説明

RFIDリーダライタ装置及びキャリアセンス方法

【課題】LPFの急峻なものを必要とせずに安定した通信が可能なRFIDリーダライタ装置及びキャリアセンス方法を提供する。
【解決手段】制御処理回路11は、チャネルCHnの中心周波数fLo(n)よりfsだけ高い周波数fLo(n)+fsを復調局部発振周波数として出力するように局部発振信号発振器15を制御したときの受信回路14からの復調信号の大きさと、fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを復調局部発振周波数として出力するように局部発振信号発振部15を制御したときの受信回路14からの復調信号の大きさが、規定レベル以下であるときチャネルCHnは無線通信に使用可能であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDシステムに関し、さらに詳しくはRFIDシステムで行われるキャリアセンスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年RFID(Radio Frequency Identification)システムの普及には目覚しいものがある。
RFIDシステムでは、リーダライタ装置と、このリーダライタ装置によって無線通信によって情報を読み書きされるRFIDタグからなる。
【0003】
リーダライタ装置は、無線通信によってRFIDタグに向けてキャリア信号を送信し、RFIDタグから反射(バックスキャタ)されるキャリア信号を受信する。そしてリーダライタ装置は、このキャリア信号に含まれる変調信号成分をRFIDタグからの情報データとして処理する。
【0004】
例えばあるRFIDシステムが2MHzの周波数帯域を無線通信に使用する場合、この2MHzに複数のチャネル(例えば、21チャネル)が配置される。リーダライタ装置は、この複数のチャネルのうちからひとつのチャネルを選択し、そのチャネルに対応する中心周波数の信号を出力してRFIDタグと通信を行う。
【0005】
RFIDシステムは、種々の用途に採用されている。したがってRFIDシステムは、無線通信に用いる周波数帯を他のRFIDリーダライタ装置または他の通信装置と共用して使うことになる。よって、RFIDシステムは、信号を送信する前に、自身が使用する予定のチャネルを既に他のシステムや装置が使用していないことを確認することにより使用する周波数において信号の衝突が生じるのを回避する。この処理をキャリアセンスという。キャリアセンスでは、RFIDタグとの無線通信を準備中のRFIDリーダライタ装置が、無線信号の送信に先立って既にRFIDタグと通信中である他のRFIDリーダライタ装置の存否をキャリア信号の有無を検知することによって判定する。
【0006】
キャリアセンスを行う際、RFIDリーダライタ装置は、RFIDタグへの電波の送信出力を停止し、自身の使用予定(チャネル)周波数の電波が他のRFIDリーダライタから発せられていないことを確認する。このとき使用予定(チャネル)周波数の電波を検出すると、RFIDリーダライタ装置は、この周波数(チャネル)は既に使われているため通信不可と判断し、次の周波数にシフトして同様にキャリアセンスを行う。
【0007】
このようにして空きチャネルを順次探索し、使用されていないチャネルが見つかるとRFIDリーダライタ装置はRFIDタグとの間でこの空きチャネルのキャリア周波数を用いて通信を行う。
【0008】
RFIDシステムでのキャリアセンスについての技術としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献1には、RFIDリーダライタ装置が、RFIDタグと通信を行う際に使用するチャネルの基準局部発振周波数fLoから、所定の周波数fs分シフトした復調用局部発振周波数(fLo+fs)を用いて、キャリアセンスを行う技術が開示されている。
【0009】
また特許文献2に開示されているRFIDシステムでは、キャリアセンス時に、リーダライタ装置が検出した電波の上側サブキャリア周波数帯と下側サブキャリア周波数帯とのうちから、受信レベルが低い方の周波数帯を選択し、選択された周波数帯によりRFIDタグからの応答信号を復調している。
【0010】
さらに特許文献3には、使用しようとするチャネルのキャリア周波数と他のシステムが使用するチャネルのキャリア周波数の周波数ずれの差が0に近くてもキャリアセンス可能なRFIDシステムを実現するための技術が開示されている。引用文献3のRFIDシステムでは、RFIDリーダライタ装置がキャリアセンス時に、チャネル信号の中心周波数をシフト周波数だけシフトした周波数で発振信号を発生させる構成と、受信したチャネル信号と発振信号とを混合し直流分を除去する構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−295287号公報
