説明

SECAMライン判別装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はSECAM方式カラーテレビジョン受信機におけるライン判別装置に関するものである。さらに、詳細に述べれば、ベルフィルタとタンク回路とを一体化してタンク回路を除去できる簡易なライン判別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】SECAM方式のカラーテレビジョンでは2つの色差信号が線順次に(交互に)それぞれ異なる副搬送周波数でFM変調されて送られる。このSECAM信号を処理するために、受信側では、搬送色信号を1水平走査期間(1H)遅延させる遅延線と1H毎にその極性が反転するスイッチ信号により動作するSECAMスイッチ回路とにより、時間的に連続する2つの色差信号(R−Y信号、B−Y信号)を取り出している。
【0003】従って、前記SECAMスイッチを駆動するスイッチ信号の位相は常に送信側と一致している必要がある。SECAMカラーテレビジョン信号には上記スイッチ信号の位相制御に用いるための2つの判別信号を用いて入力SECAM信号と位相同期がとれ時間的に連続する2つの色差信号(R−Y信号、B−Y信号)を取り出す回路が本発明のライン判別装置である。
【0004】第1の判別信号は垂直帰線期間の7〜15H、320〜328Hの9ライン(9H)の間に送られてくる線順次信号でフィールドID(アイデンティフィケーション)信号と呼び、DR信号に対応するラインではFR=4.756MHz、DB信号に対応するラインではFB=3.90MHzに変調されている。
【0005】第2の判別信号は、水平周期パルスのバックポーチに挿入された色信号の無変調に相当する副搬送周波数信号(fOR:4.40625MHz、fOB:4.25MHz)である。
【0006】上記2種類の線順次判別信号が含まれるSECAMカラーテレビジョン信号を処理する受信処理装置においては、上記第1及び第2の判別信号のいずれか一方を利用したライン判別装置を具備することによってSECAMカラーテレビジョン信号における正しい線順次切換と、他のカラーテレビジョン信号、例えば、PALカラーテレビジョン信号との判別が可能である。
【0007】図7に従来のライン判別装置を示す。1はSECAM信号入力端子、2は色副搬送波の帯域を制限するベル型フィルタである。4はFM検波器であり、5は、FM検波器4を検波を行うために必要ななインダクタンスL2、コンデンサC3、抵抗R2の並列共振回路で構成されるタンク回路である。6は位相弁別器、7はサンプリング回路、8は積分回路、9は比較器、10はフリップフロップである。一方、3はSECAM色信号処理回路、11はR−Y出力信号、B−Y出力信号を切り換えるSECAMスイッチ、12はR−Y出力信号、B−Y出力信号をオンオフするスイッチである。図8はベルフィルタの周波数特性を示す図である。図9はベルフィルタの位相特性を示す図である。
【0008】まず、図7において、SECAM信号入力端子に入力したSECAM信号の色信号処理について説明する。入力端子1に入ったSECAM信号は、C1とC2、R1、L1の並列共振回路からなるベルフィルタ2に入力する。ベルフィルタ2は、色副搬送波の帯域を制限し、帯域制限された色副搬送波を色信号処理回路3に出力する。色信号処理回路3は、色副搬送波を復調し、R−Y出力信号と、B−Y出力信号を交互に出力する。この、R−Y出力信号と、B−Y出力信号は、SECAMスイッチ11に入力し、端子20からの水平周期パルスHに同期してフリップフロップ10から出力された信号によって、端子13または端子14にそれぞれ出力される。
【0009】次に、従来のライン判別装置の動作を説明する。ベルフィルタ2の出力は、色信号処理回路3に出力されると同時に、FM検波器4にも出力される。FM検波器4はタンク回路5を有し、図9に示すような検波特性を有する。このベルフィルタ2およびタンク回路5はインダクタンスLを含んでいるので、ICでこのLを実現するには複雑な回路を必要とする。したがって、ベルフィルタ2およびタンク回路5を共用できれば、回路構成が非常に簡単になり、経済効果が大きい。このようにベルフィルタ2およびタンク回路5を共用させることが本願発明の目的であり、本願発明の最も重要な課題であるが、この点は後で十分に述べることにし、まず、ライン判別装置の動作説明を先に行う。
【0010】図10の信号(a)〜(g)は、通常のSECAM信号を受信した状態でかつフリップフロップの位相が正しい状態で動作しているときの一連の動作波形を示す図である。図9のような特性を有するFM検波器4に図10の(a)のSECAM信号を加えると、FM検波器4の出力には図10の(b)のような検波出力が得られる。すなわち、色副搬送波fOR及びFRの期間の検波出力VDは正極性、色副搬送波fOB及びFBの期間の検波出力VDは負極性で検出される。
