RFIDリーダライタ、RFIDシステムおよび通信方法
【課題】低周波機器によるノイズの影響を受けないRFIDリーダライタを提供する。
【解決手段】RFIDリーダライタ10は、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部11と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部12とを備える。送信部11は搬送波を送信する。RFIDリーダライタ10は、受信部12で受信した受信信号のノイズを検出する検出部を有し、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部11からの搬送波を出力している状態で、検出部で受信信号に含まれるノイズを検出するよう送信部と検出部とを制御する制御部20とを含む。
【解決手段】RFIDリーダライタ10は、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部11と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部12とを備える。送信部11は搬送波を送信する。RFIDリーダライタ10は、受信部12で受信した受信信号のノイズを検出する検出部を有し、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部11からの搬送波を出力している状態で、検出部で受信信号に含まれるノイズを検出するよう送信部と検出部とを制御する制御部20とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はRFIDリーダライタ、RFIDシステムおよび通信方法に関し、特にノイズの影響を受け難いRFIDリーダライタ、RFIDシステムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のRFIDリーダライタとRFIDタグとから成るRFIDシステムがたとえば、特開2010−35038号公報(特許文献1)や、特許第3874007号公報(特許文献3)に開示されている。
【0003】
また無線基地局装置間の通信に用いる通信チャネルを設定する通信チャネル設定方法がたとえば、特開2003−70056号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
特許文献1は、タグとの通信に先立ちキャリアセンスを行い、複数の周波数チャネルの受信電力強度を測定し周波数チャネルの空き状態を調べ、その結果に応じてタグとの通信に使用する周波数チャネルを決めることで良好な通信環境を確保している。キャリアセンスは、任意の周波数チャネルを他のRFIDシステムが使用しているか否かを調べるためのものであるが、任意の周波数チャネルのノイズの分布を調べる手段としても有用である。
【0005】
例えばタグとの通信に先立ち、キャリアセンスを行いノイズのすくない周波数チャネルを調べ、その周波数チャネルでタグとの通信ができるように、使用する周波数チャネル、サブキャリア(副搬送波)の周波数、通信速度などを制御することで良好な通信環境が確保できる。なお、キャリアセンスはリーダライタが受信状態、即ち電波を発射していない状態で実施している。
【0006】
特許文献2は、無線基地局装置間の通信に用いる通信チャネルを設定する通信チャネル設定方法が示されている。特許文献2では、他の無線基地局装置に対する通信に用い得る送信帯域中の雑音レベルと、他の無線基地局装置からの通信に用い得る受信帯域中の雑音レベルを測定し、測定した雑音レベルが所定の閾値より小さい送信帯域中の送信チャネルと受信帯域中の受信チャネルとを選択している。
【0007】
特許文献2では、使用できるチャネルの帯域幅に応じて、伝送すべきデータの伝送レートを可変するような制御は行なわず、伝送すべきデータの伝送レートに応じて使用するチャネルの帯域幅を制御している。
【0008】
特許文献3はタグとの通信に先立ち、搬送波のみを送出する通信待機状態を設定する待機処理手段と、前記通信待機状態下で得られた受信信号のレベルをノイズレベルとして抽出するノイズレベル抽出手段とを具備しており、こうして得られたノイズレベルを外部に表示または出力するか、または、ノイズレベルが所定値以下となる状態が一定期間続いたことを条件として通信待機状態を終了し、タグとの通信を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−35038号公報
【特許文献2】特開2003−70056号公報
【特許文献3】特許第3874007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の良好な通信状態を維持するRFIDシステムは上記のように構成されていた。RFIDシステムにおいて従来はノイズとして同一周波数帯のノイズを想定していた。例えば他のRFIDシステムやその他無線局で使用している電波、さらにそれらのスプリアス成分、副次的に発射している電波成分(無線機の受信回路から漏れ出る局部発信器信号等)などを想定していた。
【0011】
しかしながら、発明者らは、実験を通じてRFIDシステムにとっては低周波機器、例えばインバータ機器などもRFIDシステムの通信を妨害するノイズ源となり得ることを知った。
【0012】
低周波機器がRFIIDシステムの通信を妨害するメカニズムを説明するため、まず、RFIDシステムの通信の原理を説明する。
【0013】
図19はRFIDリーダライタ(以下、「リーダライタ」と省略する)とRFIDタグ(以下、「タグ」と省略する)との通信状態を説明するための図であり、(A)はリーダライタとタグとの間の通信内容を示す模式図であり、(B)はリーダライタからタグへの送信信号を示す図であり、(C)はタグでの動作を示す模式図であり、(D)はタグからリーダライタへの送信信号を示す図である。
【0014】
リーダライタとタグとの通信は、図19(A)に示すように、まずリーダライタからタグに変調波でコマンドが送信される(図19(B))。その後、タグがコマンドを受信してレスポンス信号を送信するときには、リーダライタは無変調波(搬送波)を送信する。タグのレスポンス返信は、この搬送波をバックスキャッタすることで送信している(図19(C),(D))。即ち、タグ側からのレスポンスタイミング時には、図19(B)に示すようにリーダライタから搬送波が送出され続けている。
【0015】
さて、低周波機器は低周波で動作している機器である。例えば低周波機器の一例であるインバータ機器は、通常数十kHz〜数百kHzのスイッチング周波数で機器が動作している。このようなインバータ機器に搬送波の電波を入射した場合、インバータ機器のスイッチング信号に応じて、入射した搬送波の信号が変調されて反射される現象が発生することを発明者らは発見した。
【0016】
図20はこの現象を示す図である。図20(A)は低周波機器が搬送波の電波aを受信したときに搬送波がスイッチング信号bに応じて変調されて変調波cが出力される状態を示す図であり、図20(B)はリーダライタからの送信搬送波電波と、RFIDシステムとは無関係に発生された低周波機器のノイズと、低周波機器のノイズによりリーダライタからの送信搬送波電波が変調されて生成された変調波(以下、「低周波機器の変調ノイズ」と表現する)の周波数と強度を示す図である。
【0017】
インバータ機器では、スイッチング信号によりスイッチング素子を制御することで、回路のインピーダンスを変化させている。回路のインピーダンスが変化することにより、回路パターンなどから入射した搬送波の電波に対する反射係数は変化し、その反射波は反射係数に応じた変化をした後、回路パターンなどから再び放射されるため、このような現象が発生すると考えられる。
【0018】
このようにして低周波機器で再び放射された反射波はリーダライタのアンテナで受信され、リーダライタ内で復調されるため、ノイズ成分となる。タグからのレスポンス信号は、このノイズ成分に妨害されるため、RFIDシステムの通信を妨害することとなる。
【0019】
この現象を実験で調査した結果を図21に示す。図21は、低周波機器として蛍光灯を用いて、リーダライタのアンテナ部に正対した状態のリーダライタの受信周波数スペクトルを分析した図である。蛍光灯の無い時(A)、蛍光灯から2mのとき(B)、1mのとき(C)のそれぞれの場合を示す。
【0020】
図21に示すように、蛍光灯がないときはノイズは発生しないが、点灯した蛍光灯に近づくにつれてノイズが増え、且つ、そのレベルが大きくなることが判る。
【0021】
次に他の例について説明する。図22は低周波機器としてPCの液晶画面を用いた場合の図21に対応する図である。リーダライタのアンテナ部に正対した状態で、液晶画面から2mのとき(A)と1mのとき(B)における、リーダライタの受信周波数スペクトルを分析している。なお、液晶画面の無い時は、図21(A)の蛍光灯の無い時と同一結果になる。
【0022】
このように低周波機器に搬送波の電波を入射した場合、低周波機器のスイッチング信号に応じて、入射した搬送波の電波が変調されて反射されるため、その変調された電波がリーダライタの受信部で復調され、本来のタグの受信信号とのS/Nが十分に取れずに通信品質が悪化するという問題が発生する。この問題は、ノイズ源となる低周波機器との距離が近い程顕著になる。
【0023】
このような現象に対して上記した各特許文献は対応できない。特許文献1では、ノイズとしてはタグとの通信周波数帯のノイズを前提としている。日本の電波法を例に取って説明すると、例えばUHF帯のRFIDシステムでは、953MHz帯(2011年1月現在)の電波を使用しているため、ノイズとしても953MHz帯のノイズがキャリアセンスの対象となる。キャリアセンスの際は搬送波の電波を発射しないため、上記の低周波機器の変調ノイズを測定することができず、上記の問題を解決できない。
【0024】
特許文献2では、他の無線基地局装置に対する通信に用い得る送信帯域中の雑音レベルと、他の無線基地局装置からの通信に用い得る受信帯域中の雑音レベルを測定し、測定した雑音レベルが所定の閾値より小さい送信帯域中の送信チャネルと受信帯域中の受信チャネルとを選択しているが、公知例同様に雑音レベルの測定の際は搬送波の電波を発射しないため、上記の低周波機器の変調ノイズを測定することができず、上記の問題を解決できない。
【0025】
特許文献3ではノイズレベル測定時には搬送波を出力しているものの、得られた結果を表示し、またノイズレベルが所定値以下になるまで通信処理を待つという内容であるため、ここでも上記の問題を解決できない。
【0026】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、インバータ機器のような低周波機器によるノイズの影響を受けないRFIDリーダライタ、RFIDシステム、および、通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この発明に係るRFIDリーダライタは、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部と、受信部で受信した受信信号のノイズを検出する検出部とを備える。送信部は搬送波を送信する。RFIDリーダライタは、検出部が、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するよう送信部と検出部とを制御する制御手段を含む。
【0028】
好ましくは、送信部が出力する搬送波の周波数が、RFIDタグとの通信に用いる送信信号の搬送波周波数である。
【0029】
なお、受信部はRFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、復調手段は、受信信号を両側波帯信号として復調し、検出部は、復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出してもよい。また、復調手段は、受信信号を単側波帯信号として復調し、検出部は、復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出してもよい。
