VWAP取引市場システムおよびVWAP取引方法
【課題】従来の終値VWAP方式の問題点を解消した、VWAPベースの新たな取引手法を提供する。
【解決手段】本発明は、取引参加者による注文データを記憶する注文情報データベースと、オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するインターフェースと、前記受信された相場情報の銘柄の出来高加重平均価格(VWAP)を計算し、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報の約定価格より小さくまたは大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報の約定価格より大きいまたは小さい第1または第2の価格関係が成立するかを判定する価格情報管理部と、前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報の約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部を備える。
【解決手段】本発明は、取引参加者による注文データを記憶する注文情報データベースと、オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するインターフェースと、前記受信された相場情報の銘柄の出来高加重平均価格(VWAP)を計算し、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報の約定価格より小さくまたは大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報の約定価格より大きいまたは小さい第1または第2の価格関係が成立するかを判定する価格情報管理部と、前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報の約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出来高加重平均価格(VWAP:Volume Weighted Average Price)取引市場システムおよびVWAP取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
証券取引を出来高加重平均価格(VWAP:Volume Weighted Average Price)で行いたいというニーズは高い。これは、機関投資家の大口取引による市場価格への影響の排除、一般投資家の高値買い・安値売りのリスクの排除、といった事をVWAP取引で実現可能であるためである。
【0003】
現在多くの証券会社でVWAP取引は行われているが、それらはオークション取引市場の場(前場・後場・全日場)の終了時点でのVWAP値による相対取引(証券会社対顧客の取引)である。このような取引は、終値VWAP方式と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−504455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の終値VWAP方式には以下の課題がある。
【0006】
まず需要側(機関投資家・一般投資家)の課題として、注文の入力が、場の開始前にしか認められず、利便性に欠けることがある。これは、もし仮にオークション取引市場での価格とVWAPとに開きがある状況でVWAP取引に参加できるとすれば、容易に予想が付く場終了時点でのそれらの価格差を利益に結び付ける取引ができることになってしまうからである。
【0007】
一方、供給側(証券会社・オークション取引市場)の課題として、証券会社が、投資家からVWAP値を指定した大口の注文を受けた場合、証券会社は、当該指定されたVWAP値での終値取引を実現するために、オークション取引市場に対して価格形成目的ではない、VWAPに追従することを目的とした大量の小口注文を発注および約定させていたことがある。この発注は、多くの証券会社では、複雑なアルゴリズムトレードを実装した発注システムにより行われており(人手でこれらの操作を行うのは非常に手間である)、証券会社側には当該システムの管理および維持ための高額なコストが生じていた。またこのような大量の小口注文は、オークション取引市場におけるシステムに大きな負荷を与え、オークション取引市場における価格形成を目的とした注文に対して大きな影響を及ぼしていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決する、VWAPベースの新たな取引を実現するVWAP取引市場システムおよびVWAP取引方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様としてのVWAP取引市場システムは、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理部と、
前記注文情報データベースにおいて前記第1の価格関係または前記第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備える。
【0010】
本発明の一態様としてのVWAP取引市場システムは、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理部と、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、前記注文情報データベースにおいて前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備える。
【0011】
本発明の一態様としてのVWAP取引方法は、
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理ステップと、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備える。
【0012】
本発明の一態様としてのVWAP取引方法は、
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにより受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理ステップと、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、従来の終値VWAP方式の問題点を解消した、VWAPベースの新たな取引手法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としてのVWAP取引市場システムを示すブロック図。
【図2】注文情報データベースの一例を示す図。
【図3】注文データを受け付け可能な否かの判定基準を示す図。
【図4】価格情報データベースの一例を示す図。
【図5】オークション取引市場での約定価格とVWAPの履歴のテーブルを示す図。
【図6】CP板の一例を示す図。
【図7】図6のCP板が更新された例を示す図。
【図8】図7のCP板が更新された例を示す図。
【図9】図8のCP板が更新された例を示す図。
【図10】クロス判定処理を説明するための図。
【図11】図1のVWAP取引市場システムの動作として注文データの受け付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】図1のVWAP取引市場システムの動作としてクロスポイント取引処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】顧客端末に表示するクロスポイント取引用画面の例を示す図。
【図14】顧客端末に表示するクロスポイント取引の詳細設定用画面の例を示す図。
【図15】第2の実施形態に係る注文情報データベースの一例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る約定処理の説明図。
【図17】第2の実施形態に係る約定処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
まず本実施形態の概要について説明する。本実施形態では、金融商品の売買をオークション方式で行うオークション取引市場とは別の新たなVWAP取引市場のシステムを設け、当該システムにおいてオークション取引市場とは独立した新たな方式による金融商品の取引を実現する。より詳細に、当該システムにおいて、本方式に基づく金融商品の売買注文を各取引参加者から事前に定めた銘柄について受け、オークション取引市場において当該銘柄の金融商品が約定するごとに、当該約定内容の詳細を記述した相場情報をオークション取引市場システムから受信して当該金融商品のVWAPを計算する。そして計算したVWAPと、当該金融商品のオークション取引市場の約定価格(最新約定価格)との大小関係が、その直前に当該銘柄の金融商品が約定した際の約定価格とそのとき計算されたVWAPの大小関係と逆転したか(価格とVWAPのクロスが発生)を検査する。当該クロスの発生が検出されたとき、VWAPとオークション取引市場価格とが一致したとみなし、当該銘柄の金融商品を指定した顧客の売買注文の約定処理(マッチング処理)を行う。この際、約定した注文の取引価格は、VWAPではなく、オークション取引市場での最新約定価格と同一価格とする。本実施形態ではこのように従来のオークション取引とは別個独立した、VWAPベースの新たな取引方式(クロスポイント取引)を提供する。
【0016】
以下、本実施形態では、金融商品として株式、取引参加者として証券会社を例にして説明を行う。ただし、本発明は、オークションマッチング方式で取引が行われている上場物商品(株・債券・為替・金利・商品、及びそれらのデリバティブ商品(先物・オプション))であれば株式に限定されず、広く他の種類の金融商品にも適用可能である。また取引参加者も証券会社に限定されず、たとえば債券等であれば銀行も含まれる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態としてのVWAP取引市場システム14を示すブロック図である。
【0019】
VWAP取引市場システム14の注文・約定IF101は、各証券会社(取引参加者:金融商品の取引資格をもつ法人)側に設けられた証券会社システム(取引参加者システム)12と第1の専用回線を介して接続されている。またVWAP取引市場システムのVWAP相場報道IF103はVWAP取引市場の相場情報(気配情報・約定情報)を取得する者(情報取得者:資格に制限はない)のシステム(相場情報取得者システム)と、第1の専用回線とは別の第2の専用回線を介して接続される。相場情報取得者システムは、証券会社システム12の他、多くの情報ベンダーのシステム21、一般企業のシステム22も含む。VWAP取引市場システム14にとって取引参加者および相場情報取得者はVWP取引市場への申請に基づく参加会員であり、会員のみ通信を許可するためにVWAP取引市場システム14は第1および第2の専用回線を用いて証券会社システムおよび相場情報取得者システムと情報のやりとりを行う。
【0020】
VWAP取引市場システム14のオークション相場報道IF102はオークション取引市場側に設けられたオークション取引市場システム13と第3の専用回線を介して接続されている。VWAP取引市場システム14はオークション取引市場の相場情報取得会員の立場であり、会員の資格でオークション取引市場の相場情報をオークション取引市場システム13から取得する。
【0021】
証券会社システム12は、顧客(機関投資家・一般投資家)側に設けられた顧客端末11と通信ネットワークを介して接続されている。証券会社システム12は証券会社の顧客から顧客端末11を介してVWAP取引市場への注文の要求を受け付ける。通信ネットワークは、たとえばインターネット等の広域ネットワークでもよいし、無線通信ネットワークでもよい。広域ネットワークの一部が携帯電話等の無線ネットワークを含んでいてもよい。また、広域ネットワークの場合、認証と暗号化を用いて安全な通信経路を形成して通信を行ってもよい。
【0022】
[顧客端末]
顧客端末11はパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ、携帯電話やゲーム機器等の移動体端末、ファクシミリ等、の通信機能を持った端末である。
【0023】
顧客端末11は、操作者の入力に基づきVWPA取引市場におけるクロスポイント取引の注文要求を作成して、接続先の証券会社システム12に送信する。顧客端末11は証券会社システム12とのみ接続し、VWAP取引市場システム14とは直接関連しない。
【0024】
顧客端末11は、顧客ID、パスワード、注文する株式の銘柄のID、株式の売買区分(「売り」または「買い」)、注文数量、場区分、約定処理の執行条件、の各種項目のデータの入力を受け付け、また有効期限の入力をオプションとして受け付ける。顧客端末11はこれらの入力に基づきクロスポイント取引の注文要求を作成する。データの入力は、キーボードまたはマウス等の入力インターフェースを介して行う。
【0025】
図13は顧客端末11における入力画面の一例を示す。
【0026】
顧客端末11は、たとえば接続先の証券会社システム12から提供されたクロスポイント取引用のフォームを画面に表示する。操作者は、当該フォームにおける各項目の欄に、必要なデータを入力する。
【0027】
入力は、ラジオボタン、チェックボックスまたはプルダウンボックス等による選択でもよいし、テキストによる直接入力でもよい。
【0028】
また、顧客IDは証券会社で顧客を識別するためのIDである。顧客IDは、証券会社システム内部のデータベースに記憶させておき、そこから顧客IDを自動的に読み出して当該フォームに入力もよい。
【0029】
ここで、場区分には、「前場」(たとえば9:00〜11:00)、「後場」(たとえば12:30〜15:00)および「全日場」(たとえば9:00〜11:00および12:30〜15:00)の3種類が存在する。各場は、オークション取引市場における場に一致する。
【0030】
注文数量の単位(売買の単位)は銘柄毎に事前に決まっており、その単位に従って入力する。
【0031】
執行条件は、VWAP取引市場システム14において注文の約定処理を執行するための条件であり、「成行」、「アップクロス(UC)」、「ダウンクロス(DC)」から選択する。各項目の詳細は後述する。「成行」は本発明の第1の執行条件、「アップクロス(UC)」は本発明の第2の執行条件、「ダウンクロス(DC)」は本発明の第3の執行条件に相当する。
【0032】
有効期限は、顧客端末11で作成する注文要求に応じて証券会社システム12からVWAP取引市場へ行われる注文の有効期限を表し、入力がない場合は、VWAP取引市場において当該注文は当日のみ有効であるとする。
【0033】
なお、VWAP取引市場での取引価格はVWAP取引市場システム14で自動的に決定されるため、顧客端末11では取引価格の指定(入力)は行わない。図13における詳細設定ボタンについては後述する。
【0034】
顧客端末11は、操作者から入力された各項目のデータを含む注文要求を生成し、生成した注文要求を証券会社システム12に送信する。顧客端末11は、送信した注文要求を内部の記憶装置に格納する。
【0035】
顧客端末11は、送信した注文要求の取り消しを受け付けてもよい。たとえば顧客端末11は、送信した注文要求の一覧を画面に表示し、ユーザから取り消したい注文要求の指定を受け付ける。顧客端末11は、ユーザから指定された注文要求の取り消し依頼を証券会社システム12に送信する。
【0036】
[証券会社システム]
図1の証券会社システム12は、接続された顧客端末11から注文要求を受信し、当該注文要求に基づき、VWAP取引市場におけるクロスポイント取引の注文データを作成して、VWAP取引市場システム14に送信する。また証券会社システム12は、取引参加者自身の注文データを作成してVWAP取引市場システム14に送信することも可能である。証券会社システム12はVWAP取引市場には取引参加員の資格で参加し、VWAP取引市場システム14の注文・約定IF101との間で注文入力および約定取得を行う。証券会社等の取引参加者はVWAP取引のための会員資格を持ち、会員コード(会員ID)を有し、当該会員コードは事前に証券会社システム12に記憶されている。
【0037】
