説明

R2及びR2*マッピングのための細胞内及び細胞外のSPIO試薬の定量化

対象者の一連のT2強調画像を取得する段階;前記対象者の一連のT2強調画像を取得する段階;及び前記対象者の前記T2強調画像と前記対象者の前記T2強調画像との両方に基づいて、前記対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成する段階;を含む、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価。生成する段階は更に、(i)R2と、細胞内の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(ii)R2と、細胞内の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(iii)R2と、細胞外の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(iv)R2と、細胞外の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、の間の所定の関係(26)に更に基づいていても良い。前記所定の関係は、種々の濃度の実質的に混じり気のない細胞内の前記磁性剤を有し、種々の濃度の実質的に混じり気のない細胞外の前記磁性剤を有しする、複数の、較正のためのファントムのR2及びR2測定に基づいて作り出されても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医術、磁気共鳴技術及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞治療といった、対象者に生体細胞投与を伴う従来の技術は、対象者内の細胞の分布に必然的に敏感である。対象者内の細胞の分布を評価するための従来の方法は、超常磁性酸化鉄(SPIO)といった磁性剤で細胞に標識を付け、磁気共鳴(MR)イメージングを使用して対象者を撮像することである。従来の幹細胞治療のアプローチにおいて、幹細胞は、SPIO試薬を含む媒体中で培養される。培養後、細胞は、細胞外のSPIO試薬を除去するよう処理され、その後、対象者に投与される。対象者の中で、SPIO試薬は、SPIOで標識付けられた(SPIO−tagged)細胞の近辺で、磁場を撹乱し、磁気共鳴スピン緩和時間を減少させる。T2又はT2強調画像(又は、同等に、R2=1/T2で、R2=1/T2である、R2又はR2画像)は、したがって、SPIOで標識付けられた細胞に関するコントラストを供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この技術は、定性的に効果的であるよう示されてきた。しかしながら、SPIOで標識付けられた細胞の密度を定量するための試みが、うまくいっていない。T2及びT2信号は、細胞外のSPIOと比較すると、細胞内のSPIOの影響を別に受けるということが知られている。これは、細胞外のSPIOの不完全な除去又は細胞死の後の細胞外空間へのSPIOの放出が、SPIOで標識付けられた細胞濃度に関する、信頼できる定量化を妨げているという推察につながる。出血、細胞壊死、細胞形態学及び帯電効果などといった他の要因も、可能性のある原因として引用されているが。Kuhlpeter et al., “R2 and R2 Mapping for Sensing Cell−bound Superparamagnetic Nanoparticles: InVitro and Murine in Vivo Testing”, Radiology vol. 245 no. 2, pp. 449−57(2007); Rad et al., “Quantification of Superparamagnetic Iron Oxide(SPIO)−Labeled Cells Using MRI”, Journal of Magnetic Resonance Imaging vol. 26 pp. 366−74(2007)参照。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで実施例として示され、述べられたいくつかの説明的な実施形態に関して、方法は、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価に関して開示され、当該方法は、対象者の一連のT2強調画像を取得する段階;前記対象者の一連のT2強調画像を取得する段階;及び前記対象者の前記T2強調画像及び前記対象者の前記T2強調画像の両方に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた前記細胞の定量的評価を示す値を生成する段階;を含む。
【0005】
ここで実施例として示され、述べられたいくつかの更なる説明的な実施形態に関して、直前の段落で前述された方法を実行するよう構成された磁気共鳴イメージングシステムが開示され、磁気共鳴イメージングシステムに、直前の段落で前述された方法を実行させることを実行可能にする命令を記憶している、デジタル記憶媒体が開示される。デジタル記憶媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、静電記憶装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などであっても良い。
