説明

UPCパラメータ設定機能を有するATM加入者回線収容装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はUPCパラメータ設定機能を有するATM加入者回線収容装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、UPC(Usage Parameter Control)パラメータの設定は、ATM(Asynchronous Transfer Mode)伝送網に加入者を収容する箇所において、加入者が契約値の範囲内で信号を伝送網側へ送出しているか監視し契約値を超えるトラヒックが網に流入した際に超えた分のATMセル信号を廃棄するUPC処理におけるパラメータ設定制御を、CPUがパラメータ記憶用レジスタに最大セル速度や平均セル速度等のパラメータを書き込むことで実現していた。ゆえに、パラメータが正しくレジスタに設定されているか否かをCPUが定期的にチェックすることでUPC機能の信頼性を保っていた。
【0003】図3は従来のATM加入者回線収容装置の一例を示すブロック図である。CPU13は外部(上位制御回路)からの指示によりパラメータの読み書きを行う。UPCパラメータレジスタ14はCPU13から設定されるパラメータを保持しUPC処理部12へパラメータ信号を出力する。ATMレイヤ終端部11はATM加入者回線信号を入力しATMセル同期検出を行う。UPC処理部12は加入者回線から入力されるATMセル流に対し加入者回線毎に設定された契約値以上のセルが流入していないかチェックし、違反したセルがあった場合そのセルを廃棄し、ATM網内回線信号を出力する。
【0004】UPCパラメータが正確に設定されていないと、加入者からの契約値以上の不正なトラヒック流入を阻止できず、ATM網内で輻輳等の障害が発生し、他の正規な加入者回線へ影響を与える恐れがある。この為、UPCパラメータの正当性確認をCPU13がUPCパラメータレジスタ14の設定値を定期的に読み出すことにより行う。もし、このチェックでパラメータ不正を検出したら、正しいパラメータをCPU13がUPCパラメータレジスタ14へ再書き込みし、正しいパラメータによるUPC処理を実現する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したUPCパラメータ設定手法は、CPUの定期的なパラメータ読み出しによりUPCパラメータをチェックしているため、CPUに何らかの異常が発生した場合、レジスタに設定されているUPCパラメータがどんな値になるか全く保証出来ない。また、CPUが正常に動作していてUPCパラメータレジスタに異常が発生した場合、レジスタ異常をCPUが検出するが、UPCパラメータレジスタのUPC処理部へのパラメータ信号出力を変更出来ない。ゆえに、異常発生時において、UPC処理部の誤動作による過剰トラヒック流入でATM網内における輻輳等の障害発生の可能性を排除出来ない。
【0006】本発明の目的は、ATM加入者回線収容装置のUPCパラメータ設定部における制御CPUおよびUPCパラメータレジスタに異常が発生した場合、確実にATM網内へ障害波及を阻止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のATM加入者回線収容装置は、ATM加入者から送出されたATM加入者回線信号に対しATMセル同期を含むATMレイヤ終端処理を行うATMレイヤ終端手段と;ATM網に流入するトラヒックを制限するためのパラメータであるUPCパラメータを記憶するパラメータ記憶手段と;前記パラメータ記憶手段に前記UPCパラメータとして第1のUPCパラメータを設定するとともに前記パラメータ記憶手段から設定した前記第1のUPCパラメータを読み出して前記パラメータ記憶手段の正常性を監視する制御手段と;前記制御手段からの制御信号により時間計測を再開始し予め定めた時間が経過した時に切替信号を出力する制限手段と;前記ATM網への過剰トラヒック流入を回避するために予め定めた第2のUPCパラメータを出力するパラメータ出力手段と;前記パラメータ記憶手段からの前記第1のUPCパラメータと前記パラメータ出力手段からの前記第2のUPCパラメータとを前記時限手段からの前記切替信号により選択的に出力する選択手段と;前記選択手段から出力される前記第1および第2のUPCパラメータのいずれかに基づき前記ATMレイヤ終端手段からのATMセル信号に対し加入者回線毎にUPC処理を行うUPC処理手段とを備える。