【0011】FM検波器4の出力(b)は位相弁別器6に入力される。SECAM線順次SECAMスイッチ11が正しい動作をする正常出力のときは、フリップフロップ10の正常出力によって、位相弁別器6は、1水平同期期間H毎にFM検波器4の出力の極性を反転する。すなわち、フリップフロップ10が図10の(h)に示すような正常出力のときは、図10の(c)に示すように、fOB、FB、及びDBの期間の負極性の信号は反転され、全てが正極性の信号となる。
【0012】位相弁別器6の出力cはサンプリング回路7に加えられる。サンプリング回路は、ゲート端子20に加えられる図10の(d)のゲートパルスによって、位相弁別器の出力信号cをサンプリングする。このゲート信号dは、水平帰線期間9Hおよび水平周期信号のバックポーチに挿入される色信号の搬送波の期間の間だけ論理値「1」となる信号である。サンプリング回路7の出力は、図10の(f)に示され、ゲート端子20に加えられるゲートパルスによって位相弁別器6の出力cを抽出した出力である。サンプリング回路7の出力fは積分回路8に入力される。
【0013】積分回路8は、サンプリング回路7の出力信号fを積分し、図10の(g)に示すような直流電流V1を出力する。この積分出力V1は比較器9によって端子15および端子16に加えられる基準電圧Vk及びViとそれぞれ比較される。基準電圧Vkは積分V1がこれ以上低い場合はSECAM信号の色を消すようにするための基準電圧であり、基準電圧Viは積分V1がこれ以上低い場合はフリップフロップ10をリセットするための基準電圧である。信号kは、積分電圧V1と基準電圧Vkとが比較され、積分電圧V1が基準電圧Vkより低い時に、出力される信号であり、信号iは、積分電圧V1と基準電圧Viとが比較され、積分電圧V1が基準電圧Viよりも低い時に、出力される信号である。
【0014】信号kはスイッチ12に加えられ、積分V1が基準電圧Vkよりも小さいときは、SECAM色信号は信号kによってスイッチ12でカットされ端子13または端子14に送出されない。これは、積分信号V1のレベルが基準電圧Vkよりも低い場合は、送出されるSECAM色信号の色が不安定になるからこれを防止するためである。また、信号iはフリップフロップ10に加えられ、積分V1が基準電圧Viよりも小さいときは信号iによってフリップフロップをリセットする。これは、積分信号V1のレベルが基準電圧Viよりも低い場合は、フリップフロップ10が正常位相で動作していないことを示しているので、フリップフロップをリセットし、その動作を一時停止させ、その後、フリップフロップ10を正常位相で動作させる必要があるからである。
【0015】フリップフロップ10が正常に動作しているときは、積分信号V1のレベルは基準電圧VkおよびViのいずれよりも高いので信号kも信号iも出力されない。したがって、スイッチ12は動作しないので、SECAM色信号は通常のように端子13および端子14に送出される。また、フリップフロップもリセットされることなく、現在の位相の信号を出し続ける。
【0016】図11の信号(a)〜(h)は通常のSECAM信号を受信した場合において、図11の(h)に示すように、フリップフロップが正常でない位相で動作している一連の動作波形を示す図である。図11において、信号(a)、(b)は図10と同じくそれぞれSECAM信号の入力波形およびFM検波器4の出力波形を示す。図11の(c’)はフリップフロップの位相が正しくない状態のSECAM信号の位相弁別器6の出力波形を示す。図11の(c’)はフリップフロップの出力が正のときは、bの出力をそのまま出力し、フリップフロップの出力が負のときは、bの出力を反転して出力する。図10と図11のフリップフロップ出力は位相が反転しているので、図11の(c’)は図10の(c)と位相が反転することが分かる。この信号c’はサンプリング回路7に入力され、ゲート信号dによって、位相弁別器の出力信号c’は抽出される。したがって、サンプリング回路7の出力は図11の(f’)のようになり、図10の(f)と逆位相の出力が現れることが分かる。