【0006】
ここで実施例として示され、述べられたいくつかの説明的な実施形態に関して、システムは、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価に関して開示され、当該システムは、磁気共鳴イメージングシステム;該磁気共鳴イメージングシステムに、前記対象者のT2強調画像及びT2強調画像の両方を取得させるように、かつ、前記T2強調画像及び前記T2強調画像の両方に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成するよう更に構成された、処理装置を含む。
【発明の効果】
【0007】
ある効果は、MRイメージングを使用して、磁性剤で標識付けられた細胞の分布又は密度のより正確な評価に存在する。
【0008】
他の効果は、対象者への生体細胞投与を伴う、幹細胞治療といった、インターベンション技術の改良された評価に存在する。
【0009】
更なる効果は、次の詳細な説明を読んで理解することで、当業者によって理解されるであろう。
【0010】
図面は、好ましい実施形態を説明する目的のためだけであり、発明を制限するよう解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、磁気共鳴イメージングを使用した磁気的に標識付けられた細胞濃度の定量的評価のためのシステムを図式的に示す。
【図2】図2は、ファントム(phantoms)から取得された、図1のシステムの使用のための、較正データを図式的に示す。
【図3】図3は、細胞内のSPIO及び細胞外のSPIOの推定割合であって、これらの割合に関して理論値と比較された、推定割合を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照するに、磁気共鳴(MR)イメージングシステムは、図示されたAchievaTM magnetic resonance scanner(Koninklijke Philips Electronics N.V., Eindhoven, The Netherlandsから入手可能)又はInteraTM若しくはPanoramaTM magnetic resonance scanner(両方ともKoninklijke Philips Electronics N.V.から入手可能)又は他の工業的に入手可能な磁気共鳴断層撮影装置又は非工業的な磁気共鳴断層撮影装置などといった、磁気共鳴断層撮影装置10を含む。通常の実施形態において、磁気共鳴断層撮影装置は、静磁場(B)を発生させる超伝導又は常伝導主磁石、静磁場上の選択された傾斜磁場を重ね合わせるための、傾斜磁場コイル巻線の組、磁気共鳴を発生させるために選択された周波数で、無線周波数電磁場(B)を発生させるための、無線周波数励起システム(通常、H磁気共鳴、胎盤(placenta)に含まれる他の磁気共鳴原子核の励起も熟慮されるけれども)、及び対象者から放出された磁気共鳴信号を検出するための、1つの無線周波数受信コイル又は2、3、4、16若しくはそれより多くの無線周波数受信コイルの配列を含む、無線周波数受信システムといった、(図示しない)内部コンポーネントを含む。
【0013】
磁気共鳴断層撮影装置10は、磁気共鳴励起、傾斜磁場により通常発生する空間符号化(spatial encoding)及び磁気共鳴信号読み出しを規定する、磁気共鳴イメージングスキャンのシーケンスを実行するために、磁気共鳴制御モジュール12により制御される。復元モジュール14は、磁気共鳴イメージメモリー16内に格納される、磁気共鳴イメージ又は空間地図を発生させるための、取得された磁気共鳴信号を再構築する。ある実施形態において、コンポーネント12、14、16は、磁気共鳴断層撮影装置10の製造業者及び/又は1つ以上の第3者のベンダーにより供される、例えば、図示されたコンピュータ18の(図示しない)デジタル処理装置上で実行しているソフトウェアとして具体化された、汎用の工業用磁気共鳴イメージング製品である。さらに、コンポーネント12、14、16の1つ以上又は全ては、特注の又はカスタマーモディファイされた(customer−modified)コンポーネントであっても良い。
【0014】
定量的細胞濃度評価モジュール20は、対象者内の標識付けられた細胞濃度又は該濃度の分布の、定量的評価を実行するための、磁気共鳴イメージングシステムを構成する。モジュール20は、例えば、図示されたコンピュータ18のデジタル処理装置上で実行するソフトウェアとして具体化されても良く、相互作用する別のデジタル処理装置として具体化されても良い。
【0015】
従来、細胞外のSPIO又は他の磁性剤を除去するための、洗浄又は他の処理は、細胞濃度を評価する目的のイメージングの間、細胞外の磁性剤を無視することができる十分な程度にまで、細胞外の磁性剤を除去するに十分であると一般的に仮定されてきた。しかしながら、ここで開示されるように、そのような処理の後に残っている細胞外の磁性剤は、通常、無視できず、SPIOといった磁性造影剤の、細胞死の後の細胞外空間への放出は、MRに基づく細胞濃度の定量的解析に、かなりの誤差も引き起こす。さらに、ここで開示された技術は、細胞内及び細胞外の磁性剤の先天的に知られた混合物を含む、ファントム(phantoms)から取得された較正MRデータと併せて、対象者からのR2及びR2(又は、同等に、T2及びT2)MRデータの両方の測定に基づく標識付けられた細胞濃度のより正確な定量化を供する。
