RFIDリーダシステム
【課題】 特別なセンサを用いることなくICタグの移動方向を判定することでシステムの価格を抑え、電波の反射や干渉が発生し易い環境においても確実な移動方向判定を行うことができるRFIDリーダシステムを提供する。
【解決手段】 複数のアンテナ6、7を備え、前記複数のアンテナによりICタグ8が読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻において前記ICタグ8が読み取られた回数とを用いて、前記ICタグ8の読み取りを開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数または読み取り信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナ6、7の前記加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグ8の移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【解決手段】 複数のアンテナ6、7を備え、前記複数のアンテナによりICタグ8が読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻において前記ICタグ8が読み取られた回数とを用いて、前記ICタグ8の読み取りを開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数または読み取り信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナ6、7の前記加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグ8の移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグの読み取りもしくは書き込みを行う、RFIDリーダシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダは、無線通信を行うためのアンテナが接続されており、前記アンテナから送出された電波によってICタグとの通信を行うことが出来る。また、RFIDリーダを倉庫などのゲートに組み込んだRFIDリーダシステムは、ICタグを所持した人物の入退室や、荷物の搬入搬出管理等に用いられている。
【0003】
このようなRFIDリーダシステムにおいては、ゲート内におけるICタグの移動方向、すなわち入室か退室か、入庫か出庫か等の情報は、管理上極めて有用なものである。
【0004】
従来のRFIDリーダシステムでは、ICタグの移動方向を判定するため、赤外線等を用いた検知センサをゲート内の移動経路に沿って複数配置し、各センサの検知順から移動方向を判定する方法が提案されている。
【0005】
例えば、ゲートにおいて入退出を判定する方法としては、店舗出入口の左右両側に一対のゲートを設け、送信側ゲートから電波を送信して受信側ゲートで受信し、該電波に共振するタグのゲート通過による受信電波の変化を感知して警報を発するシステムにおいて、受信側ゲートに人体検知センサを設けて人の入退店を検知し、入店時には共振タグのゲート通過が感知されても警報を発しないようにする構成が特許文献1に開示されている。
【0006】
また、部外者の立ち入りが制限されるセキュリティゾーンへの出入りを行うゲートに、通行人の移動方向を識別する第1センサと第2センサが通行方向に沿って設置され、専用タグを検知して通行人を特定する第3センサも設置されており、監視装置はこれら第1センサおよび第2センサおよび第3センサの検知情報より、部外者の無断入室を認識して警報を発する構成が特許文献2に開示されている。
【0007】
従来のゲートに組み込んだRFIDリーダシステムでは、RFIDリーダがICタグ内の情報を読むための交信時間は、交信手順やデータ量によるが最低でも数ミリ秒〜数十ミリ秒を要し、ICタグ(および取り付けた人や物)は最低でもこの読み取り時間中、読み取り範囲内にいなければならず、通過速度(歩行速度、運搬速度)が早い場合は充分な読み取り時間が確保できず読み取り不可となる場合がある。
【0008】
このように通過速度が速く交信時間が不足する場合は、一般的に通過方向に複数のアンテナを並べ交信範囲を長くする方法が用いられ、このような構成が特許文献3に開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−109130号公報
【特許文献2】特開2003−303382号公報
【特許文献3】特開2007−088937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6は、前記特許文献1および特許文献2に開示されているような、複数の検知センサとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図である。
【0011】
図中において、RFIDリーダ1がICタグ8と通信を行う場合、制御回路2の指示により論理回路3で符号化、複合化を行い、高周波アナログ回路4でアナログ信号の増幅、送受信分離等を行い、アンテナスイッチ回路5でアンテナ6の動作/非動作を切り替え、ICタグ8に向けて電波を送出する。図中破線は、アンテナ6の通信が可能な範囲、すなわち通信エリア100を表す。
【0012】
図中において、ICタグ8は最初に検知センサ10で、次いで検知センサ11によって検知されることにより、図中矢印の方向に移動しているものと判定することができる。このような構成では、ICタグ8の移動方向を判定するために、物品や人体を検出する複数の検知センサを別途備える必要があり、システムの価格が上昇するという課題があった。
【0013】
図7は、前記特許文献3に開示されているような、複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図である。
【0014】