【0017】この出力(f’)を積分回路8に加えると積分出力はV1’のような電圧となり比較器9の基準電圧Vk及びViよりも小さくなる。このような積分出力V1’の状態においては比較器9の信号k及び信号iによって、上述のように、スイッチ12はオフになり、フリップフロップ10は、リセットされる。信号kにより、スイッチ12がオフになるので、色信号処理回路3からの色差信号は端子端子13、端子14に出力されない。また、信号iにより、フリップフロップ10の動作は停止し、フリップフロップ10からの出力hは連続した「0」の信号のみが位相弁別器6に供給され、したがって、位相弁別器6の出力には図11の(b)と同じ波形が現れる。従って、サンプリング回路7の出力は、図1111の(f■)に示すように、信号bをゲート信号dで抽出した信号となり、1H毎に極性の異なるサンプリング出力が現れる。この出力f■は積分回路8でV1■なる電圧となる。
【0018】この場合に、この積分電圧はVi<V1■<Vkとなるようにそれぞれ基準電圧Vi及びVkが設定してあるため、信号kは現れるが、信号iは現れなくなる。信号iがなくなった時点から、フリップフロップは再び動作を開始し、その動作開始時点の位相における信号hを位相弁別器に供給する。新たな位相の信号hで位相弁別された信号c’は、さらに、サンプリング回路7でサンプリングされ、積分回路8で積分され、その結果V1’が比較器で比較され、その結果が基準信号Vkを越えない場合は信号kを出力し、前と同様な動作を繰り返し、このような動作がV1>Vk>Viを満足するまで繰り返される。このような動作を繰り返すことによって、最終的にはフリップフロップの出力は図10のhの示すような位相に、すなわち、位相弁別器6の出力が図10の(c)の位相になるまで上述の動作が繰り返されるので、結果的にフリップフロップの位相の修正が行われる。
【0019】上述において、従来のFM検波器は、ベルフィルタ2を通過したSECAM信号を検波するが、その際にタンク回路5が必須の構成要素である。FM検波器は、通常、ベルフィルタ2を通過したSECAM信号と、このSECAM信号と90゜位相の異なる信号とを乗算して出力を得る直交乗算器が使用される。ここで使用されるタンク回路5は中心周波数f0’が4.33MHz(=(fOB+fOR)/2)となるLCRの並列回路で構成される。このようなタンク回路5を用いたFM検波器の位相特性は、図9に示されるように、中心周波数f0’(=4.33MHz)において、出力が0であり、その他の周波数においては、図9に示すようにs字型の周波数−検波出力特性を有する。
【0020】すなわち、入力するSECAM色信号は色副搬送波fOR(4.40625MHz)または色副搬送波fOB(4.25MHz)であるので、色副搬送波fORのときは正の検波出力xが得られ、色副搬送波fOBのときは、負の検波出力yが得られる。このように、FM検波器においては、タンク回路5は、中心周波数f0’(=4.33MHz)を中心にそれより周波数の高い色副搬送波fOR(4.40625MHz)または周波数の周波数の低い色副搬送波fOB(4.25MHz)を抽出する必須の構成要素であるので、このタンク回路5を取り除くことはできない。
【0021】一方、ベルフィルタ2はタンク回路5と同様にLCRの並列回路によって構成されているが、その中心周波数は、図8に示すようにSECAM信号の特性からの要求である4.286MHzであり、タンク回路5の中心周波数とは異なっている。従来は、このベルフィルタ2とタンク回路5は個々に製造され、それぞれ単一の動作をし、このベルフィルタ2とタンク回路5を共用することはできなかった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】一方、上述したタンク回路5はインダクタンスL要素を有するので、集積回路内に組み込むことは困難であり、通常は集積回路に設けられた端子17を介して、外部に設けられたタンク回路5と接続されていた。このために、ベルフィルタ2とタンク回路5を両方とも必要としていた従来のベルフィルタ2は、使用部品が多く、また、タンク回路用に端子17が必要であるという問題もあった。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本願発明においては、ベルフィルタ2とタンク回路5を共用する可変フィルタ回路を用いて、同様な構成の2つのLCR並列回路を1つのLCR並列回路で構成することによって構成の簡単なライン判別装置を提供するものである。さらに、その種々の具体的なLCR並列回路を提供することを目的とする。
【0024】上記目的を達成するために、本発明においては、ゲート信号が「1」の状態のときに、ベルフィルタを介して入力したSECAM色信号は、タンク回路を用いたFM検波器によって検波され、ゲート信号が「0」のときには、色信号処理回路を介して、R−Y出力信号またはB−Y出力信号として出力されるSECAMライン判別装置において:ベルフィルタとタンク回路とを共用した可変フィルタ回路を備え、ゲート信号が「1」のときはこの可変フィルタ回路はタンク回路として動作し、ゲート信号が「0」のときは、この可変フィルタ回路はベルフィルタとして動作するように構成される。
