R−クルクメンをベースとする植物揮発性物質
本発明は、R-クルクメン、ならびに任意選択でさらに、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレン、を含むまたはから成る組成物を供給するステップと、前記組成物を、1回または複数回、複数の作物植物に添加するステップとを含む、コナジラミを防除する方法を提供する。本方法は、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンを含む誘引剤組成物の使用、ならびに任意選択で、前記組成物を、1回または複数回、1つまたは複数のトラップ植物および/またはトラップ材に添加するステップと組み合わせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業、特に植物の昆虫有害生物(insect pest)防除の分野に関する。コナジラミなどの昆虫有害生物を忌避または誘引するのに適した、1種または複数種の揮発性炭化水素化合物を含む化合物および組成物が提供される。誘引剤または忌避剤化合物/組成物を製造および使用する方法、ならびに圃場および/または温室における昆虫の発生(infestation)および被害を制御する方法も提供される。本組成物は、植物昆虫有害生物、特に腹吻亜目の吸汁性昆虫を防除するのに適している。腹吻亜目の昆虫は、キジラミ、コナジラミ、アブラムシ、コナカイガラムシおよびカイガラムシを含み、共通の特性、すなわち食物源としての植物樹液の利用を共有する。防除することができる他の植物昆虫有害生物は、アザミウマ、ダニ(例えば、ハダニ)およびヨコバイである。好ましい実施形態では、コナジラミの発生および作物植物のコナジラミ被害を制御するための方法および組成物が提供される。異なる実施形態では、化合物および/または組成物は、カ科、特にハマダラカ属(約400種が存在し、ガンビアハマダラカ群(A. gambiae complex)の種など、その30〜40種がマラリアを媒介する)、イエカ属および/またはヤブカ属に属する種の昆虫を忌避するために使用することができる。また、例えば、Culicoides impunctatus(高地ユスリカまたはスコットランドヌカカ)などの、脊椎動物の血液を吸うサシバエ属、Forcipomyia属(ラシオヘレア属)およびLeptoconops属など、ヌカカ科の仲間であるヌカカは、本発明により誘引または忌避することができる。
【背景技術】
【0002】
Bemisia属のコナジラミ(サツマイモコナジラミ)およびTrialeurodes属のコナジラミ(温室コナジラミ)は、世界中で作物植物の主要有害生物であり、特に、摂食中の植物ウイルスの媒介のために(すなわち、これらは「ウイルスベクター」として働く)経済的損失をもたらす。タバココナジラミ(Bemisia tabaci)は、60種を超える異なるジェミニウイルス(Geminiviridae)に加えていくつかのクリニウイルスを媒介することができ、これらのウイルスの多くは、アフリカキャッサバモザイクウイルス(ACMV)、マメゴールデンモザイクウイルス(BGMV)、マメ矮化ウイルス、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)、トマトモットルウイルス(TMV)などのベゴモウイルス(Begomovirus)に属する。トマト、マメ、ウリ科植物、ジャガイモ、ワタ、キャッサバおよびサツマイモなどの熱帯作物および温帯作物の両方が発症する。現在まで、主な防除戦略は、成虫、幼虫および卵を死滅させることを目指した殺昆虫剤の施用である。殺昆虫剤施用の相当な費用に加えて、この実施は重い環境への影響を有する。その上、タバココナジラミは、有効成分に対する耐性が出現するために殺昆虫剤による防除が困難である。
【0003】
殺昆虫剤施用を減らすために、圃場栽培作物および温室栽培作物の両方において、コナジラミに誘導される作物被害および損失を制御する新しい方法が必要とされている。文献から、揮発性成分が昆虫の行動に直接的に影響を及ぼし得ることが知られている(例えば、Bruce他、2005、Trends Plant Sci.10:269〜74)。コナジラミによるウイルス伝染を制御する1つの方法は、作物植物の上もしくは近くに施用することができる昆虫忌避剤、および/または作物から昆虫有害生物を誘い出すために近くの区域に施用することができる昆虫誘引剤を同定することである。誘引剤および/または忌避剤を同定する際の問題は、ある種を誘引することが知られている化合物は、別の種の昆虫を忌避し得るということである。そのため、多くの場合、感覚認知および摂食行動が異なり得る種にわたって化合物または組成物の誘引剤または忌避剤特性について結論を出すことはできない。例えば、コナジラミは、維管束組織に飲み口をつける前に、表皮表面を口唇で軽くたたくことにより(機械受容器および化学受容器を使用して)宿主植物を調べる(プロービング)。ここでの決定は、例えば、恒常的に産生される忌避剤によって、しかしおそらくは葉表面の特性によっても影響される。嗜好性は、プロービング中に起こる行為およびウイルス伝染と直接関係する。ウイルス伝染を避けるために、プロービングを防ぐまたは少なくとも著しく減少させるべきである。このことは、プロービングが起こった後でのみコナジラミを死滅させる化合物では、ウイルスが既に運ばれてしまっているので作物防御剤としては適していないことを意味する。さらに、コナジラミの昆虫捕食者は、コナジラミ個体群を減少させるのに有用であるので、忌避剤または誘引剤によって影響を及ぼされるべきではない。
【0004】
コナジラミ防除に適した化合物および/または組成物を同定する際の別の問題は、天然起源の植物のヘッドスペース組成物および植物の腺毛の内容物が、異なる濃度の大量の異なる化合物を含んでおり、それらは種の間および種内の個々の植物系統または系統種間で変わるという事実にある。たとえ、昆虫有害生物に特定の効果を有する植物のヘッドスペース組成物が全体として同定されたとしても、どの成分または成分の組み合わせが、誘引剤または忌避剤として適当であり得るのかを同定することは容易なことではなく、現在まで、コナジラミおよび他の吸汁性昆虫有害生物に適した忌避剤または誘引剤は存在しない。
【0005】
Zhang他(J. Econo Entomolog 2004、97、1310〜1318ページ)は、シルバーリーフコナジラミ(B. argentifolii)の忌避剤としてショウガ油の0.25%溶液を試験した。非選択試験で、わずか10.2から16.6%の間の成虫コナジラミしか処理植物に定着せず、植物上に産まれた卵の数には差が見られなかった。ショウガ油の濃度の増加は、植物毒性と関連し、それによってコナジラミ忌避剤としてのショウガ油の効果的使用を妨げた。
【0006】
EP0583774は、葉の昆虫防除剤の植物毒性を減少させるための植物油の使用を記載しており、それによって任意の種類の昆虫防除剤を使用することができる。
【0007】
腺毛は、トマト属(現在、ナス属として分類される)の葉および茎に顕著であり、セスキテルペン炭化水素、セスキテルペン酸、メチルケトンおよび糖エステルなどの大量の二次化合物を産生することが示されてきた。いくつかの研究は、腺毛の密度と、トウモロコシイヤーワーム(Heliothis zea)またはコロラドハムシなどの植物有害生物に対する抵抗性を互いに関連づけようとしてきた(KauffmanおよびKennedy、1989、J Chem Ecol 15、1919〜1930;Antonious、2001、J Environ Sci Health B36、835〜848およびAntonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631)。また、L.hirsutum f.glabratumの腺毛中に貯蔵されているメチルケトンである2-ウンデカノンおよび2-トリデカノンは、それぞれコロラドジャガイモハムシの4齢幼虫および成虫タバココナジラミに対する毒性効果を示すことが示された(Antonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631)。
【0008】
AntoniousおよびKochhar(J Environm Science and Health B、2003、B38:489〜500)は、天然殺昆虫剤生産のためのセスキテルペン炭化水素の生産に使用することができる野生トマト系統種を選択することを目的として、野生トマト系統種からジンギベレンおよびクルクメンを抽出し、定量化した。しかしながら、このような化合物が、コナジラミ忌避剤または誘引剤として使用することができるかどうかについては開示されなかった。ジンギベレンは、コロラドハムシ抵抗性およびビートアワヨトウ抵抗性と関連し、クルクメンは殺虫効果と関連したことが言及されている。野生トマト種L.hirsutum f.typicumは、シルバーリーフコナジラミに抵抗性であると言及されているが(Heinz他、1995、88:1494〜1502)、毛状突起に基づく植物抵抗性には、当然、種々の原因があり、この論文からはコナジラミを誘引または忌避する特性を有する化合物の存在または同一性に関して推論することはできない。
【0009】
Kostyukovsky他(Acta Horticulturae 2002、576、347〜358)は、10〜20mg/lの濃度で切り花の有害生物(例えば、タバココナジラミ)に施用した植物精油の燻蒸剤(シネオール、サフロール、シソ科もしくはウイキョウからの精油、またはM-ブロミド)が照射の2〜4時間後に大量死を引き起こすことを発見した(Table 5(表5)(表6)参照)。
【0010】
Freitas他(Euphytica 2002、127:275〜287)は、L. esculentum(栽培トマト、低ジンギベレン)と野生L.hirsutum var. hirsutum(高ジンギベレン)との間の種間交雑における、セスキテルペンであるジンギベレンならびにI、IV、VIおよびVII腺毛型の両方を産生するための遺伝子の遺伝を研究した。F2植物中のジンギベレン含量は、相関によってシルバーリーフコナジラミ抵抗性に寄与し、ジンギベレン、2-トリデカノンおよび/またはアシル糖が同時に高濃度の植物を育種することはより高レベルのコナジラミ抵抗性に寄与することが示された。しかしながら、有害生物抵抗性のための育種は、開発中の有害生物忌避剤または誘引剤組成物とは基本的に異なる。それ自体としてまたは他の化合物と組み合わせての、コナジラミ忌避剤としての合成または精製ジンギベレンの使用についての示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP0583774
【特許文献2】US4,1361,26
【特許文献3】WO2006/065126
【特許文献4】US4,774,082
【特許文献5】US6,180,127
【特許文献6】US3,725,031
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Bruce他、2005、Trends Plant Sci.10:269〜74
【非特許文献2】Zhang他、J. Econo Entomolog 2004、97、1310〜1318ページ
【非特許文献3】KauffmanおよびKennedy、1989、J Chem Ecol 15、1919〜1930
【非特許文献4】Antonious、2001、J Environ Sci Health B36、835〜848
【非特許文献5】Antonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631
【非特許文献6】AntoniousおよびKochhar、J Environm Science and Health B、2003、B38:489〜500
【非特許文献7】Heinz他、1995、88:1494〜1502
【非特許文献8】Kostyukovsky他、Acta Horticulturae 2002、576、347〜358
【非特許文献9】Freitas他、Euphytica 2002、127:275〜287
【非特許文献10】Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、833〜882ページ、1997
【非特許文献11】Kirt-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、834〜835ページ、1997
【非特許文献12】Millar他、1998、J. Nat. Prod 61:1025〜1026
【非特許文献13】Agarwal他、2001、Pest Man. Sci.、57:289〜300
【非特許文献14】Colby他、1998、PNAS 95:2216〜2221
【非特許文献15】Chang他、2007、Nat. Chem. Biol.、3:274〜277
【非特許文献16】Peng他、2004、J. Chromatogr.A.、1040:1〜17
【非特許文献17】Eikani他、2006、J. Food Eng.、80:735〜740
【非特許文献18】Durling他、2006、Food Chem.、101:1417〜1424
【非特許文献19】Millar、1998、J. Nat. Proc. 61:1025〜1026
【非特許文献20】Reiling他、Biotechnol. Bioeng.2004、87:200〜212
【非特許文献21】Day、Weed Research、1巻、3号、177〜183ページ、1961年9月
【非特許文献22】Barlow, F、1985、Chemistry and formulation.In:Pesticide Application:Principles and Practice.編:P T Haskell.Oxford Science Publications:Oxford.1〜34ページ
【非特許文献23】Dent,D R、1995、Integrated Pest Management.Chapman&Hall:London、Glasgow、Weinheim、New York、Todyo、Melbourne、Madras
【非特許文献24】Rombke,J&J M Moltmann、1995、Applied Ecotoxicology. Lewis Publishers:Boca Raton、New York、London、Tokyo
【非特許文献25】Ware,G W、1991、Fundamentals of Pesticides.A self-instruction guide.Thomsom Publications:Fresno USA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、10種のテルペン(またはテルペン類似体)が吸汁性昆虫有害生物、特にコナジラミの忌避性/誘引性に関連することを発見した。これらの化合物は、有効な昆虫忌避剤および/または昆虫誘引剤組成物を作るために、単独でまたは組み合わせて使用することができる。R-クルクメン(セスキテルペン)および任意選択で、
- ミルセン、特にベータ-ミルセン(モノテルペン)、
- シメン、特にパラ-シメン(モノテルペンに関連する炭化水素)、
- テルピネン、特にガンマ-テルピネン(モノテルペン)および/またはアルファ-テルピネン(モノテルペン)、
- 7-エピ-ジンギベレン(セスキテルペン)、
- ジンギベレン(セスキテルペン)、および/または
- フェランドレン、特にアルファ-フェランドレン(モノテルペン)
の1種または複数種、を含むまたはから成る昆虫忌避剤組成物(特に、作物植物の吸汁性昆虫有害生物、好ましくはコナジラミを忌避する)、ならびにこれらおよびこれらを含むディスペンサーまたは他の容器または支持材を使用する方法が提供される。
【0014】
以下の3種の化合物:フェランドレン、特にベータ-フェランドレン(モノテルペン)、リモネン(D-および/またはL-異性体)(モノテルペン)および/または2-カレン(モノテルペン)の1種または複数種、を含むまたはから成る昆虫誘引剤組成物(特に、作物植物の吸汁性害虫、好ましくはコナジラミを誘引する)、ならびにこれらおよびこれらを含むディスペンサーまたは他の容器または支持材を使用する方法がさらに提供される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、上記忌避剤もしくは誘引剤化合物または組成物は、カ科(双翅目)および/またはヌカカ科の昆虫、特にカなどの刺激性でヒトおよび動物に病気を潜在的に媒介する吸血昆虫を誘引または忌避するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般的定義
「植物昆虫有害生物または植物有害生物」または「昆虫有害生物」または「植物有害生物種」は、植物または植物の部分への発生により、作物および/または観賞植物(宿主植物種)に発生および被害をもたらす昆虫種である。「発生」は、区域内(例えば、圃場または温室)、宿主植物の表面上、または宿主植物に接触し得る何かの上、または土壌中の大量の有害生物(pest organisms)の存在である。有害生物は、吸汁性有害生物(以下参照)を含むが、アザミウマ、セミ、ダニ(例えば、ハダニなど)およびヨコバイなどの他の有害生物も含む。
【0017】
「哺乳動物昆虫有害生物」または「哺乳動物病原媒介者」は、本明細書では、吸血/刺咬昆虫であり、マラリアなどのヒトおよび/または哺乳動物の病気の媒介者として潜在的に働くことができる(しかし、必ずしもそうではなく、単なる刺激性であってもよい)双翅目の昆虫を指す。本明細書で「昆虫有害生物」と言及する場合、文章の一部を、それらが吸血/刺咬昆虫であることを除いては、植物有害生物と類似した方法で、動物、特に哺乳動物を攻撃する昆虫にも準用することが理解される。
【0018】
「吸汁性昆虫有害生物」は、(昆虫綱の半翅目の)腹吻亜目の植物有害生物、すなわちキジラミ、コナジラミ、アブラムシ、コナカイガラムシおよびカイガラムシを含み、共通の特性、すなわち食物源としての植物樹液の利用を共有する昆虫有害生物を含む。
【0019】
「アブラムシ」は、本明細書では、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、マメクロアブラムシ(A. fabae)、ダイズアブラムシ(A. glycines)、キョウチクトウアブラムシ(A. nerii)、A. nasturtii、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニワウメクロアブラムシ(M. cerasi)、スミレコブアブラムシ(M. ornatus)、Nasonovia属(例えば、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri))、Macrosiphum属、Brevicoryne属などのアブラムシ科(Aphididae)の植物昆虫有害生物を含む。
【0020】
「媒介昆虫」は、植物にウイルスを運び、媒介することができる昆虫である。哺乳動物病原媒介者の文脈では、媒介昆虫は、寄生虫であるマラリア原虫をヒトに、または糸状虫をイヌに媒介することができるカなどの、哺乳動物を攻撃し、哺乳動物に病気を潜在的に媒介することができる昆虫である。
【0021】
「コナジラミ(whiteflyまたはwhiteflies)」は、Bemisia属の種、特に、タバココナジラミおよびシルバーリーフコナジラミ(タバココナジラミのバイオタイプBとしても知られている)、ならびに/またはTrialeurodes属の種、特にT. vaporariorum(オンシツコナジラミ)およびT. abutinolea(バンデドウイングドコナジラミ)を指す。本明細書では、タバココナジラミのバイオタイプQおよびBなどの全てのバイオタイプ、ならびに卵、幼虫、蛹および成虫などの任意の発育段階が含まれる。
【0022】
「忌避剤」化合物または組成物は、1つまたは複数の昆虫有害生物種(例えば、コナジラミ)を忌避する、および忌避剤で処理していない同じ区域および/または表面と比較して、施用した区域および/または表面で昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)によりもたらされる発生および/または被害を有意に減少させる(忌避剤施用後、1つまたは複数の時点で測定される)、1つまたは複数の化合物を指す。「有意な減少」は、少なくとも5ナンバー%(5 number%)、好ましくは少なくも10%、15%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上(100%)の減少を指す。昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)によりもたらされる発生および/または被害は、種々の方法、例えば、植物の健康を評価することにより、または例えば、昆虫有害生物数、産卵された昆虫卵、組織の昆虫プロービング、ウイルス伝染もしくは発生(incidence)、収量損失、植物組織被害、または他の任意の昆虫発生/被害の直接的もしくは間接的症状等を評価することにより測定することができる。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、効果を評価および/または定量化するために、例えば、昆虫の数、昆虫咬傷または病徴を使用することができる。
【0023】
「誘引剤」化合物または組成物は、1つまたは複数の昆虫有害生物種(特に、コナジラミなどの吸汁性昆虫有害生物)を誘引し、誘引剤なしの同じ区域および/または表面と比較して、施用した区域および/または表面で有害生物(pest organisms)(例えば、コナジラミ)の数を有意に増加させる(誘引剤施用後、1つまたは複数の時点で測定される)、1種または複数種の化合物を指す。「有意な増加」は、少なくとも5ナンバー%、好ましくは少なくも10%、15%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の増加を指す。誘引剤を植物組織に施用した場合、誘引剤の効果は、種々の方法、例えば、誘引剤の施用後、1つまたは複数の時点で昆虫の数を評価することにより、または昆虫発生/被害に関連する組織被害または他の症状を評価することにより測定することができる。誘引剤を非生物材料/区域(トラップ、固体支持材等)などの他の支持材に施用した場合、処理材料/区域上の昆虫の数対未処理の材料/区域上の昆虫の数が評価される。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、効果(誘引)を評価および/または定量化するために、例えば、昆虫の数を使用することができる。
【0024】
「有効量」の忌避剤化合物または組成物は、未処理植物と比較して処理植物上の昆虫有害生物により(特に、コナジラミなどの1つまたは複数の吸汁性昆虫有害生物により)もたらされる発生および/または被害を有意に減少させるのに十分な量を指す。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、有効量の忌避剤化合物または組成物は、上に定義した昆虫を有意に忌避するのに十分な量を指す。
【0025】
「有効量」の誘引剤化合物または組成物は、未処理区域または表面と比較して処理区域内または処理表面上の昆虫有害生物(特に、コナジラミなどの1つまたは複数の吸汁性昆虫有害生物、および/またはその段階、例えば産卵された卵)の数を有意に増加させるのに十分な量を指す。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、有効量の誘引剤(attractant)化合物または組成物は、上に定義した昆虫を有意に誘引するのに十分な量を指す。
【0026】
「有効成分」は、生物学的に活性である製剤中の成分、例えば媒介昆虫/昆虫有害生物忌避剤または誘引剤を指す。「不活性成分」または「不活性」は、有効成分の担体などの、生物学的に活性ではない(少なくとも標的媒介昆虫に関して)成分、例えば、水、油または油性担体、溶媒等を指す。
【0027】
「溶媒」は、固体、液体または気体溶質を溶解し、溶液、分散液または乳濁液をもたらす液体である。
【0028】
「トラップ」は、有効量の誘引剤化合物または組成物を施用する材料を指す。一般に、トラップは、昆虫がそのトラップに向かって、またはその中/その上に誘い込まれるように、誘引剤化合物または組成物を施用する複数の植物(トラップ作物またはトラップ植物)または容器(例えば、昆虫トラップ)または表面または液体であり得る。誘引剤化合物または組成物は、「ベイト剤」とも呼ばれ得る。
【0029】
「殺昆虫剤」または「殺虫性」は、(忌避剤と対照的に)昆虫の1つまたは複数の段階を死滅させるまたは不活性化する(殺卵剤、殺幼虫剤、殺成虫剤等)、すなわち昆虫の分布よりもむしろ死亡率に影響を及ぼす化合物または組成物を指す。
【0030】
「昆虫有害生物捕食者」または「昆虫有害生物寄生生物」は、本明細書では、昆虫有害生物を食べるまたは昆虫有害生物に寄生する生物を指す。例えば、「コナジラミ捕食者」または「寄生生物」は、本明細書では、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirskii)、クサカゲロウ、種々の甲虫等、または寄生スズメバチ(EncarsiaおよびEretmocerus種など)などの捕食および/または寄生によりコナジラミの数を減少させる昆虫種などの生物を指す。
【0031】
「宿主植物」は、昆虫有害生物の天然の宿主種である1つまたは複数の種を指す。例えば、コナジラミは、それだけに限定されないが、トマト、コショウ、ナス、レタス、アブラナ、ブロッコリー、カリフラワーおよびキャベツ作物などのアブラナ属の種;キュウリ、メロン、カボチャ、スカッシュなどのウリ科植物;ピーナッツ、ダイズ、ワタ、マメ、キャッサバ、ジャガイモ、サツマイモおよびオクラなどの広範な宿主範囲を有する。ハイビスカス、ポインセチア、ユリ、アイリス、ランタナ、バラおよびペチュニアなどの観賞種もまた、好ましい宿主の中にある。
【0032】
「作物」または「作物植物」または「栽培植物」は、それだけに限定されないが、油、炭水化物、薬用成分などの植物由来産物を含む、植物または植物の部分から得られる食品成分、飼料成分または他の任意の成分を得るなどの種々の目的のためにヒトによって栽培される植物を指すが、観賞目的、あるいは、例えば、ゴルフコース、運動場もしくは公園の芝生(芝生栽培区域)または森林もしくは公園等で栽培される植物などの社会経済的目的のために栽培される植物も含む。作物植物は、圃場、庭園、温室または他の任意の方法で栽培されてもよく、小規模または大規模で栽培されてもよい。
【0033】
近年、トマトはナス属に再分類された。本文書の全体にわたって、「Lycopersicon esculentum」および「Solanum lycopersicum」は栽培トマト植物を指すために互換的に使用される。同様に、野生トマトを指す場合には、Lycopersicon pennelliおよびSolanum pennelliならびにLycopersicon hirsutum f. glabratumおよびLycopersicon hirsutum f. typicumおよびSolanum habrochaitesが互換的に使用される。同様に、野生Lycopersicon属の種を指す場合には、これらは現在ナス属に属するものとして再分類されると理解され、これらの属命名が互換的に使用される。
【0034】
「テルペン」は、イソプレン単位に由来する炭素骨格を有する炭化水素であり、その炭素数に基づいたグループ、例えば、C10モノテルペン、C15セスキテルペン、C20ジテルペン、C25セステルテルペン、C30トリテルペン、C40テトラテルペンおよびC5nポリテルペンに細分化される。テルペンは、本明細書では、一般的に、例えば、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、833〜882ページ、1997に記載されているような、慣用名で呼ばれる。本明細書で使用する「テルペン」という用語はまた、アルコール、エステル、アルデヒドおよびケトン、(天然または合成の)異性体、ならびに適用できる場合にはこれらの任意の立体異性体および/または互変異性体などの、「テルペノイド」として一般的に知られている化合物、テルペン、および/またはテルペノイド類似体を含む。本明細書で特定の異性体(アルファおよび/またはベータ異性体など)を指す場合、他の異性体が含まれ、他の異性体または異性体の混合物は、それらが機能的である限りは、特に言及された異性体の代わりをすることができることが理解される。