【0030】
復調手段は、送信器が出力する搬送波より高い周波数のノイズを上側波帯(USB)信号、出力する搬送波より低い周波数のノイズを下側波帯(LSB)信号として独立して復調し、検出部は復調手段が復調した復調信号を測定してもよい。
【0031】
検出部は復調信号の有するノイズの周波数を解析する周波数解析手段を含むのが好ましい。
【0032】
さらに好ましくは、周波数解析手段の解析結果に基づき、最もノイズの少ない周波数帯を算出する、周波数算出手段を含むのが好ましい。
【0033】
さらに、周波数算出手段の算出結果に応じてRFIDタグとの通信パラメータを設定する、通信パラメータ設定手段を含んでもよい。
【0034】
通信パラメータは、RFIDタグから返信される信号として、サブキャリアを用いるか用いないかを設定するようにしてもよいし、周波数解析手段の解析結果に基づき、RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定してもよいし、RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定してもよいし、RFIDタグから返信される信号の通信速度を設定してもよい。
【0035】
また、検出部の検出したノイズの周波数を外部機器へ出力してもよい。
【0036】
この発明の他の局面においては、通信方法は、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部とを備えるRFIDリーダライタとRFIDタグとの通信方法である。通信方法は、送信部から搬送波を送信するステップと、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するステップと、検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップとを含む。
【0037】
好ましくは、検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップは、ノイズの少ない周波数を選択する通信パラメータを設定するステップを含む。
【0038】
さらに、RFIDリーダライタは、検出部の検出結果に基づいてRFIDタグとの通信条件を設定する設定手段を含んでもよいし、設定手段は受信信号に含まれるノイズを分析するノイズ分析手段を含んでもよいし、ノイズ分析手段の分析結果に応じて通信条件として通信パラメータを設定する通信パラメータ設定手段を含んでもよい。
【0039】
この発明の他の局面においては、RFIDシステムは、上記したRFIDリーダライタと、RFIDリーダライタと通信するRFIDタグとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0040】
この発明においては、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で検出部にて受信信号に含まれるノイズを検出するようにしたため、低周波機器の変調ノイズを含めて、ノイズの低い周波数を用いたタグとの通信が可能になる。
【0041】
その結果、低周波機器のノイズの影響を受け難いRFIDリーダライタ、RFIDシステム、および、通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の第1および第2実施の形態に係るリーダライタの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したリーダライタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】リーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】第1実施の形態における復調信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】ノイズのSSB受信処理を示す図である。
【図6】SSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理方法を示す図である。
【図7】SSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理の他の方法を示す図である。
【図8】SSB受信処理をした場合の通信パラメータの一設定例を示す図である。
【図9】SSB受信処理をした場合の通信パラメータの他の設定例を示す図である。
【図10】第2実施の形態における復調信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施の形態におけるリーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図12】ノイズのDSB受信処理を示す図である。
【図13】DSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理方法を示す図である。
【図14】DSB受信処理をした場合の通信パラメータの一設定例を示す図である。
【図15】DSB受信処理をした場合の通信パラメータの他の設定例を示す図である。
【図16】第2実施の形態における復調信号処理部の他の構成を示すブロック図である。
【図17】第3実施の形態におけるリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図18】第3実施の形態におけるリーダライタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図19】従来のリーダライタとタグとの通信状態を説明するための図である。
【図20】インバータ機器に搬送波の電波を入射した場合に信号が変調されて反射される現象を説明するための図である。
【図21】低周波機器として蛍光灯を用いて、RFIDリーダライタのアンテナ部に正対した状態のRFIDリーダライタの受信周波数スペクトルを分析した図である。
【図22】低周波機器としてPCの液晶画面を用た場合の図21に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(1)第1実施の形態
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。ここでは、まず、受信部が単側波帯(SSB、Single Side Band)受信を行なう場合について説明する。図1はこの場合のRFIDシステムのリーダライタの構成を示すブロック図である。図1を参照して、リーダライタ10は、送信部11と、受信部12と、送信部11からの送信信号をアンテナ14へ導き、アンテナ14で受信したタグ50からの受信信号を受信部12へ導くサーキュレータ13と、送信部11および受信部12に搬送波を供給する周波数シンセサイザ16と、送信部11および受信部12を制御する制御部20とを含み、アンテナ14を介してタグ50との送受信を行なう。
【0044】
送信部11は、制御部20からのデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器111と、DA変換器111に接続され、送信ベースバンド信号を受けて周波数シンセサイザ16からの搬送波を変調する変調器112と、パワーアンプ113とを含み、パワーアンプ113の出力がサーキュレータ13に入力される。
【0045】
受信部12はサーキュレータ13からの受信信号の帯域を制限する帯域制限フィルタ(BPF,Band Pass Filter)121と、帯域制限フィルタ121に接続されたローノイズアンプ122と、ローノイズアンプ122からの出力信号と周波数シンセサイザ16からの搬送波とを受けて、相互に90度位相のずれた信号を出力する直交復調器124とを含む。直交復調器124は、乗算器123a,123bと、相互に直交する信号を復調するために相互の位相をずらせるためのπ/2位相器123cとを含む。直交復調器124から復調された信号は、それぞれをI信号およびQ信号として増幅およびデジタル信号に変換するための増幅器125a,125bと、AD変換器126a,126bとを経て、I信号とQ信号とが一体化されて制御部20へ入力される。また、直交復調器124、増幅器125a,125b、AD変換器126a,126b、および、後述する復調信号処理部25が復調手段を構成する。
【0046】
図2は図1に示した制御部20の詳細を示すブロック図である。図2を参照して、制御部20は、制御部20全体を制御するメイン制御部21と、メイン制御部21に接続され、送信データを生成する送信データ生成部22と、送信データ生成部22で生成されたデータを符号化する符号化部23とを含み、符号化部23の出力がDA変換器111へ出力される。また、メイン制御部21には送信するチャネルを選択するためのチャネル選択処理部24が接続され、その出力が周波数シンセサイザ16に出力される。なお、メイン制御部21は送信部11や受信部12の動作も制御する。
【0047】
図1に示したAD変換器126a,126bからの出力信号は復調信号処理部25で復調される。復調信号処理部25で復調された信号の一部は、フーリエ変換するためにFFT処理部26へ送られ、ノイズ分布を分析するためにノイズ分布分析部27へ送られてメイン制御部21へ送られる。復調信号処理部25で復調された信号はまた、復号するために復号化部28へ入力され、受信処理データ処理部29を経てメイン制御部21へ入力される。なお、FFT処理部26とノイズ分布分析部27とでノイズを検出する検出部、および、周波数解析手段を構成している。
【0048】
次に、リーダライタ10の動作、具体的には制御部20の動作について説明する。なお、制御部20の動作は基本的に、メイン制御部21が制御する。図3は制御部20における動作を示すフローチャートである。図3を参照して、まず使用する周波数(リーダライタ10がタグに送信する周波数)を決定する(ステップS11、以下、ステップを省略する)。次に、タグとの通信に先立ち、使用周波数で搬送波を出力している状態で、その周波数帯の電波を一定時間受信する(S12)。具体的には、送信部11はアンテナ14を介して周波数シンセサイザ16からの搬送波を変調器112で変調することなく送信する。その状態で受信される受信電波を、アンテナ14を介して受信部12で受信する。受信部は帯域制限フィルタ121、ローノイズアンプ122、直交復調器124、増幅器125a,125bを経てAD変換器126a,126bでI信号およびQ信号をデジタル信号に変換し(S13)、搬送波の出力を終了する(S14)。
【0049】
制御部20の復調信号処理部25でSSB受信処理を行なう(S15)。受信したSSB信号をFFT処理部26で周波数変換し、ノイズ分布分析部27でどの周波数範囲のノイズが少ないかを分析する(S16)。
【0050】
ノイズ分布分析部27での分析結果に基づいてノイズの少ない周波数範囲を算出する(S17)。ノイズの少ない周波数でタグと通信できるように、最適な通信パラメータを設定する(S18)。最適な通信パラメータが設定できるか否かを判断する(S19)。最適な通信パラメータが設定できれば(S19で可能)、タグへのコマンドを生成して(S20)、タグとの通信を実施する(S21)。
【0051】
最適な通信パラメータが設定できなければ(S19で不可能)、チャネル等を切換えて使用周波数を変更して(S22)、S11に戻り、S12以降の処理を繰り返す。
【0052】
なお、最適な通信パラメータとしては、サブキャリアの有無、サブキャリアの周波数、通信速度等を含み、タグからの返信信号がノイズの少ない帯域内に収まるようにするパラメータである。この具体的な内容については後述する。
【0053】
このようにしてメイン制御部21で定められた最適な通信パラメータを送信データ生成部22に送り、タグからの返信における最適な通信パラメータをタグへのコマンドとして生成する。その後、タグとの通信を実施する。
【0054】