【0025】さらに、本発明においては、SECAM入力信号端子に接続された可変フィルタ回路と、この可変フィルタ回路の出力に接続された色信号処理回路およびFM検波器とを含み、前記可変フィルタ回路はゲート信号によって共振周波数が切り換えられ、ゲート信号が「0」の状態のとき、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、SECAM信号は色信号処理回路で復調され、ゲート信号が「1」のときは、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定されることにより、可変フィルタ回路はFM検波器に用いられるタンク回路として動作する
【0026】さらに、本発明のSECAMライン判別装置においては:前記可変フィルタ回路は、その入力vinが第1のgm(相互コンダクタンス)可変アンプの反転端子に接続され、その第1のgm可変アンプの出力は、第2のgm可変アンプの反転端子に接続され、その第2のgm可変アンプの出力はバッファの入力端子に接続され、そのバッファの出力端子は可変フィルタ回路の出力端子30に接続され、第1のgm可変アンプの出力は、コンデンサC4を介して接地され、およびコンデンサC6を介してバッファの出力に接続され、第2のgm可変アンプの出力はコンデンサC5を介して接地されおよび第1のgm可変アンプの反転端子に接続され、および第2のgm可変アンプの非反転端子は接地されるように構成され、ゲート信号が「0」の状態のとき、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」のときは、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定される。
【0027】さらに、本発明のSECAMライン判別装置においては:前記可変フィルタ回路は、その入力端子はコンデンサC1の一端子に接続され、そのコンデンサC1の他の端子は出力端子およびインダクタンスL1とL2の直列回路とコンデンサC2と抵抗Rの並列回路から構成されるLCR並列共振回路に接続され、インダクタンスL1とL2の接続点はトランジスタTR1に接続され、ゲート信号が「0」の状態のとき、トランジスタTR1がオフであり、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」のときは、トランジスタTR1がオンになり、インダクタンスL2をショートすることによって、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定される。
【0028】さらに、本発明のSECAMライン判別装置においては:前記可変フィルタ回路は、その入力端子はコンデンサC1の一端子に接続され、そのコンデンサC1の他の端子は出力端子およびインダクタンスL1と可変容量コンデンサC7と抵抗Rの並列回路から構成されるLCR並列共振回路に接続され、ゲート信号が「0」の状態のとき、可変容量C7の容量は、その共振周波数がベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」の状態のときは、可変容量C7の容量が、その共振周波数が副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定される。
【0029】さらに、本発明のSECAMライン判別装置においては:前記のゲート信号が「1」のときの可変フィルタ回路の共振周波数は、その平均値の4.33MHzに設定されるように構成される。
【0030】
【作用】本発明は、ベルフィルタとタンク回路とを共用した可変フィルタ回路において、ゲート信号が「1」のときこの可変フィルタ回路はタンク回路として動作し、ゲート信号が「0」のときは、この可変フィルタ回路はベルフィルタとして動作する。
【0031】また、本発明の可変フィルタ回路は、アクチブ回路を用いた第1のgm可変アンプおよび第2のgm可変アンプのgmをゲート信号の「1」、「0」の状態の状態に応じて可変することによって、2つの共振周波数(ベルフィルタの中心周波数:4.286MHz、およびタンク回路5の中心共振周波数:fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数)を容易に得ることができる。
【0032】さらに、本発明の可変フィルタ回路は、ゲート信号の「1」、「0」の状態の状態に応じて、LCR並列共振回路を構成する2つのインダクタンスの接続点を接地またはオープンするように制御することによって2つの共振周波数を容易に得ることができる。