証券会社システム12は、顧客端末11から注文要求を受信すると、注文要求に含まれる顧客IDおよびパスワードに基づき顧客認証を行う。証券会社システム12は顧客毎に顧客IDと顧客名称とパスワードとを保持したデータベースを保有しており、注文要求に含まれるのと同一の顧客IDがデータベースに登録されており、かつ注文要求に含まれるパスワードが当該顧客IDに関連づけられてデータベースに登録されているものと一致するときは、当該注文要求は正規の顧客からのものであると判断し、当該注文要求の受け付けを許可する。顧客IDが登録されていない場合またはパスワードが一致しない場合は、当該注文要求は正規の顧客からのものではないと判断し、当該注文要求の受け付けを許可しない。この場合、証券会社システム12は、顧客端末11にエラーメッセージを返してもよい。
【0038】
証券会社システム12は、当該注文要求の受け付けを許可したとき、当該注文要求に対して注文番号を設定し、自己・委託区分、部門ID・顧客IDおよび当該注文番号等からなるユニークな会員注文番号を生成する。そして当該注文要求に含まれていた株式の銘柄、注文数量、売買区分、場区分、執行条件および有効期限を抽出し、抽出したこれらのデータと、当該会員注文番号と、会員コード(会員ID)とを含む注文データを作成する。証券会社システム12は、このように作成した注文データを、VWAP取引市場システムの注文・約定IFで定義されたメッセージ形式によってVWAP取引市場システム14に送信し、また当該作成した注文データを内部の記憶装置に記憶する。記憶装置はハードディスク、メモリ装置など任意の記憶装置でよい。会員注文番号および会員コード(会員ID)の少なくとも一方は本願発明の取引参加者識別情報に相当する。
【0039】
また、証券会社システム12は、顧客端末11からオークション取引市場への注文要求も受け付けてもよい。この場合、証券会社システム12は、顧客端末11からの注文要求に応じてオークション取引市場への注文データ(所定の方法で生成した注文番号、銘柄、数量、場区分、取引方法(成行・指し値等))を生成してオークション取引市場システム13へ送信する。証券会社システム12は、注文データを送信したオークション取引市場システム13から当該注文が約定したか否かおよび約定した場合の約定内容等を含む応答データを受信し、当該注文要求を行った顧客端末11にその応答データの内容を通知する。また証券会社システム12は、オークション取引市場における相場情報(銘柄毎の気配値、約定価格、出来高等)を受信し、受信した相場情報を接続された顧客端末11に送信してもよい。
【0040】
なお、上述の相場情報取得システム(証券会社システム12,情報ベンダーシステム21、一般企業システム22)は、VWAP取引市場には情報取得参加員の資格で参加し、VWAP取引市場のVWAP相場報道IF103から後に詳しく述べる相場情報(約定情報・気配情報)を取得する。
【0041】
[オークション取引市場システム]
図1のオークション取引市場システム13は、オークション取引市場毎に設けられ、VWAP取引市場で取引される銘柄の代表的オークション取引市場である。オークション取引市場が複数ある場合は、VWAP取引市場が、対象となるオークション取引市場を選択する。オークション取引市場システム13は、該当するオークション取引市場における株式取引を取引日および場(前場、後場)ごとに管理している。たとえば買売注文(指し値注文、成行き注文等)の詳細情報、気配情報、約定した株式の約定内容(銘柄、約定価格および出来高(株数)の情報)、などを管理および記憶する。オークション取引市場システム13は、オークション方式で売買注文の約定処理(マッチング)を行い、売買注文を約定させる。
【0042】
オークション取引市場システム13は、オークション取引市場における株式の約定が発生するごとに、場区分、約定した株式の銘柄、約定価格、約定数量(出来高)、約定時刻およびオークション取引市場の識別情報、を含む相場情報をVWAP取引市場システム14に送信する。
【0043】
[VWAP取引市場システム]
図1のVWAP取引市場システム14は、注文・約定IF101(InterFace:インターフェース)、オークション相場報道IF102、VWAP相場報道IF103、注文情報データベース104、価格情報データベース105、注文情報管理部106、価格情報管理部107、場管理部108、記憶部109を備える。注文情報管理部106、価格情報管理部107、場管理部108の各機能は、たとえばコンピュータプログラムをコンピュータプロセッサに実行させることにより実現され、このためVWAP取引市場システム14は、当該コンピュータプログラムを実行するためのプロセッサ、および当該コンピュータプログラムを展開するとともに一時的な記憶領域として用いる揮発性または不揮発性のメモリ装置を備える。
【0044】
記憶部109は、本VWAP取引市場で取り扱う複数の銘柄の名称およびIDと、銘柄毎に参照すべきオークション取引市場のID(識別情報)を記憶している。本VWAP取引市場で取り扱う銘柄はオークション取引市場で取引される全銘柄ではなく、その中から選択された銘柄が記憶部109に事前に設定されている。
【0045】
場管理部108は、本VWAP取引市場における取引日および場(時間)をオークション取引市場ごとに管理する。取引日および場は、対応するオークション取引市場に一致する。場管理部108は、対応するオークション取引市場において、場(前場または後場)が開始されるごとに、クロスポイント取引処理の開始信号を価格情報管理部107および注文情報管理部106に出力し、当該場が終了するとクロスポイント取引処理の終了信号を価格情報管理部107および注文情報管理部106に出力する。
【0046】
たとえば場管理部108は、オークション取引市場毎に、取引日および場を記述したリストを予め保持し、このリストと、システムタイマに基づき、クロスポイント取引処理の開始および終了を管理する。または、場管理部108は、オークション取引市場システム13から場の開始および終了を示すデータを受信し、このデータの受信に応じてクロスポイント取引処理の開始および終了を管理することも可能である。
【0047】
注文・約定IF101は、証券会社システム12からクロスポイント取引の注文データ(会員注文番号、会員ID、株式の銘柄、注文数量、売買区分、執行条件、場区分、有効期限)を受信する。注文データは証券会社システム12のみから送られる。
【0048】
注文情報管理部(板情報管理部)106は、注文・約定IF101で受信された注文データが受付可能か否かを検査し、受付可能なときは当該注文データにユニークなVWAP注文番号を付与して、当該注文データを受け付けた日時(受付日時)とともに注文情報データベース104に格納する。一方、注文情報管理部106は、当該注文データを受付不能なときはエラーメッセージを証券会社システム12に返す。注文情報データベース104の一例を図2に示す。
【0049】
ここで注文データを受付可能か否かの判定は図3に示す受注判定基準に基づき行う。具体的に、前場に対する注文データは、前場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から前場の終了前まで受付可能であり、前場の終了後は受付不可であるとする。また、後場の注文データは、後場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から後場の終了前まではいつでも受け付け可能であり、後場の終了後は受付不可であるとする。全日場に対する注文データは、前場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から後場の終了前まではいつでも受付可能であり、後場の終了後は受付不可であるとする。
【0050】
注文情報管理部106は、注文情報データベース104に基づき、銘柄毎のCP板(クロスポイント板)を作成する。注文情報管理部106は、新たに注文データを受け付けるごとに、該当するCP板を更新する。
【0051】
注文情報管理部106は、CP板の作成のために、まず注文情報データベース104内の注文データを銘柄別に分類し、分類した注文データをさらに売買区分に従って「売り」のものと、「買い」のものとに分ける。「売り」の注文データは売り注文、「買い」の注文データは買い注文を表す。このように分けた売り注文と買い注文とを、場区分に従って前場・全日場のグループと、後場のグループに分類し、それぞれ売り板および買い板に配置する。そして売り板および買い板においてそれぞれ注文を受付日時に応じて並べる。
【0052】
図6はCP板の一例を示す。このCP板はある取引日およびある銘柄について作成されてものである。図示の注文番号はVWAP注文番号である。
【0053】
前場また全日場に関して、売り板側に、成行の売り注文(執行条件が横ハイフンの注文)が1つ、アップクロス(UC)の売り注文が2つ、ダウンクロスの売り注文が1つ存在する。それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、優先順位が高い順に右から左へ並べられている。
【0054】
また買い板側には、成行の買い注文が2つ、アップクロスの買い注文が2つ、ダウンクロスの買い注文が1つ存在する。それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、優先順位の高い順に左から右へ並べられている。
【0055】
数量セルにハッチングが施された注文は全日場の売り注文または買い注文であり、数量セルにハッチングが施されていない注文は前場の売り注文または買い注文である。なお執行条件(成行、アップクロス、ダウンクロス)の詳細は後述する。
【0056】
一方、後場に関しては、売り板側に、成行の売り注文が1つ、アップクロスの売り注文が1つ、ダウンクロスの売り注文が1つ存在し、それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、右から左へ並べられている。
【0057】
また、買い板側に、成行の買い注文が2つ、アップクロスの買い注文が1つ、ダウンクロスの買い注文が1つ存在し、それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、左から右へ並べられている。
【0058】
なお図6の例では売り板および買い板ともに注文が5個まで入るように見えるが、入力個数に制限は設けないものとする。
【0059】
オークション相場報道IF102は、オークション取引市場で約定した株式の約定内容を記述した相場情報を受信する。相場情報は、たとえばオークション取引市場ID、約定した銘柄、約定価格、数量(出来高)、場区分、約定時刻を含む。より詳細に、VWAP取引市場システム14はオークション取引市場で報道される相場情報を、オークション取引市場の情報取得会員の資格で、オークション取引市場システムが提供する相場報道IFを使用して取得する。
【0060】
価格情報管理部107は、オークション相場報道IF102で受信された相場情報を価格情報データベース105に格納する。価格情報データベース105の一例を図4に示す。
【0061】
なお、本VWAP取引市場で指定したのと異なるオークション取引市場から受信された銘柄の相場情報についてはこれを価格情報データベース105に格納せずに消去してもよい。
【0062】
価格情報管理部107は、オークション取引市場システム13から相場情報が受信されるごとに、当該相場情報に示される銘柄の株式のVWAP(出来高加重平均価格)を、現在の場(前場または後場)に対して計算する。
【0063】
ここでVWAPは、取引された金融商品(本例では株式)の出来高の加重平均価格であり、オークション取引市場での最も平均的な取引価格であるといえる。具体的に、VWAPは、下記式により計算される。
VWAP={Σ(約定価格×株数)}/{Σ株数} ・・・式(1)
【0064】
たとえばある銘柄について、オークション取引市場での約定の推移が(約定価格、株数)=(100,5000)、(99,3000)、(101,2000)、(102,1000)、(103,1000)、(102,1000)であったとすると、
VWAP
=(100*5000+99*3000+101*2000+102*1000+103*1000+102*1000)/(5000+3000+2000+1000+1000+1000)=100.4615
と計算される。
【0065】
価格情報管理部107は、計算されたVWAPと、そのときの相場情報(当該VWAPの計算に用いた相場情報)に含まれる約定価格との履歴を記憶部109に履歴テーブルとして記録する。履歴テーブルは、銘柄毎、かつ場毎に用意される。なお、当該履歴テーブルに、相場情報に記述された約定時刻を追加してもよい。当該履歴テーブルの一例(20XX年10月1日 銘柄A・前場)を図5に示す。後の参考のため約定時刻のフィールドにはT0,T1等の値を入れてある。
【0066】
価格情報管理部107は、VWAPを計算するごとに当該VWAPが計算された銘柄に対する約定処理を執行するか否かを上記履歴テーブルに基づき決定する(クロス判定処理)。
【0067】
このクロス判定処理では、VWAPと約定価格に関して、アップクロス(第1の価格関係)およびダウンクロス(第2の価格関係)のいずれか一方が成立するか否かを判定し、いずれか一方が成立したときは「クロス有り」を判定し、いずれも成立しないときは「クロス無し」を判定する。クロス有りが判定されたときは当該銘柄に対する約定処理を執行することを決定する。
【0068】
ここで「アップクロス」は、今回計算されたVWAP(すなわち最新のVWAP)が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算されたVWAP(すなわち上記最新のVWAPの1つ前に計算されたVWAP)が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと(第1の価格関係)を意味する。
【0069】
「ダウンクロス」は、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと(第2の価格関係)を意味する。
【0070】
アップクロスまたはダウンクロスの成立により、VWAPとオークション取引市場価格とが一致したと見なすことができる。
【0071】
以下、図10を用いてクロス判定処理の詳細について説明する。
【0072】
図10は、約定価格の推移グラフ(実線)とVWAPの推移グラフ(破線)を示す。これらの推移グラフは図5の履歴テーブル(20XX年10月1日 銘柄A・前場)に基づく。図中の横軸におけるT0、T1、T2・・・Tm+1は図5の履歴テーブルの約定時刻に対応する。
【0073】
図示のように、オークション取引市場において場(前場または後場)が開始された以降、最初に時刻T0で約定が発生し、このときの約定価格が初値となる。時刻T0のVWAPはこの初値と同一である。以降時刻T1、T2、T3・・・で約定が発生し、その都度、VWAPが計算される。
【0074】
ここで、時刻Tn+2のVWAPは時刻Tn+2の約定価格より小さく、時刻Tn+2の直前の時刻Tn+1におけるVWAPは時刻Tn+1の約定価格より大きい。すなわち、図の座標系において(時刻Tn+2、VWAP)と(時刻Tn+1、VWAP)間を結んだ線分と、(時刻Tn+2、約定価格)と(時刻Tn+1、約定価格)を結んだ線分が交差し、かつこの交差が約定価格の上昇時に生じる。このような約定価格の上昇時に線分が交差する状態がアップクロスに相当する。なお交差する線分の交点を便宜上、クロスポイント(ここではクロスポイントCP1)と称する。
【0075】
時刻Tn+6と時刻Tn+5の間でも同様にしてアップクロスが成立し、また時刻Tm+1と時刻Tmの間でも同様にアップクロスが成立する。なお時刻Tn+6と時刻Tn+5の間にはクロスポイントCP3が存在し、時刻m+1と時刻mにはクロスポイントCP5が存在する。
【0076】
時刻Tm+1より後は約定が発生せず、時刻Tm+1の約定価格が終値となり、時刻Tm+1のVWAPがVWAP終値となる。
【0077】
一方、時刻Tn+4のVWAPは時刻Tn+4の約定価格より大きく、時刻Tn+3のVWAPは時刻Tn+3の約定価格より小さい。すなわち、図の座標系において(時刻Tn+4、VWAP)と(時刻Tn+3、VWAP)間を結んだ線分と、(時刻Tn+4、約定価格)と(時刻Tn+3、約定価格)を結んだ線分が交差し、かつこの交差が約定価格の下降時に生じる。このような約定価格の下降時に線分が交差する状態がダウンクロスに相当する。ここでは線分の交点としてクロスポイントCP2が存在する。
【0078】
時刻Tn+8と時刻Tn+7の間でも同様にダウンクロスが成立し、時刻Tn+8と時刻Tn+7の間にはクロスポイントCP4が存在する。
【0079】
価格情報管理部107は上述のようにVWAPが新たに計算されるごとにクロス(アップクロスまたはダウンクロス)が発生したか否かを判定する。なお図示のように、Tn+2〜Tn+3間、Tn+4〜Tn+5、Tn+6〜Tn+7、Tn+8〜Tn+9の間ではクロスの発生は無い。また時刻T0からTn+1まで、およびTn+9からTmまでの間にもクロスがなかったとする。
