説明

Streptococcuspneumoniaeの新規毒力因子

本発明はタンパク質/遺伝子を提供し、これらは生存の為に必須であり、及び結果的に、Streptococcus pneumoniaeのin vivoでの毒力の為に必須であり、及びすなわち、肺炎球菌感染症に対するワクチン調製物のための理想的なワクチン候補である。さらに、該タンパク質に対する抗体も、本発明に包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に、より特には細菌感染症、より特にはStreptococcus属の感染症、より特にはStreptococcus pneumoniae種の感染症に対するワクチンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
Streptococcus pneumoniaeは、重度の感染症、たとえば肺炎、髄膜炎及び敗血症など、の主要な病因的因子である。若い子供、年配の個体及び免疫不全の個体は肺炎球菌感染症に特に弱く、これは高い疾病率及び死亡率を結果する(Hausdorff, W.P. et al., 2005, Lancet Infect. Dis. 5:83-93)。肺炎球菌感染症に対する現在利用可能なワクチンは、血清型特異的莢膜多糖に基づく。これらは、23の血清型の多糖をもっぱら含むワクチン、及び、免疫原性キャリアタンパク質に共役した7つの最も流行している小児血清の多糖からなる共役ワクチンを包含する。後者のワクチンは、5歳より下の子供における使用の為に導入されており、なぜなら純粋な多糖に対する彼らの免疫応答は不十分だからである。米国における国家ワクチンプログラムにおけるこの共役ワクチンの導入は、侵襲性肺炎球菌疾患罹患率に対する大きな効果を有した(Whitney, C.G. et al., 2003, N. Eng. J. Med. 348:1737-1746)。
【0003】
少なくとも90の異なる多糖類構造が現在該種内で知られているので、多糖に基づくワクチンは、限定された数の血清型に対してだけ保護し、そしてしたがって、非ワクチン血清型による置換がワクチン有効性についての脅威のままである(Bogaert, D. et al., 2005, J. Clin. Microbiol. 43:74-83)。さらに、該共役ワクチンの高い生産コストは、発展途上国におけるそれらの使用をより実行可能でないものにする。
【0004】
Streptococcus pneumoniae感染症の処置もまた、最も一般的に適用される抗生物質に対して耐性である株の発生により妨げられる(Levy, S.B. and Marshall, B., 2004, Nat. Med. 10:S122-S129)。特に若い子供およびお年寄りにおける侵襲性肺炎球菌疾患に対する入手可能な有効なワクチンの開発が、先進国及び発展途上国の両方において疾患負荷及びヘルスケアコストを減少するという点で大きな利益を有するであろう。多数の血清型のあいだで保存されている肺炎球菌由来の免疫原性抗原が、広い範囲の血清型により引き起こされる感染症に対する保護を与える為に望ましいだろう。多くの研究努力が現在、将来のワクチンにおいて含まれるべき、保護能力を有する肺炎球菌タンパク質についての探査に注ぎ込まれている。
【0005】
Streptococcus pneumoniaeの表面タンパク質について研究する方法が記載されており(例えば国際公開第98/18930号パンフレット)、他の方法は可能な抗原決定基を発見するために免疫学的アプローチを用いた(国際公開第01/12219号パンフレット)。遺伝子レベルについて、いくつかの方法が、どの遺伝子が、Streptococcus pneumoniaeにより、宿主において占有する種々の適所(niches)において必要とされるか(条件的に必須の遺伝子)を決定する為に用いられており、例えばトランスクリプトーム分析(Orihuela, C.J. et al., 2004, Infect. Immun. 72:4766-4777)、差分蛍光誘導(differential fluorescence induction、Marra, A. et al., 2002, Infect. Immun. 70:1422-1433)、及びSignature−tagged変異誘発(Hava, D.L. and Camilli, A., 2002, Mol. Microbiol. 45:1389-1406; Lau, G.W. et al., 2001, Mol. Microbiol. 40:555-571; Polissi, A. et al., 1998, Infect. Immun. 66:5620-5629; Chen et al., 2008, PLoS ONE 3:e2950)などである。これらの方法及び他の方法により、いくつかの肺炎球菌タンパク質が同定され、そしてさらに、可能性のあるワクチン候補として調査され、例えば、pneumolysinのトキソイド誘導体(PdB) (Briles, D.E. et al., 2003, J. Infect. Dis. 188:339-348; Ogunniyi, A.D. et al., 2000, Infect. Immun. 68:3028-3033; Ogunniyi, A.D. et al., 2001, Infect. Immun. 69:5997-6003)、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA) (Briles, D.E. et al., 2003, 上記参照; Briles, D.E. et al., 2000, Infect. Immun. 68:796-800; Swiatlo, E. et al., 2003, Infect. Immun. 2003, 71:7149-7153; Wu, H.Y. et al., 1997, J. Infect. Dis. 175:839-846)、肺炎球菌表面アドヒージョンA (PsaA) (Briles, D.E. et al., 2000, 上記参照)、コリン結合性タンパク質A (CbpA) (Ogunniyi, A.D. et al., 2000, 上記参照)、BVH-3 (Hamel, J. et al., 2004, Infect. Immun. 72:2659-2670)、PiuA及びPiaA (Brown, J.S. et al., 2001, Infect. Immun. 69:6702-6706)、肺炎球菌保護タンパク質A(PppA) (Green, B.A. et al., 2005, Infect. Immun. 73:981-989)、推定上のプロテイナーゼ成熟タンパク質A(PpmA) (Adrian, P.V. et al., 2004, Vaccine 22:2737-2742; Overweg, K. et al., 2000, Infect. Immun. 68:4180-4188)、IgA1プロテアーゼ (IgA1p) (Weiser, J.N. et al., 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:4215-4220)及び連鎖球菌リポタンパク質ロタマーゼA(SlrA) (Adrian, P.V. et al. 上記参照)など、である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新たなワクチン候補についてのニーズがなおある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、病原体の毒力(virulence)にとって必須であり及び、すなわち、肺炎球菌感染症と戦う為のワクチンにおいて適用可能だろう、Streptococcus pneumoniaeのいくつかのタンパク質/遺伝子を今発見した。
【0008】
従って、本発明は、対象における肺炎球菌感染症に対する保護を与えるワクチン調合物を含み、該調合物は表1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質又はその機能的ホモログ若しくは免疫原的部分の有効量を、そのための医薬的に許容できる希釈剤、キャリア、賦形剤若しくはアジュバントの少なくとも1つと共に含有する。好ましくは、該免疫原的部分は、該病原体の抗原決定基である。該調合物のタンパク質は好ましくは、表0、表1A、表1B、表2A、表2Bにおいて記載された遺伝子によりコードされたものであり、一方で最も好ましくは該タンパク質は、表0、表1A若しくは表1B、表2A若しくは表2Bの2つ又はそれより多くにおいて記載された遺伝子及び国際特許出願第PCT/NL2008/050191号において記載された遺伝子(表3においてまとめられている)によりコードされたものである。
【0009】
さらに、本発明において、上記調合物に従う調合物であって、Streptococcus pneumoniaeにより引き起こされる肺炎、髄膜炎、中耳炎及び/又は敗血症に対する保護を与えるところの前記調合物が含まれる。
【0010】
他の実施態様において、本発明は、ワクチンとしての使用の為の、表0、表1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされたタンパク質又はそれらの免疫原的部分を含む。
【0011】
他の実施態様において、本発明は、表0、表1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片を含む。好ましくは該抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片は、対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的な処置の為の医薬としての使用の為のものである。