図中において、RFIDリーダ1がICタグ8と通信を行う場合、図6と同様に制御回路2の指示により論理回路3で符号化、複合化を行い、高周波アナログ回路4でアナログ信号の増幅、送受信分離等を行う。アンテナスイッチ回路5で動作させるアンテナ6、7を切り替え、ICタグ8に向けて電波を送出する。
【0015】
図中破線は、各アンテナで通信が可能な範囲すなわちアンテナ通信エリア100を表し、アンテナ6による第1の通信エリア101と、アンテナ7による第3の通信エリア103は、一部が重なった第2の通信エリア102を構成するように配置される。これは、ゲート内でICタグ8との通信ができない範囲を極力少なくするためである。
【0016】
図中におけるICタグ8が矢印の方向に移動すると、最初にアンテナ6による第1の通信エリア101で、次にアンテナ6とアンテナ7の通信エリアが一部重なる第2の通信エリア102で、最後にアンテナ7による第3の通信エリア103において、ICタグ8の固有情報が読み取られる。この各通信エリアにおいて、ICタグ8が読み取られた順番を比較照合することにより、新たに検知センサを追加しなくともICタグ8の移動方向を判定することが可能となる。
【0017】
図7の構成において、ICタグ8の移動方向を判定する処理方法について説明する。RFIDリーダ1は、ICタグ8が図中破線で示す通信エリア内にあれば常時その固有番号を読み取り続け、読み取った回数を積算するよう構成する。
【0018】
図8は、図7のRFIDリーダ1が行う処理のアルゴリズムの一例を説明する図である。図では、予め設定した一定の時間(以下、「単位時間」という。)内に、RFIDリーダ1が読み取りを行った回数の、時間経過による推移を示している。
【0019】
ICタグ8について、ある経過時刻tiにおけるアンテナ6が単位時間tに読み取りを行った回数をxai、アンテナ7が単位時間tに読み取りを行った回数をxbiとする。説明を簡略化するため、経過時刻tiは単位時間tの整数倍とする。アンテナ6が読み取りを行った回数の積算値をsaiとして数3に示す。また、アンテナ7が読み取りを行った回数の積算値をsbiとして数4に示す。
【0020】
【数3】
【0021】
【数4】
【0022】
ここで、読み取りを行った回数の積算値に対し、予め設定した閾値thを設ける。saiおよびsbiが閾値th以下の場合には条件判別の論理値を0とし、閾値thを超えた場合には条件判別の論理値を1として、それぞれ時刻tiの時のフラグaiおよびbiとする。図8は閾値th=3の場合の例である。
【0023】
次に、フラグaiおよびbiの論理積ai×biの立ち上がり、すなわちai×biが0から1となった時間をトリガーとして、1単位時間前の状態のフラグa(i−1)とb(i−1)の差a(i−1)−b(i−1)を計算する。算出された値により移動方向Diを判定することができる。
【0024】
図9は、図8に示すアルゴリズムの真理表を示す図であり、移動方向Diとフラグaiおよびbiの論理積ai×biとの関係を表したものである。
【0025】
図8の場合は移動方向Di=1と算出され、図7の構成におけるICタグ8はアンテナ6からアンテナ7の方向へ移動していることを意味する。同様にして、アンテナ7からアンテナ6の方向へ移動している場合には移動方向Di=−1と算出される。従って、複数のアンテナを備えるRFIDリーダシステムであれば、検知センサを別途追加することなく、ICタグ8の移動方向を判定することができる。
【0026】
しかしながら、図7乃至図9で説明した構成において、実際のゲートの構造や周辺環境、各アンテナの設置の状況等によっては電波の反射や干渉が発生し、ICタグの読み取りが不安定な通信エリアが生じたり、本来は通信エリアでない範囲にあるICタグを読み取ってしまうことがある。
【0027】
図10は、図7の構成のRFIDリーダシステムにおいて、電波の反射等により移動方向の誤判定が行なわれる例を説明する図である。図10では、時刻t2において、本来通信エリアではない範囲に存在するICタグ8をアンテナ7が読み取ってxb2=3となった場合を示している。この場合、ICタグ8の移動方向Di=−1と算出され、アンテナ7からアンテナ6の方向へ移動したと判定される。しかし、実際の移動方向は逆であるため誤判定であり、ICタグ8の移動方向判定の確実性が損なわれる場合があるという課題がある。
【0028】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、特別なセンサを用いることなくICタグの移動方向を判定することでシステムの価格を抑え、電波の反射や干渉が発生し易い環境においても確実な移動方向判定を行うことができるRFIDリーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグが読み取られた回数より、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値(以下、「読み取り回数加重平均値」という。)を算出し、前記複数のアンテナにおける前記読み取り回数加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0030】
前記ICタグの読み取りを開始した時刻tkから前記経過時刻tiまでの読み取り回数加重平均値は、以下の数1の式で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
本発明によれば、移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグの読み取り信号レベルより、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値(以下、「信号レベル加重平均値」という。)を算出し、前記複数のアンテナにおける前記信号レベル加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0033】