【0080】
アップクロスとダウンクロスの定義から、アップクロスとダウンクロスとは互いに交互に現れる。図10の例ではアップクロス→ダウンクロス→アップクロス→ダウンクロス→アップクロスとなる。
【0081】
価格情報管理部107は、クロス有りを判定したとき(アップクロスまたはダウンクロスのいずれかが成立したとき)、クロス有りが判定された銘柄に対する約定処理の執行を指示する約定処理指示データを注文情報管理部106に送る。この際、約定処理指示データには、当該銘柄の取引価格として、今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格の指定を含め、さらに、発生したクロス種別(アップクロスまたはダウンクロス)と、場区分(現在の場の区分)とを含める。
【0082】
たとえば時刻Tn+2においてアップクロスの成立が決定されたときはTn+2のオークション取引市場の約定価格と同一価格が、VWAP取引市場の取引価格(約定価格)と指定される。また時刻Tn+4においてダウンクロスの成立が決定されたときは、Tn+4のオークション取引市場の約定価格と同一価格が、VWAP取引市場の取引価格と指定される。
【0083】
一方、価格情報管理部107は、クロス無しを判定したときは、当該銘柄について約定処理を行わないことを決定する。
【0084】
ここでVWAP取引市場における取引価格を今回受信された相場情報に記述された約定価格(最新約定価格)と同一価格とし、VWAPとしないのは、たとえばアップクロスのときにVWAPで該当銘柄の株式が約定(買い)した後、オークション取引市場で当該株式を売ることで、VWAPと上記約定価格との差分の利益を得ようとする裁定取引を阻止するためである。したがって、このような裁定取引を許容するのであればVWAPをVWAP取引市場における取引価格として採用することも可能である。
【0085】
なお、本実施形態ではクロス有りが判定されたときのみ約定処理が行われるため、場中、一度もクロスが発生しない場合は、約定処理は一度も行われないこととなる。ただし価格は一般的にVWAPとの乖離が高くなるとそれを縮小させる方向に動くので、ほとんどの場合クロスは発生するものと考えられる。
【0086】
注文情報管理部106では、価格情報管理部107からの約定処理指示データに含まれる銘柄および場区分に対応するCP板(図6参照)を特定し、特定したCP板に基づき約定処理を執行する。
【0087】
より詳細に、注文情報管理部106は、特定したCP板において、約定処理指示データに含まれるクロス種別(アップクロスまたはダウンクロス)に合致する執行条件を有する売り注文と買い注文とを、それぞれの優先順位に従って、マッチングさせる。
【0088】
前述したように執行条件には「成行」、「アップクロス」、「ダウンクロス」が存在する。
【0089】
執行条件の「成行」はアップクロスおよびダウンクロスのいずれか任意の一方が成立したときに約定処理を執行することを意味し、執行条件の「アップクロス」はアップクロスが成立したときのみ約定処理を執行することを意味し(ダウンクロスの成立では約定処理を執行しない)、執行条件の「ダウンクロス」はダウンクロスが成立したときのみ約定処理を執行することを意味する(アップクロスの成立では約定処理を執行しない)。
【0090】
以下、図6のテーブル例を用いて約定処理の執行例を示す。ここでは価格情報管理部107からの約定処理指示データに含まれるクロス種別が「アップクロス」、場区分が「前場」であるとする。すなわち前場でアップクロスが成立した場合を想定する。したがって図6の上段に示す前場取引+全日場取引のCP板が用いられる。
【0091】
クロス種別が「アップクロス」のため、約定処理の対象となるものは執行条件が「成行」および「アップクロス」の売り注文および買い注文である。
【0092】
まず図6の前場取引+全日場取引の板において「成行」および「アップクロス」の売り注文および買い注文についてみると、売り注文の合計数は125(=20+50+55)、買い注文の合計数は120(=25+20+30+45)である。従って、買い注文の方はすべての約定し、一方、売り注文の方は125−120=5の数量が不足する。
【0093】
具体的に、まず、注文番号1の売り注文の数量20と、注文番号3の買い注文の数量25のうちの20がマッチし、次に、注文番号4の売り注文の数量50のうち5と注文番号3の残りの数量5がマッチし、次に、注文番号4の売り注文の残りの数量45のうちの20と、注文番号5の買い注文の数量20とがマッチし、次に注文番号4の売り注文の残りの数量25と、注文番号6の買い注文の数量30のうちの25とがマッチし、次に注文番号10の売り注文の数量55のうちの5と、注文番号6の買い注文の残りの数量5とがマッチし、次に注文番号10の売り注文の残りの数量50のうちの45と、注文番号7の買い注文の数量45とがマッチし、最終的に、注文番号10の売り注文が数量5だけ残る。
【0094】
つまり、「成行」および「アップクロス」の売り注文のうち、優先順位の最も低い(受付日時の最も遅い)注文番号10の売り注文については、数量55のうち、数量50の分の注文は約定するが、残りの数量5の注文は約定されずに残る。この結果、テーブルは図7のように更新される。すなわち注文番号1,4の売り注文と注文番号3,5,6,7の買い注文が約定してCP板からなくなり、注文番号10の売り注文については未約定分の数量5が残る。またダウンクロスの注文番号8の売り注文と注文番号2の買い注文も約定対象とされずそのまま残る。残ったこれらの売り注文および買い注文は受付日時に応じて再度並べ直される。
【0095】
図7のCP板の状態で証券会社システム12からたとえば本テーブルと同一銘柄について、前場を指定した注文データが受け付けられたとする。この場合、注文情報管理部106は当該注文データに基づき、当該CP板を更新する。たとえば当該注文データの執行条件が「アップクロス」、売買区分が「買い」、場区分が「前場」、数量が「10」の場合、図8に示すようにCP板が更新される(注文番号18が付与されたとする)。この新たに追加された買い注文は次回のアップクロスの成立時に約定処理の対象とされる。このように本実施形態ではオークション取引市場での場の開催中でもリアルタイムにクロスポイント注文が可能である。
【0096】
注文情報管理部106は、前場を指定した注文(売り注文および買い注文)のうち前場で約定できなかったものまたは一部約定した場合の残り分については注文を失効させる。一方、全日場を指定した注文については前場で約定できなかったものまたは上記残り分については持ち越され、同じ板(「前場+全日場」)にそのまま残る。なお、持ち越された注文の受付日時は、前場と同じ値を維持する。
【0097】
たとえば仮に図8のテーブル状態で前場が終了したとすると、CP板は図9のように更新される。「成行」を指定した注文番号10の売り注文が後場に持ち越される。一方、「前場」を指定した注文番号8の売り注文、「前場」を指定した注文番号2、18の買い注文は持ち越されることなく、失効する。
【0098】
なお、注文データに有効期限が指定されている場合は、未約定分(残り分)は最大で有効期限まで繰り越され、有効期限満了時においても未約定分が存在するときのみその注文は失効する。
【0099】
ここで後場が開始された後は、前場+全日場の板と、後場の板とでそれぞれ別個に約定処理が行われ、価格情報管理部107でのクロス判定処理は全日場と後場とでそれぞれ別個に行われる。全日場に対しては、当初初日(前場)からの積み重ねでVWAPを計算し(つまり前場の最終VWAPを後場で取得される相場情報で逐次更新し)、クロス判定を行う。後場に対しては、後場の開始後に取得された約定情報のみを用いてVWAPの計算を行い、クロス判定処理を行う。したがって、全日場と後場とではVWAP値が全く異なる動きになる。なお前場終了後に受け付けられた全日場の注文は前場+全日場の板に入れられる。
【0100】
注文・約定IF101は、証券会社システム12から受け付けた注文データに対する応答データとして約定通知または失効通知を、当該証券会社システム12(取引参加者)宛に送信する。
【0101】
すなわち、約定(注文の一部が約定した場合も含む)された注文データに対しては約定通知を送信し、全く約定しなかった注文データに対しては失効通知を送信する。有効期限の指定により次の日以降に繰り越された注文については繰り越し通知を送信してもよい。
【0102】
約定通知は、たとえば注文が約定したことを識別する識別子、会員注文番号、会員ID、銘柄、注文数量、約定数量、約定価格、売買区分、および場区分を含む。約定が複数回に分かれて行われた場合、約定通知は約定の都度、送信される。
【0103】
失効通知は、たとえば注文が失効したことを識別する識別子、会員注文番号、会員ID、株式の銘柄、注文数量、売買区分、および場区分を含む。
【0104】
ここで注文情報管理部106は、CP板を更新(注文データの受信に基づく更新、または約定処理による更新)した際は、更新後のテーブルに基づく気配情報を生成する。VWAP相場報道IF103は、生成された気配情報を証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0105】
気配情報は、たとえばテーブル更新後における、場所別(前場、後場、全日場)、執行条件(成行、アップクロス、ダウンクロス)別および売買別の合計注文数量の情報を含む。さらに気配情報は、売買別の注文の件数も含んでも良い。またその他の情報を含んでもよい。
【0106】
また注文情報管理部106は、注文が約定するごとに、約定した銘柄、取引価格(約定価格)および約定数量を含む約定情報を生成する。約定情報には会員注文番号や会員IDは含めない。VWAP相場報道IF103は当該約定情報を、証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0107】
証券会社システム12は、VWAP取引市場システム14から受信した約定通知または失効通知を、該当する注文要求を行った顧客端末11に送信する。
【0108】
顧客端末11は、証券会社システム12からの約定通知または失効通知を出力(たとえば画面に表示)する。これにより顧客は、所望する銘柄の株式を取得または売却できたか、また取得または売却できた場合の約定数量および取引価格を知ることができる。
【0109】
また、証券会社システム12は、VWAP取引市場システム14から受信した気配情報および約定情報を自身の表示装置に表示するとともに、接続されたすべての顧客端末11に送信する。また顧客端末11、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22は、それぞれ受信した気配情報および約定情報を出力(たとえば画面に表示)する。これにより相場情報取得者および顧客は、VWAP取引市場で扱われる銘柄の動向を知ることができる。
【0110】
なお約定した株式と金銭の決済は証券会社の決済システムで行われ、VWAP取引市場システム自体はそれに直接関与しない。株式の場合の券面口座を管理するのは主に証券保管振替機構になり、証券会社決済システムと証券保管振替機構との間での決済指示で、証券保管振替機構内の証券口座の保有者の名義書き換えが行われ、金銭授受は証券会社決済システムと一般的には信託銀行口座との間で行われる。
【0111】
以下、図11および図12を用いてVWAP取引市場システム14の動作の流れについて説明する。
【0112】
図11は、VWAP取引市場システム14における注文データの受け付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0113】
ステップS101において、注文・約定IF101が、証券会社システム12からクロスポイント取引の注文データが受信されたか否かを検査する。
【0114】
注文データが受信されたとき(S101のYES)、注文情報管理部106は、当該注文データを受付可能か否かを検査する(ステップS102)。すなわち注文データ内容(銘柄・執行条件・数量等)に間違いがないか(つまり銘柄・執行条件・数量等が指定可能な値となっているか)、注文データの受付日時が図3の基準を満たすか否かを検査する。
【0115】
受け付け可能なときは(S102のYES)、当該注文データに対しユニークな注文番号を設定し、当該注文データと注文番号と受付日時とを注文情報データベース104に格納する(S103)。当該注文データの受付日時はたとえば当該注文データの受信日時を用いることができる。
【0116】
一方、注文情報管理部106は、当該注文データを受付不能なときは(S102のNO)、エラーメッセージを証券会社システム12に返し(S104)、ステップS101に戻る。
【0117】
ステップS105において、注文情報管理部106は、当該注文データに対応するCP板を作成または更新する。
【0118】
ステップS106において、注文情報管理部106は、CP板の更新による板状況の変化を表す気配情報を、VWAP相場報道IFを介して証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。この後、ステップS101に戻る。なお注文情報管理部106は、証券会社システム12から注文のキャンセルを受信した場合も、ステップS105,S106と同様にしてCP板を更新し、相場情報を送信する。
【0119】
図12は、図1のVWAP取引市場システムにおけるクロスポイント取引処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
ステップS201において、場管理部108は、所定の時刻になったとき、場(前場または後場)の開始を決定し、注文情報管理部106および価格情報管理部107に場の開始を示す開始信号を通知する。
【0121】
ステップS202おいて、たとえば一定時間毎に、価格情報管理部107は、オークション相場報道IF102で相場情報が受信されているか否かを検査する。オークション相場報道IF102はたとえば受信される相場情報を内部にバッファリングし、価格情報管理部107からの問い合わせを受けたときは、バッファリングしている相場情報をすべて価格情報管理部107に出力する。
【0122】
オークション相場報道IF102で相場情報が受信されているとき(YES)、価格情報管理部107は、当該相場情報を価格情報データベース105に格納するとともに、VWAPを計算する(S203)。一方、相場情報が受信されていないときは(NO)、場が終了したか否かの判定を行うステップS209に進む。
【0123】
ステップS204において、価格情報管理部107は、当該VWAPと上記相場情報に含まれるオークション取引市場の約定価格と、1つ前に計算されたVWAPとそのときのオークション取引市場の約定価格とに基づき、クロス判定処理を行う。
【0124】
クロス判定処理によりクロス有りが判定されたとき、価格情報管理部107は約定処理指示データを注文情報管理部106に送る(S205)。
【0125】
クロス無しが判定されたとき、価格情報管理部107は、約定処理を執行しないことを決定し(S206)、ステップS209に進む。
【0126】
ステップS207において、注文情報管理部106は、価格情報管理部107からの約定処理指示データに応じて、該当するCP板を特定し、約定処理を執行する。
【0127】
ステップS208において、注文情報管理部106は、約定した注文データに対する約定通知を生成し、生成した約定通知を注文・約定IF101を介して、当該注文データを送信した証券会社システムに送信する。また注文情報管理部106は、約定した株式の約定内容を含む約定情報、および約定処理で更新されたCP板の情報を含む気配情報を、VWAP相場報道IF103を介して、証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0128】
ステップS209において、場管理部108が、現在の場が終了したか否かを検査する。
【0129】
場管理部108が場の終了を決定したときは(S209のYES)、注文情報管理部106および価格情報管理部107に場の終了を示す終了信号を通知し(S210)、まだ場が終了していないとき、ステップS202に戻る。
【0130】
ステップS211において、注文情報管理部106および価格情報管理部107は、場管理部108から終了データの通知を受けたときは、各々処理の終了を決定する。この際、注文情報管理部106は、最後まで約定しなかった注文の失効通知を、当該注文を行った証券会社システム12に注文・約定IF101を介して送信する。
【0131】