【0035】
モノテルペンは、炭素骨格の構造によってさらに区別することができ、「非環式モノテルペン」(例えば、ミルセン、(Z)-および(E)-オシメン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ゲラニアール、シトラールa、ネラール、シトラールb、シトロネラール等)、「単環モノテルペン」(例えば、リモネン、アルファ-およびガンマ-テルピネン、アルファ-およびベータ-フェランドレン、テルピノレン、メントール、カルベオール等)、「二環モノテルペン」(例えば、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、ミルテノール、ミルテナール、ベルバノール、ベルバノン、ピノカルベオール等)および「三環モノテルペン」(例えば、トリシクレン)に分類することができる。Kirt-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、834〜835ページ、1997を参照されたい。
【0036】
本文書および特許請求の範囲では、動詞「含む」およびその活用形は、その単語の次の品目が含まれるが、特に言及されない品目は排除されないことを意味する非限定的な意味で使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素の言及は、文脈が、1つであることおよび要素の中の1つだけであることを明確に要求しない限りは、2つ以上の要素が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0037】
「植物(plantまたはplants)」(または複数の植物)への参照は、植物の部分(細胞、組織または器官、種子、切断または収穫された部分、葉、実生、花、花粉、果実、茎、根、カルス、プロトプラスト等)も指すと理解され、特に指示しない限り、自家受粉または交雑により得られた種子などの、親植物の際立った特徴を保持する植物の後代またはクローン増殖、例えばハイブリッド種子(2つの純系親系統を交配させることにより得られる)、ハイブリット植物およびそれに由来する植物部分が本明細書に包含される。
【0038】
本発明は、一実施形態では、昆虫忌避剤特性または昆虫誘引剤特性を有する化合物、およびこれらの1種または複数種を含むまたはから成る組成物に関する。
【0039】
化合物および組成物
コナジラミは、宿主植物を見つけるために視覚的手がかりおよび化学的手がかりの両方を使う。視覚的手がかりが取り除かれた、トマト植物を使用した自由選択再捕捉分析では、コナジラミが種々の野生トマト種(Solanum pennelli、LA716;Solanum habrochaites f. typicum、PI27826;L. hirsutum f. glabratumとも呼ばれるSolanum habrochaites f. glabratum;PI126449)を超える栽培L. esculentum(栽培品種Moneymaker)への嗜好性を有することが分かった。野生トマト植物のヘッドスペースを取り除き、ペンタン-エーテルに溶解し、栽培Moneymakerに添加した(濾紙担体上)場合、この栽培品種はコナジラミ(タバココナジラミ、バイオタイプQ)に対し60%まで誘引性が低くなった一方で、対照(溶媒ペンタン-エーテル)の施用は、誘引/忌避に効果がなかった。実施例1を参照されたい。
【0040】
大規模な実験(実施例2参照)では、16種の野生トマト系統種および5種の栽培トマト系統のヘッドスペースをサンプリングし、分析した(6回反復)。捕捉ヘッドスペース中に全体で51種の化合物が存在することが確認された。さらに、21種のトマト系統種の各々の忌避/誘引のレベルを、1〜7の順序尺度(1=最高の忌避から7=最低の忌避まで)を使用して、タバココナジラミ(バイオタイプQ)を用いた自由選択バイオアッセイで確立した。次に、同定した揮発性化合物を、線形回帰分析を通して、各々のトマト系統種の忌避/誘引スコアと互いに関連づけた。最終的に、7種の揮発性成分が、コナジラミ忌避と関連することが分かり、3種の揮発性成分がコナジラミ誘引と関連することが示された(Table 1(表1))。
【0041】
【表1A】
【0042】
【表1B】
【0043】
【表1C】
【0044】
(化学的に合成した、または商業的供給業者から入手した)Table 1(表1)に記載の個々の純粋な化合物のコナジラミ忌避剤または誘引剤特性を、バイオアッセイで確認した(実施例3)。さらに、2種以上の忌避剤または2種以上の誘引剤の混合物の有効性および可能な相乗効果を試験する。タバココナジラミの応答と、Table 1(表1)の化合物(個々のまたは混合物)との間の直接的な関連を、適当なOlfactory Detector Portを使用して、触角-電気生理学実験で確認する(実施例4)。この方法では、Table 1(表1)の個々の揮発性化合物、またはTable 1(表1)の化合物の2種以上の混合物が、電極を通してコナジラミの触角と直接接触され、EAD電位(触角電図法による(electro-antennographic)検出)が確立される。
【0045】
上記知見は、他の吸汁性昆虫、アザミウマ、ダニおよびその他、哺乳動物昆虫有害生物などの他の昆虫有害生物に拡張することができる。アザミウマは、例えば、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、Thrips fuscipennis、モトジロアザミウマ(Echinothrips americanus)などを含む。ダニは、例えば、いわゆるハダニ(ハダニ科(Tetranychidae))、糸足ダニ(ホコリダニ科(Tarsonemidae))およびフシダニを含む。
【0046】
したがって、一実施形態では、本発明は、有効量のR-クルクメン、ならびに任意選択でベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種を含むまたはから成る昆虫忌避剤(特に吸汁性昆虫忌避剤、アザミウマおよび/またはダニ忌避剤、好ましくは少なくともコナジラミ忌避剤)組成物を提供する。
【0047】
2種以上の忌避剤化合物の組み合わせは、好ましくは自然状態では起こらず、および/または本明細書で提供される純度(他の化合物の非存在)、濃度および/または比率では起こらない、以下の好ましい組み合わせ:
- S-クルクメンと組み合わせたジンギベレン;
- R-クルクメンと組み合わせた7-エピ-ジンギベレン;
- パラ-シメンおよび/またはガンマもしくはアルファテルピネン、S-クルクメンおよび/またはジンギベレンと組み合わせたベータ-ミルセン;
- パラ-シメンおよびベータ-ミルセンおよび/またはガンマ-テルピネン;
- パラ-シメンおよびアルファ-テルピネンおよび/またはアルファ-フェランドレン;
- 忌避剤化合物の2、3、4、5、6または7種の任意の組み合わせ
を含む。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、有効量の、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種を含むまたはから成る昆虫誘引剤(特に、吸汁性昆虫誘引剤、アザミウマおよび/またはダニ誘引剤、好ましくは少なくともコナジラミ誘引剤)組成物を提供する。そのため、2種以上の誘引剤化合物の組み合わせは、以下の組み合わせ:
- ベータ-フェランドレンおよびリモネン;
- ベータ-フェランドレンおよび2-カレン;
- リモネンおよび2-カレン;ならびに
- ベータ-フェランドレン、リモネンおよび2-カレン
を含む。
【0049】
1つまたは複数の異なる昆虫有害生物に関して、誘引または忌避効果に関する上記化合物の順位は変化し得る。7種の忌避剤化合物のどれが1つまたは複数の昆虫有害生物の忌避剤として単独で最も有効であるか、および3種の誘引剤化合物のどれが1つまたは複数の昆虫有害生物(好ましくは、吸汁性昆虫有害生物、アザミウマおよび/またはダニ;最も好ましくは、少なくともコナジラミ)の誘引剤として単独で最も有効であるかを、本明細書の他で記載するまたはそこから改造したバイオアッセイで試験することができる。
【0050】
同様に、7種の忌避剤または3種の誘引剤のいずれかから選択した2種以上の化合物のどの組み合わせが、1つまたは複数の昆虫有害生物を誘引または忌避することに関して最も有効であるかを、本明細書の他で記載するバイオアッセイを使用して、過度の実験なしに試験することができる。相乗的組み合わせは、共に化合物を施用した効果が(例えば、混合物としてまたは連続的に同じ区域に)、化合物を単独で施用した場合に達成される効果よりも大きい組み合わせである。
【0051】
本明細書の他で開示するように、特に有効な忌避組成物は、R-クルクメンを含むまたはから成ることが分かった。
【0052】
2種の化合物の混合物を使用する場合、種々の比率が1つまたは複数の昆虫有害生物を誘引または忌避するのに最も有効であり得る。適当であり得る比率は、100:1、50:1、10:1、5:1、2:1、1:1、1:2、1:5、1:10、1:50、1:100または中間の任意の比率である。
【0053】
3種の化合物の混合物を使用する場合、適当な比率は、1:1:1、1:2:1、1:2:2、1:10:10等を含み得る。適当な比率に関しては、Table 3(表3)も参照されたい。当業者は、特定の昆虫種に関してどの比率が最も適当であるかを決定することができるだろう。
【0054】
本発明の一実施形態では、(有効量の)R-クルクメン、および上記群から選択される誘引剤または忌避剤化合物の少なくとも1種、2種、3種またはそれ以上を含むまたはから成る組成物は、実質的に(すなわち、>90%、特に>95%、>98%、または>99%)または完全に(すなわち、100%)他の、選択されないテルペンまたはテルペノイド化合物、特に選択されない植物によって天然に産生されるテルペンおよび/またはテルペノイド化合物を含まない。したがって、本組成物は、有効量の選択された化合物または化合物の組み合わせのみを有効成分として含む。したがって、天然ヘッドスペース組成物は多種のテルペンおよびテルペノイドを含むので、本組成物は植物の天然ヘッドスペース組成物(すなわち、栽培または野生植物などの非トランスジェニック植物のヘッドスペースとして自然状態で生じる)ではない。これらの天然ヘッドスペース組成物は、時とともに、異なる環境条件下で、変わり得る。対照的に、本発明による組成物は、一定の組成物である。
【0055】
化合物は、化学合成によって作ることができ(Millar他、1998、J. Nat. Prod 61:1025〜1026)、あるいは蒸留(Agarwal他、2001、Pest Man. Sci.、57:289〜300)、インビボ生産(Colby他、1998、PNAS 95:2216〜2221;Chang他、2007、Nat. Chem. Biol.、3:274〜277)、および/または例えば、植物から精油/エーテル油の成分を得るために一般的に使用されるような、従来の溶媒抽出(例えば、Peng他、2004、J. Chromatogr. A.、1040:1〜17;Eikani他、2006、J. Food Eng.、80:735〜740;Durling他、2006、Food Chem.、101:1417〜1424参照)などの、当技術分野で既知の方法を使用して、植物、植物組織またはヘッドスペースなどの天然源から精製することができる。蒸留のために、原料植物材料、例えば葉、根、花、果皮等は水の上の蒸留装置に入れられ、加熱される。水蒸気が揮発性物質を蒸発させ、蒸気が濃縮され、回収される。次いで、蒸留液は、特定の化合物のために、さらに分留(例えば、溶媒抽出により)または濃縮され得る。あるいは、出発物質は、主に精製される揮発性物質を含む。
【0056】
組織からの溶媒抽出は、任意選択で蒸留ステップと組み合わせて、揮発性物質を抽出するために、例えばヘキサンまたは超臨界二酸化炭素および/またはエチルアルコールを使用する。ヘッドスペース揮発性物質も、ペンタンエーテルなどの溶媒を使用して抽出することができる。
【0057】
好ましくは比較的純粋な化合物、すなわち植物組織、ワックス、樹脂または他の植物由来の汚染物質を含まない、ならびに望ましくないテルペンを実質的に含まない化合物が使用されるので、合成化合物および/または組換えで生産された化合物および/または実質的に精製された化合物を使用することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、個々の化合物の各々は、「実質的に純粋」であり、それによって、10%未満、より好ましくは5%未満、好ましくは3%、2%または1%未満の、望ましくない炭化水素、タンパク質、ワックス、樹脂、DNA、RNA、糖、細胞壁または他の植物成分などの汚染物質しか存在しない。
【0058】
化合物は、Sigma-Aldrichなどの商業的供給業者から得ることもできる(www.sigmaaldrich.com参照)。例えば、ベータ-ミルセン(Sigma-Aldrich製品番号64643、純度≧95%)、パラ-シメン(Sigma-Aldrich製品番号30039、純度≧99.5%)およびガンマ-テルピネン(Sigma-Aldrich製品番号86476、純度≧98.5%)がSigma-Aldrichから入手可能であり、(+)-リモネンおよび(-)-リモネンまたは両エナンチオマー(Sigma-Aldrich製品番号62118、62128、89188)ならびに(+)2-カレン(Sigma-Aldrich製品番号21984)、アルファ-フェランドレン(Sigma-Aldrich製品番号77429、純度≧95%)およびアルファ-テルピネン(Sigma-Aldrich製品番号88473、純度≧95%)も同様である。
【0059】
ジンギベレン、エピジンギベレン(7-エピ-ジンギベレン)、R-クルクメンおよびS-クルクメンは、Millar(1998、J. Nat. Proc. 61:1025〜1026)によって記載され、本明細書の他で開示されるように、例えば化学修飾およびその後の蒸留によって、ショウガ油から単離することもできる。ベータ-フェランドレンなどの化合物は、新規に化学的に合成することができる(例えば、US4,1361,26参照)。
【0060】
細菌(例えば、大腸菌)または真菌(例えば、ピキア(Pichia)またはハンゼヌラ(Hansenula)などの酵母)などの組換え微生物中で、上記モノテルペンおよび/またはセスキテルペン化合物を生産することも可能である。好ましくは増殖培地中に化合物を分泌する微生物中の1つまたは複数の遺伝子の発現は、作られる純粋な化合物(他のモノテルペンおよびセスキテルペンを含まない)のより大量でより安価な生産を可能にする。例えば、WO2006/065126は、テルペンのヒドロキシル化を記載しており、それによって、例えば、チトクロムP450酵素を発現している微生物宿主中で適当な基質からリモネンを生産することができる。大腸菌中でのモノ-およびジ-テルペンの生産を記載しているReiling他(Biotechnol. Bioeng. 2004、87:200〜212)も参照されたい。
【0061】
化合物および/またはこれらの1種または複数種を含むまたはから成る組成物は、揮発性物質/気体、液体、半固体(例えば、ゲルビーズ、クリーム、泡等)の形態で、または固体(顆粒、粉末等)として存在し得る。したがって、これらは、好ましくはコナジラミの行動に何の効果も有さない、溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール)またはエーテル(例えば、ペンタンエーテル)または別の有機溶媒(例えば、ヘキサン)などの不活性担体を含む。アルコールまたはアルコール混合物またはエーテルなどの溶媒に溶解させる代わりに、油性担体を使用してもよい。これらの親油性化合物の水への混和性は低いまたはないので、水は一般的にはあまり適した担体ではない。化合物の処方は、標的位置に容易に施用され、昆虫の行動が影響を受ける(および好ましくは施用区域の昆虫の分布が有意に影響を受ける)方法であるべきである。忌避剤化合物および/または組成物は、一実施形態では、複数の作物植物に施用される一方で、誘引剤組成物は、好ましくは作物植物とは異なる場所、例えば作物列の間に間作された、ボーダートラップ作物またはトラップ列に施用される。例えば、圃場または温室中の植物に施用する場合、気体、液体(例えば、空気と接触して蒸発する)または半固体形態が好ましく、それらは空中の植物表面上に噴霧または撒布することができる。固体製剤は、顆粒、粉末、緩徐放出マトリクス(例えば、有効成分を囲み、その成分をゆっくり放出するコーティングまたはマトリクス)等を含む。有効成分および担体(例えば、溶媒)は、揮発性物質がゆっくり放出されるゴム隔膜(市販されている)などの固体容器中に入れてもよい。
【0062】
しかしながら、本発明による誘引剤製剤および忌避剤製剤の両方に関して、本明細書では全ての種類の製剤が予想される。当業者は、以下の要素を考慮に入れて、適当な製剤の作り方が分かるだろう:1.有効成分のパーセント、2.処理および混合の容易さ、3.ヒトおよび標的でない動物(昆虫有害生物捕食者または寄生生物など)にとっての安全性、4.製剤が施用される環境(圃場、温室等)、5.標的昆虫(例えば、コナジラミおよび/または他の昆虫有害生物)の習性、6.保護すべき作物およびその作物へのあり得る傷害。一般に、植物殺有害生物剤に適した製剤は、本発明による忌避剤または誘引剤製剤を作るために使用する、または適用することができる。製剤の種類は、以下を含む:
a)有効成分が油または別の溶媒中に溶解しており、噴霧のために製剤が油または水と混合され得るように乳化剤が添加されている、液体製剤である、乳剤(Emulsified Concentrates)(EC)製剤。
b)高濃度の有効成分を含み、一般的に、油または水と混合することにより希釈され、または希釈なしに直接使用される、高濃縮液剤、スプレー濃縮剤およびULV(超低容量濃縮剤)。
c)一般的に、さらなる希釈を必要とせず、適当な施用用量の有効成分を含む、低濃縮液剤または油剤。
d)水または油にあまり溶解しない有効成分のためにフロアブル液剤を作ることができる。有効成分は、粉砕された、または微粉形態の固体である。次いで、微細な固体は、液剤中に懸濁される(懸濁化剤、補助剤および/または他の成分とともに)。
e)有効成分を溶媒(例えば、水または有機溶媒)に溶解することにより作られる、液体製剤である溶剤または水溶性濃縮剤。
f)それによって有効成分が小さなカプセルまたはコーティング内に含まれ、次に例えば液体中に懸濁させる(例えば、噴霧するために)ことができる、カプセル剤。
g)乾燥して施用される粉剤。これらは、例えば、微粉砕され、任意選択でタルク等の他の粉末と混合された固体としての有効成分を含む。
h)有効成分が入れられた乾燥した多孔性物質から作られた粒剤。多くの場合、粒剤は、土壌に施用されるが、植物に施用することもできる。
i)乾燥した粉末状製剤である水和剤。粉剤と対照的に、この製剤中には、湿潤剤および/または分散剤が存在する。多くの場合、水和剤は、粉剤よりも高濃度の有効成分、例えば15%〜95%の有効成分を含む。
j)水和剤に類似しているが、溶液に完全に溶解する水溶剤。
k)粒剤のように見えるが、水和剤と同じ方法で使用される、乾燥フロアブル。
l)液化された揮発性物質またはガス状製剤である、液化ガスおよび/または燻蒸剤。特定の揮発性物質は、例えば、圧力下で液体を形成することができ、特定の条件下、例えばいったん圧力を放出すると、再度蒸気(揮発性物質)に変わる。蒸発した有効成分(揮発性物質)は、放出時に所望の効果を有する。この製剤は、土壌中、または防水シート(キャンバス)などの被覆の下、または(比較的)閉鎖環境中へ放出され得る。(液化またはガス状)有効成分は、蒸発した有効成分を大気中へゆっくり放出するカプセル、ゲル、または他のマトリクス中に組み込んでもよい。
m)ベイト剤は、1種または複数種の本発明による誘引剤化合物を含む製剤を指す。任意選択で、ベイト剤は、他の誘引剤、あるいは標的昆虫種および/または他の昆虫種に毒性の化合物でさえも含んでよく、例えば、ベイト剤は、摂取されると、または接触すると、標的昆虫(および/または他の昆虫)、例えばコナジラミを死滅させる1種または複数種の殺昆虫剤を含んでもよい。このような毒素は、それ自体として誘引剤製剤に含まれている必要はないが、別の成分として標的区域または標的植物に施用することもできる(例えば、誘引剤化合物または組成物の前、後、または共に)。このような組成物のキットも本発明の実施形態である。
n)エアロゾルは、例えば、缶の中に、圧力下で保管されるガス状製剤である。
【0063】
上記l)の製剤が、本明細書では特に好ましい。
【0064】
特に、哺乳動物病原媒介者を忌避する場合、製剤は、昆虫忌避剤DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミドまたはN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)に使用されるものと同様であってもよい。DEETは、4〜100%に及ぶ有効成分を含む、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、クリーム、ローション、泡、スティック、制御放出製剤(タンパク質に被包された)などの200を超える製剤で入手可能である。揮発性昆虫忌避剤製剤および緩徐放出製剤については、US4,774,082およびUS6,180,127も参照されたい。
【0065】
同様に、揮発性除草剤(例えば、揮発性エステル除草剤)に一般に使用される製剤が本明細書で使用され得る。例えば、土壌汚染を減らすための、揮発性の、葉に施用される、ダラポンの製剤を記載している、US3,725,031またはDay、Weed Research、1巻、3号、177〜183ページ、1961年9月を参照されたい。
【0066】
任意選択で、栄養剤、浸透圧剤、1つまたは複数の適当な担体、賦形剤、乳化剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、補助剤、揮発性物質、安定剤などの他の成分を有効成分(忌避剤または誘引剤)に添加してもよい。「担体」は、有効成分と結合するが、それ自体は有意な生物活性を有さない、少なくともコナジラミなどの標的昆虫種に対しては有さない化合物を指す。好ましくは、使用する担体はまた、植物、例えば宿主作物に負の生物学的効果を有さない、すなわち担体は、好ましくは植物毒性を有さない、または最小限の植物毒性しか有さない。担体は、気体、液体(例えば、揮発性液体)または固体であってよく、担体は水、油、油を含む溶液(例えば、乳濁液)、溶媒等であってもよい。
【0067】
最終的な誘引剤または忌避剤組成物中の有効成分の割合は、有効成分の活性、製剤の種類、施用の場所および様式等に応じてかなり変化し得る。したがって、有効成分の割合は、少なくとも約1%、2%、5%、10%、30%、50%、70%、80%、90%、95%またはさらには100%の組成物体積当たりの重量であり得る。
【0068】
したがって、1種または複数種の有効成分(1種または複数種の忌避剤あるいは1種または複数種の誘引剤)を含む組成物は、例えば、噴霧により、または担体からの気化により、処理する植物または区域に施用することができる。また、忌避剤組成物は、植物の間に(例えば、担体上に)配置することができる一方で、1種または複数種の誘引剤を含むまたはから成る組成物は、好ましくはトラップ中/上または保護すべき植物の近くの場所中/上に配置される。
【0069】
本発明による組成物は、当技術分野で既知の他の昆虫誘引剤または忌避剤、殺昆虫剤などの他の生物活性化合物を含んでもよい。また、標的昆虫の異なる段階は、ある化合物に対して別の化合物よりも感受性であり得、有害生物種の異なる段階を標的にする化合物(本発明による、および/または当技術分野で既知の化合物)を組み合わせてもよい。同様に、異なる有害生物種は、有害生物種の各々のための、有効量の化合物(本発明による、および/または当技術分野で既知の化合物)を組み合わせることにより標的にしてもよい。
【0070】
忌避剤または誘引剤組成物は、殺昆虫剤、除草剤(処理する宿主植物が除草剤耐性である場合、例えばトランスジェニック除草剤耐性植物)、殺真菌剤、および/または成長促進剤、薬害緩和剤、肥料などの他の生物活性成分等をさらに含んでもよい。
【0071】
昆虫誘引剤組成物は、生存および/または再生昆虫を死滅させるために1種または複数種の殺昆虫剤を含んでもよい。また、標的昆虫(例えば、コナジラミ)を誘引する昆虫フェロモンを誘引剤組成物に添加してもよい。同様に、標的昆虫の捕食者の誘引剤が組成物中に含まれてもよい。
【0072】
好ましくは、組成物は、植物(例えば、宿主作物またはトラップ植物)に負の生物学的効果を有する物質を含まない、すなわち、組成物は、宿主-および/またはトラップ-植物種に対する植物毒性を好ましくは有さない、または最小限しか有さない。個々の成分または組成物の植物毒性は、その成分または組成物を植物組織、例えば葉に接触させることにより容易に試験することができる。また、組成物は、好ましくは、コナジラミの捕食者などの非標的昆虫に対する負の効果を有さない。
【0073】
標的有害生物、例えばコナジラミを誘引または忌避するための有効量が組成物中に存在すべきである。適当な量は、以下のTable 2(表2)に与えられる(特に、コナジラミについてであるが、それに限定されない)。適当な量は、少なくとも約0.5、1、2、3、4または5μgの24時間に放出される揮発性化合物から少なくとも約10、20、30、50、100、200、300、400、500、600、800、900または1000μg以上の24時間当たりに放出される揮発性化合物、あるいはそれに相当する量に及び得る。適当な量は、処理する1kg生物体量(生体重)当たりの量として表すこともでき、例えば、少なくとも24時間当たり1kg生物体量当たり約0.01mgの化合物から少なくとも24時間当たり処理する1kg生物体量当たり約60、70、80、90または100mgの化合物に及び得る。例えば、有効量は、少なくとも約0.05mg/kg/24h、0.1、0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、15、20、30、40、50mg/kg/24hまたはそれ以上を含む;非限定的な例についてはTable 2(表2)も参照されたい。他の昆虫有害生物については、異なる量が必要とされ得るが、それは例えばバイオアッセイを使用して、過度の実験なしに試験することができる。したがって、有効量は、過度の実験なしに、実験的に決定することができる。有効量は、製剤および施用区域に応じて変わり得る。温室(閉鎖環境)は、圃場環境よりも少ない量を必要とし得る。重要なことに、忌避剤を含むまたはから成る組成物と接触している植物組織を実際にプロービングするコナジラミなどの標的有害生物の数は、未処理対照植物と比較して有意に減少し、それによって処理植物へのウイルス伝染およびウイルス被害は減少する。
【0074】
【表2】
【0075】
一実施形態では、1種または複数種の忌避剤化合物を含むまたはから成る組成物は、異なる、非誘引(忌避)野生トマト植物で測定した濃度および/または化合物比率をシミュレートするが(以下のTable 3(表3)参照)、このような植物中に天然で見られる他のテルペンおよび/またはテルペン化合物を欠く。
【0076】
【表3】
【0077】
明らかに、例えば、他の昆虫または昆虫宿主の組み合わせのために、上記Table 2(表2)およびTable 3(表3)に提示されるもの以外の量および比率を適当に使用することができる。最も適当な量および/または比率は、例えば、バイオアッセイ(以下参照)または圃場アッセイを使用して、過度の負担なしに当業者により決定され得る。
【0078】
1種または複数種の有効成分の量が、標的有害生物(例えば、コナジラミ)を誘引または忌避するための「有効量」であるかどうかは容易に試験することができる。例えば、コナジラミおよび/または他の標的有害生物について、以下のバイオアッセイを使用してもよい。明らかに、当業者により同様のバイオアッセイが考案され得る。
【0079】
適当なバイオアッセイは、例えば、以下のステップを含む:
