説明

SIRE流れ検出器

本発明は、液流中の低分子物質を迅速に検出するための装置および方法に関する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ透析プローブ、濾過ユニット、発酵槽、細胞懸濁液、化学反応器、ヒト、組織または動物からの液流中における低分子物質を迅速に検出するための装置、並びに医薬またはインビボ物質(インスリンまたは代謝物を含むが、これに限定されない)を投与、調節および制御するための装置、並びに発酵槽、細胞懸濁液または化学反応器内の化学的もしくは生物学的プロセスを調節および制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーの年間世界市場は、1960年代初頭から今日まで著しく成長してきた。この領域における市場リーダーは、ファルマシア&アップジョンAB社、アプライドバイオシステムズInc社、バイオアナリティカルシステムズ社、日立インスツルメント社、およびウオーターコーポレーション社等の会社である。
【0003】
この発展と並行して、患者および動物のインビボモニタリングのために、ミクロ透析プローブのような器具が製造されている。この領域においで活動している会社には、CMAミクロダイアリシスAB社(スウェーデン)およびSpectRx・Inc社(アメリカ合衆国)が含まれる。
【0004】
化学プロセスおよび発酵槽のモニタリングおよび制御を含む第三の領域は、現在開発中である。この領域で活動している会社は、例えばアプリコン社(NL)、YSI・Inc社(アメリカ合衆国)およびトレースバイオテックAg社(ドイツ)である。後者の会社は、滅菌条件下で発酵装置からサンプリングするためのミクロ透析様装置を開発した。
【0005】
上記の三つの領域における共通点は、それらが好ましくはフロースルー検出器型の検出システムに依存することである。異なるタイプのフロースルー検出器を使用することにより、幾つかの重要な化学物質を同定および定量することができる。物理的測定原理に依存して、異なる種類の問題を解決するために異なる型の検出器が使用されている。幾つかの検出器が既に提示されており、一定の場合には優れた結果が得られている。グルコース、乳酸および酢酸のような代謝物が検出されるときには、バイオセンサが使用されてきた。バイオセンサの不安定性に起因して、測定の特性的な要求は満たされていない。
【0006】
1995年以来、新しいタイプのバイオセンサ技術、即ち、SIREバイオセンサが開発されており、これは認識要素の注入に基づいている[SE 510 733 (1999), US 6,214,206 (2001) & US 6,706,160 (2004)]。この技術は、化学物質の測定に通常関連する多くの技術的問題を解決してきた。本発明は、注入可能な酵素を試薬として使用できるので、上記の技術に組み込むことができるが、液体流中の化学物質の定性的測定および定量的測定で生じる問題を解決する新規な技術的構成に基づく点で異なっている。
【0007】
今日まで、低分子物質(Mw<5kDa)を測定するための慣用的なフロースルー検出器の使用において生じる主要な問題を解決する技術的な解決策は提示されておらず、該低分子物質としてはグルコース、乳酸塩、アスコルビン酸塩、マルトース、ガラクトース、尿素、エタノール、メタノール、過酸化水素、アスコルビン酸、ラクトース、マルトース、リンゴ酸、グルタメートおよび蔗糖が例示されるが、これらに限定されない。
【0008】
上記で述べた問題には、フロースルー検出器をサンプリング点に近接して接続する必要性(サンプルの輸送によって生じるより短い分析時間、およびサンプル流量の減少を達成できるように)、特異的な測定、迅速な測定、温度効果(環境および液流の両方の温度)に対する耐性、並びにサンプルの手動による取り扱いを回避することが含まれる。
【0009】
この出願において記載されるフロースルー検出器は、上記で述べた低分子物質の新規かつユニークな分析を提供する。本発明は、液流測定において生じるさまざまな問題を全く新しい方法で解決する強力な解決策である。本発明による主な利点は、代謝的に活性な低分子物質を定性的および定量的に測定できること、本発明はサンプリング点に近接して接続できること、および結果に影響する温度の変動(かかる測定の際には非常に普通である)に対して敏感でないことである。
【0010】
化学物質を同定するための、異なるタイプのフロースルー検出器が既に記載されている。異なる種類の物理的測定原理が使用されており、これらは光吸収測定(GB 2089062)、蛍光測定(Takeuchi T. and Miwa T. Anal.Chim.Acta 311, 231-236, 1995)、ラマンスペクトル測定(Cabalin L.M. et. al. Talanta 40, 1741-1747, 1993)、FTIRスペクトロフォトメトリー(Hellgeth J.W. and Taylor L.T. Anal.Chem. 59, 295-300, 1987)、光−音測定(Voigtman E. et. al. Anal.Chem. 53, 1921- 1923, 1981)、電気発光測定(Hill E. et. al. J. Chromatography 370, 427-437, 1986)、放射能測定(De Korte D. et. al. J. Chromatography 415, 383-387, 1987)、および電気化学的測定(Sagar K.A. Talanta 42, 235-242, 1995)によって例示される。これらは他のタイプの構成に基づくものであり、上記で述べた問題を解決することはができなかった。