【特許文献2】特開2010−88089号公報
【特許文献3】特開2010−200356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示のRFIDシステムでは、通常の通信では使用チャネルの中心周波数である基準局部発振周波数fLoを用いる。それに対し、キャリアセンス時には、この基準局部発振周波数を所定の周波数fs分シフトした復調用局部発振周波数(fLo+fs)を用いている。
【0013】
RFIDシステムでは、リーダライタ装置のローパスフィルタ(LPF)で復調信号の低周波成分を除去し、隣接チャネルによる干渉の最小化を図っている。しかし隣接チャネル干渉を完全に防ぐためには、急峻なLPFが必要であり、急峻なLPFの実現には装置のコストアップ、小型化が困難といった問題がある。
【0014】
図8は、RFIDリーダライタ装置がチャネルCHnで通信を行う場合の受信信号に対してのLPFをかけた場合を示す図である。
図8(a)はLPFの特性が急峻な場合を、同図(b)はブロードな場合を示す。
【0015】
同図(a)に示すようにLPFの特性が急峻な場合には隣接チャネルCHn−1及びCHn+1の成分は除去され、チャネルCHnの信号成分のみが得られる。しかしLPFの特性がブロードな場合には、同図(b)に示すように、フィルタリング後の信号に隣接チャネルCHn−1及びCHn+1の成分が除去されずに残ってしまう。これは隣接チャネルからの干渉となり、通信ノイズとなって通信劣化をまねく。よってLPFが同図(b)のようにブロードな場合、使用するチャネルCHnの隣接チャネルも他のRFIDシステムで使用されていないことが、そのチャネルCHnを使用できる条件となる。したがって、チャネルCHnのキャリアセンス時にキャリア周波数の信号の有無と同時に、隣接チャネルからの干渉の有無も検知してからチャネルCHnの使用を決定する必要がある。
【0016】
しかしキャリアセンスには、使用するチャネルCHnに対応する基準局部発振周波数から所定の周波数fs分シフトした復調用局部発振周波数(fLo(n)+fs)を用いるので、このキャリアセンスに用いる周波数と隣り合うチャネルCHn+1とCHn−1の中心周波数との周波数差が非対称となる。
【0017】
図9にその状態を示す。
図9では、キャリアセンスに用いる周波数100(fLo(n)+fs)と隣接するチャネルCHn−1の基準局部発振周波数101(fLo(n−1))との差103は、チャネルCHn+1の基準局部発振周波数102(fLo(n+1))との差104より大きくなり、両者は非対称な状態となっている。
【0018】
このためキャリアセンス時において、受信した信号を変調後にLPFへ通過させると、チャネルCHn−1の周波数成分がLPFでカットされてしまい、この隣接チャネル(チャネルCHn−1)での干渉の有無を正確に検知できなかった。
【0019】
図10にその状態を示す。同図は、受信信号を変調後にフィルタリングする場合を示している。キャリアセンスでは送信信号の周波数はfLo(n)+fsなので、チャネルCHn−1、CHn及びCHn+1の中心信号の変調信号はその差分であるfLo(n−1)−(fLo(n)+fs)、−fs及びfLo(n+1)−(fLo(n)+fs)となる。
【0020】
そしてLPFは、チャネルCHnの中心周波数を中心にフィルタリングするので、この図10のように、LPFフィルタリング特性範囲からはチャネルCHn−1の中心信号の変調成分111が外れており、この成分はカットされてしまう。よってチャネルCHnに対するキャリアセンスでは、隣接するチャネルCHn−1からの干渉を検知することができない。
【0021】
このため、隣接するチャネルCHn−1が他のRFIDシステムで使用されているにも係わらず、CHnを使用することとなり、結果隣接チャネル干渉により通信品質の劣化をまねく原因となる。
【0022】
このような点に対処するためには、LPFを急峻なものにすることで隣接チャネル干渉を最小化すればよいが、これを実現するためには回路規模が大きくなる、フィルタリング処理の処理時間が多くかかるため処理能力の高いプロセッサを必要とする等コストアップの要因となる。
【0023】
以上のことを踏まえ、本発明は急峻なLPFを必要とすることなく、安定した通信ができるRFIDリーダライタ装置及びキャリアセンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本RFIDリーダライタ装置は、RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置において、受信電波の復調に用いる復調局部発振周波数を出力する局部発振信号発振部と、前記局部発振信号発振部が出力する前記復調局部発振周波数に基づいて、前記受信電波を復調する受信部と、前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさ及び、当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさが、共に規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する制御処理部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