前記ICタグの読み取りを開始した時刻tkから前記経過時刻tiまでの信号レベル加重平均値は、以下の数2の式で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
また、本発明によれば、前記読み取り回数加重平均値または前記信号レベル加重平均値の差が、予め設定した閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0036】
本発明によれば、前記複数のアンテナにおける各々の距離と、前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0037】
本発明によれば、前記移動速度の値が、前記閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0038】
本発明の判定論理は、RFIDリーダシステムが有する複数のアンテナでICタグを読み取り、複数のアンテナそれぞれについてICタグの読み取り時刻、すなわち読み取り処理を開始してからの経過時刻を、前記経過時刻における読み取り回数または受信した信号レベルで重み付けをし、各アンテナにおける前記経過時刻の加重平均値を算出し、それぞれの加重平均値における経過時刻に対する前後関係から、ICタグの移動方向を判定するものである。
【0039】
また、前記複数のアンテナ間の距離と前記経過時刻の差から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定するものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、ICタグの読み取りに用いられるアンテナを複数備えるRFIDリーダシステムにおいて、検知センサなどの特別なセンサをシステムに追加することなく、ICタグの移動方向を判定することができるため、システムの価格を抑えることが可能となる。
【0041】
また、本発明により、電波の反射や干渉が発生し易い環境においても、ICタグの移動方向判定を確実に行うことができるRFIDリーダシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照して詳説する。
【0043】
図1および図2は、本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図である。
【0044】
本発明によるRFIDリーダシステムは、構成上は図7で示した複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの一例とほぼ同じであるため説明は省略するが、従来のRFIDリーダシステムとは信号の処理と判定方法が異なる。
【0045】
図1では、重み付けを行った各時刻の積算値(すなわちアンテナ6の場合は数3に示すsai、アンテナ7の場合は数4に示すsbi)を、読み取り回数の積算値で除算し、経過時刻tiにおける読み取り回数加重平均値(すなわちアンテナ6の場合はWA(tai)、アンテナ7の場合はWA(tbi))を算出する。なお、図中のkは、ICタグの読み取りを開始する前の特定時刻tkに対する固有値を示す。
【0046】
図2は、各アンテナの読み取り回数加重平均値の比較方法として、その値の差を取った例である。
【0047】
図2の論理に従い、2つのアンテナにおける読み取り回数加重平均値の差WA(tai)−WA(tbi)を求め、その差が予め設定した閾値(仮に−th1または+th2とする)を越えた場合に判定を実施し、差が−th1より小さい場合は−1、+th2より大きい場合は1とし、−th1〜+th2の範囲にある場合は0とする。
【0048】
ここで、閾値th1、th2は正の整数とし、−1の場合はアンテナ6からアンテナ7方向への移動、+1の場合はアンテナ7からアンテナ6方向への移動と判定し、0の場合は判定不可とする。
【0049】
図3は、図10の例と読み取り結果が同じであった場合の、本発明によるRFIDリーダシステムが行う判定処理の例を示す図である。
【0050】
図1および2の判定論理を用いて、2つのアンテナ6、7それぞれの読み取り回数加重平均値WA(tai)、WA(tbi)を求め、次にその差WA(tai)−WA(tbi)を求め、その結果からICタグ8の移動方向Diを求める。ここで、閾値th1=th2=0.5とする。この処理により得られる移動方向はDi=−1であり、ICタグ8はアンテナ6からアンテナ7の方向へ移動したと正しく判定することができる。従って、従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理よりも正確な判定が可能となる。
【0051】
図4は、本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図であり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動した場合、即ち図7と逆方向の場合を表している。
【0052】
ここでは、閾値th=3、th1=th2=1とする。従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法では、図9で説明した判定論理を用いることで移動方向Di=−1となり、アンテナ7からアンテナ6の方向への移動と誤判定してしまうが、図1乃至2の判定論理を用いた本発明の場合は、Di=1となり、ICタグ8の移動方向を正しく判定することができる。
【0053】
図5は、本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図であり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動途中に中間で引き返した場合を現している。
【0054】