(a)複数の宿主植物、例えばトマト栽培品種を供給するステップ;
(b)植物を直接的または間接的に、1種もしくは複数種の化合物、および/または1種もしくは複数種の濃度の化合物もしくは化合物混合物(もしくはこれらを含む組成物)と接触させるステップ。間接的な接触は、植物の上または近くの、化合物を添加したゴム隔膜(例えば、Sigma Aldrich Z167258)または濾紙ディスクなどの支持材を含むことによってもたらされ得る。例えば、1種または複数種の揮発性化合物を載せたゴム隔膜は、植物(「処理」植物)に添加され得るが、対照(対照または基準植物、または「未処理」植物)には添加されない。基準植物は、対照組成物(例えば、有効成分を欠く)に接触させられるか、化合物/組成物に接触させられないかのいずれかである;
(c)標的昆虫を処理および未処理植物の区域へ解放し、その昆虫を植物に定着させるステップ;好ましくは、標的昆虫は、解放自体からの処理または未処理/対照に対する偏りが生じないように解放される;また、昆虫の行動に影響を及ぼし得る他の手がかり(視覚的手がかりなど)は減らされまたは排除されて、他の手がかりにより処理および未処理/対照植物への昆虫の着地、プロービングおよび/または摂食が影響を受けない(または可能な限り少ない影響しか受けない)ようにすることが好ましい;
(d)解放後、1つまたは複数の時点で(例えば、解放後10、20、40、60分またはそれ以上で)、昆虫の植物嗜好性を分析し、処理植物上の昆虫の数と未処理植物上の数とを比較するステップ。
【0080】
1種または複数種の化合物が、誘引剤または忌避剤効果を有するかどうか、あるいは誘引剤もしくは忌避剤化合物または化合物混合物の最も至適な濃度は何であるかを決定するために、データは好ましくは統計学的に分析される。コナジラミに適したバイオアッセイについては実施例も参照されたい。
【0081】
昆虫種に応じて、実験の設定はわずかに変わり得る。例えば、コナジラミについては、好ましくは少なくとも50、100、150またはそれ以上のコナジラミが、処理植物と未処理/対照植物との間の選択肢を与えられる。
【0082】
本発明による使用
本発明は、昆虫忌避剤組成物、好ましくは吸汁性昆虫有害生物忌避剤組成物、最も好ましくはコナジラミ忌避剤組成物の調製のための、任意選択でS-クルクメン、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種と組み合わせた、R-クルクメンの使用を提供する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、昆虫誘引剤組成物、好ましくは吸汁性昆虫有害生物誘引剤組成物、最も好ましくはコナジラミ誘引剤組成物の調製のための、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種の使用を提供する。
【0084】
なおさらなる実施形態では、カ(例えば、マラリアカ、黄熱病カなど)などの哺乳動物昆虫有害生物を忌避または誘引するための上記忌避剤または誘引剤組成物の1種または複数種の使用が本明細書で提供される。他の哺乳動物有害生物は、例えば、スコットランドヌカカまたは他の吸血ユスリカを含む。このような組成物、特に忌避剤は、その効果を発揮するために、例えば、皮膚、衣服、布地、屋外または屋内の区域等に施用するために、スプレー、クリーム、溶液等として使用することができる。特に、有効量のTable 1(表1)の化合物の1種または複数種を含むまたはから成るカ忌避剤および/またはユスリカ忌避剤が提供される。皮膚もしくは衣服、またはヒトもしくは動物が居住を望む環境(例えば、エアロゾルとして)、または担体もしくは支持材への施用後、カ(特にメスのカ)の数は、未処理対照と比較して有意に減少する。
【0085】
1種または複数種の化合物および/または組成物の有効量を決定する方法は、植物有害生物に使用するものと類似している。例えば、昆虫をY字管に入れ、Yのいずれかの分枝に沿って風上に移動させる選択アッセイを含む、類似のアッセイを使用することができる。1つの管に、忌避剤または誘引剤化合物を入れ、特定の選択をする昆虫の数を数える。インビボ試験は、
(a)複数の哺乳動物被験体を供給するステップ;
(b)その被験体に、直接的または間接的に、1種もしくは複数種の化合物および/または1種もしくは複数種の濃度の化合物もしくは化合物混合物(もしくはこれらを含む組成物)を接触させるステップ。間接的な接触は、化合物または組成物を衣類に添加することによって行うことができる。基準被験体は、対照組成物(例えば、有効成分を欠く)に接触させられるか、化合物/組成物に接触させられないかのいずれかである;
(c)標的昆虫を処理および未処理被験体(またはその一部)(例えば、腕または手)の区域へ解放し、その昆虫を定着させるステップ;
(d)解放後の1つまたは複数の時点で(例えば、解放後5、10、20、40、60分またはそれ以上で)、昆虫の咬傷の数を分析し、処理被験体上の昆虫の数と未処理被験体上の数とを比較するステップ。
を含み得る。
【0086】
したがって、植物昆虫有害生物について記載した本発明の部分を、哺乳動物昆虫有害生物に類似の方法で適用し、「植物昆虫有害生物」が言及されているところに、明らかな変形により、哺乳動物昆虫有害生物が類似して包含される(例えば、支持材は、好ましくは衣類、またはスプレー容器、ローション容器などの容器である)。
【0087】
組成物は、以下でさらに記載する方法にしたがって使用され得る。
【0088】
誘引剤化合物または組成物を含む支持材
別の実施形態では、本発明は、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)誘引剤組成物を含む支持材の調製のための、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種の使用を提供する。本発明による誘引剤化合物または組成物を含む支持材はまた、それ自体本発明の実施形態である。支持材は、好ましくは、誘引剤組成物が上にまたは中に配置される容器、ホルダーまたは他の固体支持材である。固体支持材は、既知の昆虫トラップなどのトラップであってもよい。あるいは、固体支持材は、上記のような揮発性物質ディスペンサーであってもよい。支持材はまた、トラップ植物、または複数のトラップ植物、またはその部分(例えば、葉)であってもよい。好ましいトラップ植物は、標的害虫(例えば、コナジラミ)に感受性であり、標的昆虫有害生物種の天然の宿主である植物種および/または変種である。例えば、栽培トマト種を使用することができ、それによって、誘引剤は空中の植物材料上に施用される。あるいは、誘引剤を含む材料(例えば、ゴム隔膜または濾紙)を植物、または植物の間に添加して、組成物の潜在的植物毒性効果を避けるようにしてもよい。化合物または組成物を支持材に添加することによって、化合物または組成物と植物組織との間の直接接触が避けられる。
【0089】
任意の支持材を使用することができる。したがって、固体支持材は、例えば、濾紙(例えば、スポッティング、噴霧または液浸により、その上に誘引剤が施用される)、またはゴム隔膜などのゴムもしくは合成材料であってもよい。固体支持材は、プラスティック、固体合成物質、ポリマー、金属、ガラス、紙、炭素、生物学的物質(例えば、木材、コルク等)などから作られてもよい。固体支持材は、管、ディスク、ブロック、箱、キューブ、ビーズ、(ナノ)粒子または顆粒その他の形態であってもよい。適当なゴム隔膜は、例えば、Sigma-Aldrich(Z167258)から入手可能である。半固体支持材は、ゲル(例えば、寒天)、泡またはクリームであってもよい。
【0090】
忌避剤化合物または組成物を含む支持材
なお別の実施形態では、本発明は、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)忌避剤組成物を含む支持材の調製のための、R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種の使用を提供する。本発明による忌避剤化合物または組成物を含む支持材はまた、それ自体本発明の実施形態である。支持材は、忌避剤組成物が上にまたは中に配置される容器または他の固体支持材であってもよい。固体支持材は、より長期間にわたって、揮発性物質をゆっくり放出する、ゲルまたは他のマトリクスまたは容器などの緩徐放出材料であってもよい。例えば、固体支持材は、上記のような揮発性物質ディスペンサーであってもよい。支持材はまた、作物植物または複数の作物植物であってもよい。好ましい作物植物は、標的昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から保護されるべき植物種および/または変種である。例えば、トマト、ワタ、ウリ科(Curcubitaceae)、ジャガイモなどの栽培宿主種は、空中の植物材料上に、または作付された圃場の中、例えば、圃場中に規則的な間隔で配置された担体もしくはディスペンサーに忌避剤を施用することにより、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から保護することができる。忌避剤を含む支持材(例えば、ゴム隔膜または濾紙)を1種もしくは複数種の作物植物、または植物の間に添加して、組成物の潜在的植物毒性効果を避けるようにしてもよい。化合物または組成物を支持材に添加することによって、化合物または組成物と植物組織との間の直接接触が避けられる。
【0091】
誘引剤支持材について上記のように、任意の支持材を使用することができる。
【0092】
以下の本明細書の方法も参照されたい。
【0093】
本発明による化合物または組成物を使用した昆虫有害生物を忌避および/または誘引する方法
(a)R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、7-エピ-ジンギベレンおよび/またはジンギベレンから選択される1種または複数種の忌避剤化合物を含むまたはから成る組成物を供給するステップ;と
(b)前記組成物を、1回または複数回、複数の作物植物に添加するステップと
を含む、栽培植物へ
の昆虫有害生物の発生を減らし、害虫を防除する方法、すなわちコナジラミおよび/または他の害虫などの害虫を忌避および/または誘引する方法が提供される。
害虫を防除する方法は、
(c)ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンから選択される1種または複数種の誘引剤化合物を含むまたはから成る組成物を供給するステップと
(d)前記組成物を、1回または複数回、1つまたは複数のトラップ植物またはトラップ材に添加するステップと
をさらに含んでもよい。
【0094】
(a)および(c)の組成物は、本明細書で上に記載している。任意選択で、ステップ(a)および(b)は、数回繰り返してもよい。同様に、任意選択で、ステップ(c)および(d)は、数回繰り返してもよい。作物の保護が望まれる場合、誘引剤組成物は忌避剤組成物とは別に使用してもよく、逆もまた同様であり、または例えば、作物から昆虫を忌避し、昆虫を、例えば作物の近くに配置され得る、もしくは作物に点在させられ得るトラップに誘引するために両方を一緒に使用してもよいことは明らかである。したがって、本質的に、3つの方法が提供される:(a)昆虫有害を忌避することによる作物の保護、(b)作物植物から昆虫有害生物を引き離すことによる作物の保護、および(c)作物への昆虫発生を減少させるための両戦略の同時の使用。
【0095】
ステップ(b)において、組成物を、例えば、植物上への噴霧、個々の植物もしくは葉への噴霧、または個々の葉へのスポット施用、燻蒸、液体、固体もしくは半固体製剤の複数の植物もしくは植物の部分への手動配置、散布等により、作物植物またはその部分(と接触して)へ直接添加してもよい。したがって、植物材料と化合物または組成物との間の「直接的接触」(すなわち物理的接触)を使用することができる。
【0096】
あるいは、別の実施形態では、作物植物と化合物または組成物との間の「間接的接触」を使用し、それによって、組成物または化合物は、最初に支持材(または担体)と接触させられ、次いで、前記支持材(前記化合物または組成物を含む)が1つもしくは複数の植物または植物の部分上、あるいは植物の近く、例えば列の間、植物の間、または植物が成長しているまたは植物を栽培する土壌中/上のいずれかに配置される。
【0097】
宿主作物の上または近くの忌避剤施用の最もよい場所、ならびに施用の頻度は、作物の構造および生理学、作物齢、製剤、区域内の昆虫有害生物発生などのいくつかの因子に依存する。非常に急速に揮発する製剤については、標的昆虫有害生物、例えば、コナジラミを効果的に忌避するためにより頻繁な施用が必要とされ得る。同様に、大量の降雨がある区域では、空中施用は、より急速に洗い落とされ得るので、1回もしくは複数回のさらなる施用、またはより短い施用間隔が必要とされる。当業者は、発生を十分に減少させるために最適な施用頻度を容易に決定することができる。したがって、施用は、1日、1週間もしくは1ヶ月に1回もしくは複数回、またはさらには作物の生育期当たり1、2、3もしくは4回と少なくてもよい。一実施形態では、本発明による1種または複数種の忌避剤化合物を含む組成物は、作物の種まきまたは植え付け前に作物を栽培する区域に施用して、実生の出芽前に発生を既に減少させるようにすることもできる。
【0098】
したがって、適当な施用頻度は、例えば、作物の植え付けと収穫との間に1、2、3、4回またはそれ以上としてもよい。作物は、閉鎖環境(例えば、温室またはトンネル)、半閉鎖環境(例えば、キャンバスに覆われた圃場作物)または開放環境で栽培することができる。本発明による誘引剤および/または忌避剤組成物から利益を得る作物は、当然、本明細書に記載されている化合物および組成物によりその行動が変化させられる感受性昆虫有害生物の天然宿主である作物である。そのため、一実施形態では、作物植物は、吸汁性昆虫、特にコナジラミの宿主である植物種である。温室コナジラミ、Trialeurodes vaporariorumは、大半の野菜の種および観賞植物などの非常に広範な宿主種範囲を有する。シルバーリーフコナジラミおよびサツマイモコナジラミ(Bemisia argentifoliiおよびタバココナジラミ)もまた、大半の野菜の種を含む非常に広範な宿主範囲を有する。
【0099】
好ましい実施形態では、作物植物は、トマト植物、好ましくは栽培トマトである。作物植物は、遺伝子組換え植物、すなわち、例えば、除草剤耐性遺伝子を含むトランスジェニックまたはシスジェニック植物であってもよい。
【0100】
忌避剤を含む組成物の施用は、コナジラミなどの吸汁性昆虫有害生物の成虫、および処理作物における植物組織プロービングの減少のために、好ましくは有意にウイルス伝染を減少させる。そのため、未処理作物と比較した処理作物でのウイルス伝染の有意な減少は、処理の有効性の基準として使用することもできる。あるいは、任意の本発明による組成物の最も効果的な投与量および施用体制を決定するために、標的昆虫(例えば、コナジラミ)の数を数える/推定することができ、または作物の収量および/または品質を、処理作物と未処理作物との間で比較することができる。
【0101】
同じ作物に2回以上同じ忌避剤組成物を施用する必要はないが、処理の変更も予想され、処理の組み合わせも同様である。例えば、忌避剤の1種を含む(またはから成る)組成物による処理は、他の忌避剤化合物の任意の1種を含む(またはから成る)組成物による処理に変更する、またはこれと組み合わせてもよい。同様に、忌避剤の2種を含む(またはから成る)組成物による処理は、他の忌避剤化合物の任意の1種を含む(またはから成る)、または2種の他の忌避剤化合物等から成る組成物による処理に変更する、あるいはこれと組み合わせてもよい。したがって、ステップ(a)で、いくつかの異なる組成物を供給し、次いでそれを同時に共に、または連続的に、ステップ(b)で施用してもよい。
【0102】
同様に、ステップ(a)で供給され、ステップ(b)で施用される、製剤および/または有効成分の濃度は、同一である必要はない。例えば、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)発生またはその前兆に応じて、例えば作物の生育期中、有効成分の濃度を増加させるまたは減少させることができる。
【0103】
しかしながら、一実施形態では、ステップ(a)で供給され、ステップ(b)で施用される有効成分は、化学的に同一であり、好ましくは同一の製剤および/または濃度でもある。
【0104】
好ましい実施形態では、有効成分は、より長期間にわたって、組成物からゆっくり放出される。そのため、好ましい製剤は、緩徐放出製剤または制御放出製剤である。このような製剤は、(マイクロ)カプセル化、積層ストリップ、ポリ塩化ビニルストリップ、ゴムペレット等を使用した、例えば、殺有害生物剤について当技術分野で既知の方法、あるいは緩徐放出および/または制御放出のための他の方法を使用して作ることができる。例えば、Barlow,F(1985、Chemistry and formulation. In:Pesticide Application:Principles and Practice.編:P T Haskell.Oxford Science Publications:Oxford. 1〜34ページ)、Dent, D R(1995、Integrated Pest Management. Chapman&Hall:London、Glasgow、Weinheim、New York、Todyo、Melbourne、Madras)、Rombke, J&J M Moltmann(1995、Applied Ecotoxicology. Lewis Publishers:Boca Raton、New York、London、Tokyo)またはWare, G W(1991、Fundamentals of Pesticides. A self-instruction guide. Thomsom Publications:Fresno USA)を参照されたい。
【0105】
忌避剤による作物の処理は、誘引剤またはベイト組成物による、作物の近くの植物または区域の処理と組み合わせてもよい。あるいは、誘引剤またはベイト組成物の使用は、それ自体で昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から作物を保護するのに十分である場合もあり、このような場合には作物自体の処理は必要でない。
【0106】
ステップ(a)および(b)についての上記記載はまた、ステップ(d)では植物が作物植物である必要はなく、作物植物と同じ種である必要さえない(そうであってもよいが)という違いを有するが、ステップ(c)および(d)にも当てはまる。トラップ植物は、任意の植物種であってよいが、好ましくは、昆虫有害(例えば、コナジラミ)に天然で感受性の植物である。
【0107】
植物は、作物から昆虫を誘い出し、それによって作物への発生を減少させるために、作物の近くで栽培してもよい。例えば、ストリップ状またはボーダー状のトラップ植物を作物植物の1つまたは複数の縁の周りに栽培してもよい。あるいは、作物植物およびトラップ植物を平行な列で栽培してもよい。明らかに、トラップ植物を作物植物内の別の区域、例えば、作物圃場の中央に栽培することも可能である。
【0108】
同じことが、作物圃場もしくは温室栽培植物の近くまたは中に散剤され得るトラップ材にも当てはまる。トラップ植物またはトラップ材は、作物植物からコナジラミを誘い出すために作物植物に十分近いことが好ましい。トラップ材は、本発明による組成物を添加する伝統的な昆虫トラップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への野生トマトヘッドスペースの処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。空:空の担体;pe:ペンタン:エーテルを含む担体;pennelli:S. pennelliの総ヘッドスペース(24時間にわたって回収した)を含む担体。バーは、3回の実験の平均値を表す(+/-SE)。
【図1B】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への野生トマトヘッドスペースの処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。空:空の担体;pe:ペンタン:エーテルを含む担体;typicum:S. habrochaites f. typicumの総ヘッドスペース(24時間にわたって回収した)を含む担体。バーは、3回の実験の平均値を表す(+/-SE)。
【図2A】4種のS.lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。p-シメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2B】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ガンマ-テルピネンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2C】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ベータ-ミルセンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2D】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。p-シメン、ガンマ-テルピネンおよびベータ-ミルセンの混合物による処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2E】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。アルファ-テルピネンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2F】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。アルファ-フェランドレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2G】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。7-エピ-ジンギベレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2H】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。R-クルクメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2I】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ジンギベレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2J】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。S-クルクメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図3】遺伝子移入(introgression)ライブラリースクリーニングを示す図である。
【図4】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物へ添加したテルペンの効果を示す(対照設定の%として表す)図である。a)Z. officinalisジンギベレン、b)Z. officinalis S-クルクメン、c)S. habrochaites 7-エピ-ジンギベレン、d)S. habrochaites R-クルクメン。バーは、8回の実験の平均値を表す(±SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下の非限定的な実施例は、本発明の異なる実施形態を説明する。実施例において特に指示しない限り、当技術分野で既知の標準的なプロトコルが使用される。
【0111】
(実施例)
(実施例1)
トマトヘッドスペース揮発性物質およびコナジラミ嗜好性
1.1材料および方法
2005年10月にSanta Maria del Aguila (Almeria, Spain)の共通の温室でタバココナジラミの個体群を収集した。PCR解析により、この個体群は、Q-バイオタイプに属することが同定された。個体群を、人口気候室(温度28℃、16時間光)中、トマトおよびキュウリ植物の混合上で飼育した。特定の植物(処理、または未処理/対照-処理)に対する昆虫の嗜好性を自由選択バイオアッセイで試験した。
【0112】
コナジラミは、宿主を見つけるための視覚的手がかりならびに臭いの両方を使うことが知られている。トマトがメッシュカバーの下に配置された「ブラインド」アッセイで視覚的手がかりを取り除くことにより、タバココナジラミが揮発性物質の手がかりを使用して異なるトマトを区別することができることが本発明者らによって示された。
【0113】
コナジラミの宿主嗜好性に対するトマト植物の香気の効果を試験するために、より忌避性の(本発明者らによって以前確立された)野生トマト植物系統種LA716(S. pennelli)、PI27826(S. habrochaites f. typicum)およびPI126449(S.habrochaites f. glabratum)の情報化学物質の完全なブレンドを含むサンプリングされたヘッドスペースを、非忌避性/誘引性植物(cv Moneymaker)に施用した。種子は、1)C.M.Rick Tomato Genetic Resource Center(TGCR)、Department of Plant Sciences、University of California-Davis、One Shields Avenue、Davis、CA95616、アメリカ合衆国、または2)アメリカ合衆国農務省-Agricultural Research Service、Plant Genetic Resources Unit、Cornell University、630 West North Street、Geneva、NY14456、アメリカ合衆国のいずれかから得た。
【0114】
揮発性物質は、3週齢の野生トマト植物を、16時間の日中期間を含む24時間、大きなデシケーターの気候部屋(climatised room)に置くことにより回収した。デシケーターは、400ml分−1でカーボンフィルターを通した圧力空気で換気した。揮発性物質は、Kant他(2004)にしたがって、300mgのTenax樹脂を含むサンプリングチューブに捕捉した。次に、揮発性物質を、内部標準としてBAを含む1mlペンタン:ジエチルエーテル(4:1)でTenaxから溶離した。50℃でOpticインジェクションポート(ATAS GL International、Zoeterwoude、NI)に1μlの溶離液を注入することにより同定を行い、4℃/sの速度で275℃まで加熱した。分流は2分間で0ml、次いで25ml分−1であった。化合物は、キャリアガスとしてヘリウムを使用して、キャピラリーDB-5カラム(10×180μm、フィルム厚さ0.18μm;Hewlett Packard)に3分間40℃で、次いで30℃分−1で250℃までで分離した。カラムフローは2分間3ml分−1で、その後1.5ml分−1であった。溶離する化合物の質量スペクトルは、70eVで発生し(200℃でのイオン源)、20スペクトル秒−1の収集速度で、1597eVにおいて90秒の収集遅延で、時間飛行型MS(Leco Pegasus III、St.Joseph、MI、USA)に回収した。
試料同定および定量化は既知濃度の合成外部標準に基づいた(Fluka、MI、USA)。各々のトマト系統種を6回測定した。
さらに、タバココナジラミを使用したバイオアッセイで使用するための濾紙カード(Whatman、直径25mm)を含浸させるために1mlの試料(トマト揮発性物質を含むペンタン-ジエチルエーテル)を使用した。
【0115】