【0033】また、本発明の可変フィルタ回路は、ゲート信号の「1」、「0」の状態の状態に応じて、LCR並列共振回路を構成するコンデンサの容量を可変にすることによって2つの共振周波数を容易に得ることができる。
【0034】
【実施例】上述したように、本発明はベルフィルタとFM検波用タンク回路の位相特性が同様であることに着目し、ベルフィルタを中心周波数f0を可変できるフィルタで構成することによって、ベルフィルタ2とFM検波用タンク回路5と共用するものである。
【0035】実施例1図1に本発明の一実施例を示す。図1において、50は本発明における中心周波数f0を電気的、あるいは機械的に切り換えることのできる可変フィルタである。また、従来例の図7と同じ要素については同一符号をつけ、説明を省略する。
【0036】次に図1を用いて本発明のライン判別装置の動作を説明する。入力端子1から入力したSECAM信号は可変フィルタ50に供給される。図2は本発明で使用する可変フィルタ50の周波数特性を示す。可変フィルタ50は、たとえば、その中心周波数が、ゲート端子20から入力するゲートパルスが「1」の期間はfOBとfORの加算平均周波数(f0’=4.33MHz)と設定され、それ以外の期間である「0」のときにはベルフィルタの中心周波数(f0=4.286MHz)となるように電気的あるいは機械的に制御される。したがって、図2に示すように、可変フィルタ50の帯域制限特性は周波数f0と周波数f0’のいずれかの位置でピークができる2つの共振曲線33、34を有する。
【0037】可変フィルタ50の出力は色信号処理回路3と、FM検波器4に入力される。以下、本発明の中心課題である可変フィルタ50とFM検波器4について述べる。FM検波器4は入力端子から入力した図10の入力信号(a)と、可変フィルタ50の出力(m)を掛け合わせてFM検波するように構成される。図3はFM検波器の検波特性を示す。
【0038】可変フィルタ50は、ゲート端子20から入力されるゲートパルスが「1」の期間には周波数f0(=4,286MHz)で並列共振し、ゲート端子20から入力されるゲートパルスが「0」の期間には周波数f0’(=4.33MHz)で並列共振するように設定されるので、検波特性は図3に示すような2つのS字曲線35、36で表わされる。しかしながら、実際には、ゲート端子20から入力されるゲートパルス(d)が「1」の期間、すなわち、副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)が送出される期間のみ、可変フィルタ50はこれらの信号fORとfOBをFM検波するので、曲線36のみがFM検波に使用され、曲線35は実際には使用されない。
【0039】まず、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「1」の期間には、FM検波器4は、周波数f0’(=4.33MHz)のとき検波出力VDが0となり、色副搬送波f0B(4.25MHz)が入力するときは検波出力VDはxとなり、色副搬送波fOR(4.40625MHz)が入力するときは、検波出力VDはyとなる。ここでx=yとなるようにS字曲線を設定しておけば、色副搬送波f0Bと色副搬送波fORのときで極性のみが異なり振幅が同じ検波出力が得られる。
【0040】一方、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「0」の期間、すなわち、FM検波器4が動作する必要がない期間は、可変フィルタ50は中心周波数f0(=4.286MHz)を有するベルフィルタ2として動作する。すなわち、図8に示すベルフィルタの帯域制限特性と同様になる。このように、本発明では、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「1」の期間には、FM検波器4を動作させ、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「0」の期間には、可変フィルタ50を通常のベルフィルタ2として動作させ、SECAM信号を色信号処理回路3を介して端子13および端子14に出力する。
【0041】実施例2次に可変フィルタ50の一具体例を図4に示す。図4において、1は入力端子、20はゲート端子、21、22はgm可変アンプ、C4、C5はコンデンサ、23はバッファ、30は出力端子である。この回路においては、ゲート端子20からのゲートパルスが「1」の期間と「0」の期間で、gm可変アンプ21、22のgmを変化させる。この可変アンプは、アクティブフィルタで構成されるため、IC化は容易である。図4に示す可変フィルタ50の伝達関数を(1)式に示す。