なお、メイン制御部21が制御手段、周波数算出手段、通信パラメータ設定手段、通信条件設定手段として作動する。
【0055】
ここで、図3においてS15で示した復調信号処理部25におけるSSB受信処理について説明する。図4は復調信号処理部25の構成を示すブロック図である。図4を参照して、復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号に対して遅延処理する遅延処理部251と、直交復調器124で復調されたQ信号にヒルベルト変換処理を行なうヒルベルト変換部252と、遅延処理部251で遅延処理されたI信号にヒルベルト変換部252でヒルベルト変換処理されたQ信号を加える加算器253と、遅延処理部251で遅延処理されたI信号からヒルベルト変換部252でヒルベルト変換処理されたQ信号を減算する減算器254とを含み、加算器253からの出力をUSB信号(デジタル信号)として出力し、減算器254からの出力をLSB信号(デジタル信号)として出力する。なお、遅延処理部251はQ信号のヒルベルト変換処理に要する時間と同様の遅延処理を行なうために設けられている。
【0056】
なお、SSB受信処理においては、USB成分とLSB成分とは各々独立で処理を行なう。処理の順番は任意である。
【0057】
このようにして得られたUSB側信号とLSB側信号とを用いて、後に説明するタグとの通信パラメータを設定する。
【0058】
次に、SSB受信処理の内容について説明する。図5はSSB受信処理内容を説明するための図である。図5(A)は送信搬送波を基準としたノイズの周波数分布を示す図であり、図5(B)はこの信号を上記のようにSSB受信処理をおこなってLSB成分とUSB成分とを取出した状態を示す図である。ここでは、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるものとする。SSB受信であれば、上記したように、送信搬送波より高い周波数成分のノイズ(USB側)と低い周波数成分のノイズ(LSB側)とを分離して受信可能であるため、送信搬送波の周波数が判っていれば、ノイズの正確な周波数分布が判る。この例では、USB成分とLSB成分とを測定することで、使用周波数周辺のノイズ分布を正確に把握することができる。
【0059】
図5(B)を参照して、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるため、USB成分がDC〜300kHzでノイズ有であれば、952.4MHz 〜 952.7MHz でノイズ有であり、LSB成分が100kHz〜400kHzでノイズ有であれば、952.0MHz 〜 952.3MHzでノイズ有となる。これらより、0〜952.0MHzの範囲、952.3MHz〜952.4MHzの範囲、952.7MHz以上の範囲の周波数帯域のノイズが少ないことが判る。したがって、これらの範囲を選んでタグと通信すればノイズの少ない環境で通信が可能になる。
【0060】
次に図3においてS16およびS17で示したノイズ分布の分析処理、および、ノイズ成分の少ない周波数範囲を算出する処理について説明する。図6はノイズ分布の分析処理を所定の閾値を定めて行なう場合を説明するための図である。今、図6に示すようなノイズがあって予め図に示すように閾値が定められているものとする。S17で示したように、メイン制御部21は閾値を下回る周波数範囲をノイズの少ない周波数範囲と判定する。
【0061】
図6を参照して、USB成分は100kHz〜500kHzの周波数範囲でノイズが少なく、LSB成分は200kHz〜400kHzの周波数範囲でノイズが少ないことがわかる。送信搬送波の周波数をfcとすれば、(fc-400kHz)〜(fc-200kHz)の範囲、(fc+100kHz)〜(fc+500kHz)の範囲の2つの周波数帯域のノイズが小さいと判定する。
【0062】
次に、ノイズ分布の分析処理を積分によって判断する場合について説明する、図7はこの場合を説明するための図である。ここでは、図7に示すように、FFTデータ列で積分をとり、その積分値が閾値を超えない範囲aで、最も広い周波数範囲の取れる区間を、ノイズの少ない周波数範囲と判定する。
【0063】
次に、図3のS18で示したタグからの返信における最適な通信パラメータの設定方法について説明する。タグからリーダライタへの通信パラメータは、リーダライタからタグに送信するコマンドで指定する事ができる。例えば、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cでは、リンク周波数BLF(Link Frequency)とサブキャリアのサイクル数M(Number of subcarrier cycles per symbol)とをパラメータとして、任意に設定可能である。表1および表2は、ISO/IEC18000-6 Type Cにおけるリンク周波数BLFとサブキャリアのサイクル数Mとの値を示す表である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
図8は、ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、以下のようなノイズ分布分析結果となった場合にUSB成分とLSB成分とにおいて、ある閾値を定めたときのノイズの少ない範囲(図8(A))と、その場合の通信パラメータの設定方法を示す図(図8(B))である。
【0067】
図8(A)を参照して、USB成分の200kHz〜600kHzの周波数範囲のノイズが小さく、かつ広い帯域を確保できることがわかる。よって、中心周波数が400kHz近傍で、その両側で帯域幅が400kHzをカバーするように表1および表2から、通信パラメータを選択する。その結果、BLF=400kHz、M=4を設定する。この設定では伝送速度はBLF/4=100kbpsとなる。なお、メイン制御部21は、ここでは、Mの設定においては、帯域幅が伝送速度の4倍となる点を考慮して設定する。なお、帯域幅は良好な通信品質を確保できれるのであれば、伝送速度の任意の倍数に設定してもよい。
【0068】
次に、通信パラメータの具体的な他の設定方法について説明する。図9はこの場合の図8に対応する図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図9に示すようなノイズ分布分析結果となった場合である。この例では、LSB成分の240kHz〜400kHzの周波数範囲のノイズが小さい。帯域幅は160kHzである。同様に、通信パラメータとしてBLF=320kHz、M=8を設定する。この設定では伝送速度は40kbpsとなる(帯域幅は約160kHz)。
【0069】
なお、図3において、S22において使用周波数を何度か変更してもS19で最適な通信パラメータの設定ができないときは、図示のない表示部にエラーの表示を行なったり、閾値を変更してもよい。
【0070】
(2)第2実施の形態
次にこの発明の第2実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、SSBを用いて設定したが、この発明は両側波帯(DSB)においても適用が可能である。この実施の形態においても、リーダライタの全体構成を示すブロック図やリーダライタの制御部の構成を示すブロック図は図1および図2に示したものと同様である。この実施の形態においては、復調信号処理部25の構成が先の実施の形態における図4と異なる。この場合の構成を図10に示す。また、この実施の形態における制御部20の動作を示すフローチャートを図11に示す。
【0071】
図10を参照して、この実施の形態における復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号およびQ信号を入力してI信号およびQ信号の振幅を比較していずれか、振幅の大きい信号をDSB(デジタル信号)として出力するIQ振幅比較部256を含む。
【0072】
次に、この実施の形態における制御部20の動作について説明する。この実施の形態における制御部20の動作は基本的に先の実施の形態と同様であるが、一部異なるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
図11を参照して、S31〜S34は先の実施の形態におけるS11〜S14と同様である。
【0074】
制御部20の復調信号処理部25でDSB受信処理を行なう(S35)。受信したDSB信号のノイズ分布をノイズ分布分析部27で分析し、分析結果に基づいてノイズの少ない周波数範囲を算出する(S36、S37)。ノイズの少ない周波数でタグと通信できるように、メイン制御部21で通信パラメータを設定する(S38)。最適な通信パラメータが設定できるか否かを判断する(S39)。最適な通信パラメータが設定できれば(S39で可能)、タグ50へのコマンドを生成して、タグ50との通信を実施する(S40,S41)点や、最適な通信パラメータが設定できなければ、メイン制御部21にて使用周波数を変更して(S42)、S31に戻るという点も先の実施の形態と同じである。
【0075】
次に、図11のS35で示したノイズのDSB受信処理について説明する。図12はDSB受信処理内容を説明するための図である。図12(A)は送信搬送波を基準としたノイズの周波数分布を示す図であり、図12(B)はこの信号に対してDSB受信処理をおこなった状態を示す図である。ここでは、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるものとする。DSB受信では、送信搬送波より高い周波数成分のノイズ(USB側)と低い周波数成分のノイズ(LSB側)とを分離して受信することができない。DSB受信では、USB成分とLSB成分とが合成された復調信号となる。
【0076】
この例では、復調信号として400kHz以上の周波数帯域のノイズが少ない事が判る。
【0077】
送信搬送波が952.4MHzの例なので、〜952.0MHz、952.8MHz〜の2つの周波数帯域のノイズが少ないことが判る。
【0078】
次に図11においてS36およびS37で示したノイズ分布の分析処理、および、ノイズ成分の少ない周波数範囲を算出する処理について説明する。図13はノイズ分布の分析処理を所定の閾値を定めて行なう場合を説明するための図である。今、図13に示すようなノイズがあって予め図に示すように閾値が定められているものとする。メイン制御部21は閾値を下回る周波数範囲をノイズの少ない周波数範囲と判定する。図13からDSB復調信号として、200kHz〜400kHzの周波数範囲でノイズが少ないことが判る。
【0079】
ここで、送信搬送波の周波数をfcとすれば、(fc-400kHz)〜(fc-200kHz)の範囲、(fc+200kHz)〜(fc+400kHz)の範囲の2つの周波数帯域のノイズが小さいと判定する。
【0080】
なお、先の実施の形態と同様に、ノイズ分布の分析処理を積分によって判断してもよい。この場合の処理は先の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
次に、図11のS38で示したタグからの返信における最適な通信パラメータの設定方法について説明する。ここでも、上記の表1および2で説明した、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cの、リンク周波数BLF(Link Frequency)とサブキャリアのサイクル数M(Number of subcarrier cycles per symbol)とをパラメータとして設定する。
【0082】
図14(A)はノイズの周波数分布と閾値とを示す図であり、図14(B)はこの場合の通信パラメータの設定方法を示す図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図14(A)に示すようなノイズ分布分析結果となった場合、DSB復調信号の200kHz〜600kHzの周波数範囲がノイズが小さい。すなわち、中心周波数は400kHzであり、その幅は400kHzである。よって、表1および表2を参照して、通信パラメータとしてBLF=400kHz、M=4を設定する。この設定では伝送速度は100kbpsとなり、400kHz程度の帯域を確保できる。