図4での説明と同様に判定処理を行うと、従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法では移動方向Di=1となり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動したと誤判定してしまうが、本発明のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法によれば、移動方向はDi=0が得られて判定不可となるため、誤判定を避けることができる。
【0055】
図11は、本発明による移動速度の値を用いる判定論理を説明する図である。
【0056】
図1の論理に従って、各々のアンテナにおける読み取り回数加重平均値を算出する。図11の論理に従い、複数のアンテナ間の距離lを、各々のアンテナにおける読み取り回数加重平均値の差WA(tai)−WA(tbi)で除算し、複数のアンテナ間を通過するICタグ8の移動速度WA(vi)(以下「Y」とする。)を算出する。
【0057】
移動速度Yが、予め設定した閾値(仮に−th3または+th4とする)を越えた場合に判定を実施し、値が0>Y>−th3の場合は移動方向Di´=−1、0<Y<+th4の場合は移動方向Di´=1とし、Y≦−th3とY≧+th4の場合は0とする。
【0058】
ここで、閾値th3、th4は正の整数とし、−1の場合はアンテナ6からアンテナ7方向への移動、+1の場合はアンテナ7からアンテナ6方向への移動と判定し、0の場合は判定不可とする。
【0059】
図3では、本発明によるRFIDリーダシステムが行う判定処理の例として、図11の判定論理を用いて判定した場合をDi´として示す。Di´では、読み取り回数加重平均値の差から判定するICタグ8の移動方向Diと同じ結果を得ることができる。
【0060】
読み取り回数加重平均値を用いてICタグ8の移動方向を判定する場合、ICタグ8の移動速度が大きく変化する時には、判定精度を維持するために閾値(th1、th2)の変更が必要となることがある。
【0061】
一方、ICタグ8の移動速度で判定を行う場合、移動速度自体が判定の基準となることから、閾値(th3、th4)の変更を行わずとも移動方向の判定精度を維持することが可能であり、ICタグ8の移動速度が大きく変化する場合においても高精度な移動方向の判定を行うことができる。
【0062】
本実施の形態は、ICタグ8の読み取り時刻を読み取り回数で重み付けした場合の処理方法を例に説明したが、前記読み取り時刻をICタグからの信号の受信レベルで重み付けした場合であっても、ICタグ8がアンテナに最も接近した時に、受信レベルも最も高くなることから、実施の形態としては前記読み取り回数による重み付けの場合と同様であり、言うまでもなく同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、アンテナの構成は2個に限定される物ではなく、複数のアンテナ設置時におけるICタグの検出結果について、先に説明したアルゴリズムを適用することにより、同様にICタグの移動方向を判定することが可能であることは言うまでもない。
【0064】
また、経過時刻tiは、数値化に際しての単位時間tおよび倍数iをどのように設定したとしても、時刻の前後関係が正しく認識されるものであれば判定に支障はない。すなわち、当業者であれば当然なしえるであろう各種変形や修正もまた、本発明に含まれるものであることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図。
【図2】本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図1の続図。
【図3】図10の例と読み取り結果が同じであった場合の、本発明による判定処理の例を示す図。
【図4】本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図(アンテナ7→6)。
【図5】本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図(引き返し)。
【図6】複数の検知センサとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図。
【図7】複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図。
【図8】図7のRFIDリーダが行う処理のアルゴリズムの一例を説明する図。
【図9】図8に示すアルゴリズムの真理表を示す図。
【図10】図7の構成のRFIDリーダシステムにおいて、電波の反射等により移動方向の誤判定が行なわれる例を説明する図。
【図11】本発明による移動速度の値を用いる判定論理を説明する図。
【符号の説明】
【0066】
1 RFIDリーダ
2 制御回路
3 論理回路
4 高周波アナログ回路
5 アンテナスイッチ回路
6、7 アンテナ
8 ICタグ
10、11 検知センサ
100 アンテナ通信エリア
101 第1の通信エリア
102 第2の通信エリア
103 第3の通信エリア
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグの読み取りもしくは書き込みを行う、RFIDリーダシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダは、無線通信を行うためのアンテナが接続されており、前記アンテナから送出された電波によってICタグとの通信を行うことが出来る。また、RFIDリーダを倉庫などのゲートに組み込んだRFIDリーダシステムは、ICタグを所持した人物の入退室や、荷物の搬入搬出管理等に用いられている。
【0003】
このようなRFIDリーダシステムにおいては、ゲート内におけるICタグの移動方向、すなわち入室か退室か、入庫か出庫か等の情報は、管理上極めて有用なものである。
【0004】
従来のRFIDリーダシステムでは、ICタグの移動方向を判定するため、赤外線等を用いた検知センサをゲート内の移動経路に沿って複数配置し、各センサの検知順から移動方向を判定する方法が提案されている。
【0005】