【0042】
【数1】


【0043】この式(1)において、出力voutの位相が入力vinと90゜異なる条件は、(2)式で表わされる。すなわち、ゲートパルスが入力しないときは、この(2)式で表わされる条件を満足するように可変アンプ21、22を設計する。このときは、可変フィルタ50の共振周波数はf0となり、図8のような帯域制限特性を有する、ベルフィルタとして動作する。
【0044】
【数2】


【0045】一方、ゲートパルスがゲート端子20に入力したときは、可変アンプ21、22のgmを、たとえば、gm1に変化させることによって、共振周波数を(3)式のようにf0’とすることができる。もちろん、この共振周波数f0’は任意に他の値に設定することも可能であることはいうまでもない。
【0046】
【数3】


【0047】ゲートパルス「1」が入力したときに、可変フィルタ50の帯域制限特性は図2の34のような曲線になるが、この時はSECAM信号は、出力端子13,14に出力されないので、可変フィルタ50の帯域制限特性は図2の33の特性に示すように共振周波数が4.286MHzである必要はない。一方、ゲートパルス「1」が入力したときの図3の位相特性は、S字曲線36のように共振周波数f0’(4.33MHz)になるように設定される。したがって、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「1」の期間には、FM検波器4は、周波数f0’(=4.33MHz)で検波出力VDが0となり、色副搬送波f0B(=4.25MHz)が入力するときは検波出力VDはxとなり、色副搬送波fOR(=4.40625MHz)が入力するときは、検波出力VDはyとなる。ここでx=yとなるようにS字曲線を設定しておけば、色副搬送波f0Bと色副搬送波fORのときで極性のみが異なり振幅が同じ検波出力が得られる。
【0048】実施例3次に可変フィルタの他の具体例を図5に示す。図5において、1は入力端子、C1、C2はコンデンサ、Rは抵抗、L1、L2はインダクタンス、TR1はゲート端子20に入力されるゲートパルスが「1」の期間にオンするスイッチ用トランジスタ、30は出力端子である。入力端子1から出力30までの伝達関数を(4)式に示す。
【0049】
【数4】


【0050】この式(4)において、出力voutの位相が入力vinと90゜異なる条件は、(5)式で表わされる。すなわち、ゲートパルスが入力しないときは、この(5)式で表わされる条件を満足するようにLCRを設定する。なお、(4)式において、インダクタンスLはL=L1+L2である。このときは、可変フィルタ50の共振周波数は(5)式で示されるf0となり、図2の33のような帯域制限特性を有するベルフィルタとして動作する。
【0051】
【数5】


【0052】一方、ゲートパルスがゲート端子20に入力したときは、トランジスタTR1が動作するために、インダクタンスL2はショートされ、(1)式のLはL1となる。この時、式(5)は、式(6)のように表わされ、共振周波数をf0’とすることができる。もちろん、この共振周波数f0’は任意に他の値に設定するようにL1とL2を組み合わせることも可能であることはいうまでもない。
【0053】
【数6】


【0054】ゲートパルスが入力したときに、可変フィルタ50の帯域制限特性は図2の34のような曲線になり、一方、図3の位相特性は、S字曲線36のように共振周波数f0’(4.33MHz)になるように設定されることは、実施例2と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0055】実施例4さらに、可変フィルタの他の具体例を図6に示す。図6において、1は入力端子、Rは抵抗、L1はインダクタンス、C7は、ゲート端子20に入力されるゲートパルスが「1」のの場合と「0」場合に容量が変化する可変コンデンサである。図5と同じ要素については同一符号をつけ、説明を省略する。入力端子1から出力30までの伝達関数を(7)式に示す。
【0056】
【数7】


【0057】この式(7)において、出力voutの位相が入力vinと90゜異なる条件は、(8)式で表わされる。すなわち、ゲートパルスが入力しないときは、可変フィルタ50の共振周波数は(8)式で示されるf0となるように、コンデンサC7の容量をC70に設定する。このときは、図8のような帯域制限特性を有するベルフィルタとして動作する。
【0058】
【数8】


