Vリブドベルトおよびその製造方法
リブ表面が帆布により被覆されたVリブドベルトが提供される。帆布は所定の2方向に伸縮自在である。Vリブドベルトの製造方法も提供される。この方法は、マンドレルにベルトマトリクスを配置し、マンドレルの周囲に配置されたベルトマトリクスの外周に帆布を配置し、マンドレルを複数の溝が内周面に設けられたシェルの内側に装置し、ベルトマトリクスおよび帆布を、シェルの内周面に向けて押し出してマルチリブド形状をなす内周面に帆布を押し付け、帆布と一体的にベルトマトリクスを加硫する。帆布は、マルチリブド形状に合わせて伸張可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力の伝達に用いられるVリブドベルト、およびVリブドベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Vリブドベルトの製造方法としては、以下の2つの方法が知られている。1つの方法では金型の周囲に配置(装着)された材料を加硫処理した後にベルト面を研磨してリブを削り出す。もう1つの方法、いわゆるモールデッド製法では、所定のマルチリブ形状を備えた金型でゴム材料が成型されて加硫処理され、多数のリブが形成される。リブゴムがリブ表面に直接晒されたベルトの伝達性能、発音性能などのベルトの基本性能は、主にリブ表面材料の物性によって支配され、すなわちリブゴム材とリブゴム材に配合される短繊維などの配合物に影響される。しかし、リブの表面は磨耗により経時的に劣化する。モールデッド法を用いた場合には、リブ表面に不織布を覆い被せるものもあるが(特許文献1)、必ずしも十分な耐久性があるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−532513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のVリブドベルトなどの動力伝達ベルトにおいては、リブなどの表面は劣化し易く、安定したリブ表面状態を維持することが困難である。また、使用とともに摩擦係数が高くなり発音し易くなるという問題がある。
【0005】
したがって、本発明は、Vリブドベルトのリブ表面の耐久性を高め所望のリブ表面状態を持続させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの目的からは、リブ表面が帆布により被覆されたVリブドベルトが提供される。帆布は2方向に伸張可能である。
【0007】
本発明の別の目的からは、Vリブドベルトの製造方法が提供される。この方法は、マンドレルにベルトマトリクスを配置し、マンドレルの周囲に配置されたベルトマトリクスの外周に帆布を配置し、マンドレルを複数の溝が内周面に設けられたシェルの内側に装置し、ベルトマトリクスおよび帆布を、シェルの内周面に向けて押し出してマルチリブド形状をなす内周面に帆布を押し付け、帆布と一体的にベルトマトリクスを加硫する。帆布は、マルチリブド形状に合わせて伸張可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の目的と利点は、添付された図面を参照した以下の説明により、より良く理解されるであろう。
【図1】本発明の一実施形態であるVリブドベルトのベルト長手方向に垂直な面に沿った断面図である。
【図2】本実施形態のベルト成型に用いられるマンドレルおよびシェルの外観を模式的に示す斜視図である。
【図3】加硫処理前におけるマンドレル、シェルなどの配置を模式的に示す半径方向に沿った部分拡大断面図である。
【図4】加硫時におけるマンドレル、シェルの配置を模式的に示す半径方向に沿った部分拡大断面図である。
【図5】織布の伸張特性を計測するための配置を模式的に示す断面図である。
【図6】帆布として実施例、比較例において用いられたナイロン製の織布、編布の伸張特性を測定する方法を説明するシート状の帆布の平面図である。
【図7】実施例1〜6と比較例1、2のシート状帆布に対する軸方向(ベルト幅方向)への引張試験の結果を示すグラフである。
【図8】実施例7〜10と比較例3、4のシート状帆布に対する周方向(ベルト長手方向)への引張試験の結果を示すグラフである。
【図9】逆曲げの下での耐久試験に使用される走行試験機のレイアウトである。
【図10】実施例17〜21と比較例5、6の試験を行ったベルト伝動システムのレイアウトである。
【図11】帆布の伸び(%)とリブ表面における摩擦係数(COF)の間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態であるVリブドベルトのベルト長手方向に垂直な面の断面図である。図1を参照して本実施形態のVリブドベルトの構造について説明する。
【0011】
Vリブドベルト10は、マルチリブ形状に成形されたリブゴム層11、芯線12が埋設された接着ゴム層13、接着ゴム層13の背面に一体的に貼着された背面帆布14から構成される。更に、リブゴム層11の表面は、織布または編布などからなる帆布15によって覆われる。
【0012】
帆布15は、十分な伸縮性を備えた素材から選択される。更に、リブ表面に必要な性能(例えば耐摩耗性、耐熱性、摩擦係数の安定性、耐水性、発音性)を考慮して、十分なベルト耐久性を維持できる素材が選択される。
【0013】
例えば、帆布15の素材は、ポリウレタンなどの弾性ヤーン/ファイバと、少なくとも1種類の非弾性ヤーン/ファイバを含み、非弾性ヤーン/ファイバには、セルロースベース/非セルロースベース、あるいはそれらを混合したヤーン/ファイバが含まれる。セルロースベースヤーン/ファイバと非セルロースベースヤーン/ファイバの混合は、2種類のファイバを紡績または撚りにおいてブレンドし、あるいは布製造工程において異なる種類のヤーンを供給することにより行われる。
【0014】
セルロースベースのファイバ/ヤーンは、コットン、リンネル、ジュート、大麻、マニラ麻、竹を含む天然ファイバ、レイヨンとアセテートを含む人工ファイバ、あるいはこれらの組合せである。
【0015】
非セルロースベースのファイバ/ヤーンは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、アラミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリケトン、PTFE、e−PTFE、PPS、PBO、ウール、シルクや、これらの組合せである。
【0016】
改良された濡れ特性を得るには、帆布は、ポリウレタンなどの弾性体である第1ヤーンとコットンなどのセルロースからなる第2ヤーンを含む2−ヤーン構造を備える。また、弾性ヤーン/ファイバと、セルロースヤーン/ファイバと、他のヤーンとを含む3−ヤーン構造以上を用いてもよい。第3ヤーンは耐摩耗性への要求にしたがって選択されてもよい。
【0017】
すなわち、第1ヤーンは、ポリウレタンなどの弾性ヤーンであり、帆布に高レベルの伸縮性を与える。第2および第3ヤーン/ファイバは、異なる種類のヤーンやファイバを混合したものであってもよく、例えばセルロースヤーン/ファイバと非セルロースヤーン/ファイバの組合せであり、異なる比率で混合される。ある種のものは、非セルロースヤーン/ファイバであり、耐摩耗性や耐久性を与える。別の種類は、優れた濡れ特性を与えるセルロースヤーン/ファイバである。ある場合には、セルロースヤーン/ファイバのみで適切な耐久性と濡れ特性を与えることができる。
【0018】
セルロースベースヤーン/ファイバと非セルロースベースヤーン/ファイバの混合率は、例えば100:0〜0:100の範囲にある。セルロースベースヤーン/ファイバが5%〜100%、そして非セルロースベースヤーン/ファイバが0%〜95%である比率が好ましい。更に、非弾性ヤーン/ファイバに対する弾性ヤーン/ファイバの比率は、例えば2%〜40%である。
【0019】
次に図2〜図4を参照して、Vリブドベルト10のモールデッド製法を用いた製造過程について説明する。図2は、本実施形態のVリブドベルト10の成型に用いられるマンドレル(内金型)およびシェル(外金型)を模式的に示す斜視図である。図3、図4は、マンドレルとシェルの配置を示す半径方向に沿った模式的な部分拡大断面図である。図3は加硫前の配置を示し、図4は加硫時の配意を示す。
【0020】
円筒形のマンドレル20の外周面にはゴムパッド22が装着されており、ゴムパッド22の外側には、ベルト材料23(背面帆布14、接着ゴム層13を形成する接着ゴムマトリクス、芯線12、リブゴム層11を形成するリブゴムマトリクスを含む)が配置(装着)される。また、ベルト材料23の外側には帆布15が配置(装着)される。本実施形態では、帆布15は円筒状であり、シームレスまたはシーム付の帆布である。しかし、円筒状でない帆布であっても、帆布15をその両端が重なるようにマンドレル20の周りに巻き付けることにより用いることも可能である。ベルト材料23および帆布15が装着されたマンドレル20は、円筒形のシェル21の内側に挿入され同心的に配置される。このとき、帆布15とシェル21の内周面の間には、図3に示されるようにクリアランスdが設けられる。
【0021】
なお、帆布15には、性能を高めるために前処理が施され、前処理には、熱水や化学薬品による洗浄、ヒートセット、染色、接着用処理、ラミネーティングなどがある。接着用処理では、帆布のゴム材料への接着性を高めるため、またはアプリケーションにおいて要求される性能を得るために、ゴム糊、RFLなどの接着剤、樹脂(例えばフェノールやフッ素樹脂)などによる処理が帆布15に通常施される。しかし、このような付加処理を施さない場合もある。
【0022】
シェル21は、内周面にVリブ形状の多数の溝21Aを備え、溝は周方向に沿って設けられ、Vリブドベルト10のマルチリブ形状を成形するように配置される。加硫時、ゴムパッド22とマンドレル20の間には、空気、窒素、オイル、水や蒸気など、温度が制御された流体媒体が高圧力で供給され、ゴムパッド22は径方向外側に膨張される。これにともなって、ベルト材料23および帆布15は径方向外側に向けて押し出され、シェル21の内周面に押圧される。このとき帆布15は、ベルト材料23のリブゴム層11とともに変形されてシェル21の内周面に形成された溝21Aに押し込まれ、図4に示されるように、マルチリブ形状に成形される。また、帆布15はリブゴム層11と加硫時に圧着または接着され、帆布15とリブゴム層11の表面は一体化される。
【0023】
すなわち、本実施形態のモールデッド製法は以下の手順で実施される:マンドレルの周りにベルト材料を配置(装着)し、ベルト材料の外周を帆布で覆い、ベルト材料および帆布が装着されたマンドレルをシェルの内側に装置し、ベルト材料および帆布をシェルの内周面に向けて押し出してマルチリブド形状をなす内周面に押し付けながら加硫を行う。なお、ベルトマトリクスは、ベルトマトリクスが帆布へ浸透した後で加硫される。
【0024】
図3、図4では溝21Aは、3本のみ示される。しかし、実際には図2に示されるように多数の溝がシェル21の内周面全体に渡って設けられる。また、マルチリブ形状に加硫成形された成型品は、シェル21から取り外された後、リブに沿って所定のベルト幅で切断され、複数のVリブドベルト10が得られる。
【0025】
以上のベルト製造過程において、ベルト材料23および帆布15は、円筒形のマンドレル20の径方向外側に向けて押し出されるので、帆布15は円筒形金型の周方向、すなわちベルト長手方向に伸張される。このとき、リブゴムおよび帆布15のシェルの溝21Aの形状に合わせた変形により、帆布15は、円筒形金型の軸方向、すなわちベルト幅方向に伸張される。
【0026】
図5に模式的に示されるように、マンドレル20の周りに配置(装着)された帆布15の初期位置(帆布15のモルディング処理開始時の位置)をマンドレル20の中心から半径Rの位置とし、帆布15の初期位置とシェル21に設けられた溝21Aの底面(Vリブドベルトのリブ先に対応)の間の距離をDとすると、帆布15のマンドレル周方向(ベルト長手方向)の長さは、初期ラジアル長さ2πRから伸張ラジアル長さ2π(R+D)へと変化する。これにより、帆布15の周方向(ベルト長手方向)への伸び率は、伸張ラジアル長さ2π(R+D)と初期ラジアル長さ2πRの差を初期ラジアル長さ2πRで割った値D/Rとして得られる。なお、帆布の周方向への伸張には、金型にフィットするのに必要な伸びが含まれる。
【0027】
一方、帆布15の軸方向(ベルト幅方向)への伸び率は、(N×A−L)/Lとして表される。ここでAは溝21Aの軸方向に沿ったリブ輪郭線長さ(図5参照);Nは金型に形成されたリブの数;Lは溝が形成され面の軸方向への長さ(リブが形成されるベルト幅方向への全長)である。リブピッチをpを用いると、LはL=N×pと表される。したがって、軸方向(ベルト幅方向)への帆布の伸び率は、(A/p−1)となる。なお、リブ輪郭線長さAは、1つのリブ断面の長さに対応し、図5では溝21Aに沿った太線で示され、長さAはリブ形状によって変化する。
【0028】
周方向や軸方向への帆布15の伸び率は、リブ面に貼着された帆布が、Vリブベルトにおいて要求される所定の特性を維持する値とされる。第1実施形態において、帆布15がリブ表面において帆布としての所定の機能を維持する条件とは、例えばベルト材料23が加圧時に帆布15の布目を完全に透過してしまわないことである。
【0029】
本実施形態のモールデッド製法を用いたVリブドベルトを製造では、帆布には、特定の条件(単位長さあたりの引っ張り力)の下、周方向(ベルト長さ方向)にD/Rよりも大きい伸び率を示し、軸方向(ベルト幅方向)に(N×A−L)/L(またはA/p−1)よりも大きい伸び率を示すものが用いられる。すなわち、リブ表面において帆布が一定の特性を維持するように、2つの方向への伸縮性の範囲が規定される。この範囲については、実施例と比較例とを対比して後で詳述する。
【0030】
マンドレル周方向に対して、与えられた条件においてリブ形状とマンドレルの大きさによって規定される上記伸び率に達しない帆布であっても、シームレスまたはシームされた筒状帆布を用いない場合であれば、帆布シートの両端を重ね合わせたり、あるいはベルト長手方向において帆布に覆われていない隙間の存在を許容したりすることによって、場合によっては利用可能である。
【0031】
一方、マンドレル軸方向に対して帆布が十分伸張しないと、帆布はシェルのリブ凹みに沿って変形されるものの、シェルに接する位置まで変位されない。更に、リブゴム材は帆布の布目を通り抜けてシェル内に充填される。この結果、帆布はリブゴム層内に完全に埋没され、リブゴムが直接リブ表面を形成する。したがって、本実施形態のようにベルト材料をシェルに押圧して首尾よくマルチリブベルトを製造し、リブ表面を適正に帆布で被覆するには、少なくとも軸方向に対して十分な伸び(加圧時、帆布がシェル金型に接触し、金型の形状に沿って変形するのを許容する十分な伸縮性)を示す帆布を用いる必要がある。
【0032】
このような帆布としては、上述された編布や織布が利用できる。織布の場合には、縦糸または横糸、あるいは縦横糸双方に、弾性ヤーンや、巻縮加工、ウーリー加工、タスラン加工、インタレース加工、カバーリング加工や、それらの組合せが用いられたテクスチャードヤーンが含まれる。なお、上記伸び率はベルト製造上最低限必要な値である。実際にはベルトが使用される条件に合わせて、よりも大きな伸びが必要である。例えば、ベルト長手方向には、小型プーリでの曲げや逆曲げに対して、付加的な伸び率が必要である。
【0033】
以上のように、第1実施形態によれば、不織布などに比べ耐久性に優れた織布や編布などの帆布をリブ表面に一体的に設けることができるので、ベルトの表面の耐久性を高め、表面状態を長期にわたり維持することが可能となる。同時に、スリップあるいは異音の発生を抑えることができる。特に本実施形態では、モールディングと加硫の工程において、帆布をリブ面に一体的に貼着可能としているため、効率的にVリブドベルトのリブ表面の耐久性を高め、リブ表面の状態を長期にわたり維持すことができる。
【0034】
次に、実施例と比較例を参照して、第1実施形態における帆布の伸び率を規定するための条件について説明する。
[実施例]
【0035】
まず、実施例において用いられるナイロン製の織布、編布の伸びが、実際のモールディングで用いられる金型の寸法で規定される伸び率と一致する伸び、伸び率を示すか否かを検証した。この試験において、実施例3ではシート状の織布が用いられ、実施例4〜6ではシート状の編布が用いられた。
【0036】
この確認試験において、シート状の帆布には、マンドレルの軸方向と周方向に合わせて縦横100mmの長さの十字線が描かれた。帆布はマンドレルに予め装着されたベルト材料の上に装着され、マンドレルとともにシェル内に装置された。そしてこれらの材料はモールデッド製法を用いてVリブドベルトへと成形された。加工は、マンドレルの軸方向(ベルト幅方向)に(N×A−L)/L(またはA/p−1)=0.8011(80.11%)、マンドレル周方向(ベルト長手方向)にD/R=0.0306(3.06%)となる条件の下で行われた。
【0037】
図6(a)は、十字線が描かれた加工前の帆布の模式的な平面図である。図6(b)は、加工後の十字線が描かれた帆布シートを展開した模式的な平面図である。帆布の伸張後、十字線の長さの測定には定規が用いられた。周方向(ベルト長手方向)の長さは102〜104mm(伸び率2〜4%)であり、軸方向(ベルト幅方向)の長さは173.12〜179.53mm(伸び率73.12〜79.53%)であった。何れの帆布シートの伸び率も、略これらの値に合致した。
【0038】
図7は、実施例1〜6と比較例1、2のシート状の帆布(織布および編布)に対して、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)に対応する方向に引張試験を行ったときの計測結果である。図7のグラフには、各試験片の伸張特性が示され、ここで、横軸は伸び率(%)、縦軸は、引っ張り方向に対して帆布の単位長さ(50mm)当たりに掛かる張力(N)である。
【0039】
実施例1〜3、および比較例1では、帆布として織布が用いられ、実施例4〜6、および比較例2では帆布として編布が用いられた。実施例1〜6の試験片は、それぞれ曲線E1〜E6で示される特性で引き伸ばされ、比較例1、2の試験片は、それぞれ曲線C1、C2で示される特性で引き伸ばされた。
【0040】
更に、実施例1〜6、比較例1、2の帆布を用いて、本実施形態のモールデッド製法により軸方向(ベルト幅方向)への伸び率:(N×A−L)/L(またはA/p−1)=0.8011(80.11%)となる条件の下、Vリブドベルトの成形を行った。実施例1〜6の帆布を用いたモールディングでは、Vリブ表面は帆布により適正に被覆された。しかし、比較例1、2の帆布については、加圧時にベルト材料が帆布の布目を透過してしまい、帆布がリブ表面に露出された状態にはならなった。
【0041】
図7のグラフと実施例1〜6、比較例1、2のVリブドベルトの成形試験結果とを参照すると、第1実施形態のモールデッド製法を用いてVリブドベルトを製造する場合に、リブ表面における帆布としての機能を果たすには、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率が(N×A−L)/L(またはA/p−1)のときに、帆布のマンドレルの軸方向(ベルト幅方向)への単位長さ当たりの張力が略250N/50mm(第1の値)以下である帆布を用いることが望ましいことが分かる。すなわち、本実施例では伸び率が略80%のとき、単位長さ当たりの張力が250N/50mm以下である帆布を用いることが望ましい。また、本実施例では、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率略80%のときに、帆布の単位長さ当たりの張力が200N/50mm以下であることがより望ましい。なお、これらのことは、軸方向(ベルト幅方向)に対して、250N/50mmにおいて、より好ましくは、200N/50mmにおいて80%以上の伸び率を示す帆布を選択することを意味する。
【0042】
図8、9を参照して、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への帆布の伸び率と、逆曲げを受けるベルトの耐久性との関係について説明する。
【0043】
図8は、実施例7〜10と比較例3、4の織布および編布に対して、マンドレル周方向(ベルト長手方向)に対応する方向に引張試験を行ったときの計測結果を示すグラフである。横軸は伸び率(%)、縦軸は、引っ張り方向に対して帆布の単位長さ(50mm)当たりに掛かる張力(N)である。比較例3、4および実施例7では織布が用いられ、実施例8〜10では編布が用いられた。実施例7〜10の試験片の伸張特性は、それぞれ曲線E7〜E10で示され、比較例3、4の試験片の伸張特性は、それぞれ曲線C3、C4で示される。
【0044】
実施例1〜6、比較例1、2のときと同様に、実施例7〜10、比較例3、4の特性を有する帆布を用いて、本実施形態のモールデッド製法を用いて、周方向に特定される伸張条件(D/R=0.0306(3.06%))の下、Vリブドベルトが成形された。本実施例では、Vリブドベルトは、目標耐久寿命を500時間として製造された。
【0045】
次に、実施例7〜10、比較例3、4の帆布を用いて製造されたVリブドベルトに対して、図9のレイアウトで示される走行試験機を用いて、逆曲げを受けるベルトの耐久試験(ベルト屈曲試験)を行った。
【0046】
図9の走行試験機は、VリブドベルトBが、原動プーリDR、従動プーリDN、テンショナプーリTENと、これらのプーリDR、DN、TENの間にそれぞれ配置された3つのアイドラプーリIDに掛け回されたものである。原動プーリDR、従動プーリDN、テンショナプーリTENの有効径は70.00mmであり、アイドラプーリIDの有効径は52.00mmであった。走行試験機は100°Cの雰囲気温度の下で走行され、原動プーリDRは5200RPMで回転された。また、ベルト軸荷重は588Nであった。
【0047】
比較例3、4のVリブドベルトの走行試験では、24時間以内にクラックが発生し、それぞれ328.4時間後、166.4時間後にリブ欠損又は多数のクラックの発生により試験を停止した。一方、実施例7、8のVリブドベルトにおいては、クラックはそれぞれ305時間後、524.2時間後に発生した。実施例7のVリブドベルトに対する試験では、650時間後に、クラックの数が(リブ数+1)個に達したときに試験を停止した。しかし、実施例8のVリブドベルトは1003.7時間の走行で3つのクラックが確認されたのみであった。また、実施例9、10については、400時間走行させてもクラックは全く検出されなかった。
【0048】
以上のことから、実施例7〜8の帆布を用いたベルトでは、ベルト逆曲げに対して十分な耐久性を得られたが、比較例3、4では十分な耐久性を得ることは出来なかった。したがって、図8のグラフからは、帆布がベルトの逆曲げに対して十分な耐久性を発揮するには、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への伸び率がD/Rのとき、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への単位長さ当たりの張力が略50N/50mm(第2の値)以下である帆布を選択することが望ましいことが分かる。すなわち本実施例においては、周方向(ベルト長手方向)への伸び率が略3%ときに、帆布の周方向(ベルト長手方向)の単位長さ当たりの張力が50N/50mm以下であることが望ましい。これは、周方向(ベルト長手方向)に、50N/50mmにおいて3%以上の伸び率を示す帆布を選択することを意味すると理解できる。
【0049】