【0008】また、本発明のATM加入者回線収容装置は、前記選択手段の出力のパリティビットが付加された前記第1および第2のUPCパラメータのいずれかに基づいてパリティチェックを行い前記UPC処理手段に出力する検査手段を含む。
【0009】
【実施例】本発明について図面を参照して説明する。
【0010】図1は本発明の一実施例を示すブロック図である。図1において、ATMレイヤ終端部1はATM加入者回線信号を入力しATMセル同期検出行いATMセル信号を出力する。UPC処理部2はATMレイヤ終端部1からATMセル信号、セレクタ6からパラメータ信号を入力し、UPC処理を行いATM網内回線信号を発生する。CPU3は外部(上位制御回路)からUPCパラメータ設定命令を受けUPCパラメータレジスタ4に設定信号を出力しパラメータを書き込むのと、定期的にUPCパラメータレジスタ4の設定値を読み出しその良否を判定し、かつ、タイマー7にリセットのための制御信号を出力する。タイマー7は一定時間以上CPU3からリセット制御信号を受け取らないとセレクタ6に切替信号を出力する。セレクタ6はタイマー7からの切替信号によりUPCパラメータレジスタ4からの設定値か安全値出力部の安全値かを選択しパラメータ信号としてUPC処理部2へ出力する。安全値出力部5はATM加入者回線がATM網内に影響を与えないトラヒック量となるようなUPCパラメータ値を保持し、これを安全値としてセレクタ6に出力する。
【0011】この構成において、通常、CPU3が正常に動作している場合は、UPCパラメータレジスタ4の設定値が正しいかどうか、CPU3がある周期毎にUPCパラメータレジスタ4の内容を設定値読出信号として読み出しチェックする。チェック結果、何らかの原因で設定値が違った値に変化していればCPU3が正しいUPCパラメータ設定値をUPCパラメータレジスタ4へ再設定する。さらに、CPU3はUPCパラメータレジスタ4の設定値チェックの周期毎にタイマー7に対してリセット制御信号を出力し、その結果、タイマー7はリセットされる。タイマー7はCPU3からのリセット周期より長い経過時間を検出するが、CPU3からリセットされると再び経過時間の測定を最初からやり直す。タイマー7は経過時間の測定途中にはセレクタ6に対しUPCパラメータレジスタ4からの設定値をパラメータ信号として選択するような切替信号を出力する。ゆえに、CPU3が正常であればUPC処理部2へ出力されるパラメータ信号は、常にUPCパラメータレジスタ4から出力される設定値となる。CPU3が正常に動作しなくなった場合、タイマー7へリセット制御信号が出力されなくなるので、タイマー7は経過時間を検出する。そうなるとタイマー7からセレクタ6に対し、安全値出力部5からの安全値をパラメータ信号として選択するような切替信号が出力される。この結果、UPC処理部2にUPCパラメータ信号として安全値が入力されるので、ATM網内へ悪影響を与えるようなUPC処理部2の動作を回避出来る。
【0012】一方、UPCパラメータレジスタ4に異常が発生した場合、CPU3はUPCパラメータレジスタ4の設定値チェックで、設定値を再設定しても設定値読出信号が設定値と一致しないことで異常を検出する。そして、タイマー7に対しUPCパラメータレジスタ4の異常発生を通知する制御信号を出力する。CPU3からUPCパラメータレジスタ異常通知信号を受けたタイマー7は、セレクタ6に対し、安全値出力部5から安全値をパラメータ信号として選択するような切替信号を出力する。この結果、CPU異常時と同様に、UPC処理部2にUPCパラメータ信号として安全値が入力されるので、ATM網内へ悪影響を与えるようなUPC処理部2の動作を防止し異常なトラヒック流入を回避出来る。
【0013】図2は本発明の別の実施例を示すブロック図である。図2では、セレクタ6とUPC処理部2との間に、パラメータ信号に対してパリティチェックを行うパリティ検査部9が設けられている。CPU3がUPCパラメータレジスタ4の異常を検出するまでに最大で、設定値チェック処理1周期分の検出時間がかかる。また、CPU3に異常が発生しタイマー7が経過時間の経過を検出するまでに経過時間分の検出時間が掛かる。この検出時間の間、UPC処理部2に与えられるパラメータ信号の正当性を保証出来ない。また、CPU3およびUPCパラメータレジスタ4が正常に動作している場合でも、ノイズ等によるパラメータ信号の単発的なエラー付加に対し、UPC処理部2の正常動作を保証出来ないという問題がある。
【0014】本実施例では、CPU3がパリティビットを付加したUPCパラメータ設定信号をUPCパラメータレジスタ4に設定し、UPCパラメータレジスタ4がパリティビット付きの設定値をセレクタ6へ出力する。安全値出力部5から出力する安全値にもパリティビットを付加する。ゆえに、セレクタ6から出力されるパラメータ信号にパリティビットが付加されている。パリティ検査部9でパラメータ信号に対するパリティチェックを行い、この結果を検査信号としてUPC処理部2へ出力する。UPC処理部2では、エラー有りの検査信号をパリティ検査部9から受信したとき、入力したパラメータ信号を使わずにエラー発生直前に受信したエラー無しのパラメータ信号を使ってUPC処理を継続するか、出力信号であるATM網内回線信号の出力を一時停止することにより、上記パラメータ信号の正当性非保証の問題を回避し、ATM網内へ悪影響を与えるようなUPC処理部2の動作を防止し異常なトラヒック流入を阻止出来る。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、制御手段とUPCパラメータを記憶している記憶手段との少なくとも一方に異常が発生した際、安全なUPCパラメータ値をUPC処理手段へ与えるため、ATM網内への異常なトラヒック流入を阻止できる。また、UPCパラメータ信号に単発的なエラーが重加された場合でも、UPCパラメータ信号にパリティ検査を行い、その結果によりUPC処理手段がパラメータ信号の更新可否を決定するので、常に高信頼なUPC処理を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の別の実施例を示すブロック図である。
【図3】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ATMレイヤ終端部
2 UPC処理部
3 CPU
4 UPCパラメータレジスタ
5 安全値出力部
6 セレクタ
7 タイマー
8 UPCパラメータ設定部
9 パリティ検査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ATM加入者から送出されたATM加入者回線信号に対しATMセル同期を含むATMレイヤ終端処理を行うATMレイヤ終端手段と;ATM網に流入するトラヒックを制限するためのパラメータであるUPCパラメータを記憶するパラメータ記憶手段と;前記パラメータ記憶手段に前記UPCパラメータとして第1のUPCパラメータを設定するとともに前記パラメータ記憶手段から設定した前記第1のUPCパラメータを読み出して前記パラメータ記憶手段の正常性を監視する制御手段と;前記制御手段からの制御信号により時間計測を再開始し予め定めた時間が経過した時に切替信号を出力する制限手段と;前記ATM網への過剰トラヒック流入を回避するために予め定めた第2のUPCパラメータを出力するパラメータ出力手段と;前記パラメータ記憶手段からの前記第1のUPCパラメータと前記パラメータ出力手段からの前記第2のUPCパラメータとを前記時限手段からの前記切替信号により選択的に出力する選択手段と;前記選択手段から出力される前記第1および第2のUPCパラメータのいずれかに基づき前記ATMレイヤ終端手段からのATMセル信号に対し加入者回線毎にUPC処理を行うUPC処理手段と;を備えることを特徴とするUPCパラメータ設定機能を有するATM加入者回線収容装置。
【請求項2】 前記選択手段の出力のパリティビットが付加された前記第1および第2のUPCパラメータのいずれかに基づいてパリティチェックを行い前記UPC処理手段に出力する検査手段を含むことを特徴とする請求項1記載のUPCパラメータ設定機能を有するATM加入者回線収容装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【特許番号】第2788866号
【登録日】平成10年(1998)6月5日
【発行日】平成10年(1998)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−69221
【出願日】平成7年(1995)3月28日
【公開番号】特開平8−265339
【公開日】平成8年(1996)10月11日
【審査請求日】平成7年(1995)3月28日
【出願人】(000161253)宮城日本電気株式会社 (7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平6−62037(JP,A)
【文献】特開 平5−110585(JP,A)