別形態のRFIDリーダライタ装置は、RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置において、受信電波の復調に用いる復調局部発振周波数を出力する局部発振信号発振部と、前記局部発振信号発振部が出力する前記復調局部発振周波数に基づいて、前記受信電波を復調する受信部と、前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさ及び、若しくは当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさが、規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する制御処理部と、を備えることを特徴とする
本RFIDリーダライタ装置によるキャリアセンス方法は、RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置が実行するキャリアセンス方法であって、前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として受信電波を復調したときの復調信号の大きさ及び、当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として前記受信電波を復調したときの復調信号の大きさが、共に規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する、ことを特徴とする。
【0026】
別形態のRFIDリーダライタ装置によるキャリアセンス方法は、RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置が実行するキャリアセンス方法であって、前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として受信電波を復調した際の復調信号の大きさ、若しくは当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として前記受信電波を復調した際の復調信号の大きさが、規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、LPFの急峻なものを必要とせずに隣接チャネル干渉を最小化できるため、低コストで安定した通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態におけるRFIDシステムを説明する図である。
【図2】本実施形態のRFIDシステムが用いる周波数帯域の例を示す。
【図3】本実施形態のRFIDリーダライタ装置の構成例を示す図である。
【図4】本実施形態のキャリアセンスの方法の仕方を示す図である。
【図5】第1のキャリアセンスの方法での制御処理回路の動作処理を示すフローチャートである。
【図6】第2のキャリアセンスの方法での制御処理回路の動作処理を示すフローチャートである。
【図7】第3のキャリアセンスの方法での制御処理回路の動作処理を示すフローチャートである。
【図8】RFIDリーダライタ装置がチャネルCHnで通信を行う場合の受信信号に対してのLPFをかけた場合を示す図である。
【図9】復調用局部発振周波数をfLo(n)+fsとしてキャリアセンスを行った場合のチャネルCHn−1、CHn及びCHn+1の復調後の中心周波数成分を示す図である。
【図10】復調用局部発振周波数をfLo(n)+fsとしてキャリアセンスを行った場合のチャネルCHn−1、CHn及びCHn+1の復調後の中心周波数成分とLPFの特性範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態におけるRFIDシステムを説明する図である。
本実施形態のRFIDシステム10は、複数のRFIDリーダライタ装置1A、1B、・・・と複数のRFIDタグ2A、2B、・・・からなる。各RFIDリーダライタ装置1(1A、1B、・・・をまとめて表す)は、RFIDタグ2(2A、2B、・・・をまとめて表す)に対して、無線通信によってRFIDタグ2に向けてキャリア信号を送信し、RFIDタグから応答されるキャリア信号を受信する。そしてリーダライタ装置1は、このキャリア信号に含まれる変調信号成分をRFIDタグ2からの情報データとして処理する。
【0030】