【0059】一方、ゲートパルスがゲート端子20に入力したときは、コンデンサC7の容量をC70’に変化させることによって、式(9)のような共振周波数f0’を得ることができる。もちろん、この共振周波数f0’は任意に他の値に設定するようにC7の値を変化させることも可能であることはいうまでもない。
【0060】
【数9】


【0061】ゲートパルスが入力したときに、可変フィルタ50の帯域制限特性は図2の34のような曲線になり、一方、図3の位相特性は、S字曲線36のように共振周波数f0’(4.33MHz)になるように設定されることは、実施例3と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
【発明の効果】ベルフィルタと、FM検波用タンク回路を共用することによって、従来必要であったタンク回路を構成するインダクタンス、コンデンサ、抵抗の周辺部品を削減でき、また、端子の削減ができFM検波器にすることができる。
【0063】また、本発明の可変フィルタ回路は、アクチブ回路を用いた第1のgm可変アンプおよび第2のgm可変アンプのgmをゲート信号の「1」、「0」の状態に応じて可変することによって、2つの共振周波数(ベルフィルタの中心周波数:4.286MHz、およびタンク回路5の中心共振周波数:fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数)を容易に得ることができる。
【0064】さらに、 また、本発明の可変フィルタ回路は、LCRの並列共振回路によって構成され、ゲート信号の「1」、「0」の応じてインダクタンスL1とL2の接続点をトランジスタによって接地することによって、2つの共振周波数(ベルフィルタの中心周波数:4.286MHz、およびタンク回路5の中心共振周波数:fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数)を容易に得ることができる。
【0065】また、本発明の可変フィルタ回路は、ゲート信号の「1」、「0」の状態の状態に応じて、LCR並列共振回路を構成するコンデンサの容量を可変にするように制御することによって2つの共振周波数(ベルフィルタの中心周波数:4.286MHz、およびタンク回路5の中心共振周波数:fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数)を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例によるSECAMライン判別装置の回路構成を示す図である。
【図2】 本発明の第1の実施例における可変フィルタの周波数特性を説明する図である。
【図3】 図1に示すFM検波器の検波特性を示す図である。
【図4】 本発明における可変フィルタの一実施例を示す図である。
【図5】 本発明における可変フィルタの他の実施例を示す図である。
【図6】 本発明における可変フィルタの他の実施例を示す図である。
【図7】 従来のSECAMライン判別装置の回路構成を示す図である。
【図8】 従来のベルフィルタ特性を示す図である。
【図9】 従来の図8に示すFM検波器の検波特性を示す図である。
【図10】 従来のライン判別装置の動作を説明する図である。
【図11】 従来のライン判別装置の動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 入力端子
2 ベルフィルタ
3 色信号処理回路
4 FM検波器
5 タンク回路
6 位相弁別器
7 サンプリング回路
8 積分回路
9 比較器
10 フリップフロップ
11 SECAMスイッチ
12 スイッチ
13 端子
14 端子
15 Vk基準電圧端子
16 Vi基準電圧端子
17 端子
20 ゲート端子
21、22 gm可変アンプ
23 バッファ
30 出力端子
50 可変フィルタ
R 抵抗
L1、L2 インダクタンス
C1〜C7 コンデンサ
TR1、TR2 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベルフィルタを介して入力したSECAM色信号は、ゲート信号が「1」の状態(水平帰線期間)のときに、タンク回路を用いたFM検波器によって検波され、ゲート信号が「0」の状態(水平走査期間)のときには、色信号処理回路を介して、R−Y出力信号またはB−Y出力信号として出力されるSECAMライン判別装置において:ベルフィルタとタンク回路とを共用した可変フィルタ回路を備え、ゲート信号が「1」のときはこの可変フィルタ回路はタンク回路として動作し、ゲート信号が「0」のときは、この可変フィルタ回路はベルフィルタとして動作することを特徴とするSECAMライン判別装置。