例えば、ゲートにおいて入退出を判定する方法としては、店舗出入口の左右両側に一対のゲートを設け、送信側ゲートから電波を送信して受信側ゲートで受信し、該電波に共振するタグのゲート通過による受信電波の変化を感知して警報を発するシステムにおいて、受信側ゲートに人体検知センサを設けて人の入退店を検知し、入店時には共振タグのゲート通過が感知されても警報を発しないようにする構成が特許文献1に開示されている。
【0006】
また、部外者の立ち入りが制限されるセキュリティゾーンへの出入りを行うゲートに、通行人の移動方向を識別する第1センサと第2センサが通行方向に沿って設置され、専用タグを検知して通行人を特定する第3センサも設置されており、監視装置はこれら第1センサおよび第2センサおよび第3センサの検知情報より、部外者の無断入室を認識して警報を発する構成が特許文献2に開示されている。
【0007】
従来のゲートに組み込んだRFIDリーダシステムでは、RFIDリーダがICタグ内の情報を読むための交信時間は、交信手順やデータ量によるが最低でも数ミリ秒〜数十ミリ秒を要し、ICタグ(および取り付けた人や物)は最低でもこの読み取り時間中、読み取り範囲内にいなければならず、通過速度(歩行速度、運搬速度)が早い場合は充分な読み取り時間が確保できず読み取り不可となる場合がある。
【0008】
このように通過速度が速く交信時間が不足する場合は、一般的に通過方向に複数のアンテナを並べ交信範囲を長くする方法が用いられ、このような構成が特許文献3に開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−109130号公報
【特許文献2】特開2003−303382号公報
【特許文献3】特開2007−088937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6は、前記特許文献1および特許文献2に開示されているような、複数の検知センサとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図である。
【0011】
図中において、RFIDリーダ1がICタグ8と通信を行う場合、制御回路2の指示により論理回路3で符号化、複合化を行い、高周波アナログ回路4でアナログ信号の増幅、送受信分離等を行い、アンテナスイッチ回路5でアンテナ6の動作/非動作を切り替え、ICタグ8に向けて電波を送出する。図中破線は、アンテナ6の通信が可能な範囲、すなわち通信エリア100を表す。
【0012】
図中において、ICタグ8は最初に検知センサ10で、次いで検知センサ11によって検知されることにより、図中矢印の方向に移動しているものと判定することができる。このような構成では、ICタグ8の移動方向を判定するために、物品や人体を検出する複数の検知センサを別途備える必要があり、システムの価格が上昇するという課題があった。
【0013】
図7は、前記特許文献3に開示されているような、複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図である。
【0014】
図中において、RFIDリーダ1がICタグ8と通信を行う場合、図6と同様に制御回路2の指示により論理回路3で符号化、複合化を行い、高周波アナログ回路4でアナログ信号の増幅、送受信分離等を行う。アンテナスイッチ回路5で動作させるアンテナ6、7を切り替え、ICタグ8に向けて電波を送出する。
【0015】
図中破線は、各アンテナで通信が可能な範囲すなわちアンテナ通信エリア100を表し、アンテナ6による第1の通信エリア101と、アンテナ7による第3の通信エリア103は、一部が重なった第2の通信エリア102を構成するように配置される。これは、ゲート内でICタグ8との通信ができない範囲を極力少なくするためである。
【0016】
図中におけるICタグ8が矢印の方向に移動すると、最初にアンテナ6による第1の通信エリア101で、次にアンテナ6とアンテナ7の通信エリアが一部重なる第2の通信エリア102で、最後にアンテナ7による第3の通信エリア103において、ICタグ8の固有情報が読み取られる。この各通信エリアにおいて、ICタグ8が読み取られた順番を比較照合することにより、新たに検知センサを追加しなくともICタグ8の移動方向を判定することが可能となる。
【0017】
図7の構成において、ICタグ8の移動方向を判定する処理方法について説明する。RFIDリーダ1は、ICタグ8が図中破線で示す通信エリア内にあれば常時その固有番号を読み取り続け、読み取った回数を積算するよう構成する。
【0018】
図8は、図7のRFIDリーダ1が行う処理のアルゴリズムの一例を説明する図である。図では、予め設定した一定の時間(以下、「単位時間」という。)内に、RFIDリーダ1が読み取りを行った回数の、時間経過による推移を示している。
【0019】
ICタグ8について、ある経過時刻tiにおけるアンテナ6が単位時間tに読み取りを行った回数をxai、アンテナ7が単位時間tに読み取りを行った回数をxbiとする。説明を簡略化するため、経過時刻tiは単位時間tの整数倍とする。アンテナ6が読み取りを行った回数の積算値をsaiとして数3に示す。また、アンテナ7が読み取りを行った回数の積算値をsbiとして数4に示す。
【0020】
【数3】
【0021】
【数4】
【0022】
ここで、読み取りを行った回数の積算値に対し、予め設定した閾値thを設ける。saiおよびsbiが閾値th以下の場合には条件判別の論理値を0とし、閾値thを超えた場合には条件判別の論理値を1として、それぞれ時刻tiの時のフラグaiおよびbiとする。図8は閾値th=3の場合の例である。
【0023】
次に、フラグaiおよびbiの論理積ai×biの立ち上がり、すなわちai×biが0から1となった時間をトリガーとして、1単位時間前の状態のフラグa(i−1)とb(i−1)の差a(i−1)−b(i−1)を計算する。算出された値により移動方向Diを判定することができる。
【0024】
図9は、図8に示すアルゴリズムの真理表を示す図であり、移動方向Diとフラグaiおよびbiの論理積ai×biとの関係を表したものである。