本実施形態のRFIDシステム10を構成する複数のRFIDリーダライタ装置1A、1B、・・・は、それぞれ近接設置が可能であり、またRFIDリーダライタ装置1A、1B、・・・は、複数のチャネルに分けた同一の周波数帯域を利用して、RFIDタグ2と無線通信を行う。
【0031】
図2に本実施形態のRFIDシステム10が用いる周波数帯域の例を示す。
図2の例では、1つの帯域を複数のチャネル、例えば2MHzの帯域を200kHz毎に21のチャネル、に分けている。各RFIDリーダライタ装置1は、これらのチャネルのうち他のRFIDリーダライタ装置1が用いていないものを1つ選択して、RFIDタグ2と無線通信に用いる。
【0032】
このときRFIDタグ2との通信を開始する前に、RFIDリーダライタ装置1はキャリアセンスを行って、使用されていないチャネルを検知する。本実施形態のRFIDシステム10で行われるキャリアセンスの方法についての詳細は、後述する。
【0033】
図3は、RFIDリーダライタ装置1の構成例を示す図である。
同図の例では、RFIDリーダライタ装置1は、制御処理回路11、送受信回路12、送受信共用器13、受信回路14、局部発振信号発振器15及び送受共用アンテナ16を備えている。
【0034】
制御処理回路11は、RFIDリーダライタ装置10全体を制御するものである。制御処理回路11は、外部インタフェース(I/F)を介して不図示のデータ処理装置の指示を受け、送信回路12に送信信号を生成させる。あるいは受信回路14から受信した受信信号からデータを取り出したりする。また受信回路14から出力される受信信号を復調した信号に対してデジタルフィルタ処理を施す。またデータ処理装置からキャリアセンスの実行を行う指示があると、制御処理回路11は、局部発振信号発振器(LO回路)15にキャリアセンス用の周波数を設定し、受信回路14から受け取る受信データの強度から、空きチャネルを探索する。
【0035】
送信回路12は、制御処理回路11からのデータを局部発振信号発振器15(LO回路)が出力する信号に基づいて変調して、送受信共用器13に出力するものである。
送受信共用器13は、送信回路12から受け取った信号を送受信共用アンテナ16から無線送信し、また送受信共用アンテナ16から受信した信号を受信回路14に送るものである。
【0036】
受信回路14は、送受信共用器13から受け取った信号を復調して、制御処理回路11に渡すものである。
局部発振信号発振器15は、制御処理回路11の指示に基づいた周波数の、送信回路12が送信信号の変調に用いたり、受信回路14が受信信号の復調に用いたりする発振信号を生成する。
送受信共用アンテナ16は、無線信号を送受信するアンテナである。
【0037】
このような構成の本実施形態のRFIDリーダライタ装置1による、キャリアセンス時の動作について説明する。
まず第1のキャリアセンスの方法について説明する。
【0038】
第1のキャリアセンスの方法では、まずキャリアセンスを行う対象のチャネルCHnで通常通信に用いる基準局部発振周波数fLo(n)から、所定の周波数fs分高くシフトした復調用局部発振周波数(fLo(n)+fs)によって、キャリアセンスを行う。そしてこの周波数でチャネルCHn及びCHn+1が空いているのが確認できたら、次にチャネルCHnの基準局部発振周波数fLo(n)から、所定の周波数fs分低くシフトした復調用局部発振周波数(fLo(n)−fs)によって、キャリアセンスを行い、チャネルCHn及びCHn−1が空いているのを確認する。
【0039】
図4に第1のキャリアセンスの方法の仕方を示す。
図4のキャリアセンスでは、チャネルCHn及びその両隣のチャネルCHn−1及びCHn+1が他のRFIDリーダライタ装置1によって使用されているか否かを調べるものとする。
【0040】
まず制御処理回路10は、局部発振信号発振器(LO回路)15が出力する発振信号の周波数をチャネルCHnの基準局部発振周波数fLo(n)より所定の周波数fs高くシフトした周波数fLo(n)+fsに設定する。これにより、受信回路14で用いられる復調用局部発振周波数はfLo(n)+fsとなる。
【0041】
図4(a)は、このときの各チャネルの中心周波数の復調結果とLPFの関係を示す。
各チャネルの中心周波数の復調結果は、復調用局部発振周波数との差分となるので、復調用局部発振周波数を所定の周波数fsだけ高い方へシフトすると、各チャネルの中心周波数の復調結果は、周波数fsだけ周波数の低い方へシフトされる。
【0042】
よって各チャネルの中心周波数の復調結果は、周波数fs分周波数が低い方へシフトしているので、LPFのフィルタリング特性範囲21にはチャネルCHn及びCHn+1の中心周波数がカバーされ、これらはLPFでカットされずに残る。したがってこの状態で受信信号の大きさが一定値以下であるか否かを調べることにより、チャネルCHn及びCHn+1が使用しているかどうかを調べることができる。