上記実施形態では、VWAP取引市場の取引価格をオークション取引市場価格と一致させたが、これは、両価格の差が通常大きくならないことを想定している。しかしながら、例外的には、これらの価格差が大きくなる可能性も否定できない。そこで、価格情報管理部107では、今回計算されたVWAPと今回受信された相場情報に記述された約定価格との差が所定の閾値以上のときはアップクロスまたはダウンクロスが達成されても約定処理を行わないことを決定してもよい。この場合、価格情報管理部107は、アップクロスまたはダウンクロスが達成されても、約定処理指示データを注文情報管理部106に送出しない。
【0132】
また上記実施形態では「アップクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報の約定価格より小さくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと」を意味するとして定義したが、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する場合もアップクロスに含めてもよい。すなわち、「アップクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格以下でありかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと」を意味するとして定義してもよい。
【0133】
また「ダウンクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと」を意味するとして定義したが、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する場合もアップクロスに含めてもよい。すなわち、「ダウンクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格以上でありかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと」を意味するとして定義してもよい。
【0134】
また今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致しかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する可能性も考えられるが、このようなケースが発生した場合は、アップクロスおよびダウンクロスの両方が発生したとして扱っても良い。
【0135】
以上、本実施形態によれば、オークション取引市場における場の開始前のみならず、場中もVWAP取引市場におけるクロスポイント取引に参加でき、顧客にとって利便性の高い新たな取引市場の提供が可能となる。
【0136】
また本実施形態による取引価格は、オークション取引市場での価格と一致しており、したがってその時点での評価損益は発生せず、VWAP値にも近い価格である。また、本VWAP取引市場での売買価格が、オークション取引市場での価格と一致していることで、オークション取引市場の価格形成には影響を及ぼさない。したがって、当該VWAP取引市場は、価格形成を目的とするオークション取引市場との明確な市場の分離を図ることができ、これにより正常な証券取引市場の形成が可能となる。
【0137】
また本実施形態のクロスポイント取引は相対取引(証券会社対顧客の取引)ではなく顧客対顧客の売買取引であるため、手間がかからず手数料が少なくて済むメリットがある。
【0138】
このようにVWAP取引市場は従来のVWAP終値取引の問題を解消したVWAPベースの新たな取引手法を実現しており、従来のVWAP終値取引に代えて利用することで、証券会社は、従来行っていたVWAP追従のための大量の小口注文をオークション取引市場へ行う必要はなくなり、これにより、証券会社は、複雑なアルゴリズムトレードの発注システムの管理および維持を無くして、費用を削減することができる。一方、オークション取引市場ではこのような大量の小口注文が減り、そのシステム負荷を大きく低減することが可能となる。
【0139】
なお、本実施形態の取引方式に、VWAP終値取引方式を組み合わせ、より幅広い範囲のVWAP取引市場を形成することも可能である。
【0140】
(第2の実施形態)
本第2の実施形態において、顧客端末11では複数の注文数量を指定可能に構成される。
【0141】
たとえば顧客端末11で図13の画面の「詳細設定ボタン」を押下して図14の詳細設定フォームを表示し、当該フォームで「複数指定」を選択することで、複数の注文数量を行うことを決定し、各入力欄CP1〜CP3に0以上の数量を入力する。本例では最大で3個の数量を指定可能だが、4個以上の数量を指定可能にしてもよい。入力欄に入力した数量は将来にわたる複数のクロスポイントに対する注文予約を表し、CP1から順番に約定処理の対象とされる。
【0142】
顧客端末は、前述の実施形態と同様に注文要求を生成して証券会社システム12に送信するが、この際、注文要求には、各入力欄CP1〜CP3に入力された複数の数量を含める。
【0143】
証券会社システム12は、前述の実施形態と同様に、顧客端末から受信された注文要求の内容を内部のデータベースに保存するとともに、クロスポイント取引の注文データを生成してVWAP取引市場システム14に送信する。この際、注文データには、当該注文要求に含まれる複数の注文数量を含める。
【0144】
VWAP取引市場システム14の注文情報管理部106では、当該注文データをVWAP注文番号および受付日時とともに注文情報データベース104に格納し、上述の第1の実施形態と同様して、CP板を生成または更新する。第1の実施形態では銘柄に応じて1つのCP板を生成したが、本第2の実施形態では、指定可能な注文数量の個数だけCP板を生成する。たとえば図14の例の場合、入力欄CP1〜CP3に対応して、3個のCP板1〜3を生成する。
【0145】
たとえば注文情報データベースが図15の場合のCP板は図16(A)のようになる。
【0146】
ただし、図16(A)のCP板の例では、説明の簡単のため、買い注文のみを示し、売り注文の表記は省略している。
【0147】
また図15の例では、説明の簡単のためVWAP注文番号(図15では注文番号と略記されている。以降の説明において同様)、受付時刻、売買区分、執行条件、数量のみ表示し、受付日、会員注文番号、会員ID、場区分等の表示は省略している。
【0148】
図15において、数量は、最大で3個指定されており、左に位置するものほど、執行条件を満たす、時間的に先のクロスポイントに対応する。たとえば注文番号1の数量(10,15,20)は数量10が、最も先に達成される上記執行条件を満たすクロスポイントに対応し、数量15がその次に達成される上記執行条件を満たすクロスポイント、数量20がさらにその次に達成される上記執行条件を満たすクロスポイントに対応する。顧客端末では数量10は入力欄CP1、数量15は入力欄CP2,数量20は入力欄CP3に入力されている。また注文番号3の数量(20,30)は、顧客端末では、入力欄CP1、CP2に数量20,30が入力され、CP3に0(またはヌル)が入力されたものである。
【0149】
図15および図16(A)から理解されるように、最大で3つ指定された数量のうち、入力欄CP1に入力された数量の注文はCP板1、入力欄CP2に入力された数量の注文はCP板2、入力欄CP3に入力された数量の注文はCP板3に追加される。売り注文の場合も同様にしてCP板1〜3にそれぞれ追加される(図示せず)。
【0150】
価格情報管理部107から約定処理指示データが入力された場合の注文情報管理部106における約定処理は以下のようにして行われる。
【0151】
ここでは一例として前場において9時15分にアップクロスが達成され、そのときCP板1に3つの売り注文
[注文番号2、数量:40、執行条件:成行]、
[注文番号4,数量:30、執行条件:アップクロス]
[注文番号7、数量:10、執行条件:成行]
が存在したとする(図15参照)。成行の合計注文数は50、アップクロスの合計注文数は30である。
【0152】
本実施形態に係る約定処理ではCP板1に基づいて買い注文と売り注文とのマッチングが行われ、CP板2,3はそれぞれ約定処理後におけるCP板1,2の更新用のデータとして用いられる。
【0153】
上記のようにアップクロスが達成されたことから、CP板1において、「成行」または「アップクロス」の執行条件を有する売り注文と買い注文とがマッチングされる。ここでは、上記した注文番号2,4,7の3つの売り注文と、図16(A)における注文番号1,3,6,8の買い注文とがマッチングされる。
【0154】
約定処理は第1の実施形態と同様、受付時刻の優先順位に従って行われ、この結果、図17に示すように、注文番号1,3,6の買い注文はすべて約定し(全出来)、注文番号8の買い注文は数量20のみ約定し、残りの数量5は未約定となる(内出来)。また3つの売り注文はすべて約定する。執行条件がダウンクロスの注文は約定処理の対象外となる。
【0155】
約定処理の終了後、CP板2に基づきCP板1の更新処理を行う。以下、買い注文に対するCP板1の更新処理を説明するが、売り注文の場合も同様にして行う。
【0156】
(ステップA)まずCP板1において残数が発生した注文と、約定処理の対象となったが全く約定しなかった(1つも約定しなかった)注文について、それぞれ同じ注文番号の注文がCP板2に存在するか否かを検査する。そのような注文が存在する場合は、CP板2における当該注文の数量を、CP板1における同一注文番号の板に加算するとともに、CP板2から当該注文を消去する。
【0157】
図16(A)および図17の例ではCP板2における注文番号8の注文の数量35が、CP板1の同番号の注文(残数量5)に追加されて、図16(B)のように数量40に更新される。この際、CP板2における注文番号8の注文は消去される。
【0158】
(ステップB)次にCP板2において、達成された執行条件と同一もしくは成行の注文が存在するかどうかを検査し、存在する場合は、そのような注文を1つ上位のCP板1に移動(シフト)する。同様に、CP板3において、達成された執行条件と同一の注文が存在するかどうかを検査し、存在する場合は、そのような注文を1つ上位のCP板2に移動(シフト)する。一般にCP板がN(Nは2以上の整数)個存在するときは、CP板M(Mは2以上N以下の整数)に存在する、達成された執行条件と同一もしくは成行の注文をCP板M−1に移動(シフト)する。CP板1において執行の対象とならなかった注文についてはそのままCP板1に残す。
【0159】
図16(A)および図17の例ではCP板2における注文番号1,3,6の注文が図16(B)のようにCP板1に移動される。注文番号6の注文はその執行条件がダウンクロスであり、達成された執行条件(アップクロスまたは成行)と異なるため、そのままCP板1,2に残る。またCP板3における注文番号1,6,8の注文がCP板2に図16(B)のように移動される。
【0160】
(ステップC)最後に、CP板1、2における各注文を受付時刻に従ってソートする(並べる)。なお各注文のソートは、ステップAまたはBの処理と同時に行ってもよい。
【0161】
なお図16(B)のCP板1〜3の状態で、新規の注文データが受け付けられたときは、当該注文データで指定された各数量の注文(買い注文または売り注文)がCP板1〜3の最後尾に(すなわち最も低い優先順位で)追加される。
【0162】
たとえば数量(10,20,30)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量10の買い注文、CP板2の最後尾に数量20の買い注文、CP板3の最後尾に数量30の買い注文が追加される。または、数量(40,50)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量40の買い注文、CP板2の最後尾に数量50の買い注文が追加される。または数量(60)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量60の買い注文が追加される。
【0163】
ここでCP板1に基づく売買注文の約定処理の際、最大約定数を導入し、マッチングを最大約定数の数量で細分化して行うことも可能である。
【0164】
たとえば1つの買いの注文データ(注文番号:11、数量:100,100,100、執行条件:アップクロス)と、2つの売りの注文データ(注文番号:12、数量:100,100,100、執行条件:アップクロス)、(注文番号:13,数量:5,0、0、執行条件:アップクロス)が存在するとする。
【0165】
具体的に、CP板1には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12、数量:100、執行条件:アップクロス)、
売り注文(注文番号:13,数量:5、執行条件:アップクロス)が存在し、
CP2板には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12、数量:100、執行条件:アップクロス)が存在し、
CP3板には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12,数量100、執行条件:アップクロス)が存在するとする。
【0166】
ただし注文番号12の売りの注文は、注文番号13の売りの注文よりも受付時刻が早いとする。またCP板1〜3にはこれら以外の注文は存在せず、新たな注文も発生しないとする。
【0167】
この場合、これまで述べた処理に従えば、時間優先のため、計3回のアップクロスの達成により、CP板1〜3に存在する注文番号11の買い注文と、注文番号12の売り注文はすべて約定するが、注文番号13の売り注文は1つの数量も約定しないこととなる。
【0168】
そこで本第2の実施形態では最大約定数を導入し、最大約定数の範囲でマッチングを行うことで、注文番号13の注文にも約定の機会を与える。最大約定数は銘柄売買単位の整数倍として予め決定される。以下、該当銘柄の最大約定数を50に設定した場合の処理例を示す。
【0169】
まず1回目のアップクロス達成で、CP板1において、注文番号12の売り注文の数量50と、注文番号11の買い注文の数量50がマッチし、次に、注文番号13の売り注文の数量5と注文番号11の買い注文の数量5とがマッチし、次に、注文番号12の売り注文の数量45と、注文番号11の買い注文の数量45とがマッチする。注文番号12の売り注文の数量5が残る。この残った数量5の売り注文は、CP板更新処理により、CP板2の数量100と加算されて数量105となり、CP板2に存在する買い注文がCP板1にシフトされる。またCP板3の売り注文および買い注文がCP板2にシフトされる。以降、同様にして処理を継続する。
【0170】
(第3の実施形態)
第1〜第2の実施形態ではオークション取引市場の約定価格とVWAPとがクロスしたとき(アップクロスまたはダウンクロスが発生したとき)に約定処理を執行したが、本実施形態では、オークション取引市場の約定価格とVWAPとの差の大きさが閾値以内になったときに約定処理を執行する場合を示す。
【0171】
本実施形態では、オークション取引市場システム13から相場情報が受信されるごとに、価格情報管理部107は、オークション取引市場の約定価格と、計算されるVWAPとを比較する。そして、価格情報管理部107は、これらの価格の差の大きさが閾値以内であるときは、約定処理の執行を決定し、注文情報管理部106に約定処理指示データを出力する。
【0172】
ここで、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値以内」の場合は、より細かく、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値内かつ当該約定価格がVWAP以上(あるいはVWAPより大)」(第3の価格関係)の場合と、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値内かつ当該約定価格がVWAP未満(あるいはVWAP以下」(第4の価格関係)の場合とに分けることができる。
【0173】
本実施形態の構成および動作は、上記第3の価格関係が第1〜2の実施形態のアップクロス(第1の価格関係)に対応し、第4の価格関係が第1〜2の実施形態のダウンクロス(第2の価格関係)に対応するとして、第1〜第2の実施形態の説明を読み替えたものに相当する。
【0174】
以上、本実施形態によっても、上述の第1〜2の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0175】
11:顧客端末
12:証券会社システム(取引参加者システム)
13:オークション取引市場システム
14:VWAP取引市場システム
101:注文・約定IF
102:オークション相場報道IF