【0083】
次に、この実施の形態における、通信パラメータの具体的な他の設定例について説明する。図15はこの場合の例を示す図であり、先の例の図14と同様の内容を示す図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図15(A)で示すようなノイズ分布分析結果となった場合、DSB復調信号のDC〜80kHzの周波数範囲がノイズが小さいことがわかる。この場合は、通信パラメータとしてBLF=40kHz、M=1(サブキャリア無し)を設定する。この設定では伝送速度は40kbpsとなる(帯域幅は約160kHz)。
【0084】
なお、この実施の形態においても、図11において、S42において使用周波数を何度か変更してもS39で最適な通信パラメータの設定ができないときは、先の実施の形態と同様に、閾値を変更等してもよい。
【0085】
この実施の形態においては、復調信号処理部25において、I信号とQ信号とから1つの出力信号を得るために両信号の振幅を比較するI/Q振幅比較器を用いる場合について説明したが、これに限らず、他の方法を用いてもよい。図16(A)は、この場合の図10に対応するブロック図であり、図16(B)はI信号およびQ信号から構成される合成ベクトルを示す図であり、図16(C)は合成ベクトルに対して角度α回転させ、I信号軸(実数軸)上に移動させた状態を示す図である。
【0086】
図16(A)を参照して、この実施の形態においては、復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号およびQ信号を入力してI信号およびQ信号をベクトル化するベクトル化部257と、ベクトル化された信号から、所定の角度αを演算するα演算部258と、演算されたαに基づいてベクトル化された信号を実数軸上に回転させた上で、実数軸成分を出力する実数軸成分出力部259とを含む。
【0087】
ベクトル化部257は、I信号とQ信号とを複素数化し、I信号を実数軸、Q信号を虚数軸で表した合成ベクトルに変換する(図16(B))。α演算部258は図16(B)に示す合成ベクトルの角度α=tan-1(Q/I)を演算する。実数軸成分出力部259は図16(C)に示すように、演算されたαだけベクトルを回転させ、実数軸成分を出力する。このようにして演算された実数軸成分がDSB信号として出力される。
【0088】
(3)第3実施の形態
次にこの発明の第3実施の形態について説明する。上記の第2実施の形態においては、SSBの信号も処理可能な受信部や制御部を有する図1および2に示すリーダライタでDSB受信を行なう場合について説明したが、この実施の形態においては、両側波帯(DSB)の信号を簡易な構成で処理するように構成が最適化されている。
【0089】
図17および図18はこの実施の形態におけるリーダライタ30、および、制御部20aの構成を示すブロック図であり、第1実施の形態における図1および図2に対応する。図17および図18に示すように、この実施の形態においては、受信部32および制御部20aについてはその構成が異なるため、その異なる部分のみについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0090】
図17を参照して、この実施の形態においては、受信部32はサーキュレータ13からの受信信号の帯域を制限する帯域制限フィルタ321と、帯域制限フィルタ321に接続されたローノイズアンプ322と、ローノイズアンプ322からの出力信号を周波数シンセサイザ16からの搬送波に基づいて復調する復調器323と、復調された受信信号を増幅するための増幅器324と、増幅器324で増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換器325を含み、変換されたデジタル受信信号が制御部20aへ入力される。
【0091】
この実施の形態においては、復調器323と増幅器324とAD変換器325とで復調手段を構成している。
【0092】
図18を参照して、制御部20aは図2に示した制御部20に対して復調信号処理部が設けられていない点のみが異なりそれ以外の部分は先の実施の形態と同様である。
【0093】
次に、この実施の形態におけるリーダライタ30および制御部20aの動作について説明する。この実施の形態においては、基本的には第2の実施の形態と同様であるが、DSBを用いる場合に特化している点が異なる。したがって、異なる部分について説明し、先の実施の形態と同一部分についてはその説明を省略する。また、この実施の形態におけるリーダライタ30の動作を示すフローチャートは図11と基本的に同じであるが、上記のように、復調信号処理部が設けられていないため、S35の内容が異なる。すなわち、図11のS35において制御部20はDSB受信処理を行なう。これ以前の処理(S31〜S35)および、これ以後の処理(S36〜S42)は、第2実施の形態と同じである。
【0094】
なお、上記各実施の形態においては、メイン制御部がノイズ分布分析部の分析結果に応じて通信パラメータを設定する場合について説明したが、これに限らず、ノイズ分布分析部の分析結果を外部の機器に送信し、外部の機器が適切な通信パラメータを設定し、それをリーダライタに送信して、メイン制御部が設定するようにしてもよい。
【0095】
上記各実施の形態においては、最適な通信パラメータの設定方法として、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cを用いた場合について説明したが、これに限らず、任意の規格を用いて設定してもよい。
【0096】
上記各実施の形態においては、この発明をリーダライタとタグとから成るRFIDシステムにおける場合を例として説明したが、これに限らず、複数の無線装置間において、ノイズの少ない通信を行なう場合についても適用できる。
【0097】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明に係るリーダライタは、低周波機器のノイズの影響を受け難いため、リーダライタとして有利に利用される。
【符号の説明】
【0099】
10,30 リーダライタ、11 送信部、12 受信部、13 サーキュレータ、14 アンテナ、15 ローパスフィルタ,16 周波数シンセサイザ、17 分配器、20,20a 制御部、21 メイン制御部、22 送信データ生成部、23 符号化部、24 チャネル選択部、25 復調信号処理部、26 FFT処理部、27 ノイズ分布分析部、28 復号化部、29 受信データ処理部、111 DA変換器、112 変調器、113 パワーアンプ、121 帯域制限フィルタ、122 ローノイズアンプ、123a,123b 乗算器、124 直交復調器、125 増幅器、126 AD変換器。
【技術分野】
【0001】
この発明はRFIDリーダライタ、RFIDシステムおよび通信方法に関し、特にノイズの影響を受け難いRFIDリーダライタ、RFIDシステムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のRFIDリーダライタとRFIDタグとから成るRFIDシステムがたとえば、特開2010−35038号公報(特許文献1)や、特許第3874007号公報(特許文献3)に開示されている。
【0003】
また無線基地局装置間の通信に用いる通信チャネルを設定する通信チャネル設定方法がたとえば、特開2003−70056号公報(特許文献2)に開示されている。
【0004】
特許文献1は、タグとの通信に先立ちキャリアセンスを行い、複数の周波数チャネルの受信電力強度を測定し周波数チャネルの空き状態を調べ、その結果に応じてタグとの通信に使用する周波数チャネルを決めることで良好な通信環境を確保している。キャリアセンスは、任意の周波数チャネルを他のRFIDシステムが使用しているか否かを調べるためのものであるが、任意の周波数チャネルのノイズの分布を調べる手段としても有用である。
【0005】
例えばタグとの通信に先立ち、キャリアセンスを行いノイズのすくない周波数チャネルを調べ、その周波数チャネルでタグとの通信ができるように、使用する周波数チャネル、サブキャリア(副搬送波)の周波数、通信速度などを制御することで良好な通信環境が確保できる。なお、キャリアセンスはリーダライタが受信状態、即ち電波を発射していない状態で実施している。
【0006】
特許文献2は、無線基地局装置間の通信に用いる通信チャネルを設定する通信チャネル設定方法が示されている。特許文献2では、他の無線基地局装置に対する通信に用い得る送信帯域中の雑音レベルと、他の無線基地局装置からの通信に用い得る受信帯域中の雑音レベルを測定し、測定した雑音レベルが所定の閾値より小さい送信帯域中の送信チャネルと受信帯域中の受信チャネルとを選択している。
【0007】
特許文献2では、使用できるチャネルの帯域幅に応じて、伝送すべきデータの伝送レートを可変するような制御は行なわず、伝送すべきデータの伝送レートに応じて使用するチャネルの帯域幅を制御している。
【0008】
特許文献3はタグとの通信に先立ち、搬送波のみを送出する通信待機状態を設定する待機処理手段と、前記通信待機状態下で得られた受信信号のレベルをノイズレベルとして抽出するノイズレベル抽出手段とを具備しており、こうして得られたノイズレベルを外部に表示または出力するか、または、ノイズレベルが所定値以下となる状態が一定期間続いたことを条件として通信待機状態を終了し、タグとの通信を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−35038号公報
【特許文献2】特開2003−70056号公報
【特許文献3】特許第3874007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の良好な通信状態を維持するRFIDシステムは上記のように構成されていた。RFIDシステムにおいて従来はノイズとして同一周波数帯のノイズを想定していた。例えば他のRFIDシステムやその他無線局で使用している電波、さらにそれらのスプリアス成分、副次的に発射している電波成分(無線機の受信回路から漏れ出る局部発信器信号等)などを想定していた。
【0011】
しかしながら、発明者らは、実験を通じてRFIDシステムにとっては低周波機器、例えばインバータ機器などもRFIDシステムの通信を妨害するノイズ源となり得ることを知った。
【0012】
低周波機器がRFIIDシステムの通信を妨害するメカニズムを説明するため、まず、RFIDシステムの通信の原理を説明する。
【0013】
図19はRFIDリーダライタ(以下、「リーダライタ」と省略する)とRFIDタグ(以下、「タグ」と省略する)との通信状態を説明するための図であり、(A)はリーダライタとタグとの間の通信内容を示す模式図であり、(B)はリーダライタからタグへの送信信号を示す図であり、(C)はタグでの動作を示す模式図であり、(D)はタグからリーダライタへの送信信号を示す図である。
【0014】
リーダライタとタグとの通信は、図19(A)に示すように、まずリーダライタからタグに変調波でコマンドが送信される(図19(B))。その後、タグがコマンドを受信してレスポンス信号を送信するときには、リーダライタは無変調波(搬送波)を送信する。タグのレスポンス返信は、この搬送波をバックスキャッタすることで送信している(図19(C),(D))。即ち、タグ側からのレスポンスタイミング時には、図19(B)に示すようにリーダライタから搬送波が送出され続けている。
【0015】
さて、低周波機器は低周波で動作している機器である。例えば低周波機器の一例であるインバータ機器は、通常数十kHz〜数百kHzのスイッチング周波数で機器が動作している。このようなインバータ機器に搬送波の電波を入射した場合、インバータ機器のスイッチング信号に応じて、入射した搬送波の信号が変調されて反射される現象が発生することを発明者らは発見した。
【0016】
図20はこの現象を示す図である。図20(A)は低周波機器が搬送波の電波aを受信したときに搬送波がスイッチング信号bに応じて変調されて変調波cが出力される状態を示す図であり、図20(B)はリーダライタからの送信搬送波電波と、RFIDシステムとは無関係に発生された低周波機器のノイズと、低周波機器のノイズによりリーダライタからの送信搬送波電波が変調されて生成された変調波(以下、「低周波機器の変調ノイズ」と表現する)の周波数と強度を示す図である。
【0017】
インバータ機器では、スイッチング信号によりスイッチング素子を制御することで、回路のインピーダンスを変化させている。回路のインピーダンスが変化することにより、回路パターンなどから入射した搬送波の電波に対する反射係数は変化し、その反射波は反射係数に応じた変化をした後、回路パターンなどから再び放射されるため、このような現象が発生すると考えられる。
【0018】
このようにして低周波機器で再び放射された反射波はリーダライタのアンテナで受信され、リーダライタ内で復調されるため、ノイズ成分となる。タグからのレスポンス信号は、このノイズ成分に妨害されるため、RFIDシステムの通信を妨害することとなる。
【0019】
この現象を実験で調査した結果を図21に示す。図21は、低周波機器として蛍光灯を用いて、リーダライタのアンテナ部に正対した状態のリーダライタの受信周波数スペクトルを分析した図である。蛍光灯の無い時(A)、蛍光灯から2mのとき(B)、1mのとき(C)のそれぞれの場合を示す。
【0020】
図21に示すように、蛍光灯がないときはノイズは発生しないが、点灯した蛍光灯に近づくにつれてノイズが増え、且つ、そのレベルが大きくなることが判る。
【0021】
次に他の例について説明する。図22は低周波機器としてPCの液晶画面を用いた場合の図21に対応する図である。リーダライタのアンテナ部に正対した状態で、液晶画面から2mのとき(A)と1mのとき(B)における、リーダライタの受信周波数スペクトルを分析している。なお、液晶画面の無い時は、図21(A)の蛍光灯の無い時と同一結果になる。
【0022】
このように低周波機器に搬送波の電波を入射した場合、低周波機器のスイッチング信号に応じて、入射した搬送波の電波が変調されて反射されるため、その変調された電波がリーダライタの受信部で復調され、本来のタグの受信信号とのS/Nが十分に取れずに通信品質が悪化するという問題が発生する。この問題は、ノイズ源となる低周波機器との距離が近い程顕著になる。
【0023】
このような現象に対して上記した各特許文献は対応できない。特許文献1では、ノイズとしてはタグとの通信周波数帯のノイズを前提としている。日本の電波法を例に取って説明すると、例えばUHF帯のRFIDシステムでは、953MHz帯(2011年1月現在)の電波を使用しているため、ノイズとしても953MHz帯のノイズがキャリアセンスの対象となる。キャリアセンスの際は搬送波の電波を発射しないため、上記の低周波機器の変調ノイズを測定することができず、上記の問題を解決できない。
【0024】
特許文献2では、他の無線基地局装置に対する通信に用い得る送信帯域中の雑音レベルと、他の無線基地局装置からの通信に用い得る受信帯域中の雑音レベルを測定し、測定した雑音レベルが所定の閾値より小さい送信帯域中の送信チャネルと受信帯域中の受信チャネルとを選択しているが、公知例同様に雑音レベルの測定の際は搬送波の電波を発射しないため、上記の低周波機器の変調ノイズを測定することができず、上記の問題を解決できない。
【0025】
特許文献3ではノイズレベル測定時には搬送波を出力しているものの、得られた結果を表示し、またノイズレベルが所定値以下になるまで通信処理を待つという内容であるため、ここでも上記の問題を解決できない。
【0026】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、インバータ機器のような低周波機器によるノイズの影響を受けないRFIDリーダライタ、RFIDシステム、および、通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この発明に係るRFIDリーダライタは、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部と、受信部で受信した受信信号のノイズを検出する検出部とを備える。送信部は搬送波を送信する。RFIDリーダライタは、検出部が、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するよう送信部と検出部とを制御する制御手段を含む。
【0028】
好ましくは、送信部が出力する搬送波の周波数が、RFIDタグとの通信に用いる送信信号の搬送波周波数である。
【0029】
なお、受信部はRFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、復調手段は、受信信号を両側波帯信号として復調し、検出部は、復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出してもよい。また、復調手段は、受信信号を単側波帯信号として復調し、検出部は、復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出してもよい。
【0030】
復調手段は、送信器が出力する搬送波より高い周波数のノイズを上側波帯(USB)信号、出力する搬送波より低い周波数のノイズを下側波帯(LSB)信号として独立して復調し、検出部は復調手段が復調した復調信号を測定してもよい。
【0031】
検出部は復調信号の有するノイズの周波数を解析する周波数解析手段を含むのが好ましい。
【0032】
さらに好ましくは、周波数解析手段の解析結果に基づき、最もノイズの少ない周波数帯を算出する、周波数算出手段を含むのが好ましい。
【0033】
さらに、周波数算出手段の算出結果に応じてRFIDタグとの通信パラメータを設定する、通信パラメータ設定手段を含んでもよい。
【0034】
通信パラメータは、RFIDタグから返信される信号として、サブキャリアを用いるか用いないかを設定するようにしてもよいし、周波数解析手段の解析結果に基づき、RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定してもよいし、RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定してもよいし、RFIDタグから返信される信号の通信速度を設定してもよい。
【0035】
また、検出部の検出したノイズの周波数を外部機器へ出力してもよい。
【0036】
この発明の他の局面においては、通信方法は、RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、送信信号に基づくRFIDタグからの受信信号を受信する受信部とを備えるRFIDリーダライタとRFIDタグとの通信方法である。通信方法は、送信部から搬送波を送信するステップと、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するステップと、検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップとを含む。
【0037】
好ましくは、検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップは、ノイズの少ない周波数を選択する通信パラメータを設定するステップを含む。
【0038】
さらに、RFIDリーダライタは、検出部の検出結果に基づいてRFIDタグとの通信条件を設定する設定手段を含んでもよいし、設定手段は受信信号に含まれるノイズを分析するノイズ分析手段を含んでもよいし、ノイズ分析手段の分析結果に応じて通信条件として通信パラメータを設定する通信パラメータ設定手段を含んでもよい。
【0039】
この発明の他の局面においては、RFIDシステムは、上記したRFIDリーダライタと、RFIDリーダライタと通信するRFIDタグとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0040】
この発明においては、RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で検出部にて受信信号に含まれるノイズを検出するようにしたため、低周波機器の変調ノイズを含めて、ノイズの低い周波数を用いたタグとの通信が可能になる。
【0041】
その結果、低周波機器のノイズの影響を受け難いRFIDリーダライタ、RFIDシステム、および、通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の第1および第2実施の形態に係るリーダライタの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したリーダライタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】リーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】第1実施の形態における復調信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】ノイズのSSB受信処理を示す図である。
【図6】SSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理方法を示す図である。
【図7】SSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理の他の方法を示す図である。
【図8】SSB受信処理をした場合の通信パラメータの一設定例を示す図である。
【図9】SSB受信処理をした場合の通信パラメータの他の設定例を示す図である。
【図10】第2実施の形態における復調信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施の形態におけるリーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図12】ノイズのDSB受信処理を示す図である。
【図13】DSB受信処理をした場合のノイズ分布分析処理方法を示す図である。
【図14】DSB受信処理をした場合の通信パラメータの一設定例を示す図である。
【図15】DSB受信処理をした場合の通信パラメータの他の設定例を示す図である。
【図16】第2実施の形態における復調信号処理部の他の構成を示すブロック図である。
【図17】第3実施の形態におけるリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図18】第3実施の形態におけるリーダライタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図19】従来のリーダライタとタグとの通信状態を説明するための図である。
【図20】インバータ機器に搬送波の電波を入射した場合に信号が変調されて反射される現象を説明するための図である。
【図21】低周波機器として蛍光灯を用いて、RFIDリーダライタのアンテナ部に正対した状態のRFIDリーダライタの受信周波数スペクトルを分析した図である。
【図22】低周波機器としてPCの液晶画面を用た場合の図21に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(1)第1実施の形態
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。ここでは、まず、受信部が単側波帯(SSB、Single Side Band)受信を行なう場合について説明する。図1はこの場合のRFIDシステムのリーダライタの構成を示すブロック図である。図1を参照して、リーダライタ10は、送信部11と、受信部12と、送信部11からの送信信号をアンテナ14へ導き、アンテナ14で受信したタグ50からの受信信号を受信部12へ導くサーキュレータ13と、送信部11および受信部12に搬送波を供給する周波数シンセサイザ16と、送信部11および受信部12を制御する制御部20とを含み、アンテナ14を介してタグ50との送受信を行なう。