【0043】
次に制御処理回路10は、局部発振信号発振器15が出力する発振信号の周波数をチャネルCHnの基準局部発振周波数fLo(n)より所定の周波数fs低くシフトした周波数fLo(n)−fsに設定する。これにより、受信回路14で用いられる復調用局部発振周波数はfLo(n)−fsとなる。
【0044】
図4(b)は、このときの各チャネルの中心周波数の復調結果とLPFの関係を示す。
各チャネルの中心周波数は、周波数fs分周波数が高い方へシフトしているので、LPFのフィルタリング特性範囲21にはチャネルCHn−1及びCHnの中心周波数がカバーされ、これらはLPFでカットされずに残る。よってこの状態で受信信号の大きさが一定値以下であるか否かを調べることにより、チャネルCHn−1及びCHnが使用しているかどうかを調べることができる。
【0045】
この図4の方法では、2回に分けてキャリアセンスを行うので、1回のキャリアセンスでは2チャネル分使用状況を検知出来ればいいので、LPFに急峻なものを用いる必要がない。
【0046】
以上のように第1の実施形態では、まず、特定周波数だけ復調局部発振周波数をあげてキャリアセンスを行った後、次に特定周波数だけ復調局部発振周波数をさげてキャリアセンスを行う。そしてこの2回のキャリアセンスの結果から、使用しているチャネルCHn及びその両隣のチャネルCHn−1及びCHn+1が空いているかどうかを検知することができる。
【0047】
この方法によって、キャリアセンスの対象のチャネルCHn及びその隣りのチャネルCHn−1及びCHn+1が空いているのが確認できるため、ブロードなLPFでも隣接チャネル干渉による通信品質の劣化がない安定した通信が可能となる。またLPFを急峻なものにする必要はないため、低コスト化・小型化を実現することができる。
【0048】
図5は第1のキャリアセンスの方法での制御処理回路10の動作処理を示すフローチャートである。同図の処理は、制御処理回路10が自己のメモリ内のプログラムを実行することによって実現される。
【0049】
本処理は、制御処理回路10に対して外部インタフェース介してデータ処理装置から指示が発行されると実行される。
まず制御処理回路10は、ステップS1として無線通信に使用しようとしているチャネルCHn及び周波数の高い方の隣のチャネルであるチャネルCHn+1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器(LO回路)15が出力する復調局部発振周波数をfLo(n)+fsと周波数fs分だけ高い方へシフトして、キャリアセンスを行う。
【0050】
そしてステップS1のキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS2、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn+1は空きチャネルであると判断してステップS3に処理を移す。またステップS2においてキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値を超えた場合には(ステップS2、NO)、チャネルCHn若しくはCHn+1の少なくとも一方は使用されている可能性があるので、チャネルCHnは使用不可と判定し、ステップS5に処理を移す。
【0051】
次にステップS3では、制御処理回路10は、チャネルCHn及び周波数の低い方の隣のチャネルであるチャネルCHn−1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器15が出力する復調局部発振周波数をfLo(n)−fsと周波数fs分だけ低い方へシフトして、キャリアセンスを行う。
【0052】
またステップS3においてキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値を超えた場合には(ステップS2、NO)、チャネルCHn若しくはCHn−1の少なくとも一方は使用されている可能性があるので、チャネルCHnは使用不可と判定し、ステップS5に処理を移す。
【0053】
ステップS5では、チャネルCHnは使用不可と判定されているので、制御処理回路10は、nの値を変更してキャリアセンスの対象とするチャネルをシフトした後、処理をステップS1に戻して、上記した処理を繰り返し、空きチャネルを探索する。なおnの値の変更の仕方としては2ずつ増やしてゆく、あるいは減らしてゆく等適宜な方法が取られる。
【0054】
またステップS3のキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS4、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn−1は空きチャネルであると判断し、チャネルCHnはRFIDタグ2との無線通信で使用可能であると判定して本処理を終了する。