表1〜3を参照して、実施例11〜16(Ex−11〜Ex−16)および比較例5、6(CE−5、CE−6)に対するVリブドベルトのスリップ試験および騒音試験の結果について説明する。
【0050】
表1は、実施例11〜16において使用された帆布の特性を示す。実施例11〜16は、編布によってリブ表面が被覆されたVリブドベルトである。一方、比較例5のリブ表面はティッシュ(不織布)で被覆され、比較例6のリブ表面には溝が彫られ、帆布は貼着けされなかった。実施例11〜14および16の帆布は、15%のポリウレタン(弾性ヤーン)を含んでおり、実施例15は30%のポリウレタンを含み、残りは非弾性ヤーンであった。非弾性ヤーンとしては、実施例11〜13、16が、コットンなどのセルロースヤーンを含み、実施例12〜15には、PETやPAなどの非セルロースヤーンが含まれていた。すなわち、実施例11と実施例14〜16は、2−ヤーン構造を備え、実施例12、13は3−ヤーン構造を備えた。表1における混合比率は、PU(弾性ヤーン)の含有量を除いたときのセルロースヤーンと非セルロースヤーンの比率である。また、表1には、各帆布の9.807N/25mmにおける長手方向への伸び、横方向への伸びがパーセントで示されるとともに、厚さ(mm)が示されている。なお、帆布には、ベルト幅方向に9.807N/25mm幅で80%よりも大きい伸び率を備え、ベルト長手方向に9.807N/25mm幅で10%よりも大きい伸び率を備えるものが用いられている。
【表1】
【0051】
表2には、実施例11〜16および比較例5、6において使用されるVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様が示される。幅方向の伸びおよび長手方向の伸びは、編布がベルトに貼着された後における伸びを示す。
【表2】
【0052】
表3にスリップ試験と騒音試験の結果を示す。
【表3】
【0053】
表3に示されるように、実施例11〜13、16では、新品、慣らし運転後の何れに対しても、セルロースヤーン(コットン)を含有したものが、スリップおよび騒音の両性能によい結果を示している。
【0054】
次に表4〜6および図10を参照して、騒音抑制力耐久試験の結果について説明する。表4は、実施例17〜21で用いられた帆布の特性を表1と同様の形で示す。また、表5は、実施例17〜21で用いられたVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様を表2と同様の形で示す。すなわち、表4、5の各項目は、表1、2のものと同じである。この試験では、実施例17〜21は、特性と設計仕様が表1、2に示される比較例5、6と比較された。
【表4】
【表5】
【0055】
図10は、実施例17〜21と比較例5、6が試験されたベルト伝動装置のレイアウトを示す。騒音抑制力耐久試験は、実際の補機駆動システムにおいて実行された。VリブドベルトはクランクシャフトプーリCRK、テンショナプーリTEN、オルタネータプーリALT、パワーステアリングポンププーリP_S、アイドルプーリIDR、エアコン用プーリA_Cに掛け回される。エンジン速度は、エンジン負荷を与えずに(パーキングに設定)アイドル速度に設定され、オルタネータはデューティ比100%となるように負荷が与えられた。プーリP_Sは、共通面の位置から4mmオフセットされ、2度のベルトズレ角を生じた。
【0056】
パワーステアリングポンププーリP_Sの手前(矢印Awで示される)に、4時間置きに水がベルトに掛けられた。試験は外気温の下、異音が検知されるまで実行された。
【0057】
騒音抑制力耐久試験の結果は表6に示され、数字は各実施例、比較例において異音が発生するまでの実際の経過時間である。表6に示されるように、コットンヤーンなどのセルロースヤーンを含む実施例17〜19では、高い騒音抑制力耐久性能を示した。
【表6】
【0058】
次に表7〜9を参照して、シームレスの円筒状織布を用いた本発明のVリブドベルトに対するスリップおよび騒音性能試験の結果について説明する。表7は、実施例22で用いられるシームレス織布、および比較例7(CE−7)で用いられるシームされた織布の特性を表1の形式で示す。実施例22の帆布は、28%の弾性ヤーン(PU)を含有し、残余はセルロースをベースとしたヤーン(コットン)であるが、比較例7は何れも含まなかった。表8は、実施例22と比較例7で用いられたVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様を表2の形式で示す。
【表7】
【表8】
【0059】
表9に示されるように、実施例22と比較例7の何れにおいてもスリップは発生しなかったが、新品のベルトを慣らし運転後のベルトと比較したときの騒音性能には顕著な違いがあった。すなわち、実施例22は、比較例7よりも高い騒音性能を示した。
【表9】
【0060】
以上のように、第1実施形態では、リブ表面における帆布として要求される条件(リブ表面を完全に被覆する帆布としての条件)を維持するため、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率が(N×A−L)/L(またはA/p−1)のとき、単位長さ当たりの張力が第1の値以下となる伸張特性を示す帆布が用いられる。また更に、ベルトの逆曲げにおける耐久性を考慮して、使用される帆布は、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への伸び率がD/Rのとき、単位長さ当たりの張力が第2の値以下を示す必要がある。
【0061】
なお、織布に代え編布を用いる場合、編布には、織布と同様の伸縮性を備えるもの(例えば同様の素材を用い、同様の処理が施された編み物)が用いられる。この場合、編布が、両方向(ベルト長手方向、ベルト幅方向)に対して必要な伸び率を示す編み方である必要がある。例えば、2方向に良好な伸張性を示す横編み帆布を用いてもよい。また、横編み帆布はシームレスの筒型であってもよい。また、シームレスな編布を用いることにより、縫い目や、布同士の重なりによる凹凸をリブ表面から無くすことができる。
(第2実施形態)
【0062】
以下では、本発明の第2実施形態に係るVリブドベルトについて説明する。第2実施形態におけるVリブドベルトは、第1実施形態と略同様の方法を用いて製造される。しかし、第2実施形態のVリブドベルトでは、ベルト材料23が、決められた深さまで、帆布15の布目を透過する。これにより、リブ表面の帆布15の状態が維持され、リブ表面の特性(摩擦係数、耐摩耗性など)は、帆布15の布目を通り抜けたリブゴム材料の量により制御できる。
【0063】
すなわち、帆布15の布目を透過したリブゴム材料は、帆布15とともにリブ表面を形成するので、リブ表面の摩擦係数や耐久性が、帆布15の布目を完全に透過したリブゴム材料の量によって直接影響される。更に、帆布を通したリブゴム材料の透過は、帆布15の伸びに影響される。
【0064】
したがって、要求されるリブ表面特性を備えるVリブドベルトは、ベルトの形状やリブ表面に必要とされる特性によって特定されるベルト長手方向およびベルト幅方向への伸びに対応する伸張特性を備えた織布や編布を選択することにより得られ、リブゴム材料が帆布の布目を所定量透過する。なお、上記選択で使用される帆布の伸張特性は、帆布が上記伸びに達するまで伸張されたときに発生する帆布の張力の第1の値および/または第2の値に基づいて特定されてもよい。更に、単位面積当たりの質量、密度、ヤーンやフィラメントの特性(厚さ、表面処理、ヤーン密度、ヤーンサイズ、伸張時の布透過性などを含む)など、帆布の他の特性も、上述の摩擦係数と耐摩耗性を制御する目的で適宜選択され得る。なお、成型圧は別のプロセス変数である。
[実施例]
【0065】
マトリクスが多く透過したリブ表面は、高い摩擦係数を備えるため、リブ表面の摩擦係数は、マトリクスの透過の程度を示している。表10と図11は、帆布の伸び率(%)とリブ表面における摩擦係数(COF)との関係を示す。
【0066】
試験では、筒状編布は異なる周長のものが用意され、1510mmの型にフィットするように異なるレベルまで伸張された。帆布はその後、異なる摩擦係数となるように異なる度合いで伸張され、摩擦係数がその後計測された。なお、実施例23〜26の帆布には、PETやコットンのヤーンが含まれる。
【表10】
【0067】
図11および表10に示されるように、リブ表面における摩擦係数は、帆布の伸びが増大するにしたがって増大する。すなわち、帆布の伸張性を選択することにより、マトリクスの透過を間接的に制御することができ、それによりリブ表面における摩擦係数を制御することができる。
【0068】
なお、本願において用語「透過」は、ゴムの帆布生地への浸透、および帆布の布目を通り抜ける透過もともに含む。更に、「透過しない」および「完全には透過しない」は、ゴムが布目を通って反対側へ通り抜けない浸透を意味する。
【0069】
本発明のいくつか実施形態が添付された図面とともに説明されたが、当業者によって、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの修正や変更を行えることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力の伝達に用いられるVリブドベルト、およびVリブドベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Vリブドベルトの製造方法としては、以下の2つの方法が知られている。1つの方法では金型の周囲に配置(装着)された材料を加硫処理した後にベルト面を研磨してリブを削り出す。もう1つの方法、いわゆるモールデッド製法では、所定のマルチリブ形状を備えた金型でゴム材料が成型されて加硫処理され、多数のリブが形成される。リブゴムがリブ表面に直接晒されたベルトの伝達性能、発音性能などのベルトの基本性能は、主にリブ表面材料の物性によって支配され、すなわちリブゴム材とリブゴム材に配合される短繊維などの配合物に影響される。しかし、リブの表面は磨耗により経時的に劣化する。モールデッド法を用いた場合には、リブ表面に不織布を覆い被せるものもあるが(特許文献1)、必ずしも十分な耐久性があるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−532513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のVリブドベルトなどの動力伝達ベルトにおいては、リブなどの表面は劣化し易く、安定したリブ表面状態を維持することが困難である。また、使用とともに摩擦係数が高くなり発音し易くなるという問題がある。
【0005】
したがって、本発明は、Vリブドベルトのリブ表面の耐久性を高め所望のリブ表面状態を持続させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの目的からは、リブ表面が帆布により被覆されたVリブドベルトが提供される。帆布は2方向に伸張可能である。
【0007】
本発明の別の目的からは、Vリブドベルトの製造方法が提供される。この方法は、マンドレルにベルトマトリクスを配置し、マンドレルの周囲に配置されたベルトマトリクスの外周に帆布を配置し、マンドレルを複数の溝が内周面に設けられたシェルの内側に装置し、ベルトマトリクスおよび帆布を、シェルの内周面に向けて押し出してマルチリブド形状をなす内周面に帆布を押し付け、帆布と一体的にベルトマトリクスを加硫する。帆布は、マルチリブド形状に合わせて伸張可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の目的と利点は、添付された図面を参照した以下の説明により、より良く理解されるであろう。
【図1】本発明の一実施形態であるVリブドベルトのベルト長手方向に垂直な面に沿った断面図である。
【図2】本実施形態のベルト成型に用いられるマンドレルおよびシェルの外観を模式的に示す斜視図である。
【図3】加硫処理前におけるマンドレル、シェルなどの配置を模式的に示す半径方向に沿った部分拡大断面図である。
【図4】加硫時におけるマンドレル、シェルの配置を模式的に示す半径方向に沿った部分拡大断面図である。
【図5】織布の伸張特性を計測するための配置を模式的に示す断面図である。
【図6】帆布として実施例、比較例において用いられたナイロン製の織布、編布の伸張特性を測定する方法を説明するシート状の帆布の平面図である。
【図7】実施例1〜6と比較例1、2のシート状帆布に対する軸方向(ベルト幅方向)への引張試験の結果を示すグラフである。
【図8】実施例7〜10と比較例3、4のシート状帆布に対する周方向(ベルト長手方向)への引張試験の結果を示すグラフである。
【図9】逆曲げの下での耐久試験に使用される走行試験機のレイアウトである。
【図10】実施例17〜21と比較例5、6の試験を行ったベルト伝動システムのレイアウトである。
【図11】帆布の伸び(%)とリブ表面における摩擦係数(COF)の間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態であるVリブドベルトのベルト長手方向に垂直な面の断面図である。図1を参照して本実施形態のVリブドベルトの構造について説明する。
【0011】
Vリブドベルト10は、マルチリブ形状に成形されたリブゴム層11、芯線12が埋設された接着ゴム層13、接着ゴム層13の背面に一体的に貼着された背面帆布14から構成される。更に、リブゴム層11の表面は、織布または編布などからなる帆布15によって覆われる。
【0012】
帆布15は、十分な伸縮性を備えた素材から選択される。更に、リブ表面に必要な性能(例えば耐摩耗性、耐熱性、摩擦係数の安定性、耐水性、発音性)を考慮して、十分なベルト耐久性を維持できる素材が選択される。
【0013】
例えば、帆布15の素材は、ポリウレタンなどの弾性ヤーン/ファイバと、少なくとも1種類の非弾性ヤーン/ファイバを含み、非弾性ヤーン/ファイバには、セルロースベース/非セルロースベース、あるいはそれらを混合したヤーン/ファイバが含まれる。セルロースベースヤーン/ファイバと非セルロースベースヤーン/ファイバの混合は、2種類のファイバを紡績または撚りにおいてブレンドし、あるいは布製造工程において異なる種類のヤーンを供給することにより行われる。
【0014】
セルロースベースのファイバ/ヤーンは、コットン、リンネル、ジュート、大麻、マニラ麻、竹を含む天然ファイバ、レイヨンとアセテートを含む人工ファイバ、あるいはこれらの組合せである。
【0015】
非セルロースベースのファイバ/ヤーンは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、アラミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリケトン、PTFE、e−PTFE、PPS、PBO、ウール、シルクや、これらの組合せである。
【0016】
改良された濡れ特性を得るには、帆布は、ポリウレタンなどの弾性体である第1ヤーンとコットンなどのセルロースからなる第2ヤーンを含む2−ヤーン構造を備える。また、弾性ヤーン/ファイバと、セルロースヤーン/ファイバと、他のヤーンとを含む3−ヤーン構造以上を用いてもよい。第3ヤーンは耐摩耗性への要求にしたがって選択されてもよい。
【0017】
すなわち、第1ヤーンは、ポリウレタンなどの弾性ヤーンであり、帆布に高レベルの伸縮性を与える。第2および第3ヤーン/ファイバは、異なる種類のヤーンやファイバを混合したものであってもよく、例えばセルロースヤーン/ファイバと非セルロースヤーン/ファイバの組合せであり、異なる比率で混合される。ある種のものは、非セルロースヤーン/ファイバであり、耐摩耗性や耐久性を与える。別の種類は、優れた濡れ特性を与えるセルロースヤーン/ファイバである。ある場合には、セルロースヤーン/ファイバのみで適切な耐久性と濡れ特性を与えることができる。
【0018】
セルロースベースヤーン/ファイバと非セルロースベースヤーン/ファイバの混合率は、例えば100:0〜0:100の範囲にある。セルロースベースヤーン/ファイバが5%〜100%、そして非セルロースベースヤーン/ファイバが0%〜95%である比率が好ましい。更に、非弾性ヤーン/ファイバに対する弾性ヤーン/ファイバの比率は、例えば2%〜40%である。
【0019】
次に図2〜図4を参照して、Vリブドベルト10のモールデッド製法を用いた製造過程について説明する。図2は、本実施形態のVリブドベルト10の成型に用いられるマンドレル(内金型)およびシェル(外金型)を模式的に示す斜視図である。図3、図4は、マンドレルとシェルの配置を示す半径方向に沿った模式的な部分拡大断面図である。図3は加硫前の配置を示し、図4は加硫時の配意を示す。
【0020】
円筒形のマンドレル20の外周面にはゴムパッド22が装着されており、ゴムパッド22の外側には、ベルト材料23(背面帆布14、接着ゴム層13を形成する接着ゴムマトリクス、芯線12、リブゴム層11を形成するリブゴムマトリクスを含む)が配置(装着)される。また、ベルト材料23の外側には帆布15が配置(装着)される。本実施形態では、帆布15は円筒状であり、シームレスまたはシーム付の帆布である。しかし、円筒状でない帆布であっても、帆布15をその両端が重なるようにマンドレル20の周りに巻き付けることにより用いることも可能である。ベルト材料23および帆布15が装着されたマンドレル20は、円筒形のシェル21の内側に挿入され同心的に配置される。このとき、帆布15とシェル21の内周面の間には、図3に示されるようにクリアランスdが設けられる。
【0021】
なお、帆布15には、性能を高めるために前処理が施され、前処理には、熱水や化学薬品による洗浄、ヒートセット、染色、接着用処理、ラミネーティングなどがある。接着用処理では、帆布のゴム材料への接着性を高めるため、またはアプリケーションにおいて要求される性能を得るために、ゴム糊、RFLなどの接着剤、樹脂(例えばフェノールやフッ素樹脂)などによる処理が帆布15に通常施される。しかし、このような付加処理を施さない場合もある。
【0022】
シェル21は、内周面にVリブ形状の多数の溝21Aを備え、溝は周方向に沿って設けられ、Vリブドベルト10のマルチリブ形状を成形するように配置される。加硫時、ゴムパッド22とマンドレル20の間には、空気、窒素、オイル、水や蒸気など、温度が制御された流体媒体が高圧力で供給され、ゴムパッド22は径方向外側に膨張される。これにともなって、ベルト材料23および帆布15は径方向外側に向けて押し出され、シェル21の内周面に押圧される。このとき帆布15は、ベルト材料23のリブゴム層11とともに変形されてシェル21の内周面に形成された溝21Aに押し込まれ、図4に示されるように、マルチリブ形状に成形される。また、帆布15はリブゴム層11と加硫時に圧着または接着され、帆布15とリブゴム層11の表面は一体化される。
【0023】
すなわち、本実施形態のモールデッド製法は以下の手順で実施される:マンドレルの周りにベルト材料を配置(装着)し、ベルト材料の外周を帆布で覆い、ベルト材料および帆布が装着されたマンドレルをシェルの内側に装置し、ベルト材料および帆布をシェルの内周面に向けて押し出してマルチリブド形状をなす内周面に押し付けながら加硫を行う。なお、ベルトマトリクスは、ベルトマトリクスが帆布へ浸透した後で加硫される。
【0024】
図3、図4では溝21Aは、3本のみ示される。しかし、実際には図2に示されるように多数の溝がシェル21の内周面全体に渡って設けられる。また、マルチリブ形状に加硫成形された成型品は、シェル21から取り外された後、リブに沿って所定のベルト幅で切断され、複数のVリブドベルト10が得られる。
【0025】
以上のベルト製造過程において、ベルト材料23および帆布15は、円筒形のマンドレル20の径方向外側に向けて押し出されるので、帆布15は円筒形金型の周方向、すなわちベルト長手方向に伸張される。このとき、リブゴムおよび帆布15のシェルの溝21Aの形状に合わせた変形により、帆布15は、円筒形金型の軸方向、すなわちベルト幅方向に伸張される。
【0026】
図5に模式的に示されるように、マンドレル20の周りに配置(装着)された帆布15の初期位置(帆布15のモルディング処理開始時の位置)をマンドレル20の中心から半径Rの位置とし、帆布15の初期位置とシェル21に設けられた溝21Aの底面(Vリブドベルトのリブ先に対応)の間の距離をDとすると、帆布15のマンドレル周方向(ベルト長手方向)の長さは、初期ラジアル長さ2πRから伸張ラジアル長さ2π(R+D)へと変化する。これにより、帆布15の周方向(ベルト長手方向)への伸び率は、伸張ラジアル長さ2π(R+D)と初期ラジアル長さ2πRの差を初期ラジアル長さ2πRで割った値D/Rとして得られる。なお、帆布の周方向への伸張には、金型にフィットするのに必要な伸びが含まれる。
【0027】
一方、帆布15の軸方向(ベルト幅方向)への伸び率は、(N×A−L)/Lとして表される。ここでAは溝21Aの軸方向に沿ったリブ輪郭線長さ(図5参照);Nは金型に形成されたリブの数;Lは溝が形成され面の軸方向への長さ(リブが形成されるベルト幅方向への全長)である。リブピッチをpを用いると、LはL=N×pと表される。したがって、軸方向(ベルト幅方向)への帆布の伸び率は、(A/p−1)となる。なお、リブ輪郭線長さAは、1つのリブ断面の長さに対応し、図5では溝21Aに沿った太線で示され、長さAはリブ形状によって変化する。
【0028】
周方向や軸方向への帆布15の伸び率は、リブ面に貼着された帆布が、Vリブベルトにおいて要求される所定の特性を維持する値とされる。第1実施形態において、帆布15がリブ表面において帆布としての所定の機能を維持する条件とは、例えばベルト材料23が加圧時に帆布15の布目を完全に透過してしまわないことである。
【0029】
本実施形態のモールデッド製法を用いたVリブドベルトを製造では、帆布には、特定の条件(単位長さあたりの引っ張り力)の下、周方向(ベルト長さ方向)にD/Rよりも大きい伸び率を示し、軸方向(ベルト幅方向)に(N×A−L)/L(またはA/p−1)よりも大きい伸び率を示すものが用いられる。すなわち、リブ表面において帆布が一定の特性を維持するように、2つの方向への伸縮性の範囲が規定される。この範囲については、実施例と比較例とを対比して後で詳述する。
【0030】
マンドレル周方向に対して、与えられた条件においてリブ形状とマンドレルの大きさによって規定される上記伸び率に達しない帆布であっても、シームレスまたはシームされた筒状帆布を用いない場合であれば、帆布シートの両端を重ね合わせたり、あるいはベルト長手方向において帆布に覆われていない隙間の存在を許容したりすることによって、場合によっては利用可能である。
【0031】
一方、マンドレル軸方向に対して帆布が十分伸張しないと、帆布はシェルのリブ凹みに沿って変形されるものの、シェルに接する位置まで変位されない。更に、リブゴム材は帆布の布目を通り抜けてシェル内に充填される。この結果、帆布はリブゴム層内に完全に埋没され、リブゴムが直接リブ表面を形成する。したがって、本実施形態のようにベルト材料をシェルに押圧して首尾よくマルチリブベルトを製造し、リブ表面を適正に帆布で被覆するには、少なくとも軸方向に対して十分な伸び(加圧時、帆布がシェル金型に接触し、金型の形状に沿って変形するのを許容する十分な伸縮性)を示す帆布を用いる必要がある。
【0032】
このような帆布としては、上述された編布や織布が利用できる。織布の場合には、縦糸または横糸、あるいは縦横糸双方に、弾性ヤーンや、巻縮加工、ウーリー加工、タスラン加工、インタレース加工、カバーリング加工や、それらの組合せが用いられたテクスチャードヤーンが含まれる。なお、上記伸び率はベルト製造上最低限必要な値である。実際にはベルトが使用される条件に合わせて、よりも大きな伸びが必要である。例えば、ベルト長手方向には、小型プーリでの曲げや逆曲げに対して、付加的な伸び率が必要である。
【0033】
以上のように、第1実施形態によれば、不織布などに比べ耐久性に優れた織布や編布などの帆布をリブ表面に一体的に設けることができるので、ベルトの表面の耐久性を高め、表面状態を長期にわたり維持することが可能となる。同時に、スリップあるいは異音の発生を抑えることができる。特に本実施形態では、モールディングと加硫の工程において、帆布をリブ面に一体的に貼着可能としているため、効率的にVリブドベルトのリブ表面の耐久性を高め、リブ表面の状態を長期にわたり維持すことができる。
【0034】
次に、実施例と比較例を参照して、第1実施形態における帆布の伸び率を規定するための条件について説明する。
[実施例]
【0035】
まず、実施例において用いられるナイロン製の織布、編布の伸びが、実際のモールディングで用いられる金型の寸法で規定される伸び率と一致する伸び、伸び率を示すか否かを検証した。この試験において、実施例3ではシート状の織布が用いられ、実施例4〜6ではシート状の編布が用いられた。
【0036】
この確認試験において、シート状の帆布には、マンドレルの軸方向と周方向に合わせて縦横100mmの長さの十字線が描かれた。帆布はマンドレルに予め装着されたベルト材料の上に装着され、マンドレルとともにシェル内に装置された。そしてこれらの材料はモールデッド製法を用いてVリブドベルトへと成形された。加工は、マンドレルの軸方向(ベルト幅方向)に(N×A−L)/L(またはA/p−1)=0.8011(80.11%)、マンドレル周方向(ベルト長手方向)にD/R=0.0306(3.06%)となる条件の下で行われた。
【0037】
図6(a)は、十字線が描かれた加工前の帆布の模式的な平面図である。図6(b)は、加工後の十字線が描かれた帆布シートを展開した模式的な平面図である。帆布の伸張後、十字線の長さの測定には定規が用いられた。周方向(ベルト長手方向)の長さは102〜104mm(伸び率2〜4%)であり、軸方向(ベルト幅方向)の長さは173.12〜179.53mm(伸び率73.12〜79.53%)であった。何れの帆布シートの伸び率も、略これらの値に合致した。
【0038】
図7は、実施例1〜6と比較例1、2のシート状の帆布(織布および編布)に対して、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)に対応する方向に引張試験を行ったときの計測結果である。図7のグラフには、各試験片の伸張特性が示され、ここで、横軸は伸び率(%)、縦軸は、引っ張り方向に対して帆布の単位長さ(50mm)当たりに掛かる張力(N)である。
【0039】
実施例1〜3、および比較例1では、帆布として織布が用いられ、実施例4〜6、および比較例2では帆布として編布が用いられた。実施例1〜6の試験片は、それぞれ曲線E1〜E6で示される特性で引き伸ばされ、比較例1、2の試験片は、それぞれ曲線C1、C2で示される特性で引き伸ばされた。
【0040】
更に、実施例1〜6、比較例1、2の帆布を用いて、本実施形態のモールデッド製法により軸方向(ベルト幅方向)への伸び率:(N×A−L)/L(またはA/p−1)=0.8011(80.11%)となる条件の下、Vリブドベルトの成形を行った。実施例1〜6の帆布を用いたモールディングでは、Vリブ表面は帆布により適正に被覆された。しかし、比較例1、2の帆布については、加圧時にベルト材料が帆布の布目を透過してしまい、帆布がリブ表面に露出された状態にはならなった。
【0041】
図7のグラフと実施例1〜6、比較例1、2のVリブドベルトの成形試験結果とを参照すると、第1実施形態のモールデッド製法を用いてVリブドベルトを製造する場合に、リブ表面における帆布としての機能を果たすには、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率が(N×A−L)/L(またはA/p−1)のときに、帆布のマンドレルの軸方向(ベルト幅方向)への単位長さ当たりの張力が略250N/50mm(第1の値)以下である帆布を用いることが望ましいことが分かる。すなわち、本実施例では伸び率が略80%のとき、単位長さ当たりの張力が250N/50mm以下である帆布を用いることが望ましい。また、本実施例では、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率略80%のときに、帆布の単位長さ当たりの張力が200N/50mm以下であることがより望ましい。なお、これらのことは、軸方向(ベルト幅方向)に対して、250N/50mmにおいて、より好ましくは、200N/50mmにおいて80%以上の伸び率を示す帆布を選択することを意味する。
【0042】
図8、9を参照して、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への帆布の伸び率と、逆曲げを受けるベルトの耐久性との関係について説明する。
【0043】
図8は、実施例7〜10と比較例3、4の織布および編布に対して、マンドレル周方向(ベルト長手方向)に対応する方向に引張試験を行ったときの計測結果を示すグラフである。横軸は伸び率(%)、縦軸は、引っ張り方向に対して帆布の単位長さ(50mm)当たりに掛かる張力(N)である。比較例3、4および実施例7では織布が用いられ、実施例8〜10では編布が用いられた。実施例7〜10の試験片の伸張特性は、それぞれ曲線E7〜E10で示され、比較例3、4の試験片の伸張特性は、それぞれ曲線C3、C4で示される。
【0044】
実施例1〜6、比較例1、2のときと同様に、実施例7〜10、比較例3、4の特性を有する帆布を用いて、本実施形態のモールデッド製法を用いて、周方向に特定される伸張条件(D/R=0.0306(3.06%))の下、Vリブドベルトが成形された。本実施例では、Vリブドベルトは、目標耐久寿命を500時間として製造された。
【0045】
次に、実施例7〜10、比較例3、4の帆布を用いて製造されたVリブドベルトに対して、図9のレイアウトで示される走行試験機を用いて、逆曲げを受けるベルトの耐久試験(ベルト屈曲試験)を行った。
【0046】
図9の走行試験機は、VリブドベルトBが、原動プーリDR、従動プーリDN、テンショナプーリTENと、これらのプーリDR、DN、TENの間にそれぞれ配置された3つのアイドラプーリIDに掛け回されたものである。原動プーリDR、従動プーリDN、テンショナプーリTENの有効径は70.00mmであり、アイドラプーリIDの有効径は52.00mmであった。走行試験機は100°Cの雰囲気温度の下で走行され、原動プーリDRは5200RPMで回転された。また、ベルト軸荷重は588Nであった。
【0047】
比較例3、4のVリブドベルトの走行試験では、24時間以内にクラックが発生し、それぞれ328.4時間後、166.4時間後にリブ欠損又は多数のクラックの発生により試験を停止した。一方、実施例7、8のVリブドベルトにおいては、クラックはそれぞれ305時間後、524.2時間後に発生した。実施例7のVリブドベルトに対する試験では、650時間後に、クラックの数が(リブ数+1)個に達したときに試験を停止した。しかし、実施例8のVリブドベルトは1003.7時間の走行で3つのクラックが確認されたのみであった。また、実施例9、10については、400時間走行させてもクラックは全く検出されなかった。
【0048】
以上のことから、実施例7〜8の帆布を用いたベルトでは、ベルト逆曲げに対して十分な耐久性を得られたが、比較例3、4では十分な耐久性を得ることは出来なかった。したがって、図8のグラフからは、帆布がベルトの逆曲げに対して十分な耐久性を発揮するには、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への伸び率がD/Rのとき、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への単位長さ当たりの張力が略50N/50mm(第2の値)以下である帆布を選択することが望ましいことが分かる。すなわち本実施例においては、周方向(ベルト長手方向)への伸び率が略3%ときに、帆布の周方向(ベルト長手方向)の単位長さ当たりの張力が50N/50mm以下であることが望ましい。これは、周方向(ベルト長手方向)に、50N/50mmにおいて3%以上の伸び率を示す帆布を選択することを意味すると理解できる。
【0049】
表1〜3を参照して、実施例11〜16(Ex−11〜Ex−16)および比較例5、6(CE−5、CE−6)に対するVリブドベルトのスリップ試験および騒音試験の結果について説明する。
【0050】
表1は、実施例11〜16において使用された帆布の特性を示す。実施例11〜16は、編布によってリブ表面が被覆されたVリブドベルトである。一方、比較例5のリブ表面はティッシュ(不織布)で被覆され、比較例6のリブ表面には溝が彫られ、帆布は貼着けされなかった。実施例11〜14および16の帆布は、15%のポリウレタン(弾性ヤーン)を含んでおり、実施例15は30%のポリウレタンを含み、残りは非弾性ヤーンであった。非弾性ヤーンとしては、実施例11〜13、16が、コットンなどのセルロースヤーンを含み、実施例12〜15には、PETやPAなどの非セルロースヤーンが含まれていた。すなわち、実施例11と実施例14〜16は、2−ヤーン構造を備え、実施例12、13は3−ヤーン構造を備えた。表1における混合比率は、PU(弾性ヤーン)の含有量を除いたときのセルロースヤーンと非セルロースヤーンの比率である。また、表1には、各帆布の9.807N/25mmにおける長手方向への伸び、横方向への伸びがパーセントで示されるとともに、厚さ(mm)が示されている。なお、帆布には、ベルト幅方向に9.807N/25mm幅で80%よりも大きい伸び率を備え、ベルト長手方向に9.807N/25mm幅で10%よりも大きい伸び率を備えるものが用いられている。
【表1】
【0051】
表2には、実施例11〜16および比較例5、6において使用されるVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様が示される。幅方向の伸びおよび長手方向の伸びは、編布がベルトに貼着された後における伸びを示す。
【表2】
【0052】
表3にスリップ試験と騒音試験の結果を示す。
【表3】
【0053】
表3に示されるように、実施例11〜13、16では、新品、慣らし運転後の何れに対しても、セルロースヤーン(コットン)を含有したものが、スリップおよび騒音の両性能によい結果を示している。
【0054】
次に表4〜6および図10を参照して、騒音抑制力耐久試験の結果について説明する。表4は、実施例17〜21で用いられた帆布の特性を表1と同様の形で示す。また、表5は、実施例17〜21で用いられたVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様を表2と同様の形で示す。すなわち、表4、5の各項目は、表1、2のものと同じである。この試験では、実施例17〜21は、特性と設計仕様が表1、2に示される比較例5、6と比較された。
【表4】
【表5】
【0055】
図10は、実施例17〜21と比較例5、6が試験されたベルト伝動装置のレイアウトを示す。騒音抑制力耐久試験は、実際の補機駆動システムにおいて実行された。VリブドベルトはクランクシャフトプーリCRK、テンショナプーリTEN、オルタネータプーリALT、パワーステアリングポンププーリP_S、アイドルプーリIDR、エアコン用プーリA_Cに掛け回される。エンジン速度は、エンジン負荷を与えずに(パーキングに設定)アイドル速度に設定され、オルタネータはデューティ比100%となるように負荷が与えられた。プーリP_Sは、共通面の位置から4mmオフセットされ、2度のベルトズレ角を生じた。
【0056】