【0012】
さらに他の実施態様において、本発明は、該抗体又はその断片、好ましくは該ヒト化抗体又はその断片の、対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的な処置の為の医薬の製造の為の使用を含む。
【0013】
また、本発明に、該抗体又はその断片、好ましくは該ヒト化抗体又はその断片と、医薬的に許容できるキャリアとを含有する医薬組成物が含まれる。
【0014】
さらに、本発明に、対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的処置の為の方法であって、そのような処置が必要な対象に、上記で定義されたとおりのワクチン調合物の有効量及び/又は上記で定義されたとおりの医薬組成物の有効量を投与することを含む前記方法が含まれる。
【0015】
他の実施態様において、本発明は、肺炎球菌ワクチン調合物を調製する為の方法を含み、該方法は、表0、表1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質又はその免疫原的部分の有効量とそのための医薬的に許容できる希釈剤、キャリア、賦形剤又はアジュバントの少なくとも1つとを組合せることを含む。好ましくは、該方法は、上記で記載されたとおりの抗体、好ましくはヒト化抗体、又はその断片の有効量と医薬的に許容できるキャリアとを組合せることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】GAF手順の概略的な説明を示す図である。大きなStreptococcus pneumoniaeトランスポゾンライブラリーが、非選択的及び選択的条件下で増殖させられる。その後、外側を向いているT7RNAポリメラーゼプロモーター(T7を有する矢印)を有するトランスポゾン(灰色の長方形)を有する染色体DNAが、それぞれの集団から分離される。該DNAは消化され、そして該トランスポゾン挿入部位に隣接する該DNAが、T7RNAポリメラーゼによりin vitro転写を用いて増幅される。そのRNAが、マイクロアレイプローブ合成の為の標準的手順において用いられる。非選択的及び選択的条件から得られたプローブのマイクロアレイへの共ハイブリダイゼーション(co-hybridization)が、どの遺伝子が、選択の間に消えた変異体において破壊されたかを明らかにするであろう:非選択的条件から得られた材料だけが、それらのスポット(灰色のスポット)へハイブリダイズするであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「毒力因子」は、本明細書内において、宿主内において病原体がコロニー形成し及び生き抜くことを許し、及び結果的に疾患を引き起こすことを許す病原体の特性をいう。毒力因子は、病原性微生物を、それ以外は同一である非病原性微生物から、病原体が宿主に侵入し、付着し及び/又はコロニー形成し、そして次に該宿主を害することを許すことによって、区別することができ、病原性である生物に関して、それは、宿主に侵入でき、該宿主内で増殖でき、宿主防御を回避でき、及び該宿主を何らかの方法で害することができる。本明細書内において用いられるときに、表0、表1及び2の遺伝子の遺伝子産物が毒力因子である。
【0018】
語「侵入する」及び「侵入」は、組織へのすなわち、上皮組織を通ってそして次に上皮組織の下への、感染の増大を言い、特には、それは鼻咽頭組織における又は肺における、リンパ流体、血液及び/又は髄膜への、粘膜組織の通過のプロセスを包含する。すなわち、それは、鼻咽頭のコロニー形成及び血液/髄膜への普及の両方を包含する。
【0019】
語「機能的断片」は、タンパク質の短くされたバージョンを言い、これは機能的な変異体又は機能的な誘導体である。タンパク質の「機能的な変異体」又は「機能的な誘導体」は、タンパク質であって、そのアミノ酸配列が、アミノ酸配列の変化にもかかわらず、該機能的変異体が当技術分野の当業者にとって検出可能である元のタンパク質の生物学的活性の少なくとも1つの少なくとも一部を維持するような、1又はそれより多いアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は追加によって、元のタンパク質のアミノ酸配列から得られることができる前記タンパク質である。機能的な変異体は、一般的に、それが由来しうるタンパク質と、少なくとも60%相同であり(好ましくはアミノ酸配列が少なくとも60%同一である)、有利には少なくとも70%相同であり、及びさらにより有利には少なくとも80又は90%相同である。機能的な変異体は、タンパク質にいずれかの機能的な部分であってもよい;該機能は、特には、血液又は脳脊髄液のコロニー形成にとって必須の活性であるがこれに限定されない。「機能的な」は、本明細書において用いられるときに、Streptococcus pneumoniaeバクテリアにおいて機能的であること及び該バクテリアにより引き起こされる疾患に対する保護を与える抗体を誘発することができることを意味する。
【0020】
アミノ酸に関して用いられる表現「保存的置換」は、同類の物理化学的特徴を有するアミノ酸による或るアミノ酸の置換に関する。すなわち、表0、1及び2において記載された遺伝子によりコードされたタンパク質のアミノ酸が疎水性を特徴づける基を有する場合、保存的置換は、それを、疎水性を特徴づける基を有する他のアミノ酸により置き換える;他のそのような類は、該特徴づける基が、親水性、カチオン性、アニオン性である場合又はチオール若しくはチオエーテルを有する場合のものである。そのような置換は、当技術分野の当業者によく知られており、すなわち米国特許第5,380,712号明細書を参照されたい。保存的アミノ酸置換は、たとえば、脂肪族非極性アミノ酸のグループ(Gly, Ala, Pro, Ile, Leu, Val)、極性の非荷電のアミノ酸のグループ(Cys, Ser, Thr, Met, Asn, Gln)、極性の荷電したアミノ酸のグループ(Asp, Glu, Lys, Arg)、又は芳香族アミノ酸のグループ(His, Phe, Tyr, Trp)のうちで行われうる。
【0021】
語「免疫原性部分」は、表1及び2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質又はその機能的ホモログ又は機能的断片のいずれかの部分であって、哺乳動物において免疫応答を誘発することができる前記部分への言及を含む。該免疫原的部分は好ましくは、該病原体の抗原決定基に相当する。
【0022】
本明細書において用いられるときに、語「抗原」は、もし主要組織適合性複合体(MHC)により提示されるならば、抗体又はT細胞レセプター(TCR)によって結合されることができる分子をいう。語「抗原」は、本明細書において用いられるときに、T細胞エピトープも包含する。T細胞エピトープは、MHCクラスI(赤血球以外の体の全ての細胞上に存在する)又はMHCクラスII(免疫細胞上に及び特には抗原提示細胞上に存在する)との関連においてT細胞受容体により認識される。この認識イベントは、T細胞の活性化そして続くエフェクター機構の活性化、例えばT細胞の増殖、サイトカイン分泌、パーフォリン分泌など、をもたらす。抗原は、加えて、免疫系により認識されることができ及び/又は、Bリンパ球及び/又はTリンパ球の活性化をもたらす液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘発することができる。しかしながら、これは、少なくともいくつかの場合において、該抗原が、Tヘルパー細胞エピトープを有し又は当該エピトープに連結されており、及び、アジュバント中において与えられることを要求しうる。抗原は、1又はそれより多いエピトープ(B−及びT−エピトープ)を有しうる。上記で言及された特異的な反応は、該抗原が好ましくは、典型的には非常に選択的な様式で、それに対応する抗体又はTCRと反応し及び他の抗原により引き起こされうる他の抗体又はTCRの群集と反応しないであろうことを示すことが意味される。本明細書において用いられるときに抗原は、いくつかの個体の抗原の混合物でもありうる。本明細書において用いられるときに、抗原は、感染性疾患抗原、より特にはStreptococcus pneumoniaeの抗原、表0、1及び2において記載された遺伝子によりコードされるタンパク質及びその断片及び誘導体から得られるより好ましい抗原を含む。さらに、本発明の為に用いられる抗原はペプチド、タンパク質、ドメイン、又は脂質、特には表0、1及び2にリポタンパク質として記載された遺伝子によりコードされるタンパク質と結合した脂質、でありうる。
【0023】
本明細書において用いられるときに、語「抗原決定基」は、Bリンパ球又はTリンパ球により特異的に認識される抗原のその一部をいうことが意味される。Bリンパ球は、抗体産生を介して外来性の抗原決定基に応答し、一方でTリンパ球は細胞性免疫のメディエーターである。すなわち、抗原決定基又はエピトープは、抗体により又は、MHCとの関連において、T細胞受容体により認識される抗原の一部である。抗原決定基は、1又はそれより多いエピトープを有しうる。エピトープは、タンパク質分子の細胞内の(内側の)、膜貫通部分にまたがる(膜貫通の)、及び細胞外の(外側の)領域に存在しうる。抗原決定基は、特には、該バクテリアの細胞質膜の外側にある、表0、1A、1B、2A及び2Bに記載された遺伝子によりコードされる表面タンパク質の領域に特に結合することが予測される。これらの領域は、例えばソフトウェアプログラムSignalP3.0、PSORTb又はTMHMM、例えばヴァージョン2.0c、の一つ(これは隠れマルコフモデルに基づく膜貫通へリックスの予測の為の方法を提供する)を用いることにより、与えられた配列から予測されることができる。
【0024】
語「Streptococcus pneumoniaeによる感染の予防的又は治療的な処置」又は「肺炎球菌感染症の予防的又は治療的な処置」は、病原体の毒力が遮断され又は減少されるところの予防的又は治療的な処置の両方を言うが、表0、1又は2に記載された遺伝子によりコードされたタンパク質のいずれかに対する抗体が該バクテリアを認識し及び該宿主を、免疫クリアランスを通じて直接的に又は該タンパク質の活性をブロックすることにより間接的に、それにより該バクテリアの増殖を抑制し、感染から守るであろう処置も言う。また、該語は、in vivoで表0、1及び2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質のいずれかの機能をブロックし、それにより、病原体の付着能力を減少すること、コロニー形成及び侵入能力の付随する減少を伴う、をいう。すなわち、該語は、本発明のワクチン調合物を用いて対象において免疫応答を誘発すること、並びに、in vivoで、該対象において投与される医薬組成物中の活性化合物として本発明の抗体を用いることにより該病原体の増殖を抑制することを含む。また、アンチバイオティクスによる処置による該バクテリアの毒力及び/又は増殖の抑制も含まれる。
【0025】
語「抗体」は、エピトープ又は抗原決定基に結合することができる分子を言い、及び、抗体の抗原に結合する形への言及を含む(例えば、Fab、F(ab)2)。語「抗体」は、1又は複数のイムノグロブリン遺伝子により実質的にコードされたポリペプチド又は分析物(抗原)に特異的に結合し及び認識するそれらの断片を高い頻度で言及する。しかしながら、種々の抗体断片が無傷の抗体の消化の点で定義されうる一方で、当業者は、そのような断片が新たに、化学的に又は組み換えDNA方法論を利用することにより合成されうることを理解するであろう。すなわち、語「抗体」は、本明細書において用いられるときに、抗体断片、例えばシングルの鎖Fv、キメラ抗体(すなわち種々の種からの定常領域及び可変領域を有する)、ヒト化抗体(すなわち、非ヒトの源からの相補性決定領域(CDR)を有する)及びヘテロ結合した抗体(例えば二重特異性抗体)を包含する。該抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよく、及び、当技術分野でよく知られている技術、例えば宿主の免疫化及び血清の回収(ポリクローナル)(例えば、Parker, Radioimmunoassay of Biologically Active Compounds, Prentice-Hall (Englewood Cliffs, N.J., U.S., 1976)、Butler, J. Immunol. Meth. 7, 1-24 (1975); Broughton and Strong, Clin. Chem. 22, 726-732 (1976); 及び Playfair, et al., Br. Med. Bull. 30, 24-31 (1974)を参照されたい)など、により、連続ハイブリッド細胞株(continuous hybrid cell lines)を調製しそして分泌されたタンパク質(モノクローナル)を回収することにより(例えば、Kohler et al in Nature 256, 495-497 (1975) 及び Eur. J. Immunol. 6, 511-519 (1976)を参照されたい; Milstein et al. Nature 266, 550-552 (1977)により; 及びWalsh Nature 266, 495 (1977)により)、又は、天然の抗体の特異的結合にとって必要とされるアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列又はその変異したバージョンをクローニングし及び発現させることにより、調製されうる。抗体は、完全イムノグロブリン又はその断片を包含し、該イムノグロブリンは、種々のクラス及びアイソタイプ、例えばIgA、IgD、IgE、lgG1、IgG2a、lgG2b及びlgG3、IgMなど、を含む。その断片は、Fab、Fv及びF(ab')2、Fab'及び同様物を含みうる。加えて、イムノグロブリン又はそれらの断片の会合体(aggregates)、ポリマー、及び結合体が、必要な場合に、特定の分子についての結合の親和性が維持される限りにおいて、用いられうる。
【0026】
本明細書において用いられるときに、語「モノクローナル抗体」は、均一抗体集団を有する抗体組成物を言う。該語は、該抗体の種又は源に関して限定されるものでなく、それが作成されるところの様式により限定されることも意図されない。該語は、全イムノグロブリン及び断片、例えばFab、F(ab')2、Fvなど、及び他のもの、例えばCDR断片など、これらは該抗体の抗原結合性機能を維持する、を包含する。任意の哺乳類の種のモノクローナル抗体が、本発明において用いられうる。しかしながら、実際には、該抗体は典型的には、モノクローナル抗体を生産する為に要求されるハイブリッド細胞株又はハイブリドーマを作ることにおける使用にとってのラット又はマウスの細胞株の入手可能性の故に、ラット又はマウス起源のものであろう。
【0027】
本明細書において用いられるときに、語「ヒト化モノクローナル抗体」は、抗体(又は断片)のフレームワーク領域中の露出したアミノ酸の少なくとも一部(これは最も相同なヒトのカウンターパート中の対応するアミノ酸とマッチしない)が、該抗体をコードするDNAの部位特異的変異生成などにより、変更されていることを意味する。これらの露出したアミノ酸は該分子の表面にあるので、この技術は「リサーフィシング(resurfacing)」と呼ばれる。さらに、該分子の表面のアミノ酸は、免疫応答をもっとも引き起こしそうなものであるので、このリサーフィシングは、種(その細胞株は該抗体を生成する為に用いられなかった)、例えばヒトなど、に投与されたときに、該モノクローナル抗体の免疫原性を減少する。語「ヒト化モノクローナル抗体」は、非ヒト細胞株からのハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域が組み換え技術を介して1つのヒト軽鎖定常領域及び少なくとも1つの重鎖可変領域へとそれぞれくっつけられるところのキメラ抗体も含む。そのようなキメラ(すなわちヒト化)抗体の調製は当技術分野でよく知られている。
【0028】
語「特異的に認識する」は、抗体と該抗体の抗原結合性部位により認識されるエピトープを有するタンパク質との間の結合反応への言及を含む。この結合反応は、不均一なタンパク質集団及び他の生物製剤(biologics)の存在のうちの該認識されるエピトープを有するタンパク質の存在を決定する。そのような条件下での抗体への特異的な結合は、特定のタンパク質についてのその特異性について選択される抗体を要求しうる。例えば、本発明の表0、1及び2において記載された遺伝子によりコードされるタンパク質へと育てられた抗体は、該タンパク質を特異的に認識する抗体を得る為に選択されうる。免疫原として用いられるタンパク質は、天然のコンフォメーションにあってよく、又は、直線状エピトープを得る為に変性されてもよい。種々のイムノアッセイフォーマットが、特定のタンパク質(又は他の分析物)を特異的に認識する抗体を選択する為に用いられうる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、通常、タンパク質と特異的に免疫反応的であるモノクローナル抗体を選択する為に用いられる。選択的反応性を決定する為に用いられうるイムノアッセイフォーマット及び条件の説明について、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York (1988)、を参照されたい。
【0029】
「対象」は、本明細書において言及されるときに、哺乳類及び他の動物を包含することが意味され、ここで哺乳類は例えばヒト、類人猿、サル、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス及びヒツジを含む。語「非ヒト動物」は、ヒトを除くことが意味される。好ましくは、本発明において、対象は、ヒト、より好ましくは子供又は高齢者である。
【0030】
本発明の毒力タンパク質/遺伝子は、ゲノミックアレイフットプリンティング(GAF)により同定され、これはStreptococcus pneumoniae中の条件的に必須の遺伝子を、ランダムトランスポゾン突然変異生成及びマイクロアレイ技術の組み合わせを用いることにより同定する為のハイスループット方法である(Bijlsma, J.J.E. et al., 2007, Appl. Environm. Microbiol. 73(5):1514-1524、を参照されたい)。GAFは、変異体ライブラリー中のトランスポゾン挿入部位を、該トランスポゾンに隣接する染色体DNAを増幅し及び標識すること、そして次に、これらのプローブのマイクロアレイへのハイブリダイゼーションにより、検出する。選択の故に該ライブラリーから消えた変異体中のトランスポゾン挿入部位の同定(これが条件的に必須の遺伝子を表す)が、2つの条件下で成長させられたライブラリーから生成されたプローブのアレイへのディファレンシャルハイブリダイゼーションにより達成される。血液中の生存の為の必須遺伝子の特異的な検出の為に、Streptococcus pneumoniaeの変異体ライブラリー(実験の部において記載されたとおりに調製される)が、感染症のマウス菌血症モデルにおいてマウスを感染させる為に用いられた。チャレンジ後、該マウスから採られた血液試料から消えた変異体が同定され、そしてこれらの変異体の分断された遺伝子が同定された。脳脊髄液(CSF)中の生存の為に必須な遺伝子の特異的な検出の為に、Streptococcus pneumoniaeの変異体ライブラリー(実験の部において記載されたとおりに調製される)が、感染症のウサギの髄膜炎モデルにおいてウサギを感染させる為に用いられた。チャレンジ後、該ウサギから採られたCSF試料から消えた変異体が同定され、そして、これらの変異体の分断された遺伝子が同定された。
【0031】
菌血症モデルにおける血液中の生存の為に必須であることが分かった遺伝子が、表1において与えられる。表1Aは、(種々の予測サーバー、例えばSignalP3.0 (http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP)、及びPSORTb (http://www.psort.org)など、を用いて)、それらの配列に基づき、表面で配置されていると予測された遺伝子を一覧にする。さらに、表1Aは、以下の基準に基づき、表面に局在していると予測される遺伝子を一覧にする:
1〜3の予測された膜貫通型へリックス(TMHMM (http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM)を用いて決定された);又は
PTSシステムのIIC及びIIDコンポーネント。表1Bは、細胞質中に局在化されていると予測される遺伝子を一覧にする。
【0032】
ウサギ髄膜炎モデルにおけるCSF中の生存の為に必須であると分かった遺伝子が、表1ついてのものと同じ基準に基づき、表2A−2Bにおいて一覧にされる。
【0033】
表1及び2から、本発明のワクチン及び/又は免疫学的組成物にとって最も好ましい遺伝子が、表0において表される。
【0034】
表0、1及び2の遺伝子の表面局在化タンパク質が、本発明に従うワクチン成分として特に好ましい。
【0035】
表0、1及び2に記載された遺伝子の次に、より多くの遺伝子(表3及び4に一覧にされた)が、該実験設定において同定された。表3の遺伝子/たんぱく質は、国際特許出願第PCT/NL2008/050191号において一覧にされたとおりの、GAF技術を用いてStreptococcus pneumoniaeについてのワクチン候補として適するだろう遺伝子/タンパク質として、以前に同定された。表4の遺伝子/タンパク質は、Streptococcus pneumoniaeについてのワクチン候補として適当だろう、既存の文献から明らかな、遺伝子/タンパク質として、以前に同定された。これらの遺伝子が我々の実験において発見されたという事実は、可能性のあるワクチン候補を発見する為の該方法論の有用性を強調する。
【0036】
【表0】

【0037】
表1A.該菌血症モデルにおける血液において同定された条件的に必須のStreptococcus pneumoniae遺伝子、これは予測された表面局在化タンパク質をコードする。座位は、TIGR−CMGアノテーションにより割り当てられた遺伝子番号を示す(Tettelin H. et al., 2001, Science. 293:498-506; TIGR Comprehensive Microbial Resource database http://cmr.tigr.org/tigr-scripts/CMR/CmrHomePage.cgi, Version 3.2 dated 20 July 2001)。
【0038】
【表1A】

【0039】
表1B.菌血症モデルにおける血液において同定された条件的に必須なStreptococcus pneumoniae遺伝子、これは予測された細胞質局在化タンパク質をコードする。
【0040】
【表1B】



【0041】
表2A.髄膜炎モデルにおけるCSFにおいて同定された条件的に必須なStreptococcus pneumoniae遺伝子、これは予測された表面局在化タンパク質をコードする。
【0042】
【表2A】

【0043】
表2B.髄膜炎モデルにおけるCSFにおいて同定された条件的に必須なStreptococcus pneumoniae遺伝子、これは予測された細胞質局在タンパク質をコードする。
【0044】
【表2B】

【0045】
表3.国際特許出願第PCT/NL2008/050191号において一覧にされた、以前のin vivo GAF選別(screen)において同定された、菌血症及び髄膜炎GAF選別において発見された遺伝子。
【0046】
【表3】




【0047】
表4.可能性のあるワクチン候補として文献において同定された、菌血症及び髄膜炎GAF選別において発見された遺伝子。示された文献参照は:H: Hava et al., 2002, Mol. Microbiol. 45:1389-1406; L: Lau et al., 2001, Mol. Microbiol. 40:555-571; P: Polissi et al., 1998, Infect. Immun. 66:5620-5629; C: Chen et al., 2008, PLoS ONE 3:e2950; 1: Throup et al., 2000, Mol. Microbiol. 35:566-576; 2: Zysk G. et al., 2000, Infect Immun. 68:3740-3743; 3: Caimano, M.J. et al., in: Streptococcus pneumoniae - Molecular biology and mechanisms of disease, A. Tomasz (Ed.), Mary Ann Liebert, Larchmont, NY, 2000, p.115.; 4: Tong et al., 2000, Infect. Immun. 68:921-924; 5: Iyer R. and Camilli A., 2007, Mol. Microbiol. 66:1-13; 6: Orihuela et al., 2004, Infect. Immun. 72:5582-5596; 7: Brown, J.S. et al., 2001, Infect. Immun. 69:6702-6706; 8: Marra, A. et al., 2002, Infect. Immun. 70:1422-1433; 9: Dintilhac, A. et al., 1997, Res. Microbiol. 148:119-131; 10: Kwon et al., 2003, Infect. Immun. 71:3757-3765; 11: Bartilson, M. et al., 2001, Mol. Microbiol. 39:126-135、である。
【0048】
【表4】



【0049】
表0、1A〜B及び2A〜Bにおいて記載された遺伝子によりコードされるタンパク質が、本発明のワクチン又は抗体を生産する為に用いられうる。そのようなタンパク質の適当な源は、例えば、Streptococcus pneumoniaeである。該タンパク質は、精製されずに(無傷細胞内に付随している)、部分的に精製されて(膜断片又は他の細胞構成要素と付随している)、又は精製されて(すなわち、単離されており、及び他の細胞構成要素から本質的に遊離している)用いられうる。精製され又は部分的に精製された1又はそれより多いタンパク質を調製することにより、そのようなタンパク質の実質的に純粋な調製物を調製することが可能である。タンパク質精製の為の多数の方法及び戦略が当技術分野において知られているが、そのようなタンパク質を、例えばソディウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲルを用いる電気泳動(SDS−PAGE)により又はアフィニティークロマトグラフィーにより精製することが最も簡便であろう。これらの方法のそれぞれが、以下に記載される。
【0050】
表0、1A〜B及び/又は2A−Bにおいて記載された遺伝子によりコードされたタンパク質は、例えばトリシン−SDS−PAGE(Schagger and Von Jagow (1987) Analytical Biochemistry 166, 368-379)又はグリシン−SDS−PAGE(Laemmli (1970) Nature 227, 680-685)を用いた電気泳動により他のタンパク質から分離されうる。バクテリアのライセートに含まれる種々のタンパク質又はそのゲノムから転写されそして適当な発現系において発現された種々のタンパク質を分離することができる他の電気泳動システムもまたもちろん用いられてよく、例えば非変性ゲル電気泳動などである。標的タンパク質を含むPAGEゲルの領域が切除されてよく、そして、該標的ポリペプチドがそこから溶出されてよい。関心のあるタンパク質は、ゲル中の参照ポリペプチドに対するその移動度により同定されうる。純度を増す為に、該溶出されたタンパク質が、第2のSDS−PAGEゲルで泳動され、そして、二度目の溶出がされうる。該切除されたゲル断片に含まれるタンパク質又はペプチドが次に、再度溶出されてよく、そして、免疫化における又はプロテインシーケンシングにおける使用の為に適当である。
【0051】
該タンパク質は、該タンパク質に特異的に結合する抗体(例えばモノクローナル抗体など)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによっても精製されうる。該抗体は、固形の支持体、例えばセルロース、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、ビーズアガロース(beaded agarose)又はコントロールドポアガラス(controlled pore glass)など、に、該支持体上の官能基及び該抗体分子上の官能基(すなわち反応性アミノ酸側鎖)と反応する二官能性カップリング剤を用いて、共有結合的に結合されうる。そのような方法は、当業者により容易に利用可能である。得られた抗体を有する固相が、精製された又は部分的に精製されたタンパク質と、還元性条件下で、該タンパク質が該固定化された抗体へ結合することを許すpH、イオン強度、温度及び滞留時間を用いて接触させられる。該タンパク質は、該カラムから、水素結合を解離する溶出剤をベッドを通過させることにより、溶出される。特定のpHでのバッファー又は約2M超のNaCl溶液が一般に用いられる溶出剤である。