【0055】
以上のように第1のキャリアセンスの方法では、2回に分けてキャリアセンスを行うことによって、急峻なLPFを用いなくても、両隣も空いている空きチャネルを検知することができる。
【0056】
なお図5の処理では、まず所定の周波数fsだけ高い方に周波数をシフトしてキャリアセンスを行った後に、所定の周波数fsだけ低い方に周波数をシフトしてキャリアセンスを行っているが、この処理の順番は逆であってもよい。
【0057】
次に第2のキャリアセンスの方法について説明する。
本実施形態のRFIDリーダライタ装置1で行われる第2のキャリアセンスの方法では、第1のキャリアセンスの方法で行った2回のキャリアセンスを1回ずつ、交互に行う。
【0058】
例えば、まずキャリアセンスの対象とするチャネルCHnに対して、図4(a)に示すように復調用局部発振周波数をfLo(n)+fsとして、キャリアセンスを行う。そしてチャネルCHn及びCHn+1が空いているのが確認できたら、RFIDリーダライタ装置1はチャネルCHnを用いて、RFIDタグ2と通信を行う。
【0059】
そして次回のキャリアセンス時には、図4(b)に示すように、キャリアセンスの対象とするチャネルCHnに対して、復調用局部発振周波数をfLo(n)−fsとして、キャリアセンスを行う。
この方法により、第1のキャリアセンスの方法より、キャリアセンスに要する時間及び処理負荷を小さくすることができる。
【0060】
図6は、第2のキャリアセンスの方法での制御処理回路10の動作処理を示すフローチャートである。同図の処理も、制御処理回路10が自己のメモリ内のプログラムを実行することによって実現される。
【0061】
本処理は、制御処理回路10に対して外部インタフェース介してデータ処理装置から指示が発行されると実行される。
まず制御処理回路10は、ステップS11として自己のメモリ内に記憶されているフラグflagの値が0若しくは1かを判定する。
【0062】
ステップS11の判定の結果、flag=1であるとき(ステップS11、1)、制御処理回路10は、ステップS12として、無線通信に使用しようとしているチャネル及び周波数の高い方の隣のチャネルでCHn及びCHn+1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器(LO回路)15が出力する復調局部発振周波数をfLo(n)+fsにして、キャリアセンスを行う。
【0063】
そしてステップS12のキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベルを超えるのとき(ステップS12、NO)は、チャネルCHn若しくはCHn+1は使用されている可能性があるので、ステップS15としてnの値を変更してキャリアセンス対象のチャネルCHnを変更後、処理をステップS11に戻す。またステップS12で受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS12、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn+1は空きチャネルであると判断して、チャネルCHnを使用チャネルとする。そしてステップS14としてフラグflagに0を設定後、本処理を終了する。
【0064】
またステップS11の判定の結果、フラグflagの値が0のとき(ステップS11、0)、制御処理回路10は、ステップS15として、無線通信に使用しようとしているチャネル及び周波数の低い方の隣のチャネルでCHn及びCHn−1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器(LO回路)15が出力する復調局部発振周波数をfLo(n)−fsにして、キャリアセンスを行う。
【0065】
そしてステップS15におけるキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベルを超えるのとき(ステップS16、NO)は、チャネルCHn若しくはCHn−1は使用されている可能性があるので、ステップS15としてnの値を変更してキャリアセンス対象のチャネルCHnを変更後、処理をステップS11に戻す。またステップS16で受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS16、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn−1は空きチャネルであると判断して、チャネルCHnを使用チャネルとする。そしてステップS17としてフラグflagに1を設定後、本処理を終了する。
【0066】
この図6のような処理によって、キャリアセンスが行われて空きチャネルが検知される毎にフラグflagの値が変更されるので、復調局部発振周波数がfLo(x)−fsによるキャリアセンスと復調局部発振周波数をfLo(x)+fsが交互に行われる。