103:VWAP相場報道IF
104:注文情報データベース
105:価格情報データベース
106:注文情報管理部
107:価格情報管理部
108:場管理部
109:記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、出来高加重平均価格(VWAP:Volume Weighted Average Price)取引市場システムおよびVWAP取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
証券取引を出来高加重平均価格(VWAP:Volume Weighted Average Price)で行いたいというニーズは高い。これは、機関投資家の大口取引による市場価格への影響の排除、一般投資家の高値買い・安値売りのリスクの排除、といった事をVWAP取引で実現可能であるためである。
【0003】
現在多くの証券会社でVWAP取引は行われているが、それらはオークション取引市場の場(前場・後場・全日場)の終了時点でのVWAP値による相対取引(証券会社対顧客の取引)である。このような取引は、終値VWAP方式と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−504455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の終値VWAP方式には以下の課題がある。
【0006】
まず需要側(機関投資家・一般投資家)の課題として、注文の入力が、場の開始前にしか認められず、利便性に欠けることがある。これは、もし仮にオークション取引市場での価格とVWAPとに開きがある状況でVWAP取引に参加できるとすれば、容易に予想が付く場終了時点でのそれらの価格差を利益に結び付ける取引ができることになってしまうからである。
【0007】
一方、供給側(証券会社・オークション取引市場)の課題として、証券会社が、投資家からVWAP値を指定した大口の注文を受けた場合、証券会社は、当該指定されたVWAP値での終値取引を実現するために、オークション取引市場に対して価格形成目的ではない、VWAPに追従することを目的とした大量の小口注文を発注および約定させていたことがある。この発注は、多くの証券会社では、複雑なアルゴリズムトレードを実装した発注システムにより行われており(人手でこれらの操作を行うのは非常に手間である)、証券会社側には当該システムの管理および維持ための高額なコストが生じていた。またこのような大量の小口注文は、オークション取引市場におけるシステムに大きな負荷を与え、オークション取引市場における価格形成を目的とした注文に対して大きな影響を及ぼしていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決する、VWAPベースの新たな取引を実現するVWAP取引市場システムおよびVWAP取引方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様としてのVWAP取引市場システムは、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理部と、
前記注文情報データベースにおいて前記第1の価格関係または前記第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備える。
【0010】
本発明の一態様としてのVWAP取引市場システムは、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理部と、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、前記注文情報データベースにおいて前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備える。
【0011】
本発明の一態様としてのVWAP取引方法は、
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理ステップと、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備える。
【0012】
本発明の一態様としてのVWAP取引方法は、
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにより受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理ステップと、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、従来の終値VWAP方式の問題点を解消した、VWAPベースの新たな取引手法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としてのVWAP取引市場システムを示すブロック図。
【図2】注文情報データベースの一例を示す図。
【図3】注文データを受け付け可能な否かの判定基準を示す図。
【図4】価格情報データベースの一例を示す図。
【図5】オークション取引市場での約定価格とVWAPの履歴のテーブルを示す図。
【図6】CP板の一例を示す図。
【図7】図6のCP板が更新された例を示す図。
【図8】図7のCP板が更新された例を示す図。
【図9】図8のCP板が更新された例を示す図。
【図10】クロス判定処理を説明するための図。
【図11】図1のVWAP取引市場システムの動作として注文データの受け付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】図1のVWAP取引市場システムの動作としてクロスポイント取引処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】顧客端末に表示するクロスポイント取引用画面の例を示す図。
【図14】顧客端末に表示するクロスポイント取引の詳細設定用画面の例を示す図。
【図15】第2の実施形態に係る注文情報データベースの一例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る約定処理の説明図。
【図17】第2の実施形態に係る約定処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
まず本実施形態の概要について説明する。本実施形態では、金融商品の売買をオークション方式で行うオークション取引市場とは別の新たなVWAP取引市場のシステムを設け、当該システムにおいてオークション取引市場とは独立した新たな方式による金融商品の取引を実現する。より詳細に、当該システムにおいて、本方式に基づく金融商品の売買注文を各取引参加者から事前に定めた銘柄について受け、オークション取引市場において当該銘柄の金融商品が約定するごとに、当該約定内容の詳細を記述した相場情報をオークション取引市場システムから受信して当該金融商品のVWAPを計算する。そして計算したVWAPと、当該金融商品のオークション取引市場の約定価格(最新約定価格)との大小関係が、その直前に当該銘柄の金融商品が約定した際の約定価格とそのとき計算されたVWAPの大小関係と逆転したか(価格とVWAPのクロスが発生)を検査する。当該クロスの発生が検出されたとき、VWAPとオークション取引市場価格とが一致したとみなし、当該銘柄の金融商品を指定した顧客の売買注文の約定処理(マッチング処理)を行う。この際、約定した注文の取引価格は、VWAPではなく、オークション取引市場での最新約定価格と同一価格とする。本実施形態ではこのように従来のオークション取引とは別個独立した、VWAPベースの新たな取引方式(クロスポイント取引)を提供する。
【0016】
以下、本実施形態では、金融商品として株式、取引参加者として証券会社を例にして説明を行う。ただし、本発明は、オークションマッチング方式で取引が行われている上場物商品(株・債券・為替・金利・商品、及びそれらのデリバティブ商品(先物・オプション))であれば株式に限定されず、広く他の種類の金融商品にも適用可能である。また取引参加者も証券会社に限定されず、たとえば債券等であれば銀行も含まれる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態としてのVWAP取引市場システム14を示すブロック図である。
【0019】
VWAP取引市場システム14の注文・約定IF101は、各証券会社(取引参加者:金融商品の取引資格をもつ法人)側に設けられた証券会社システム(取引参加者システム)12と第1の専用回線を介して接続されている。またVWAP取引市場システムのVWAP相場報道IF103はVWAP取引市場の相場情報(気配情報・約定情報)を取得する者(情報取得者:資格に制限はない)のシステム(相場情報取得者システム)と、第1の専用回線とは別の第2の専用回線を介して接続される。相場情報取得者システムは、証券会社システム12の他、多くの情報ベンダーのシステム21、一般企業のシステム22も含む。VWAP取引市場システム14にとって取引参加者および相場情報取得者はVWP取引市場への申請に基づく参加会員であり、会員のみ通信を許可するためにVWAP取引市場システム14は第1および第2の専用回線を用いて証券会社システムおよび相場情報取得者システムと情報のやりとりを行う。
【0020】
VWAP取引市場システム14のオークション相場報道IF102はオークション取引市場側に設けられたオークション取引市場システム13と第3の専用回線を介して接続されている。VWAP取引市場システム14はオークション取引市場の相場情報取得会員の立場であり、会員の資格でオークション取引市場の相場情報をオークション取引市場システム13から取得する。
【0021】
証券会社システム12は、顧客(機関投資家・一般投資家)側に設けられた顧客端末11と通信ネットワークを介して接続されている。証券会社システム12は証券会社の顧客から顧客端末11を介してVWAP取引市場への注文の要求を受け付ける。通信ネットワークは、たとえばインターネット等の広域ネットワークでもよいし、無線通信ネットワークでもよい。広域ネットワークの一部が携帯電話等の無線ネットワークを含んでいてもよい。また、広域ネットワークの場合、認証と暗号化を用いて安全な通信経路を形成して通信を行ってもよい。
【0022】
[顧客端末]
顧客端末11はパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ、携帯電話やゲーム機器等の移動体端末、ファクシミリ等、の通信機能を持った端末である。
【0023】
顧客端末11は、操作者の入力に基づきVWPA取引市場におけるクロスポイント取引の注文要求を作成して、接続先の証券会社システム12に送信する。顧客端末11は証券会社システム12とのみ接続し、VWAP取引市場システム14とは直接関連しない。
【0024】
顧客端末11は、顧客ID、パスワード、注文する株式の銘柄のID、株式の売買区分(「売り」または「買い」)、注文数量、場区分、約定処理の執行条件、の各種項目のデータの入力を受け付け、また有効期限の入力をオプションとして受け付ける。顧客端末11はこれらの入力に基づきクロスポイント取引の注文要求を作成する。データの入力は、キーボードまたはマウス等の入力インターフェースを介して行う。
【0025】
図13は顧客端末11における入力画面の一例を示す。
【0026】
顧客端末11は、たとえば接続先の証券会社システム12から提供されたクロスポイント取引用のフォームを画面に表示する。操作者は、当該フォームにおける各項目の欄に、必要なデータを入力する。
【0027】
入力は、ラジオボタン、チェックボックスまたはプルダウンボックス等による選択でもよいし、テキストによる直接入力でもよい。
【0028】
また、顧客IDは証券会社で顧客を識別するためのIDである。顧客IDは、証券会社システム内部のデータベースに記憶させておき、そこから顧客IDを自動的に読み出して当該フォームに入力もよい。
【0029】
ここで、場区分には、「前場」(たとえば9:00〜11:00)、「後場」(たとえば12:30〜15:00)および「全日場」(たとえば9:00〜11:00および12:30〜15:00)の3種類が存在する。各場は、オークション取引市場における場に一致する。
【0030】
注文数量の単位(売買の単位)は銘柄毎に事前に決まっており、その単位に従って入力する。
【0031】
執行条件は、VWAP取引市場システム14において注文の約定処理を執行するための条件であり、「成行」、「アップクロス(UC)」、「ダウンクロス(DC)」から選択する。各項目の詳細は後述する。「成行」は本発明の第1の執行条件、「アップクロス(UC)」は本発明の第2の執行条件、「ダウンクロス(DC)」は本発明の第3の執行条件に相当する。
【0032】
有効期限は、顧客端末11で作成する注文要求に応じて証券会社システム12からVWAP取引市場へ行われる注文の有効期限を表し、入力がない場合は、VWAP取引市場において当該注文は当日のみ有効であるとする。
【0033】
なお、VWAP取引市場での取引価格はVWAP取引市場システム14で自動的に決定されるため、顧客端末11では取引価格の指定(入力)は行わない。図13における詳細設定ボタンについては後述する。
【0034】
顧客端末11は、操作者から入力された各項目のデータを含む注文要求を生成し、生成した注文要求を証券会社システム12に送信する。顧客端末11は、送信した注文要求を内部の記憶装置に格納する。
【0035】
顧客端末11は、送信した注文要求の取り消しを受け付けてもよい。たとえば顧客端末11は、送信した注文要求の一覧を画面に表示し、ユーザから取り消したい注文要求の指定を受け付ける。顧客端末11は、ユーザから指定された注文要求の取り消し依頼を証券会社システム12に送信する。
【0036】
[証券会社システム]
図1の証券会社システム12は、接続された顧客端末11から注文要求を受信し、当該注文要求に基づき、VWAP取引市場におけるクロスポイント取引の注文データを作成して、VWAP取引市場システム14に送信する。また証券会社システム12は、取引参加者自身の注文データを作成してVWAP取引市場システム14に送信することも可能である。証券会社システム12はVWAP取引市場には取引参加員の資格で参加し、VWAP取引市場システム14の注文・約定IF101との間で注文入力および約定取得を行う。証券会社等の取引参加者はVWAP取引のための会員資格を持ち、会員コード(会員ID)を有し、当該会員コードは事前に証券会社システム12に記憶されている。
【0037】
証券会社システム12は、顧客端末11から注文要求を受信すると、注文要求に含まれる顧客IDおよびパスワードに基づき顧客認証を行う。証券会社システム12は顧客毎に顧客IDと顧客名称とパスワードとを保持したデータベースを保有しており、注文要求に含まれるのと同一の顧客IDがデータベースに登録されており、かつ注文要求に含まれるパスワードが当該顧客IDに関連づけられてデータベースに登録されているものと一致するときは、当該注文要求は正規の顧客からのものであると判断し、当該注文要求の受け付けを許可する。顧客IDが登録されていない場合またはパスワードが一致しない場合は、当該注文要求は正規の顧客からのものではないと判断し、当該注文要求の受け付けを許可しない。この場合、証券会社システム12は、顧客端末11にエラーメッセージを返してもよい。
【0038】
証券会社システム12は、当該注文要求の受け付けを許可したとき、当該注文要求に対して注文番号を設定し、自己・委託区分、部門ID・顧客IDおよび当該注文番号等からなるユニークな会員注文番号を生成する。そして当該注文要求に含まれていた株式の銘柄、注文数量、売買区分、場区分、執行条件および有効期限を抽出し、抽出したこれらのデータと、当該会員注文番号と、会員コード(会員ID)とを含む注文データを作成する。証券会社システム12は、このように作成した注文データを、VWAP取引市場システムの注文・約定IFで定義されたメッセージ形式によってVWAP取引市場システム14に送信し、また当該作成した注文データを内部の記憶装置に記憶する。記憶装置はハードディスク、メモリ装置など任意の記憶装置でよい。会員注文番号および会員コード(会員ID)の少なくとも一方は本願発明の取引参加者識別情報に相当する。
【0039】
また、証券会社システム12は、顧客端末11からオークション取引市場への注文要求も受け付けてもよい。この場合、証券会社システム12は、顧客端末11からの注文要求に応じてオークション取引市場への注文データ(所定の方法で生成した注文番号、銘柄、数量、場区分、取引方法(成行・指し値等))を生成してオークション取引市場システム13へ送信する。証券会社システム12は、注文データを送信したオークション取引市場システム13から当該注文が約定したか否かおよび約定した場合の約定内容等を含む応答データを受信し、当該注文要求を行った顧客端末11にその応答データの内容を通知する。また証券会社システム12は、オークション取引市場における相場情報(銘柄毎の気配値、約定価格、出来高等)を受信し、受信した相場情報を接続された顧客端末11に送信してもよい。