【0044】
送信部11は、制御部20からのデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器111と、DA変換器111に接続され、送信ベースバンド信号を受けて周波数シンセサイザ16からの搬送波を変調する変調器112と、パワーアンプ113とを含み、パワーアンプ113の出力がサーキュレータ13に入力される。
【0045】
受信部12はサーキュレータ13からの受信信号の帯域を制限する帯域制限フィルタ(BPF,Band Pass Filter)121と、帯域制限フィルタ121に接続されたローノイズアンプ122と、ローノイズアンプ122からの出力信号と周波数シンセサイザ16からの搬送波とを受けて、相互に90度位相のずれた信号を出力する直交復調器124とを含む。直交復調器124は、乗算器123a,123bと、相互に直交する信号を復調するために相互の位相をずらせるためのπ/2位相器123cとを含む。直交復調器124から復調された信号は、それぞれをI信号およびQ信号として増幅およびデジタル信号に変換するための増幅器125a,125bと、AD変換器126a,126bとを経て、I信号とQ信号とが一体化されて制御部20へ入力される。また、直交復調器124、増幅器125a,125b、AD変換器126a,126b、および、後述する復調信号処理部25が復調手段を構成する。
【0046】
図2は図1に示した制御部20の詳細を示すブロック図である。図2を参照して、制御部20は、制御部20全体を制御するメイン制御部21と、メイン制御部21に接続され、送信データを生成する送信データ生成部22と、送信データ生成部22で生成されたデータを符号化する符号化部23とを含み、符号化部23の出力がDA変換器111へ出力される。また、メイン制御部21には送信するチャネルを選択するためのチャネル選択処理部24が接続され、その出力が周波数シンセサイザ16に出力される。なお、メイン制御部21は送信部11や受信部12の動作も制御する。
【0047】
図1に示したAD変換器126a,126bからの出力信号は復調信号処理部25で復調される。復調信号処理部25で復調された信号の一部は、フーリエ変換するためにFFT処理部26へ送られ、ノイズ分布を分析するためにノイズ分布分析部27へ送られてメイン制御部21へ送られる。復調信号処理部25で復調された信号はまた、復号するために復号化部28へ入力され、受信処理データ処理部29を経てメイン制御部21へ入力される。なお、FFT処理部26とノイズ分布分析部27とでノイズを検出する検出部、および、周波数解析手段を構成している。
【0048】
次に、リーダライタ10の動作、具体的には制御部20の動作について説明する。なお、制御部20の動作は基本的に、メイン制御部21が制御する。図3は制御部20における動作を示すフローチャートである。図3を参照して、まず使用する周波数(リーダライタ10がタグに送信する周波数)を決定する(ステップS11、以下、ステップを省略する)。次に、タグとの通信に先立ち、使用周波数で搬送波を出力している状態で、その周波数帯の電波を一定時間受信する(S12)。具体的には、送信部11はアンテナ14を介して周波数シンセサイザ16からの搬送波を変調器112で変調することなく送信する。その状態で受信される受信電波を、アンテナ14を介して受信部12で受信する。受信部は帯域制限フィルタ121、ローノイズアンプ122、直交復調器124、増幅器125a,125bを経てAD変換器126a,126bでI信号およびQ信号をデジタル信号に変換し(S13)、搬送波の出力を終了する(S14)。
【0049】
制御部20の復調信号処理部25でSSB受信処理を行なう(S15)。受信したSSB信号をFFT処理部26で周波数変換し、ノイズ分布分析部27でどの周波数範囲のノイズが少ないかを分析する(S16)。
【0050】
ノイズ分布分析部27での分析結果に基づいてノイズの少ない周波数範囲を算出する(S17)。ノイズの少ない周波数でタグと通信できるように、最適な通信パラメータを設定する(S18)。最適な通信パラメータが設定できるか否かを判断する(S19)。最適な通信パラメータが設定できれば(S19で可能)、タグへのコマンドを生成して(S20)、タグとの通信を実施する(S21)。
【0051】
最適な通信パラメータが設定できなければ(S19で不可能)、チャネル等を切換えて使用周波数を変更して(S22)、S11に戻り、S12以降の処理を繰り返す。
【0052】
なお、最適な通信パラメータとしては、サブキャリアの有無、サブキャリアの周波数、通信速度等を含み、タグからの返信信号がノイズの少ない帯域内に収まるようにするパラメータである。この具体的な内容については後述する。
【0053】
このようにしてメイン制御部21で定められた最適な通信パラメータを送信データ生成部22に送り、タグからの返信における最適な通信パラメータをタグへのコマンドとして生成する。その後、タグとの通信を実施する。
【0054】
なお、メイン制御部21が制御手段、周波数算出手段、通信パラメータ設定手段、通信条件設定手段として作動する。
【0055】
ここで、図3においてS15で示した復調信号処理部25におけるSSB受信処理について説明する。図4は復調信号処理部25の構成を示すブロック図である。図4を参照して、復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号に対して遅延処理する遅延処理部251と、直交復調器124で復調されたQ信号にヒルベルト変換処理を行なうヒルベルト変換部252と、遅延処理部251で遅延処理されたI信号にヒルベルト変換部252でヒルベルト変換処理されたQ信号を加える加算器253と、遅延処理部251で遅延処理されたI信号からヒルベルト変換部252でヒルベルト変換処理されたQ信号を減算する減算器254とを含み、加算器253からの出力をUSB信号(デジタル信号)として出力し、減算器254からの出力をLSB信号(デジタル信号)として出力する。なお、遅延処理部251はQ信号のヒルベルト変換処理に要する時間と同様の遅延処理を行なうために設けられている。
【0056】
なお、SSB受信処理においては、USB成分とLSB成分とは各々独立で処理を行なう。処理の順番は任意である。
【0057】
このようにして得られたUSB側信号とLSB側信号とを用いて、後に説明するタグとの通信パラメータを設定する。
【0058】
次に、SSB受信処理の内容について説明する。図5はSSB受信処理内容を説明するための図である。図5(A)は送信搬送波を基準としたノイズの周波数分布を示す図であり、図5(B)はこの信号を上記のようにSSB受信処理をおこなってLSB成分とUSB成分とを取出した状態を示す図である。ここでは、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるものとする。SSB受信であれば、上記したように、送信搬送波より高い周波数成分のノイズ(USB側)と低い周波数成分のノイズ(LSB側)とを分離して受信可能であるため、送信搬送波の周波数が判っていれば、ノイズの正確な周波数分布が判る。この例では、USB成分とLSB成分とを測定することで、使用周波数周辺のノイズ分布を正確に把握することができる。
【0059】
図5(B)を参照して、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるため、USB成分がDC〜300kHzでノイズ有であれば、952.4MHz 〜 952.7MHz でノイズ有であり、LSB成分が100kHz〜400kHzでノイズ有であれば、952.0MHz 〜 952.3MHzでノイズ有となる。これらより、0〜952.0MHzの範囲、952.3MHz〜952.4MHzの範囲、952.7MHz以上の範囲の周波数帯域のノイズが少ないことが判る。したがって、これらの範囲を選んでタグと通信すればノイズの少ない環境で通信が可能になる。
【0060】
次に図3においてS16およびS17で示したノイズ分布の分析処理、および、ノイズ成分の少ない周波数範囲を算出する処理について説明する。図6はノイズ分布の分析処理を所定の閾値を定めて行なう場合を説明するための図である。今、図6に示すようなノイズがあって予め図に示すように閾値が定められているものとする。S17で示したように、メイン制御部21は閾値を下回る周波数範囲をノイズの少ない周波数範囲と判定する。
【0061】
図6を参照して、USB成分は100kHz〜500kHzの周波数範囲でノイズが少なく、LSB成分は200kHz〜400kHzの周波数範囲でノイズが少ないことがわかる。送信搬送波の周波数をfcとすれば、(fc-400kHz)〜(fc-200kHz)の範囲、(fc+100kHz)〜(fc+500kHz)の範囲の2つの周波数帯域のノイズが小さいと判定する。
【0062】
次に、ノイズ分布の分析処理を積分によって判断する場合について説明する、図7はこの場合を説明するための図である。ここでは、図7に示すように、FFTデータ列で積分をとり、その積分値が閾値を超えない範囲aで、最も広い周波数範囲の取れる区間を、ノイズの少ない周波数範囲と判定する。
【0063】
次に、図3のS18で示したタグからの返信における最適な通信パラメータの設定方法について説明する。タグからリーダライタへの通信パラメータは、リーダライタからタグに送信するコマンドで指定する事ができる。例えば、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cでは、リンク周波数BLF(Link Frequency)とサブキャリアのサイクル数M(Number of subcarrier cycles per symbol)とをパラメータとして、任意に設定可能である。表1および表2は、ISO/IEC18000-6 Type Cにおけるリンク周波数BLFとサブキャリアのサイクル数Mとの値を示す表である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
図8は、ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、以下のようなノイズ分布分析結果となった場合にUSB成分とLSB成分とにおいて、ある閾値を定めたときのノイズの少ない範囲(図8(A))と、その場合の通信パラメータの設定方法を示す図(図8(B))である。
【0067】
図8(A)を参照して、USB成分の200kHz〜600kHzの周波数範囲のノイズが小さく、かつ広い帯域を確保できることがわかる。よって、中心周波数が400kHz近傍で、その両側で帯域幅が400kHzをカバーするように表1および表2から、通信パラメータを選択する。その結果、BLF=400kHz、M=4を設定する。この設定では伝送速度はBLF/4=100kbpsとなる。なお、メイン制御部21は、ここでは、Mの設定においては、帯域幅が伝送速度の4倍となる点を考慮して設定する。なお、帯域幅は良好な通信品質を確保できれるのであれば、伝送速度の任意の倍数に設定してもよい。
【0068】
次に、通信パラメータの具体的な他の設定方法について説明する。図9はこの場合の図8に対応する図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図9に示すようなノイズ分布分析結果となった場合である。この例では、LSB成分の240kHz〜400kHzの周波数範囲のノイズが小さい。帯域幅は160kHzである。同様に、通信パラメータとしてBLF=320kHz、M=8を設定する。この設定では伝送速度は40kbpsとなる(帯域幅は約160kHz)。
【0069】
なお、図3において、S22において使用周波数を何度か変更してもS19で最適な通信パラメータの設定ができないときは、図示のない表示部にエラーの表示を行なったり、閾値を変更してもよい。
【0070】
(2)第2実施の形態