パワーステアリングポンププーリP_Sの手前(矢印Awで示される)に、4時間置きに水がベルトに掛けられた。試験は外気温の下、異音が検知されるまで実行された。
【0057】
騒音抑制力耐久試験の結果は表6に示され、数字は各実施例、比較例において異音が発生するまでの実際の経過時間である。表6に示されるように、コットンヤーンなどのセルロースヤーンを含む実施例17〜19では、高い騒音抑制力耐久性能を示した。
【表6】
【0058】
次に表7〜9を参照して、シームレスの円筒状織布を用いた本発明のVリブドベルトに対するスリップおよび騒音性能試験の結果について説明する。表7は、実施例22で用いられるシームレス織布、および比較例7(CE−7)で用いられるシームされた織布の特性を表1の形式で示す。実施例22の帆布は、28%の弾性ヤーン(PU)を含有し、残余はセルロースをベースとしたヤーン(コットン)であるが、比較例7は何れも含まなかった。表8は、実施例22と比較例7で用いられたVリブドベルトのプロトタイプの設計仕様を表2の形式で示す。
【表7】
【表8】
【0059】
表9に示されるように、実施例22と比較例7の何れにおいてもスリップは発生しなかったが、新品のベルトを慣らし運転後のベルトと比較したときの騒音性能には顕著な違いがあった。すなわち、実施例22は、比較例7よりも高い騒音性能を示した。
【表9】
【0060】
以上のように、第1実施形態では、リブ表面における帆布として要求される条件(リブ表面を完全に被覆する帆布としての条件)を維持するため、マンドレル軸方向(ベルト幅方向)への伸び率が(N×A−L)/L(またはA/p−1)のとき、単位長さ当たりの張力が第1の値以下となる伸張特性を示す帆布が用いられる。また更に、ベルトの逆曲げにおける耐久性を考慮して、使用される帆布は、マンドレル周方向(ベルト長手方向)への伸び率がD/Rのとき、単位長さ当たりの張力が第2の値以下を示す必要がある。
【0061】
なお、織布に代え編布を用いる場合、編布には、織布と同様の伸縮性を備えるもの(例えば同様の素材を用い、同様の処理が施された編み物)が用いられる。この場合、編布が、両方向(ベルト長手方向、ベルト幅方向)に対して必要な伸び率を示す編み方である必要がある。例えば、2方向に良好な伸張性を示す横編み帆布を用いてもよい。また、横編み帆布はシームレスの筒型であってもよい。また、シームレスな編布を用いることにより、縫い目や、布同士の重なりによる凹凸をリブ表面から無くすことができる。
(第2実施形態)
【0062】
以下では、本発明の第2実施形態に係るVリブドベルトについて説明する。第2実施形態におけるVリブドベルトは、第1実施形態と略同様の方法を用いて製造される。しかし、第2実施形態のVリブドベルトでは、ベルト材料23が、決められた深さまで、帆布15の布目を透過する。これにより、リブ表面の帆布15の状態が維持され、リブ表面の特性(摩擦係数、耐摩耗性など)は、帆布15の布目を通り抜けたリブゴム材料の量により制御できる。
【0063】
すなわち、帆布15の布目を透過したリブゴム材料は、帆布15とともにリブ表面を形成するので、リブ表面の摩擦係数や耐久性が、帆布15の布目を完全に透過したリブゴム材料の量によって直接影響される。更に、帆布を通したリブゴム材料の透過は、帆布15の伸びに影響される。
【0064】
したがって、要求されるリブ表面特性を備えるVリブドベルトは、ベルトの形状やリブ表面に必要とされる特性によって特定されるベルト長手方向およびベルト幅方向への伸びに対応する伸張特性を備えた織布や編布を選択することにより得られ、リブゴム材料が帆布の布目を所定量透過する。なお、上記選択で使用される帆布の伸張特性は、帆布が上記伸びに達するまで伸張されたときに発生する帆布の張力の第1の値および/または第2の値に基づいて特定されてもよい。更に、単位面積当たりの質量、密度、ヤーンやフィラメントの特性(厚さ、表面処理、ヤーン密度、ヤーンサイズ、伸張時の布透過性などを含む)など、帆布の他の特性も、上述の摩擦係数と耐摩耗性を制御する目的で適宜選択され得る。なお、成型圧は別のプロセス変数である。
[実施例]
【0065】
マトリクスが多く透過したリブ表面は、高い摩擦係数を備えるため、リブ表面の摩擦係数は、マトリクスの透過の程度を示している。表10と図11は、帆布の伸び率(%)とリブ表面における摩擦係数(COF)との関係を示す。
【0066】
試験では、筒状編布は異なる周長のものが用意され、1510mmの型にフィットするように異なるレベルまで伸張された。帆布はその後、異なる摩擦係数となるように異なる度合いで伸張され、摩擦係数がその後計測された。なお、実施例23〜26の帆布には、PETやコットンのヤーンが含まれる。
【表10】
【0067】
図11および表10に示されるように、リブ表面における摩擦係数は、帆布の伸びが増大するにしたがって増大する。すなわち、帆布の伸張性を選択することにより、マトリクスの透過を間接的に制御することができ、それによりリブ表面における摩擦係数を制御することができる。
【0068】
なお、本願において用語「透過」は、ゴムの帆布生地への浸透、および帆布の布目を通り抜ける透過もともに含む。更に、「透過しない」および「完全には透過しない」は、ゴムが布目を通って反対側へ通り抜けない浸透を意味する。
【0069】
本発明のいくつか実施形態が添付された図面とともに説明されたが、当業者によって、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの修正や変更を行えることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、前記帆布が弾性ヤーンと少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含み、前記非弾性ヤーンがセルロースベースのファイバまたはヤーンを含むことを特徴とするVリブドベルト。
【請求項2】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のVリブドベルト。
【請求項3】
前記非弾性ヤーンが、非セルロースベースのファイバまたはヤーンを含むことを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項4】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンと、非セルロースベースのファイバまたはヤーンとを混合したものを含むことを特徴とする特徴とする請求項3に記載のVリブドベルト。
【請求項5】
前記セルロースベースのファイバまたはヤーンと前記非セルロースベースのファイバまたはヤーンの混合が、2種類のファイバを紡績または撚りにおいてブレンドし、あるいは布製造工程において異なる種類のヤーンを供給することにより行われることを特徴とする請求項4に記載のVリブドベルト。
【請求項6】
前記セルロースベースのファイバまたはヤーンは、コットン、リンネル、ジュート、大麻、マニラ麻、竹を含む天然ファイバ、レイヨン、アセテートを含む人工ファイバ、またはこれらの組合せであることを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項7】
前記非セルロースベースのファイバまたはヤーンが、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、アラミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリケトン、PTFE、e−PTFE、PPS、PBO、ウール、シルク、またはこれらの組合せであることを特徴とする請求項3に記載のVリブドベルト。
【請求項8】
前記帆布が、織布であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項9】
前記帆布が、筒状のシームレス織布であることを特徴とする請求項8に記載のVリブドベルト。
【請求項10】
前記織布が、縦糸または横糸の何れかの方向にテクスチャードヤーンを用いることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項11】
前記織布が、縦糸および横糸方向にテクスチャードヤーンを用いることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項12】
前記帆布が、編布であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項13】
前記帆布が、横編みの帆布であることを特徴とする請求項12に記載のVリブドベルト。
【請求項14】
前記帆布が、シームレスの筒状横編み帆布であることを特徴とする請求項13に記載のVリブドベルト。
【請求項15】
前記帆布は、性能を高めるための前処理が施され、前記前処理には、熱水や化学薬品による洗浄、ヒートセット、染色、接着用処理、ラミネーティングなどが含まれることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項16】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造を備えることを特徴とする請求項5に記載のVリブドベルト。
【請求項17】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上の構造を備えることを特徴とする請求項5に記載のVリブドベルト。
【請求項18】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、
Vリブドベルトのベルトマトリクスが前記帆布の布目を透過し、
前記Vリブドベルトがモールデッド製法を用いて製造され、
前記モールデッド製法において、前記リブ表面がベルトマトリクスの外周に配置した前記帆布を、前記ベルトマトリクスとともにシェルの内周面に設けられたマルチリブ形状の型に押圧するとともに前記ベルトマトリクスを加硫することにより成型され、前記帆布が、前記マルチリブド形状に合わせて伸張可能であることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項19】
前記ベルトマトリクスが、前記帆布へ前記ベルトマトリクスが透過した後で加硫されることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項20】
加硫時の加圧において、前記帆布の布目を通した前記ベルトマトリクスの透過が、前記リブ表面の特性を制御するために制御されることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項21】
加硫時の加圧において、前記ベルトマトリクスが前記帆布の布目を完全に透過しないことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項22】
前記帆布のベルト幅方向への伸び率が、ベルト幅方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のベルト幅方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項23】
前記帆布のベルト長手方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先のベルト長手方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さを引いた値を前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のベルト長手方向に対して掛かる張力が第2の値以下であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項24】
前記ベルトマトリクスの前記透過が、前記帆布の伸張によって一部制御されることを特徴とする請求項20に記載のVリブドベルト。
【請求項25】
前記帆布が、縦糸および横糸に伸縮性を与える加工を施して織られたことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項26】
前記加工が施された前記織布の縦糸および横糸が、前記所定の方向の各々に延在することを特徴とする請求項25に記載のVリブドベルト。
【請求項27】
前記所定の2方向の一方が前記ベルト幅方向に対応し、他方がベルト長手方向に対応することを特徴とする請求項26に記載のVリブドベルト。
【請求項28】
前記加工が、巻縮加工、ウーリー加工、タスラン加工、インタレース加工、カバーリング加工の何れか一つを含むことを特徴とする請求項25または請求項26の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項29】
前記帆布が所定の方向に伸縮性を与えるように編まれた編布であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項30】
前記所定の方向が、ベルト幅方向およびベルト長手方向であることを特徴とする請求項29に記載のVリブドベルト。
【請求項31】
前記帆布が、ベルト長手方向およびベルト幅方向にそれぞれ所定の伸張特性を備えたシームレス織布またはシームレス編布であることを特徴とする請求項18〜30の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項32】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造であることを特徴とする請求項18〜31の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項33】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上のヤーン構造を備えることを特徴とする請求項18〜31の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項34】
前記帆布が、弾性ヤーンおよび少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含むことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項35】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項34に記載のVリブドベルト。
【請求項36】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンであることを特徴とする請求項34に記載のVリブドベルト。
【請求項37】
マンドレルにベルトマトリクスを配置し、
前記マンドレルの周囲に配置された前記ベルトマトリクスの外周に帆布を配置し、
前記ベルトマトリクスおよび前記帆布で覆われた前記マンドレルを、マルチリブド形状を成形するための複数の溝が内周面に設けられたシェルの内側に装置し、
前記ベルトマトリクスおよび前記帆布を、前記シェルの内周面に向けて押し出して前記マルチリブド形状をなす前記内周面に前記帆布を押し付け、
前記帆布と一体的に前記ベルトマトリクスを加硫し、
前記帆布が、前記マルチリブド形状に合わせて伸張可能である
ことを特徴とするVリブドベルト製造方法。
【請求項38】
前記帆布のマンドレル軸方向への伸び率が、マンドレル軸方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のマンドレル軸方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項37に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項39】
前記帆布のマンドレル周方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先の周方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるマンドレル周方向の長さを引いた値を、前記帆布のモルディング開始時の位置におけるマンドレル周方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のマンドレル周方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第2の値以下であることを特徴とする請求項38に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項40】
加硫時の加圧において、前記帆布の布目を通した前記ベルトマトリクスの透過が、前記リブ表面の特性を制御するために制御されることを特徴とする請求項37に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項41】
前記ベルトマトリクスの前記透過が、前記帆布の伸張によって一部制御されることを特徴とする請求項40に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項42】
前記帆布が、ベルト長手方向およびベルト幅方向にそれぞれ所定の伸張特性を備えたシームレス織布またはシームレス編布であることを特徴とする請求項37〜41の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項43】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造であることを特徴とする請求項37〜42の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項44】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上のヤーン構造を備えることを特徴とする請求項37〜42の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項45】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、前記所定の2方向の一方が前記ベルト幅方向に対応し、他方がベルト長手方向に対応することを特徴とするVリブドベルト。
【請求項46】
前記帆布の伸び率が、ベルト幅方向に9.807N/25mm幅で80%よりも大きく、ベルト長手方向に9.807N/25mm幅で10%よりも大きいことを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項47】
前記帆布のベルト幅方向への伸び率が、ベルト幅方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のベルト幅方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項48】
前記帆布のベルト長手方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先のベルト長手方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さを引いた値を前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のベルト長手方向に対して掛かる張力が第2の値以下であることを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項49】
前記帆布が、弾性ヤーンおよび少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含むことを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項50】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項49に記載のVリブドベルト。
【請求項51】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンであることを特徴とする請求項49に記載のVリブドベルト。
【請求項1】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、前記帆布が弾性ヤーンと少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含み、前記非弾性ヤーンがセルロースベースのファイバまたはヤーンを含むことを特徴とするVリブドベルト。
【請求項2】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のVリブドベルト。
【請求項3】
前記非弾性ヤーンが、非セルロースベースのファイバまたはヤーンを含むことを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項4】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンと、非セルロースベースのファイバまたはヤーンとを混合したものを含むことを特徴とする特徴とする請求項3に記載のVリブドベルト。
【請求項5】
前記セルロースベースのファイバまたはヤーンと前記非セルロースベースのファイバまたはヤーンの混合が、2種類のファイバを紡績または撚りにおいてブレンドし、あるいは布製造工程において異なる種類のヤーンを供給することにより行われることを特徴とする請求項4に記載のVリブドベルト。
【請求項6】
前記セルロースベースのファイバまたはヤーンは、コットン、リンネル、ジュート、大麻、マニラ麻、竹を含む天然ファイバ、レイヨン、アセテートを含む人工ファイバ、またはこれらの組合せであることを特徴とする請求項1または請求項2の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項7】
前記非セルロースベースのファイバまたはヤーンが、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、アラミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリケトン、PTFE、e−PTFE、PPS、PBO、ウール、シルク、またはこれらの組合せであることを特徴とする請求項3に記載のVリブドベルト。
【請求項8】
前記帆布が、織布であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項9】
前記帆布が、筒状のシームレス織布であることを特徴とする請求項8に記載のVリブドベルト。
【請求項10】
前記織布が、縦糸または横糸の何れかの方向にテクスチャードヤーンを用いることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項11】
前記織布が、縦糸および横糸方向にテクスチャードヤーンを用いることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項12】
前記帆布が、編布であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項13】
前記帆布が、横編みの帆布であることを特徴とする請求項12に記載のVリブドベルト。
【請求項14】
前記帆布が、シームレスの筒状横編み帆布であることを特徴とする請求項13に記載のVリブドベルト。
【請求項15】