【0040】
なお、上述の相場情報取得システム(証券会社システム12,情報ベンダーシステム21、一般企業システム22)は、VWAP取引市場には情報取得参加員の資格で参加し、VWAP取引市場のVWAP相場報道IF103から後に詳しく述べる相場情報(約定情報・気配情報)を取得する。
【0041】
[オークション取引市場システム]
図1のオークション取引市場システム13は、オークション取引市場毎に設けられ、VWAP取引市場で取引される銘柄の代表的オークション取引市場である。オークション取引市場が複数ある場合は、VWAP取引市場が、対象となるオークション取引市場を選択する。オークション取引市場システム13は、該当するオークション取引市場における株式取引を取引日および場(前場、後場)ごとに管理している。たとえば買売注文(指し値注文、成行き注文等)の詳細情報、気配情報、約定した株式の約定内容(銘柄、約定価格および出来高(株数)の情報)、などを管理および記憶する。オークション取引市場システム13は、オークション方式で売買注文の約定処理(マッチング)を行い、売買注文を約定させる。
【0042】
オークション取引市場システム13は、オークション取引市場における株式の約定が発生するごとに、場区分、約定した株式の銘柄、約定価格、約定数量(出来高)、約定時刻およびオークション取引市場の識別情報、を含む相場情報をVWAP取引市場システム14に送信する。
【0043】
[VWAP取引市場システム]
図1のVWAP取引市場システム14は、注文・約定IF101(InterFace:インターフェース)、オークション相場報道IF102、VWAP相場報道IF103、注文情報データベース104、価格情報データベース105、注文情報管理部106、価格情報管理部107、場管理部108、記憶部109を備える。注文情報管理部106、価格情報管理部107、場管理部108の各機能は、たとえばコンピュータプログラムをコンピュータプロセッサに実行させることにより実現され、このためVWAP取引市場システム14は、当該コンピュータプログラムを実行するためのプロセッサ、および当該コンピュータプログラムを展開するとともに一時的な記憶領域として用いる揮発性または不揮発性のメモリ装置を備える。
【0044】
記憶部109は、本VWAP取引市場で取り扱う複数の銘柄の名称およびIDと、銘柄毎に参照すべきオークション取引市場のID(識別情報)を記憶している。本VWAP取引市場で取り扱う銘柄はオークション取引市場で取引される全銘柄ではなく、その中から選択された銘柄が記憶部109に事前に設定されている。
【0045】
場管理部108は、本VWAP取引市場における取引日および場(時間)をオークション取引市場ごとに管理する。取引日および場は、対応するオークション取引市場に一致する。場管理部108は、対応するオークション取引市場において、場(前場または後場)が開始されるごとに、クロスポイント取引処理の開始信号を価格情報管理部107および注文情報管理部106に出力し、当該場が終了するとクロスポイント取引処理の終了信号を価格情報管理部107および注文情報管理部106に出力する。
【0046】
たとえば場管理部108は、オークション取引市場毎に、取引日および場を記述したリストを予め保持し、このリストと、システムタイマに基づき、クロスポイント取引処理の開始および終了を管理する。または、場管理部108は、オークション取引市場システム13から場の開始および終了を示すデータを受信し、このデータの受信に応じてクロスポイント取引処理の開始および終了を管理することも可能である。
【0047】
注文・約定IF101は、証券会社システム12からクロスポイント取引の注文データ(会員注文番号、会員ID、株式の銘柄、注文数量、売買区分、執行条件、場区分、有効期限)を受信する。注文データは証券会社システム12のみから送られる。
【0048】
注文情報管理部(板情報管理部)106は、注文・約定IF101で受信された注文データが受付可能か否かを検査し、受付可能なときは当該注文データにユニークなVWAP注文番号を付与して、当該注文データを受け付けた日時(受付日時)とともに注文情報データベース104に格納する。一方、注文情報管理部106は、当該注文データを受付不能なときはエラーメッセージを証券会社システム12に返す。注文情報データベース104の一例を図2に示す。
【0049】
ここで注文データを受付可能か否かの判定は図3に示す受注判定基準に基づき行う。具体的に、前場に対する注文データは、前場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から前場の終了前まで受付可能であり、前場の終了後は受付不可であるとする。また、後場の注文データは、後場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から後場の終了前まではいつでも受け付け可能であり、後場の終了後は受付不可であるとする。全日場に対する注文データは、前場の立会開始時刻の所定時間前(たとえば1時間前)から後場の終了前まではいつでも受付可能であり、後場の終了後は受付不可であるとする。
【0050】
注文情報管理部106は、注文情報データベース104に基づき、銘柄毎のCP板(クロスポイント板)を作成する。注文情報管理部106は、新たに注文データを受け付けるごとに、該当するCP板を更新する。
【0051】
注文情報管理部106は、CP板の作成のために、まず注文情報データベース104内の注文データを銘柄別に分類し、分類した注文データをさらに売買区分に従って「売り」のものと、「買い」のものとに分ける。「売り」の注文データは売り注文、「買い」の注文データは買い注文を表す。このように分けた売り注文と買い注文とを、場区分に従って前場・全日場のグループと、後場のグループに分類し、それぞれ売り板および買い板に配置する。そして売り板および買い板においてそれぞれ注文を受付日時に応じて並べる。
【0052】
図6はCP板の一例を示す。このCP板はある取引日およびある銘柄について作成されてものである。図示の注文番号はVWAP注文番号である。
【0053】
前場また全日場に関して、売り板側に、成行の売り注文(執行条件が横ハイフンの注文)が1つ、アップクロス(UC)の売り注文が2つ、ダウンクロスの売り注文が1つ存在する。それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、優先順位が高い順に右から左へ並べられている。
【0054】
また買い板側には、成行の買い注文が2つ、アップクロスの買い注文が2つ、ダウンクロスの買い注文が1つ存在する。それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、優先順位の高い順に左から右へ並べられている。
【0055】
数量セルにハッチングが施された注文は全日場の売り注文または買い注文であり、数量セルにハッチングが施されていない注文は前場の売り注文または買い注文である。なお執行条件(成行、アップクロス、ダウンクロス)の詳細は後述する。
【0056】
一方、後場に関しては、売り板側に、成行の売り注文が1つ、アップクロスの売り注文が1つ、ダウンクロスの売り注文が1つ存在し、それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、右から左へ並べられている。
【0057】
また、買い板側に、成行の買い注文が2つ、アップクロスの買い注文が1つ、ダウンクロスの買い注文が1つ存在し、それぞれ受付日時の早い順に高い優先順位が付与され、左から右へ並べられている。
【0058】
なお図6の例では売り板および買い板ともに注文が5個まで入るように見えるが、入力個数に制限は設けないものとする。
【0059】
オークション相場報道IF102は、オークション取引市場で約定した株式の約定内容を記述した相場情報を受信する。相場情報は、たとえばオークション取引市場ID、約定した銘柄、約定価格、数量(出来高)、場区分、約定時刻を含む。より詳細に、VWAP取引市場システム14はオークション取引市場で報道される相場情報を、オークション取引市場の情報取得会員の資格で、オークション取引市場システムが提供する相場報道IFを使用して取得する。
【0060】
価格情報管理部107は、オークション相場報道IF102で受信された相場情報を価格情報データベース105に格納する。価格情報データベース105の一例を図4に示す。
【0061】
なお、本VWAP取引市場で指定したのと異なるオークション取引市場から受信された銘柄の相場情報についてはこれを価格情報データベース105に格納せずに消去してもよい。
【0062】
価格情報管理部107は、オークション取引市場システム13から相場情報が受信されるごとに、当該相場情報に示される銘柄の株式のVWAP(出来高加重平均価格)を、現在の場(前場または後場)に対して計算する。
【0063】
ここでVWAPは、取引された金融商品(本例では株式)の出来高の加重平均価格であり、オークション取引市場での最も平均的な取引価格であるといえる。具体的に、VWAPは、下記式により計算される。
VWAP={Σ(約定価格×株数)}/{Σ株数} ・・・式(1)
【0064】
たとえばある銘柄について、オークション取引市場での約定の推移が(約定価格、株数)=(100,5000)、(99,3000)、(101,2000)、(102,1000)、(103,1000)、(102,1000)であったとすると、
VWAP
=(100*5000+99*3000+101*2000+102*1000+103*1000+102*1000)/(5000+3000+2000+1000+1000+1000)=100.4615
と計算される。
【0065】
価格情報管理部107は、計算されたVWAPと、そのときの相場情報(当該VWAPの計算に用いた相場情報)に含まれる約定価格との履歴を記憶部109に履歴テーブルとして記録する。履歴テーブルは、銘柄毎、かつ場毎に用意される。なお、当該履歴テーブルに、相場情報に記述された約定時刻を追加してもよい。当該履歴テーブルの一例(20XX年10月1日 銘柄A・前場)を図5に示す。後の参考のため約定時刻のフィールドにはT0,T1等の値を入れてある。
【0066】
価格情報管理部107は、VWAPを計算するごとに当該VWAPが計算された銘柄に対する約定処理を執行するか否かを上記履歴テーブルに基づき決定する(クロス判定処理)。
【0067】
このクロス判定処理では、VWAPと約定価格に関して、アップクロス(第1の価格関係)およびダウンクロス(第2の価格関係)のいずれか一方が成立するか否かを判定し、いずれか一方が成立したときは「クロス有り」を判定し、いずれも成立しないときは「クロス無し」を判定する。クロス有りが判定されたときは当該銘柄に対する約定処理を執行することを決定する。
【0068】
ここで「アップクロス」は、今回計算されたVWAP(すなわち最新のVWAP)が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算されたVWAP(すなわち上記最新のVWAPの1つ前に計算されたVWAP)が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと(第1の価格関係)を意味する。
【0069】
「ダウンクロス」は、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと(第2の価格関係)を意味する。
【0070】
アップクロスまたはダウンクロスの成立により、VWAPとオークション取引市場価格とが一致したと見なすことができる。
【0071】
以下、図10を用いてクロス判定処理の詳細について説明する。
【0072】
図10は、約定価格の推移グラフ(実線)とVWAPの推移グラフ(破線)を示す。これらの推移グラフは図5の履歴テーブル(20XX年10月1日 銘柄A・前場)に基づく。図中の横軸におけるT0、T1、T2・・・Tm+1は図5の履歴テーブルの約定時刻に対応する。
【0073】
図示のように、オークション取引市場において場(前場または後場)が開始された以降、最初に時刻T0で約定が発生し、このときの約定価格が初値となる。時刻T0のVWAPはこの初値と同一である。以降時刻T1、T2、T3・・・で約定が発生し、その都度、VWAPが計算される。
【0074】
ここで、時刻Tn+2のVWAPは時刻Tn+2の約定価格より小さく、時刻Tn+2の直前の時刻Tn+1におけるVWAPは時刻Tn+1の約定価格より大きい。すなわち、図の座標系において(時刻Tn+2、VWAP)と(時刻Tn+1、VWAP)間を結んだ線分と、(時刻Tn+2、約定価格)と(時刻Tn+1、約定価格)を結んだ線分が交差し、かつこの交差が約定価格の上昇時に生じる。このような約定価格の上昇時に線分が交差する状態がアップクロスに相当する。なお交差する線分の交点を便宜上、クロスポイント(ここではクロスポイントCP1)と称する。
【0075】
時刻Tn+6と時刻Tn+5の間でも同様にしてアップクロスが成立し、また時刻Tm+1と時刻Tmの間でも同様にアップクロスが成立する。なお時刻Tn+6と時刻Tn+5の間にはクロスポイントCP3が存在し、時刻m+1と時刻mにはクロスポイントCP5が存在する。
【0076】
時刻Tm+1より後は約定が発生せず、時刻Tm+1の約定価格が終値となり、時刻Tm+1のVWAPがVWAP終値となる。
【0077】
一方、時刻Tn+4のVWAPは時刻Tn+4の約定価格より大きく、時刻Tn+3のVWAPは時刻Tn+3の約定価格より小さい。すなわち、図の座標系において(時刻Tn+4、VWAP)と(時刻Tn+3、VWAP)間を結んだ線分と、(時刻Tn+4、約定価格)と(時刻Tn+3、約定価格)を結んだ線分が交差し、かつこの交差が約定価格の下降時に生じる。このような約定価格の下降時に線分が交差する状態がダウンクロスに相当する。ここでは線分の交点としてクロスポイントCP2が存在する。
【0078】
時刻Tn+8と時刻Tn+7の間でも同様にダウンクロスが成立し、時刻Tn+8と時刻Tn+7の間にはクロスポイントCP4が存在する。
【0079】
価格情報管理部107は上述のようにVWAPが新たに計算されるごとにクロス(アップクロスまたはダウンクロス)が発生したか否かを判定する。なお図示のように、Tn+2〜Tn+3間、Tn+4〜Tn+5、Tn+6〜Tn+7、Tn+8〜Tn+9の間ではクロスの発生は無い。また時刻T0からTn+1まで、およびTn+9からTmまでの間にもクロスがなかったとする。
【0080】
アップクロスとダウンクロスの定義から、アップクロスとダウンクロスとは互いに交互に現れる。図10の例ではアップクロス→ダウンクロス→アップクロス→ダウンクロス→アップクロスとなる。
【0081】
価格情報管理部107は、クロス有りを判定したとき(アップクロスまたはダウンクロスのいずれかが成立したとき)、クロス有りが判定された銘柄に対する約定処理の執行を指示する約定処理指示データを注文情報管理部106に送る。この際、約定処理指示データには、当該銘柄の取引価格として、今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格の指定を含め、さらに、発生したクロス種別(アップクロスまたはダウンクロス)と、場区分(現在の場の区分)とを含める。
【0082】
たとえば時刻Tn+2においてアップクロスの成立が決定されたときはTn+2のオークション取引市場の約定価格と同一価格が、VWAP取引市場の取引価格(約定価格)と指定される。また時刻Tn+4においてダウンクロスの成立が決定されたときは、Tn+4のオークション取引市場の約定価格と同一価格が、VWAP取引市場の取引価格と指定される。
【0083】
一方、価格情報管理部107は、クロス無しを判定したときは、当該銘柄について約定処理を行わないことを決定する。
【0084】
ここでVWAP取引市場における取引価格を今回受信された相場情報に記述された約定価格(最新約定価格)と同一価格とし、VWAPとしないのは、たとえばアップクロスのときにVWAPで該当銘柄の株式が約定(買い)した後、オークション取引市場で当該株式を売ることで、VWAPと上記約定価格との差分の利益を得ようとする裁定取引を阻止するためである。したがって、このような裁定取引を許容するのであればVWAPをVWAP取引市場における取引価格として採用することも可能である。