【0025】
図8の場合は移動方向Di=1と算出され、図7の構成におけるICタグ8はアンテナ6からアンテナ7の方向へ移動していることを意味する。同様にして、アンテナ7からアンテナ6の方向へ移動している場合には移動方向Di=−1と算出される。従って、複数のアンテナを備えるRFIDリーダシステムであれば、検知センサを別途追加することなく、ICタグ8の移動方向を判定することができる。
【0026】
しかしながら、図7乃至図9で説明した構成において、実際のゲートの構造や周辺環境、各アンテナの設置の状況等によっては電波の反射や干渉が発生し、ICタグの読み取りが不安定な通信エリアが生じたり、本来は通信エリアでない範囲にあるICタグを読み取ってしまうことがある。
【0027】
図10は、図7の構成のRFIDリーダシステムにおいて、電波の反射等により移動方向の誤判定が行なわれる例を説明する図である。図10では、時刻t2において、本来通信エリアではない範囲に存在するICタグ8をアンテナ7が読み取ってxb2=3となった場合を示している。この場合、ICタグ8の移動方向Di=−1と算出され、アンテナ7からアンテナ6の方向へ移動したと判定される。しかし、実際の移動方向は逆であるため誤判定であり、ICタグ8の移動方向判定の確実性が損なわれる場合があるという課題がある。
【0028】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、特別なセンサを用いることなくICタグの移動方向を判定することでシステムの価格を抑え、電波の反射や干渉が発生し易い環境においても確実な移動方向判定を行うことができるRFIDリーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグが読み取られた回数より、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値(以下、「読み取り回数加重平均値」という。)を算出し、前記複数のアンテナにおける前記読み取り回数加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0030】
前記ICタグの読み取りを開始した時刻tkから前記経過時刻tiまでの読み取り回数加重平均値は、以下の数1の式で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
本発明によれば、移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグの読み取り信号レベルより、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値(以下、「信号レベル加重平均値」という。)を算出し、前記複数のアンテナにおける前記信号レベル加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0033】
前記ICタグの読み取りを開始した時刻tkから前記経過時刻tiまでの信号レベル加重平均値は、以下の数2の式で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
また、本発明によれば、前記読み取り回数加重平均値または前記信号レベル加重平均値の差が、予め設定した閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0036】
本発明によれば、前記複数のアンテナにおける各々の距離と、前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0037】
本発明によれば、前記移動速度の値が、前記閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とするRFIDリーダシステムが得られる。
【0038】
本発明の判定論理は、RFIDリーダシステムが有する複数のアンテナでICタグを読み取り、複数のアンテナそれぞれについてICタグの読み取り時刻、すなわち読み取り処理を開始してからの経過時刻を、前記経過時刻における読み取り回数または受信した信号レベルで重み付けをし、各アンテナにおける前記経過時刻の加重平均値を算出し、それぞれの加重平均値における経過時刻に対する前後関係から、ICタグの移動方向を判定するものである。
【0039】
また、前記複数のアンテナ間の距離と前記経過時刻の差から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定するものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、ICタグの読み取りに用いられるアンテナを複数備えるRFIDリーダシステムにおいて、検知センサなどの特別なセンサをシステムに追加することなく、ICタグの移動方向を判定することができるため、システムの価格を抑えることが可能となる。
【0041】
また、本発明により、電波の反射や干渉が発生し易い環境においても、ICタグの移動方向判定を確実に行うことができるRFIDリーダシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照して詳説する。
【0043】
図1および図2は、本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図である。
【0044】
本発明によるRFIDリーダシステムは、構成上は図7で示した複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの一例とほぼ同じであるため説明は省略するが、従来のRFIDリーダシステムとは信号の処理と判定方法が異なる。
【0045】
図1では、重み付けを行った各時刻の積算値(すなわちアンテナ6の場合は数3に示すsai、アンテナ7の場合は数4に示すsbi)を、読み取り回数の積算値で除算し、経過時刻tiにおける読み取り回数加重平均値(すなわちアンテナ6の場合はWA(tai)、アンテナ7の場合はWA(tbi))を算出する。なお、図中のkは、ICタグの読み取りを開始する前の特定時刻tkに対する固有値を示す。