【0067】
次に第3のキャリアセンスの方法について説明する。
本実施形態のRFIDリーダライタ装置1で行われる第3のキャリアセンスの方法では、第2のキャリアセンスの方法と同様、キャリアセンスを調局部発振周波数がfLo(n)−fsによるキャリアセンスと復調局部発振周波数をfLo(n)+fsによるキャリアセンスのどちらか1回のみ行う。そして復調局部発振周波数はチャネルCHnの中心周波数より所定の周波数分高くシフトしたfLo(n)+fs若しくは所定の周波数分低くシフトしたfLo(n)−fsのどちらかを乱数を用いて決める。
【0068】
この第3のキャリアセンスの方法も、第1のキャリアセンスの方法よりキャリアセンスに要する時間及び処理負荷を小さくすることができる。
【0069】
図7は、第3のキャリアセンスの方法での制御処理回路10の動作処理を示すフローチャートである。同図の処理も、制御処理回路10が自己のメモリ内のプログラムを実行することによって実現される。
【0070】
本処理は、制御処理回路10に対して外部インタフェース介してデータ処理装置から指示が発行されると実行される。
まず制御処理回路10は、ステップS21として0か1の値を取る乱数値を発生し、その値を自己のメモリ内に記憶されているフラグflagの値として記憶する。次に制御処理回路10は、ステップS22としてフラグflagの値が0か1かを判定する。
【0071】
ステップS22の判定の結果、flag=1であるとき(ステップS21、1)、制御処理回路10は、ステップS23として、無線通信に使用しようとしているチャネル及び周波数の高い方の隣のチャネルでCHn及びCHn+1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器15が出力する復調局部発振周波数をfLo(x)+fsにして、キャリアセンスを行う。
【0072】
そしてステップS23のキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベルを超えるのとき(ステップS23、NO)は、チャネルCHn若しくはCHn+1は使用されている可能性があるので、ステップS27としてnの値を変更してキャリアセンス対象のチャネルCHnを変更後、処理をステップS21に戻す。またステップS23で受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS23、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn+1は空きチャネルであると判断して、チャネルCHnを使用チャネルとした後、本処理を終了する。
【0073】
またステップS22の判定の結果、フラグflagの値が0のとき(ステップS22、0)、制御処理回路10は、ステップS25として、無線通信に使用しようとしているチャネル及び周波数の低い方の隣のチャネルでCHn及びCHn−1が空いているかどうかを調べる。そのため制御処理回路10は、局部発振信号発振器15が出力する復調局部発振周波数をfLo(x)−fsにして、キャリアセンスを行う。
【0074】
そしてステップS25におけるキャリアセンスの結果、受信信号の大きさが規定値レベルを超えるのとき(ステップS26、NO)は、チャネルCHn若しくはCHn−1は使用されている可能性があるので、ステップS27としてnの値を変更してキャリアセンス対象のチャネルCHnを変更後、処理をステップS21に戻す。またステップS26で受信信号の大きさが規定値レベル以下のとき(ステップS26、YES)、そのチャネルCHn及び隣接チャネルCHn−1は空きチャネルであると判断して、チャネルCHnを使用チャネルとした後、本処理を終了する。
【0075】
この図7のような処理によって、キャリアセンスの実行が指示されるごとに、乱数によって復調局部発振周波数がfLo(x)−fs若しくはfLo(x)+fsに設定されてキャリアセンスが実行される。
【符号の説明】
【0076】
1 RFIDリーダライタ装置
2 RFIDタグ
10 RFIDシステム
11 制御処理回路
12 送信回路
13 送受信共用器
14 受信回路
15 局部発振信号発振器(LO回路)
16 送受共用アンテナ
21 LPFのフィルタリング特性範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置において、
受信電波の復調に用いる復調局部発振周波数を出力する局部発振信号発振部と、
前記局部発振信号発振部が出力する前記復調局部発振周波数に基づいて、前記受信電波を復調する受信部と、
前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、