タバココナジラミを使用した自由選択実験を温室区画(28℃、RH65%)で行った。光は、250W/m2の放射で高圧ナトリウムランプ(Hortilex Schreder SONT PIA GP 600W)により供給した。タバココナジラミバイオタイプQ(アルメリア個体群)およびバイオタイプB(labculture Netherlands)の嗜好性行動を、異なる野生トマト(LA1777、LA2560、GI1560)およびS.lycopersicum(cv Moneymaker)を使用したバイオアッセイで比較した。植物は、互いに等距離で、土壌で満たしたプラスティックで被覆した木製トレー(170×100×20cm)の内側に入れた。200匹のコナジラミ成虫を捕捉し、5分間4℃に置き、次いで設定の中央に解放した。解放の10分および20分後、各々の植物上のコナジラミの数を記録した。タバココナジラミBとQとの間に異なる行動は見られなかったので、アルメリア(Q)個体群で全てのさらなるバイオアッセイを行った。
ヘッドスペース(総ヘッドスペースまたは単一化合物)を使用したバイオアッセイについては、4つの鉢植えのトマト植物(S. esculentum cv Moneymaker)を、50cmの距離で、正方形の設定に入れた。150匹のコナジラミ成虫を解放し、上記のように記録した。選択したヘッドスペース成分の忌避性への効果を試験するため、合成標準(FLUKA)を、10枚の濾紙ディスク(Whatman、直径25mm)または10個のゴム隔膜(Sigma Aldrich、Z167258)のいずれかに施用した。装填する前に、隔膜を24時間CH2Cl2中に置き、3日間空気乾燥させた(Heath他、1986)。揮発性物質を含む濾紙ディスクまたは隔膜を、金属線で4種の植物の1つに取り付けた。処理トマトの位置は無作為化した。揮発性物質を植物上に配置した5分後、コナジラミを解放した。各々の成分について、少なくとも8回の反復を行った。空の担体の3植物と比較して、化合物を常に同じ植物に添加した設定で処理を行った。揮発性物質による各々のアッセイの前に、同じ背景での比較を可能にするために同じ位置にある未処理設定中の4植物で実験を行った。
【0116】
1.2結果
結果を図1に示す。これらのアッセイは、より忌避性のトマト系統種の香気を構成する総ヘッドスペース成分を植物のヘッドスペースに添加した場合、その背景の臭いと比較して、トマト栽培品種Moneymakerが60%まで誘引性が少なくされ得ることを示した(図1)。ヘッドスペースを溶離した溶媒であるペンタン-エーテルは、忌避/誘引に何の効果も有さないことが示された(図1参照)。
【0117】
(実施例2)
タバココナジラミの忌避性に関与するヘッドスペース成分の決定
2.1材料および方法
16種の野生型および5種の栽培トマトの集合を一緒にした(Table 4(表4))。これらの栽培品種の各々について、コナジラミ忌避性のレベルは、開放系温室における自由選択バイオアッセイで無作為化した六角形設定で確立した。各々の実験では、300匹の新しい土着のコナジラミ成虫(アルメリア個体群)を、6種の無作為に選択した植物の中央に解放した。解放の20分後、各々の植物上のコナジラミの数を数えた。各々の設定を3回繰り返し、その後2種の最も忌避性の少ない植物を2種の新しい試験植物と交換した。段階的連続的試験によって、最終的に、明確に差次的な忌避性を有する7つのクラスに順位づけできた(Table 4(表4))。
【0118】
16種の野生トマトおよび5種の栽培トマト(Table 4(表4))のヘッドスペースを回収した。非かく乱3週齢トマト植物を40Lデシケーターに移した。上記のように揮発性成分を捕捉することにより、16時間の日中期間を含む24時間、ヘッドスペースをサンプリングした。GC-MS分析は、トマト系統種の各々について揮発性成分の独特の「フィンガープリント」をもたらした。各々の系統種は6回サンプリングした。
【0119】
2.2統計的分析
統計的分析では、同定したトマトヘッドスペースの成分とバイオアッセイで測定したコナジラミ忌避性の順位との間の相関が得られた。2つのアプローチ、段階的線形回帰分析およびMANOVAを使用して、8種の揮発性物質がコナジラミ忌避性と関連性があると同定されたが、24種の他の揮発性化合物は、忌避または誘引と関連性がないとして排除された。
【0120】
2.3結果
【0121】
【表4】
【0122】
Table 4(表4)から、栽培トマト(cv)のヘッドスペースは、コナジラミにして最低の忌避剤/最大の誘引剤である一方で、野生トマト系統種のヘッドスペースは、より忌避性であることが理解し得る。
【0123】
コナジラミの忌避または誘引に関与する化合物を同定し、Table 5(表5)(表6)に示す。ベータ-ミルセン、p-シメン、アルファ-フェランドレン、アルファ-テルピネンおよびガンマ-テルピネンは、S. pennelliに関連する忌避剤化合物である一方で、R-クルクメンおよび7-エピジンギベレンは、S. habrochaites(former typicum)をより非誘引性にするのに関与すると思われる。ベータ-フェランドレン、リモネンおよび2-カレンは、より誘引性の栽培S. lycopersicum植物と有意に関連する。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
(実施例3)
選択した成分およびこれらの成分の混合物を使用したバイオアッセイ
3.1材料および方法
ベータ-フェランドレン、ジンギベレンおよびクルクメンは、市販されていなかったので、合成しなければならなかった。Millar(1998、J. Nat. Prod 61、1025)の後、ジンギベレンおよびS-クルクメンは、ショウガ油から、7-エピジンギベレンおよびR-クルクメンは、S. habrochaites(PI27826)葉材料から単離した。
タバココナジラミによる、操作されたヘッドスペースを有するおよび有しない宿主嗜好性は、自由選択アッセイで調査した。各々の設定で、4種の栽培トマト(cv. Moneymaker)を上記のように試験した。揮発性物質を使用したバイオアッセイのために、ゴム隔膜(Sigma Aldrich Z167258)を24時間CH2Cl2で抽出し、3日間空気乾燥させた。揮発性物質の所望のブレンドを100μlヘキサン中ゴム隔膜に添加した。純粋な成分または純粋な成分の混合物を使用したバイオアッセイを上記のように行った。
【0128】
3.2結果
結果を図2に示す。
【0129】
7種の候補成分とタバココナジラミの行動との間の相関を明確に確認するため、宿主嗜好性を純粋な成分を使用したバイオアッセイで分析した。所望の純粋な揮発性化学物質(のブレンド)を、上記のように、濾紙カード上のMoneymaker裏面に添加した。外来性の揮発性物質が存在しない状態で、4つのMoneymaker植物の各々の上で再捕捉されたタバココナジラミの割合は、予想された25%から有意に逸脱しなかった(データ不掲載)。しかしながら、植物のうちの1つを10μgのp-シメンで処理した場合、この植物の誘引のレベルは、未処理設定の同一の植物と比較して、有意に減少した。処理植物を訪れるコナジラミの割合は、平均して44%減少した(p<0.001)(図2a)一方で、未処理植物は、タバココナジラミを宿す数が増加した。一般に、合成成分がタバココナジラミへの忌避効果を有する場合、空の担体の植物は、ますますより誘引性になった(図2)。他方で、ベータ-ミルセンによる処理は、コナジラミの行動に影響を及ぼさなかった(p=0.4798)(図2c)。有意な行動への効果は達成されなかったが、(p=0.102)(図2b)、ガンマ-テルピネンのMoneymaker裏面への施用は、忌避性を向上させるようであった。これら3種の成分の合計が、p-シメン単独よりも大きな効果をもたらすのかどうかを評価するために、系統種LA2560中で見られたのと同じ比率(1:12:3)のp-シメン:ガンマ-テルピネン:ベータ-ミルセンの混合物を試験した。これは、平均して45%の植物への訪問の減少をもたらした(p<0.001)(図2d)。遺伝子移入系統分析に由来する、追加のモノテルペン、ベータ-フェランドレンおよびガンマ-テルピネンの両者は、トマトの誘引性を有意に減少させた(それぞれ、p=0.030および0.014)(図2e、f)。最終的に、セスキテルペンである、トマト由来の7-エピ-ジンギベレンならびにその酸化生成物R-クルクメンおよびジンギベレンとその酸化生成物S-クルクメンを試験した。R-クルクメンおよび7-エピ-ジンギベレンの両者も明確な忌避効果を有した(p<0.001)(図2g〜j)。
【0130】
(実施例4)
トマト揮発性物質のタバココナジラミの応答との直接的関連付け
4.1材料および方法
記載の化学物質のパラフィンオイル(Uvasol、Merck)中10〜3倍希釈液への触角の応答性を確認するために触角電図法(electroantennography)(EAG)を使用した。濾紙(2cm2;Schleicher&Schuell、Dassel、Germany)の小片を、100μlの標準希釈液またはパラフィンオイルのみ(対照)に浸漬した。濾紙を10mlのガラスシリンジ(Poulten&Graf GmbH、Wertheim、Germany)に挿入した。触角に対して5mlの空気を吹きかけることにより、再現性のある刺激を供給した(Schutz他、1999)。各々の標準希釈液についてEAG応答を記録した。パラフィンオイルに対する応答は、負の対照とみなし、全ての報告されたEAG測定値から減じた。
【0131】
(実施例5)
遺伝子移入ライブラリーにおけるバイオアッセイ
S. pennelli系統種で見つかった興味深い忌避レベルのために、その後、遺伝子移入ライブラリー(親植物S. pennelli LA716×S. lycopersicum cv Moneyberg)をバイオアッセイでスクリーニングした(図3)。感受性親植物と比較して誘引が有意に減少したいくつかの系統を選択した。これらの選択した系統ならびにMoneyberg親植物のヘッドスペース組成物を同定した。Moneybergヘッドスペースと比較して、選択した系統においてはα-フェランドレン、α-テルピネンおよびp-シメンの濃度が有意に高かった。
【0132】
(実施例)
タバココナジラミ(サツマイモコナジラミ)は、1889年に有害生物昆虫として初めて記載され、世界中で園芸および農業作物に対する大変な脅威であり続けている。タバココナジラミは、非常に広範な宿主範囲を有し、新たに表れたバイオタイプBおよびQは、その地理的分布を拡大し続けている。被害は、直接的摂食およびコナジラミのみつによる真菌増殖から深刻な問題となるウイルス伝染に及ぶ。タバココナジラミは、100種を超える異なるウイルスを媒介し、その中で壊滅的なベゴモウイルス(Jones、2003)は、莫大な経済的被害を構成する収量の全体的な減少および総作物損失をもたらす。ウイルスの突然変異率が高いため、持続可能なウイルス耐性の育種は問題が多いままである。その上、従来のコナジラミ発生の制御は、急速に出現する殺有害生物剤のために困難である。コナジラミの生物学的防除の成功は、わずかな作物種に制限されてきた。タバココナジラミは、現在、世界で最も発生的で適応性の有害生物種の1つと位置付けられている。どのようにコナジラミが正確に宿主の位置を突き止めるのかは知られていないが、視覚に加えて、コナジラミは、植物によって放射される揮発性物質からの嗅覚の手がかりを使用しているようである。我々は、トマト植物によって放射される揮発性物質に対するコナジラミの行動応答を調査し、選択した揮発性物質に対する電気生理学的応答を決定した。
2種のセスキテルペン、ジンギベレンおよびクルクメンがコナジラミの忌避に推定的に関与していることを明らかにするために、揮発性ヘッドスペース分析と組み合わせて、5種の栽培トマト変種(Solanum lycopersicum)および16種の野生Solanum系統種を使用した自由選択バイオアッセイを、多重線形回帰およびMANOVA分析に供した。次に、我々は、効果的な殺昆虫剤および忌避剤として記載されてきた(Maluf他、2001;Zhang他、2004)ショウガ(Zinger officinalis)油から、ジンギベレンを精製した。予想外に、我々の実験設定において、タバココナジラミは、ジンギベレンのこの調製物によって忌避されるように見えなかった(図4a)。しかしながら、同濃度で、Solanum habrochaites(PI127826)毛状突起から精製した7-エピ-ジンギベレンは、コナジラミ訪問の数を減少させるのに非常に有効であった(図4c)。
Solanum habrochaites(PI127826)から単離したジンギベレンは、Diels-Alder付加物に転換することにより精製した(Millar、1999)。この付加物の構造は、NMRおよびX線解析により立証した(補足データ)。この慎重な解析は、Solanum habrochaites(PI127826)が7-エピ-ジンギベレンを含有し、ショウガ油がそのジアステレオマーであるジンギベレンを含有するというCoates他(1994)の結論を確認した。
空気に曝露すると、7-エピ-ジンギベレンおよびジンギベレンは、それぞれ、R-およびS-クルクメンに急速に転換された。その後、精製したクルクメンエナンチオマーを選択バイオアッセイに使用した。明らかに、タバココナジラミは、SolanumのR-クルクメン(図4d)、7-エピ-ジンギベレンの誘導体により忌避されるだけであったが、対照的に、Zinger officinalisのS-クルクメンは忌避するように見えなかった(図4b)。さらに、全4化合物はコナジラミの触角によって認識されるが、首尾一貫して、R-クルクメンで最高の感度が記録されることが、触角電図法(Schutz他、1999;Weissbecker他、2004;Thakeow他、2008)によって示された(Table Z(表8))。
【0133】
【表8】
【0134】
我々のデータは、植物のヘッドスペース中の揮発性物質が、宿主植物についてコナジラミがする選択に明確に影響を及ぼし、昆虫が視覚的手がかりのみに基づいて選択しないことを示している。タバココナジラミの触角は、特定のエナンチオマーとジアステレオマーを区別することができる非常に特異的な受容体を有するようである。特に、セスキテルペンの生合成はよく研究されてきたので、これは作物植物のヘッドスペースを変化させることによってタバココナジラミの行動を操作する可能性を広げる。
【0135】
ジンギベレン、7-エピジンギベレン、(S)-クルクメンおよび(R)-クルクメンの単離、精製および構造決定
Millar1)によって記載されているように、ショウガ油(Natura Sanat B.V.)からジンギベレン2を単離した。2つのジアステレオマー1aおよび1bの4:1混合物としてDiels-Alder付加物を単離した。塩基加水分解の後、純粋な2を得ることができた。
【0136】
【化1】
【0137】
凍結組織のヘキサン抽出により、Solanum habrochaites(PI127826)の葉および茎材料から7-エピジンギベレン5を単離し、上記のように精製した。我々の2および5のNMR-スペクトルとBreedenおよびCoates2)によって与えられたスペクトルとの比較は、構造についての絶対的確実性をもたらさなかった。Diels-Alder付加物4aは、結晶化によって精製することができ、それによってX線解析により炭素4および7における立体化学の明確な構造的証拠を得ることが可能になった。
【0138】
【化2】
【0139】
BreedenおよびCoates2(1994)によって記載されたように、Pd/C (パラジウム炭素)を使用してベンゼン中で加熱することにより、化合物2および5を脱水素化した。精製後、クルクメン3および6が得られた。両方の単離したクルクメンは10〜20%の二重結合異性体、おそらく、それぞれ7aおよび7bを持っていた(1H NMRにおいて、δ4.67および4.64で2×br.s)。
【0140】
実験
ジンギベレン Diels-Alder付加物1
ショウガ油をクーゲルロール蒸留した。沸点60〜100℃/1mmの画分から、2.0gをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解した。10mlテトラヒドロフラン中の0.88g PTAD(4-フェニル-1,2,4-トリゾリン-3,5-ジオン)の溶液を、周囲温度で10分にわたって滴加した。オレンジ色の反応混合物を真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/8〜15%アセトン)により精製して、ジアステレオ異性体1aおよび1bの4:1混合物から成る無色の油826mgを得た。
主要異性体:
1H NMR: 7.3〜7.5 (m, 5H)、5.99 (dt, J=5.7, 1.8, 1H)、5.10 (br.t. J=7.0, 1H)、4.95 (dd, J=5.7, 2.5, 1H)、4.72 (dt, J=3.1, 2.2, 1H)、2.33 (ddd, J=12.8, 8.8, 3.5, 1H)、2.09 (m, 3H)、1.95 (d, J=1.7, 3H)、1.72 (s, 3H)、1.64 (s, 3H)、0.89 (d, J=6.5, 3H)。
13C NMR: 156.4, 156.1, 140.8, 131.8, 131.6, 129.0, 128.0, 125.4, 124.1, 120.6, 55.1, 53.6, 41.3, 36.5, 34.3, 28.6, 25.7, 24.9, 19.4, 17.7, 16.3
微量異性体:
いくつかの特徴的なシグナル:
1H NMR: 6.11〜6.13 (m)、1.03 (d, J=6.8)。
13C NMR: 124.4, 123.5, 55.2, 53.2, 40.8, 35.4, 33.9, 28.2, 24.8, 17.4
【0141】
ジンギベレン2
1aおよび1bの混合物350mgを、アルゴン下で、エタノール中2M KOH 11mlに溶解し、3時間還流した。冷却後、水33mlを添加した。ペンタンで混合物を4回抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を真空中で除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン)で精製し、その後100℃/1mmでクーゲルロール蒸留して、純粋な2を122mg得た。
1H NMR: 5.78 (ddd, J=9.7, 2.5, 1.7 Hz, 1H)、5.64 (dd, J=9.7, 3.1, 1H)、5.46 (br.s., 1H)、5.11 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.23〜2.31 (m, 1H)、1.80〜2.15 (m, 4H)、1.72 (dd, J=2.0, 1.8, 3H)、1.69 (四重線. J=1.3, 3H)、1.61 (d, J=0.7, 3H)、1.52〜1.60 (m, 1H)、1.36〜1.45 (m, 1H)、1.13〜1.26 (m, 1H)、0.88 (d, J=6.8, 3H)。
13C NMR: 131.20, 131.08, 131.05, 127.86, 124.82, 120.39, 38.03, 36.02, 34.24, 25.94, 25.70, 24.42, 21.09, 17.65, 16.54。
【0142】
(S)-クルクメン3
2ml乾燥ベンゼン中の28mgジンギベレン2の溶液をアルゴン下、全体で10%Pd/C 18mgを使用して還流し、混合物を20時間密閉管中、150℃で加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン)に供して、約7%の7aとともに9mgの3を得た。
3 1H NMR: 7.07〜7.12 (m, 4H)、5.10 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.66 (六重線, J=6.9, 1H)、2.33 (s, 3H)、1.85〜1.92 (m, 2H)、1.68 (br.s, 3H)、1.56〜1.65 (m, 2H)、1.54 (br.s, 3H)、1.23 (d, J=7.0, 3H)。
13C NMR: 144.6, 135.1, 131.4, 128.9, 126.9, 124.5, 39.0, 38.4, 26.2, 25.7, 22.5, 21.0, 17.7
微量異性体7aのいくつかの特徴的なシグナル:
1H NMR: 4.67 (br.s)、4.64 (br.s)、1.94〜1.99 (m)。
13C NMR: 126.8, 38.0, 29.7。
【0143】
7-エピジンギベレン Diels-Alder付加物4
粗製トマト植物抽出物を、シリカゲルプラグ上ペンタンでろ過した。得られたほぼ純粋な(>90%)7-エピジンギベレン5(449mg)を、1について記載したようにPTADと反応させた。フラッシュクロマトグラフィー後、異性体4aおよび4bの4:1混合物208mgを得た。結晶化(ジイソプロピルエーテル)により、白色小板として4a 140mgを得た。融点107〜109℃。
1H NMR: 6.01 (dt, J=5.7, 1.8, 1H)、5.08 (t 七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、4.94 (dd, J=7.7, 2.7, 1H)、4.72 (td J=3.3, 2.3, 1H)、2.35 (ddd, J=13.0, 8.7, 3.5, 1H)、1.24 (ddd, J=13.1, 4.5, 2.5, 1H)、2.00〜2.13 (m, 2H)、1.83〜1.94 (m, 1H)、1.40〜1.50 (m, 1H)、1.08〜1.20 (m, 1H)、1.95(d, J=1.8, 3H)、1.71 (d, J=1.1, 3H)、1.62 (d, J=0.8, 1H, 3H)、0.98〜1.04 (m、1.00にsをもつ4H) 3)
13C NMR: 156.4, 156.2, 140.9, 131.8, 131.6, 129.0, 128.1, 125.4, 124.2, 120.4, 55.0, 53.7, 41.2, 37.1, 33.7, 29.1, 25.7, 25.2, 19.3, 17.7, 17.3。
【0144】
7-エピジンギベレン5
4aおよび4bの4:1混合物306mgを、2について記載したように加水分解した。無色の油として、127mgの純粋な5を得た。αD20°-73.3°(CHCl3 c=0.65)。
1H NMR: 5.80 (dt, J=9.8, 2.0, 1H)、5.68 (dd, J=9.7, 3.1, 1H)、5.46 (br.s, 1H)、5.11 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.23〜2.31 (m, 1H)、1.88〜2.13 (m, 4H)、1.72 (dd, J=3.9, 1.7, 3H)、1.69 (d J=1.2, 3H)、1.61 (s, 3H)、1.38〜1.54 (m, 2H)、1.14〜1.23 (m, 1H)、0.90 (d, J=6.7, 3H)。
13C NMR: 131.2, 131.1, 129.7, 128.2, 124.8, 120.6, 38.4, 36.0, 34.1, 26.3, 25.9, 25.7, 21.1, 17.7, 16.7。
【0145】
(R)-クルクメン6
57mgの7-エピジンギベレン5を、3について記載したように脱水素化した。26mgの6を、約20%の7bを含む無色の油として得た。
1H NMRおよび13C NMR:3と同じ。
【0146】
参照および注釈:
1.Millar, J.G. J. Nat. Prod. 1998、61、1025。
2.Breeden, D.C.;Coates R.M. Tetrahedron 1994、11123
3.C7およびC14のプロトンの1H-シグナルは、同じ化学シフトを有しているので、CH3-14は一重線として現れる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業、特に植物の昆虫有害生物(insect pest)防除の分野に関する。コナジラミなどの昆虫有害生物を忌避または誘引するのに適した、1種または複数種の揮発性炭化水素化合物を含む化合物および組成物が提供される。誘引剤または忌避剤化合物/組成物を製造および使用する方法、ならびに圃場および/または温室における昆虫の発生(infestation)および被害を制御する方法も提供される。本組成物は、植物昆虫有害生物、特に腹吻亜目の吸汁性昆虫を防除するのに適している。腹吻亜目の昆虫は、キジラミ、コナジラミ、アブラムシ、コナカイガラムシおよびカイガラムシを含み、共通の特性、すなわち食物源としての植物樹液の利用を共有する。防除することができる他の植物昆虫有害生物は、アザミウマ、ダニ(例えば、ハダニ)およびヨコバイである。好ましい実施形態では、コナジラミの発生および作物植物のコナジラミ被害を制御するための方法および組成物が提供される。異なる実施形態では、化合物および/または組成物は、カ科、特にハマダラカ属(約400種が存在し、ガンビアハマダラカ群(A. gambiae complex)の種など、その30〜40種がマラリアを媒介する)、イエカ属および/またはヤブカ属に属する種の昆虫を忌避するために使用することができる。また、例えば、Culicoides impunctatus(高地ユスリカまたはスコットランドヌカカ)などの、脊椎動物の血液を吸うサシバエ属、Forcipomyia属(ラシオヘレア属)およびLeptoconops属など、ヌカカ科の仲間であるヌカカは、本発明により誘引または忌避することができる。
【背景技術】
【0002】
Bemisia属のコナジラミ(サツマイモコナジラミ)およびTrialeurodes属のコナジラミ(温室コナジラミ)は、世界中で作物植物の主要有害生物であり、特に、摂食中の植物ウイルスの媒介のために(すなわち、これらは「ウイルスベクター」として働く)経済的損失をもたらす。タバココナジラミ(Bemisia tabaci)は、60種を超える異なるジェミニウイルス(Geminiviridae)に加えていくつかのクリニウイルスを媒介することができ、これらのウイルスの多くは、アフリカキャッサバモザイクウイルス(ACMV)、マメゴールデンモザイクウイルス(BGMV)、マメ矮化ウイルス、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)、トマトモットルウイルス(TMV)などのベゴモウイルス(Begomovirus)に属する。トマト、マメ、ウリ科植物、ジャガイモ、ワタ、キャッサバおよびサツマイモなどの熱帯作物および温帯作物の両方が発症する。現在まで、主な防除戦略は、成虫、幼虫および卵を死滅させることを目指した殺昆虫剤の施用である。殺昆虫剤施用の相当な費用に加えて、この実施は重い環境への影響を有する。その上、タバココナジラミは、有効成分に対する耐性が出現するために殺昆虫剤による防除が困難である。
【0003】
殺昆虫剤施用を減らすために、圃場栽培作物および温室栽培作物の両方において、コナジラミに誘導される作物被害および損失を制御する新しい方法が必要とされている。文献から、揮発性成分が昆虫の行動に直接的に影響を及ぼし得ることが知られている(例えば、Bruce他、2005、Trends Plant Sci.10:269〜74)。コナジラミによるウイルス伝染を制御する1つの方法は、作物植物の上もしくは近くに施用することができる昆虫忌避剤、および/または作物から昆虫有害生物を誘い出すために近くの区域に施用することができる昆虫誘引剤を同定することである。誘引剤および/または忌避剤を同定する際の問題は、ある種を誘引することが知られている化合物は、別の種の昆虫を忌避し得るということである。そのため、多くの場合、感覚認知および摂食行動が異なり得る種にわたって化合物または組成物の誘引剤または忌避剤特性について結論を出すことはできない。例えば、コナジラミは、維管束組織に飲み口をつける前に、表皮表面を口唇で軽くたたくことにより(機械受容器および化学受容器を使用して)宿主植物を調べる(プロービング)。ここでの決定は、例えば、恒常的に産生される忌避剤によって、しかしおそらくは葉表面の特性によっても影響される。嗜好性は、プロービング中に起こる行為およびウイルス伝染と直接関係する。ウイルス伝染を避けるために、プロービングを防ぐまたは少なくとも著しく減少させるべきである。このことは、プロービングが起こった後でのみコナジラミを死滅させる化合物では、ウイルスが既に運ばれてしまっているので作物防御剤としては適していないことを意味する。さらに、コナジラミの昆虫捕食者は、コナジラミ個体群を減少させるのに有用であるので、忌避剤または誘引剤によって影響を及ぼされるべきではない。