【請求項2】 SECAM入力信号端子に接続された可変フィルタ回路と、この可変フィルタ回路の出力に接続された色信号処理回路およびFM検波器とを含み、前記可変フィルタ回路はゲート信号によって共振周波数が切り換えられ、ゲート信号が「0」の状態のとき、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、SECAM信号は色信号処理回路で復調され、ゲート信号が「1」のときは、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定されることにより、前記可変フィルタ回路は前記FM検波器に用いられるタンク回路として動作することを特徴とするSECAMライン判別装置。
【請求項3】 請求項1または2記載のSECAMライン判別装置において:前記可変フィルタ回路は、その入力vinが第1のgm可変アンプの反転端子に接続され、その第1のgm可変アンプの出力は、第2のgm可変アンプの反転端子に接続され、その第2のgm可変アンプの出力はバッファの入力端子に接続され、そのバッファの出力端子は可変フィルタ回路の出力端子30に接続され、第1のgm可変アンプの出力は、コンデンサC4を介して接地され、およびコンデンサC6を介してバッファの出力に接続され、第2のgm可変アンプの出力はコンデンサC5を介して接地され、および第1のgm可変アンプの反転端子に接続され、および第2のgm可変アンプの非反転端子は接地されるように構成され、ゲート信号が「0」の状態のとき、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」のときは、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定されたことを特徴とするSECAMライン判別装置。
【請求項4】 請求項1または2記載のSECAMライン判別装置において:前記可変フィルタ回路は、その入力端子はコンデンサC1の一端子に接続され、そのコンデンサC1の他の端子は出力端子およびインダクタンスL1とL2の直列回路とコンデンサC2と抵抗Rの並列回路から構成されるLCR並列共振回路に接続され、インダクタンスL1とL2の接続点はトランジスタTR1に接続され、ゲート信号が「0」の状態のとき、トランジスタTR1がオフであり、その共振周波数はベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」のときは、トランジスタTR1がオンになり、インダクタンスL2をショートすることによって、その共振周波数は副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定されることを特徴とするSECAMライン判別装置。
【請求項5】 請求項1または2記載のSECAMライン判別装置において:前記可変フィルタ回路は、その入力端子はコンデンサC1の一端子に接続され、そのコンデンサC1の他の端子は出力端子およびインダクタンスL1と可変容量コンデンサC7と抵抗Rの並列回路から構成されるLCR並列共振回路に接続され、ゲート信号が「0」の状態のとき、可変容量C7の容量は、その共振周波数がベルフィルタの中心周波数と同じ4.286MHzとなるように設定され、ゲート信号が「1」の状態のときは、可変容量C7の容量が、その共振周波数が副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の間の周波数となるように設定されることを特徴とするSECAMライン判別装置。
【請求項6】 請求項2、3、4または5記載のSECAMライン判別装置において:前記のゲート信号が「1」の状態のときの可変フィルタ回路の共振周波数は、副搬送周波数fOR(4.40625MHz)と副搬送周波数fOB(4.25MHz)の平均値の4.33MHzに設定されることを特徴とするSECAMライン判別装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【特許番号】特許第3513606号(P3513606)
【登録日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【発行日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−15944
【出願日】平成7年2月2日(1995.2.2)
【公開番号】特開平8−214335
【公開日】平成8年8月20日(1996.8.20)
【審査請求日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【参考文献】
【文献】実開 昭55−133677(JP,U)