【0016】
定量的細胞濃度評価モジュール20は、MR制御モジュール12と連絡する又は一部であり、MR断層撮影装置10に、対象者又は細胞内磁性剤、細胞外磁性剤又は細胞内磁性剤及び細胞外磁性剤の混合物を含むファントムのT2強調画像及びT2強調画像の両方を取得させる、T2及びT2強調画像取得サブモジュール22を含む。説明される実施形態において、対象者の一連のT2強調画像が取得され、対象者の一連のT2強調画像が取得され、R2及びR2マッピングサブモジュール24は、各々の一連のT2及びT2強調画像に基づいて、対象者のR2マップ及びR2マップを生成する。
【0017】
続けて図1を参照して、較正操作において、サブモジュール22、24は、実質的に細胞外の磁性剤を有さない、細胞内の磁性剤の種々の濃度を含む、いくつかのファントムに関して、かつ、実質的に細胞内の磁性剤を有さない、細胞外の磁性剤の種々の濃度を含む、いくつかのファントムに関して、R2及びR2を測定するよう使用される。これらの測定は:(i)細胞内の磁性剤に関する基準R2緩和曲線(referenece R2 relaxivity curve);
(ii)細胞内の磁性剤に関する基準R2緩和曲線(referenece R2 relaxivity curve);(iii)細胞外の磁性剤に関する基準R2緩和曲線;及び(iv)細胞外の磁性剤に関する基準R2緩和曲線を含む較正データ26を生成するよう使用される。
【0018】
例えば、実際に実行された較正において、6つのファントムが、較正データ26を生成するために使用された。6つのファントムは、各々が、シリンダー形状のガラスチューブ内の蒸留水中に浸漬された1ml 1%アガロースゲルで満たされた、6つのバイアルであった。バイアルの3つは、異なる濃度のフリーの(free)SPIO(フェルモキシデス(ferumoxides)で希釈された)を含んでいた。バイアルの3つは、異なる濃度の、SPIO標識付けられたC6グリオーマ細胞を含んでいた。これら6つの「純粋な」バイアルは、較正緩和曲線26を生成するために使用された。
【0019】
6つのファントムのバイアルの各々は、サブモジュール22、24を使用して測定された。これらの説明的なMR断層撮像は、4cmの受信のみの無線周波数コイル(Philips Research Europe, Hamburg, Germany)と3T clinical AchievaTM scanner(Achieva, Philips Healthcare, The Netherlands)を使用して実行された。MRイメージは、70mm×70mmの視野(FOV)、スライス厚=1mm、データマトリックス=128×128、NEX=2で取得された。R2マップは、マルチグラディエントエコーシーケンス(multiple gradient echo sequence):TR=900ms、first TE/deltaTE=2.8ms/1.8ms、フリップ角=30度、25エコー、で取得された。R2マップは、ターボスピンエコーシーケンス(turbo spin echo sequence):TR=1000ms、first TE/deltaTE=7ms/7ms、20エコー、で取得された。これらは、単に説明的なスキャンパラメータであり、R2及びR2データを取得するための、実質的に如何なる他のスキャン構成も適切である。
【0020】
続けて図1を参照し、図2を更に参照して、細胞内のSPIOだけを含む又は細胞外のSPIOだけを含む、各々の「純粋な」構成のファントムに関する、R2及びR2値が、決定された。SPIOで標識付けられた細胞を有する3つのファントムのバイアルから得られた3つのR2値が、細胞内のSPIOに関するR2緩和曲線を生成するために適合された。SPIOで標識付けられた細胞を有する3つのファントムのバイアルから得られた3つのR2値が、細胞内のSPIOに関するR2緩和曲線を生成するために適合された。フリーのSPIOを有する3つのファントムのバイアルから得られた3つのR2値が、細胞外のSPIOに関するR2緩和曲線を生成するために適合された。フリーのSPIOを有する3つのファントムのバイアルから得られた3つのR2値が、細胞外のSPIOに関するR2緩和曲線を生成するために適合された。これらの適合において、R2(又はR2)と、細胞内の(又は細胞外の)濃度との間の直線関係が仮定された。結果である緩和曲線は図2に示される。
【0021】
図2は、細胞外のSPIOのファントムのバイアルが、同じようなR2及びR2緩和能を有することを示す。具体的には、細胞外のSPIOに関して、R2基準緩和曲線は、3.00(μg/ml)−1−1の傾きを有し、一方、R2基準緩和曲線は、3.70(μg/ml)−1−1の傾きを有する。明確な対照として、細胞内のSPIOのR2及びR2緩和能は、大きく異なる。具体的には、R2基準緩和曲線は、0.65(μg/ml)−1−1の傾きを有し、一方、R2基準緩和曲線は、8.24(μg/ml)−1−1の傾きを有する。