【0004】
コナジラミ防除に適した化合物および/または組成物を同定する際の別の問題は、天然起源の植物のヘッドスペース組成物および植物の腺毛の内容物が、異なる濃度の大量の異なる化合物を含んでおり、それらは種の間および種内の個々の植物系統または系統種間で変わるという事実にある。たとえ、昆虫有害生物に特定の効果を有する植物のヘッドスペース組成物が全体として同定されたとしても、どの成分または成分の組み合わせが、誘引剤または忌避剤として適当であり得るのかを同定することは容易なことではなく、現在まで、コナジラミおよび他の吸汁性昆虫有害生物に適した忌避剤または誘引剤は存在しない。
【0005】
Zhang他(J. Econo Entomolog 2004、97、1310〜1318ページ)は、シルバーリーフコナジラミ(B. argentifolii)の忌避剤としてショウガ油の0.25%溶液を試験した。非選択試験で、わずか10.2から16.6%の間の成虫コナジラミしか処理植物に定着せず、植物上に産まれた卵の数には差が見られなかった。ショウガ油の濃度の増加は、植物毒性と関連し、それによってコナジラミ忌避剤としてのショウガ油の効果的使用を妨げた。
【0006】
EP0583774は、葉の昆虫防除剤の植物毒性を減少させるための植物油の使用を記載しており、それによって任意の種類の昆虫防除剤を使用することができる。
【0007】
腺毛は、トマト属(現在、ナス属として分類される)の葉および茎に顕著であり、セスキテルペン炭化水素、セスキテルペン酸、メチルケトンおよび糖エステルなどの大量の二次化合物を産生することが示されてきた。いくつかの研究は、腺毛の密度と、トウモロコシイヤーワーム(Heliothis zea)またはコロラドハムシなどの植物有害生物に対する抵抗性を互いに関連づけようとしてきた(KauffmanおよびKennedy、1989、J Chem Ecol 15、1919〜1930;Antonious、2001、J Environ Sci Health B36、835〜848およびAntonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631)。また、L.hirsutum f.glabratumの腺毛中に貯蔵されているメチルケトンである2-ウンデカノンおよび2-トリデカノンは、それぞれコロラドジャガイモハムシの4齢幼虫および成虫タバココナジラミに対する毒性効果を示すことが示された(Antonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631)。
【0008】
AntoniousおよびKochhar(J Environm Science and Health B、2003、B38:489〜500)は、天然殺昆虫剤生産のためのセスキテルペン炭化水素の生産に使用することができる野生トマト系統種を選択することを目的として、野生トマト系統種からジンギベレンおよびクルクメンを抽出し、定量化した。しかしながら、このような化合物が、コナジラミ忌避剤または誘引剤として使用することができるかどうかについては開示されなかった。ジンギベレンは、コロラドハムシ抵抗性およびビートアワヨトウ抵抗性と関連し、クルクメンは殺虫効果と関連したことが言及されている。野生トマト種L.hirsutum f.typicumは、シルバーリーフコナジラミに抵抗性であると言及されているが(Heinz他、1995、88:1494〜1502)、毛状突起に基づく植物抵抗性には、当然、種々の原因があり、この論文からはコナジラミを誘引または忌避する特性を有する化合物の存在または同一性に関して推論することはできない。
【0009】
Kostyukovsky他(Acta Horticulturae 2002、576、347〜358)は、10〜20mg/lの濃度で切り花の有害生物(例えば、タバココナジラミ)に施用した植物精油の燻蒸剤(シネオール、サフロール、シソ科もしくはウイキョウからの精油、またはM-ブロミド)が照射の2〜4時間後に大量死を引き起こすことを発見した(Table 5(表5)(表6)参照)。
【0010】
Freitas他(Euphytica 2002、127:275〜287)は、L. esculentum(栽培トマト、低ジンギベレン)と野生L.hirsutum var. hirsutum(高ジンギベレン)との間の種間交雑における、セスキテルペンであるジンギベレンならびにI、IV、VIおよびVII腺毛型の両方を産生するための遺伝子の遺伝を研究した。F2植物中のジンギベレン含量は、相関によってシルバーリーフコナジラミ抵抗性に寄与し、ジンギベレン、2-トリデカノンおよび/またはアシル糖が同時に高濃度の植物を育種することはより高レベルのコナジラミ抵抗性に寄与することが示された。しかしながら、有害生物抵抗性のための育種は、開発中の有害生物忌避剤または誘引剤組成物とは基本的に異なる。それ自体としてまたは他の化合物と組み合わせての、コナジラミ忌避剤としての合成または精製ジンギベレンの使用についての示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP0583774
【特許文献2】US4,1361,26
【特許文献3】WO2006/065126
【特許文献4】US4,774,082
【特許文献5】US6,180,127
【特許文献6】US3,725,031
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Bruce他、2005、Trends Plant Sci.10:269〜74
【非特許文献2】Zhang他、J. Econo Entomolog 2004、97、1310〜1318ページ
【非特許文献3】KauffmanおよびKennedy、1989、J Chem Ecol 15、1919〜1930
【非特許文献4】Antonious、2001、J Environ Sci Health B36、835〜848
【非特許文献5】Antonious他、2005、J Environ Sci Health B40:619〜631
【非特許文献6】AntoniousおよびKochhar、J Environm Science and Health B、2003、B38:489〜500
【非特許文献7】Heinz他、1995、88:1494〜1502
【非特許文献8】Kostyukovsky他、Acta Horticulturae 2002、576、347〜358
【非特許文献9】Freitas他、Euphytica 2002、127:275〜287
【非特許文献10】Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、833〜882ページ、1997
【非特許文献11】Kirt-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、834〜835ページ、1997
【非特許文献12】Millar他、1998、J. Nat. Prod 61:1025〜1026
【非特許文献13】Agarwal他、2001、Pest Man. Sci.、57:289〜300
【非特許文献14】Colby他、1998、PNAS 95:2216〜2221
【非特許文献15】Chang他、2007、Nat. Chem. Biol.、3:274〜277
【非特許文献16】Peng他、2004、J. Chromatogr.A.、1040:1〜17
【非特許文献17】Eikani他、2006、J. Food Eng.、80:735〜740
【非特許文献18】Durling他、2006、Food Chem.、101:1417〜1424
【非特許文献19】Millar、1998、J. Nat. Proc. 61:1025〜1026
【非特許文献20】Reiling他、Biotechnol. Bioeng.2004、87:200〜212
【非特許文献21】Day、Weed Research、1巻、3号、177〜183ページ、1961年9月
【非特許文献22】Barlow, F、1985、Chemistry and formulation.In:Pesticide Application:Principles and Practice.編:P T Haskell.Oxford Science Publications:Oxford.1〜34ページ
【非特許文献23】Dent,D R、1995、Integrated Pest Management.Chapman&Hall:London、Glasgow、Weinheim、New York、Todyo、Melbourne、Madras
【非特許文献24】Rombke,J&J M Moltmann、1995、Applied Ecotoxicology. Lewis Publishers:Boca Raton、New York、London、Tokyo
【非特許文献25】Ware,G W、1991、Fundamentals of Pesticides.A self-instruction guide.Thomsom Publications:Fresno USA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、10種のテルペン(またはテルペン類似体)が吸汁性昆虫有害生物、特にコナジラミの忌避性/誘引性に関連することを発見した。これらの化合物は、有効な昆虫忌避剤および/または昆虫誘引剤組成物を作るために、単独でまたは組み合わせて使用することができる。R-クルクメン(セスキテルペン)および任意選択で、
- ミルセン、特にベータ-ミルセン(モノテルペン)、
- シメン、特にパラ-シメン(モノテルペンに関連する炭化水素)、
- テルピネン、特にガンマ-テルピネン(モノテルペン)および/またはアルファ-テルピネン(モノテルペン)、
- 7-エピ-ジンギベレン(セスキテルペン)、
- ジンギベレン(セスキテルペン)、および/または
- フェランドレン、特にアルファ-フェランドレン(モノテルペン)
の1種または複数種、を含むまたはから成る昆虫忌避剤組成物(特に、作物植物の吸汁性昆虫有害生物、好ましくはコナジラミを忌避する)、ならびにこれらおよびこれらを含むディスペンサーまたは他の容器または支持材を使用する方法が提供される。
【0014】
以下の3種の化合物:フェランドレン、特にベータ-フェランドレン(モノテルペン)、リモネン(D-および/またはL-異性体)(モノテルペン)および/または2-カレン(モノテルペン)の1種または複数種、を含むまたはから成る昆虫誘引剤組成物(特に、作物植物の吸汁性害虫、好ましくはコナジラミを誘引する)、ならびにこれらおよびこれらを含むディスペンサーまたは他の容器または支持材を使用する方法がさらに提供される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、上記忌避剤もしくは誘引剤化合物または組成物は、カ科(双翅目)および/またはヌカカ科の昆虫、特にカなどの刺激性でヒトおよび動物に病気を潜在的に媒介する吸血昆虫を誘引または忌避するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般的定義
「植物昆虫有害生物または植物有害生物」または「昆虫有害生物」または「植物有害生物種」は、植物または植物の部分への発生により、作物および/または観賞植物(宿主植物種)に発生および被害をもたらす昆虫種である。「発生」は、区域内(例えば、圃場または温室)、宿主植物の表面上、または宿主植物に接触し得る何かの上、または土壌中の大量の有害生物(pest organisms)の存在である。有害生物は、吸汁性有害生物(以下参照)を含むが、アザミウマ、セミ、ダニ(例えば、ハダニなど)およびヨコバイなどの他の有害生物も含む。
【0017】
「哺乳動物昆虫有害生物」または「哺乳動物病原媒介者」は、本明細書では、吸血/刺咬昆虫であり、マラリアなどのヒトおよび/または哺乳動物の病気の媒介者として潜在的に働くことができる(しかし、必ずしもそうではなく、単なる刺激性であってもよい)双翅目の昆虫を指す。本明細書で「昆虫有害生物」と言及する場合、文章の一部を、それらが吸血/刺咬昆虫であることを除いては、植物有害生物と類似した方法で、動物、特に哺乳動物を攻撃する昆虫にも準用することが理解される。
【0018】
「吸汁性昆虫有害生物」は、(昆虫綱の半翅目の)腹吻亜目の植物有害生物、すなわちキジラミ、コナジラミ、アブラムシ、コナカイガラムシおよびカイガラムシを含み、共通の特性、すなわち食物源としての植物樹液の利用を共有する昆虫有害生物を含む。
【0019】
「アブラムシ」は、本明細書では、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、マメクロアブラムシ(A. fabae)、ダイズアブラムシ(A. glycines)、キョウチクトウアブラムシ(A. nerii)、A. nasturtii、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ニワウメクロアブラムシ(M. cerasi)、スミレコブアブラムシ(M. ornatus)、Nasonovia属(例えば、レタスヒゲナガアブラムシ(N. ribisnigri))、Macrosiphum属、Brevicoryne属などのアブラムシ科(Aphididae)の植物昆虫有害生物を含む。
【0020】
「媒介昆虫」は、植物にウイルスを運び、媒介することができる昆虫である。哺乳動物病原媒介者の文脈では、媒介昆虫は、寄生虫であるマラリア原虫をヒトに、または糸状虫をイヌに媒介することができるカなどの、哺乳動物を攻撃し、哺乳動物に病気を潜在的に媒介することができる昆虫である。
【0021】
「コナジラミ(whiteflyまたはwhiteflies)」は、Bemisia属の種、特に、タバココナジラミおよびシルバーリーフコナジラミ(タバココナジラミのバイオタイプBとしても知られている)、ならびに/またはTrialeurodes属の種、特にT. vaporariorum(オンシツコナジラミ)およびT. abutinolea(バンデドウイングドコナジラミ)を指す。本明細書では、タバココナジラミのバイオタイプQおよびBなどの全てのバイオタイプ、ならびに卵、幼虫、蛹および成虫などの任意の発育段階が含まれる。
【0022】
「忌避剤」化合物または組成物は、1つまたは複数の昆虫有害生物種(例えば、コナジラミ)を忌避する、および忌避剤で処理していない同じ区域および/または表面と比較して、施用した区域および/または表面で昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)によりもたらされる発生および/または被害を有意に減少させる(忌避剤施用後、1つまたは複数の時点で測定される)、1つまたは複数の化合物を指す。「有意な減少」は、少なくとも5ナンバー%(5 number%)、好ましくは少なくも10%、15%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上(100%)の減少を指す。昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)によりもたらされる発生および/または被害は、種々の方法、例えば、植物の健康を評価することにより、または例えば、昆虫有害生物数、産卵された昆虫卵、組織の昆虫プロービング、ウイルス伝染もしくは発生(incidence)、収量損失、植物組織被害、または他の任意の昆虫発生/被害の直接的もしくは間接的症状等を評価することにより測定することができる。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、効果を評価および/または定量化するために、例えば、昆虫の数、昆虫咬傷または病徴を使用することができる。
【0023】
「誘引剤」化合物または組成物は、1つまたは複数の昆虫有害生物種(特に、コナジラミなどの吸汁性昆虫有害生物)を誘引し、誘引剤なしの同じ区域および/または表面と比較して、施用した区域および/または表面で有害生物(pest organisms)(例えば、コナジラミ)の数を有意に増加させる(誘引剤施用後、1つまたは複数の時点で測定される)、1種または複数種の化合物を指す。「有意な増加」は、少なくとも5ナンバー%、好ましくは少なくも10%、15%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の増加を指す。誘引剤を植物組織に施用した場合、誘引剤の効果は、種々の方法、例えば、誘引剤の施用後、1つまたは複数の時点で昆虫の数を評価することにより、または昆虫発生/被害に関連する組織被害または他の症状を評価することにより測定することができる。誘引剤を非生物材料/区域(トラップ、固体支持材等)などの他の支持材に施用した場合、処理材料/区域上の昆虫の数対未処理の材料/区域上の昆虫の数が評価される。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、効果(誘引)を評価および/または定量化するために、例えば、昆虫の数を使用することができる。
【0024】
「有効量」の忌避剤化合物または組成物は、未処理植物と比較して処理植物上の昆虫有害生物により(特に、コナジラミなどの1つまたは複数の吸汁性昆虫有害生物により)もたらされる発生および/または被害を有意に減少させるのに十分な量を指す。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、有効量の忌避剤化合物または組成物は、上に定義した昆虫を有意に忌避するのに十分な量を指す。
【0025】
「有効量」の誘引剤化合物または組成物は、未処理区域または表面と比較して処理区域内または処理表面上の昆虫有害生物(特に、コナジラミなどの1つまたは複数の吸汁性昆虫有害生物、および/またはその段階、例えば産卵された卵)の数を有意に増加させるのに十分な量を指す。哺乳動物昆虫有害生物の文脈では、有効量の誘引剤(attractant)化合物または組成物は、上に定義した昆虫を有意に誘引するのに十分な量を指す。
【0026】
「有効成分」は、生物学的に活性である製剤中の成分、例えば媒介昆虫/昆虫有害生物忌避剤または誘引剤を指す。「不活性成分」または「不活性」は、有効成分の担体などの、生物学的に活性ではない(少なくとも標的媒介昆虫に関して)成分、例えば、水、油または油性担体、溶媒等を指す。
【0027】
「溶媒」は、固体、液体または気体溶質を溶解し、溶液、分散液または乳濁液をもたらす液体である。
【0028】
「トラップ」は、有効量の誘引剤化合物または組成物を施用する材料を指す。一般に、トラップは、昆虫がそのトラップに向かって、またはその中/その上に誘い込まれるように、誘引剤化合物または組成物を施用する複数の植物(トラップ作物またはトラップ植物)または容器(例えば、昆虫トラップ)または表面または液体であり得る。誘引剤化合物または組成物は、「ベイト剤」とも呼ばれ得る。
【0029】
「殺昆虫剤」または「殺虫性」は、(忌避剤と対照的に)昆虫の1つまたは複数の段階を死滅させるまたは不活性化する(殺卵剤、殺幼虫剤、殺成虫剤等)、すなわち昆虫の分布よりもむしろ死亡率に影響を及ぼす化合物または組成物を指す。
【0030】
「昆虫有害生物捕食者」または「昆虫有害生物寄生生物」は、本明細書では、昆虫有害生物を食べるまたは昆虫有害生物に寄生する生物を指す。例えば、「コナジラミ捕食者」または「寄生生物」は、本明細書では、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirskii)、クサカゲロウ、種々の甲虫等、または寄生スズメバチ(EncarsiaおよびEretmocerus種など)などの捕食および/または寄生によりコナジラミの数を減少させる昆虫種などの生物を指す。
【0031】
「宿主植物」は、昆虫有害生物の天然の宿主種である1つまたは複数の種を指す。例えば、コナジラミは、それだけに限定されないが、トマト、コショウ、ナス、レタス、アブラナ、ブロッコリー、カリフラワーおよびキャベツ作物などのアブラナ属の種;キュウリ、メロン、カボチャ、スカッシュなどのウリ科植物;ピーナッツ、ダイズ、ワタ、マメ、キャッサバ、ジャガイモ、サツマイモおよびオクラなどの広範な宿主範囲を有する。ハイビスカス、ポインセチア、ユリ、アイリス、ランタナ、バラおよびペチュニアなどの観賞種もまた、好ましい宿主の中にある。
【0032】
「作物」または「作物植物」または「栽培植物」は、それだけに限定されないが、油、炭水化物、薬用成分などの植物由来産物を含む、植物または植物の部分から得られる食品成分、飼料成分または他の任意の成分を得るなどの種々の目的のためにヒトによって栽培される植物を指すが、観賞目的、あるいは、例えば、ゴルフコース、運動場もしくは公園の芝生(芝生栽培区域)または森林もしくは公園等で栽培される植物などの社会経済的目的のために栽培される植物も含む。作物植物は、圃場、庭園、温室または他の任意の方法で栽培されてもよく、小規模または大規模で栽培されてもよい。
【0033】
近年、トマトはナス属に再分類された。本文書の全体にわたって、「Lycopersicon esculentum」および「Solanum lycopersicum」は栽培トマト植物を指すために互換的に使用される。同様に、野生トマトを指す場合には、Lycopersicon pennelliおよびSolanum pennelliならびにLycopersicon hirsutum f. glabratumおよびLycopersicon hirsutum f. typicumおよびSolanum habrochaitesが互換的に使用される。同様に、野生Lycopersicon属の種を指す場合には、これらは現在ナス属に属するものとして再分類されると理解され、これらの属命名が互換的に使用される。
【0034】
「テルペン」は、イソプレン単位に由来する炭素骨格を有する炭化水素であり、その炭素数に基づいたグループ、例えば、C10モノテルペン、C15セスキテルペン、C20ジテルペン、C25セステルテルペン、C30トリテルペン、C40テトラテルペンおよびC5nポリテルペンに細分化される。テルペンは、本明細書では、一般的に、例えば、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、833〜882ページ、1997に記載されているような、慣用名で呼ばれる。本明細書で使用する「テルペン」という用語はまた、アルコール、エステル、アルデヒドおよびケトン、(天然または合成の)異性体、ならびに適用できる場合にはこれらの任意の立体異性体および/または互変異性体などの、「テルペノイド」として一般的に知られている化合物、テルペン、および/またはテルペノイド類似体を含む。本明細書で特定の異性体(アルファおよび/またはベータ異性体など)を指す場合、他の異性体が含まれ、他の異性体または異性体の混合物は、それらが機能的である限りは、特に言及された異性体の代わりをすることができることが理解される。
【0035】
モノテルペンは、炭素骨格の構造によってさらに区別することができ、「非環式モノテルペン」(例えば、ミルセン、(Z)-および(E)-オシメン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ゲラニアール、シトラールa、ネラール、シトラールb、シトロネラール等)、「単環モノテルペン」(例えば、リモネン、アルファ-およびガンマ-テルピネン、アルファ-およびベータ-フェランドレン、テルピノレン、メントール、カルベオール等)、「二環モノテルペン」(例えば、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、ミルテノール、ミルテナール、ベルバノール、ベルバノン、ピノカルベオール等)および「三環モノテルペン」(例えば、トリシクレン)に分類することができる。Kirt-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、23巻、834〜835ページ、1997を参照されたい。
【0036】
本文書および特許請求の範囲では、動詞「含む」およびその活用形は、その単語の次の品目が含まれるが、特に言及されない品目は排除されないことを意味する非限定的な意味で使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素の言及は、文脈が、1つであることおよび要素の中の1つだけであることを明確に要求しない限りは、2つ以上の要素が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0037】
「植物(plantまたはplants)」(または複数の植物)への参照は、植物の部分(細胞、組織または器官、種子、切断または収穫された部分、葉、実生、花、花粉、果実、茎、根、カルス、プロトプラスト等)も指すと理解され、特に指示しない限り、自家受粉または交雑により得られた種子などの、親植物の際立った特徴を保持する植物の後代またはクローン増殖、例えばハイブリッド種子(2つの純系親系統を交配させることにより得られる)、ハイブリット植物およびそれに由来する植物部分が本明細書に包含される。
【0038】
本発明は、一実施形態では、昆虫忌避剤特性または昆虫誘引剤特性を有する化合物、およびこれらの1種または複数種を含むまたはから成る組成物に関する。
【0039】
化合物および組成物
コナジラミは、宿主植物を見つけるために視覚的手がかりおよび化学的手がかりの両方を使う。視覚的手がかりが取り除かれた、トマト植物を使用した自由選択再捕捉分析では、コナジラミが種々の野生トマト種(Solanum pennelli、LA716;Solanum habrochaites f. typicum、PI27826;L. hirsutum f. glabratumとも呼ばれるSolanum habrochaites f. glabratum;PI126449)を超える栽培L. esculentum(栽培品種Moneymaker)への嗜好性を有することが分かった。野生トマト植物のヘッドスペースを取り除き、ペンタン-エーテルに溶解し、栽培Moneymakerに添加した(濾紙担体上)場合、この栽培品種はコナジラミ(タバココナジラミ、バイオタイプQ)に対し60%まで誘引性が低くなった一方で、対照(溶媒ペンタン-エーテル)の施用は、誘引/忌避に効果がなかった。実施例1を参照されたい。
【0040】
大規模な実験(実施例2参照)では、16種の野生トマト系統種および5種の栽培トマト系統のヘッドスペースをサンプリングし、分析した(6回反復)。捕捉ヘッドスペース中に全体で51種の化合物が存在することが確認された。さらに、21種のトマト系統種の各々の忌避/誘引のレベルを、1〜7の順序尺度(1=最高の忌避から7=最低の忌避まで)を使用して、タバココナジラミ(バイオタイプQ)を用いた自由選択バイオアッセイで確立した。次に、同定した揮発性化合物を、線形回帰分析を通して、各々のトマト系統種の忌避/誘引スコアと互いに関連づけた。最終的に、7種の揮発性成分が、コナジラミ忌避と関連することが分かり、3種の揮発性成分がコナジラミ誘引と関連することが示された(Table 1(表1))。
【0041】
【表1A】
【0042】
【表1B】
【0043】
【表1C】
【0044】
(化学的に合成した、または商業的供給業者から入手した)Table 1(表1)に記載の個々の純粋な化合物のコナジラミ忌避剤または誘引剤特性を、バイオアッセイで確認した(実施例3)。さらに、2種以上の忌避剤または2種以上の誘引剤の混合物の有効性および可能な相乗効果を試験する。タバココナジラミの応答と、Table 1(表1)の化合物(個々のまたは混合物)との間の直接的な関連を、適当なOlfactory Detector Portを使用して、触角-電気生理学実験で確認する(実施例4)。この方法では、Table 1(表1)の個々の揮発性化合物、またはTable 1(表1)の化合物の2種以上の混合物が、電極を通してコナジラミの触角と直接接触され、EAD電位(触角電図法による(electro-antennographic)検出)が確立される。
【0045】