当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさ及び、当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさが、共に規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する制御処理部と、
を備えることを特徴とするRFIDリーダライタ装置。
【請求項2】
RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置において、
受信電波の復調に用いる復調局部発振周波数を出力する局部発振信号発振部と、
前記局部発振信号発振部が出力する前記復調局部発振周波数に基づいて、前記受信電波を復調する受信部と、
前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、
当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさ及び、若しくは当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として出力するように前記局部発振信号発振部を制御して前記受信部から受け取った復調信号の大きさが、規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する制御処理部と、
を備えることを特徴とするRFIDリーダライタ装置。
【請求項3】
前記制御処理部は、前回のキャリアセンス時に前記復調局部発振周波数をfLo(n)+fsとしたときに当該復調局部発振周波数をfLo(n)−fsとし、前回のキャリアセンス時に前記復調局部発振周波数をfLo(n)−fsとしたときに当該復調局部発振周波数をfLo(n)+fsとすることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダライタ装置。
【請求項4】
前記制御処理部は、乱数値を発生させ、当該乱数値に基づいて前記復調局部発振周波数をfLo(n)+fsとするかあるいはfLo(n)−fsとするかを決定することを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダライタ装置。
【請求項5】
RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置が実行するキャリアセンス方法であって、
前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、
当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として受信電波を復調したときの復調信号の大きさ及び、当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として前記受信電波を復調したときの復調信号の大きさが、共に規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する、
ことを特徴とするRFIDリーダライタ装置によるキャリアセンス方法。
【請求項6】
RFIDタグと無線通信を行うRFIDリーダライタ装置が実行するキャリアセンス方法であって、
前記RFIDタグとチャネルCHnを用いて無線通信を開始する前に、
当該チャネルCHnの中心周波数fLo(n)より特定周波数fsだけ高い周波数fLo(n)+fsを前記復調局部発振周波数として受信電波を復調した際の復調信号の大きさ、若しくは当該チャネルCHnの中心周波数より特定周波数fsだけ低い周波数fLo(n)−fsを前記復調局部発振周波数として前記受信電波を復調した際の復調信号の大きさが、規定レベル以下であるとき前記チャネルCHnは前記無線通信に使用可能であると判定する、
ことを特徴とするRFIDリーダライタ装置のキャリアセンス方法。
【請求項7】
前記制御処理部は、前回のキャリアセンス時に前記復調局部発振周波数をfLo(n)+fsとしたときの復調信号を用いて前記判定を行ったとき、当該復調局部発振周波数をfLo(n)−fsときの復調信号を用いて前記判定を行い、
前記制御処理部は、前回のキャリアセンス時に前記復調局部発振周波数をfLo(n)−fsとしたときの復調信号を用いて前記判定を行ったとき、当該復調局部発振周波数をfLo(n)+fsときの復調信号を用いて前記判定を行う、ことを特徴とする請求項6に記載のRFIDリーダライタ装置のキャリアセンス方法。
【請求項8】
乱数値を発生させ、
当該乱数値に基づいて前記復調局部発振周波数をfLo(n)+fsとするかあるいはfLo(n)−fsとするかを決定することを特徴とする請求項6に記載のRFIDリーダライタ装置のキャリアセンス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate