜改変された比プロモーター活性)を有する核酸の制御下で起こるようにする;または
1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、本発明のプロモーター活性(適宜改変された比プロモーター活性)を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする;または
本発明のプロモーター活性(適宜改変された比プロモーター活性)を有する核酸と機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を、微生物中に導入する。
【0035】
本発明のプロモーター活性を有する核酸は、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) 配列番号1の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失によって誘導されかつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) 配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる。
【0036】
配列番号1の核酸配列は、Corynebacterium glutamicum由来のGroESシャペロニン(Pgro)のプロモーター配列を表わす。配列番号1は野生型のプロモーター配列に相当する。
【0037】
本発明はさらに、この配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失によって誘導されかつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸に関する。
【0038】
本発明のプロモーターのさらなる本発明の天然の例は、例えばそのゲノム配列がわかっている様々な生物から、データベースより得られた核酸配列と上記配列番号1の配列との同一性比較によって、容易に見出すことができる。
【0039】
本発明の人工的なプロモーター配列は、配列番号1の配列から出発して人為的な改変および突然変異により、例えばヌクレオチドの置換、挿入または欠失によって、容易に見出すことができる。
【0040】
用語「置換」は、本明細書において1個以上のヌクレオチドを1個以上のヌクレオチドで置き換えることを意味する。「欠失」はヌクレオチドを直接結合により置き換えることである。「挿入」はヌクレオチドを核酸配列中に挿入することであり、直接結合を1個以上のヌクレオチドで形式上置き換えることになる。
【0041】
2つの核酸間の同一性は、それぞれの場合での核酸の全長にわたるヌクレオチドの同一性を意味し、特にVector NTI Suite 7.1ソフトウエア(Informax, USA)を用いて、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM.「マイクロコンピュータでの迅速かつ高感度の多配列アラインメント(Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer)」 Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)により次のパラメーターを設定して、比較することにより計算される同一性を意味する:
多重アラインメントパラメーター(Multiple alignment parameter):
Gap opening penalty 10
Gap extension penalty 10
Gap separation penalty range 8
Gap separation penalty off
% identity for alignment delay 40
Residue specific gaps off
Hydrophilic residue gap off
Transition weighing 0

ペアワイズアラインメントパラメーター(Pairwise alignment parameter):
FAST algorithm on
K-tuplesize 1
Gap penalty 3
Window size 5
Number of best diagonals 5
【0042】
従って、配列番号1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列は、特に上記パラメーター設定とともに上記プログラミングアルゴリズムを用いて、その配列を配列番号1の配列と比較したとき、少なくとも90%の同一性を示す核酸配列を意味する。
【0043】
特に好ましいプロモーターは配列番号1の核酸配列に対して91%、より好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは99%の同一性を示す。
【0044】
さらなるプロモーターの天然の例は、さらに上記の核酸配列から出発して、特に配列番号1の配列から出発して、そのゲノム配列が未知である様々な生物から、それ自体公知のハイブリダイゼーション技法によって容易に見出すことができる。
【0045】
さらなる本発明の態様は、従って、配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸に関する。この核酸配列は、少なくとも10個、より好ましくは12個、15個、30個、50個より多い、または特に好ましくは150個より多いヌクレオチドを含んでなる。
【0046】
本発明によれば、ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。かかるハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.,「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning ; A Laboratory Manual)」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pp. 9.31-9.57、または「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0047】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は特に次の条件を意味する:
50%ホルムアミド、5 x SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5 x Denhardt's溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml変性せん断サケ精子DNAからなる溶液中での42℃における一晩のインキュベーション、その後の0.1 x SSCによる65℃でのフィルターの洗浄。
【0048】
「機能的に等価な断片」は、プロモーター活性を有する核酸配列の断片であって、出発配列と実質的に同じかまたはそれより高い比プロモーター活性を有する上記断片を意味する。
【0049】
「本質的に同一の」は、出発配列の比プロモーター活性の少なくとも50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、特に好ましくは95%を示す比プロモーター活性を意味する。
【0050】
「断片」は、上記A)、B)もしくはC)に記載される、プロモーター活性を有する核酸の部分配列を意味する。これらの断片は配列番号1の核酸配列の好ましくは10個より多く、しかしより好ましくは12個、15個、30個、50個より多く、または特に好ましくは150個より多く連続したヌクレオチドを有する。
【0051】
配列番号1の核酸配列をプロモーターとして、すなわち遺伝子の転写用に、使用することが特に好ましい。
【0052】
配列番号1は、GenbankエントリーAP005283に、機能を割当てることなく開示されている。従って、本発明はさらに本発明の新規のプロモーター活性を有する核酸配列に関する。
【0053】
本発明は特に、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) この配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失によって誘導されかつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) 配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列と機能的に等価な断片、
を含んでなるプロモーター活性を有する核酸に関する。ただし、配列番号1の配列を有する核酸は除外される。
【0054】
先に挙げた全てのプロモーター活性を有する核酸は、さらに、それ自体公知の方法で、ヌクレオチド構成ブロックからの化学合成により、例えば2本鎖の個々のオーバーラップする相補的核酸構成ブロックの断片縮合などにより、調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、公知の方法でホスホルアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press New York, pp. 896-897)により行うことができる。合成オリゴヌクレオチドの付加、およびDNAポリメラーゼのKlenow断片を用いたギャップのフィルインとライゲーション反応、ならびに一般的なクローニング方法は、Sambrookら (1989), 「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular cloning: A laboratory manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0055】
本発明はさらに、本発明のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を確実にする核酸配列を含んでなる発現ユニットの、遺伝子を発現させるための使用に関する。
【0056】
発現ユニットは、本発明によれば、発現活性を有する核酸、すなわち、発現すべき核酸つまり遺伝子と機能的に連結された状態で、発現(すなわち、この核酸もしくは遺伝子の転写および翻訳)を調節する核酸を意味する。
【0057】
「機能的な連結」は、本明細書では、本発明の発現ユニットと、遺伝子導入によって発現されるべき核酸配列と、適宜に例えばターミネーターなどのさらなる調節エレメントと、の連続配置であって、それぞれの調節エレメントが核酸配列の遺伝子導入発現においてその機能を果たしうる方法での上記連続配置を意味する。化学的意味での直接連結がこのために絶対に必要というわけではない。例えば、エンハンサー配列などの遺伝子制御配列は、標的配列に対するその機能を、より離れた位置からでもまたは異なるDNA分子からでさえも、果たすことができる。遺伝子導入によって発現されるべき核酸配列を、本発明の発現ユニット配列の後ろに(すなわち、3'末端に)配置して、これら2つの配列が共有結合で一緒に連結されるようにした配置が好ましい。この場合、発現ユニット配列と遺伝子導入によって発現されるべき核酸配列との間の距離は、好ましくは200塩基対未満、特に好ましくは100塩基対未満、最も好ましくは50塩基対未満とすることが好適である。
【0058】
「発現活性」は、本発明によれば、ある特定の時間内に発現ユニットにより産生されたタンパク質の量、すなわち発現速度を意味する。
【0059】
「比発現活性」(specific ecpression activity)は、本発明によれば、それぞれの発現ユニットについての、ある特定の時間内に発現ユニットにより産生されたタンパク質の量を意味する。
【0060】
野生型と比較して、ある遺伝子に関係する「生起された発現活性」または発現速度の場合には、従って、野生型と比較して、野生型にこのような方式で存在しなかったタンパク質の生産が生起される。
【0061】
野生型と比較して、ある遺伝子に関する「改変された発現活性」もしくは発現速度の場合には、従って、野生型と比較して、ある特定の時間内に産生されるタンパク質の量が改変される。
【0062】
「改変された」は、本明細書では、好ましくは増加したもしくは低下したを意味する。
【0063】
これは、例えば本発明の内因性発現ユニットの比活性を増加もしくは低下させる(例えば発現ユニットを突然変異させるか、または発現ユニットを刺激もしくは抑制する)ことによって行うことができる。
【0064】
増加した発現活性もしくは発現速度はさらに、例えば本発明の発現ユニットによりまたは増加した比発現活性をもつ発現ユニットにより微生物内での遺伝子の発現を調節することによって、達成することができるが、その場合、該遺伝子は発現ユニットに対して異種である。
【0065】
本発明の発現ユニットによりまたは増加した比発現活性をもつ本発明の発現ユニットにより微生物内での遺伝子の発現を調節することは、好ましくは、以下により達成される:
1以上の本発明の発現ユニット(適宜改変された比発現活性をもつ)を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された本発明の発現ユニット(適宜改変された比発現活性をもつ)の制御下で行われるようにする;または
1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が本発明の内因性発現ユニット(適宜改変された比発現活性をもつ)の制御下で行われるようにする;または
本発明の発現ユニット(適宜改変された比発現活性をもつ)および機能的に連結された発現すべき1以上の核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0066】
本発明の発現ユニットは、上記の本発明のプロモーター活性を有する核酸、およびさらに機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を確実にする核酸配列を含んでなる。
【0067】
リボ核酸の翻訳を確実にするこの核酸配列は、好ましくは、リボソーム結合部位として配列番号42の核酸配列を含んでなる。
【0068】
好ましい実施形態においては、本発明の発現ユニットは、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) 配列番号2の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導されかつ配列番号2の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) 配列番号2の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる。
【0069】
配列番号2の核酸配列は、Corynebacterium glutamicum由来のGroESシャペロニン(Pgro)の発現ユニットの核酸配列を表わす。配列番号2は野生型の発現ユニットの配列に相当する。
【0070】
本発明はさらに、ヌクレオチドの置換、挿入または欠失によりこの配列から誘導されかつ配列番号2の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を含んでなる発現ユニットに関する。
【0071】
本発明の発現ユニットに対するさらなる本発明の天然の例は、例えば、そのゲノム配列がわかっている様々な生物から、データベースより得られた核酸配列と上記の配列番号2の配列との同一性比較によって、容易に見出すことができる。
【0072】
発現ユニットの本発明の人工的配列は、配列番号2の配列から出発して人為的な改変および突然変異により、例えばヌクレオチドの置換、挿入または欠失によって、容易に見出すことができる。
【0073】
配列番号2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列は、従って、特に上記のパラメーター設定とともに上記プログラミングアルゴリズムを用いて、その配列と配列番号2の配列とを比較したとき、少なくとも90%の同一性を示す核酸配列を意味する。
【0074】
特に好ましい発現ユニットは、配列番号2の核酸配列に対して91%、より好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、特に好ましくは99%の同一性を示す。
【0075】
発現ユニットのさらなる天然の例は、さらに、上記の核酸配列から出発して、特に配列番号2の配列から出発して、そのゲノム配列が未知である様々な生物から、公知のハイブリダイゼーション技法により、容易に見出すことができる。
【0076】
さらなる本発明の態様は、従って、配列番号2の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を含んでなる発現ユニットに関する。この核酸配列は、少なくとも10個、より好ましくは12個、15個、30個、50個より多い、または特に好ましくは150個より多いヌクレオチドを含んでなる。
【0077】
「ハイブリダイゼーション」は、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドがストリンジェントな条件下で実質的に相補的配列と結合できることを意味し、一方これらの条件下では非相補的パートナー間の非特異的結合が起こらない。ハイブリダイゼーションのために、好ましくは配列は90〜100%相補的であるべきである。互いと特異的に結合できる相補的配列の特性は、例えば、ノーザンブロットもしくはサザンブロット法に、またはPCRもしくはRT-PCRでのプライマー結合に利用される。
【0078】
本発明によれば、ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。かかるハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T.,「分子クローニング(実験室マニュアル)(Molecular Cloning (A Laboratory Manual))」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pp. 9.31-9.57、または「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0079】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は特に次の条件を意味する:
50%ホルムアミド、5 x SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5 x Denhardt's溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/ml変性せん断サケ精子DNAからなる溶液中での42℃における一晩のインキュベーション、その後の0.1 x SSCによる65℃でのフィルターの洗浄。
【0080】
本発明のヌクレオチド配列はさらに、他の細胞型および微生物において相同配列を同定および/またはクローニングするために利用することができる、プローブとプライマーを作製することを可能にする。かかるプローブとプライマーは通常、本発明の核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも12個、好ましくは少なくとも25個、例えば、40個、50個または75個連続したヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含んでなる。
【0081】
本発明にはまた、いわゆるサイレント突然変異を含むか、または具体的に記述された配列と比較して、特定の起源生物もしくは宿主生物のコドン使用頻度に従って改変されている核酸配列、ならびにそれらの天然に存在する変異体(例えば、スプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体)も包含される。
【0082】
「機能的に等価な断片」は、出発配列と実質的に同じかまたはそれより高い比発現活性を有する発現ユニットの断片を意味する。
【0083】
「本質的に同一」は、出発配列の比発現活性の少なくとも50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、特に好ましくは95%を示す比発現活性を意味する。
【0084】
「断片」は、上記E)、F)もしくはG)に記載される発現ユニットの部分配列を意味する。これらの断片は、配列番号1の核酸配列の好ましくは10個より多く、より好ましくは12個、15個、30個、50個より多く、または特に好ましくは150個より多く連続したヌクレオチドを有する。
【0085】
配列番号2の核酸配列を発現ユニットとして、すなわち遺伝子の発現用に、使用することが特に好ましい。
【0086】
配列番号2は、GenbankエントリーAP005283に、機能を割当てることなく開示されている。従って、本発明はさらに、本発明の新規の発現ユニットに関する。
【0087】
本発明は特に、本発明のプロモーター活性をもつ核酸と、さらに機能的に連結されたリボ核酸の翻訳を確実にする核酸配列とを含んでなる発現ユニットに関する。
【0088】
本発明は、特に好ましくは、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) この配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導されかつ配列番号2の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) 配列番号2の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる発現ユニットに関し、ただし、配列番号2の配列を有する核酸は除外される。
【0089】
本発明の発現ユニットは、次の遺伝子エレメントの1以上を含んでなる:マイナス10(「-10」)配列;マイナス35(「-35」)配列;転写開始配列、エンハンサー領域;およびオペレーター領域。
【0090】
これらの遺伝子エレメントは好ましくはコリネバクテリアの菌種に、とりわけCorynebacterium glutamicumに特異的である。
【0091】
上述した全ての発現ユニットは、さらに、それ自体公知の方法で、ヌクレオチド構成ブロックからの化学合成により、例えば2本鎖の個々のオーバーラップする相補性核酸構成ブロックの断片縮合などにより、調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、公知の方法でホスホルアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press New York, pp. 896-897)により行うことができる。合成オリゴヌクレオチドの付加、およびDNAポリメラーゼのKlenow断片を用いたギャップのフィルインとライゲーション反応、ならびに一般的クローニング法は、Sambrookら(1989), 「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular cloning: A laboratory manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0092】
本発明で使用される方法および技法は、微生物学的方法および組換えDNA法に精通した当業者には公知である。細菌細胞を増殖し、単離したDNA分子を宿主細胞に挿入し、そして単離し、クローニングし、単離した核酸分子を配列決定する、といった方法および技法がそのような技法および方法の例である。これらの方法は、以下の多数の一般的な文献に記載されている:
Davisら, 「分子生物学の基礎的方法(Basic Methods In Molecular Biology)」 (1986);J. H. Miller, 「分子遺伝学実験(Experiments in Molecular Genetics)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1972);J.H. Miller, 「細菌遺伝学の短期講習(A Short Course in Bacterial Genetics)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1992);M. Singer and P. Berg, 「遺伝子とゲノム(Genes & Genomes)」, University Science Books, Mill Valley, California (1991);J. Sambrook, E.F. Fritsch and T. Maniatis, 「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989);P.B. Kaufmannら, 「生物学と医学における分子的および細胞的方法のハンドブック(Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine)」, CRC Press, Boca Raton, Florida (1995);「植物分子生物学およびバイオテクノロジーの方法(Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology)」, B.R. GlickおよびJ.E. Thompson編, CRC Press, Boca Raton, Florida (1993);ならびにP.F. Smith-Keary, 「大腸菌の分子遺伝学(Molecular Genetics of Escherichia coli)」, The Guilford Press, New York, NY (1989)。
【0093】
全ての本発明の核酸分子は単離された核酸分子の形態であることが好ましい。「単離された」核酸分子は核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されていて、さらにそれが組換え技法により調製されたものであれば実質的に他の細胞性物質もしくは培地を含まず、また、それが化学的に合成されたものであれば化学的前駆体もしくは他の化学薬品を含まないであろう。
【0094】
本発明はさらに、具体的に記載されたヌクレオチド配列に相補的な核酸分子、またはその断片を含む。
【0095】
本発明のプロモーターおよび/または発現ユニットは、例えば、以下に記載する発酵により生合成産物を製造するための改良法において、特に好都合に使用することができる。
【0096】
本発明のプロモーターおよび/または発現ユニットは、特に、それらがストレスによって微生物内で誘導されるという利点を有する。特に所望の遺伝子の転写/発現速度を増加させるためにこのストレス誘導を制御することが、発酵プロセスの好適な制御により可能である。特にL-リシンの生産では、ごく初期にこのストレス期に到達させて、この場合には所望の遺伝子の転写/発現速度の増加をごく初期に達成することが可能となる。
【0097】
本発明のプロモーター活性を有する核酸は、微生物内での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して改変(すなわち増加もしくは低下)させるために、または生起させるために、使用され得る。
【0098】
本発明の発現ユニットは、微生物内での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して改変(すなわち増加もしくは低下)させるために、または生起させるために、使用され得る。
【0099】
本発明のプロモーター活性を有する核酸および本発明の発現ユニットはまた、微生物、特にコリネバクテリウム種における、例えばファインケミカル、タンパク質、特にアミノ酸などの様々な生合成産物の生産を調節して増強させるのに使用することができる。
【0100】
従って、本発明は、微生物内での遺伝子の転写速度を野生型と比較して改変または生起させる方法であって、
a) 内因性遺伝子の転写を調節する、本発明のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を、野生型と比較して改変させるか、または
b) 本発明のプロモーター活性を有する核酸によりもしくは実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた核酸により、微生物内での遺伝子(該遺伝子はプロモーター活性を有する核酸に対して異種である)の転写を調節する、
ことによる上記方法に関する。
【0101】
実施形態a)によれば、微生物内での遺伝子の転写速度を野生型と比較して改変または生起させることは、微生物内での比プロモーター活性を改変(すなわち増加もしくは低下)させることにより行なうことができる。これは、例えば、本発明のプロモーター活性を有する核酸配列の標的化突然変異、すなわち標的を定めたヌクレオチドの置換、欠失もしくは挿入により行なうことができる。増加したもしくは低下したプロモーター活性は、RNAポリメラーゼホロ酵素結合部位(当業者には-10領域および-35領域としても知られる)のヌクレオチドを置換することによって達成される。さらに、ヌクレオチドを欠失させるかもしくはヌクレオチドを挿入することにより、記載したRNAポリメラーゼホロ酵素結合部位の互いからの距離を短縮もしくは延長することによっても達成される。さらに、RNAポリメラーゼホロ酵素の結合部位の空間近傍に、調節タンパク質(当業者にはリプレッサーおよびアクチベーターとしても知られる)の結合部位(当業者にはオペレーターとしても知られる)を置くことにより、プロモーター配列と結合した後で、これらの調節タンパク質がRNAポリメラーゼホロ酵素の結合および転写活性を低下もしくは増強するようにするか、またはそうでなければ新しい調節の影響下にそれを置くようにする。
【0102】
配列番号53の核酸配列は好ましくは本発明の発現ユニットのリボソーム結合部位を表わし、そして配列番号52の配列は本発明の発現ユニットの-10領域を表わす。これらの領域の核酸配列の改変は比発現活性の改変をもたらす。
【0103】
従って本発明は、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニット中のリボソーム結合部位としての、配列番号53の核酸配列の使用に関する。
【0104】
本発明はさらに、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニット中の-10領域としての、配列番号52の核酸配列の使用に関する。
【0105】
本発明は特に、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする、配列番号53の核酸配列を含んでなる発現ユニットに関する。この場合、配列番号53の核酸配列は好ましくはリボソーム結合部位として使用される。
【0106】
本発明はさらに、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする、配列番号52の核酸配列を含んでなる発現ユニットに関する。この場合、好ましくは配列番号52の核酸配列は-10領域として使用される。
【0107】
「比プロモーター活性」に関して、野生型と比較した増加または低下は、野生型のプロモーター活性を有する本発明の核酸と比較した、すなわち、例えば配列番号1と比較した、比活性の増加または低下を意味する。
【0108】
実施形態b)によれば、微生物内での遺伝子の転写速度を野生型と比較して改変させるかまたは生起させることは、本発明のプロモーター活性を有する核酸によりまたは実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた核酸により、遺伝子(該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である)の微生物内での転写を調節することによって行うことができる。
【0109】
これは、好ましくは以下によって達成される:
b1) 適宜に比プロモーター活性を改変させた、1以上の本発明のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
b2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させた本発明のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
b3) 適宜に比プロモーター活性を改変させた、本発明のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0110】
従って、野生型の内因性遺伝子の転写速度を改変させる、すなわち増加もしくは低下させることが、以下によって可能である:
実施形態b1)に従って、適宜に比プロモーター活性を改変させた、1以上の本発明のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
実施形態b2)に従って、1以上の外因性遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された外因性遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させたプロモーター活性を有する本発明の内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
実施形態b3)に従って、適宜に比プロモーター活性を改変させたプロモーター活性を有する本発明の核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき内因性核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0111】
従ってさらに、外因性遺伝子の転写速度を野生型と比較して生起させることが、以下によって可能である:
実施形態b2)に従って、1以上の外因性遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された外因性遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させたプロモーター活性を有する本発明の内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
実施形態b3)に従って、適宜に比プロモーター活性を改変させたプロモーター活性を有する本発明の核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき外因性核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0112】
実施形態b2)に従った遺伝子の挿入はさらに、遺伝子をコード領域または非コード領域に組み込むことにより行うことができる。非コード領域への挿入が好ましい。
【0113】
実施形態b3)に従った核酸構築物の挿入はさらに、染色体内または染色体外に行うことができる。核酸構築物の染色体内挿入が好ましい。「染色体内」組込みは、外因性DNA断片を宿主細胞の染色体に挿入することである。この用語はまた、外因性DNA断片と宿主細胞の染色体の適切な領域との間の相同組換えに対しても用いられる。
【0114】
実施形態b)においては、実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた本発明の核酸を使用することも好ましい。実施形態a)に記載したように、実施形態b)においては、これらは微生物中に存在してもまたは微生物中で調製されてもよいし、あるいは、単離された形態で微生物中に導入されてもよい。
【0115】
「内因性」は、野生型ゲノム中に既に存在している遺伝子情報(例えば遺伝子など)を意味する。
【0116】
「外因性」は、野生型ゲノム中に存在しない遺伝子情報(例えば遺伝子など)を意味する。
【0117】
本発明のプロモーター活性を有する核酸による転写の調節に関して、用語「遺伝子」とは、好ましくは、転写される領域、すなわち、例えば翻訳を調節する領域、コード領域、および適宜にさらなる調節エレメント(例えばターミネーターなど)を含んでなる核酸を意味する。
【0118】
本発明の発現ユニットによる発現の調節(以下に記載する)に関して、用語「遺伝子」とは、好ましくは、コード領域および適宜にさらなる調節エレメント(例えばターミネーター)を含んでなる核酸を意味する。
【0119】
「コード領域」は、タンパク質をコードする核酸配列を意味する。
【0120】
プロモーター活性を有する核酸および遺伝子に対して「異種」とは、使用した遺伝子が野生型内では本発明のプロモーター活性を有する核酸の制御下で転写されないが、野生型には存在しない新しい機能的連結が生じ、かつ本発明のプロモーター活性を有する核酸と特定遺伝子との機能的組み合わせが野生型には存在しないことを意味する。
【0121】
発現ユニットおよび遺伝子に対して「異種」とは、使用した遺伝子が野生型内では本発明のプロモーター活性を有する発現ユニットの制御下で発現されないが、野生型には存在しない新しい機能的連結が生じ、かつ本発明の発現ユニットと特定遺伝子の機能的組み合わせが野生型には存在しないことを意味する。
【0122】
本発明はさらに、好ましい実施形態において、微生物内での遺伝子の転写速度を野生型と比較して増加または生起させる方法に関し、
ah) 内因性遺伝子の転写を調節する本発明のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を野生型と比較して増加させる、または
bh) 本発明のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態a)に従って比プロモーター活性を増加させた核酸により、該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写を調節する、
ことによる上記方法である。
【0123】
本発明のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態ah)に従って比プロモーター活性を増加させた本発明の核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することは、好ましくは、以下により達成される:
bh1) 適宜に比プロモーター活性を増加させた、本発明のプロモーター活性を有する1以上の核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
bh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を増加させた本発明のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
bh3) 適宜に比プロモーター活性を増加させた本発明のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を、微生物中に導入する。
【0124】
本発明はさらに、好ましい実施形態においては、微生物内での遺伝子の転写速度を野生型と比較して低下させる方法に関し、
ar) 内因性遺伝子の転写を調節する本発明のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を、野生型と比較して低下させる、または、
br) 実施形態a)に従って比プロモーター活性を低下させた核酸を微生物のゲノム中に導入して、内因性遺伝子の転写が、導入されたプロモーター活性の低下した核酸の制御下で起こるようにする、
ことによる上記方法である。
【0125】
本発明はさらに、微生物内での遺伝子の発現速度を野生型と比較して改変させるもしくは生起させる方法に関し、
c) 内因性遺伝子の発現を調節する本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して改変させる、または
d) 本発明の発現ユニットにより、もしくは実施形態c)に従って比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、
ことによる上記方法である。
【0126】
実施形態c)に従って、微生物内での遺伝子の発現速度を野生型と比較して改変させるまたは生起させることは、微生物内での比発現活性を改変させる(すなわち、増加もしくは低下させる)ことにより行うことができる。これは、例えば本発明のプロモーター活性を有する核酸配列の標的化突然変異により、すなわち標的を定めたヌクレオチドの置換、欠失または挿入により、行うことができる。例えば、シャイン・ダルガルノ(Shine-Dalgarno)配列と翻訳開始コドンとの間の距離を延長させると、通常、比発現活性の変化、減少または増強を招く。比発現活性の改変はまた、シャイン・ダルガルノ領域(リボソーム結合部位)の配列の、翻訳開始コドンからの距離を、ヌクレオチドの欠失または挿入によって短縮または延長させることにより、達成することができる。しかしまた、16S rRNAの相補的3'側に対する相同性を高めるかまたは低下させるように、シャイン・ダルガルノ領域の配列を改変することによっても達成することができる。
【0127】
「比発現活性」に関して、野生型と比較した増加または低下は、野生型の本発明の発現ユニットと比較した、すなわち例えば配列番号2と比較した、比活性の増加または低下を意味する。
【0128】
実施形態d)に従って、微生物内での遺伝子の発現速度を野生型と比較して改変させるまたは生起させることは、本発明の発現ユニットにより、または実施形態c)に従って比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節することによって行うことができる。
【0129】
これは、好ましくは以下により達成される:
d1) 適宜に比発現活性を改変させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d3) 適宜に比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を、微生物中に導入する。
【0130】
従って、野生型の内因性遺伝子の発現速度を改変させる、すなわち、増加もしくは低下させることが、以下により可能である:
実施形態d1)に従って、適宜に比発現活性を改変させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
実施形態d2)に従って、1以上の外因性遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
実施形態d3)に従って、適宜に比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0131】
従って、さらに、外因性遺伝子の発現速度を野生型と比較して生起させることが、以下により可能である:
実施形態d2)に従って、1以上の外因性遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
実施形態d3)に従って、適宜に比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき外因性核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0132】
実施形態d2)に従った遺伝子の挿入はさらに、遺伝子をコード領域または非コード領域中に組み込むことにより行うことができる。非コード領域への挿入が好ましい。
【0133】
実施形態d3)に従った核酸構築物の挿入はさらに、染色体内または染色体外に行うことができる。核酸構築物の染色体内挿入が好ましい。
【0134】
核酸構築物は以後、発現カセットとも呼ばれる。
【0135】
実施形態d)においては、実施形態c)に従って比発現活性を改変させた本発明の発現ユニットを使用することも好ましい。実施形態c)に記載するような、実施形態d)においては、これらの発現ユニットは微生物内に存在してもまたは微生物中で調製されてもよいし、あるいは、単離された形態で微生物中に導入されてもよい。
【0136】
本発明はさらに、好ましい実施形態において、微生物内での遺伝子の発現速度を野生型と比較して増加させるまたは生起させる方法に関し、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して増加させる、または
dh) 本発明の発現ユニットにより、もしくは実施形態a)に従って比発現活性を増加させた発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、
ことによる上記方法である。
【0137】
本発明の発現ユニットにより、または実施形態c)に従って比発現活性を増加させた発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することは、好ましくは以下により達成される:
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された該発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0138】
本発明はさらに、微生物内での遺伝子の発現速度を野生型と比較して低下させる方法に関し、
cr) 内因性遺伝子の発現を調節する本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して低下させる、または
dr) 実施形態cr)に従って比発現活性を低下させた発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、内因性遺伝子の発現が、導入された発現活性の低下した発現ユニットの制御下で起こるようにする、
ことによる上記方法である。
【0139】
微生物内での遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるまたは生起させるための本発明の上記方法の好ましい実施形態において、遺伝子は、ファインケミカルの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、その場合、遺伝子は、場合によってはさらなる調節エレメントを含んでいてもよい。
【0140】
微生物内での遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるまたは生起させるための本発明の上記方法の特に好ましい実施形態において、遺伝子は、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、その場合、遺伝子は、場合によってはさらなる調節エレメントを含んでいてもよい。
【0141】
特に好ましい実施形態においては、アミノ酸の生合成経路からのタンパク質は、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ、ジヒドロジピコリン酸還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写レギュレーターLuxR、転写レギュレーターLysR1、転写レギュレーターLysR2、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチル-トランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター担体、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リシンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素、フェレドキシンNADP還元酵素、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655レギュレーター、RXN2910レギュレーター、アルギニル-tRNAシンテターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン流出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、硫酸還元のタンパク質RXA077、硫酸還元のタンパク質RXA248、硫酸還元のタンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1-ホスホフルクトキナーゼおよび6-ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される。
【0142】
アミノ酸の生合成経路からの上記タンパク質のうち、好ましいタンパク質およびこれらのタンパク質をコードする核酸は、それぞれ、微生物起源の、好ましくはCorynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌由来の、好ましくはコリネ型細菌由来の、特に好ましくはCorynebacterium glutamicum由来のタンパク質配列および核酸配列である。
【0143】
アミノ酸の生合成経路からの、特に好ましいタンパク質配列および対応する核酸配列の例、それらを記載する参考文献、および参考文献に載っているそれらの配列番号を表1に示す:
【表1】



【0144】
アミノ酸の生合成経路からの特に好ましいタンパク質配列および対応する核酸配列のさらなる例は、fbr2とも呼ばれるフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ2の配列(配列番号51)およびフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ2をコードする対応する核酸配列(配列番号50)である。
【0145】
アミノ酸の生合成経路からの特に好ましいタンパク質配列およびタンパク質をコードする対応する核酸配列のさらなる例は、RXA077とも呼ばれる硫酸還元のタンパク質の配列(配列番号4)および硫酸還元のタンパク質をコードする対応する核酸配列(配列番号3)である。
【0146】
さらに、アミノ酸の生合成経路からの特に好ましいタンパク質配列は、それぞれの場合に、そのタンパク質について表1に示したアミノ酸配列を有し、その場合、それぞれのタンパク質は、そのアミノ酸配列について表2/列2に示したアミノ酸位置の少なくとも1つに、表2/列3(同じ行)に示したそれぞれのアミノ酸と異なるタンパク原性アミノ酸を有する。さらなる好ましい実施形態においては、タンパク質は、そのアミノ酸配列について表2/列2に示したアミノ酸位置の少なくとも1つに、表2/列4(同じ行)に示したアミノ酸を有する。表2に示したタンパク質は、アミノ酸の生合成経路の突然変異型タンパク質であって、特に有利な特性を有するものであり、従って対応する核酸を本発明のプロモーターを介して発現させてアミノ酸を産生させるのに特に適している。例えば、突然変異T311Iは、askがスイッチオフされるフィードバック抑制をもたらす。
【0147】
表2からの上記突然変異型タンパク質をコードする対応する核酸は、通常の方法で作製することができる。
【0148】
突然変異型タンパク質をコードする核酸配列を作製するための好適な出発点は、例えば、American Type Culture Collectionから受託番号ATCC 13032のもとで入手しうるCorynebacterium glutamicum菌株のゲノム、または表1に記載した核酸配列である。突然変異型タンパク質のアミノ酸配列を、該タンパク質をコードする核酸配列に逆翻訳するためには、上記核酸配列を導入しようとする生物または上記核酸配列が存在している生物のコドン使用頻度を利用することが有利である。例えば、Corynebacterium glutamicumのコドン使用頻度をCorynebacterium glutamicumに対して使用することが好都合である。特定の生物のコドン使用頻度は、データベースまたは特許出願(所望の生物からの少なくとも1つのタンパク質および該タンパク質をコードする1つの遺伝子を記載する)からそれ自体公知の方法で確かめることができる。
【0149】
表2の情報は次のように理解すべきである:
列1「身元確認」において、表1に関係するそれぞれの配列の明確な名称を示す。
【0150】
列2「AA-位置」において、それぞれの数字は、表1からの対応するポリペプチド配列のアミノ酸位置をさす。従って、列「AA-位置」に記載の「26」は、対応して示されたポリペプチド配列のアミノ酸位置26を意味する。位置の番号付けはN末端において+1で始まる。
【0151】
列3「AA野生型」において、それぞれの文字は、表1からの配列の対応する野生型株における列2に示された位置の(一文字記号で表わした)アミノ酸を示す。
【0152】
列4「AA突然変異体」において、それぞれの文字は、対応する突然変異株における列2に示された位置の(一文字記号で表わした)アミノ酸を示す。
【0153】
列5「機能」において、対応するポリペプチド配列の生理学的機能を示す。
【0154】
特定の機能(列5)および特定の初期アミノ酸配列(表1)をもつ突然変異型タンパク質に関して、列2、3および4は少なくとも1つの突然変異を記載し、いくつかの配列については複数の突然変異を記載している。この複数の突然変異は、常に、それぞれの場合の最も近い上記初期アミノ酸配列(表1)を参照するものである。特定のアミノ酸配列の「少なくとも1つのアミノ酸位置」は、好ましくは、列2、3および4においてこのアミノ酸配列について記載した少なくとも1つの突然変異を意味する。
【0155】
タンパク原性アミノ酸の一文字記号は次の通りである:
A アラニン
C システイン
D アスパラギン酸
E グルタミン酸
F フェニルアラニン
G グリシン
H ヒスチジン
I イソロイシン
K リシン
L ロイシン
M メチオニン
N アスパラギン
P プロリン
Q グルタミン
R アルギニン
S セリン
T トレオニン
V バリン
W トリプトファン
Y チロシン
【0156】
【表2】


【0157】
微生物内での遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるまたは生起させるための本発明の上記方法、ならびに遺伝的に改変された微生物を作製するための下記方法、下記の遺伝的に改変された微生物、および生合成産物を製造するための下記方法において、本発明のプロモーター活性を有する核酸、本発明の発現ユニット、上記遺伝子および上記核酸構築物または発現カセットの、微生物、特にコリネ型細菌中への導入は、SacB法により行うことが好ましい。
【0158】
SacB法は当業者に公知であって、例えば、Schafer A, Tauch A, Jager W, Kalinowski J, Thierbach G, Puhler A.; 「大腸菌プラスミドpK18およびpK19から誘導された小さい移動性多目的クローニングベクター:Corynebacterium glutamicumの染色体中の限定された欠失の選択(Small mobilizable multi-purpose cloning vectors derived from the Escherichia coli plasmids pK18 and pK19: selection of defined deletions in the chromosome of Corynebacterium glutamicum)」, Gene. 1994 Jul 22;145(1):69-73、およびBlomfield IC, Vaughn V, Rest RF, Eisenstein BI.; 「枯草菌sacB遺伝子および温度感受性pSC101レプリコンを用いる大腸菌での対立遺伝子交換(Allelic exchange in Escherichia coli using the Bacillus subtilis sacB gene and a temperature-sensitive pSC101 replicon)」; Mol Microbiol. 1991 Jun;5(6):1447-57に記載されている。
【0159】
本発明の上記方法の好ましい実施形態において、微生物内での遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるまたは生起させることは、本発明のプロモーター活性を有する核酸または本発明の発現ユニットを微生物中に導入することによって行われる。
【0160】
本発明の上記方法のさらなる好ましい実施形態において、微生物内での遺伝子の転写速度および/または発現速度を改変させるまたは生起させることは、上記の核酸構築物または発現カセットを微生物中に導入することによって行われる。
【0161】
本発明は従って、
少なくとも1つの本発明の発現ユニット、
少なくとも1つのさらなる発現すべき核酸配列、すなわち発現すべき遺伝子、および
適宜に、さらなる遺伝子制御エレメント(例えばターミネーター)、
を含んでなる発現カセットに関し、ここで、
少なくとも1つの発現ユニットおよびさらなる発現すべき核酸配列は互いに機能的に連結され、かつさらなる発現すべき核酸配列は発現ユニットに対して異種である。
【0162】
発現すべき核酸配列は、好ましくは、ファインケミカルの生合成経路からのタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸である。
【0163】
発現すべき核酸配列は、特に好ましくは、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択される。
【0164】
アミノ酸の生合成経路からの好ましいタンパク質は先に記載され、これらの例は表1および表2に示される。
【0165】
本発明の発現カセットにおける、発現すべき遺伝子に対する発現ユニットの物理的位置は、発現ユニットが発現すべき遺伝子の転写を調節し、好ましくは翻訳をも調節して、1以上のタンパク質の生産を可能にするように選ばれる。「生産を可能にする」には、本明細書では、生産の構成的増加、特定条件下での生産の減少もしくは停止、および/または特定の条件下での生産の増加が含まれる。「条件」は、本明細書では、(1)ある成分の培地への添加、(2)ある成分の培地からの除去、(3)培地中のある成分の第2成分による置換、(4)培地温度の上昇、(5)培地温度の低下、および(6)培地が維持される酸素または窒素濃度などの大気条件の調節、を含む。
【0166】
本発明はさらに、本発明の上記発現カセットを含んでなる発現ベクターに関する。
【0167】
ベクターは当業者に周知であり、「クローニングベクター(Cloning Vectors)」, Pouwels P.H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985に見出すことができる。プラスミド以外に、ベクターは、当業者に公知の他の全てのベクター、例えばファージ、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および直鎖もしくは環状DNAなども意味する。これらのベクターは宿主生物内での自律複製または染色体複製を受けることができる。
【0168】
好適かつ特に好ましいプラスミドは、コリネ型細菌内で複製するプラスミドである。多数の公知のプラスミドベクター、例えば、pZ1(Menkelら, Applied and Environmental Microbiology (1989) 64: 549-554)、pEKEx1(Eikmannsら, Gene 102: 93-98 (1991))またはpHS2-1(Sonnenら, Gene 107: 69-74 (1991))などは、機能未知のプラスミド(cryptic plasmid)pHM1519、pBL1またはpGA1などに基づくものである。他のプラスミドベクター、例えばpCLiK5MCS、またはpCG4(US-A 4,489,160)もしくはpNG2(Serwold-Davisら, FEMS Microbiology Letters 66, 119-124 (1990))もしくはpAG1(US-A 5,158,891)に基づくもの、を同様に利用することができる。
【0169】
また、染色体中への組込みによる遺伝子増幅の方法に利用できるプラスミドベクターも好適であり、例えば、Reinscheidら(Applied and Environmental Microbiology 60,126-132 (1994))が、hom-thrBオペロンの複製と増幅について記載している。この方法では、完全な遺伝子を、C. glutamicum内では複製できないが宿主(典型的には大腸菌)内で複製できるプラスミドベクター中にクローニングする。好適なベクターの例は、pSUP301(Sirnonら, Bio/ Technology 1,784-791 (1983))、pK18mobまたはpK19mob(Schaferら, Gene 145,69-73 (1994))、Bernardら, Journal of Molecular Biology, 234: 534-541 (1993))、pEM1(Schrumpfら, 1991, Journal of Bacteriology 173: 4510-4516)またはpBGS8(Sprattら, 1986, Gene 41: 337-342)である。次いで、増幅すべき遺伝子を含むプラスミドベクターを形質転換によって所望のC. glutamicum株に導入する。形質転換方法は例えば、Thierbachら(Applied Microbiology and Biotechnology 29, 356-362 (1988))、DunicanおよびShivnan(Biotechnology 7, 1067-1070 (1989))およびTauchら(FEMS Microbiological Letters 123,343-347 (1994))に記載されている。
【0170】
本発明はさらに、遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、遺伝的改変は、少なくとも1つの遺伝子の転写速度を野生型と比較して改変させるかまたは生起させ、かつ遺伝的改変が、
a) 少なくとも1つの内因性遺伝子の転写を調節する少なくとも1つの請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を改変させる、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写を調節する、
ことによるものである。
【0171】
上記方法について先に記載したように、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することは、以下により達成される:
b1) 適宜に比プロモーター活性を改変させた、1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入されたプロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
b2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
b3) 適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0172】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の転写速度が野生型と比較して増加しているまたは生起されている遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、
ah) 内因性遺伝子の転写を調節する請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性が、野生型と比較して増加している、または
bh) プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写が、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態ah)に従って比プロモーター活性を増加させた核酸により調節されている。
【0173】
上記方法について先に記載したように、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従って比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することは、以下により達成される:
bh1) 適宜に比プロモーター活性を増加させた1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入されたプロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
bh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
bh3) 適宜に比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0174】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の転写速度が野生型と比較して低下している遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、
ar) 少なくとも1つの内因性遺伝子の転写を調節する、請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性が、野生型と比較して低下している、または
br) 実施形態a)に従ってプロモーター活性を低下させた1以上の核酸が微生物のゲノム中に導入されており、少なくとも1つの内因性遺伝子の転写が、導入されたプロモーター活性の低下した核酸の制御下で起こるようになっている。
【0175】
本発明はさらに、遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、遺伝的改変は、少なくとも1つの遺伝子の発現速度を野生型と比較して改変させるかまたは生起させ、かつ遺伝的改変が、
c) 少なくとも1つの内因性遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して改変させる、または
d) 請求項2または3に記載の発現ユニットにより、または実施形態a)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、
ことによるものである。
【0176】
上記方法について先に記載したように、請求項2または3に記載の発現ユニットによりまたは実施形態a)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することは、以下により達成される:
d1) 適宜に比発現活性を改変させた1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d3) 適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0177】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の発現速度が野生型と比較して増加しているまたは生起されている遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して増加している、または
dh) 発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現が、請求項2または3に記載の発現ユニットによりもしくは実施形態a)に従って比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより調節されている。
【0178】
上記方法について先に記載したように、請求項2または3に記載の発現ユニットによりもしくは実施形態a)に従って比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することは、以下により達成される:
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0179】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の発現速度が野生型と比較して低下している遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、
cr) 少なくとも1つの内因性遺伝子の発現を調節する、請求項2または3に記載の少なくとも1つの内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して低下している、または
dr) 低下した発現活性の低下した請求項2または3に記載の1以上の発現ユニットが微生物のゲノム中に導入されており、少なくとも1つの内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようになっている。
【0180】
本発明はさらに、請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された発現すべき遺伝子を含んでなる遺伝的に改変された微生物に関し、ここで、該遺伝子は発現ユニットに対して異種である。
【0181】
この遺伝的に改変された微生物は、特に好ましくは本発明の発現カセットを含んでなる。
【0182】
本発明は特に好ましくは、本発明により定義された少なくとも1つの組換え核酸構築物を保持するベクター(特にシャトルベクターまたはプラスミドベクター)を含んでなる遺伝的に改変された微生物、特にコリネ型細菌に関する。
【0183】
遺伝的に改変された微生物の好ましい実施形態においては、上記遺伝子がファインケミカルの生合成経路からのタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸である。
【0184】
遺伝的に改変された微生物の特に好ましい実施形態においては、上記遺伝子がタンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、その場合、該遺伝子は任意にさらなる調節エレメントを含んでいてもよい。
【0185】
アミノ酸の生合成経路からの好ましいタンパク質は、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ、ジヒドロジピコリン酸還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写レギュレーターLuxR、転写レギュレーターLysR1、転写レギュレーターLysR2、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチル-トランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター担体、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リシンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素、フェレドキシンNADP還元酵素、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655レギュレーター、RXN2910レギュレーター、アルギニル-tRNAシンテターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン流出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、硫酸還元のタンパク質RXA077、硫酸還元のタンパク質RXA248、硫酸還元のタンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1-ホスホフルクトキナーゼおよび6-ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される。
【0186】
アミノ酸の生合成経路からのタンパク質および遺伝子の特に好ましい例は、すでに表1および表2に記載してある。
【0187】
好ましい微生物または遺伝的に改変された微生物は細菌、藻類、真菌または酵母である。
【0188】
特に好ましい微生物はコリネ型細菌である。
【0189】
好ましいコリネ型細菌は、Corynebacterium属の細菌、特にCorynebacterium glutamicum、Corynebacterium acetoglutamicum、Corynebacterium acetoacidophilum、Corynebacterium thermoaminogenes、Corynebacterium melassecolaおよびCorynebacterium efficiens、またはBrevibacterium属の細菌、特にBrevibacterium flavum、Brevibacterium lactofermentumおよびBrevibacterium divaricatumである。
【0190】
特に好ましいCorynebacterium属およびBrevibacterium属の細菌は、Corynebacterium glutamicum ATCC 13032、Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870、Corynebacterium thermoaminogenes FERM BP-1539、Corynebacterium melassecola ATCC 17965、Corynebacterium efficiens DSM 44547、Corynebacterium efficiens DSM 44548、Corynebacterium efficiens DSM 44549、Brevibacterium flavum ATCC 14067、Brevibacterium lactofermentum ATCC 13869、Brevibacterium divaricatum ATCC 14020、Corynebacterium glutamicum KFCC10065、およびCorynebacterium glutamicum ATCC21608からなる群より選択される。
【0191】
略語KFCCは Korean Federation of Culture Collectionを、略語ATCCは American type strain culture collectionを、そして略語DSMは Deutsche Sammlung von Mikroorganismenを意味する。
【0192】
Corynebacterium属およびBrevibacterium属のさらなる特に好ましい細菌を表3に示す:
【表3】



【0193】
略語は次の意味を有する:
ATCC:American Type Culture Collection(Rockville, MD, USA)
FERM:Fermentation Research Institute(Chiba, Japan)
NRRL:ARS Culture Collection, Northern Regional Research Laboratory(Peoria, IL, USA)
CECT:Coleccion Espanola de Cultivos Tipo(Valencia, Spain)
NCIMB:National Collection of Industrial and Marine Bacteria Ltd.(Aberdeen, UK)
CBS:Centraalbureau voor Schimmelcultures(Baarn, NL)
NCTC:National Collection of Type Cultures(London, UK)
DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Braunschweig, Germany)
【0194】
本発明のプロモーター活性を有する核酸および本発明の発現ユニットを用いて、上記の本発明の方法により、上記の遺伝的に改変された本発明の微生物内での特定の生合成産物への代謝経路を調節することが可能である。
【0195】
そのために、例えば、特定の生合成産物へ導く代謝経路が、この生合成経路の遺伝子の転写速度または発現速度を改変させるかまたは生起させることにより増強される。その場合には、タンパク質量の増加が所望の生合成経路のタンパク質の全活性の増加をもたらし、ひいては所望の生合成産物への代謝フラックスの増強をもたらす。
【0196】
さらに特定の生合成産物から分岐する代謝経路は、この分岐する生合成経路の遺伝子の転写速度または発現速度を低下させることにより減少させることができる。この場合には、タンパク質量の低下が望まれない生合成経路のタンパク質の全活性の低下をもたらし、ひいては所望の生合成産物への代謝フラックスの増強をもたらす。
【0197】
本発明の遺伝的に改変された微生物は、例えばグルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン、セルロースからの、またはグリセロールおよびエタノールからの、生合成産物を産生することができる。
【0198】
従って、本発明は、本発明の遺伝的に改変された微生物を培養することによる生合成産物の製造方法に関する。
【0199】
所望の生合成産物に応じて、様々な遺伝子の転写速度または発現速度を増加または低下させなければならない。通常、複数の遺伝子の転写速度または発現速度を変えること、すなわち組み合わされた遺伝子の転写速度または発現速度を増加させるおよび/または組み合わされた遺伝子の転写速度または発現速度を低下させることが有利である。
【0200】
本発明の遺伝的に改変された微生物において、ある遺伝子の少なくとも1つの改変された(すなわち、増加したまたは低下した)転写速度または発現速度は、本発明のプロモーター活性をもつ核酸または本発明の発現ユニットに起因するものである。
【0201】
さらに、遺伝的に改変された微生物内でのさらなる遺伝子の、さらに改変された(すなわち、さらに増加したまたはさらに低下した)転写速度または発現速度は、本発明のプロモーター活性を有する核酸または本発明の発現ユニットに起因してもよいが、起因する必要はない。
【0202】
従って、本発明はさらに、本発明の遺伝的に改変された微生物を培養することによる生合成産物の製造方法に関する。
【0203】
好ましい生合成産物はファインケミカルである。
【0204】
用語「ファインケミカル」は当技術分野において公知であり、生物により生産されかつ様々な産業分野、例えば、限定するものではないが、製薬産業、農業、化粧品、食品および飼料産業などで利用される化合物を含む。これらの化合物としては、以下のものが含まれる:有機酸、例えば酒石酸、イタコン酸およびジアミノピメリン酸、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸、プリン塩基およびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(例えば、Kuninaka, A. (1996) 「ヌクレオチドおよび関連化合物(Nucleotides and related compounds)」, pp. 561-612 in Biotechnology vol.6, Rehmら編, VCH: Weinheim およびそこに引用された参考文献)、脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えばアラキドン酸)、ジオール(例えばプロパンジオールおよびブタンジオール)、炭水化物(例えばヒアルロン酸およびトレハロース)、芳香族化合物(例えば芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ)、ビタミンおよび補因子(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A27, 「ビタミン(Vitamins)」, pp. 443-613 (1996) VCH: Weinheim およびそこに引用された参考文献;Ong, A.S., Niki, E. およびPacker, L. (1995) “Nutrition, Lipids, Health and Disease” Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research - Asia, マレーシア、ペナンにて1994年9月1〜3日に開催, AOCS Press (1995)に記載)、酵素、ならびにGutcho (1983) in Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation, ISBN: 0818805086 およびそこに引用された参考文献に記載される全ての他の化学物質。いくつかのファインケミカルの代謝と用途を以下でさらに説明する。
【0205】
I. アミノ酸の代謝と用途
アミノ酸は全てのタンパク質の基本的な構成単位を構成しており、従って正常な細胞機能に必須である。用語「アミノ酸」は当技術分野で公知である。20種が存在するタンパク原性アミノ酸はタンパク質の構成単位として役目を果たし、タンパク質中でこれらのアミノ酸は互いにペプチド結合で連結しているが、非タンパク原性アミノ酸(数百種が公知である)は通常タンパク質中に存在しない(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol.A2, pp.57-97 VCH: Weinheim (1985)を参照)。アミノ酸はDまたはL立体配置でありうるが、通常天然のタンパク質中に見出されるタイプはL-アミノ酸だけである。20種のタンパク原性アミノ酸のそれぞれの生合成および分解経路は、原核生物および真核生物の両方の細胞においてよく特徴付けられている(例えば、Stryer, L. Biochemistry, 第3版, pp. 578-590 (1988)を参照)。「必須」アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリン)は、その生合成の複雑さ故に食品から摂取する必要があるのでこのように呼ばれているが、これらの必須アミノ酸は単純な生合成経路により他の11種の「非必須」アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリンおよびチロシン)に変換される。高等動物はこれらのアミノ酸のいくつかを合成する能力を有するが、必須アミノ酸は、正常なタンパク質合成が行われるように、食品により摂取しなければならない。
【0206】
タンパク質生合成におけるその機能とは別に、これらのアミノ酸はそれ自体が興味をそそる化学物質であり、その多くが食品、飼料、化学薬品、化粧品、農業および製薬産業の様々な応用分野で利用されることが分かっている。リシンはヒトの栄養にとって重要であるだけでなく、家禽やブタなどの単胃動物種にとっても重要なアミノ酸である。グルタミン酸は、最も多くは風味添加物(グルタミン酸モノナトリウム、MSG)として使用されて、食品産業において広く使用されており、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシンおよびシステインも同様である。グリシン、L-メチオニンおよびトリプトファンは全て製薬産業において使用されている。グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン、セリンおよびアラニンは、製薬産業および化粧品産業において使用されている。トレオニン、トリプトファンおよびD-/L-メチオニンは汎用されている食品添加物である(Leuchtenberger, W. (1996) 「アミノ酸-技術的生産と用途(Amino acids - technical production and use)」, pp. 466-502 in Rehmら(編), Biotechnology vol. 6, chapter 14a, VCH: Weinheim)。これらのアミノ酸はさらに、合成のアミノ酸およびタンパク質、例えばN-アセチルシステイン、S-カルボキシメチル-L-システイン、(S)-5-ヒドロキシトリプトファンおよびUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A2, pp. 57-97, VCH, Weinheim, 1985に記載の他の物質、などを合成するための前駆体として好適であることがわかっている。
【0207】
これらの天然アミノ酸の、これらを生産できる生物(例えば細菌)内での生合成はよく特徴付けられている(細菌のアミノ酸生合成およびその調節についての概説は、Umbarger, H.E. (1978) Ann. Rev. Biochem. 47: 533-606を参照)。グルタミン酸は、クエン酸サイクルの中間体であるα-ケトグルタル酸の還元的アミノ化により合成される。グルタミン、プロリンおよびアルギニンはそれぞれグルタミン酸から連続して生成される。セリンの生合成は3段階法で行われ、3-ホスホグリセリン酸(解糖の中間体)から出発して、酸化、アミノ基転移および加水分解の段階を経てこのアミノ酸が得られる。システインおよびグリシンはそれぞれセリンから生産され、前者はホモシステインとセリンとの縮合により、後者はセリントランスヒドロキシメチラーゼにより触媒される反応での側鎖β-炭素原子のテトラヒドロ葉酸への転移により得られる。フェニルアラニンおよびチロシンは、解糖およびペントースリン酸経路の前駆体、すなわちエリトロース4-リン酸およびホスフェノールピルビン酸から、プレフェネート(prephenate)合成後の最後の2段階だけが異なる9段階生合成経路において合成される。トリプトファンは同様にこれらの2つの出発分子から製造されるが、その合成は11段階経路で行われる。チロシンはまた、フェニルアラニンから、フェニルアラニンヒドロキシラーゼにより触媒される反応で製造され得る。アラニン、バリンおよびロイシンはそれぞれ、解糖の最終産物であるピルビン酸の生合成産物である。アスパラギン酸はクエン酸サイクルの中間体であるオキサロ酢酸から作られる。アスパラギン、メチオニン、トレオニンおよびリシンはそれぞれアスパラギン酸の転化により製造される。イソロイシンはトレオニンから作られる。ヒスチジンは活性型糖である5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸から複雑な9段階経路で作られる。
【0208】
細胞のタンパク質生合成に必要な量を超えるアミノ酸は貯蔵できないので、その代わりに分解され、結果的に中間体が細胞の主要な代謝経路に供給されるようになる(Stryer, L., Biochemistry, 第3版, 第21章 「アミノ酸分解と尿素サイクル(Amino Acid Degradation and the Urea Cycle)」; pp. 495-516 (1988)を参照)。細胞は不要なアミノ酸を有用な代謝中間体に変換しうるが、アミノ酸の生産はエネルギー、前駆体分子およびその合成に必要な酵素の点で高くつく。従って、アミノ酸生合成がフィードバック抑制により調節されることは当然であり、その場合、特定のアミノ酸が存在すると、それ自体の生産がスローダウンされるかまたは完全に停止される(アミノ酸生合成経路のフィードバック機構については、Stryer, L., Biochemistry, 第3版, 第24章, 「アミノ酸およびヘムの生合成(Biosynthesis of Amino Acids and Heme)」, pp. 575-600 (1988)を参照)。従って、特定のアミノ酸の生産量は細胞内のそのアミノ酸の量によって制限される。
【0209】
II. ビタミン、補因子および栄養補助食品の代謝と用途
ビタミン、補因子および栄養補助食品は別の分子グループを構成している。高等動物はこれらの分子を合成する能力を喪失しているので、これらの摂取を必要とするが、これらは細菌などの他の生物により容易に合成される。これらの分子は、生理活性分子それ自体または生理活性物質の前駆体のいずれかであって、いくつかの代謝経路において電子担体または中間体として作用する。これらの化合物はまた、その栄養的価値に加えて、着色剤、酸化防止剤および触媒またはその他の加工助剤として重要な産業上の価値を有する(これらの化合物の構造、活性および産業上の応用については、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 「ビタミン(Vitamins)」, vol. A27, pp. 443-613, VCH: Weinheim、1996を参照)。用語「ビタミン」は当技術分野で公知であって、正常に機能するには生物にとって必要であるが、その生物自体によっては合成され得ない栄養素を含む。ビタミンのグループは補因子および栄養補助食品化合物を含んでもよい。用語「補因子」には、正常な酵素活性の存在に必要とされる非タンパク質化合物が含まれる。これらの化合物は有機物であっても無機物であってもよく、本発明の補因子分子は好ましくは有機物である。用語「栄養補助食品」には、植物および動物、とりわけヒトの健康を増進する食品添加物が含まれる。かかる分子の例は、ビタミン、酸化防止剤、ならびにある種の脂質(例えば高度不飽和脂肪酸)である。
【0210】
これらを生産することができる生物(例えば細菌)でのこれらの分子の生合成は詳細に特徴付けられている(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 「ビタミン(Vitamins)」, vol. A27, pp. 443-613, VCH: Weinheim, 1996;Michal, G. (1999) 「生化学的経路:生化学と分子生物学の地図帳(Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology)」, John Wiley & Sons;Ong, A.S., Niki, E. and Packer, L. (1995) “Nutrition, Lipids, Health and Disease” Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for free Radical Research - Asia, マレーシア、ペナンにて1994年9月1〜3日に開催, AOCS Press, Champaign, IL X, 374 S)。
【0211】
チアミン(ビタミンB1)はピリミジンとチアゾール単位の化学的カップリングにより形成される。リボフラビン(ビタミンB2)はグアノシン5'-三リン酸(GTP)とリボース5-リン酸から合成される。リボフラビンは次いでフラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビン-アデニンジヌクレオチド(FAD)の合成に用いられる。まとめて「ビタミンB6」と呼ばれる化合物のファミリー(例えばピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサル5-リン酸および商業的に使用される塩酸ピリドキシン)は全て、共通の構造単位である5-ヒドロキシ-6-メチルピリジンの誘導体である。パントテン酸(pantothenate)(パントテン酸(pantothenic acid)、R-(+)-N-(2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチル-1-オキソブチル)-β-アラニン)は化学合成または発酵によって製造することができる。パントテン酸生合成の最終段階はβ-アラニンとパントイン酸のATP駆動による縮合から成る。パントイン酸への転化、β-アラニンへの転化、およびパントテン酸への縮合の生合成段階に関わる酵素は公知である。パントテン酸の代謝的に活性な形態は補酵素Aであり、その生合成は5酵素段階を経て進行する。パントテン酸、ピリドキサル5-リン酸、システインおよびATPは補酵素Aの前駆体である。これらの酵素はパントテン酸の形成を触媒するだけでなく、(R)-パントイン酸、(R)-パントラクトン、(R)-パンテノール(プロビタミンB5)、パンテテイン(およびその誘導体)および補酵素Aの生産をも触媒する。
【0212】
ビオチンの、前駆体分子ピメロイル-CoAからの微生物における生合成は詳細に研究されていて、関与するいくつかの遺伝子が同定されている。対応するタンパク質の多くはFeクラスター合成に関わり、nifSタンパク質のクラスに属することが明らかにされた。リポ酸はオクタン酸から誘導され、エネルギー代謝の補酵素として作用するが、その場合に、リポ酸はピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体およびα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の構成成分となる。葉酸類(folates)は、全て葉酸から誘導された物質のグループであり、葉酸はL-グルタミン酸、p-アミノ安息香酸および6-メチルプテリンから誘導される。代謝中間物であるグアノシン5'-三リン酸(GTP)、L-グルタミン酸およびp-アミノ安息香酸から出発する葉酸とその誘導体の生合成は、ある種の微生物において詳細に研究されている。
【0213】
コリノイド(コバラミンおよび特にビタミンB12など)およびポルフィリンは、テトラピロール環系により区別される化学物質のグループに属する。ビタミンB12の生合成は非常に複雑であるのでまだ完全には特徴付けられていないが、関与するほとんどの酵素と基質は現在公知である。ニコチン酸(ニコチネート)およびニコチンアミドはピリジン誘導体であり、「ナイアシン(niacin)」とも呼ばれる。ナイアシンは重要な補酵素NAD(ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド)およびNADP(ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチドリン酸)ならびにそれらの還元型の前駆体である。
【0214】
これらの化合物の工業規模での製造は、ほとんどの場合、細胞を使わない化学合成に基づくが、これらの化学物質のいくつかは、例えばリボフラビン、ビタミンB6、パントテン酸およびビオチンは、同様に微生物の大規模培養によって生産されている。ビタミンB12はその合成が複雑であるので、発酵によってのみ生産されている。in vitro法は材料と時間の相当な出費が必要であって、高コストになることが多い。
【0215】
III. プリン、ピリミジン、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの代謝と用途
プリンとピリミジン代謝のための遺伝子およびそれらの対応するタンパク質は、新生物疾患およびウイルス感染の療法のための重要な標的である。用語「プリン」または「ピリミジン」は、核酸、補酵素およびヌクレオチドの構成成分である窒素塩基を含む。用語「ヌクレオチド」は、窒素塩基、五炭糖(RNAの糖はリボース、DNAの糖はD-デオキシリボース)およびリン酸を含んでなる、核酸分子の基本構成単位を構成する。用語「ヌクレオシド」はヌクレオチドの前駆体として作用するが、ヌクレオチドと対照的にリン酸単位を含まない分子である。核酸分子を形成するためのこれらの分子の生合成またはそれらの移動を抑制することによって、RNAおよびDNA合成を抑制することが可能である。癌性細胞におけるこの活性の標的化した抑制によって、腫瘍細胞の分裂能および複製能を抑制することが可能である。
【0216】
また核酸分子を形成しないが、エネルギー貯蔵(すなわちAMP)としてまたは補酵素(すなわちFADおよびNAD)として作用するヌクレオチドも存在する。
【0217】
いくつかの文献は、プリンおよび/またはピリミジン代謝が影響を受ける医学的兆候に対するこれらの化学物質の使用を記載している(例えば、Christopherson, R.I.およびLyons, S.D. (1990) 「化学療法剤としての新規ピリジンおよびプリン生合成の強力なインヒビター(Potent inhibitors of de novo pyridine and purine biosynthesis as chemotherapeutic agents)」, Med. Res. Reviews 10: 505-548)。プリンおよびピリミジン代謝に関わる酵素の研究は、例えば免疫抑制剤または抗増殖剤として利用しうる新規医薬品の開発に集中してきた(Smith, J.L. 「ヌクレオチド合成の酵素(Enzymes in Nucleotide Synthesis)」 Curr. Opin. Struct. Biol. 5 (1995) 752-757;Biochem. Soc. Transact. 23 (1995) 877-902)。しかしプリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、様々なファインケミカル(例えばチアミン、S-アデノシルメチオニン、葉酸またはリボフラビン)の生合成における中間体として、細胞用のエネルギー担体(例えばATPまたはGTP)として、他の可能な用途も有し、また化学物質それ自体については、風味強化剤(例えばIMPまたはGMP)または多数の医学的応用に一般的に利用されている(例えば、Kuninaka, A., (1996) 「ヌクレオチドと関連化合物(Nucleotides and Related Compounds)」 in Biotechnology, vol. 6, Rehmら 編, VCH: Weinheim, pp. 561-612を参照)。プリン、ピリジン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド代謝に関わる酵素はまた、殺真菌剤、除草剤および殺虫剤を含む作物保護用の化学薬剤の開発のための標的となりつつある。
【0218】
細菌内でのこれらの化合物の代謝は特徴付けられている(例えば、Zalkin, H.およびDixon, J.E. (1992) 「新規プリンヌクレオチド生合成(De novo purine nucleotide biosynthesis)」 Progress in Nucleic Acids Research and Molecular biology, vol. 42, Academic Press, pp. 259-287;およびMichal, G. (1999) 「ヌクレオチドおよびヌクレオシド(Nucleotides and Nucleosides)」;chapter 8 in: Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, Wiley, New Yorkを参照)。徹底した研究の対象であるプリン代謝は細胞が正常に機能するのに不可欠である。高等動物におけるプリン代謝障害は重篤な障害(例えば痛風)の原因となりうる。プリンヌクレオチドはいくつかの段階を通して合成され、リボース5-リン酸から中間化合物イノシン5'-リン酸(IMP)を経て、グアノシン5'-モノリン酸(GMP)またはアデノシン5'-モノリン酸(AMP)の生産に至り、それからヌクレオチドとして使用される三リン酸の形態が容易に調製される。これらの化合物はエネルギー貯蔵に利用することもでき、それらの分解は細胞内の多数の異なる生化学的プロセスのためのエネルギーを供給する。ピリミジン生合成はリボース5-リン酸からウリジン5'-モノリン酸(UMP)の形成を経て行われる。UMPは次いでシチジン5'-三リン酸(CTP)に転化される。全てのヌクレオチドのデオキシ型は1段階還元反応でヌクレオチドの二リン酸リボース型から調製され、ヌクレオチドの二リン酸デオキシリボース型が得られる。リン酸化の後、これらの分子はDNA合成に参加することができる。
【0219】
IV. トレハロースの代謝と用途
トレハロースはα,α-1,1結合を介して互いに連結された2つのグルコース分子から成る。トレハロースは通常、食品産業において甘味剤として、乾燥または凍結食品へのおよび飲料への添加剤として使用される。しかし、トレハロースはまた、医薬品産業、化粧品およびバイオテクノロジー産業においても使用される(例えば、Nishimotoら, (1998) 米国特許第5 759 610号;Singer, M.A.およびLindquist, S. Trends Biotech. 16 (1998) 460-467;Paiva, C.L.A.およびPanek, A.D. Biotech Ann. Rev. 2 (1996) 293-314;ならびにShiosaka, M. FFIJ. Japan 172 (1997) 97-102を参照)。トレハロースは多数の微生物の酵素により生産されて自然な方法で周囲の培地中に放出されるので、培地から当技術分野で公知の方法により単離することができる。
【0220】
特に好ましい生合成産物は、有機酸、タンパク質、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、タンパク原性および非タンパク原性の両方のアミノ酸、脂質および脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミンおよび補因子、酵素ならびにタンパク質からなる群より選択される。
【0221】
好ましい有機酸は酒石酸、イタコン酸およびジアミノピメリン酸である。
【0222】
好ましいヌクレオシドおよびヌクレオチドは、例えば、Kuninaka, A. (1996) 「ヌクレオチドと関連化合物(Nucleotides and related compounds)」, pp. 561-612, in Biotechnology, vol. 6, Rehmら編, VCH: Weinheimとそこに引用された参考文献に記載されている。
【0223】
好ましい生合成産物はさらに、脂質、飽和および不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸、ジオール、例えばプロパンジオールおよびブタンジオール、炭水化物、例えばヒアルロン酸およびトレハロース、芳香族化合物、例えば芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ、ビタミンおよび補因子(例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A27, 「ビタミン(Vitamins)」, pp. 443-613 (1996) VCH: Weinheimとその参考文献;およびOng, A.S., Niki, E.およびPacker, L. (1995) “Nutrition, Lipids, Health and Disease” Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia and the Society for Free Radical Research - Asia, マレーシア、ペナンにて1994年9月1〜3日に開催, AOCS Press (1995)を参照)、酵素、ポリケチド(Caneら (1998) Science 282: 63-68))、ならびにGutcho (1983) 「発酵による化学物質(Chemicals by Fermentation)」, Noyes Data Corporation, ISBN: 0818805086とその参考文献に記載の全ての他の化学物質である。
【0224】
特に好ましい生合成産物はアミノ酸、特に好ましくは必須アミノ酸、特にL-グリシン、L-アラニン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-リシン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-セリン、L-プロリン、L-バリン、L-イソロイシン、L-システイン、L-チロシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸およびL-トレオニン、L-ホモセリン、とりわけL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンである。リシン、メチオニンおよびトレオニンのようなアミノ酸は、以後、それぞれ、L体とD体の両方のアミノ酸を、好ましくはL体を、すなわち、例えばL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンを意味する。
【0225】
本発明は特に、少なくとも1つの遺伝子の発現速度が野生型と比較して増加しているまたは生起されている、遺伝的に改変された微生物を培養することによるリシンの製造方法に関し、ここで、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する少なくとも1つの本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して増加しているか、または
dh) 発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現が、本発明の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に従って比発現活性を増加させた発現ユニットにより調節されており、そして
前記遺伝子がアスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸還元酵素をコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、転写レギュレーターLuxRをコードする核酸、転写レギュレーターLysR1をコードする核酸、転写レギュレーターLysR2をコードする核酸、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素をコードする核酸、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、リシンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、アルギニル-tRNAシンテターゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼをコードする核酸、タンパク質OpcAをコードする核酸、1-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、および6-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸からなる群より選択される。
【0226】
前記方法について先に記載したように、本発明の発現ユニットによりまたは実施形態ch)に記載の比発現活性の増加した本発明の発現ユニットにより、微生物内でのこれらの遺伝子の発現を調節することは、以下によって達成される:
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上のこれらの遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0227】
リシンを製造するための上記方法のさらなる好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに増加している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、転写レギュレーターLuxRの活性、転写レギュレーターLysR1の活性、転写レギュレーターLysR2の活性、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素活性、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、トランスアルドラーゼ活性、リシンエクスポーター活性、アルギニル-tRNAシンテターゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、フルクトース-1、6-ビスホスファターゼ活性、タンパク質OpcA活性、1-ホスホフルクトキナーゼ活性、6-ホスホフルクトキナーゼ活性、およびビオチンリガーゼ活性。
【0228】
リシンを製造するための上記方法のさらなる特に好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに低下している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ活性、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、トレオニンエクスポーター活性、トレオニン流出タンパク質活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性、およびトレオニンシンターゼ活性。
【0229】
上記活性の少なくとも1つの活性のさらなる増加または低下は、本発明のプロモーター活性をもつ核酸および/または本発明の発現ユニットにより生起されてもよいが、その必要はない。
【0230】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の発現速度が野生型と比較して増加しているまたは生起されている、遺伝的に改変された微生物を培養することによるメチオニンの製造方法に関し、ここで、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する少なくとも1つの本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して増加しているか、または
dh) 発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現が、本発明の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に従って比発現活性を増加させた発現ユニットにより調節されており、そして
前記遺伝子がアスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、シスタチオニンγ-シンターゼをコードする核酸、シスタチオニンβ-リアーゼをコードする核酸、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする核酸、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼをコードする核酸、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素をコードする核酸、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホセリンホスファターゼをコードする核酸、セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、システインシンターゼIをコードする核酸、システインシンターゼII活性をコードする核酸、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性をコードする核酸、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性をコードする核酸、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性をコードする核酸、ホスホアデノシンホスホ硫酸還元酵素活性をコードする核酸、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素活性をコードする核酸、フェレドキシンNADPH-還元酵素活性をコードする核酸、フェレドキシン活性をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA077をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA248をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA247をコードする核酸、RXA0655レギュレーターをコードする核酸、およびRXN2910レギュレーターをコードする核酸からなる群より選択される。
【0231】
前記方法について先に記載したように、本発明の発現ユニットによりまたは実施形態ch)に記載の比発現活性の増加した本発明の発現ユニットにより、微生物内でのこれらの遺伝子の発現を調節することは、以下によって達成される:
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0232】
メチオニンを製造するための上記方法のさらなる好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに増加している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ活性、シスタチオニンγ-シンターゼ活性、シスタチオニンβ-リアーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素活性、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ活性、ホスホセリンホスファターゼ活性、セリンアセチルトランスフェラーゼ活性、システインシンターゼI活性、システインシンターゼII活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素活性、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素活性、フェレドキシンNADPH-還元酵素活性、フェレドキシン活性、硫酸還元のタンパク質RXA077の活性、硫酸還元のタンパク質RXA248の活性、硫酸還元のタンパク質RXA247の活性、RXA655レギュレーターの活性、およびRXN2910レギュレーターの活性。
【0233】
メチオニンを製造するための上記方法のさらなる特に好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに低下している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:ホモセリンキナーゼ活性、トレオニンデヒドラターゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、メソ-ジアミノピメリン酸D-デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性、およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性。
【0234】
上記活性の少なくとも1つの活性のさらなる増加または低下は、本発明のプロモーター活性をもつ核酸および/または本発明の発現ユニットにより生起されてもよいが、その必要はない。
【0235】
本発明はさらに、少なくとも1つの遺伝子の発現速度が野生型と比較して増加しているまたは生起されている、遺伝的に改変された微生物を培養することによるトレオニンの製造方法に関し、ここで、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する少なくとも1つの本発明の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して増加しているか、または
dh) 発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現が、本発明の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に従って比発現活性を増加させた発現ユニットにより調節されており、そして
前記遺伝子がアスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンキナーゼをコードする核酸、トレオニンシンターゼをコードする核酸、トレオニンエクスポーター担体をコードする核酸、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素をコードする核酸、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、リシンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トレオニン流出タンパク質をコードする核酸、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼをコードする核酸、OpcAタンパク質をコードする核酸、1-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、6-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、およびホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸からなる群より選択される。
【0236】
前記方法について先に記載したように、本発明の発現ユニットによりまたは実施形態ch)に記載の比発現活性の増加した本発明の発現ユニットにより、微生物内でのこれらの遺伝子の発現を調節することは、以下によって達成される:
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた1以上の本発明の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた本発明の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた本発明の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する。
【0237】
トレオニンを製造するための上記方法のさらなる好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに増加している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、トレオニンエクスポーター担体の活性、トランスアルドラーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、ビオチンリガーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トレオニン流出タンパク質活性、タンパク質OpcA活性、1-ホスホフルクトキナーゼ活性、6-ホスホフルクトキナーゼ活性、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ活性、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、およびホモセリンデヒドロゲナーゼ活性。
【0238】
トレオニンを製造するための上記方法のさらなる特に好ましい実施形態は、以下の群より選択される活性の少なくとも1つの活性が野生型と比較してさらに低下している、遺伝的に改変された微生物を含むものである:トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メソ-ジアミノピメリン酸D-デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性、リシンエクスポーター活性、アセト乳酸シンターゼ活性、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、ジヒドロキシ-酸デヒドラターゼ活性、およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性。
【0239】
上記活性の少なくとも1つの活性のさらなる増加または低下は、本発明のプロモーター活性をもつ核酸および/または本発明の発現ユニットにより生起されてもよいが、その必要はない。
【0240】
タンパク質の「活性」なる用語は、酵素の場合には対応するタンパク質の酵素活性を意味し、他のタンパク質(例えば構造または輸送タンパク質)の場合にはそのタンパク質の生理活性を意味する。
【0241】
酵素は通常、ある基質をある産物に変換することができ、つまりこの変換反応工程を触媒することができる。
【0242】
それ故に、酵素の「活性」は、ある特定時間内に、その酵素により変換された基質の量、または生成された産物の量を意味する。
【0243】
従って、ある活性が野生型と比較して増加している場合には、ある特定時間内にその酵素により変換された基質の量または生成された産物の量が、野生型と比較して増加している。
【0244】
この「活性」の増加は、好ましくは、上記および下記の全ての活性に対して、「野生型の活性」の少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より一層好ましくは少なくとも300%、なおもより一層好ましくは少なくとも500%、とりわけ少なくとも600%に達する量である。
【0245】
従って、活性が野生型と比較して低下している場合には、ある特定時間内に酵素により変換された基質の量または生成された産物の量が、野生型と比較して低下している。
【0246】
活性の低下は、好ましくは、微生物内でのこの酵素の機能性の、様々な細胞生物学的機構に基づいた、部分的なまたは実質的に完全な抑制または遮断を意味する。
【0247】
活性の低下は、酵素の実質的に完全な消失(すなわち対応する活性の検出不能または酵素の免疫学的検出不能)に至るまでの酵素の量的な低下を含む。微生物における活性は好ましくは、野生型と比較して、少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは100%低下している。「低下」は、特に、対応する活性の完全な消失をも意味する。
【0248】
遺伝的に改変された微生物および野生型における個々の酵素の活性、すなわち酵素活性の増加または低下は、例えば酵素アッセイなどの公知の方法によって測定することができる。
【0249】
例えば、ピルビン酸カルボキシラーゼは、ピルビン酸をオキサロ酢酸に変換する酵素活性を示すタンパク質を意味する。
【0250】
これに対して、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性は、ある特定時間内にピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質により変換されたピルビン酸の量または生成されたオキサロ酢酸の量を意味する。
【0251】
従って、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性が野生型と比較して増加する場合には、ある特定時間内にピルビン酸カルボキシラーゼタンパク質により変換されたピルビン酸の量または生成されたオキサロ酢酸の量が野生型と比較して増加する。
【0252】
このピルビン酸カルボキシラーゼ活性の増加は、野生型のピルビン酸カルボキシラーゼ活性の、好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より一層好ましくは少なくとも300%、なおもより一層好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0253】
さらに、例えばホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの酵素活性を意味する。
【0254】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼは、オキサロ酢酸をホスホエノールピルビン酸に変換する酵素活性を示すタンパク質を意味する。
【0255】
これに対して、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性は、ある特定時間内にホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼタンパク質により変換されたオキサロ酢酸の量または生成されたホスホエノールピルビン酸の量を意味する。
【0256】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性が野生型と比較して低下する場合には、従って、ある特定時間内にホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼタンパク質により変換されたオキサロ酢酸の量または生成されたホスホエノールピルビン酸の量が野生型と比較して低下する。
【0257】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の低下は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの実質的に完全な消失(すなわちホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の検出不能またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの免疫学的検出不能)に至るまでのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの量的な低下を含む。ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性は好ましくは、野生型と比較して、少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは100%低下する。特に「低下」はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性の完全な消失をも意味する。
【0258】
活性のさらなる増加は、様々な方法により、例えば発現レベルおよびタンパク質レベルでの抑制調節機構のスイッチオフにより、または上記タンパク質をコードする核酸の遺伝子発現を野生型と比較して増加させることにより行うことができる。
【0259】
上記タンパク質をコードする核酸の遺伝子発現を野生型と比較して増加させることは、同様に様々な方法により、例えばアクチベーターによって遺伝子を誘導することにより、または上記のようにプロモーター活性を増加させるかまたは発現活性を増加させることにより、あるいは1以上の遺伝子コピーを微生物中に導入することにより、行うことができる。
【0260】
タンパク質をコードする核酸の遺伝子発現を増加させることはまた、本発明によれば、その微生物に固有な内因性タンパク質の発現の操作をも意味する。
【0261】
これは、例えば、上記のように、遺伝子のプロモーターおよび/または発現ユニット配列を改変することにより達成することができる。遺伝子の発現速度を増加させる、そのような改変は、例えば、DNA配列の欠失または挿入により行うことができる。
【0262】
上記のように、外因性刺激を加えることにより内因性タンパク質の発現を改変することが可能である。これは、特定の生理学的条件によって、すなわち外来物質の添加によって行うことができる。
【0263】
当業者は、遺伝子発現の増加を達成するために、さらなる様々な方法に、単独でまたは組合せで、頼ることができる。こうして、例えば、適切な遺伝子のコピー数を増加させたり、または構造遺伝子の上流に位置するプロモーターおよび調節領域またはリボソーム結合部位を突然変異させたりすることができる。さらに、発酵生産中の発現を誘導プロモーターにより増加させることが可能である。mRNAの寿命を延長させる方法も同様に発現を高める。酵素活性は同様に酵素タンパク質の分解を防止することによっても増強される。遺伝子または遺伝子構築物をプラスミド中に様々なコピー数で存在させてもよいし、染色体中に組み込んで増幅させてもよい。また、別法として、培地組成および培養管理を変更することにより関係遺伝子を過剰発現させることも可能である。
【0264】
当業者は、これに関するガイダンスを、とりわけ、Martinら(Biotechnology 5, 137-146 (1987))、Guerreroら(Gene 138, 35-41 (1994))、TsuchiyaおよびMorinaga(Bio/Technology 6, 428-430 (1988))、Eikmannsら(Gene 102, 93-98 (1991))、欧州特許第0472869号、米国特許第4,601,893号、SchwarzerおよびPuhler(Biotechnology 9, 84-87 (1991)、Reinscheidら(Applied and Environmental Microbiology 60,126-132 (1994)、LaBarreら(Journal of Bacteriology 175, 1001-1007 (1993))、特許出願WO 96/15246、Malumbresら(Gene 134, 15-24 (1993))、日本特許公開公報JP-A-10-229891、JensenおよびHammer(Biotechnology and Bioengineering 58, 191-195 (1998))、Makrides(Microbiological Reviews 60: 512-538 (1996)、ならびに遺伝学および分子生物学の教科書に見出すことができる。
【0265】
さらに、生合成産物、とりわけL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンの生産にとって、遺伝子の発現または増強のほかに、不要な副反応を排除することが好都合である(Nakayama: 「アミノ酸産生微生物の育種(Breeding of Amino Acid Producing Microorganics)」, Overproduction of Microbial Products, Krumphanzl, Sikyta, Vanek (編)Academic Press, London, UK, 1982)。
【0266】
ある好ましい実施形態においては、上記タンパク質の1つをコードする核酸の遺伝子発現は、対応するタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を微生物中に導入することにより増加される。核酸の導入は、染色体内でまたは染色体外で、すなわち、染色体上の遺伝子のコピー数および/または宿主微生物内で複製するプラスミド上の遺伝子のコピー数を増加させることによって、行うことができる。
【0267】
核酸の導入、例えば核酸を含む発現カセットの形での導入は、好ましくは染色体内で、特に先に記載したSacB法により行われる。
【0268】
原理的に、この目的に対しては、上記タンパク質の1つをコードする遺伝子を利用することができる。
【0269】
イントロンを含んでなる真核生物源由来のゲノム核酸配列の場合には、宿主微生物が対応するタンパク質を発現することができないかまたは発現できるようにすることができなければ、対応するcDNAのような、既にプロセシングされた核酸配列を用いることが好ましい。
【0270】
対応する遺伝子の例を表1および2に示してある。
【0271】
微生物の上記活性は、次の方法の少なくとも1つによって低下させることが好ましい:
・同時抑制を誘導する少なくとも1つのセンスリボ核酸配列の導入、またはその発現を確実にする発現カセットの導入;
・対応する遺伝子、RNAもしくはタンパク質に対する少なくとも1つのDNA-もしくはタンパク質-結合因子の導入、またはその発現を確実にする発現カセットの導入、
・RNA分解を引き起こす少なくとも1つのウイルス核酸配列の導入、またはその発現を確実にする発現カセットの導入;
・遺伝子の機能の喪失(例えば、停止コドンの生成、または読み枠のシフト)を、例えば挿入、欠失、逆位もしくは突然変異を遺伝子内にもたらすことよって、生じさせる少なくとも1つの構築物の導入(相同的組換えによる所望の標的遺伝子への標的化された挿入により、または標的遺伝子に対する配列特異的ヌクレアーゼの導入により、ノックアウト突然変異体を作製することが可能であり好適である);
・プロモーター活性を低下させたプロモーターまたは発現活性を低下させた発現ユニットの導入。
【0272】
当業者は本発明の範囲内でその活性または機能を低下させるために利用しうるさらなる方法を知っている。例えば、あるタンパク質のドミナントネガティブ変異体またはその発現を確実にする発現カセットの導入も好都合である。
【0273】
さらに、タンパク質の量、mRNAの量および/またはタンパク質の活性を低下させるこれらの方法のそれぞれの1つの単独使用が可能である。併用も考えられる。さらなる方法は当業者に公知であり、タンパク質のプロセシング、タンパク質もしくはそのmRNAの輸送の妨害または抑制、リボソーム結合の抑制、RNAスプライシングの抑制、RNA分解酵素の誘導および/または翻訳延長もしくは終結の抑制を含むことができる。
【0274】
生合成産物を製造する本発明の方法においては、遺伝的に改変された微生物の培養に続いて、微生物からおよび/または発酵ブロスからの生合成産物の単離を行うことが好ましい。これらの工程は同時におよび/または好ましくは培養工程後に行うことができる。
【0275】
遺伝的に改変された本発明の微生物を培養して、生合成産物、特にL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンを連続的にまたは非連続的回分法(回分培養)で、または流加培養もしくは反復流加培養法で製造することができる。公知の培養法の概要は、Chmiel(「バイオプロセス技術 1.バイオ反応技術入門(Bioprozesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik)」(Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))による教科書またはStorhas(「バイオリアクターと周辺設備(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen)」(Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))による教科書に見出される。
【0276】
使用する培地はそれぞれの菌株の要求を好適な方法で満たさなければならない。様々な微生物に対する培地の説明は、ハンドブック「一般細菌学の方法のマニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology)」(the American Society for Bacteriology, Washington D.C., USA, 1981)に記載されている。
【0277】
本発明によって使用することができるこれらの培地は通常1種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含有する。
【0278】
好ましい炭素源は糖、例えば単糖、二糖または多糖類である。非常に優れた炭素源の例はグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖類はまた、複雑な化合物、例えば糖蜜またはその他の糖精製副産物などから培地に加えられてもよい。様々な炭素源の混合物を加えることも好都合である。他の可能な炭素源は油脂、例えばダイズ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびヤシ脂など、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸など、アルコール、例えばグリセロール、メタノールまたはエタノールなど、および有機酸、例えば酢酸または乳酸などである。
【0279】
窒素源は通常、有機または無機窒素化合物またはこれらの化合物を含有する物質である。窒素源の例としては、アンモニアまたはアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムなど、硝酸塩、尿素、アミノ酸または複雑な窒素源、例えばコーンスティープリカー、ダイズ粉、ダイズタンパク質、酵母エキス、肉エキスなどが挙げられる。窒素源は単独でまたは混合物として使用することができる。
【0280】
培地に存在しうる無機塩化合物には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩が含まれる。
【0281】
ファインケミカル、とりわけメチオニンを製造するために、硫黄源として、無機化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、四チオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物などだけでなく、有機硫黄化合物、例えばメルカプタンおよびチオールなどを使用することが可能である。
【0282】
リン源として、リン酸、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することが可能である。
【0283】
金属イオンを溶解状態で保持するためにキレート剤を加えることができる。特に好適なキレート剤にはジヒドロキシフェノール、例えばカテコールまたはプロトカテキュ酸など、または有機酸、例えばクエン酸などが含まれる。
【0284】
本発明によって使用される発酵培地は通常、その他の成長因子、例えばビタミンなど、または成長促進物質、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸およびピリドキシンなども含有する。成長因子および塩は、多くの場合、培地の複雑な成分、例えば酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなどに由来する。好適な前駆体を培地に加えることもできる。培地中の化合物の正確な組成は特定の実験に大きく依存し、それぞれの具体的な事例に対して個々に決定しうる。培地最適化の情報は教科書「応用微生物学、生理学、実用的手法(Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach)」 (編者, P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) pp. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)から得ることができる。増殖培地、例えばStandard 1(Merck)またはBHI(ブレイン・ハート・インフュージョン(Brain heart infusion), DIFCO)を販売業者から購入してもよい。
【0285】
培地の全成分は加熱(1.5bar、121℃にて20分間)によりまたは滅菌濾過により滅菌する。成分を一緒にまたは、必要であれば、別々に滅菌することができる。培地の全成分は培養開始時に存在させてもよいしまたは任意に連続的にもしくは回分で加えてもよい。
【0286】
培養温度は通常15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、実験中一定に保持してもまたは変えてもよい。培地のpHは5〜8.5、好ましくは約7.0とすべきである。培養のpHは、培養中に塩基性化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアまたはアンモニア水など)または酸性化合物(例えばリン酸または硫酸など)を加えることにより制御することができる。泡の発生は消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルなどを使用することにより制御することができる。プラスミドの安定性は、選択作用をもつ好適な物質(例えば抗生物質など)を培地に加えることにより維持することができる。好気性条件は、酸素または酸素含有ガス混合物、例えば大気などを培養中に導入することにより維持する。培養温度は通常20℃〜45℃である。培養は目的産物の生成が最大になるまで続行する。この目標は通常10時間〜160時間以内で達成される。
【0287】
この方法で得られる発酵ブロスの乾燥物質含量は通常7.5〜25重量%である。
【0288】
さらに、少なくとも終了時に、特に発酵時間の少なくとも30%にわたり、糖制限をして発酵を行うことも好都合である。これは、発酵培地中の利用可能な糖の濃度をこの時間中、0〜3g/lに保持するかまたは低下させることを意味する。
【0289】
生合成産物は発酵ブロスおよび/または微生物から、それ自体公知の方法で、必要な生合成産物および生合成副産物の物理的/化学的特性に従って単離される。
【0290】
次いで発酵ブロスをさらに処理することができる。その要件に応じて、バイオマスは、分離方法(例えば遠心分離、濾過、デカンテーションまたはこれらの方法の併用など)により発酵ブロスから全部または一部を取り出すことができ、また完全に発酵ブロス中に残すこともできる。
【0291】
次いで発酵ブロスを公知の方法により、例えば回転蒸発器、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器を用いて、逆浸透圧によりまたはナノ濾過により濃縮することができる。この濃縮発酵ブロスを次いで凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧造粒によりまたはその他の方法により後処理して仕上げることができる。
【0292】
しかし、生合成産物、とりわけL-リシン、L-メチオニンおよびL-トレオニンをさらに精製することも可能である。この目的のためには、産物を含有するブロスを、バイオマスを取り出した後、好適な樹脂を用いてクロマトグラフィーにかけ、目的の産物または不純物をクロマトグラフィー樹脂上に全部または一部保持させる。これらのクロマトグラフィー工程は、もし必要であれば、同じもしくは異なるクロマトグラフィー樹脂を用いて繰り返すことができる。当業者は好適なクロマトグラフィー樹脂の選択とそれらの効果的な利用に精通している。精製した産物を、濾過または限外濾過により濃縮して、その産物の安定性が最大になる温度で貯蔵することができる。
【0293】
生合成産物は様々な形態で、例えばその塩またはエステルの形態で得ることができる。
【0294】
単離された化合物の正体と純度は当技術分野の技法により決定することができる。これらの技法には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光分析法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素アッセイまたは微生物学的アッセイが含まれる。これらの分析法の総括は、Patekら(1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140;Malakhovaら (1996) Biotekhnologiya 11 27-32;およびSchmidtら(1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70;Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) vol. A27, VCH: Weinheim, pp. 89-90, pp. 521-540, pp. 540-547, pp. 559-566, 575-581、およびpp. 581-587;Michal, G (1999) 「生化学経路:生化学と分子生物学の地図帳(Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology)」, John Wiley and Sons;Fallon, A.ら(1987) 「生化学におけるHPLCの応用(Applications of HPLC in Biochemistry)」 Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17に記載されている。
【0295】
ここで本発明について、以下の非限定的実施例を用いて、詳細に説明することにする。
【実施例】
【0296】
実施例1
異種発現ユニットPgro(配列番号2)を用いる、pycA遺伝子の過剰発現用の組込み型プラスミドの作製
シャペロニンGroESをコードする遺伝子のプロモーターを増幅するために、次のオリゴヌクレオチドを設計した:
配列番号5:
gro3: 5'-gccgcagcaaacccagtag-3'
配列番号6:
gro11: 5'-agtcgacacgatgaatccctccatgagaaaa-3'
これらのプライマーをC. glutamicum ATCC 13032由来の染色体DNAとともにPCR反応に使用した。この手法を用いて、予想される427bpのサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。
【0297】
ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子の一部を増幅するために次のオリゴヌクレオチドを設計した:
配列番号7:
pyc6:5'-tttttctcatggagggattcatcgtgtcgactcacacatcttcaacgcttccag-3'
配列番号8:
pyc3:5'-cccgcagcaacgcacgcaagaaa-3'
これらのプライマーをC. glutamicum ATCC13032由来の染色体DNAとともにPCR反応に使用した。この手法を用いて、予想される1344bpのサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。
【0298】
プライマーgro11とpyc6はオーバーラップする配列を含有し、それらの5'末端において互いに相同である。
【0299】
上で得られたPCR産物を、さらなるPCR用のテンプレートとして使用したが、その際、次のプライマー:
配列番号9:
gro12:5'-gcattcgcgccgctcgtaacta-3'
配列番号10:
pyc11:5'-ggttcccgcgccctggtaa-3'
を用いた。
【0300】
この手法を用いて、予想される1107bpのサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。次いでこのPgro/pycA融合体をベクターpCR2.1(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany)中にクローニングした。さらなるステップにおいて、Pgro/pycA融合体をプラスミドpCR2.1(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany)から、1125bpのEcoRI断片として、(制限酵素EcoRIで前もって切断しておいた)組込みベクターpK19 mob sacB(配列番号11)中にクローニングした。得られたプラスミドをpK19 mob sacB Pgro/pycAと命名した。
【0301】
次のオリゴヌクレオチドをpycA遺伝子の5'領域の増幅のために設計した:
配列番号12:
pyc14:5'-ccggcgaagtgtctgctcgcgtga-3'
配列番号13:
pyc15:5'-accccgccccagtttttc-3'
これらのプライマーをC. glutamicum ATCC13032由来の染色体DNAとともにPCR反応に使用した。この手法を用いて、予想される487bpのサイズに相当するDNA断片を増幅することができた。このDNA断片をベクターpCR2.1(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany)中にクローニングした。次いで、593bpのSpeI/XbaI断片を(制限酵素 NheIで前もって消化しておいた)ベクターpK19 mob sacB Pgro/pycA中にクローニングした。得られたプラスミドをpK19 mob sacB Pgro pycA + US(配列番号14)と命名した。このステップまで、全てのクローニングは大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, Amsterdam, Netherlands)において実施した。
【0302】
次いで形質転換プラスミドpK19 mob sacB Pgro pycA + USを、プラスミドpTc15AcglMと一緒に用いて、Lieblら(1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303に記載されるように、大腸菌Mn522(Stratagene, Amsterdam, Netherlands)を形質転換した。プラスミドpTc15AcglMは、Corynebacterium glutamicum(DE 10046870)のメチル化パターンに従ってDNAをメチル化することを可能にする。このステップは、次いでCorynebacterium glutamicumが組込みプラスミドpK19 mob sacB Pgro pycA + USによるエレクトロポレーションを受けることを可能にする。このエレクトロポレーションとその後のカナマイシン(25μg/ml)を含むCMプレート(10g/l グルコース、2.5g/l NaCl、2g/l 尿素、10g/l Bactoペプトン(Difco)、10g/l 酵母エキス、22.0g/l 寒天(Difco))上での選択によって、複数のトランスコンジュガント(transconjugant)が得られた。
【0303】
pycAプロモーターとpycA遺伝子とを一緒に含むベクターを除去するに違いない第2の組換え事象を選択するために、これらのトランスコンジュガントをカナマイシン不含CM培地で一晩培養し、次いで選択のために10%スクロースを含むCMプレート上で培養した。ベクターpK19 mob sacB上に存在するsacB遺伝子は酵素レバンスクラーゼをコードし、スクロース上で増殖させるとレバン合成をもたらす。レバンはC. glutamicumにとって有毒であるので、スクロース含有培地上で増殖できるC. glutamicum細胞だけが、第2の組換えステップを介して組込みプラスミドを喪失した細胞である(Jagerら, Journal of Bacteriology 174 (1992) 5462-5466)。100個のスクロース耐性クローンをそのカナマイシン感受性について試験した。試験したクローンのうち15個のクローンがスクロース耐性だけでなくカナマイシン感受性であることを実証することができた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して、望まれるPgro発現ユニットによる天然発現ユニットの置換が起こったかどうかも確認した。この分析のために最初の菌株と15個のクローンから染色体DNAを単離した。そのために、それぞれのクローンを寒天プレートからつまようじで取り出し、100μlのH2O中に懸濁させて95℃にて10分間煮沸した。得られた溶液の10μl部分をテンプレートとしてPCRに使用した。使用したプライマーは、Pgro発現ユニットおよびpycA遺伝子と相同性のあるオリゴヌクレオチドであった。
【0304】
PCR条件は次のように選んだ:前変性95℃で5分;変性95℃で30秒;ハイブリダイゼーション56℃で30秒;増幅72℃で1分;30サイクル;最終伸長72℃で5分。最初の菌株由来のDNAを含む混合物においては、オリゴヌクレオチドの選択が原因してPCR産物を得ることができなかった。第2の組換えがPgroによる天然発現ユニット(PpycA)の置換を起こしたクローンについてだけ、予想された310bpのサイズのバンドが存在した。試験した15個のクローンのうち全部で7個のクローンが陽性であった。
【0305】
次いで、7個の陽性クローンと最初の菌株を10mlのCM培地(10g/l グルコース、2.5g/l NaCl、2g/l 尿素、10g/l Bactoペプトン(Difco)、10g/l 酵母エキス)中で一晩培養した。その後細胞をペレット化して0.5mlのバッファー(50mM Tris、10mM MgCl2、50mM KCl、pH7.7)中に取り上げた。細胞をRibolyzer (レベル6で3 x 30秒、Hybaid製)によって破壊した。Bradford法でタンパク質を定量した後、タンパク質の15μg部分を10%SDSゲルにロードして、タンパク質を分画した。最初の菌株と比較してPycAタンパク質量の増加が検出された(図1)。図1は、Pgro pycAクローンの10%SDSゲルを示す。
【0306】
実施例2
ベクターpCLiK5MCSの作製
最初に、ベクターpBR322の複製起点およびアンピシリン耐性をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりオリゴヌクレオチドプライマー配列番号15および配列番号16を用いて増幅した:
配列番号15
5'-CCCGGGATCCGCTAGCGGCGCGCCGGCCGGCCCGGTGTGAAATACCGCACAG-3'
配列番号16
5'-TCTAGACTCGAGCGGCCGCGGCCGGCCTTTAAATTGAAGACGAAAGGGCCTCG-3'
オリゴヌクレオチドプライマー配列番号15は、pBR322に相補的な配列に加えて、5'-3'方向にSmaI、BamHI、NheIおよびAscIの制限酵素切断部位を含有し、そしてオリゴヌクレオチドプライマー配列番号16は、5'-3'方向にXbaI、XhoI、NotIおよびDraIの制限酵素切断部位を含有する。PCR反応はPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いてInnisら(「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press (1990))などに記載の標準方法により行った。得られるおよそ2.1kbのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。DNA断片の平滑末端同士を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従ってライゲートし、このライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中に、Sambrookら(「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning. A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor (1989)に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、アンピシリン(50μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0307】
個別のクローンのプラスミドDNAを、Qiaprep spin miniprepキット(Qiagen, Hilden)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離し、制限酵素消化により確認した。この方法で得られたプラスミドをpCLiK1と呼ぶことにした。
【0308】
PCR反応のテンプレートとしてのプラスミドpWLT1(Lieblら, 1992)から出発して、カナマイシン耐性カセットを、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号17および配列番号18を用いて増幅した:
配列番号17:
5'-GAGATCTAGACCCGGGGATCCGCTAGCGGGCTGCTAAAGGAAGCGGA-3'
配列番号18:
5'-GAGAGGCGCGCCGCTAGCGTGGGCGAAGAACTCCAGCA-3'
オリゴヌクレオチドプライマー配列番号17は、pWLT1に相補的な配列に加えて、5'-3'方向にXbaI、SmaI、BamHI、NheIの制限酵素切断部位を含有し、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号18は、5'-3'方向にAscIおよびNheIの制限酵素切断部位を含有する。PCR反応はPfuTurboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いてInnisら(「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press (1990))などに記載の標準方法により行った。得られるほぼ1.3kbのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。DNA断片を制限酵素XbaIおよびAscI(New England Biolabs, Beverly, USA)で切断し、次いで再びDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。ベクターpCLiK1を同様に制限酵素XbaIおよびAscIで切断し、アルカリホスファターゼ(I (Roche Diagnostics, Mannheim))を用いてメーカーの使用説明書に従って脱リン酸した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動の後、線状化したベクター(ほぼ2.1kb)をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離した。このベクター断片を切断したPCR断片と、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従ってライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、アンピシリン(50μg/ml)およびカナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0309】
個別のクローンのプラスミドDNAをQiaprep spin miniprepキット(Qiagen, Hilden)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離し、制限酵素消化により確認した。この方法で得られたプラスミドをpCLiK2と呼ぶことにした。
【0310】
ベクターpCLiK2を制限酵素DraI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動の後、ベクター断片(ほぼ2.3kb)をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離した。このベクター断片を迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って再ライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0311】
個別のクローンのプラスミドDNAをQiaprep spin miniprepキット(Qiagen, Hilden)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離し、制限酵素消化により確認した。この方法で得られたプラスミドをpCLiK3と呼ぶことにした。
【0312】
PCR反応のテンプレートとしてのプラスミドpWLQ2(Lieblら, 1992)から出発して、pHM1519の複製起点をオリゴヌクレオチドプライマー配列番号19および配列番号20を用いて増幅した:
配列番号19:
5'-GAGAGGGCGGCCGCGCAAAGTCCCGCTTCGTGAA-3'
配列番号20:
5'-GAGAGGGCGGCCGCTCAAGTCGGTCAAGCCACGC-3'
オリゴヌクレオチドプライマー配列番号19および配列番号20は、pWLQ2に相補的な配列に加えて、制限酵素NotIの切断部位を含有する。PCR反応はPfuTurboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, USA)を用いてInnisら(「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press (1990))などに記載の標準方法により行った。得られるほぼ2.7kbのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。DNA断片を制限酵素NotI(New England Biolabs, Beverly, USA)を用いて切断し、次いで再びDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。ベクターpCLiK3を同様に制限酵素NotIで切断し、アルカリホスファターゼ(I (Roche Diagnostics, Mannheim))を用いてメーカーの使用説明書に従って脱リン酸した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動の後、線状化したベクター(ほぼ2.3kb)をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離した。このベクター断片を切断したPCR断片と、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書従ってライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0313】
個別のクローンのプラスミドDNAをQiaprep spin miniprepキット(Qiagen, Hilden)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離し、制限酵素消化により確認した。この方法で得られたプラスミドをpCLiK5と呼ぶことにした。
【0314】
pCLiK5をマルチクローニングサイト(MCS)だけ伸長させるために、2つの合成の、実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列番号21および配列番号22(制限酵素SwaI、XhoI、AatI、ApaI、Asp718、MluI、NdeI、SpeI、EcoRV、SalI、ClaI、BamHI、XbaIおよびSmaIに対する切断部位を含有する)を、95℃で一緒に加熱した後徐々に冷却させることにより組み合わせて二本鎖DNA断片とした:
配列番号21:
5'-TCGAATTTAAATCTCGAGAGGCCTGACGTCGGGCCCGGTACCACGCGTCATAT
GACTAGTTCGGACCTAGGGATATCGTCGACATCGATGCTCTTCTGCGTTAATTAAC
AATTGGGATCCTCTAGACCCGGGATTTAAAT-3'
配列番号22:
5'-GATCATTTAAATCCCGGGTCTAGAGGATCCCAATTGTTAATTAACGCAGAAGAG
CATCGATGTCGACGATATCCCTAGGTCCGAACTAGTCATATGACGCGTGGTACCG
GGCCCGACGTCAGGCCTCTCGAGATTTAAAT-3'
【0315】
ベクターpCLiK5を制限酵素XhoIおよびBamHI(New England Biolabs, Beverly, USA)で切断し、アルカリホスファターゼ(I (Roche Diagnostics, Mannheim))を用いてメーカーの使用説明書に従って脱リン酸した。0.8%アガロースゲルでの電気泳動の後、線状化したベクター(ほぼ5.0kb)をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離した。このベクター断片を合成二本鎖DNA断片と、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従ってライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0316】
個別のクローンのプラスミドDNAをQiaprep spin miniprepキット(Qiagen, Hilden)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離し、制限酵素消化により確認した。この方法で得られたプラスミドをpCLiK5MCSと呼ぶことにした。
【0317】
配列決定反応は、Sangerら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0318】
得られたプラスミドpCLiK5MCSを配列番号23として示す。
【0319】
実施例3
プラスミドPmetA metAの作製
染色体DNAはC. glutamicum ATCC 13032から、Tauchら (1995) Plasmid 33:168-179またはEikmannsら (1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のように調製した。非コード5'領域を含むmetA遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってInnisら(1990)「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press に記載の標準方法により、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号24および配列番号25、テンプレートとしての染色体DNAならびにPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)を用いて増幅した:
配列番号24
5'-GCGCGGTACCTAGACTCACCCCAGTGCT-3'
および
配列番号25
5'-CTCTACTAGTTTAGATGTAGAACTCGATGT-3'
【0320】
得られるほぼ1.3kbのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。それを次いで制限酵素Asp718およびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断し、そのDNA断片をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRにより精製した。
【0321】
ベクターpClik5MCS(配列番号23)を制限酵素Asp718およびSpeIで切断し、電気泳動による分画後に、5kbサイズの断片をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いて単離した。
【0322】
ベクター断片をPCR断片と、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌XL-1 Blue(Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)上にまいて選択した。
【0323】
プラスミドDNAをQiagen社から入手した材料と方法を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosystems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0324】
得られたプラスミドpCLiK5MCS PmetA metAを配列番号26として示す。
【0325】
実施例4
プラスミドpCLiK5MCS Pgro metAの作製
染色体DNAをC. glutamicum ATCC 13032から、Tauchら (1995) Plasmid 33:168-179またはEikmannsら (1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のように調製した。遺伝子GroES(Pgro)の非コード5'領域(発現ユニットの領域)由来のほぼ200塩基対のDNA断片は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってInnisら(1990)「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press に記載の標準方法により、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号27および配列番号28、テンプレートとしての染色体DNAならびにPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)を用いて増幅した:
配列番号27
5'-GAGACTCGAGCGGCTTAAAGTTTGGCTGCC-3'
および
配列番号28
5'-CCTGAAGGCGCGAGGGTGGGCATGATGAATCCCTCCATGAG-3'
【0326】
得られるDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。
【0327】
プラスミドPmetA metAをPCR反応のテンプレートとして出発し、metAの一部分をオリゴヌクレオチドプライマー配列番号29および配列番号30を用いて増幅した:
配列番号29
5'-CCCACCCTCGCGCCTTCAG-3'
および
配列番号30
5'-CTGGGTACATTGCGGCCC-3'
【0328】
得られたほぼ470塩基対のサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。
【0329】
さらなるPCR反応では、上で得られた2つの断片を一緒にテンプレートとして使用した。オリゴヌクレオチドプライマー配列番号28を用いて導入された配列およびmetAに相同な配列のために、PCR反応の間、2つの断片は互いに結合して、用いるポリメラーゼにより伸長して連続DNA鎖を与える。この標準方法を、用いるオリゴヌクレオチドプライマー配列番号27および配列番号30を反応混合物に第2サイクルの開始時にのみ加えるように改変した。
【0330】
増幅したほぼ675塩基対のDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。次いで制限酵素XhoIおよびNcoI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断し、ゲル電気泳動により分画した。その後、ほぼ620塩基対のサイズのDNA断片をアガロースからDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いて精製した。プラスミドPmetA metA(配列番号26)を制限酵素NcoIおよびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断した。ゲル電気泳動による分画の後、ほぼ0.7kbのサイズのmetA断片をアガロースからDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いて精製した。
【0331】
ベクターpClik5MCS(配列番号23)を制限酵素XhoIおよびSpeI(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いて切断し、電気泳動による分画の後、5kbのサイズの断片をDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRにより単離した。
【0332】
ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従ってPCR断片およびmetA断片と一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌 XL-1Blue (Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法を用いて形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)にまいて選択した。
【0333】
プラスミドDNAを、Qiagen社からの方法および材料を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら (1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosysyems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0334】
得られたプラスミドpCLiK5MCS PGroESmetAを配列番号31として示す。
【0335】
実施例5
MetA活性
株Corynebacterium glutamicum ATCC13032を、プラスミドpClik5 MCS、pClik MCS PmetA metA、pCLiK5MCS PGroESmetAのそれぞれを用いて、Lieblら(1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303に記載の方法により形質転換した。形質転換混合物を、プラスミド含有細胞を選択するために20mg/l カナマイシンをさらに含有するCMプレート上にまいた。得られるKan耐性クローンを拾って単離した。
【0336】
これらのプラスミド構築物の1つを含有するC. glutamicum株を、MMA培地(40g/l スクロース、20g/l (NH4)2SO4、1g/l KH2PO4、1g/l、K2HPO4、0.25g/l MgSO4・7H2O、54g Aces、1ml CaCl2(10g/l)、1ml プロトカテキュ酸(300mg/10ml)、1ml 微量元素溶液(10g/l FeSO4・7H2O、10g/l MnSO4・H2O、2g/l ZnSO4・7H2O、0.2g/l CuSO4、0.02g/l NiCl2・6H2O)、100μg/l ビタミンB12、0.3mg/l チアミン、1mM ロイシン、1mg/l ピリドキサールHCl、1ml ビオチン(100mg/l)、pH7.0)にて30℃で一晩培養した。細胞を4℃にて遠心分離し、次いで冷Tris-HClバッファー(0.1%、pH 8.0)を用いて2回洗浄した。新しく遠心分離した後に、細胞を冷Tris-HClバッファー(0.1%、pH 8.0)中に取り、OD600が160となるように調整した。細胞を破壊するため、この細胞懸濁液1mlを2ml Ribolyserチューブ(Hybaid)中に移し、Ribolyser(Hybaid)で回転設定6.0にて30秒ずつ3回溶解した。溶解液をEppendorf遠心機で15000rpm、4℃にて30分遠心分離して清澄化し、その上清を新しいEppendorfカップに移した。タンパク質含量をBradford, M.M. (1976) Anal. Biochem. 72:248-254に記載のように測定した。
【0337】
metAの酵素活性の測定を次の通り行った。1ml反応混合物は、100mMリン酸カリウムバッファー(pH 7.5)、5mM MgCl2、100μMアセチル-CoA、5mM L-ホモセリン、500μM DTNB(Ellman's試薬)および細胞エキスを含有していた。アッセイはそれぞれのタンパク質溶解液を加えて開始させ、室温にてインキュベートした。次いで反応速度を412 nmにて10分間記録した。
【0338】
結果を表1aに示す。
【表1a】

異種発現ユニットを用いることによってMetA活性をかなり増加させることが可能であった。
【0339】
実施例6
開始コドンをもたないプラスミドpClik5MCS metAの作製
染色体DNAをC. glutamicum ATCC 13032から、Tauchら(1995) Plasmid 33:168-179またはEikmannsら(1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のように調製した。オリゴヌクレオチドプライマー配列番号32および配列番号33、テンプレートとしての染色体DNAならびにPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてInnisら(1990)「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press に記載の標準方法により用いて、groEL遺伝子の終止領域を増幅した:
配列番号32
5'-GGATCTAGAGTTCTGTGAAAAACACCGTG-3'
配列番号33
5'-GCGACTAGTGCCCCACAAATAAAAAACAC-3'
【0340】
得られたほぼ60塩基対のサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。その後、それを制限酵素XbaIおよびBcnI (Roche Diagnostics, Mannheim)で切断し、DNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。
【0341】
ベクターpClik5MCS(配列番号23)を制限酵素XbaIで切断し、5kbのサイズの断片を電気泳動による分画後にDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いて単離した。
【0342】
ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って、60bpのサイズの断片と一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌 XL-1Blue (Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)にまいて選択した。
【0343】
プラスミドDNAを、Qiagen社からの方法および材料を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら(1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosysyems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0344】
得られたプラスミドpCLiK5MCS PgroES termを配列番号34として示す。
【0345】
染色体DNAをC. glutamicum ATCC 13032から、Tauchら(1995) Plasmid 33:168-179またはEikmannsら(1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のように調製した。オリゴヌクレオチドプライマー配列番号35および配列番号36、テンプレートとしての染色体DNAならびにPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてInnisら(1990)「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press に記載の標準方法により用いて、開始コドンをもたないmetA遺伝子を増幅した:
配列番号35
5'-GAGACATATGCCCACCCTCGCGCCTTCAGG-3'
および
配列番号36
5'-CTCTACTAGTTTAGATGTAGAACTCGATGT-3'
【0346】
得られたほぼ1.2kbのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。その後、それを制限酵素XbaIおよびBcnI (Roche Diagnostics, Mannheim)で切断し、DNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。
【0347】
ベクターpClik5MCS groEL term(配列番号34)を制限酵素NdeIおよびBcnIで切断し、5kbのサイズの断片を電気泳動による分画後にDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いて単離した。
【0348】
ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って、PCR断片と一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌 XL-1Blue (Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)にまいて選択した。
【0349】
プラスミドDNAを、Qiagen社からの方法および材料を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら(1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosysyems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0350】
得られた、開始コドンをもたないプラスミドpCLiK5MCS metAを配列番号37として示す。
【0351】
実施例7
異なるRBS配列および開始コドンからのmetAの距離のために異なる比発現活性を有するPgro発現ユニットの構築
染色体DNAをC. glutamicum ATCC 13032から、Tauchら(1995) Plasmid 33:168-179またはEikmannsら(1994) Microbiology 140:1817-1828に記載のように調製した。オリゴヌクレオチドプライマー配列番号38から配列番号43、テンプレートとしての染色体DNAならびにPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてInnisら(1990)「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications)」, Academic Press に記載の標準方法により用いて、様々な発現ユニットを増幅した。この場合には、オリゴヌクレオチドプライマー1701(配列番号38)をセンスプライマーとして使用し、その他のオリゴヌクレオチドプライマーと組み合わせた。
【0352】
配列番号38
オリゴヌクレオチドプライマー1701
5'-GAGACTCGAGCGGCTTAAAGTTTGGCTGCC-3'
配列番号39
オリゴヌクレオチドプライマー1828
5'-ctctcatatgcAATCCCTCCATGAGAAAAATT-3'
配列番号40
オリゴヌクレオチドプライマー1831
5'-ctctcatatgcgcggccgcAATCCCTCCATGAGAAAAATT-3'
配列番号41
オリゴヌクレオチドプライマー1832
5'-ctctcatatgcAAtctctccATGAGAAAAATTTTGTGTG-3'
配列番号42
オリゴヌクレオチドプライマー1833
5'-ctctcatatgcAAtctcctcATGAGAAAAATTTTGTGTG-3'
配列番号43
オリゴヌクレオチドプライマー1834
5'-ctctcatatgcAAtcccttcATGAGAAAAATTTTGTGTG-3'
【0353】
得られた約200bpのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って精製した。
【0354】
ベクターpBS KS+ (配列番号44) を制限酵素EcoRVで切断し、2.9kbのサイズの断片を電気泳動による分画後にDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いて単離した。
【0355】
ベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って、PCR断片と一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌 XL-1Blue (Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)にまいて選択した。
【0356】
プラスミドDNAを、Qiagen社からの方法および材料を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら(1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosysyems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0357】
得られたプラスミドをpKS Pgro 1701/1828、pKS Pgro 1701/1831、pKS Pgro 1701/1832、pKS Pgro 1701/1833 および pKS Pgro 1701/1834と命名した。
【0358】
次いでこれらのプラスミドを制限酵素NdeIおよびXhoIで切断した。得られた約200bpのサイズのDNA断片を、DNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCR(Amersham Pharmacia, Freiburg)を用いてメーカーの使用説明書に従って単離・精製した。
【0359】
開始コドンをもたないベクターpCLiK5MCS metA(配列番号37)を制限酵素NdeIおよびXhoIで切断し、5kbのサイズの断片を電気泳動による分画後にDNAおよびゲルバンド精製キットGFXTMPCRを用いて単離した。
【0360】
このベクター断片を、迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics, Mannheim)を用いてメーカーの使用説明書に従って、200bpのサイズの断片と一緒にライゲートし、ライゲーション混合物をコンピテント大腸菌 XL-1Blue (Stratagene, La Jolla, USA)中にSambrookら(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1989))に記載の標準方法により形質転換した。プラスミドを保持する細胞を、カナマイシン(20μg/ml)を含有するLB寒天(Lennox, 1955, Virology, 1:190)にまいて選択した。
【0361】
プラスミドDNAを、Qiagen社からの方法および材料を用いて作製した。配列決定反応を、Sangerら(1977) Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74:5463-5467に記載の通りに行った。配列決定反応物を分画し、ABI prism 377(PE Applied Biosysyems, Weiterstadt)を用いて評価した。
【0362】
得られたプラスミドpCLiK5MCS Pgro 1701/1828 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1831 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1832 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1833 metAおよびpCLiK5MCS Pgro 1701/1834 metAを配列番号45〜49として示す。
【0363】
Pgro発現ユニットを図2に記載するオリゴヌクレオチドの選択により改変した。
【0364】
株Corynebacterium glutamicum ATCC13032を、記載された方法(Lieblら. (1989) FEMS Microbiology Letters 53:299-303)により、プラスミドpClik5 MCS、pClik MCS Pgro metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1828 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1831 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1832 metA、pCLiK5MCS Pgro 1701/1833 metAおよびpCLiK5MCS Pgro 1701/1834のそれぞれを用いて形質転換した。形質転換混合物を、プラスミド含有細胞を選択するために20mg/lのカナマイシンをさらに含むCMプレートにまいた。得られたカナマイシン耐性クローンを拾って単離した。
【0365】
これらのプラスミド構築物の1つを含むC. glutamicum株を、MMA培地(40g/l スクロース、20g/l (NH4)2SO4、1g/l KH2PO4、1g/l K2HPO4、0.25g/l MgSO4 x 7H2O、54g Aces、1ml CaCl2 (10g/l)、1ml プロトカテキュ酸 (300mg/10ml)、1ml 微量元素溶液 (10g/l FeSO4 x 7H2O、10g/l MnSO4 x H2O、2g/l ZnSO4 x 7H2O、0.2g/l CuSO4、0.02g/l NiCl2 x 6H2O)、100μg/l ビタミンB12、0.3mg/l チアミン、1mM ロイシン、1mg/l ピリドキサールHCl、1ml ビオチン (100mg/l)、pH7.0)中で30℃にて5時間培養した。細胞を4℃にて遠心分離し、次いで冷Tris-HClバッファー(0.1%、pH8.0)を用いて2回洗浄した。新しく遠心分離した後に、細胞を冷Tris-HClバッファー(0.1%、pH8.0)中に取り、OD600が160となるように調整した。細胞を破壊するため、この細胞懸濁液1mlを2ml Ribolyserチューブ(Hybaid)中に移し、Ribolyser(Hybaid)で回転設定6.0にて30秒ずつ3回溶解した。溶解液をEppendorf遠心機で15000rpm、4℃にて30分遠心分離して清澄化し、その上清を新しいEppendorfカップに移した。タンパク質含量をBradford, M.M. (1976) Anal. Biochem. 72:248-254に記載のように測定した。
【0366】
metAの酵素活性の測定を次の通り行った。1ml反応混合物は、100mMリン酸カリウムバッファー(pH 7.5)、5mM MgCl2、100μMアセチル-CoA、5mM L-ホモセリン、500μM DTNB(Ellman's試薬)および細胞エキスを含有していた。アッセイはそれぞれのタンパク質溶解液を加えて開始させ、室温にてインキュベートした。次いで反応速度を412 nmにて10分間記録した。
【0367】
結果を表2aに示す。
【表2a】

異種発現ユニットを用いることによってMetA活性をかなり増加させることが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0368】
【図1】Pgro pycAクローンの10%SDSゲルを示す。
【図2】Pgro発現ユニットの改変に使用したオリゴヌクレオチドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子を転写させるための、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) 配列番号1の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) 配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなるプロモーター活性を有する核酸の使用。
【請求項2】
遺伝子を発現させるための、
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸、およびさらに
機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を確実にする核酸配列、
を含んでなる発現ユニットの使用。
【請求項3】
発現ユニットが、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) 配列番号2の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ配列番号2の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) 配列番号2の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
発現ユニットが配列番号2の配列の核酸からなる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
配列番号1の配列を有する核酸を除外するという前提で、
A) 配列番号1の核酸配列、または
B) 配列番号1の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ配列番号1の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
C) 配列番号1の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
D) A)、B)もしくはC)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる、プロモーター活性を有する核酸。
【請求項6】
請求項5に記載のプロモーター活性を有する核酸、およびさらに、機能的に連結された、リボ核酸の翻訳を確実にする核酸配列を含んでなる発現ユニット。
【請求項7】
配列番号2の配列を有する核酸を除外するという前提で、
E) 配列番号2の核酸配列、または
F) 配列番号2の配列からヌクレオチドの置換、挿入もしくは欠失により誘導され、かつ配列番号2の配列に対して核酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列、または
G) 配列番号2の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、または
H) E)、F)もしくはG)の配列の機能的に等価な断片、
を含んでなる、請求項6に記載の発現ユニット。
【請求項8】
微生物における遺伝子の転写速度を、野生型と比較して改変させるまたは生起させる方法であって、
a) 内因性遺伝子の転写を調節する請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を、野生型と比較して改変させる、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写を調節する、
ことによる上記方法。
【請求項9】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することが、
b1) 適宜に比プロモーター活性を改変させた、1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノムに導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
b2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノムに導入して、導入された1以上の遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
b3) 適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
微生物における遺伝子の転写速度を、野生型と比較して増加させるまたは生起させるために、
ah) 内因性遺伝子の転写を調節する請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を、野生型と比較して増加させる、または
bh) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態ah)に従って比プロモーター活性を増加させた核酸により、該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写を調節する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態ah)に従って比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することが、
bh1) 適宜に比プロモーター活性を増加させた、1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
bh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を増加させた、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
bh3) 適宜に比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物に導入する、
ことによって達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
微生物内での遺伝子の転写速度を、野生型と比較して低下させるために、
ar) 内因性遺伝子の転写を調節する請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を、野生型と比較して低下させる、または
br) 実施形態ar)に従って比プロモーター活性を低下させた核酸を微生物のゲノム中に導入して、内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性の低下した核酸の制御下で起こるようにする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
微生物内での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して改変させるまたは生起させる方法であって、
c) 内因性遺伝子の発現を調節する請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して改変させる、または
d) 請求項2または3に記載の発現ユニットにより、もしくは実施形態c)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、
ことによる上記方法。
【請求項14】
請求項2または3に記載の発現ユニットにより、または実施形態c)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することが、
d1) 適宜に比発現活性を改変させた、1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された該発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d3) 適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
微生物内での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して増加させるまたは生起させるために、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して増加させる、または
dh) 請求項2または3に記載の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に従って比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項2または3に記載の発現ユニットにより、または実施形態ch)に従って比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することが、
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた、1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された該発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
微生物内での遺伝子の発現速度を、野生型と比較して低下させるために、
cr) 内因性遺伝子の発現を調節する請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して低下させる、または
dr) 実施形態cr)に従って比発現活性を低下させた発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、内因性遺伝子の発現が、導入された該比発現活性の低下した発現ユニットの制御下で起こるようにする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子が、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、その場合、該遺伝子はさらなる調節エレメントを含んでいてもよい、請求項8〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アミノ酸の生合成経路からのタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ、ジヒドロジピコリン酸還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写レギュレーターLuxR、転写レギュレーターLysR1、転写レギュレーターLysR2、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチルトランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター担体、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リシンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素、フェレドキシンNADP還元酵素、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655レギュレーター、RXN2910レギュレーター、アルギニル-tRNAシンテターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン流出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、硫酸還元のタンパク質RXA077、硫酸還元のタンパク質RXA248、硫酸還元のタンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1-ホスホフルクトキナーゼおよび6-ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
a) 少なくとも1つの請求項2または3に記載の発現ユニット、および
b) 少なくとも1つのさらなる発現すべき核酸、および
c) 適宜に、さらなる遺伝子制御エレメント、
を含んでなる発現カセットであって、少なくとも1つの発現ユニットとさらなる発現すべき核酸配列が互いに機能的に連結されており、さらなる発現すべき核酸配列が発現ユニットに対して異種である、上記発現カセット。
【請求項21】
さらなる発現すべき核酸配列が、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択される、請求項20に記載の発現カセット。
【請求項22】
アミノ酸の生合成経路からのタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ、ジヒドロジピコリン酸還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写レギュレーターLuxR、転写レギュレーターLysR1、転写レギュレーターLysR2、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチル-トランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター担体、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リシンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素、フェレドキシンNADP還元酵素、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655レギュレーター、RXN2910レギュレーター、アルギニル-tRNAシンテターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン流出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、硫酸還元のタンパク質RXA077、硫酸還元のタンパク質RXA248、硫酸還元のタンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1-ホスホフルクトキナーゼおよび6-ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項21に記載の発現カセット。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の発現カセットを含んでなる発現ベクター。
【請求項24】
遺伝的に改変された微生物であって、遺伝的改変が、少なくとも1つの遺伝子の転写速度を野生型と比較して改変させるかまたは生起させるものであり、かつ遺伝的改変が、
a) 少なくとも1つの内因性遺伝子の転写を調節する、少なくとも1つの請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性を改変させる、または
b) 請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写を調節する、
ことによるものである、上記遺伝的に改変された微生物。
【請求項25】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態a)に従って比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、遺伝子の微生物内での転写を調節することが、
b1) 適宜に比プロモーター活性を改変させた、1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
b2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
b3) 適宜に比プロモーター活性を改変させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項24に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項26】
少なくとも1つの遺伝子の転写速度が、野生型と比較して増加しているかまたは生起されており、ここで、
ah) 内因性遺伝子の転写を調節する、請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性が、野生型と比較して増加している、または
bh) 該プロモーター活性を有する核酸に対して異種である遺伝子の微生物内での転写が、請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、または実施形態ah)に記載の比プロモーター活性の増加している核酸により調節されている、
請求項24または25に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項27】
請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、もしくは実施形態ah)に記載の比プロモーター活性の増加している請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸により、微生物内での遺伝子の転写を調節することが、
bh1) 適宜に比プロモーター活性を増加させた、1以上の請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸を微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性を有する核酸の制御下で起こるようにする、または
bh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の転写が、適宜に比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する内因性核酸の制御下で起こるようにする、または
bh3) 適宜に比プロモーター活性を増加させた請求項1に記載のプロモーター活性を有する核酸および機能的に連結された1以上の転写すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項26に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項28】
少なくとも1つの遺伝子の転写速度が、野生型と比較して低下しており、ここで、
ar) 少なくとも1つの内因性遺伝子の転写を調節する、請求項1に記載のプロモーター活性を有する少なくとも1つの内因性核酸の微生物内での比プロモーター活性が、野生型と比較して低下している、または
br) 実施形態ar)に記載のプロモーター活性の低下している1以上の核酸が微生物のゲノム中に導入されており、その結果として、少なくとも1つの内因性遺伝子の転写が、導入された該プロモーター活性の低下している核酸の制御下で起こる、
請求項24または25に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項29】
遺伝的に改変された微生物であって、遺伝的改変が、少なくとも1つの遺伝子の発現速度を野生型と比較して改変させるかまたは生起させるものであり、かつ遺伝的改変が、
c) 少なくとも1つの内因性遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性を、野生型と比較して改変させる、または
d) 請求項2または3に記載の発現ユニット核酸により、または実施形態c)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現を調節する、
ことによるものである、上記遺伝的に改変された微生物。
【請求項30】
請求項2または3に記載の発現ユニットにより、または実施形態c)に従って比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することが、
d1) 適宜に比発現活性を改変させた、1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された該発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
d3) 適宜に比発現活性を改変させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項29に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項31】
少なくとも1つの遺伝子の発現速度が、野生型と比較して増加しているかまたは生起されており、ここで、
ch) 内因性遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して増加している、または
dh) 該発現ユニットに対して異種である遺伝子の微生物内での発現が、請求項2または3に記載の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に記載の比発現活性の増加している請求項2または3に記載の発現ユニットにより調節されている、
請求項29または30に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項32】
請求項2または3に記載の発現ユニットにより、もしくは実施形態ch)に記載の比発現活性の増加している請求項2または3に記載の発現ユニットにより、微生物内での遺伝子の発現を調節することが、
dh1) 適宜に比発現活性を増加させた、1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットを微生物のゲノム中に導入して、1以上の内因性遺伝子の発現が、導入された発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh2) 1以上の遺伝子を微生物のゲノム中に導入して、1以上の導入された遺伝子の発現が、適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの制御下で起こるようにする、または
dh3) 適宜に比発現活性を増加させた請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された1以上の発現すべき核酸を含んでなる1以上の核酸構築物を、微生物中に導入する、
ことによって達成される、請求項31に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項33】
少なくとも1つの遺伝子の発現速度が、野生型と比較して低下しており、ここで、
cr) 少なくとも1つの内因性遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの請求項2または3に記載の内因性発現ユニットの微生物内での比発現活性が、野生型と比較して低下している、または
dr) 発現活性の低下している1以上の請求項2または3に記載の発現ユニットが微生物のゲノム中に導入されており、その結果として、少なくとも1つの遺伝子の発現が、導入された該発現活性の低下している請求項2または3に記載の発現ユニットの制御下で起こる、
請求項29または30に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項34】
請求項2または3に記載の発現ユニットおよび機能的に連結された発現すべき遺伝子を含んでなる遺伝的に改変された微生物であって、該遺伝子が該発現ユニットに対して異種である、上記微生物。
【請求項35】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の発現カセットを含んでなる、請求項34に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項36】
前記遺伝子が、タンパク原性および非タンパク原性アミノ酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、有機酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、脂質および脂肪酸の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ジオールの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、炭水化物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、芳香族化合物の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、ビタミンの生合成経路からのタンパク質をコードする核酸、補因子の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸および酵素の生合成経路からのタンパク質をコードする核酸からなる群より選択され、その場合、該遺伝子はさらなる調節エレメントを含んでいてもよい、請求項24〜35のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項37】
アミノ酸の生合成経路からのタンパク質が、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ、ジヒドロジピコリン酸還元酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、転写レギュレーターLuxR、転写レギュレーターLysR1、転写レギュレーターLysR2、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、ホスホセリンホスファターゼ、セリンアセチル-トランスフェラーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼ、トレオニンエクスポーター担体、トレオニンデヒドラターゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、リシンエクスポーター、ビオチンリガーゼ、システインシンターゼI、システインシンターゼII、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ、硫酸アデニリルトランスフェラーゼサブユニット1および2、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素、フェレドキシンNADP還元酵素、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、RXA00655レギュレーター、RXN2910レギュレーター、アルギニル-tRNAシンテターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、トレオニン流出タンパク質、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、硫酸還元のタンパク質RXA077、硫酸還元のタンパク質RXA248、硫酸還元のタンパク質RXA247、タンパク質OpcA、1-ホスホフルクトキナーゼおよび6-ホスホフルクトキナーゼからなる群より選択される、請求項36に記載の遺伝的に改変された微生物。
【請求項38】
請求項24〜37のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによる生合成産物の製造方法。
【請求項39】
請求項24、25、31または32に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによるリシンの製造方法であって、遺伝子がアスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼをコードする核酸、ジヒドロジピコリン酸還元酵素をコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、転写レギュレーターLuxRをコードする核酸、転写レギュレーターLysR1をコードする核酸、転写レギュレーターLysR2をコードする核酸、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素をコードする核酸、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、リシンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、アルギニル-tRNAシンテターゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼをコードする核酸、タンパク質OpcAをコードする核酸、1-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸および6-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項40】
遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、転写レギュレーターLuxRの活性、転写レギュレーターLysR1の活性、転写レギュレーターLysR2の活性、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素活性、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、トランスアルドラーゼ活性、リシンエクスポーター活性、アルギニル-tRNAシンテターゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、フルクトース-1、6-ビスホスファターゼ活性、タンパク質OpcA活性、1-ホスホフルクトキナーゼ活性、6-ホスホフルクトキナーゼ活性、およびビオチンリガーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して増加した活性をさらに有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
遺伝的に改変された微生物が、トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO-アセチル-トランスフェラーゼ活性、O-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ホモセリンキナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、トレオニンエクスポーター活性、トレオニン流出タンパク質活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性およびトレオニンシンターゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
請求項24、25、31または32に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによるメチオニンの製造方法であって、遺伝子が、アスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、シスタチオニンγ-シンターゼをコードする核酸、シスタチオニンβ-リアーゼをコードする核酸、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする核酸、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼをコードする核酸、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素をコードする核酸、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホセリンホスファターゼをコードする核酸、セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸、システインシンターゼIをコードする核酸、システインシンターゼIIをコードする核酸、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼをコードする核酸、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼをコードする核酸、硫酸アデニリルトランスフェラーゼをコードする核酸、ホスホアデノシンホスホ硫酸還元酵素をコードする核酸、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素をコードする核酸、フェレドキシンNADPH-還元酵素をコードする核酸、フェレドキシン活性をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA077をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA248をコードする核酸、硫酸還元のタンパク質RXA247をコードする核酸、RXA0655レギュレーターをコードする核酸、およびRXN2910レギュレーターをコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項43】
遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ活性、シスタチオニンγ-シンターゼ活性、シスタチオニンβ-リアーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素活性、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ活性、ホスホセリンホスファターゼ活性、セリンアセチルトランスフェラーゼ活性、システインシンターゼI活性、システインシンターゼII活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、硫酸アデニリルトランスフェラーゼ活性、ホスホアデノシン-ホスホ硫酸還元酵素活性、フェレドキシン-亜硫酸還元酵素活性、フェレドキシンNADPH-還元酵素活性、フェレドキシン活性、硫酸還元のタンパク質RXA077の活性、硫酸還元のタンパク質RXA248の活性、硫酸還元のタンパク質RXA247の活性、RXA655レギュレーターの活性、およびRXN2910レギュレーターの活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して増加した活性をさらに有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
遺伝的に改変された微生物が、ホモセリンキナーゼ活性、トレオニンデヒドラターゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、メソ-ジアミノピメリン酸D-デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
請求項24、25、31または32に記載の遺伝的に改変された微生物を培養することによるトレオニンの製造方法であって、遺伝子がアスパラギン酸キナーゼをコードする核酸、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする核酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする核酸、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トリオースリン酸イソメラーゼをコードする核酸、ホモセリンキナーゼをコードする核酸、トレオニンシンターゼをコードする核酸、トレオニンエクスポーター担体をコードする核酸、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、トランスアルドラーゼをコードする核酸、トランスケトラーゼをコードする核酸、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素をコードする核酸、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする核酸、リシンエクスポーターをコードする核酸、ビオチンリガーゼをコードする核酸、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする核酸、トレオニン流出タンパク質をコードする核酸、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼをコードする核酸、OpcAタンパク質をコードする核酸、1-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、6-ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸、およびホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする核酸からなる群より選択される、上記方法。
【請求項46】
遺伝的に改変された微生物が、アスパラギン酸キナーゼ活性、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ活性、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トリオースリン酸イソメラーゼ活性、トレオニンシンターゼ活性、トレオニンエクスポーター担体の活性、トランスアルドラーゼ活性、トランスケトラーゼ活性、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性、リンゴ酸-キノン酸化還元酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、ビオチンリガーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性、トレオニン流出タンパク質活性、タンパク質OpcA活性、1-ホスホフルクトキナーゼ活性、6-ホスホフルクトキナーゼ活性、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ活性、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼおよびホモセリンデヒドロゲナーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して増加した活性をさらに有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
遺伝的に改変された微生物が、トレオニンデヒドラターゼ活性、ホモセリンO-アセチルトランスフェラーゼ活性、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性、メソ-ジアミノピメリン酸D-デヒドロゲナーゼ活性、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性、ピルビン酸オキシダーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンテターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸還元酵素活性、アスパラギナーゼ活性、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ活性、リシンエクスポーター活性、アセト乳酸シンターゼ活性、ケトール-酸レダクトイソメラーゼ活性、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ活性、補酵素B12依存性メチオニンシンターゼ活性、補酵素B12非依存性メチオニンシンターゼ活性、ジヒドロキシ-酸デヒドラターゼ活性およびジアミノピコリン酸デカルボキシラーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの活性の、野生型と比較して低下した活性をさらに有する、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
培養工程の後におよび/または間に、生合成産物を培地から単離し、適宜に精製する、請求項38〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニットにおけるリボソーム結合部位としての配列番号53の核酸配列の使用。
【請求項50】
Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニットにおける-10領域としての配列番号52の核酸配列の使用。
【請求項51】
配列番号53の核酸配列を含んでなる、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニット。
【請求項52】
配列番号53の核酸配列がリボソーム結合部位として使用される、請求項51に記載の発現ユニット。
【請求項53】
配列番号52の核酸配列を含んでなる、Corynebacterium属またはBrevibacterium属の細菌内での遺伝子の発現を可能にする発現ユニット。
【請求項54】
配列番号52の核酸配列が-10領域として使用される、請求項53に記載の発現ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−237218(P2008−237218A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95696(P2008−95696)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【分割の表示】特願2006−544324(P2006−544324)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】