上記知見は、他の吸汁性昆虫、アザミウマ、ダニおよびその他、哺乳動物昆虫有害生物などの他の昆虫有害生物に拡張することができる。アザミウマは、例えば、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、Thrips fuscipennis、モトジロアザミウマ(Echinothrips americanus)などを含む。ダニは、例えば、いわゆるハダニ(ハダニ科(Tetranychidae))、糸足ダニ(ホコリダニ科(Tarsonemidae))およびフシダニを含む。
【0046】
したがって、一実施形態では、本発明は、有効量のR-クルクメン、ならびに任意選択でベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種を含むまたはから成る昆虫忌避剤(特に吸汁性昆虫忌避剤、アザミウマおよび/またはダニ忌避剤、好ましくは少なくともコナジラミ忌避剤)組成物を提供する。
【0047】
2種以上の忌避剤化合物の組み合わせは、好ましくは自然状態では起こらず、および/または本明細書で提供される純度(他の化合物の非存在)、濃度および/または比率では起こらない、以下の好ましい組み合わせ:
- S-クルクメンと組み合わせたジンギベレン;
- R-クルクメンと組み合わせた7-エピ-ジンギベレン;
- パラ-シメンおよび/またはガンマもしくはアルファテルピネン、S-クルクメンおよび/またはジンギベレンと組み合わせたベータ-ミルセン;
- パラ-シメンおよびベータ-ミルセンおよび/またはガンマ-テルピネン;
- パラ-シメンおよびアルファ-テルピネンおよび/またはアルファ-フェランドレン;
- 忌避剤化合物の2、3、4、5、6または7種の任意の組み合わせ
を含む。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、有効量の、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種を含むまたはから成る昆虫誘引剤(特に、吸汁性昆虫誘引剤、アザミウマおよび/またはダニ誘引剤、好ましくは少なくともコナジラミ誘引剤)組成物を提供する。そのため、2種以上の誘引剤化合物の組み合わせは、以下の組み合わせ:
- ベータ-フェランドレンおよびリモネン;
- ベータ-フェランドレンおよび2-カレン;
- リモネンおよび2-カレン;ならびに
- ベータ-フェランドレン、リモネンおよび2-カレン
を含む。
【0049】
1つまたは複数の異なる昆虫有害生物に関して、誘引または忌避効果に関する上記化合物の順位は変化し得る。7種の忌避剤化合物のどれが1つまたは複数の昆虫有害生物の忌避剤として単独で最も有効であるか、および3種の誘引剤化合物のどれが1つまたは複数の昆虫有害生物(好ましくは、吸汁性昆虫有害生物、アザミウマおよび/またはダニ;最も好ましくは、少なくともコナジラミ)の誘引剤として単独で最も有効であるかを、本明細書の他で記載するまたはそこから改造したバイオアッセイで試験することができる。
【0050】
同様に、7種の忌避剤または3種の誘引剤のいずれかから選択した2種以上の化合物のどの組み合わせが、1つまたは複数の昆虫有害生物を誘引または忌避することに関して最も有効であるかを、本明細書の他で記載するバイオアッセイを使用して、過度の実験なしに試験することができる。相乗的組み合わせは、共に化合物を施用した効果が(例えば、混合物としてまたは連続的に同じ区域に)、化合物を単独で施用した場合に達成される効果よりも大きい組み合わせである。
【0051】
本明細書の他で開示するように、特に有効な忌避組成物は、R-クルクメンを含むまたはから成ることが分かった。
【0052】
2種の化合物の混合物を使用する場合、種々の比率が1つまたは複数の昆虫有害生物を誘引または忌避するのに最も有効であり得る。適当であり得る比率は、100:1、50:1、10:1、5:1、2:1、1:1、1:2、1:5、1:10、1:50、1:100または中間の任意の比率である。
【0053】
3種の化合物の混合物を使用する場合、適当な比率は、1:1:1、1:2:1、1:2:2、1:10:10等を含み得る。適当な比率に関しては、Table 3(表3)も参照されたい。当業者は、特定の昆虫種に関してどの比率が最も適当であるかを決定することができるだろう。
【0054】
本発明の一実施形態では、(有効量の)R-クルクメン、および上記群から選択される誘引剤または忌避剤化合物の少なくとも1種、2種、3種またはそれ以上を含むまたはから成る組成物は、実質的に(すなわち、>90%、特に>95%、>98%、または>99%)または完全に(すなわち、100%)他の、選択されないテルペンまたはテルペノイド化合物、特に選択されない植物によって天然に産生されるテルペンおよび/またはテルペノイド化合物を含まない。したがって、本組成物は、有効量の選択された化合物または化合物の組み合わせのみを有効成分として含む。したがって、天然ヘッドスペース組成物は多種のテルペンおよびテルペノイドを含むので、本組成物は植物の天然ヘッドスペース組成物(すなわち、栽培または野生植物などの非トランスジェニック植物のヘッドスペースとして自然状態で生じる)ではない。これらの天然ヘッドスペース組成物は、時とともに、異なる環境条件下で、変わり得る。対照的に、本発明による組成物は、一定の組成物である。
【0055】
化合物は、化学合成によって作ることができ(Millar他、1998、J. Nat. Prod 61:1025〜1026)、あるいは蒸留(Agarwal他、2001、Pest Man. Sci.、57:289〜300)、インビボ生産(Colby他、1998、PNAS 95:2216〜2221;Chang他、2007、Nat. Chem. Biol.、3:274〜277)、および/または例えば、植物から精油/エーテル油の成分を得るために一般的に使用されるような、従来の溶媒抽出(例えば、Peng他、2004、J. Chromatogr. A.、1040:1〜17;Eikani他、2006、J. Food Eng.、80:735〜740;Durling他、2006、Food Chem.、101:1417〜1424参照)などの、当技術分野で既知の方法を使用して、植物、植物組織またはヘッドスペースなどの天然源から精製することができる。蒸留のために、原料植物材料、例えば葉、根、花、果皮等は水の上の蒸留装置に入れられ、加熱される。水蒸気が揮発性物質を蒸発させ、蒸気が濃縮され、回収される。次いで、蒸留液は、特定の化合物のために、さらに分留(例えば、溶媒抽出により)または濃縮され得る。あるいは、出発物質は、主に精製される揮発性物質を含む。
【0056】
組織からの溶媒抽出は、任意選択で蒸留ステップと組み合わせて、揮発性物質を抽出するために、例えばヘキサンまたは超臨界二酸化炭素および/またはエチルアルコールを使用する。ヘッドスペース揮発性物質も、ペンタンエーテルなどの溶媒を使用して抽出することができる。
【0057】
好ましくは比較的純粋な化合物、すなわち植物組織、ワックス、樹脂または他の植物由来の汚染物質を含まない、ならびに望ましくないテルペンを実質的に含まない化合物が使用されるので、合成化合物および/または組換えで生産された化合物および/または実質的に精製された化合物を使用することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、個々の化合物の各々は、「実質的に純粋」であり、それによって、10%未満、より好ましくは5%未満、好ましくは3%、2%または1%未満の、望ましくない炭化水素、タンパク質、ワックス、樹脂、DNA、RNA、糖、細胞壁または他の植物成分などの汚染物質しか存在しない。
【0058】
化合物は、Sigma-Aldrichなどの商業的供給業者から得ることもできる(www.sigmaaldrich.com参照)。例えば、ベータ-ミルセン(Sigma-Aldrich製品番号64643、純度≧95%)、パラ-シメン(Sigma-Aldrich製品番号30039、純度≧99.5%)およびガンマ-テルピネン(Sigma-Aldrich製品番号86476、純度≧98.5%)がSigma-Aldrichから入手可能であり、(+)-リモネンおよび(-)-リモネンまたは両エナンチオマー(Sigma-Aldrich製品番号62118、62128、89188)ならびに(+)2-カレン(Sigma-Aldrich製品番号21984)、アルファ-フェランドレン(Sigma-Aldrich製品番号77429、純度≧95%)およびアルファ-テルピネン(Sigma-Aldrich製品番号88473、純度≧95%)も同様である。
【0059】
ジンギベレン、エピジンギベレン(7-エピ-ジンギベレン)、R-クルクメンおよびS-クルクメンは、Millar(1998、J. Nat. Proc. 61:1025〜1026)によって記載され、本明細書の他で開示されるように、例えば化学修飾およびその後の蒸留によって、ショウガ油から単離することもできる。ベータ-フェランドレンなどの化合物は、新規に化学的に合成することができる(例えば、US4,1361,26参照)。
【0060】
細菌(例えば、大腸菌)または真菌(例えば、ピキア(Pichia)またはハンゼヌラ(Hansenula)などの酵母)などの組換え微生物中で、上記モノテルペンおよび/またはセスキテルペン化合物を生産することも可能である。好ましくは増殖培地中に化合物を分泌する微生物中の1つまたは複数の遺伝子の発現は、作られる純粋な化合物(他のモノテルペンおよびセスキテルペンを含まない)のより大量でより安価な生産を可能にする。例えば、WO2006/065126は、テルペンのヒドロキシル化を記載しており、それによって、例えば、チトクロムP450酵素を発現している微生物宿主中で適当な基質からリモネンを生産することができる。大腸菌中でのモノ-およびジ-テルペンの生産を記載しているReiling他(Biotechnol. Bioeng. 2004、87:200〜212)も参照されたい。
【0061】
化合物および/またはこれらの1種または複数種を含むまたはから成る組成物は、揮発性物質/気体、液体、半固体(例えば、ゲルビーズ、クリーム、泡等)の形態で、または固体(顆粒、粉末等)として存在し得る。したがって、これらは、好ましくはコナジラミの行動に何の効果も有さない、溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール)またはエーテル(例えば、ペンタンエーテル)または別の有機溶媒(例えば、ヘキサン)などの不活性担体を含む。アルコールまたはアルコール混合物またはエーテルなどの溶媒に溶解させる代わりに、油性担体を使用してもよい。これらの親油性化合物の水への混和性は低いまたはないので、水は一般的にはあまり適した担体ではない。化合物の処方は、標的位置に容易に施用され、昆虫の行動が影響を受ける(および好ましくは施用区域の昆虫の分布が有意に影響を受ける)方法であるべきである。忌避剤化合物および/または組成物は、一実施形態では、複数の作物植物に施用される一方で、誘引剤組成物は、好ましくは作物植物とは異なる場所、例えば作物列の間に間作された、ボーダートラップ作物またはトラップ列に施用される。例えば、圃場または温室中の植物に施用する場合、気体、液体(例えば、空気と接触して蒸発する)または半固体形態が好ましく、それらは空中の植物表面上に噴霧または撒布することができる。固体製剤は、顆粒、粉末、緩徐放出マトリクス(例えば、有効成分を囲み、その成分をゆっくり放出するコーティングまたはマトリクス)等を含む。有効成分および担体(例えば、溶媒)は、揮発性物質がゆっくり放出されるゴム隔膜(市販されている)などの固体容器中に入れてもよい。
【0062】
しかしながら、本発明による誘引剤製剤および忌避剤製剤の両方に関して、本明細書では全ての種類の製剤が予想される。当業者は、以下の要素を考慮に入れて、適当な製剤の作り方が分かるだろう:1.有効成分のパーセント、2.処理および混合の容易さ、3.ヒトおよび標的でない動物(昆虫有害生物捕食者または寄生生物など)にとっての安全性、4.製剤が施用される環境(圃場、温室等)、5.標的昆虫(例えば、コナジラミおよび/または他の昆虫有害生物)の習性、6.保護すべき作物およびその作物へのあり得る傷害。一般に、植物殺有害生物剤に適した製剤は、本発明による忌避剤または誘引剤製剤を作るために使用する、または適用することができる。製剤の種類は、以下を含む:
a)有効成分が油または別の溶媒中に溶解しており、噴霧のために製剤が油または水と混合され得るように乳化剤が添加されている、液体製剤である、乳剤(Emulsified Concentrates)(EC)製剤。
b)高濃度の有効成分を含み、一般的に、油または水と混合することにより希釈され、または希釈なしに直接使用される、高濃縮液剤、スプレー濃縮剤およびULV(超低容量濃縮剤)。
c)一般的に、さらなる希釈を必要とせず、適当な施用用量の有効成分を含む、低濃縮液剤または油剤。
d)水または油にあまり溶解しない有効成分のためにフロアブル液剤を作ることができる。有効成分は、粉砕された、または微粉形態の固体である。次いで、微細な固体は、液剤中に懸濁される(懸濁化剤、補助剤および/または他の成分とともに)。
e)有効成分を溶媒(例えば、水または有機溶媒)に溶解することにより作られる、液体製剤である溶剤または水溶性濃縮剤。
f)それによって有効成分が小さなカプセルまたはコーティング内に含まれ、次に例えば液体中に懸濁させる(例えば、噴霧するために)ことができる、カプセル剤。
g)乾燥して施用される粉剤。これらは、例えば、微粉砕され、任意選択でタルク等の他の粉末と混合された固体としての有効成分を含む。
h)有効成分が入れられた乾燥した多孔性物質から作られた粒剤。多くの場合、粒剤は、土壌に施用されるが、植物に施用することもできる。
i)乾燥した粉末状製剤である水和剤。粉剤と対照的に、この製剤中には、湿潤剤および/または分散剤が存在する。多くの場合、水和剤は、粉剤よりも高濃度の有効成分、例えば15%〜95%の有効成分を含む。
j)水和剤に類似しているが、溶液に完全に溶解する水溶剤。
k)粒剤のように見えるが、水和剤と同じ方法で使用される、乾燥フロアブル。
l)液化された揮発性物質またはガス状製剤である、液化ガスおよび/または燻蒸剤。特定の揮発性物質は、例えば、圧力下で液体を形成することができ、特定の条件下、例えばいったん圧力を放出すると、再度蒸気(揮発性物質)に変わる。蒸発した有効成分(揮発性物質)は、放出時に所望の効果を有する。この製剤は、土壌中、または防水シート(キャンバス)などの被覆の下、または(比較的)閉鎖環境中へ放出され得る。(液化またはガス状)有効成分は、蒸発した有効成分を大気中へゆっくり放出するカプセル、ゲル、または他のマトリクス中に組み込んでもよい。
m)ベイト剤は、1種または複数種の本発明による誘引剤化合物を含む製剤を指す。任意選択で、ベイト剤は、他の誘引剤、あるいは標的昆虫種および/または他の昆虫種に毒性の化合物でさえも含んでよく、例えば、ベイト剤は、摂取されると、または接触すると、標的昆虫(および/または他の昆虫)、例えばコナジラミを死滅させる1種または複数種の殺昆虫剤を含んでもよい。このような毒素は、それ自体として誘引剤製剤に含まれている必要はないが、別の成分として標的区域または標的植物に施用することもできる(例えば、誘引剤化合物または組成物の前、後、または共に)。このような組成物のキットも本発明の実施形態である。
n)エアロゾルは、例えば、缶の中に、圧力下で保管されるガス状製剤である。
【0063】
上記l)の製剤が、本明細書では特に好ましい。
【0064】
特に、哺乳動物病原媒介者を忌避する場合、製剤は、昆虫忌避剤DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミドまたはN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)に使用されるものと同様であってもよい。DEETは、4〜100%に及ぶ有効成分を含む、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、クリーム、ローション、泡、スティック、制御放出製剤(タンパク質に被包された)などの200を超える製剤で入手可能である。揮発性昆虫忌避剤製剤および緩徐放出製剤については、US4,774,082およびUS6,180,127も参照されたい。
【0065】
同様に、揮発性除草剤(例えば、揮発性エステル除草剤)に一般に使用される製剤が本明細書で使用され得る。例えば、土壌汚染を減らすための、揮発性の、葉に施用される、ダラポンの製剤を記載している、US3,725,031またはDay、Weed Research、1巻、3号、177〜183ページ、1961年9月を参照されたい。
【0066】
任意選択で、栄養剤、浸透圧剤、1つまたは複数の適当な担体、賦形剤、乳化剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、補助剤、揮発性物質、安定剤などの他の成分を有効成分(忌避剤または誘引剤)に添加してもよい。「担体」は、有効成分と結合するが、それ自体は有意な生物活性を有さない、少なくともコナジラミなどの標的昆虫種に対しては有さない化合物を指す。好ましくは、使用する担体はまた、植物、例えば宿主作物に負の生物学的効果を有さない、すなわち担体は、好ましくは植物毒性を有さない、または最小限の植物毒性しか有さない。担体は、気体、液体(例えば、揮発性液体)または固体であってよく、担体は水、油、油を含む溶液(例えば、乳濁液)、溶媒等であってもよい。
【0067】
最終的な誘引剤または忌避剤組成物中の有効成分の割合は、有効成分の活性、製剤の種類、施用の場所および様式等に応じてかなり変化し得る。したがって、有効成分の割合は、少なくとも約1%、2%、5%、10%、30%、50%、70%、80%、90%、95%またはさらには100%の組成物体積当たりの重量であり得る。
【0068】
したがって、1種または複数種の有効成分(1種または複数種の忌避剤あるいは1種または複数種の誘引剤)を含む組成物は、例えば、噴霧により、または担体からの気化により、処理する植物または区域に施用することができる。また、忌避剤組成物は、植物の間に(例えば、担体上に)配置することができる一方で、1種または複数種の誘引剤を含むまたはから成る組成物は、好ましくはトラップ中/上または保護すべき植物の近くの場所中/上に配置される。
【0069】
本発明による組成物は、当技術分野で既知の他の昆虫誘引剤または忌避剤、殺昆虫剤などの他の生物活性化合物を含んでもよい。また、標的昆虫の異なる段階は、ある化合物に対して別の化合物よりも感受性であり得、有害生物種の異なる段階を標的にする化合物(本発明による、および/または当技術分野で既知の化合物)を組み合わせてもよい。同様に、異なる有害生物種は、有害生物種の各々のための、有効量の化合物(本発明による、および/または当技術分野で既知の化合物)を組み合わせることにより標的にしてもよい。
【0070】
忌避剤または誘引剤組成物は、殺昆虫剤、除草剤(処理する宿主植物が除草剤耐性である場合、例えばトランスジェニック除草剤耐性植物)、殺真菌剤、および/または成長促進剤、薬害緩和剤、肥料などの他の生物活性成分等をさらに含んでもよい。
【0071】
昆虫誘引剤組成物は、生存および/または再生昆虫を死滅させるために1種または複数種の殺昆虫剤を含んでもよい。また、標的昆虫(例えば、コナジラミ)を誘引する昆虫フェロモンを誘引剤組成物に添加してもよい。同様に、標的昆虫の捕食者の誘引剤が組成物中に含まれてもよい。
【0072】
好ましくは、組成物は、植物(例えば、宿主作物またはトラップ植物)に負の生物学的効果を有する物質を含まない、すなわち、組成物は、宿主-および/またはトラップ-植物種に対する植物毒性を好ましくは有さない、または最小限しか有さない。個々の成分または組成物の植物毒性は、その成分または組成物を植物組織、例えば葉に接触させることにより容易に試験することができる。また、組成物は、好ましくは、コナジラミの捕食者などの非標的昆虫に対する負の効果を有さない。
【0073】
標的有害生物、例えばコナジラミを誘引または忌避するための有効量が組成物中に存在すべきである。適当な量は、以下のTable 2(表2)に与えられる(特に、コナジラミについてであるが、それに限定されない)。適当な量は、少なくとも約0.5、1、2、3、4または5μgの24時間に放出される揮発性化合物から少なくとも約10、20、30、50、100、200、300、400、500、600、800、900または1000μg以上の24時間当たりに放出される揮発性化合物、あるいはそれに相当する量に及び得る。適当な量は、処理する1kg生物体量(生体重)当たりの量として表すこともでき、例えば、少なくとも24時間当たり1kg生物体量当たり約0.01mgの化合物から少なくとも24時間当たり処理する1kg生物体量当たり約60、70、80、90または100mgの化合物に及び得る。例えば、有効量は、少なくとも約0.05mg/kg/24h、0.1、0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、15、20、30、40、50mg/kg/24hまたはそれ以上を含む;非限定的な例についてはTable 2(表2)も参照されたい。他の昆虫有害生物については、異なる量が必要とされ得るが、それは例えばバイオアッセイを使用して、過度の実験なしに試験することができる。したがって、有効量は、過度の実験なしに、実験的に決定することができる。有効量は、製剤および施用区域に応じて変わり得る。温室(閉鎖環境)は、圃場環境よりも少ない量を必要とし得る。重要なことに、忌避剤を含むまたはから成る組成物と接触している植物組織を実際にプロービングするコナジラミなどの標的有害生物の数は、未処理対照植物と比較して有意に減少し、それによって処理植物へのウイルス伝染およびウイルス被害は減少する。
【0074】
【表2】
【0075】
一実施形態では、1種または複数種の忌避剤化合物を含むまたはから成る組成物は、異なる、非誘引(忌避)野生トマト植物で測定した濃度および/または化合物比率をシミュレートするが(以下のTable 3(表3)参照)、このような植物中に天然で見られる他のテルペンおよび/またはテルペン化合物を欠く。
【0076】
【表3】
【0077】
明らかに、例えば、他の昆虫または昆虫宿主の組み合わせのために、上記Table 2(表2)およびTable 3(表3)に提示されるもの以外の量および比率を適当に使用することができる。最も適当な量および/または比率は、例えば、バイオアッセイ(以下参照)または圃場アッセイを使用して、過度の負担なしに当業者により決定され得る。
【0078】
1種または複数種の有効成分の量が、標的有害生物(例えば、コナジラミ)を誘引または忌避するための「有効量」であるかどうかは容易に試験することができる。例えば、コナジラミおよび/または他の標的有害生物について、以下のバイオアッセイを使用してもよい。明らかに、当業者により同様のバイオアッセイが考案され得る。
【0079】
適当なバイオアッセイは、例えば、以下のステップを含む:
(a)複数の宿主植物、例えばトマト栽培品種を供給するステップ;
(b)植物を直接的または間接的に、1種もしくは複数種の化合物、および/または1種もしくは複数種の濃度の化合物もしくは化合物混合物(もしくはこれらを含む組成物)と接触させるステップ。間接的な接触は、植物の上または近くの、化合物を添加したゴム隔膜(例えば、Sigma Aldrich Z167258)または濾紙ディスクなどの支持材を含むことによってもたらされ得る。例えば、1種または複数種の揮発性化合物を載せたゴム隔膜は、植物(「処理」植物)に添加され得るが、対照(対照または基準植物、または「未処理」植物)には添加されない。基準植物は、対照組成物(例えば、有効成分を欠く)に接触させられるか、化合物/組成物に接触させられないかのいずれかである;
(c)標的昆虫を処理および未処理植物の区域へ解放し、その昆虫を植物に定着させるステップ;好ましくは、標的昆虫は、解放自体からの処理または未処理/対照に対する偏りが生じないように解放される;また、昆虫の行動に影響を及ぼし得る他の手がかり(視覚的手がかりなど)は減らされまたは排除されて、他の手がかりにより処理および未処理/対照植物への昆虫の着地、プロービングおよび/または摂食が影響を受けない(または可能な限り少ない影響しか受けない)ようにすることが好ましい;
(d)解放後、1つまたは複数の時点で(例えば、解放後10、20、40、60分またはそれ以上で)、昆虫の植物嗜好性を分析し、処理植物上の昆虫の数と未処理植物上の数とを比較するステップ。
【0080】
1種または複数種の化合物が、誘引剤または忌避剤効果を有するかどうか、あるいは誘引剤もしくは忌避剤化合物または化合物混合物の最も至適な濃度は何であるかを決定するために、データは好ましくは統計学的に分析される。コナジラミに適したバイオアッセイについては実施例も参照されたい。
【0081】
昆虫種に応じて、実験の設定はわずかに変わり得る。例えば、コナジラミについては、好ましくは少なくとも50、100、150またはそれ以上のコナジラミが、処理植物と未処理/対照植物との間の選択肢を与えられる。
【0082】
本発明による使用
本発明は、昆虫忌避剤組成物、好ましくは吸汁性昆虫有害生物忌避剤組成物、最も好ましくはコナジラミ忌避剤組成物の調製のための、任意選択でS-クルクメン、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種と組み合わせた、R-クルクメンの使用を提供する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、昆虫誘引剤組成物、好ましくは吸汁性昆虫有害生物誘引剤組成物、最も好ましくはコナジラミ誘引剤組成物の調製のための、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種の使用を提供する。
【0084】
なおさらなる実施形態では、カ(例えば、マラリアカ、黄熱病カなど)などの哺乳動物昆虫有害生物を忌避または誘引するための上記忌避剤または誘引剤組成物の1種または複数種の使用が本明細書で提供される。他の哺乳動物有害生物は、例えば、スコットランドヌカカまたは他の吸血ユスリカを含む。このような組成物、特に忌避剤は、その効果を発揮するために、例えば、皮膚、衣服、布地、屋外または屋内の区域等に施用するために、スプレー、クリーム、溶液等として使用することができる。特に、有効量のTable 1(表1)の化合物の1種または複数種を含むまたはから成るカ忌避剤および/またはユスリカ忌避剤が提供される。皮膚もしくは衣服、またはヒトもしくは動物が居住を望む環境(例えば、エアロゾルとして)、または担体もしくは支持材への施用後、カ(特にメスのカ)の数は、未処理対照と比較して有意に減少する。
【0085】
1種または複数種の化合物および/または組成物の有効量を決定する方法は、植物有害生物に使用するものと類似している。例えば、昆虫をY字管に入れ、Yのいずれかの分枝に沿って風上に移動させる選択アッセイを含む、類似のアッセイを使用することができる。1つの管に、忌避剤または誘引剤化合物を入れ、特定の選択をする昆虫の数を数える。インビボ試験は、
(a)複数の哺乳動物被験体を供給するステップ;
(b)その被験体に、直接的または間接的に、1種もしくは複数種の化合物および/または1種もしくは複数種の濃度の化合物もしくは化合物混合物(もしくはこれらを含む組成物)を接触させるステップ。間接的な接触は、化合物または組成物を衣類に添加することによって行うことができる。基準被験体は、対照組成物(例えば、有効成分を欠く)に接触させられるか、化合物/組成物に接触させられないかのいずれかである;
(c)標的昆虫を処理および未処理被験体(またはその一部)(例えば、腕または手)の区域へ解放し、その昆虫を定着させるステップ;
(d)解放後の1つまたは複数の時点で(例えば、解放後5、10、20、40、60分またはそれ以上で)、昆虫の咬傷の数を分析し、処理被験体上の昆虫の数と未処理被験体上の数とを比較するステップ。
を含み得る。
【0086】
したがって、植物昆虫有害生物について記載した本発明の部分を、哺乳動物昆虫有害生物に類似の方法で適用し、「植物昆虫有害生物」が言及されているところに、明らかな変形により、哺乳動物昆虫有害生物が類似して包含される(例えば、支持材は、好ましくは衣類、またはスプレー容器、ローション容器などの容器である)。
【0087】
組成物は、以下でさらに記載する方法にしたがって使用され得る。
【0088】
誘引剤化合物または組成物を含む支持材