【0011】
更に以前には、サンプル中において酵素活性を測定するための装置が報告されている(JP 2-208551 (1990))。しかし、酵素は、通常は5kDよりも大きい分子量をもった高分子物質であり、その半透膜を意通過する能力は低い。上記の報告は、この出願に記載する本発明に存在する主要な部品、即ち、半透膜を欠いている。更に、温度センサ、加熱/冷却素子が存在しない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、半透膜(0.1〜900nmサイズのナノ孔が穿孔されている)で分離された少なくとも二つのフロースルーチャンバ、検出器、温度センサ、電気ケーブルのための1以上の接続からなり、前記検出器を含む一つのフロースルーチャンバは、酵素試薬を含む液流のための入り口および出口を有し、他のフロースルーチャンバの各々は、前記サンプル点からの液流のための入り口および出口を有することを特徴とする装置である。
【0013】
本発明はまた、本発明による装置が、液流中における低分子化学物質のリアルタイムおよび/またはリアルタイムに近い検出のために使用される方法に関する。
【0014】
本発明はまた、本発明による装置が、液体クロマトグラフィー(例えばキャピラリーLC、HPLC、FPLC、アフィニティークロマトグラフィーおよびゲル濾過)におけるフロースルー検出器として使用される方法であって、ミクロ透析プローブ、濾過ユニット、発酵槽、細胞懸濁液、化学反応器、ヒト、組織または動物からの低分子物質の検出のため、および医薬またはインビボ物質(インスリンもしくは代謝物が例示されるが、これらに限定されない)の投薬、調節および制御のため、並びに発酵槽、細胞懸濁液、化学反応器もしくは組織における化学的または生物学的プロセスの調節および制御のため方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明の一つの側面に従えば、当該装置は、フロースルーチャンバの各々が0.1〜5000μLの範囲のチャンバ容積を有することを特徴とする。
【0016】
本発明のもう一つの側面に従えば、当該装置は三つの電極システム、即ち、白金製の作業電極、銀製の基準電極、および白金もしくは銀製の対向電極からなることを特徴とする。
【0017】
本発明のもう一つの側面に従えば、当該装置は、前記作業電極が前記基準電極電位よりも+200〜+1000mVだけ高い電位を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のもう一つの側面に従えば、当該装置は、測定の温度補償のための温度検知素子を備えたことを特徴とし、該素子はPT100、PT1000、DS1820、LM35、またはKTY81−120で例示されるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明のもう一つの側面に従えば、当該装置は、該装置を5〜80℃の一定の温度に維持するための熱発生源/冷却源を備えたことを特徴とし、この熱発生源/冷却源は抵抗器またはペルチェ素子で例示されるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明のもう一つの側面に従えば、当該装置は、上記で述べた半透膜が、例えば酢酸セルロース、ナフィオン(Nafion)、セラミック材料、金属材料、および分子量カットオフ値が0.1kDa〜500kDaのポリマー材料で例示される材料でできていることを特徴とするが、これらに限定されない。
【0021】
もう一つの側面に従えば、前期測定原理は、本願で先に述べた所謂SIREバイオセンサ技術に基づいている。
【0022】
図1は、本発明の主要なスケジュールを示している。検出すべき低分子物質を含む液体流が、入り口Aを通してフロースルーチャンバBに案内され、ここでは上記の物質が半透膜Gにおけるナノ孔を通ってフロースルーチャンバEへと拡散し、或いは、フロースルーチャンバBから出口Cを通って案内される液流により輸送される。上記の物質がフロースルーチャンバEにあるときに、それらは入り口Dを通って導入された酵素試薬と化学的に反応することができる。この酵素反応からの生成物は検出器Hへと拡散して、入口Aを通って導入された液流中の前記低分子物質の量に定量的に相関した電気信号を生じる。入ってくる液体、酵素、未反応の低分子物質、および反応異性生物は、出口Fを通ってフロースルーチャンバEを出る。
【0023】
これらの入り口および出口は、逆向きに走る流れが得られるように方向付けし直すことができる。検出器はまた、先に述べたSIREバイオセンサの原理を参照して、バックグラウンドの検出のために使用することができる。該検出器Hはまた、温度センサおよび/または熱発生/冷却素子を含むことができる。
【0024】