【0085】
なお、本実施形態ではクロス有りが判定されたときのみ約定処理が行われるため、場中、一度もクロスが発生しない場合は、約定処理は一度も行われないこととなる。ただし価格は一般的にVWAPとの乖離が高くなるとそれを縮小させる方向に動くので、ほとんどの場合クロスは発生するものと考えられる。
【0086】
注文情報管理部106では、価格情報管理部107からの約定処理指示データに含まれる銘柄および場区分に対応するCP板(図6参照)を特定し、特定したCP板に基づき約定処理を執行する。
【0087】
より詳細に、注文情報管理部106は、特定したCP板において、約定処理指示データに含まれるクロス種別(アップクロスまたはダウンクロス)に合致する執行条件を有する売り注文と買い注文とを、それぞれの優先順位に従って、マッチングさせる。
【0088】
前述したように執行条件には「成行」、「アップクロス」、「ダウンクロス」が存在する。
【0089】
執行条件の「成行」はアップクロスおよびダウンクロスのいずれか任意の一方が成立したときに約定処理を執行することを意味し、執行条件の「アップクロス」はアップクロスが成立したときのみ約定処理を執行することを意味し(ダウンクロスの成立では約定処理を執行しない)、執行条件の「ダウンクロス」はダウンクロスが成立したときのみ約定処理を執行することを意味する(アップクロスの成立では約定処理を執行しない)。
【0090】
以下、図6のテーブル例を用いて約定処理の執行例を示す。ここでは価格情報管理部107からの約定処理指示データに含まれるクロス種別が「アップクロス」、場区分が「前場」であるとする。すなわち前場でアップクロスが成立した場合を想定する。したがって図6の上段に示す前場取引+全日場取引のCP板が用いられる。
【0091】
クロス種別が「アップクロス」のため、約定処理の対象となるものは執行条件が「成行」および「アップクロス」の売り注文および買い注文である。
【0092】
まず図6の前場取引+全日場取引の板において「成行」および「アップクロス」の売り注文および買い注文についてみると、売り注文の合計数は125(=20+50+55)、買い注文の合計数は120(=25+20+30+45)である。従って、買い注文の方はすべての約定し、一方、売り注文の方は125−120=5の数量が不足する。
【0093】
具体的に、まず、注文番号1の売り注文の数量20と、注文番号3の買い注文の数量25のうちの20がマッチし、次に、注文番号4の売り注文の数量50のうち5と注文番号3の残りの数量5がマッチし、次に、注文番号4の売り注文の残りの数量45のうちの20と、注文番号5の買い注文の数量20とがマッチし、次に注文番号4の売り注文の残りの数量25と、注文番号6の買い注文の数量30のうちの25とがマッチし、次に注文番号10の売り注文の数量55のうちの5と、注文番号6の買い注文の残りの数量5とがマッチし、次に注文番号10の売り注文の残りの数量50のうちの45と、注文番号7の買い注文の数量45とがマッチし、最終的に、注文番号10の売り注文が数量5だけ残る。
【0094】
つまり、「成行」および「アップクロス」の売り注文のうち、優先順位の最も低い(受付日時の最も遅い)注文番号10の売り注文については、数量55のうち、数量50の分の注文は約定するが、残りの数量5の注文は約定されずに残る。この結果、テーブルは図7のように更新される。すなわち注文番号1,4の売り注文と注文番号3,5,6,7の買い注文が約定してCP板からなくなり、注文番号10の売り注文については未約定分の数量5が残る。またダウンクロスの注文番号8の売り注文と注文番号2の買い注文も約定対象とされずそのまま残る。残ったこれらの売り注文および買い注文は受付日時に応じて再度並べ直される。
【0095】
図7のCP板の状態で証券会社システム12からたとえば本テーブルと同一銘柄について、前場を指定した注文データが受け付けられたとする。この場合、注文情報管理部106は当該注文データに基づき、当該CP板を更新する。たとえば当該注文データの執行条件が「アップクロス」、売買区分が「買い」、場区分が「前場」、数量が「10」の場合、図8に示すようにCP板が更新される(注文番号18が付与されたとする)。この新たに追加された買い注文は次回のアップクロスの成立時に約定処理の対象とされる。このように本実施形態ではオークション取引市場での場の開催中でもリアルタイムにクロスポイント注文が可能である。
【0096】
注文情報管理部106は、前場を指定した注文(売り注文および買い注文)のうち前場で約定できなかったものまたは一部約定した場合の残り分については注文を失効させる。一方、全日場を指定した注文については前場で約定できなかったものまたは上記残り分については持ち越され、同じ板(「前場+全日場」)にそのまま残る。なお、持ち越された注文の受付日時は、前場と同じ値を維持する。
【0097】
たとえば仮に図8のテーブル状態で前場が終了したとすると、CP板は図9のように更新される。「成行」を指定した注文番号10の売り注文が後場に持ち越される。一方、「前場」を指定した注文番号8の売り注文、「前場」を指定した注文番号2、18の買い注文は持ち越されることなく、失効する。
【0098】
なお、注文データに有効期限が指定されている場合は、未約定分(残り分)は最大で有効期限まで繰り越され、有効期限満了時においても未約定分が存在するときのみその注文は失効する。
【0099】
ここで後場が開始された後は、前場+全日場の板と、後場の板とでそれぞれ別個に約定処理が行われ、価格情報管理部107でのクロス判定処理は全日場と後場とでそれぞれ別個に行われる。全日場に対しては、当初初日(前場)からの積み重ねでVWAPを計算し(つまり前場の最終VWAPを後場で取得される相場情報で逐次更新し)、クロス判定を行う。後場に対しては、後場の開始後に取得された約定情報のみを用いてVWAPの計算を行い、クロス判定処理を行う。したがって、全日場と後場とではVWAP値が全く異なる動きになる。なお前場終了後に受け付けられた全日場の注文は前場+全日場の板に入れられる。
【0100】
注文・約定IF101は、証券会社システム12から受け付けた注文データに対する応答データとして約定通知または失効通知を、当該証券会社システム12(取引参加者)宛に送信する。
【0101】
すなわち、約定(注文の一部が約定した場合も含む)された注文データに対しては約定通知を送信し、全く約定しなかった注文データに対しては失効通知を送信する。有効期限の指定により次の日以降に繰り越された注文については繰り越し通知を送信してもよい。
【0102】
約定通知は、たとえば注文が約定したことを識別する識別子、会員注文番号、会員ID、銘柄、注文数量、約定数量、約定価格、売買区分、および場区分を含む。約定が複数回に分かれて行われた場合、約定通知は約定の都度、送信される。
【0103】
失効通知は、たとえば注文が失効したことを識別する識別子、会員注文番号、会員ID、株式の銘柄、注文数量、売買区分、および場区分を含む。
【0104】
ここで注文情報管理部106は、CP板を更新(注文データの受信に基づく更新、または約定処理による更新)した際は、更新後のテーブルに基づく気配情報を生成する。VWAP相場報道IF103は、生成された気配情報を証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0105】
気配情報は、たとえばテーブル更新後における、場所別(前場、後場、全日場)、執行条件(成行、アップクロス、ダウンクロス)別および売買別の合計注文数量の情報を含む。さらに気配情報は、売買別の注文の件数も含んでも良い。またその他の情報を含んでもよい。
【0106】
また注文情報管理部106は、注文が約定するごとに、約定した銘柄、取引価格(約定価格)および約定数量を含む約定情報を生成する。約定情報には会員注文番号や会員IDは含めない。VWAP相場報道IF103は当該約定情報を、証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0107】
証券会社システム12は、VWAP取引市場システム14から受信した約定通知または失効通知を、該当する注文要求を行った顧客端末11に送信する。
【0108】
顧客端末11は、証券会社システム12からの約定通知または失効通知を出力(たとえば画面に表示)する。これにより顧客は、所望する銘柄の株式を取得または売却できたか、また取得または売却できた場合の約定数量および取引価格を知ることができる。
【0109】
また、証券会社システム12は、VWAP取引市場システム14から受信した気配情報および約定情報を自身の表示装置に表示するとともに、接続されたすべての顧客端末11に送信する。また顧客端末11、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22は、それぞれ受信した気配情報および約定情報を出力(たとえば画面に表示)する。これにより相場情報取得者および顧客は、VWAP取引市場で扱われる銘柄の動向を知ることができる。
【0110】
なお約定した株式と金銭の決済は証券会社の決済システムで行われ、VWAP取引市場システム自体はそれに直接関与しない。株式の場合の券面口座を管理するのは主に証券保管振替機構になり、証券会社決済システムと証券保管振替機構との間での決済指示で、証券保管振替機構内の証券口座の保有者の名義書き換えが行われ、金銭授受は証券会社決済システムと一般的には信託銀行口座との間で行われる。
【0111】
以下、図11および図12を用いてVWAP取引市場システム14の動作の流れについて説明する。
【0112】
図11は、VWAP取引市場システム14における注文データの受け付け処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0113】
ステップS101において、注文・約定IF101が、証券会社システム12からクロスポイント取引の注文データが受信されたか否かを検査する。
【0114】
注文データが受信されたとき(S101のYES)、注文情報管理部106は、当該注文データを受付可能か否かを検査する(ステップS102)。すなわち注文データ内容(銘柄・執行条件・数量等)に間違いがないか(つまり銘柄・執行条件・数量等が指定可能な値となっているか)、注文データの受付日時が図3の基準を満たすか否かを検査する。
【0115】
受け付け可能なときは(S102のYES)、当該注文データに対しユニークな注文番号を設定し、当該注文データと注文番号と受付日時とを注文情報データベース104に格納する(S103)。当該注文データの受付日時はたとえば当該注文データの受信日時を用いることができる。
【0116】
一方、注文情報管理部106は、当該注文データを受付不能なときは(S102のNO)、エラーメッセージを証券会社システム12に返し(S104)、ステップS101に戻る。
【0117】
ステップS105において、注文情報管理部106は、当該注文データに対応するCP板を作成または更新する。
【0118】
ステップS106において、注文情報管理部106は、CP板の更新による板状況の変化を表す気配情報を、VWAP相場報道IFを介して証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。この後、ステップS101に戻る。なお注文情報管理部106は、証券会社システム12から注文のキャンセルを受信した場合も、ステップS105,S106と同様にしてCP板を更新し、相場情報を送信する。
【0119】
図12は、図1のVWAP取引市場システムにおけるクロスポイント取引処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
ステップS201において、場管理部108は、所定の時刻になったとき、場(前場または後場)の開始を決定し、注文情報管理部106および価格情報管理部107に場の開始を示す開始信号を通知する。
【0121】
ステップS202おいて、たとえば一定時間毎に、価格情報管理部107は、オークション相場報道IF102で相場情報が受信されているか否かを検査する。オークション相場報道IF102はたとえば受信される相場情報を内部にバッファリングし、価格情報管理部107からの問い合わせを受けたときは、バッファリングしている相場情報をすべて価格情報管理部107に出力する。
【0122】
オークション相場報道IF102で相場情報が受信されているとき(YES)、価格情報管理部107は、当該相場情報を価格情報データベース105に格納するとともに、VWAPを計算する(S203)。一方、相場情報が受信されていないときは(NO)、場が終了したか否かの判定を行うステップS209に進む。
【0123】
ステップS204において、価格情報管理部107は、当該VWAPと上記相場情報に含まれるオークション取引市場の約定価格と、1つ前に計算されたVWAPとそのときのオークション取引市場の約定価格とに基づき、クロス判定処理を行う。
【0124】
クロス判定処理によりクロス有りが判定されたとき、価格情報管理部107は約定処理指示データを注文情報管理部106に送る(S205)。
【0125】
クロス無しが判定されたとき、価格情報管理部107は、約定処理を執行しないことを決定し(S206)、ステップS209に進む。
【0126】
ステップS207において、注文情報管理部106は、価格情報管理部107からの約定処理指示データに応じて、該当するCP板を特定し、約定処理を執行する。
【0127】
ステップS208において、注文情報管理部106は、約定した注文データに対する約定通知を生成し、生成した約定通知を注文・約定IF101を介して、当該注文データを送信した証券会社システムに送信する。また注文情報管理部106は、約定した株式の約定内容を含む約定情報、および約定処理で更新されたCP板の情報を含む気配情報を、VWAP相場報道IF103を介して、証券会社システム12、情報ベンダーシステム21および一般企業システム22に送信する。
【0128】
ステップS209において、場管理部108が、現在の場が終了したか否かを検査する。
【0129】
場管理部108が場の終了を決定したときは(S209のYES)、注文情報管理部106および価格情報管理部107に場の終了を示す終了信号を通知し(S210)、まだ場が終了していないとき、ステップS202に戻る。
【0130】
ステップS211において、注文情報管理部106および価格情報管理部107は、場管理部108から終了データの通知を受けたときは、各々処理の終了を決定する。この際、注文情報管理部106は、最後まで約定しなかった注文の失効通知を、当該注文を行った証券会社システム12に注文・約定IF101を介して送信する。
【0131】
上記実施形態では、VWAP取引市場の取引価格をオークション取引市場価格と一致させたが、これは、両価格の差が通常大きくならないことを想定している。しかしながら、例外的には、これらの価格差が大きくなる可能性も否定できない。そこで、価格情報管理部107では、今回計算されたVWAPと今回受信された相場情報に記述された約定価格との差が所定の閾値以上のときはアップクロスまたはダウンクロスが達成されても約定処理を行わないことを決定してもよい。この場合、価格情報管理部107は、アップクロスまたはダウンクロスが達成されても、約定処理指示データを注文情報管理部106に送出しない。
【0132】
また上記実施形態では「アップクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報の約定価格より小さくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと」を意味するとして定義したが、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する場合もアップクロスに含めてもよい。すなわち、「アップクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格以下でありかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きいこと」を意味するとして定義してもよい。
【0133】
また「ダウンクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと」を意味するとして定義したが、今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する場合もアップクロスに含めてもよい。すなわち、「ダウンクロス」を、「今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格以上でありかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さいこと」を意味するとして定義してもよい。