次にこの発明の第2実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、SSBを用いて設定したが、この発明は両側波帯(DSB)においても適用が可能である。この実施の形態においても、リーダライタの全体構成を示すブロック図やリーダライタの制御部の構成を示すブロック図は図1および図2に示したものと同様である。この実施の形態においては、復調信号処理部25の構成が先の実施の形態における図4と異なる。この場合の構成を図10に示す。また、この実施の形態における制御部20の動作を示すフローチャートを図11に示す。
【0071】
図10を参照して、この実施の形態における復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号およびQ信号を入力してI信号およびQ信号の振幅を比較していずれか、振幅の大きい信号をDSB(デジタル信号)として出力するIQ振幅比較部256を含む。
【0072】
次に、この実施の形態における制御部20の動作について説明する。この実施の形態における制御部20の動作は基本的に先の実施の形態と同様であるが、一部異なるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
図11を参照して、S31〜S34は先の実施の形態におけるS11〜S14と同様である。
【0074】
制御部20の復調信号処理部25でDSB受信処理を行なう(S35)。受信したDSB信号のノイズ分布をノイズ分布分析部27で分析し、分析結果に基づいてノイズの少ない周波数範囲を算出する(S36、S37)。ノイズの少ない周波数でタグと通信できるように、メイン制御部21で通信パラメータを設定する(S38)。最適な通信パラメータが設定できるか否かを判断する(S39)。最適な通信パラメータが設定できれば(S39で可能)、タグ50へのコマンドを生成して、タグ50との通信を実施する(S40,S41)点や、最適な通信パラメータが設定できなければ、メイン制御部21にて使用周波数を変更して(S42)、S31に戻るという点も先の実施の形態と同じである。
【0075】
次に、図11のS35で示したノイズのDSB受信処理について説明する。図12はDSB受信処理内容を説明するための図である。図12(A)は送信搬送波を基準としたノイズの周波数分布を示す図であり、図12(B)はこの信号に対してDSB受信処理をおこなった状態を示す図である。ここでは、送信搬送波の周波数が952.4MHzであるものとする。DSB受信では、送信搬送波より高い周波数成分のノイズ(USB側)と低い周波数成分のノイズ(LSB側)とを分離して受信することができない。DSB受信では、USB成分とLSB成分とが合成された復調信号となる。
【0076】
この例では、復調信号として400kHz以上の周波数帯域のノイズが少ない事が判る。
【0077】
送信搬送波が952.4MHzの例なので、〜952.0MHz、952.8MHz〜の2つの周波数帯域のノイズが少ないことが判る。
【0078】
次に図11においてS36およびS37で示したノイズ分布の分析処理、および、ノイズ成分の少ない周波数範囲を算出する処理について説明する。図13はノイズ分布の分析処理を所定の閾値を定めて行なう場合を説明するための図である。今、図13に示すようなノイズがあって予め図に示すように閾値が定められているものとする。メイン制御部21は閾値を下回る周波数範囲をノイズの少ない周波数範囲と判定する。図13からDSB復調信号として、200kHz〜400kHzの周波数範囲でノイズが少ないことが判る。
【0079】
ここで、送信搬送波の周波数をfcとすれば、(fc-400kHz)〜(fc-200kHz)の範囲、(fc+200kHz)〜(fc+400kHz)の範囲の2つの周波数帯域のノイズが小さいと判定する。
【0080】
なお、先の実施の形態と同様に、ノイズ分布の分析処理を積分によって判断してもよい。この場合の処理は先の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
次に、図11のS38で示したタグからの返信における最適な通信パラメータの設定方法について説明する。ここでも、上記の表1および2で説明した、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cの、リンク周波数BLF(Link Frequency)とサブキャリアのサイクル数M(Number of subcarrier cycles per symbol)とをパラメータとして設定する。
【0082】
図14(A)はノイズの周波数分布と閾値とを示す図であり、図14(B)はこの場合の通信パラメータの設定方法を示す図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図14(A)に示すようなノイズ分布分析結果となった場合、DSB復調信号の200kHz〜600kHzの周波数範囲がノイズが小さい。すなわち、中心周波数は400kHzであり、その幅は400kHzである。よって、表1および表2を参照して、通信パラメータとしてBLF=400kHz、M=4を設定する。この設定では伝送速度は100kbpsとなり、400kHz程度の帯域を確保できる。
【0083】
次に、この実施の形態における、通信パラメータの具体的な他の設定例について説明する。図15はこの場合の例を示す図であり、先の例の図14と同様の内容を示す図である。ISO/IEC18000-6 Type Cに準拠するRFIDシステムにおいて、送信搬送波が952.4MHzで、図15(A)で示すようなノイズ分布分析結果となった場合、DSB復調信号のDC〜80kHzの周波数範囲がノイズが小さいことがわかる。この場合は、通信パラメータとしてBLF=40kHz、M=1(サブキャリア無し)を設定する。この設定では伝送速度は40kbpsとなる(帯域幅は約160kHz)。
【0084】
なお、この実施の形態においても、図11において、S42において使用周波数を何度か変更してもS39で最適な通信パラメータの設定ができないときは、先の実施の形態と同様に、閾値を変更等してもよい。
【0085】
この実施の形態においては、復調信号処理部25において、I信号とQ信号とから1つの出力信号を得るために両信号の振幅を比較するI/Q振幅比較器を用いる場合について説明したが、これに限らず、他の方法を用いてもよい。図16(A)は、この場合の図10に対応するブロック図であり、図16(B)はI信号およびQ信号から構成される合成ベクトルを示す図であり、図16(C)は合成ベクトルに対して角度α回転させ、I信号軸(実数軸)上に移動させた状態を示す図である。
【0086】
図16(A)を参照して、この実施の形態においては、復調信号処理部25は、直交復調器124で復調されたI信号およびQ信号を入力してI信号およびQ信号をベクトル化するベクトル化部257と、ベクトル化された信号から、所定の角度αを演算するα演算部258と、演算されたαに基づいてベクトル化された信号を実数軸上に回転させた上で、実数軸成分を出力する実数軸成分出力部259とを含む。
【0087】
ベクトル化部257は、I信号とQ信号とを複素数化し、I信号を実数軸、Q信号を虚数軸で表した合成ベクトルに変換する(図16(B))。α演算部258は図16(B)に示す合成ベクトルの角度α=tan-1(Q/I)を演算する。実数軸成分出力部259は図16(C)に示すように、演算されたαだけベクトルを回転させ、実数軸成分を出力する。このようにして演算された実数軸成分がDSB信号として出力される。
【0088】
(3)第3実施の形態
次にこの発明の第3実施の形態について説明する。上記の第2実施の形態においては、SSBの信号も処理可能な受信部や制御部を有する図1および2に示すリーダライタでDSB受信を行なう場合について説明したが、この実施の形態においては、両側波帯(DSB)の信号を簡易な構成で処理するように構成が最適化されている。
【0089】
図17および図18はこの実施の形態におけるリーダライタ30、および、制御部20aの構成を示すブロック図であり、第1実施の形態における図1および図2に対応する。図17および図18に示すように、この実施の形態においては、受信部32および制御部20aについてはその構成が異なるため、その異なる部分のみについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0090】
図17を参照して、この実施の形態においては、受信部32はサーキュレータ13からの受信信号の帯域を制限する帯域制限フィルタ321と、帯域制限フィルタ321に接続されたローノイズアンプ322と、ローノイズアンプ322からの出力信号を周波数シンセサイザ16からの搬送波に基づいて復調する復調器323と、復調された受信信号を増幅するための増幅器324と、増幅器324で増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換器325を含み、変換されたデジタル受信信号が制御部20aへ入力される。
【0091】
この実施の形態においては、復調器323と増幅器324とAD変換器325とで復調手段を構成している。
【0092】
図18を参照して、制御部20aは図2に示した制御部20に対して復調信号処理部が設けられていない点のみが異なりそれ以外の部分は先の実施の形態と同様である。
【0093】
次に、この実施の形態におけるリーダライタ30および制御部20aの動作について説明する。この実施の形態においては、基本的には第2の実施の形態と同様であるが、DSBを用いる場合に特化している点が異なる。したがって、異なる部分について説明し、先の実施の形態と同一部分についてはその説明を省略する。また、この実施の形態におけるリーダライタ30の動作を示すフローチャートは図11と基本的に同じであるが、上記のように、復調信号処理部が設けられていないため、S35の内容が異なる。すなわち、図11のS35において制御部20はDSB受信処理を行なう。これ以前の処理(S31〜S35)および、これ以後の処理(S36〜S42)は、第2実施の形態と同じである。
【0094】
なお、上記各実施の形態においては、メイン制御部がノイズ分布分析部の分析結果に応じて通信パラメータを設定する場合について説明したが、これに限らず、ノイズ分布分析部の分析結果を外部の機器に送信し、外部の機器が適切な通信パラメータを設定し、それをリーダライタに送信して、メイン制御部が設定するようにしてもよい。
【0095】
上記各実施の形態においては、最適な通信パラメータの設定方法として、UHF帯RFIDシステムの規格であるISO/IEC18000-6 Type Cを用いた場合について説明したが、これに限らず、任意の規格を用いて設定してもよい。
【0096】
上記各実施の形態においては、この発明をリーダライタとタグとから成るRFIDシステムにおける場合を例として説明したが、これに限らず、複数の無線装置間において、ノイズの少ない通信を行なう場合についても適用できる。
【0097】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明に係るリーダライタは、低周波機器のノイズの影響を受け難いため、リーダライタとして有利に利用される。
【符号の説明】
【0099】
10,30 リーダライタ、11 送信部、12 受信部、13 サーキュレータ、14 アンテナ、15 ローパスフィルタ,16 周波数シンセサイザ、17 分配器、20,20a 制御部、21 メイン制御部、22 送信データ生成部、23 符号化部、24 チャネル選択部、25 復調信号処理部、26 FFT処理部、27 ノイズ分布分析部、28 復号化部、29 受信データ処理部、111 DA変換器、112 変調器、113 パワーアンプ、121 帯域制限フィルタ、122 ローノイズアンプ、123a,123b 乗算器、124 直交復調器、125 増幅器、126 AD変換器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、前記送信信号に基づく前記RFIDタグからの受信信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した受信信号のノイズを検出する検出部とを備えるRFIDリーダライタであって、