ミクロ透析プローブ、発光槽、細胞懸濁液、化学反応器、ヒト、組織または動物からの液流中に存在する低分子物質の例は、特許文献中に広く記載されている。
【0025】
例えば、可視光/UV光または導電性に基づく伝統的なフロースルーセルは、ミクロ透析プローブ、発酵槽、細胞懸濁液、化学反応器、ヒト、組織または動物からの液流中に存在する大多数の低分子物質を、定性的または定量的に測定することができない。
【0026】
本発明は、使用した試薬の特異性および酵素的能力によって十分な量の化学信号物質、例えばオキシダーゼにより形成された過酸化水素が検出器に供給されて、上記低分子物質の量を定量的に測定することができるので、この問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明による装置の主要なスケジュールを示している。検出すべき低分子物質を含む液体流が、入り口Aを通してフロースルーチャンバBに案内され、ここでは上記の物質が半透膜Gのナノ孔を通ってフロースルーチャンバEへと拡散し、或いは、フロースルーチャンバBから出口Cを通って案内される液流に合流する。上記の物質がフロースルーチャンバEにあるときに、それらは入り口Dを通って該チャンバの中に導入された酵素試薬と化学的に反応することができる。この酵素反応からの生成物は検出器Hへと拡散して、入口Aを通って導入された液流中の前記低分子物質の量に定量的に相関した電気信号を生じる。入ってくる液体、酵素、未反応の低分子物質、および反応異性生物は、出口Fを通ってフロースルーチャンバEを出る。これらの入り口および出口は、逆向きの流れが得られるように反転させることができる。検出器Hはまた、先に述べたSIREバイオセンサの原理を参照して、バックグラウンドの検出のために使用することができる。検出器Hはまた、温度センサおよび/または熱発生/冷却素子を含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均断面が0.1〜900nmのナノ孔を備えた半透膜を具備してなるバイオセンサ装置であって、前記膜は二つのフロースルーチャンバを分離しており、第一の前記フロースルーチャンバは電流型の検出器、および酵素試薬を含有する液流のための入り口および出口を含んでおり、第二の前記フロースルーチャンバは、定性的および/または定量的検出のための化学物質を含んだ液流の入り口および出口を有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、更に、測定の温度補償のための温度センサを備えたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、前記温度センサが、PT100、PT1000、DS1820、LM35、またはKTY81−120のタイプであることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の装置であって、更に、前記装置を5〜80℃の範囲内の一定温度に維持するための、熱発生素子または冷却素子を具備することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の装置であって、前記検出器は、白金製の作業電極、銀製の基準電極、および白金製の対向電極からなることを特徴とする
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の装置であって、前記作業電極は、前記基準電極電位よりも+200〜+1000mVだけ高い電位を有することを特徴とする
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の装置であって、前記両方のフロースルーチャンバの各々が、0.1〜5000μLのチャンバ容積を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の装置であって、前記半透膜が、酢酸セルロース、ナフィオン(Nafion)、セラミック材料、金属材料、およびポリマー材料からなっており、酵素、タンパク質、細胞、細胞成分およびポリマーで例示される高分子物質の透過性が制限されることを特徴とする装置。
【請求項9】
ミクロ透析プローブ、発光槽、細胞懸濁液、化学反応器、ヒト、組織または動物からの液流中の低分子(Mw<5kDa)物質を定性的および/または定量的に測定するために、請求項1〜8の何れか1項に記載の装置が使用される方法。
【請求項10】
発光槽、細胞懸濁液、または化学反応器における化学的または生物学的プロセスを最適化、制御または調節するために、請求項1〜9の何れか1項に記載の装置が使用される方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−506109(P2008−506109A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520256(P2007−520256)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000911
【国際公開番号】WO2006/006905
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507008367)チェメル・エービー (2)