【0046】
図2は、各アンテナの読み取り回数加重平均値の比較方法として、その値の差を取った例である。
【0047】
図2の論理に従い、2つのアンテナにおける読み取り回数加重平均値の差WA(tai)−WA(tbi)を求め、その差が予め設定した閾値(仮に−th1または+th2とする)を越えた場合に判定を実施し、差が−th1より小さい場合は−1、+th2より大きい場合は1とし、−th1〜+th2の範囲にある場合は0とする。
【0048】
ここで、閾値th1、th2は正の整数とし、−1の場合はアンテナ6からアンテナ7方向への移動、+1の場合はアンテナ7からアンテナ6方向への移動と判定し、0の場合は判定不可とする。
【0049】
図3は、図10の例と読み取り結果が同じであった場合の、本発明によるRFIDリーダシステムが行う判定処理の例を示す図である。
【0050】
図1および2の判定論理を用いて、2つのアンテナ6、7それぞれの読み取り回数加重平均値WA(tai)、WA(tbi)を求め、次にその差WA(tai)−WA(tbi)を求め、その結果からICタグ8の移動方向Diを求める。ここで、閾値th1=th2=0.5とする。この処理により得られる移動方向はDi=−1であり、ICタグ8はアンテナ6からアンテナ7の方向へ移動したと正しく判定することができる。従って、従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理よりも正確な判定が可能となる。
【0051】
図4は、本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図であり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動した場合、即ち図7と逆方向の場合を表している。
【0052】
ここでは、閾値th=3、th1=th2=1とする。従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法では、図9で説明した判定論理を用いることで移動方向Di=−1となり、アンテナ7からアンテナ6の方向への移動と誤判定してしまうが、図1乃至2の判定論理を用いた本発明の場合は、Di=1となり、ICタグ8の移動方向を正しく判定することができる。
【0053】
図5は、本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図であり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動途中に中間で引き返した場合を現している。
【0054】
図4での説明と同様に判定処理を行うと、従来のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法では移動方向Di=1となり、ICタグ8がアンテナ7からアンテナ6の方向へ移動したと誤判定してしまうが、本発明のRFIDリーダシステムが行う判定処理の方法によれば、移動方向はDi=0が得られて判定不可となるため、誤判定を避けることができる。
【0055】
図11は、本発明による移動速度の値を用いる判定論理を説明する図である。
【0056】
図1の論理に従って、各々のアンテナにおける読み取り回数加重平均値を算出する。図11の論理に従い、複数のアンテナ間の距離lを、各々のアンテナにおける読み取り回数加重平均値の差WA(tai)−WA(tbi)で除算し、複数のアンテナ間を通過するICタグ8の移動速度WA(vi)(以下「Y」とする。)を算出する。
【0057】
移動速度Yが、予め設定した閾値(仮に−th3または+th4とする)を越えた場合に判定を実施し、値が0>Y>−th3の場合は移動方向Di´=−1、0<Y<+th4の場合は移動方向Di´=1とし、Y≦−th3とY≧+th4の場合は0とする。
【0058】
ここで、閾値th3、th4は正の整数とし、−1の場合はアンテナ6からアンテナ7方向への移動、+1の場合はアンテナ7からアンテナ6方向への移動と判定し、0の場合は判定不可とする。
【0059】
図3では、本発明によるRFIDリーダシステムが行う判定処理の例として、図11の判定論理を用いて判定した場合をDi´として示す。Di´では、読み取り回数加重平均値の差から判定するICタグ8の移動方向Diと同じ結果を得ることができる。
【0060】
読み取り回数加重平均値を用いてICタグ8の移動方向を判定する場合、ICタグ8の移動速度が大きく変化する時には、判定精度を維持するために閾値(th1、th2)の変更が必要となることがある。
【0061】
一方、ICタグ8の移動速度で判定を行う場合、移動速度自体が判定の基準となることから、閾値(th3、th4)の変更を行わずとも移動方向の判定精度を維持することが可能であり、ICタグ8の移動速度が大きく変化する場合においても高精度な移動方向の判定を行うことができる。
【0062】
本実施の形態は、ICタグ8の読み取り時刻を読み取り回数で重み付けした場合の処理方法を例に説明したが、前記読み取り時刻をICタグからの信号の受信レベルで重み付けした場合であっても、ICタグ8がアンテナに最も接近した時に、受信レベルも最も高くなることから、実施の形態としては前記読み取り回数による重み付けの場合と同様であり、言うまでもなく同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、アンテナの構成は2個に限定される物ではなく、複数のアンテナ設置時におけるICタグの検出結果について、先に説明したアルゴリズムを適用することにより、同様にICタグの移動方向を判定することが可能であることは言うまでもない。
【0064】