別の実施形態では、本発明は、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)誘引剤組成物を含む支持材の調製のための、ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンの1種または複数種の使用を提供する。本発明による誘引剤化合物または組成物を含む支持材はまた、それ自体本発明の実施形態である。支持材は、好ましくは、誘引剤組成物が上にまたは中に配置される容器、ホルダーまたは他の固体支持材である。固体支持材は、既知の昆虫トラップなどのトラップであってもよい。あるいは、固体支持材は、上記のような揮発性物質ディスペンサーであってもよい。支持材はまた、トラップ植物、または複数のトラップ植物、またはその部分(例えば、葉)であってもよい。好ましいトラップ植物は、標的害虫(例えば、コナジラミ)に感受性であり、標的昆虫有害生物種の天然の宿主である植物種および/または変種である。例えば、栽培トマト種を使用することができ、それによって、誘引剤は空中の植物材料上に施用される。あるいは、誘引剤を含む材料(例えば、ゴム隔膜または濾紙)を植物、または植物の間に添加して、組成物の潜在的植物毒性効果を避けるようにしてもよい。化合物または組成物を支持材に添加することによって、化合物または組成物と植物組織との間の直接接触が避けられる。
【0089】
任意の支持材を使用することができる。したがって、固体支持材は、例えば、濾紙(例えば、スポッティング、噴霧または液浸により、その上に誘引剤が施用される)、またはゴム隔膜などのゴムもしくは合成材料であってもよい。固体支持材は、プラスティック、固体合成物質、ポリマー、金属、ガラス、紙、炭素、生物学的物質(例えば、木材、コルク等)などから作られてもよい。固体支持材は、管、ディスク、ブロック、箱、キューブ、ビーズ、(ナノ)粒子または顆粒その他の形態であってもよい。適当なゴム隔膜は、例えば、Sigma-Aldrich(Z167258)から入手可能である。半固体支持材は、ゲル(例えば、寒天)、泡またはクリームであってもよい。
【0090】
忌避剤化合物または組成物を含む支持材
なお別の実施形態では、本発明は、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)忌避剤組成物を含む支持材の調製のための、R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種の使用を提供する。本発明による忌避剤化合物または組成物を含む支持材はまた、それ自体本発明の実施形態である。支持材は、忌避剤組成物が上にまたは中に配置される容器または他の固体支持材であってもよい。固体支持材は、より長期間にわたって、揮発性物質をゆっくり放出する、ゲルまたは他のマトリクスまたは容器などの緩徐放出材料であってもよい。例えば、固体支持材は、上記のような揮発性物質ディスペンサーであってもよい。支持材はまた、作物植物または複数の作物植物であってもよい。好ましい作物植物は、標的昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から保護されるべき植物種および/または変種である。例えば、トマト、ワタ、ウリ科(Curcubitaceae)、ジャガイモなどの栽培宿主種は、空中の植物材料上に、または作付された圃場の中、例えば、圃場中に規則的な間隔で配置された担体もしくはディスペンサーに忌避剤を施用することにより、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から保護することができる。忌避剤を含む支持材(例えば、ゴム隔膜または濾紙)を1種もしくは複数種の作物植物、または植物の間に添加して、組成物の潜在的植物毒性効果を避けるようにしてもよい。化合物または組成物を支持材に添加することによって、化合物または組成物と植物組織との間の直接接触が避けられる。
【0091】
誘引剤支持材について上記のように、任意の支持材を使用することができる。
【0092】
以下の本明細書の方法も参照されたい。
【0093】
本発明による化合物または組成物を使用した昆虫有害生物を忌避および/または誘引する方法
(a)R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、7-エピ-ジンギベレンおよび/またはジンギベレンから選択される1種または複数種の忌避剤化合物を含むまたはから成る組成物を供給するステップ;と
(b)前記組成物を、1回または複数回、複数の作物植物に添加するステップと
を含む、栽培植物へ
の昆虫有害生物の発生を減らし、害虫を防除する方法、すなわちコナジラミおよび/または他の害虫などの害虫を忌避および/または誘引する方法が提供される。
害虫を防除する方法は、
(c)ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンから選択される1種または複数種の誘引剤化合物を含むまたはから成る組成物を供給するステップと
(d)前記組成物を、1回または複数回、1つまたは複数のトラップ植物またはトラップ材に添加するステップと
をさらに含んでもよい。
【0094】
(a)および(c)の組成物は、本明細書で上に記載している。任意選択で、ステップ(a)および(b)は、数回繰り返してもよい。同様に、任意選択で、ステップ(c)および(d)は、数回繰り返してもよい。作物の保護が望まれる場合、誘引剤組成物は忌避剤組成物とは別に使用してもよく、逆もまた同様であり、または例えば、作物から昆虫を忌避し、昆虫を、例えば作物の近くに配置され得る、もしくは作物に点在させられ得るトラップに誘引するために両方を一緒に使用してもよいことは明らかである。したがって、本質的に、3つの方法が提供される:(a)昆虫有害を忌避することによる作物の保護、(b)作物植物から昆虫有害生物を引き離すことによる作物の保護、および(c)作物への昆虫発生を減少させるための両戦略の同時の使用。
【0095】
ステップ(b)において、組成物を、例えば、植物上への噴霧、個々の植物もしくは葉への噴霧、または個々の葉へのスポット施用、燻蒸、液体、固体もしくは半固体製剤の複数の植物もしくは植物の部分への手動配置、散布等により、作物植物またはその部分(と接触して)へ直接添加してもよい。したがって、植物材料と化合物または組成物との間の「直接的接触」(すなわち物理的接触)を使用することができる。
【0096】
あるいは、別の実施形態では、作物植物と化合物または組成物との間の「間接的接触」を使用し、それによって、組成物または化合物は、最初に支持材(または担体)と接触させられ、次いで、前記支持材(前記化合物または組成物を含む)が1つもしくは複数の植物または植物の部分上、あるいは植物の近く、例えば列の間、植物の間、または植物が成長しているまたは植物を栽培する土壌中/上のいずれかに配置される。
【0097】
宿主作物の上または近くの忌避剤施用の最もよい場所、ならびに施用の頻度は、作物の構造および生理学、作物齢、製剤、区域内の昆虫有害生物発生などのいくつかの因子に依存する。非常に急速に揮発する製剤については、標的昆虫有害生物、例えば、コナジラミを効果的に忌避するためにより頻繁な施用が必要とされ得る。同様に、大量の降雨がある区域では、空中施用は、より急速に洗い落とされ得るので、1回もしくは複数回のさらなる施用、またはより短い施用間隔が必要とされる。当業者は、発生を十分に減少させるために最適な施用頻度を容易に決定することができる。したがって、施用は、1日、1週間もしくは1ヶ月に1回もしくは複数回、またはさらには作物の生育期当たり1、2、3もしくは4回と少なくてもよい。一実施形態では、本発明による1種または複数種の忌避剤化合物を含む組成物は、作物の種まきまたは植え付け前に作物を栽培する区域に施用して、実生の出芽前に発生を既に減少させるようにすることもできる。
【0098】
したがって、適当な施用頻度は、例えば、作物の植え付けと収穫との間に1、2、3、4回またはそれ以上としてもよい。作物は、閉鎖環境(例えば、温室またはトンネル)、半閉鎖環境(例えば、キャンバスに覆われた圃場作物)または開放環境で栽培することができる。本発明による誘引剤および/または忌避剤組成物から利益を得る作物は、当然、本明細書に記載されている化合物および組成物によりその行動が変化させられる感受性昆虫有害生物の天然宿主である作物である。そのため、一実施形態では、作物植物は、吸汁性昆虫、特にコナジラミの宿主である植物種である。温室コナジラミ、Trialeurodes vaporariorumは、大半の野菜の種および観賞植物などの非常に広範な宿主種範囲を有する。シルバーリーフコナジラミおよびサツマイモコナジラミ(Bemisia argentifoliiおよびタバココナジラミ)もまた、大半の野菜の種を含む非常に広範な宿主範囲を有する。
【0099】
好ましい実施形態では、作物植物は、トマト植物、好ましくは栽培トマトである。作物植物は、遺伝子組換え植物、すなわち、例えば、除草剤耐性遺伝子を含むトランスジェニックまたはシスジェニック植物であってもよい。
【0100】
忌避剤を含む組成物の施用は、コナジラミなどの吸汁性昆虫有害生物の成虫、および処理作物における植物組織プロービングの減少のために、好ましくは有意にウイルス伝染を減少させる。そのため、未処理作物と比較した処理作物でのウイルス伝染の有意な減少は、処理の有効性の基準として使用することもできる。あるいは、任意の本発明による組成物の最も効果的な投与量および施用体制を決定するために、標的昆虫(例えば、コナジラミ)の数を数える/推定することができ、または作物の収量および/または品質を、処理作物と未処理作物との間で比較することができる。
【0101】
同じ作物に2回以上同じ忌避剤組成物を施用する必要はないが、処理の変更も予想され、処理の組み合わせも同様である。例えば、忌避剤の1種を含む(またはから成る)組成物による処理は、他の忌避剤化合物の任意の1種を含む(またはから成る)組成物による処理に変更する、またはこれと組み合わせてもよい。同様に、忌避剤の2種を含む(またはから成る)組成物による処理は、他の忌避剤化合物の任意の1種を含む(またはから成る)、または2種の他の忌避剤化合物等から成る組成物による処理に変更する、あるいはこれと組み合わせてもよい。したがって、ステップ(a)で、いくつかの異なる組成物を供給し、次いでそれを同時に共に、または連続的に、ステップ(b)で施用してもよい。
【0102】
同様に、ステップ(a)で供給され、ステップ(b)で施用される、製剤および/または有効成分の濃度は、同一である必要はない。例えば、昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)発生またはその前兆に応じて、例えば作物の生育期中、有効成分の濃度を増加させるまたは減少させることができる。
【0103】
しかしながら、一実施形態では、ステップ(a)で供給され、ステップ(b)で施用される有効成分は、化学的に同一であり、好ましくは同一の製剤および/または濃度でもある。
【0104】
好ましい実施形態では、有効成分は、より長期間にわたって、組成物からゆっくり放出される。そのため、好ましい製剤は、緩徐放出製剤または制御放出製剤である。このような製剤は、(マイクロ)カプセル化、積層ストリップ、ポリ塩化ビニルストリップ、ゴムペレット等を使用した、例えば、殺有害生物剤について当技術分野で既知の方法、あるいは緩徐放出および/または制御放出のための他の方法を使用して作ることができる。例えば、Barlow,F(1985、Chemistry and formulation. In:Pesticide Application:Principles and Practice.編:P T Haskell.Oxford Science Publications:Oxford. 1〜34ページ)、Dent, D R(1995、Integrated Pest Management. Chapman&Hall:London、Glasgow、Weinheim、New York、Todyo、Melbourne、Madras)、Rombke, J&J M Moltmann(1995、Applied Ecotoxicology. Lewis Publishers:Boca Raton、New York、London、Tokyo)またはWare, G W(1991、Fundamentals of Pesticides. A self-instruction guide. Thomsom Publications:Fresno USA)を参照されたい。
【0105】
忌避剤による作物の処理は、誘引剤またはベイト組成物による、作物の近くの植物または区域の処理と組み合わせてもよい。あるいは、誘引剤またはベイト組成物の使用は、それ自体で昆虫有害生物(例えば、コナジラミ)被害から作物を保護するのに十分である場合もあり、このような場合には作物自体の処理は必要でない。
【0106】
ステップ(a)および(b)についての上記記載はまた、ステップ(d)では植物が作物植物である必要はなく、作物植物と同じ種である必要さえない(そうであってもよいが)という違いを有するが、ステップ(c)および(d)にも当てはまる。トラップ植物は、任意の植物種であってよいが、好ましくは、昆虫有害(例えば、コナジラミ)に天然で感受性の植物である。
【0107】
植物は、作物から昆虫を誘い出し、それによって作物への発生を減少させるために、作物の近くで栽培してもよい。例えば、ストリップ状またはボーダー状のトラップ植物を作物植物の1つまたは複数の縁の周りに栽培してもよい。あるいは、作物植物およびトラップ植物を平行な列で栽培してもよい。明らかに、トラップ植物を作物植物内の別の区域、例えば、作物圃場の中央に栽培することも可能である。
【0108】
同じことが、作物圃場もしくは温室栽培植物の近くまたは中に散剤され得るトラップ材にも当てはまる。トラップ植物またはトラップ材は、作物植物からコナジラミを誘い出すために作物植物に十分近いことが好ましい。トラップ材は、本発明による組成物を添加する伝統的な昆虫トラップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への野生トマトヘッドスペースの処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。空:空の担体;pe:ペンタン:エーテルを含む担体;pennelli:S. pennelliの総ヘッドスペース(24時間にわたって回収した)を含む担体。バーは、3回の実験の平均値を表す(+/-SE)。
【図1B】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への野生トマトヘッドスペースの処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。空:空の担体;pe:ペンタン:エーテルを含む担体;typicum:S. habrochaites f. typicumの総ヘッドスペース(24時間にわたって回収した)を含む担体。バーは、3回の実験の平均値を表す(+/-SE)。
【図2A】4種のS.lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。p-シメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2B】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ガンマ-テルピネンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2C】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ベータ-ミルセンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2D】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。p-シメン、ガンマ-テルピネンおよびベータ-ミルセンの混合物による処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2E】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。アルファ-テルピネンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2F】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。アルファ-フェランドレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2G】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。7-エピ-ジンギベレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2H】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。R-クルクメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2I】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。ジンギベレンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図2J】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物への揮発性化合物(または混合物)の処理効果を示す(未処理設定の%として表す)図である。S-クルクメンによる処理。バーは、8回の実験の平均値である(+/-SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【図3】遺伝子移入(introgression)ライブラリースクリーニングを示す図である。
【図4】4種のS. lycopersicum植物の設定中の1植物へ添加したテルペンの効果を示す(対照設定の%として表す)図である。a)Z. officinalisジンギベレン、b)Z. officinalis S-クルクメン、c)S. habrochaites 7-エピ-ジンギベレン、d)S. habrochaites R-クルクメン。バーは、8回の実験の平均値を表す(±SE)。nt:揮発性物質を添加していない設定中の植物。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下の非限定的な実施例は、本発明の異なる実施形態を説明する。実施例において特に指示しない限り、当技術分野で既知の標準的なプロトコルが使用される。
【0111】
(実施例)
(実施例1)
トマトヘッドスペース揮発性物質およびコナジラミ嗜好性
1.1材料および方法
2005年10月にSanta Maria del Aguila (Almeria, Spain)の共通の温室でタバココナジラミの個体群を収集した。PCR解析により、この個体群は、Q-バイオタイプに属することが同定された。個体群を、人口気候室(温度28℃、16時間光)中、トマトおよびキュウリ植物の混合上で飼育した。特定の植物(処理、または未処理/対照-処理)に対する昆虫の嗜好性を自由選択バイオアッセイで試験した。
【0112】
コナジラミは、宿主を見つけるための視覚的手がかりならびに臭いの両方を使うことが知られている。トマトがメッシュカバーの下に配置された「ブラインド」アッセイで視覚的手がかりを取り除くことにより、タバココナジラミが揮発性物質の手がかりを使用して異なるトマトを区別することができることが本発明者らによって示された。
【0113】
コナジラミの宿主嗜好性に対するトマト植物の香気の効果を試験するために、より忌避性の(本発明者らによって以前確立された)野生トマト植物系統種LA716(S. pennelli)、PI27826(S. habrochaites f. typicum)およびPI126449(S.habrochaites f. glabratum)の情報化学物質の完全なブレンドを含むサンプリングされたヘッドスペースを、非忌避性/誘引性植物(cv Moneymaker)に施用した。種子は、1)C.M.Rick Tomato Genetic Resource Center(TGCR)、Department of Plant Sciences、University of California-Davis、One Shields Avenue、Davis、CA95616、アメリカ合衆国、または2)アメリカ合衆国農務省-Agricultural Research Service、Plant Genetic Resources Unit、Cornell University、630 West North Street、Geneva、NY14456、アメリカ合衆国のいずれかから得た。
【0114】
揮発性物質は、3週齢の野生トマト植物を、16時間の日中期間を含む24時間、大きなデシケーターの気候部屋(climatised room)に置くことにより回収した。デシケーターは、400ml分−1でカーボンフィルターを通した圧力空気で換気した。揮発性物質は、Kant他(2004)にしたがって、300mgのTenax樹脂を含むサンプリングチューブに捕捉した。次に、揮発性物質を、内部標準としてBAを含む1mlペンタン:ジエチルエーテル(4:1)でTenaxから溶離した。50℃でOpticインジェクションポート(ATAS GL International、Zoeterwoude、NI)に1μlの溶離液を注入することにより同定を行い、4℃/sの速度で275℃まで加熱した。分流は2分間で0ml、次いで25ml分−1であった。化合物は、キャリアガスとしてヘリウムを使用して、キャピラリーDB-5カラム(10×180μm、フィルム厚さ0.18μm;Hewlett Packard)に3分間40℃で、次いで30℃分−1で250℃までで分離した。カラムフローは2分間3ml分−1で、その後1.5ml分−1であった。溶離する化合物の質量スペクトルは、70eVで発生し(200℃でのイオン源)、20スペクトル秒−1の収集速度で、1597eVにおいて90秒の収集遅延で、時間飛行型MS(Leco Pegasus III、St.Joseph、MI、USA)に回収した。
試料同定および定量化は既知濃度の合成外部標準に基づいた(Fluka、MI、USA)。各々のトマト系統種を6回測定した。
さらに、タバココナジラミを使用したバイオアッセイで使用するための濾紙カード(Whatman、直径25mm)を含浸させるために1mlの試料(トマト揮発性物質を含むペンタン-ジエチルエーテル)を使用した。
【0115】
タバココナジラミを使用した自由選択実験を温室区画(28℃、RH65%)で行った。光は、250W/m2の放射で高圧ナトリウムランプ(Hortilex Schreder SONT PIA GP 600W)により供給した。タバココナジラミバイオタイプQ(アルメリア個体群)およびバイオタイプB(labculture Netherlands)の嗜好性行動を、異なる野生トマト(LA1777、LA2560、GI1560)およびS.lycopersicum(cv Moneymaker)を使用したバイオアッセイで比較した。植物は、互いに等距離で、土壌で満たしたプラスティックで被覆した木製トレー(170×100×20cm)の内側に入れた。200匹のコナジラミ成虫を捕捉し、5分間4℃に置き、次いで設定の中央に解放した。解放の10分および20分後、各々の植物上のコナジラミの数を記録した。タバココナジラミBとQとの間に異なる行動は見られなかったので、アルメリア(Q)個体群で全てのさらなるバイオアッセイを行った。
ヘッドスペース(総ヘッドスペースまたは単一化合物)を使用したバイオアッセイについては、4つの鉢植えのトマト植物(S. esculentum cv Moneymaker)を、50cmの距離で、正方形の設定に入れた。150匹のコナジラミ成虫を解放し、上記のように記録した。選択したヘッドスペース成分の忌避性への効果を試験するため、合成標準(FLUKA)を、10枚の濾紙ディスク(Whatman、直径25mm)または10個のゴム隔膜(Sigma Aldrich、Z167258)のいずれかに施用した。装填する前に、隔膜を24時間CH2Cl2中に置き、3日間空気乾燥させた(Heath他、1986)。揮発性物質を含む濾紙ディスクまたは隔膜を、金属線で4種の植物の1つに取り付けた。処理トマトの位置は無作為化した。揮発性物質を植物上に配置した5分後、コナジラミを解放した。各々の成分について、少なくとも8回の反復を行った。空の担体の3植物と比較して、化合物を常に同じ植物に添加した設定で処理を行った。揮発性物質による各々のアッセイの前に、同じ背景での比較を可能にするために同じ位置にある未処理設定中の4植物で実験を行った。
【0116】
1.2結果
結果を図1に示す。これらのアッセイは、より忌避性のトマト系統種の香気を構成する総ヘッドスペース成分を植物のヘッドスペースに添加した場合、その背景の臭いと比較して、トマト栽培品種Moneymakerが60%まで誘引性が少なくされ得ることを示した(図1)。ヘッドスペースを溶離した溶媒であるペンタン-エーテルは、忌避/誘引に何の効果も有さないことが示された(図1参照)。
【0117】
(実施例2)
タバココナジラミの忌避性に関与するヘッドスペース成分の決定
2.1材料および方法
16種の野生型および5種の栽培トマトの集合を一緒にした(Table 4(表4))。これらの栽培品種の各々について、コナジラミ忌避性のレベルは、開放系温室における自由選択バイオアッセイで無作為化した六角形設定で確立した。各々の実験では、300匹の新しい土着のコナジラミ成虫(アルメリア個体群)を、6種の無作為に選択した植物の中央に解放した。解放の20分後、各々の植物上のコナジラミの数を数えた。各々の設定を3回繰り返し、その後2種の最も忌避性の少ない植物を2種の新しい試験植物と交換した。段階的連続的試験によって、最終的に、明確に差次的な忌避性を有する7つのクラスに順位づけできた(Table 4(表4))。
【0118】
16種の野生トマトおよび5種の栽培トマト(Table 4(表4))のヘッドスペースを回収した。非かく乱3週齢トマト植物を40Lデシケーターに移した。上記のように揮発性成分を捕捉することにより、16時間の日中期間を含む24時間、ヘッドスペースをサンプリングした。GC-MS分析は、トマト系統種の各々について揮発性成分の独特の「フィンガープリント」をもたらした。各々の系統種は6回サンプリングした。
【0119】
2.2統計的分析
統計的分析では、同定したトマトヘッドスペースの成分とバイオアッセイで測定したコナジラミ忌避性の順位との間の相関が得られた。2つのアプローチ、段階的線形回帰分析およびMANOVAを使用して、8種の揮発性物質がコナジラミ忌避性と関連性があると同定されたが、24種の他の揮発性化合物は、忌避または誘引と関連性がないとして排除された。
【0120】
2.3結果
【0121】
【表4】
【0122】
Table 4(表4)から、栽培トマト(cv)のヘッドスペースは、コナジラミにして最低の忌避剤/最大の誘引剤である一方で、野生トマト系統種のヘッドスペースは、より忌避性であることが理解し得る。
【0123】
コナジラミの忌避または誘引に関与する化合物を同定し、Table 5(表5)(表6)に示す。ベータ-ミルセン、p-シメン、アルファ-フェランドレン、アルファ-テルピネンおよびガンマ-テルピネンは、S. pennelliに関連する忌避剤化合物である一方で、R-クルクメンおよび7-エピジンギベレンは、S. habrochaites(former typicum)をより非誘引性にするのに関与すると思われる。ベータ-フェランドレン、リモネンおよび2-カレンは、より誘引性の栽培S. lycopersicum植物と有意に関連する。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
(実施例3)
選択した成分およびこれらの成分の混合物を使用したバイオアッセイ
3.1材料および方法
ベータ-フェランドレン、ジンギベレンおよびクルクメンは、市販されていなかったので、合成しなければならなかった。Millar(1998、J. Nat. Prod 61、1025)の後、ジンギベレンおよびS-クルクメンは、ショウガ油から、7-エピジンギベレンおよびR-クルクメンは、S. habrochaites(PI27826)葉材料から単離した。