【0052】
抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーを実施する為の方法並びにタンパク質のイムノアフィニティー精製の為の他の方法は当技術分野でよく知られている(例えば、Harlow and Lane, (1988) Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY、を参照されたい)。
【0053】
本明細書において与えられる教示とともに、当業者は、表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質を分離することができ、そしてそれを、その免疫原的特性について、例えば国際公開第WO 01/12219号パンフレットに記載されたとおりのオプソニン化貪食作用アッセイを実施することにより、試験することができる。
【0054】
抗体産生
【0055】
抗体(モノクローナル又はポリクローナルのいずれか)は、表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされた精製された又は部分的に精製されたタンパク質又はペプチドへと、動物における抗原としての該タンパク質の注入を含む当技術分野の当業者に既知の種々の方法において、ハイブリドーマ融合により、及びバクテリア又はファージの系を含む組み換え方法により、生成されうる(例えば、Harlow and Lane (1988) 上記参照; Marks et al., (1992) Journal of Biological Chemistry, 267, 16007-16010; Marks et al., (1992) Biotechnology 10: 779:783; Lowman et al., (1991) Biochem. 30(45): 10832-8; Lerner et al., (1992) Science 258:1313-1314,(これらの引用文献のそれぞれが適当な方法を開示する)を参照されたい)。
【0056】
表0、表1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされたタンパク質又はその機能的ホモログに対する抗体は、適切な脊椎動物、好ましくは哺乳類宿主、例えばウサギ、ヤギ、ラット及びマウス又はニワトリを、該タンパク質単独で又はアジュバントと併せて免疫化することにより産生されうる。通常、2又はそれより多い免疫化が含まれ、そして、血液又は脾臓が、最後の注入の数日後に回収されるであろう。ポリクローナル抗血清について、イムノグロブリンが沈殿され、分離されそして(アフィニティー)精製されうる。モノクローナル抗体について、ハイブリドーマについての選択的条件下で、脾細胞が通常は不死化リンパ球、例えばミエロイド株、と融合されるであろう。次に、該ハイブリドーマが、限界希釈条件下でクローン化され、そしてそれらの上清が、所望の特異性を有する抗体についてスクリーニングされうる。(モノクローナル)抗体を生産する為の技術及び種々の手順におけるそれらの調製及び使用の為の方法は、文献においてよく知られている(例えば、米国特許第4,381,292号、第4,451,570号及び第4,618,577号の明細書; Harlow, E. and Lane, D. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.; Ausubel, F.M., Brent, R., Kingston, R.E., Moore, D.D.,Seidman, J.G., Smith, J.A., Struhl, K. eds. (1998) Current protocols in molecular biology. V.B. Chanda, series ed. New York: John Wiley & Sons; Rose, N., DeMacrio, E., Fahey, J., Friedman, H., Penn, G. (1997) Manual of Clinical Laboratory Immunology. American Soc. Microbiology Press, Washington, D.C Coligan, J.E., Kruisbeek, A.M., Margulies, D.H., Shevach, E.M. Strober, W. (Eds.) (1997) Current Protocols in Immunology. John Wiley & Sons Inc. Baltimore、を参照されたい)。典型的には、タンパク質に対して向けられた抗体が、少なくとも1x105〜1x107 M-1の結合親和性を有するであろう。
【0057】
組み換えタンパク質又はその機能的ホモログ、例えば適当な発現系において表0、1及び/又は2からの遺伝子を発現することにより得られうるもの、が抗体を生産する為の方法における抗原として好ましい。しかしながら、精製されたタンパク質もまた用いられてよく、タンパク質断片もまた用いられてよい。抗体生産にとって適当な抗原は、該タンパク質にさらされた哺乳類において免疫応答を引き起こすタンパク質の任意の断片を含む。表0、1及び/又は2の遺伝子によりコードされたタンパク質の任意の領域が原理上は用いられうるが、本発明の好ましい抗原は抗原決定基を含む断片を含む。
【0058】
発現ベクターへ及び発現ベクターからゲノム配列を操作する為に及び異種宿主においてゲノム配列によりコードされる該タンパク質を発現する為に、ゲノム配列、例えば表0、1及び/又は2に記載された遺伝子など、をクローニングする為の方法はよく知られており、そして、これらの技術は、発現ベクター、宿主細胞、及び該タンパク質、その機能的ホモログ又は断片をコードするクローン化されたゲノム配列を提供するために用いられてよく、該配列は、本発明の方法における使用の為の抗体を生産するために、宿主中において発現されることになる(例えば、Sambrook, J., Russell D.W., Sambrook, J. (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y., and Ausubel, et al., 上記参照、を参照されたい)。
【0059】
種々の発現系が、本発明の方法における使用の為に抗原を生産する為に用いられうる。例えば、Escherichia coli、Lactococcus lactis、Bacillus subtilis、酵母、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞においてタンパク質を生産することに適した種々の発現ベクターが説明されており、このうちのいずれかが、ワクチンに含まれるのに適した抗原、又は抗体若しくはその断片を生産する為に有用である抗原を生産する為に用いられうる。もちろん、Streptococcus pneumoniaeそれ自体も、この目的の為に、発現ベクターとして用いられうる。
【0060】
本発明の抗体の一つの使用方法は、Streptococcus pneumoniae病原体の毒力又は増殖を抑制することができる医薬組成物の為の活性成分を提供することである。本発明の抗体の他の使用方法は、関心のあるタンパク質又は構造的に関連した免疫交差反応性タンパク質をコードするcDNA挿入を有するクローンを同定する為のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることである。cDNA発現ライブラリーのそのようなスクリーニングは、当技術分野でよく知られており(例えば、Young R.A., Davis, R.W. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:1194-1198、を参照されたい)、この文脈において言及がされ、並びに他の発行された情報源も同様に言及される。これらの抗体の他の使用は、それが生じさせられた該タンパク質又はその機能的ホモログの精製の為のアフィニティークロマトグラフィーにおける使用の為のものである。これらの抗体もまた、Streptococcus pneumoniaeによる感染症についてアッセイするために有用である。
【0061】
抗原エピトープ
【0062】
本発明の抗原エピトープ(単独で又は一緒に、Streptococcus pneumoniaeの抗原決定基をなす)は、モノクローナル抗体と免疫反応性である分子であり、そして、該微生物病原体細胞の抗原へのその結合が、該細胞の毒力及び/又は増殖を妨げる。これらのエピトープを同定する為の系統的技術は当技術分野で知られており、米国特許第4,708,871号明細書に記載されたとおりであり、これは引用することにより本明細書に組み込まれる。典型的には、これらのエピトープは短いアミノ酸配列である。これらの配列は、それらが接近可能である限り、より長いペプチド又はタンパク質の配列中に埋め込まれていてもよい。
【0063】
本発明のエピトープは、標準的なペプチド合成技術、例えば固相合成など、により調製されうる。代わりに、本発明の配列が、組み換え方法により、より長いペプチド又はタンパク質中に組み込まれてもよい。これは、関心のある配列をコードするDNAカセットを調製すること、そして該カセットを、修正されるべき該タンパク質をコードするDNA中に適切な部位でライゲーションすることにより、最も容易に達成される。該配列DNAは、標準的な合成技術により合成されることができ、又は適切な制限酵素を用いてファージpIII遺伝子から切除されうる。
【0064】
本明細書において同定されたエピトープは、簡単な固相合成技術により調製されうる。最小の結合性配列が、それぞれのエピトープについて、例えば米国特許第4,708,871号明細補に記載された方法を採用する、標準的な方法により系統的に決定されうる。簡潔に言うと、それぞれのピン上にユニークオリゴペプチドを有するピンの固相アレイに結合した抗原から得られたオーバーラップするオリゴペプチドのセットを合成することができる。該ピンは、96ウェルマイクロタイタープレートのフォーマットにマッチするように配置され、例えば、モノクローナル抗体に結合する為に、すべてのピンを同時にアッセイすることを許す。この方法を用いることにより、連続したアミノ酸の全てのあり得るサブセットについての結合親和性を容易に決定することができる。
【0065】
抗体調合物及び投与の方法
【0066】
本発明の抗体は、Streptococcus pneumoniaeによる感染症を予防し又は処置する為に治療的に有効である濃度で投与される。この目的を達成する為に、該抗体は、当技術分野で既知の種々の許容できる賦形剤を用いて処方されうる。典型的には、該抗体は、注入により、静脈内に又は腹腔内に、投与される。この投与を達成する為の方法は、当技術分野の当業者に知られている。局所的に又は経口的に投与されうる組成物、又は粘膜を横切っての透過が可能でありうる組成物を得ることもまた可能でありうる。
【0067】
患者への投与の前に、フォーミュラント(formulants)(多くの機能を有しうる製品中の活性成分以外の成分、例えばキャリア及び賦形剤など)が、抗体に添加されうる。液状調合物が好ましい。例えば、これらのフォーミュラントは、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミノ酸、塩、バッファー、アルブミン、界面活性剤、又は充填剤を含みうる。
【0068】
さらに、抗体は、例えば、共有結合によりポリマーへと化学的に修正され得て、それらの循環半減期を増すことができる。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリオキシエチル化ポリオール、例えばポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)など、である。PEGは、好ましい平均分子量1,000〜40,000、より好ましくは2,000〜20,000、最も好ましくは3,000〜12,000を有する。
【0069】
循環半減期を増すための他のドラッグデリバリーシステムはリポソームである。リポソームデリバリーシステムを調製する方法は、Gabizon et al., Cancer Research (1982) 42:4734; Cafiso, Biochem. Biophys. Acta (1981) 649:129; 及び Szoka, Ann. Rev. Biophys. Eng. (1980) 9:467、において議論されている。他のドラッグデリバリーシステムは、当技術分野で知られており、そして、例えば、Poznansky et al., Drug Delivery Systems (R. L. Juliano, Ed., Oxford, N.Y. 1980), pp. 253-315; M. L. Poznansky, Pharm. Revs. (1984) 36:277、に記載されている。
【0070】
液状医薬組成物が調製された後、減成を防ぐ為に及び無菌状態を保つ為に好ましくはそれは凍結乾燥される。液状組成物を凍結乾燥する為の方法は、当技術分野の当業者に知られている。使用の直前に、該組成物は、滅菌希釈剤(例えばRinger's溶液、蒸留水、又は滅菌生理食塩水など)により再構成されてよく、該希釈剤は追加の成分を含みうる。再構成すると、該組成物は、好ましくは、当業者に既知の方法を用いて対象に投与される。
【0071】
上記で述べられたとおり、本発明の抗体及び組成物は、Streptococcus pneumoniae感染症を予防し又は処置する為に人の患者を処置する為に用いられる。好ましい投与経路は、非経口的である。非経口投与において、本発明の組成物は、単位投与量を注入可能な形に、例えば、溶液、懸濁物又はエマルジョンなどに、医薬的に許容できる非経口投与のビヒクルと一緒に、処方されるであろう。そのようなビヒクルは、本質的に非毒性であり且つ非治療的である。そのようなビヒクルの例は、生理食塩水、Ringer's溶液、デキストロース溶液、及びHank's溶液である。非水性のビヒクル、例えば固定油及びオレイン酸エチルなど、も用いられうる。好ましいビヒクルは、生理食塩水中の5%デキストロースである。該ビヒクルは、少量の添加物、例えば等張性及び化学的安定性を増す物質など、を含んでよく、バッファー及び保存料を含む。しかしながら、非経口以外の投与経路(例えば、経口、経鼻、直腸など、本発明のワクチン調合物に関する本明細書内の以下を参照されたい)もまた本発明のいくつかの実施態様にとって適用可能でありうる。
【0072】
投与の用量及び様式は個体によるであろう。一般には、該組成物は、抗体が、1μg/kg〜20mg/kg、より好ましくは20μg/kg〜10mg/kg、最も好ましくは1〜7mg/kgの用量で与えられるように、投与される。好ましくは、それはボーラス投与として与えられて、循環するレベルをボーラス投与後10〜20倍だけ及び4〜6時間増加する。持続注入もまた、該ボーラス投与後に用いられうる。もしそうならば、該抗体は、5〜20μg/kg/分、より好ましくは7〜15μg/kg/分の用量で注入されうる。
【0073】
本発明の抗体は、感染の前に予防として又は感染が起こった後に治療的処置として用いられうる。好ましくは、本明細書において記載された抗体又はその断片の治療的使用は、該疾患の急性の侵襲期の前または間の投与を含む。
【0074】
ワクチン調合物及び投与の方法
【0075】
本発明のワクチン抗原は、Streptococcus pneumoniaeによる感染症を予防し又は処置する為に治療的に有効である濃度で投与される。この目的を達成するために、該ワクチンは、当技術分野で既知の種々の許容できる賦形剤を用いて調合されうる。典型的には、該ワクチンは、静脈内への又は腹腔内への注入により投与される。この投与を達成する為の方法は、当技術分野の当業者に知られている。
【0076】
好ましくは、該ワクチンは、1投与量当たり少なくとも50μg、最も好ましくは1投与量当たり80μgの抗原質量(antigenic mass)を有する。該抗原質量は該抗原タンパク質の質量である。1投与量当たり最大で275μgの抗原質量を有する本発明に従うワクチンさえ調製されることができ、そしてそのようなワクチンはなおも注入部位で局所的な反応を生じないものでありうる。もちろん、さらにより多いマイクログラムの抗原が、本発明に従うワクチンのワクチン投与量中に置かれうるが、該ワクチンにより得られた保護がより多い投与量によって改善されないならば、抗原装填の増加は必要とされるよりもより高価であるワクチンを結果するだけである。加えて、抗原の投与量を増すことは、結局は、注入部位での許容されない局所的反応をもたらすことがあり、これは回避されるべきである。
【0077】
本発明に従うワクチンは、表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされる(部分的に)精製された又は組み換えのタンパク質又はそれらの抗原的部分を含んでよく、ここで該組み換えタンパク質は好ましくは適当な宿主細胞における発現ベクターからの発現により生産され、該発現ベクターは、適当なプロモーターの制御下にある該遺伝子配列又はその免疫原的部分を有する。いくつかの適当な発現系が当技術分野で知られており、本発明に従うワクチンを調製する為の方法において用いられうる。
【0078】
本発明に従うワクチンは適当なアジュバントをさらに含みうる。多くのアジュバント系が当技術分野で知られており、例えば一般には水中油型アジュバント系(oil in water adjuvant systems)が用いられる。任意の適当な油が用いられてよく、例えばアジュバントにおける使用の為の当技術分野で既知の鉱油が用いられうる。該油相は、種々の油、鉱物油又は非鉱物油の適当な混合物も含みうる。適当なアジュバントは、ビタミンEを含んでもよく、任意的に1又はそれより多い油と混合されうる。水中油型アジュバント補助されたワクチンの水相は、抗原的物質を含むであろう。適当な調合物は通常は、約25〜60%の油相(40〜75%の水相)を含むであろう。適当な調合物の例は、30%の水相及び70%の油相又は50%のそれぞれを含有しうる。肺炎球菌の抗原を表す非組み換えのラクトコッカスに基づくワクチンが特に好ましい。ラクトコッカス由来のバクテリアの形をした粒子は生きておらず、及び、指定されたグラム陽性Enhancer Matrix(GEM)粒子である(Van Roosmalen, M.L. et al., 2006, Methods 38:144-149)。これらのGEM粒子は、表面タンパク質を奪われており、そして、細胞内含有物が大部分は分解されている(Bosma, T. et al., 2006, Appl. Environ. Microbiol. 72:880-889)。該GEM粒子は、肺炎球菌タンパク質の為の固着及びデリバリービヒクルとして用いられうる(Audouy, S.A.L. et al., 2007, Vaccine 25(13):2497、を参照されたい)。
【0079】
本発明のワクチン調合物は、本発明の予防方法において、該調合物を対象へと皮下に、筋肉内に、鼻腔内に、皮内に、静脈内に、経皮的に、経粘膜的に、経口的に、又はリンパ節へ直接に導入することによって該対象を免疫することにより用いられうる。他の実施態様において、該組成物は、ワクチン接種をしたい局所的な病原体病原巣の近くで、局所的に施与されうる。
【0080】
本発明はさらに、肺炎球菌感染症に対する対象の保護が意図されたワクチンの製造方法を提供し、ここで該ワクチンは、そのための医薬的に許容できる希釈剤、キャリア、賦形剤又はアジュバントと一緒にされ、その結果1回の投与イベントにおいて少なくとも20μgのタンパク質の用量を与えることができる調合物が提供される。
【0081】
本発明に従う(方法により調製された)ワクチンは、肺炎球菌感染症に対して対象を保護する為の方法において用いられうる。
【0082】
十分な保護を与える為に、該ワクチンは好ましくは、2ショットのワクチン接種レジメンで投与され、第1のショット(プライミングワクチン接種)及び第2のショット(ブースティングワクチン接種)が該対象に、約3週の間隔で与えられる。このようにして、該対象は、肺炎球菌感染症に対する十分な保護を得るであろう。該ワクチン接種は若い子供にとって非常に好ましい。
【0083】
本発明に従うワクチンは、Streptococcus pneumoniaeに対する抗体を生じさせることができる1より多い抗原を含有しうる。これらの抗原は、表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質から選ばれてよく、又は、追加的に既知の抗原、例えば上記イントロダクションにおいて記載されたものなど、が添加されうる。
【0084】
さらに、表0、1及び/又は2の遺伝子及び/又は該遺伝子によりコードされたタンパク質は、小さな化学的分子についての優れた標的を与える。新規抗生物質化合物を発見する為に、これらの遺伝子及びタンパク質のいずれかによるスクリーニングが適当だろう。
【実施例1】
【0085】
A.動物の感染症モデル
【0086】
1.1.1.マウス感染症モデル
【0087】
9週齢のメスの非近交系CD−1マウス(Harlan, Horst, オランダ)が、マウス感染症実験のために用いられた。菌血症モデルにおいて、マウスは、尾静脈に100μlの接種材料を感染させられた。感染後の既定の時(0.5、12、及び24時間)に、マウスの集団が麻酔注入により犠牲にされ、そしてバクテリアが後眼窩穿刺により血液から回収された。該血液中の生きているバクテリアの数が、アガープレート上の一連の希釈のプレーティングにより決定された。すべてのマウス感染症実験は、Radboud University Nijmegen Medical Centre Committee for Animal Ethicsの承認によって実施された。
【0088】
1.1.2.ウサギ感染症モデル
【0089】
約2,500gの重量の非近交系ニュージーランドホワイトラビットが、ウサギ髄膜炎感染症モデルのために用いられた。実験の前日に、ウサギは定位固定フレームにおける固定のために準備された。ウサギは、皮下へのドルミカム0.5ml/kg(ミダゾラム5mg/ml)により、そして10分後、筋肉注射によるHypnorm0.35mg/kg(クエン酸フェンタニル+フルアニソン)により麻酔された。耳、頭皮及び首が剃られ、そして皮膚が消毒された。それぞれのウサギについて、約2cmの切開が前頭部でなされ、そして、頭皮が鈍的切除により露出された。正方形を画する4つの穿孔が作られ、そして、4つのねじが表面に対して直角にねじをしめられた(2.5〜3回転)。引き締めねじを埋め込んでいるアクリルヘルメットが、歯科鋳造材料から、ウサギの頭皮上に直接に成形され、そして、該ヘルメットが水を流しながら冷却されながら硬化した。ウサギは、それらのケージへと戻されて、実験が始まるまで16〜18時間休ませた。術後期間において、手術手順の終わりでの注入におけるように、ブプレノルフィンが痛み処置の為に与えられた。実験の日、ウサギは、皮下にウレタン3.5ml/kg(ジメチル−アクリレート50%、1.75g/kg)により麻酔された。静脈カテーテルが、左耳静脈に施与され、そしてMebumal約0.5〜1ml(ペントバルビタール50mg/ml)が、ウサギが眠りそして深く麻酔されるまで、ゆっくりと注入された。三方活栓が、該静脈カテーテルに接続され、そして補助的麻酔の為のペントバルビタールを有するシリンジ並びにフラッシングの為のヘパリン1UI/mlを有する等張的NaClを有するシリンジが該栓に接続された。ウサギは1〜2時間毎に観察された。補充の麻酔の必要性が生じたならば(尾を圧迫したときの反応)、追加の0.2mlのMebumal(ペントバルビタール50mg/ml)が与えられた。動脈カニューレが右耳動脈に施与され、そして、実験をとおしての血液サンプリングの為に用いられた。ボルトは、該アクリルヘルメット中に埋め込まれた締め上げねじへと留められ、そして、定位固定フレーム中のウサギの固定の為に用いられた。ウサギは実験を通じて固定されたままであった。大槽が、該定位固定フレームに留められた脊髄カニューレにより穿刺された。0.2mlのCSFが除去され、そして、20μlビーフブロス(beefbroth)中に懸濁されたバクテリア細胞のバクテリア接種材料が注入された。該カニューレは、実験を通じて留置されたままであり、繰り返しのCSFサンプリングの為に用いられた。バクテリアの接種後の既定の時点で(3、9及び15時間)、0.3mlのCSF及び1〜2mlの血液が吸引され、そして、EDTA/エッペンドルフチューブへと移された。15時間後、サンプリング実験が、過剰投与量のMebumal(1ml中の50mg)によりウサギを安楽死させることにより終えられた。すべてのウサギ感染症実験は、Danish Animal Inspectorate (Dyreforsoegstilsynet)による承認により実施された。
【0090】
B.ゲノムアレイフットプリンティング
【0091】
DNA単離。染色体DNAが、標準的なプロトコールを用いたセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)抽出により、肺炎球菌培養物から単離された。
【0092】
トランスポゾン変異体ライブラリーの生成。in vitroトランスポゾン突然変異生成の為に、1μgの肺炎球菌DNAが、精製されたHimarC9トランスポザーゼの存在下において、スペクチノマイシン耐性を与えるmarinerトランスポゾンの為のドナーとしての、0.5μgのプラスミドpR412T7(Bijlsma, J.J.E. et al., 2007, Appl. Environm. Microbiol. 73(5):1514-1524)と一緒にインキュベートされた。得られた転位産物の、T4DNAポリメラーゼ及びEscherichia coli DNAリガーゼによる修復後、該DNAはTIGR4株の形質転換の為に用いられた。プレコンピテントな(precompetent)Streptococcus pneumoniae細胞ストックの調製及び形質転換は、本質的に記載されたとおりに実施された。簡潔に言うと、cCAT培地がいくつかのコロニーを接種され、そして、620nm(OD620)で0.25〜0.3の光学密度へと増殖させられた。CTM培地中の培養物の30倍希釈後、細胞が、0.1のOD620へと増殖させられ、ペレット化され、15%グリセロールを含有する0.1体積のCTM−pH7.8中に再懸濁され、そして、−80℃で貯蔵された。形質転換の為に、プレコンピテントTIGR4細胞が、15分間、37℃で、100ng/mlのCSP−2を補われた10倍体積のCTM−pH7.8中で増殖させられた。DNAの添加後、培養物は、30分間、32℃でインキュベートされ、続いて、37℃で2時間インキュベーションされた。150μg/mlスペクチノマイシンを有する選択的プレート上での一晩の増殖後、該トランスポゾン変異体により形成されたコロニーの要求された数が、該プレートからこすりとられ、プールされ、スペクチノマイシンを補われた20mlのGM17倍地中で対数増殖中期へと増殖させられ、そして−80℃で貯蔵された。
【0093】
プローブ生成、標識及びマイクロアレイハイブリダイゼーション
チャレンジの及び非チャレンジの変異体ライブラリーからの染色体DNAが、AluIエンドヌクレアーゼにより消化された。得られたDNA断片が、Qiagen MinEluteカラムを用いて精製され、そして、Ambion T7 MegaScript キットを用いたin vitro T7 RNAポリメラーゼ反応の為の鋳型として用いられた。DNAseI処理による鋳型DNAの除去後、RNAは、Qiagen RNeasy MinEluteカラムを用いて精製された。蛍光Cy3/Cy5標識化dUTPヌクレオチドが、Superscript IIIを用いた逆転写により組み込まれた。標識されたチャレンジのcDNAが、標識された非チャレンジのcDNAと混合され、そして、GFX 及び Microcon-30 スピンカラムを用いた洗浄及び限外ろ過により精製された。試料は、Slidehybバッファー1中に懸濁され、そして、肺炎球菌マイクロアレイへと、16時間、45℃でハイブリダイズされた。この研究において用いられたマイクロアレイは、記載されたとおりに構成され、そして、Streptococcus pneumoniae TIGR4の2,087のORF並びにStreptococcus pneumoniae株D39、R6、G54、23F、OXC14、INV200及びINV104Bに特異的ないくつかの70−merオリゴ(全て二重にスポットされた)を表すアンプリコンを含む。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイが、2×SSC、0.25%SDSにより5分間洗浄され、続いて1×SSC及び0.5×SSCによりそれぞれ5分間の2つの洗浄が行なわれた。最後に、スライドは、H2O中に浸され、そして、5分間の50×gでの遠心により乾燥された。
【0094】