【0022】
結果として、細胞内及び細胞外の磁気標識付加剤の未知の混合物に関して、もしR2及びR2値が類似しているなら、このことは、サンプルが大部分がフリーである又は細胞外の磁気標識付加剤であることを示し、一方、R2値がR2値よりずっと小さいなら、このことは、サンプルが大部分が化合している又は細胞内の磁気標識付加剤であるということを示す。
【0023】
細胞内の磁性剤及び細胞外の磁性剤の所定の混合物に関して、(スピンエコーといった)T2強調エコーに関するMR信号の減衰(decay)S(t)が双指数関数として記述可能である:
S(t)〜[intra]×exp(−t×R2([intra]))+[extra]×exp(−t×R2([extra])) (1)
式中、[intra]及び[extra]は、各々、細胞内及び細胞外の磁性標識付加剤の濃度であり、記号「〜」は、比例関係を示す。成分の減衰率R2([intra])及びR2([extra])は、図2に記載の[intra]及び[extra]の濃度の関数である。同様な方法で、(グラディエントエコーといった)T2強調エコーに関するMR信号の減衰S(t)が双指数関数として記述可能である:
S(t)〜[intra]×exp(−t×R2([intra]))+[extra]×exp(−t×R2([extra])) (2)
式中、この場合も、減衰率R2([intra])及びR2([extra])は、図2に記載の[intra]及び[extra]の濃度の関数である。R2=1/T2でR2=1/T2であるので、式(1)及び(2)において、減衰率R2及びR2は、各々、1/T2及び1/T2に随意に取り替えることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、濃度[intra]及び[extra]を定量的に決定するために、細胞内の磁性剤及び細胞外の磁性剤の濃度、[intra]及び[extra]であるフィッティングパラメータと、適切な振幅スケーリングパラメータ(amplitude scaling parameter)を用いて、式(1)及び(2)を、細胞内及び細胞外の磁性剤の未知の混合物から得られたT2強調及びT2強調MR信号に同時に適合することが、熟慮される。しかしながら、そのようなフィッティングのアプローチは、コンピュータ的に困難であり、データ中のノイズに敏感であるかもしれない。
【0025】
したがって、実際に実行された実施形態において、細胞内及び細胞外のSPIOの割合の評価は、次の操作を採用するアプローチを使用して決定された。混合物のR2信号は、単一指数関数の減衰で適合され、したがって、おおよそのR2値を与えた。その後、排他的にSPIOで標識付けられた細胞を含む混合物と仮定して、バイアルの第1のパラメータR2intraSPIOが、おおよそのR2に基づいて、細胞内のSPIOの基準緩和曲線から計算された。言い換えれば、おおよそのR2値が、図2の右下隅のプロットに入力され、細胞内の鉄濃度推定値を作り出し、それは、その後、R2intraSPIOのパラメータを生成するために、図2の左下隅のプロットに入力された。
【0026】
同様の方法で、排他的にフリーのSPIOを含む混合物と仮定して、バイアルの第2のパラメータR2extraSPIOが、おおよそのR2に基づいて細胞外のSPIOの基準緩和曲線から計算された。言い換えれば、おおよそのR2値が、図2の右上隅のプロットに入力され、細胞外の鉄濃度推定値を作り出し、それは、その後、R2extraSPIOのパラメータを生成するために、図2の左上隅のプロットに入力された。
【0027】
R2信号はその後使用された。具体的には、混合物のR2信号は、その後、双指数関数減衰モデルで適合された:
S(t)=a×exp(−t×R2intraSPIO)+b×exp(−t×R2extraSPIO) (3)
ここでは、a及びbだけが未知のパラメータである。細胞内のSPIO及び細胞外のSPIOの割合はその後、適合された割合a/bとして推定された。この情報は、その後、適合方程式(1)及び/又は(2)内の、適合されたパラメータの数を減らすために使用することができる。別のアプローチにおいて、T2強調信号の単一指数関数の適合により得られたおおよそのR2は、図2の右下隅のプロットに入力され、細胞内の鉄濃度推定値を生成することができ、それは、細胞内の鉄濃度の改善された推定値を供するために、割合a/bにより調整される。
【0028】
図3を参照して、式(1)及び(2)に対する近似解を求めるための、この後者の近似アプローチは、7つのファントムの組を使用して検査された。ファントムは、各々、シリンダー形状のガラスチューブ内の蒸留水中に浸漬された1ml 1%アガロースゲルで満たされた。検査のために使用された7つのバイアルは、フリーのSPIO及びSPIOで標識付けられた細胞の種々の混合物を、細胞内のSPIO及び細胞外のSPIOの濃度の種々の割合を得るよう調節された比率で、含んでいた。細胞内のSPIO及び細胞外のSPIOの混合物を含むこれら7つのファントムのバイアルの詳細は、表1中に記載されている。