前記帆布は、性能を高めるための前処理が施され、前記前処理には、熱水や化学薬品による洗浄、ヒートセット、染色、接着用処理、ラミネーティングなどが含まれることを特徴とする請求項8または請求項9の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項16】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造を備えることを特徴とする請求項5に記載のVリブドベルト。
【請求項17】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上の構造を備えることを特徴とする請求項5に記載のVリブドベルト。
【請求項18】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、
Vリブドベルトのベルトマトリクスが前記帆布の布目を透過し、
前記Vリブドベルトがモールデッド製法を用いて製造され、
前記モールデッド製法において、前記リブ表面がベルトマトリクスの外周に配置した前記帆布を、前記ベルトマトリクスとともにシェルの内周面に設けられたマルチリブ形状の型に押圧するとともに前記ベルトマトリクスを加硫することにより成型され、前記帆布が、前記マルチリブド形状に合わせて伸張可能であることを特徴とするVリブドベルト。
【請求項19】
前記ベルトマトリクスが、前記帆布へ前記ベルトマトリクスが透過した後で加硫されることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項20】
加硫時の加圧において、前記帆布の布目を通した前記ベルトマトリクスの透過が、前記リブ表面の特性を制御するために制御されることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項21】
加硫時の加圧において、前記ベルトマトリクスが前記帆布の布目を完全に透過しないことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項22】
前記帆布のベルト幅方向への伸び率が、ベルト幅方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のベルト幅方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項23】
前記帆布のベルト長手方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先のベルト長手方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さを引いた値を前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のベルト長手方向に対して掛かる張力が第2の値以下であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項24】
前記ベルトマトリクスの前記透過が、前記帆布の伸張によって一部制御されることを特徴とする請求項20に記載のVリブドベルト。
【請求項25】
前記帆布が、縦糸および横糸に伸縮性を与える加工を施して織られたことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項26】
前記加工が施された前記織布の縦糸および横糸が、前記所定の方向の各々に延在することを特徴とする請求項25に記載のVリブドベルト。
【請求項27】
前記所定の2方向の一方が前記ベルト幅方向に対応し、他方がベルト長手方向に対応することを特徴とする請求項26に記載のVリブドベルト。
【請求項28】
前記加工が、巻縮加工、ウーリー加工、タスラン加工、インタレース加工、カバーリング加工の何れか一つを含むことを特徴とする請求項25または請求項26の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項29】
前記帆布が所定の方向に伸縮性を与えるように編まれた編布であることを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項30】
前記所定の方向が、ベルト幅方向およびベルト長手方向であることを特徴とする請求項29に記載のVリブドベルト。
【請求項31】
前記帆布が、ベルト長手方向およびベルト幅方向にそれぞれ所定の伸張特性を備えたシームレス織布またはシームレス編布であることを特徴とする請求項18〜30の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項32】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造であることを特徴とする請求項18〜31の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項33】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上のヤーン構造を備えることを特徴とする請求項18〜31の何れか一項に記載のVリブドベルト。
【請求項34】
前記帆布が、弾性ヤーンおよび少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含むことを特徴とする請求項18に記載のVリブドベルト。
【請求項35】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項34に記載のVリブドベルト。
【請求項36】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンであることを特徴とする請求項34に記載のVリブドベルト。
【請求項37】
マンドレルにベルトマトリクスを配置し、
前記マンドレルの周囲に配置された前記ベルトマトリクスの外周に帆布を配置し、
前記ベルトマトリクスおよび前記帆布で覆われた前記マンドレルを、マルチリブド形状を成形するための複数の溝が内周面に設けられたシェルの内側に装置し、
前記ベルトマトリクスおよび前記帆布を、前記シェルの内周面に向けて押し出して前記マルチリブド形状をなす前記内周面に前記帆布を押し付け、
前記帆布と一体的に前記ベルトマトリクスを加硫し、
前記帆布が、前記マルチリブド形状に合わせて伸張可能である
ことを特徴とするVリブドベルト製造方法。
【請求項38】
前記帆布のマンドレル軸方向への伸び率が、マンドレル軸方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のマンドレル軸方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項37に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項39】
前記帆布のマンドレル周方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先の周方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるマンドレル周方向の長さを引いた値を、前記帆布のモルディング開始時の位置におけるマンドレル周方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のマンドレル周方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第2の値以下であることを特徴とする請求項38に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項40】
加硫時の加圧において、前記帆布の布目を通した前記ベルトマトリクスの透過が、前記リブ表面の特性を制御するために制御されることを特徴とする請求項37に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項41】
前記ベルトマトリクスの前記透過が、前記帆布の伸張によって一部制御されることを特徴とする請求項40に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項42】
前記帆布が、ベルト長手方向およびベルト幅方向にそれぞれ所定の伸張特性を備えたシームレス織布またはシームレス編布であることを特徴とする請求項37〜41の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項43】
前記帆布が、コットンヤーンおよびポリウレタンヤーンを含む2−ヤーン構造であることを特徴とする請求項37〜42の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項44】
前記帆布が、コットンファイバまたはヤーン、ポリウレタンファイバまたはヤーン、更にそれ以外のファイバまたはヤーンを含む、3−ファイバ/ヤーン以上のヤーン構造を備えることを特徴とする請求項37〜42の何れか一項に記載のVリブドベルト製造方法。
【請求項45】
リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、前記所定の2方向の一方が前記ベルト幅方向に対応し、他方がベルト長手方向に対応することを特徴とするVリブドベルト。
【請求項46】
前記帆布の伸び率が、ベルト幅方向に9.807N/25mm幅で80%よりも大きく、ベルト長手方向に9.807N/25mm幅で10%よりも大きいことを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項47】
前記帆布のベルト幅方向への伸び率が、ベルト幅方向に沿ったリブ輪郭線長さをリブピッチで割った値から1を引いた値であるとき、前記帆布のベルト幅方向に対して掛かる張力が単位長さ当たり第1の値以下であることを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項48】
前記帆布のベルト長手方向への伸び率が、前記シェルにおけるリブ先のベルト長手方向の長さから前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さを引いた値を前記帆布のモルディング開始時の位置におけるベルト長手方向の長さで割った値であるとき、前記帆布のベルト長手方向に対して掛かる張力が第2の値以下であることを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項49】
前記帆布が、弾性ヤーンおよび少なくとも1種類の非弾性ヤーンを含むことを特徴とする請求項45に記載のVリブドベルト。
【請求項50】
前記弾性ヤーンが、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項49に記載のVリブドベルト。
【請求項51】
前記非弾性ヤーンが、セルロースベースのファイバまたはヤーンであることを特徴とする請求項49に記載のVリブドベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−539394(P2010−539394A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509598(P2010−509598)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/JP2008/058895
【国際公開番号】WO2009/034748
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/JP2008/058895
【国際公開番号】WO2009/034748
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)
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