前記送信部は搬送波を送信し、
前記検出部が、前記RFIDタグとの通信に先立ち、前記送信部からの搬送波を出力している状態で前記受信信号に含まれるノイズを検出するよう、前記送信部と前記検出部とを制御する制御手段を含む、RFIDリーダライタ。
【請求項2】
前記送信部が出力する搬送波の周波数が、前記RFIDタグとの通信に用いる送信信号の搬送波周波数である請求項1に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項3】
前記受信部は前記RFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、
前記復調手段は、前記受信信号を両側波帯信号として復調し、
前記検出部は、前記復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出する、請求項1または2に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項4】
前記受信部は前記RFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、
前記復調手段は、前記受信信号を単側波帯信号として復調し、
前記検出部は、前記復調器が復調した復調信号を測定してノイズを検出する、請求項1または2に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項5】
前記復調手段は、前記送信器が出力する搬送波より高い周波数のノイズを上側波帯(USB)信号、出力する搬送波より低い周波数のノイズを下側波帯(LSB)信号として独立して復調し、
前記検出部は前記復調手段が復調した復調信号を測定する、請求項4に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項6】
前記検出部は前記復調信号の有するノイズの周波数を解析する、周波数解析手段を含む、請求項3〜5のいずれかに記載のRFIDリーダライタ。
【請求項7】
前記周波数解析手段の解析結果に基づき、最もノイズの少ない周波数帯を算出する、周波数算出手段を含む、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項8】
前記周波数算出手段の算出結果に応じて前記RFIDタグとの通信パラメータを設定する、通信パラメータ設定手段を含む、請求項7に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項9】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号として、サブキャリアを用いるか用いないかを設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項10】
前記周波数解析手段の解析結果に基づき、前記RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定する、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項11】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項12】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号の通信速度を設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項13】
前記検出部の検出したノイズの周波数を外部機器へ出力する、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項14】
RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、前記送信信号に基づく前記RFIDタグからの受信信号を受信する受信部とを備えるRFIDリーダライタの前記RFIDタグとの通信方法であって、
送信部から搬送波を送信するステップと、
前記RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するステップと、
検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップとを含む、通信方法。
【請求項15】
前記検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップは、ノイズの少ない周波数を選択する通信パラメータを設定するステップを含む、請求項14に記載の通信方法。
【請求項16】
前記検出部の検出結果に基づいて前記RFIDタグとの通信条件を設定する設定手段を含む、請求項1に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項17】
前記設定手段は前記受信信号に含まれるノイズを分析するノイズ分析手段を含む、請求項16に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項18】
前記ノイズ分析手段の分析結果に応じて前記通信条件として通信パラメータを設定する通信パラメータ設定手段を含む、請求項17に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項19】
請求項1〜13および16〜18のいずれかに記載のRFIDリーダライタと、前記RFIDリーダライタと通信するRFIDタグとを含む、RFIDシステム。
【請求項1】
RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、前記送信信号に基づく前記RFIDタグからの受信信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した受信信号のノイズを検出する検出部とを備えるRFIDリーダライタであって、
前記送信部は搬送波を送信し、
前記検出部が、前記RFIDタグとの通信に先立ち、前記送信部からの搬送波を出力している状態で前記受信信号に含まれるノイズを検出するよう、前記送信部と前記検出部とを制御する制御手段を含む、RFIDリーダライタ。
【請求項2】
前記送信部が出力する搬送波の周波数が、前記RFIDタグとの通信に用いる送信信号の搬送波周波数である請求項1に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項3】
前記受信部は前記RFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、
前記復調手段は、前記受信信号を両側波帯信号として復調し、
前記検出部は、前記復調手段が復調した復調信号を測定してノイズを検出する、請求項1または2に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項4】
前記受信部は前記RFIDタグから受信した受信信号を復調する復調手段を含み、
前記復調手段は、前記受信信号を単側波帯信号として復調し、
前記検出部は、前記復調器が復調した復調信号を測定してノイズを検出する、請求項1または2に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項5】
前記復調手段は、前記送信器が出力する搬送波より高い周波数のノイズを上側波帯(USB)信号、出力する搬送波より低い周波数のノイズを下側波帯(LSB)信号として独立して復調し、
前記検出部は前記復調手段が復調した復調信号を測定する、請求項4に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項6】
前記検出部は前記復調信号の有するノイズの周波数を解析する、周波数解析手段を含む、請求項3〜5のいずれかに記載のRFIDリーダライタ。
【請求項7】
前記周波数解析手段の解析結果に基づき、最もノイズの少ない周波数帯を算出する、周波数算出手段を含む、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項8】
前記周波数算出手段の算出結果に応じて前記RFIDタグとの通信パラメータを設定する、通信パラメータ設定手段を含む、請求項7に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項9】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号として、サブキャリアを用いるか用いないかを設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項10】
前記周波数解析手段の解析結果に基づき、前記RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定する、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項11】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号のサブキャリアの周波数を設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項12】
前記通信パラメータは、前記RFIDタグから返信される信号の通信速度を設定する、請求項8に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項13】
前記検出部の検出したノイズの周波数を外部機器へ出力する、請求項6に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項14】
RFIDタグへの送信信号を送信する送信部と、前記送信信号に基づく前記RFIDタグからの受信信号を受信する受信部とを備えるRFIDリーダライタの前記RFIDタグとの通信方法であって、
送信部から搬送波を送信するステップと、
前記RFIDタグとの通信に先立ち、送信部からの搬送波を出力している状態で受信信号に含まれるノイズを検出するステップと、
検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップとを含む、通信方法。
【請求項15】
前記検出されたノイズの少ない周波数でRFIDタグと通信するステップは、ノイズの少ない周波数を選択する通信パラメータを設定するステップを含む、請求項14に記載の通信方法。
【請求項16】
前記検出部の検出結果に基づいて前記RFIDタグとの通信条件を設定する設定手段を含む、請求項1に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項17】
前記設定手段は前記受信信号に含まれるノイズを分析するノイズ分析手段を含む、請求項16に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項18】
前記ノイズ分析手段の分析結果に応じて前記通信条件として通信パラメータを設定する通信パラメータ設定手段を含む、請求項17に記載のRFIDリーダライタ。
【請求項19】
請求項1〜13および16〜18のいずれかに記載のRFIDリーダライタと、前記RFIDリーダライタと通信するRFIDタグとを含む、RFIDシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2012−194696(P2012−194696A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57112(P2011−57112)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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