較正データ26を生成するときに使用される「純粋な」ファントムに関して、これらの実例となるMR断層撮影が、4cmの受信のみの無線周波数コイル(Philips Research Europe, Hamburg, Germany)と3T clinical AchievaTM scanner(Achieva, Philips Healthcare, The Netherlands)を使用して実行された。MRイメージは、70mm×70mmの視野(FOV)、スライス厚=1mm、データマトリックス=128×128、NEX=2で取得された。R2マップは、マルチグラディエントエコーシーケンス(multiple gradient echo sequence):TR=900ms、first TE/deltaTE=2.8ms/1.8ms、フリップ角=30度、25エコー、で取得された。R2マップは、ターボスピンエコーシーケンス(turbo spin echo sequence):TR=1000ms、first TE/deltaTE=7ms/7ms、20エコー、で取得された。これらは、単に説明的なスキャンパラメータであり、R2及びR2データを取得するための、実質的に如何なる他のスキャン構成も適切である。
【0029】
【表1】

7つの異なる混合物の各々における、細胞内のSPIO及び細胞外のSPIOの割合の推定は、次の段階で実行された:(1)各々の混合物のR2が、単一指数関数の減衰で適合された;(2)排他的にSPIOで標識付けられた細胞を含んだ混合物と仮定して、バイアルのR2intraSPIOが、R2に基づいた細胞内のSPIOの基準緩和曲線から計算された;(3)同様に、バイアルのR2extraSPIOが、排他的にフリーのSPIOを含んだ混合物と仮定して、細胞外のSPIOの基準緩和曲線から計算された;(4)混合物のR2のデータが、その後、双指数関数減衰モデル:a×exp(−t×R2intraSPIO)+b×exp(−t×R2extraSPIO)で適合された;及び(5)細胞内のSPIOと細胞外のSPIOとの割合が、a/bとして推定された。図3に示されるように、これらの基準緩和能から推定された細胞内のSPIOと細胞外のSPIOとの推定された割合(a/b)は、理論値と非常に優れた線形相関を示した。後者(即ち、理論値)は、標識付けられた細胞の、磁性剤量(load)(およそ3pg/cellであると仮定して)に基づいて計算された。これは、変動しがちで、その結果、計算された割合の観察された過大評価を引き起こし得る。
【0030】
これらは単に、較正データ26に沿って、対象者のT2強調画像及び対象者のT2強調画像の両方に基づいて、細胞内の鉄濃度を定量的に評価するための説明的なアプローチである。ここで開示された定量的推定アプローチは、(1)未知の混合物に関して測定されたR2及びR2値並びに(2)図2で示されたような純粋にフリーな磁性剤及び純粋に細胞に結合した磁性剤に関する較正データ26に基づいた、式(1)及び式(2)のおおよその又は正確な同時解決を伴う。
【0031】
図1に戻って参照して、述べられた処理は、例えば、ピクセル毎あたりの又はボクセル毎あたりの、各々の空間的位置で実行することができ、定量的細胞濃度マッピングサブモジュール30は、磁性的に標識付けられた細胞濃度の定量的マップを発生することができる。それは、コンピュー18のディスプレイ18d上の細胞濃度出力サブモジュール32又は他の表示デバイス、印刷デバイス又はそれと同種のものによりイメージとして表示することができる。いくつかの実施形態において、細胞内の/細胞外の濃度割合a/bは、R2及びR2マップの全エリア又は興味のあるエリアに亘って一定であると仮定される。
【0032】
結果の表示は、種々の形態を取ることができる。あるアプローチにおいて、空間的に平均化された濃度、イメージ内のどこかの最大濃度、又は他の集合した(aggregate)磁気的に標識付けられた細胞濃度は、数値表示、グラフ表示(例えば、集合した細胞濃度に対応する長さの図形のバー)、機械が発する(machine generated)音声表現、又は対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値に関する、他の、人間が知覚できる表現として適切に出力される。追加的に又は変更的に、他の撮画手段により取得された画像も熟慮されるが、通常、磁気共鳴イメージであり、この表示されたイメージは、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値に関して、色分けされたマップで覆われている、対象者のイメージが出力されても良い。この後者の表示は、臨床医、内科医又は他の医療関係者に、磁気的に標識付けられた細胞が最も高濃度である(複数の)位置及び磁気的に標識付けられた細胞がまばらに集まった又は完全に見当たらない(複数の)位置を効率的に伝達する手段として役に立つことができる。
【0033】
本発明は、好ましい実施形態を参照して述べられてきた。修正及び変更は、先立った詳細の説明を読み、理解するときに、他の人は気が付くであろう。本発明は、そのような修正及び変更全てを含むように解釈されるということが意図される。それらが、添付の特許請求の範囲又はそれに相当するものの範囲内で起こる限り。ここまで好ましい実施形態で述べた、本発明は、これよりクレーム化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の一連のT2強調画像を取得する、第1取得段階;