マイクロアレイデータ分析。デュアルチャンネルアレイイメージが、GenePix 4200ALマイクロアレイスキャナーで得られ、そして、GenePix Pro ソフトウェアにより分析された。スポットは、低い質のものを同定する為に視覚的に選別され、そして、分析の前に該データセットから除かれた。Streptococcus pneumoniae R6株についてユニークであるオープンリーディングフレームを表すオリゴマースポットにより得られたハイブリダイゼーションシグナルに基づく正味の平均強度フィルター(net mean intensity filter)が、全ての実験において適用された。スライドデータは、MicroPrePを用いて処理され及び標準化された。さらなる分析が、Student's t検定のCyber-T インプルメンテーション(implementation)を用いて実施された。このwebに基づくプログラムは、全てのレプリケート内(二重のスポット)及びレプリケート間(異なるスライド)の比、遺伝子当たりの平均の比、及び該平均の比に割り当てられた標準偏差及び(Bayesian)p値を一覧にする。該菌血症モデルにおける条件的必須遺伝子の同定の為に、最小の6の信頼できる測定値及びBayesian p値<0.001を有する遺伝子だけが含まれた。さらに、2つの時点の最小における3.0、又は1つの時点における5.0、の平均の倍率変化(fold-change)カットオフが適用された。髄膜炎モデルにおける条件的に必須の遺伝子の同定の為に、6又は8の測定値が利用可能である場合にそれぞれ、Bayesian p値<0.001及び最小の5又は6の信頼できる測定値を有する遺伝子が含まれた。さらに、2つの時点の最小における2.5、又は1つの時点における4.0、の平均の倍率変化(fold-change)カットオフが適用された。
【0095】
In silico分析。遺伝子のアノテーションが、TIGR Comprehensive Microbial Resource database (http://cmr.tigr.org/tigr-scripts/CMR/CmrHomePage.cgi)から得られた。GAF選別において同定された遺伝子によりコードされたタンパク質の細胞内局在のコンピュータによる予測が、いくつかの予測サーバ、例えば、SignalP3.0(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP)、PSORTb(http://www.psort.org)及びTMHMM(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM)など、を用いて実施された。
【0096】
C.実験の設計
【0097】
1.3.1.血流中での生存の為に必須の遺伝子
【0098】
血液中での生存の為に、in vivoで特異的に、肺炎球菌にとって必須である遺伝子を同定する為に、1,000〜2,000の独立したトランスポゾン変異体コロニーから成る4つの独立したStreptococcus pneumoniae TIGR4 marinerトランスポゾン変異体ライブラリーが、感染症のマウス菌血症モデルにおける、12のCD−1マウスの集団を感染させる為に用いられ、例えば1×10コロニー形成ユニット(CFU)を有する100μlの接種材料が静脈内に投与された。感染後3つの時点で、すなわち0.5、12及び24時間で、それぞれのグループからの4匹のマウスが犠牲にされ、そして血液が回収された。それぞれのバクテリア装填は、連続的な希釈をプレートすることにより決定され、そして残りが、15%グリセロール中に−80℃で貯蔵された。DNA単離及びGAFの前に、試料が、in vitroで、対数増殖中期へと、スペクチノマイシンを補われたGM17培地中で増殖させられた。血液試料のGAF分析は、採取された1又はそれより多い時点で、チャレンジの間に血液から消えたいくつかの変異体の同定を結果した。対応する遺伝子が、in vivo GAFにより同定された、可能性のある新規標的、すなわち血液中での生存の為に必須であるStreptococcus pneumoniae遺伝子、であると考えられうる。これらの遺伝子が、表1A−Bにおいて記載されている。
【0099】
1.3.2.脳脊髄液中での生存の為に必須である遺伝子
【0100】
CSFにおける生存の為に、in vivoで特異的に、肺炎球菌にとって必須である遺伝子を同定する為に、該菌血症モデルの為に用いられた、1,000〜2,000の独立したトランスポゾン変異体コロニーから成る4つの独立した同じStreptococcus pneumoniae TIGR4 marinerトランスポゾン変異体ライブラリーが、感染症のウサギ髄膜炎モデルにおける、4の非近交系ニュージーランドホワイトラビットの集団を感染させる為に用いられ、例えば1×10CFUを有する20μlの接種材料が大槽へと投与された。バクテリアの接種後3、9及び15時間で、0.3mlのCSFがそれぞれのウサギから回収された。それぞれのCSF試料中のバクテリア装填が、連続した希釈をプレートすることにより決定され、そして、残りが、15%グリセロール中に−80℃で貯蔵された。DNA単離及びGAFの前に、CSF試料が、in vitroで、対数増殖中期へと、スペクチノマイシンを補われたGM17培地中で増殖させられた。CSF試料のGAF分析は、採取された1又はそれより多い時点で、チャレンジの間にCSFから消えたいくつかの変異体の同定を結果した。対応する遺伝子が、in vivo GAFにより同定された、可能性のある新規標的、すなわち、CSF中での生存の為に必須であるStreptococcus pneumoniae遺伝子であると考えられうる。これらの遺伝子が、表2A−Bにおいて記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における肺炎球菌感染症に対する保護を与えるワクチン調合物であって、表0、1(1A及び1B)及び/又は表2(2A及び2B)に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質又はその機能的ホモログ若しくはその免疫原的部分の有効量をそのための医薬的に許容できる希釈剤、キャリア、賦形剤若しくはアジュバントの少なくとも1つと共に含有する前記調合物。
【請求項2】
該免疫原的部分が、該病原体の抗原決定基である、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
該タンパク質が、表0、表1A、表1B、表2A及び/又は表2Bにおいて記載された遺伝子によりコードされたものである、請求項1又は2に記載の調合物。
【請求項4】
該タンパク質が、表0、表1A若しくは表1B及び表2A若しくは表2Bの2つ又はそれより多くにおいて記載された遺伝子、より好ましくは表0において記載された遺伝子、によりコードされたものである、請求項3に記載の調合物。
【請求項5】
該調合物が、Streptococcus pneumoniaeにより引き起こされる肺炎、髄膜炎、中耳炎及び/又は敗血症に対する保護を与える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調合物。
【請求項6】
ワクチンとしての使用の為の、表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされたタンパク質又はその免疫学的部分。
【請求項7】
表0、1及び/又は2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片。
【請求項8】
対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的な処置の為の医薬としての使用の為の、請求項7に記載された抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片。
【請求項9】
対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的な処置の為の医薬の製造の為に、請求項7に記載された抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片、を使用する方法。
【請求項10】
請求項7に記載された抗体又はその断片、好ましくはヒト化抗体又はその断片と、医薬的に許容できるキャリアとを含有する医薬組成物。
【請求項11】
対象における肺炎球菌感染症の予防的又は治療的処置の為の方法であって、そのような処置が必要な対象に、請求項1〜5のいずれか1項に定義されたワクチン調合物の有効量及び/又は請求項10において定義された医薬組成物の有効量を投与することを含む前記方法。
【請求項12】
肺炎球菌ワクチン調合物を調製する方法であって、表0、1及び/又は表2に記載された遺伝子によりコードされるタンパク質又はその免疫原的部分の有効量と、そのための医薬的に許容できる希釈剤、キャリア、賦形剤又はアジュバントの少なくとも1つとを組合せることを含む前記方法。
【請求項13】
請求項10において定義された医薬組成物を調製する方法であって、請求項7に記載された抗体、好ましくはヒト化抗体、又はその断片の有効量と、医薬的に許容できるキャリアとを組合せることを含む前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505209(P2012−505209A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530973(P2011−530973)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050600
【国際公開番号】WO2010/041938
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088209)シュティヒティング カトリーク ユニベルシテイト,モア パティキュラリー ザ ラドブード ユニバーシティ ニーメゲン メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】