また、経過時刻tiは、数値化に際しての単位時間tおよび倍数iをどのように設定したとしても、時刻の前後関係が正しく認識されるものであれば判定に支障はない。すなわち、当業者であれば当然なしえるであろう各種変形や修正もまた、本発明に含まれるものであることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図。
【図2】本発明による、読み取り回数で重み付けを行う判定論理を説明する図1の続図。
【図3】図10の例と読み取り結果が同じであった場合の、本発明による判定処理の例を示す図。
【図4】本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図(アンテナ7→6)。
【図5】本発明によるRFIDリーダシステムを適用したゲートでの測定値の一例を示す図(引き返し)。
【図6】複数の検知センサとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図。
【図7】複数のアンテナとRFIDリーダを備えたゲートの構成の一例を説明する図。
【図8】図7のRFIDリーダが行う処理のアルゴリズムの一例を説明する図。
【図9】図8に示すアルゴリズムの真理表を示す図。
【図10】図7の構成のRFIDリーダシステムにおいて、電波の反射等により移動方向の誤判定が行なわれる例を説明する図。
【図11】本発明による移動速度の値を用いる判定論理を説明する図。
【符号の説明】
【0066】
1 RFIDリーダ
2 制御回路
3 論理回路
4 高周波アナログ回路
5 アンテナスイッチ回路
6、7 アンテナ
8 ICタグ
10、11 検知センサ
100 アンテナ通信エリア
101 第1の通信エリア
102 第2の通信エリア
103 第3の通信エリア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグが読み取られた回数より、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナにおける前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【請求項2】
移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグの読み取り信号レベルより、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナにおける前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【請求項3】
前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値の差が、予め設定した閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とする、請求項1乃至2に記載のRFIDリーダシステム。
【請求項4】
前記複数のアンテナにおける各々の距離と、前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とする、請求項1乃至2に記載のRFIDリーダシステム。
【請求項5】
前記移動速度の値が、前記閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とする、請求項4に記載のRFIDリーダシステム。
【請求項1】
移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグが読み取られた回数より、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナにおける前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【請求項2】
移動可能な物体に取り付けてなるICタグの読み取りもしくは書き込みを行うRFIDリーダシステムであって、前記ICタグとの通信を行うための複数のアンテナを備え、前記複数のアンテナの各々において前記ICタグが読み取られた時刻と、前記読み取られた時刻における前記ICタグの読み取り信号レベルより、前記ICタグの読み取り処理を開始した時刻から前記読み取られた時刻までの信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を算出し、前記複数のアンテナにおける前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とするRFIDリーダシステム。
【請求項3】
前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値の差が、予め設定した閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とする、請求項1乃至2に記載のRFIDリーダシステム。
【請求項4】
前記複数のアンテナにおける各々の距離と、前記読み取り回数で重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値または前記信号レベルで重み付けを行った読み取り時刻の加重平均値から前記ICタグの移動速度の値を算出し、前記移動速度の値と予め設定した閾値を比較照合することにより、前記ICタグの移動方向を判定することを特徴とする、請求項1乃至2に記載のRFIDリーダシステム。
【請求項5】
前記移動速度の値が、前記閾値を超えた場合に、前記ICタグの移動方向の判定を行うことを特徴とする、請求項4に記載のRFIDリーダシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−92454(P2010−92454A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323506(P2008−323506)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】
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