前記対象者の一連のT2強調画像を取得する、第2取得段階;及び
前記対象者の前記T2強調画像と前記対象者の前記T2強調画像との両方に基づいて、前記対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成する、第1生成段階;
を含む、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項2】
数値表示、グラフ表示、機械発生式音声表現、又は前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた前記細胞の定量的評価を示す値に関する、人間が知覚できる、他の表現を出力する段階、
を更に含む、請求項1に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項3】
前記出力する段階は、
前記対象者の画像を出力する段階;及び
該画像を、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた前記細胞の定量的評価を示す値に関する色分けされたマップで覆う段階;
を含む、請求項2に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項4】
前記対象者に細胞を投与する段階であって、前記細胞は、超常磁性酸化鉄剤で標識付けられる、投与する段階、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項5】
前記第1取得段階は、前記対象者のR2マップを取得する、第3取得段階を含み;
前記第2取得段階は、前記対象者のR2マップを取得する、第4取得段階を含み;かつ、
第1生成段階の工程は、前記対象者の前記R2マップ及び前記R2マップの両方に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた前記細胞の定量的評価を示す値を生成する、第2生成段階を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項6】
前記第3取得段階は、スピンエコーシーケンスを使用して、前記対象者の画像を取得する段階を含む、
請求項5に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項7】
前記第4取得段階は、グラディエントエコーシーケンスを使用して、前記対象者の画像を取得する段階を含む、
請求項5又は6に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項8】
第2生成段階は更に、細胞内の前記磁性剤及び細胞外の前記磁性剤に関する、基準R2緩和曲線及び基準R2緩和曲線を含む、較正データに基づいている、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項9】
前記第2生成段階は更に、
R2値と、実質的に細胞外の前記磁性剤を有さない、細胞内の前記磁性剤に関する細胞内の磁性剤濃度と、の関係、
R2値と、実質的に細胞外の前記磁性剤を有さない、細胞内の前記磁性剤に関する細胞内の磁性剤濃度と、の関係、
R2値と、実質的に細胞内の前記磁性剤を有さない、細胞外の前記磁性剤に関する細胞外の磁性剤濃度と、の関係、及び
R2値と、実質的に細胞内の前記磁性剤を有さない、細胞外の前記磁性剤に関する細胞外の磁性剤濃度と、の関係、
を含む較正データに基づいている、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項10】
種々の濃度の、実質的に混じり気なく細胞内の前記磁性剤を有し、かつ、種々の濃度の、実質的に混じり気なく細胞外の前記磁性剤を有する、複数の、較正のためのファントムに関する、R2及びR2測定に基づいて、前記較正データを生成する段階:
を更に含む、請求項8又は9に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項11】
前記較正のためのファントムは、
(i)少なくとも3つの異なる濃度の、実質的に混じり気なく細胞内の前記磁性剤を有する、少なくとも3つの前記較正のためのファントム、及び、
(ii)少なくとも3つの異なる濃度の、実質的に混じり気なく細胞外の前記磁性剤を有する、少なくとも3つの前記較正のためのファントム、
を含む、請求項10に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項12】
前記較正データに更に基づいた、前記第2生成段階は、
前記対象者のR2マップと前記対象者のR2マップとの両方に基づき、更に前記較正データに基づいて、細胞内の磁性剤濃度を推定する段階;及び
該細胞内の磁性剤濃度を、前記の磁気的に標識付けられた細胞の前記磁性剤量に基づいて、細胞濃度に変換する段階;
を含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項13】
前記第1生成段階は、
前記対象者のT2強調画像と前記対象者のT2強調画像との両方に基づき、かつ、細胞外の前記磁性剤に関する、R2とR2との間の所定の相対的類似性及び細胞内の前記磁性剤に関する、R2とR2との間の所定の相対的な非類似性に基づいて、