タバココナジラミによる、操作されたヘッドスペースを有するおよび有しない宿主嗜好性は、自由選択アッセイで調査した。各々の設定で、4種の栽培トマト(cv. Moneymaker)を上記のように試験した。揮発性物質を使用したバイオアッセイのために、ゴム隔膜(Sigma Aldrich Z167258)を24時間CH2Cl2で抽出し、3日間空気乾燥させた。揮発性物質の所望のブレンドを100μlヘキサン中ゴム隔膜に添加した。純粋な成分または純粋な成分の混合物を使用したバイオアッセイを上記のように行った。
【0128】
3.2結果
結果を図2に示す。
【0129】
7種の候補成分とタバココナジラミの行動との間の相関を明確に確認するため、宿主嗜好性を純粋な成分を使用したバイオアッセイで分析した。所望の純粋な揮発性化学物質(のブレンド)を、上記のように、濾紙カード上のMoneymaker裏面に添加した。外来性の揮発性物質が存在しない状態で、4つのMoneymaker植物の各々の上で再捕捉されたタバココナジラミの割合は、予想された25%から有意に逸脱しなかった(データ不掲載)。しかしながら、植物のうちの1つを10μgのp-シメンで処理した場合、この植物の誘引のレベルは、未処理設定の同一の植物と比較して、有意に減少した。処理植物を訪れるコナジラミの割合は、平均して44%減少した(p<0.001)(図2a)一方で、未処理植物は、タバココナジラミを宿す数が増加した。一般に、合成成分がタバココナジラミへの忌避効果を有する場合、空の担体の植物は、ますますより誘引性になった(図2)。他方で、ベータ-ミルセンによる処理は、コナジラミの行動に影響を及ぼさなかった(p=0.4798)(図2c)。有意な行動への効果は達成されなかったが、(p=0.102)(図2b)、ガンマ-テルピネンのMoneymaker裏面への施用は、忌避性を向上させるようであった。これら3種の成分の合計が、p-シメン単独よりも大きな効果をもたらすのかどうかを評価するために、系統種LA2560中で見られたのと同じ比率(1:12:3)のp-シメン:ガンマ-テルピネン:ベータ-ミルセンの混合物を試験した。これは、平均して45%の植物への訪問の減少をもたらした(p<0.001)(図2d)。遺伝子移入系統分析に由来する、追加のモノテルペン、ベータ-フェランドレンおよびガンマ-テルピネンの両者は、トマトの誘引性を有意に減少させた(それぞれ、p=0.030および0.014)(図2e、f)。最終的に、セスキテルペンである、トマト由来の7-エピ-ジンギベレンならびにその酸化生成物R-クルクメンおよびジンギベレンとその酸化生成物S-クルクメンを試験した。R-クルクメンおよび7-エピ-ジンギベレンの両者も明確な忌避効果を有した(p<0.001)(図2g〜j)。
【0130】
(実施例4)
トマト揮発性物質のタバココナジラミの応答との直接的関連付け
4.1材料および方法
記載の化学物質のパラフィンオイル(Uvasol、Merck)中10〜3倍希釈液への触角の応答性を確認するために触角電図法(electroantennography)(EAG)を使用した。濾紙(2cm2;Schleicher&Schuell、Dassel、Germany)の小片を、100μlの標準希釈液またはパラフィンオイルのみ(対照)に浸漬した。濾紙を10mlのガラスシリンジ(Poulten&Graf GmbH、Wertheim、Germany)に挿入した。触角に対して5mlの空気を吹きかけることにより、再現性のある刺激を供給した(Schutz他、1999)。各々の標準希釈液についてEAG応答を記録した。パラフィンオイルに対する応答は、負の対照とみなし、全ての報告されたEAG測定値から減じた。
【0131】
(実施例5)
遺伝子移入ライブラリーにおけるバイオアッセイ
S. pennelli系統種で見つかった興味深い忌避レベルのために、その後、遺伝子移入ライブラリー(親植物S. pennelli LA716×S. lycopersicum cv Moneyberg)をバイオアッセイでスクリーニングした(図3)。感受性親植物と比較して誘引が有意に減少したいくつかの系統を選択した。これらの選択した系統ならびにMoneyberg親植物のヘッドスペース組成物を同定した。Moneybergヘッドスペースと比較して、選択した系統においてはα-フェランドレン、α-テルピネンおよびp-シメンの濃度が有意に高かった。
【0132】
(実施例)
タバココナジラミ(サツマイモコナジラミ)は、1889年に有害生物昆虫として初めて記載され、世界中で園芸および農業作物に対する大変な脅威であり続けている。タバココナジラミは、非常に広範な宿主範囲を有し、新たに表れたバイオタイプBおよびQは、その地理的分布を拡大し続けている。被害は、直接的摂食およびコナジラミのみつによる真菌増殖から深刻な問題となるウイルス伝染に及ぶ。タバココナジラミは、100種を超える異なるウイルスを媒介し、その中で壊滅的なベゴモウイルス(Jones、2003)は、莫大な経済的被害を構成する収量の全体的な減少および総作物損失をもたらす。ウイルスの突然変異率が高いため、持続可能なウイルス耐性の育種は問題が多いままである。その上、従来のコナジラミ発生の制御は、急速に出現する殺有害生物剤のために困難である。コナジラミの生物学的防除の成功は、わずかな作物種に制限されてきた。タバココナジラミは、現在、世界で最も発生的で適応性の有害生物種の1つと位置付けられている。どのようにコナジラミが正確に宿主の位置を突き止めるのかは知られていないが、視覚に加えて、コナジラミは、植物によって放射される揮発性物質からの嗅覚の手がかりを使用しているようである。我々は、トマト植物によって放射される揮発性物質に対するコナジラミの行動応答を調査し、選択した揮発性物質に対する電気生理学的応答を決定した。
2種のセスキテルペン、ジンギベレンおよびクルクメンがコナジラミの忌避に推定的に関与していることを明らかにするために、揮発性ヘッドスペース分析と組み合わせて、5種の栽培トマト変種(Solanum lycopersicum)および16種の野生Solanum系統種を使用した自由選択バイオアッセイを、多重線形回帰およびMANOVA分析に供した。次に、我々は、効果的な殺昆虫剤および忌避剤として記載されてきた(Maluf他、2001;Zhang他、2004)ショウガ(Zinger officinalis)油から、ジンギベレンを精製した。予想外に、我々の実験設定において、タバココナジラミは、ジンギベレンのこの調製物によって忌避されるように見えなかった(図4a)。しかしながら、同濃度で、Solanum habrochaites(PI127826)毛状突起から精製した7-エピ-ジンギベレンは、コナジラミ訪問の数を減少させるのに非常に有効であった(図4c)。
Solanum habrochaites(PI127826)から単離したジンギベレンは、Diels-Alder付加物に転換することにより精製した(Millar、1999)。この付加物の構造は、NMRおよびX線解析により立証した(補足データ)。この慎重な解析は、Solanum habrochaites(PI127826)が7-エピ-ジンギベレンを含有し、ショウガ油がそのジアステレオマーであるジンギベレンを含有するというCoates他(1994)の結論を確認した。
空気に曝露すると、7-エピ-ジンギベレンおよびジンギベレンは、それぞれ、R-およびS-クルクメンに急速に転換された。その後、精製したクルクメンエナンチオマーを選択バイオアッセイに使用した。明らかに、タバココナジラミは、SolanumのR-クルクメン(図4d)、7-エピ-ジンギベレンの誘導体により忌避されるだけであったが、対照的に、Zinger officinalisのS-クルクメンは忌避するように見えなかった(図4b)。さらに、全4化合物はコナジラミの触角によって認識されるが、首尾一貫して、R-クルクメンで最高の感度が記録されることが、触角電図法(Schutz他、1999;Weissbecker他、2004;Thakeow他、2008)によって示された(Table Z(表8))。
【0133】
【表8】
【0134】
我々のデータは、植物のヘッドスペース中の揮発性物質が、宿主植物についてコナジラミがする選択に明確に影響を及ぼし、昆虫が視覚的手がかりのみに基づいて選択しないことを示している。タバココナジラミの触角は、特定のエナンチオマーとジアステレオマーを区別することができる非常に特異的な受容体を有するようである。特に、セスキテルペンの生合成はよく研究されてきたので、これは作物植物のヘッドスペースを変化させることによってタバココナジラミの行動を操作する可能性を広げる。
【0135】
ジンギベレン、7-エピジンギベレン、(S)-クルクメンおよび(R)-クルクメンの単離、精製および構造決定
Millar1)によって記載されているように、ショウガ油(Natura Sanat B.V.)からジンギベレン2を単離した。2つのジアステレオマー1aおよび1bの4:1混合物としてDiels-Alder付加物を単離した。塩基加水分解の後、純粋な2を得ることができた。
【0136】
【化1】
【0137】
凍結組織のヘキサン抽出により、Solanum habrochaites(PI127826)の葉および茎材料から7-エピジンギベレン5を単離し、上記のように精製した。我々の2および5のNMR-スペクトルとBreedenおよびCoates2)によって与えられたスペクトルとの比較は、構造についての絶対的確実性をもたらさなかった。Diels-Alder付加物4aは、結晶化によって精製することができ、それによってX線解析により炭素4および7における立体化学の明確な構造的証拠を得ることが可能になった。
【0138】
【化2】
【0139】
BreedenおよびCoates2(1994)によって記載されたように、Pd/C (パラジウム炭素)を使用してベンゼン中で加熱することにより、化合物2および5を脱水素化した。精製後、クルクメン3および6が得られた。両方の単離したクルクメンは10〜20%の二重結合異性体、おそらく、それぞれ7aおよび7bを持っていた(1H NMRにおいて、δ4.67および4.64で2×br.s)。
【0140】
実験
ジンギベレン Diels-Alder付加物1
ショウガ油をクーゲルロール蒸留した。沸点60〜100℃/1mmの画分から、2.0gをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解した。10mlテトラヒドロフラン中の0.88g PTAD(4-フェニル-1,2,4-トリゾリン-3,5-ジオン)の溶液を、周囲温度で10分にわたって滴加した。オレンジ色の反応混合物を真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/8〜15%アセトン)により精製して、ジアステレオ異性体1aおよび1bの4:1混合物から成る無色の油826mgを得た。
主要異性体:
1H NMR: 7.3〜7.5 (m, 5H)、5.99 (dt, J=5.7, 1.8, 1H)、5.10 (br.t. J=7.0, 1H)、4.95 (dd, J=5.7, 2.5, 1H)、4.72 (dt, J=3.1, 2.2, 1H)、2.33 (ddd, J=12.8, 8.8, 3.5, 1H)、2.09 (m, 3H)、1.95 (d, J=1.7, 3H)、1.72 (s, 3H)、1.64 (s, 3H)、0.89 (d, J=6.5, 3H)。
13C NMR: 156.4, 156.1, 140.8, 131.8, 131.6, 129.0, 128.0, 125.4, 124.1, 120.6, 55.1, 53.6, 41.3, 36.5, 34.3, 28.6, 25.7, 24.9, 19.4, 17.7, 16.3
微量異性体:
いくつかの特徴的なシグナル:
1H NMR: 6.11〜6.13 (m)、1.03 (d, J=6.8)。
13C NMR: 124.4, 123.5, 55.2, 53.2, 40.8, 35.4, 33.9, 28.2, 24.8, 17.4
【0141】
ジンギベレン2
1aおよび1bの混合物350mgを、アルゴン下で、エタノール中2M KOH 11mlに溶解し、3時間還流した。冷却後、水33mlを添加した。ペンタンで混合物を4回抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を真空中で除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン)で精製し、その後100℃/1mmでクーゲルロール蒸留して、純粋な2を122mg得た。
1H NMR: 5.78 (ddd, J=9.7, 2.5, 1.7 Hz, 1H)、5.64 (dd, J=9.7, 3.1, 1H)、5.46 (br.s., 1H)、5.11 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.23〜2.31 (m, 1H)、1.80〜2.15 (m, 4H)、1.72 (dd, J=2.0, 1.8, 3H)、1.69 (四重線. J=1.3, 3H)、1.61 (d, J=0.7, 3H)、1.52〜1.60 (m, 1H)、1.36〜1.45 (m, 1H)、1.13〜1.26 (m, 1H)、0.88 (d, J=6.8, 3H)。
13C NMR: 131.20, 131.08, 131.05, 127.86, 124.82, 120.39, 38.03, 36.02, 34.24, 25.94, 25.70, 24.42, 21.09, 17.65, 16.54。
【0142】
(S)-クルクメン3
2ml乾燥ベンゼン中の28mgジンギベレン2の溶液をアルゴン下、全体で10%Pd/C 18mgを使用して還流し、混合物を20時間密閉管中、150℃で加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン)に供して、約7%の7aとともに9mgの3を得た。
3 1H NMR: 7.07〜7.12 (m, 4H)、5.10 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.66 (六重線, J=6.9, 1H)、2.33 (s, 3H)、1.85〜1.92 (m, 2H)、1.68 (br.s, 3H)、1.56〜1.65 (m, 2H)、1.54 (br.s, 3H)、1.23 (d, J=7.0, 3H)。
13C NMR: 144.6, 135.1, 131.4, 128.9, 126.9, 124.5, 39.0, 38.4, 26.2, 25.7, 22.5, 21.0, 17.7
微量異性体7aのいくつかの特徴的なシグナル:
1H NMR: 4.67 (br.s)、4.64 (br.s)、1.94〜1.99 (m)。
13C NMR: 126.8, 38.0, 29.7。
【0143】
7-エピジンギベレン Diels-Alder付加物4
粗製トマト植物抽出物を、シリカゲルプラグ上ペンタンでろ過した。得られたほぼ純粋な(>90%)7-エピジンギベレン5(449mg)を、1について記載したようにPTADと反応させた。フラッシュクロマトグラフィー後、異性体4aおよび4bの4:1混合物208mgを得た。結晶化(ジイソプロピルエーテル)により、白色小板として4a 140mgを得た。融点107〜109℃。
1H NMR: 6.01 (dt, J=5.7, 1.8, 1H)、5.08 (t 七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、4.94 (dd, J=7.7, 2.7, 1H)、4.72 (td J=3.3, 2.3, 1H)、2.35 (ddd, J=13.0, 8.7, 3.5, 1H)、1.24 (ddd, J=13.1, 4.5, 2.5, 1H)、2.00〜2.13 (m, 2H)、1.83〜1.94 (m, 1H)、1.40〜1.50 (m, 1H)、1.08〜1.20 (m, 1H)、1.95(d, J=1.8, 3H)、1.71 (d, J=1.1, 3H)、1.62 (d, J=0.8, 1H, 3H)、0.98〜1.04 (m、1.00にsをもつ4H) 3)
13C NMR: 156.4, 156.2, 140.9, 131.8, 131.6, 129.0, 128.1, 125.4, 124.2, 120.4, 55.0, 53.7, 41.2, 37.1, 33.7, 29.1, 25.7, 25.2, 19.3, 17.7, 17.3。
【0144】
7-エピジンギベレン5
4aおよび4bの4:1混合物306mgを、2について記載したように加水分解した。無色の油として、127mgの純粋な5を得た。αD20°-73.3°(CHCl3 c=0.65)。
1H NMR: 5.80 (dt, J=9.8, 2.0, 1H)、5.68 (dd, J=9.7, 3.1, 1H)、5.46 (br.s, 1H)、5.11 (t.七重線, J=7.1, 1.4, 1H)、2.23〜2.31 (m, 1H)、1.88〜2.13 (m, 4H)、1.72 (dd, J=3.9, 1.7, 3H)、1.69 (d J=1.2, 3H)、1.61 (s, 3H)、1.38〜1.54 (m, 2H)、1.14〜1.23 (m, 1H)、0.90 (d, J=6.7, 3H)。
13C NMR: 131.2, 131.1, 129.7, 128.2, 124.8, 120.6, 38.4, 36.0, 34.1, 26.3, 25.9, 25.7, 21.1, 17.7, 16.7。
【0145】
(R)-クルクメン6
57mgの7-エピジンギベレン5を、3について記載したように脱水素化した。26mgの6を、約20%の7bを含む無色の油として得た。
1H NMRおよび13C NMR:3と同じ。
【0146】
参照および注釈:
1.Millar, J.G. J. Nat. Prod. 1998、61、1025。
2.Breeden, D.C.;Coates R.M. Tetrahedron 1994、11123
3.C7およびC14のプロトンの1H-シグナルは、同じ化学シフトを有しているので、CH3-14は一重線として現れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレン、を含むまたはから成る組成物を供給するステップと、
(b)前記組成物を、1回または複数回、複数の作物植物に添加するステップと、
を含む、コナジラミを防除する方法。
【請求項2】
(c)ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンから選択される1種または複数種の誘引剤化合物、を含むまたはから成る組成物を供給するステップと、
(d)任意選択で、前記組成物を、1回または複数回、1つまたは複数のトラップ植物および/またはトラップ材に添加するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が液体、好ましくは揮発性液体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が、天然起源の植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
組成物が、天然起源のトマト植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、(a)の前記忌避剤化合物もしくは(c)の誘引剤化合物の1種のみまたは2種のみ、を含むまたはから成る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
忌避剤または誘引剤化合物が化学的に合成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物を、(b)において前記作物植物に添加する、および/または前記組成物を支持材に添加し、前記組成物を含む支持材を前記作物植物の上もしくは間もしくは近くに配置することにより、(d)において前記トラップ植物もしくはトラップ材に添加する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
対照植物と比較して、作物植物へのコナジラミ発生を少なくとも5%減少させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
処理植物および対照植物上のコナジラミの数を数えることにより、発生の減少を評価する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R-クルクメンを有効成分として含む、またはR-クルクメンから成る、コナジラミの忌避に使用するための組成物。
【請求項12】
R-クルクメン、ならびにS-クルクメン、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンから成る群から選択される少なくも1種の化合物を含む組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記化合物の2種以下、を含むまたはから成る、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が液体、好ましくは揮発性液体である、請求項11から13に記載の組成物またはその使用。
【請求項15】
組成物が、天然起源の植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、天然起源のトマト植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項11から15のいずれか一項に記載の組成物またはその使用。
【請求項17】
誘引剤化合物が化学的に合成される、請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、緩徐放出および/または制御放出製剤である、請求項11から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか一項に記載の組成物を含む固体支持材。
【請求項20】
吸汁性または吸血性昆虫有害生物忌避剤組成物の調製のためのR-クルクメンの使用。
【請求項21】
吸汁性または吸血性昆虫有害忌避剤組成物の調製のために、R-クルクメンが、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種と組み合わされる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記吸汁性昆虫有害生物がコナジラミであり、吸血性昆虫有害生物がカまたはユスリカである、請求項20または21に記載の使用。
【請求項1】
(a)R-クルクメン、ならびに任意選択で、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレン、を含むまたはから成る組成物を供給するステップと、
(b)前記組成物を、1回または複数回、複数の作物植物に添加するステップと、
を含む、コナジラミを防除する方法。
【請求項2】
(c)ベータ-フェランドレン、リモネンおよび/または2-カレンから選択される1種または複数種の誘引剤化合物、を含むまたはから成る組成物を供給するステップと、
(d)任意選択で、前記組成物を、1回または複数回、1つまたは複数のトラップ植物および/またはトラップ材に添加するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が液体、好ましくは揮発性液体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が、天然起源の植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
組成物が、天然起源のトマト植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、(a)の前記忌避剤化合物もしくは(c)の誘引剤化合物の1種のみまたは2種のみ、を含むまたはから成る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
忌避剤または誘引剤化合物が化学的に合成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物を、(b)において前記作物植物に添加する、および/または前記組成物を支持材に添加し、前記組成物を含む支持材を前記作物植物の上もしくは間もしくは近くに配置することにより、(d)において前記トラップ植物もしくはトラップ材に添加する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
対照植物と比較して、作物植物へのコナジラミ発生を少なくとも5%減少させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
処理植物および対照植物上のコナジラミの数を数えることにより、発生の減少を評価する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R-クルクメンを有効成分として含む、またはR-クルクメンから成る、コナジラミの忌避に使用するための組成物。
【請求項12】
R-クルクメン、ならびにS-クルクメン、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンから成る群から選択される少なくも1種の化合物を含む組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記化合物の2種以下、を含むまたはから成る、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が液体、好ましくは揮発性液体である、請求項11から13に記載の組成物またはその使用。
【請求項15】
組成物が、天然起源の植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、天然起源のトマト植物のヘッドスペース組成物ではない、請求項11から15のいずれか一項に記載の組成物またはその使用。
【請求項17】
誘引剤化合物が化学的に合成される、請求項11から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、緩徐放出および/または制御放出製剤である、請求項11から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか一項に記載の組成物を含む固体支持材。
【請求項20】
吸汁性または吸血性昆虫有害生物忌避剤組成物の調製のためのR-クルクメンの使用。
【請求項21】
吸汁性または吸血性昆虫有害忌避剤組成物の調製のために、R-クルクメンが、ベータ-ミルセン、パラ-シメン、ガンマ-テルピネン、アルファ-テルピネン、アルファ-フェランドレン、ジンギベレンおよび/または7-エピ-ジンギベレンの1種または複数種と組み合わされる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記吸汁性昆虫有害生物がコナジラミであり、吸血性昆虫有害生物がカまたはユスリカである、請求項20または21に記載の使用。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図3】
【図4】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2012−519197(P2012−519197A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552368(P2011−552368)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001599
【国際公開番号】WO2010/099985
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001599
【国際公開番号】WO2010/099985
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]