前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた前記細胞の定量的評価を示す値を生成する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のための方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成された、磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項15】
磁気共鳴イメージングシステムに、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法を実行させることを実行可能にする命令を記憶している、デジタル記憶媒体。
【請求項16】
磁気共鳴イメージングシステム;及び
該磁気共鳴イメージングシステムに、T2強調画像及びT2強調画像の両方を取得させるよう構成され、前記T2強調画像及び前記T2強調画像の両方に基づいて、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成するよう更に構成された、処理装置;
を含む、対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のためのシステム。
【請求項17】
前記処理装置は、前記T2強調画像と前記T2強調画像との両方に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた細胞の空間分布の定量的評価を示すマップを生成するよう構成される、請求項16に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のためのシステム。
【請求項18】
前記処理装置は、前記T2強調画像と前記T2強調画像との両方に基づいて、かつ、(i)R2と、細胞内の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(ii)R2と、細胞内の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(iii)R2と、細胞外の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、(iv)R2と、細胞外の前記磁性剤で標識付けられた濃度と、の間の所定の関係に更に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成するよう構成される、請求項16又は17に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のためのシステム。
【請求項19】
前記処理装置は、前記T2強調画像と前記T2強調画像との両方に基づいて、かつ、(i)細胞外の前記磁性剤に関する、R2とR2との間の比較的小さい相違及び(ii)細胞内の前記磁性剤に関する、R2とR2との間の比較的大きい相違の定量的情報に更に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成するよう構成される、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のためのシステム。
【請求項20】
前記処理装置は、
S(t)〜[intra]×exp(−t×R2([intra]))+[extra]×exp(−t×R2([extra]))、及び
S(t)〜[intra]×exp(−t×R2([intra]))+[extra]×exp(−t×R2([extra]))、
の関係を少なくとも近似的に解くことにより、
前記T2強調画像及び前記T2強調画像の両方に基づいて、前記対象者内の前記磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価を示す値を生成するよう構成される、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の対象者内の磁性剤で標識付けられた細胞の定量的評価のためのシステム。
(式中、[intra]及び[extra]は、各々、細胞内及び細胞外の標識付けする磁性剤の濃度であり、
R2([intra])及びR2([intra])は細胞内の磁性剤に関する実質的に混じり気のないサンプルから得られた基準緩和曲線であり、
R2([extra])及びR2([extra])は細胞外の磁性剤に関する実質的に混じり気のないサンプルから得られた基準緩和曲線である)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−521244(P2012−521244A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501418(P2012−501418)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050586
【国際公開番号】WO2010/109346
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】