【0134】
また今回計算されたVWAPが今回受信された相場情報に記述された約定価格に一致しかつ前回計算されたVWAPが前回受信された相場情報に記述された約定価格に一致する可能性も考えられるが、このようなケースが発生した場合は、アップクロスおよびダウンクロスの両方が発生したとして扱っても良い。
【0135】
以上、本実施形態によれば、オークション取引市場における場の開始前のみならず、場中もVWAP取引市場におけるクロスポイント取引に参加でき、顧客にとって利便性の高い新たな取引市場の提供が可能となる。
【0136】
また本実施形態による取引価格は、オークション取引市場での価格と一致しており、したがってその時点での評価損益は発生せず、VWAP値にも近い価格である。また、本VWAP取引市場での売買価格が、オークション取引市場での価格と一致していることで、オークション取引市場の価格形成には影響を及ぼさない。したがって、当該VWAP取引市場は、価格形成を目的とするオークション取引市場との明確な市場の分離を図ることができ、これにより正常な証券取引市場の形成が可能となる。
【0137】
また本実施形態のクロスポイント取引は相対取引(証券会社対顧客の取引)ではなく顧客対顧客の売買取引であるため、手間がかからず手数料が少なくて済むメリットがある。
【0138】
このようにVWAP取引市場は従来のVWAP終値取引の問題を解消したVWAPベースの新たな取引手法を実現しており、従来のVWAP終値取引に代えて利用することで、証券会社は、従来行っていたVWAP追従のための大量の小口注文をオークション取引市場へ行う必要はなくなり、これにより、証券会社は、複雑なアルゴリズムトレードの発注システムの管理および維持を無くして、費用を削減することができる。一方、オークション取引市場ではこのような大量の小口注文が減り、そのシステム負荷を大きく低減することが可能となる。
【0139】
なお、本実施形態の取引方式に、VWAP終値取引方式を組み合わせ、より幅広い範囲のVWAP取引市場を形成することも可能である。
【0140】
(第2の実施形態)
本第2の実施形態において、顧客端末11では複数の注文数量を指定可能に構成される。
【0141】
たとえば顧客端末11で図13の画面の「詳細設定ボタン」を押下して図14の詳細設定フォームを表示し、当該フォームで「複数指定」を選択することで、複数の注文数量を行うことを決定し、各入力欄CP1〜CP3に0以上の数量を入力する。本例では最大で3個の数量を指定可能だが、4個以上の数量を指定可能にしてもよい。入力欄に入力した数量は将来にわたる複数のクロスポイントに対する注文予約を表し、CP1から順番に約定処理の対象とされる。
【0142】
顧客端末は、前述の実施形態と同様に注文要求を生成して証券会社システム12に送信するが、この際、注文要求には、各入力欄CP1〜CP3に入力された複数の数量を含める。
【0143】
証券会社システム12は、前述の実施形態と同様に、顧客端末から受信された注文要求の内容を内部のデータベースに保存するとともに、クロスポイント取引の注文データを生成してVWAP取引市場システム14に送信する。この際、注文データには、当該注文要求に含まれる複数の注文数量を含める。
【0144】
VWAP取引市場システム14の注文情報管理部106では、当該注文データをVWAP注文番号および受付日時とともに注文情報データベース104に格納し、上述の第1の実施形態と同様して、CP板を生成または更新する。第1の実施形態では銘柄に応じて1つのCP板を生成したが、本第2の実施形態では、指定可能な注文数量の個数だけCP板を生成する。たとえば図14の例の場合、入力欄CP1〜CP3に対応して、3個のCP板1〜3を生成する。
【0145】
たとえば注文情報データベースが図15の場合のCP板は図16(A)のようになる。
【0146】
ただし、図16(A)のCP板の例では、説明の簡単のため、買い注文のみを示し、売り注文の表記は省略している。
【0147】
また図15の例では、説明の簡単のためVWAP注文番号(図15では注文番号と略記されている。以降の説明において同様)、受付時刻、売買区分、執行条件、数量のみ表示し、受付日、会員注文番号、会員ID、場区分等の表示は省略している。
【0148】
図15において、数量は、最大で3個指定されており、左に位置するものほど、執行条件を満たす、時間的に先のクロスポイントに対応する。たとえば注文番号1の数量(10,15,20)は数量10が、最も先に達成される上記執行条件を満たすクロスポイントに対応し、数量15がその次に達成される上記執行条件を満たすクロスポイント、数量20がさらにその次に達成される上記執行条件を満たすクロスポイントに対応する。顧客端末では数量10は入力欄CP1、数量15は入力欄CP2,数量20は入力欄CP3に入力されている。また注文番号3の数量(20,30)は、顧客端末では、入力欄CP1、CP2に数量20,30が入力され、CP3に0(またはヌル)が入力されたものである。
【0149】
図15および図16(A)から理解されるように、最大で3つ指定された数量のうち、入力欄CP1に入力された数量の注文はCP板1、入力欄CP2に入力された数量の注文はCP板2、入力欄CP3に入力された数量の注文はCP板3に追加される。売り注文の場合も同様にしてCP板1〜3にそれぞれ追加される(図示せず)。
【0150】
価格情報管理部107から約定処理指示データが入力された場合の注文情報管理部106における約定処理は以下のようにして行われる。
【0151】
ここでは一例として前場において9時15分にアップクロスが達成され、そのときCP板1に3つの売り注文
[注文番号2、数量:40、執行条件:成行]、
[注文番号4,数量:30、執行条件:アップクロス]
[注文番号7、数量:10、執行条件:成行]
が存在したとする(図15参照)。成行の合計注文数は50、アップクロスの合計注文数は30である。
【0152】
本実施形態に係る約定処理ではCP板1に基づいて買い注文と売り注文とのマッチングが行われ、CP板2,3はそれぞれ約定処理後におけるCP板1,2の更新用のデータとして用いられる。
【0153】
上記のようにアップクロスが達成されたことから、CP板1において、「成行」または「アップクロス」の執行条件を有する売り注文と買い注文とがマッチングされる。ここでは、上記した注文番号2,4,7の3つの売り注文と、図16(A)における注文番号1,3,6,8の買い注文とがマッチングされる。
【0154】
約定処理は第1の実施形態と同様、受付時刻の優先順位に従って行われ、この結果、図17に示すように、注文番号1,3,6の買い注文はすべて約定し(全出来)、注文番号8の買い注文は数量20のみ約定し、残りの数量5は未約定となる(内出来)。また3つの売り注文はすべて約定する。執行条件がダウンクロスの注文は約定処理の対象外となる。
【0155】
約定処理の終了後、CP板2に基づきCP板1の更新処理を行う。以下、買い注文に対するCP板1の更新処理を説明するが、売り注文の場合も同様にして行う。
【0156】
(ステップA)まずCP板1において残数が発生した注文と、約定処理の対象となったが全く約定しなかった(1つも約定しなかった)注文について、それぞれ同じ注文番号の注文がCP板2に存在するか否かを検査する。そのような注文が存在する場合は、CP板2における当該注文の数量を、CP板1における同一注文番号の板に加算するとともに、CP板2から当該注文を消去する。
【0157】
図16(A)および図17の例ではCP板2における注文番号8の注文の数量35が、CP板1の同番号の注文(残数量5)に追加されて、図16(B)のように数量40に更新される。この際、CP板2における注文番号8の注文は消去される。
【0158】
(ステップB)次にCP板2において、達成された執行条件と同一もしくは成行の注文が存在するかどうかを検査し、存在する場合は、そのような注文を1つ上位のCP板1に移動(シフト)する。同様に、CP板3において、達成された執行条件と同一の注文が存在するかどうかを検査し、存在する場合は、そのような注文を1つ上位のCP板2に移動(シフト)する。一般にCP板がN(Nは2以上の整数)個存在するときは、CP板M(Mは2以上N以下の整数)に存在する、達成された執行条件と同一もしくは成行の注文をCP板M−1に移動(シフト)する。CP板1において執行の対象とならなかった注文についてはそのままCP板1に残す。
【0159】
図16(A)および図17の例ではCP板2における注文番号1,3,6の注文が図16(B)のようにCP板1に移動される。注文番号6の注文はその執行条件がダウンクロスであり、達成された執行条件(アップクロスまたは成行)と異なるため、そのままCP板1,2に残る。またCP板3における注文番号1,6,8の注文がCP板2に図16(B)のように移動される。
【0160】
(ステップC)最後に、CP板1、2における各注文を受付時刻に従ってソートする(並べる)。なお各注文のソートは、ステップAまたはBの処理と同時に行ってもよい。
【0161】
なお図16(B)のCP板1〜3の状態で、新規の注文データが受け付けられたときは、当該注文データで指定された各数量の注文(買い注文または売り注文)がCP板1〜3の最後尾に(すなわち最も低い優先順位で)追加される。
【0162】
たとえば数量(10,20,30)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量10の買い注文、CP板2の最後尾に数量20の買い注文、CP板3の最後尾に数量30の買い注文が追加される。または、数量(40,50)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量40の買い注文、CP板2の最後尾に数量50の買い注文が追加される。または数量(60)の買いの注文が入った場合は、CP板1の最後尾に数量60の買い注文が追加される。
【0163】
ここでCP板1に基づく売買注文の約定処理の際、最大約定数を導入し、マッチングを最大約定数の数量で細分化して行うことも可能である。
【0164】
たとえば1つの買いの注文データ(注文番号:11、数量:100,100,100、執行条件:アップクロス)と、2つの売りの注文データ(注文番号:12、数量:100,100,100、執行条件:アップクロス)、(注文番号:13,数量:5,0、0、執行条件:アップクロス)が存在するとする。
【0165】
具体的に、CP板1には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12、数量:100、執行条件:アップクロス)、
売り注文(注文番号:13,数量:5、執行条件:アップクロス)が存在し、
CP2板には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12、数量:100、執行条件:アップクロス)が存在し、
CP3板には
買い注文(注文番号:11、数量:100、執行条件:アップクロス)と、
売り注文(注文番号:12,数量100、執行条件:アップクロス)が存在するとする。
【0166】
ただし注文番号12の売りの注文は、注文番号13の売りの注文よりも受付時刻が早いとする。またCP板1〜3にはこれら以外の注文は存在せず、新たな注文も発生しないとする。
【0167】
この場合、これまで述べた処理に従えば、時間優先のため、計3回のアップクロスの達成により、CP板1〜3に存在する注文番号11の買い注文と、注文番号12の売り注文はすべて約定するが、注文番号13の売り注文は1つの数量も約定しないこととなる。
【0168】
そこで本第2の実施形態では最大約定数を導入し、最大約定数の範囲でマッチングを行うことで、注文番号13の注文にも約定の機会を与える。最大約定数は銘柄売買単位の整数倍として予め決定される。以下、該当銘柄の最大約定数を50に設定した場合の処理例を示す。
【0169】
まず1回目のアップクロス達成で、CP板1において、注文番号12の売り注文の数量50と、注文番号11の買い注文の数量50がマッチし、次に、注文番号13の売り注文の数量5と注文番号11の買い注文の数量5とがマッチし、次に、注文番号12の売り注文の数量45と、注文番号11の買い注文の数量45とがマッチする。注文番号12の売り注文の数量5が残る。この残った数量5の売り注文は、CP板更新処理により、CP板2の数量100と加算されて数量105となり、CP板2に存在する買い注文がCP板1にシフトされる。またCP板3の売り注文および買い注文がCP板2にシフトされる。以降、同様にして処理を継続する。
【0170】
(第3の実施形態)
第1〜第2の実施形態ではオークション取引市場の約定価格とVWAPとがクロスしたとき(アップクロスまたはダウンクロスが発生したとき)に約定処理を執行したが、本実施形態では、オークション取引市場の約定価格とVWAPとの差の大きさが閾値以内になったときに約定処理を執行する場合を示す。
【0171】
本実施形態では、オークション取引市場システム13から相場情報が受信されるごとに、価格情報管理部107は、オークション取引市場の約定価格と、計算されるVWAPとを比較する。そして、価格情報管理部107は、これらの価格の差の大きさが閾値以内であるときは、約定処理の執行を決定し、注文情報管理部106に約定処理指示データを出力する。
【0172】
ここで、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値以内」の場合は、より細かく、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値内かつ当該約定価格がVWAP以上(あるいはVWAPより大)」(第3の価格関係)の場合と、「オークション取引市場の約定価格とVWAPの差の大きさが閾値内かつ当該約定価格がVWAP未満(あるいはVWAP以下」(第4の価格関係)の場合とに分けることができる。
【0173】
本実施形態の構成および動作は、上記第3の価格関係が第1〜2の実施形態のアップクロス(第1の価格関係)に対応し、第4の価格関係が第1〜2の実施形態のダウンクロス(第2の価格関係)に対応するとして、第1〜第2の実施形態の説明を読み替えたものに相当する。
【0174】
以上、本実施形態によっても、上述の第1〜2の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0175】
11:顧客端末
12:証券会社システム(取引参加者システム)
13:オークション取引市場システム
14:VWAP取引市場システム
101:注文・約定IF
102:オークション相場報道IF
103:VWAP相場報道IF
104:注文情報データベース
105:価格情報データベース
106:注文情報管理部
107:価格情報管理部
108:場管理部
109:記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理部と、
前記注文情報データベースにおいて前記第1の価格関係または前記第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備えたVWAP取引市場システム。
【請求項2】
前記注文データは、前記第1および第2の価格関係のうちいずれか任意の一方が成立したときに前記約定処理の執行を要求する第1の執行条件、前記第1の価格関係が成立したときに前記約定処理の執行を要求し前記第2の価格関係が成立したときは前記約定処理の執行を要求しない第2の執行条件、および前記第2の価格関係が成立したときに前記約定処理の執行を要求し前記第1の価格関係が成立したときは前記約定処理の執行を要求しない第3の執行条件のいずれかの指定を含み、
前記注文情報管理部は、前記第1の価格関係が成立したときは前記第1および第2の執行条件を指定した注文データの約定処理を執行し、前記第2の価格関係が成立したときは前記第1および第3の執行条件を指定した注文データの約定処理を執行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項3】
前記注文データは、第1〜第N(Nは2以上の整数)の注文数量の指定を含み、
前記注文情報管理部は、前記第1〜第Nの注文数量を、前記注文データで指定された執行条件が成立するごとに順番に約定処理の対象とする
ことを特徴とする請求項2に記載のVWAP取引市場システム
【請求項4】
VWAP取引市場への参加資格を有する取引参加者のシステムから前記注文データを受信する注文・約定インターフェースをさらに備え、
前記注文情報管理部は、前記注文データの受付処理を行い、受け付けた注文データを受付時刻とともに前記注文情報データベースに格納し、
前記注文情報管理部は、前記注文データの約定処理を前記受付時刻の早いものほど優先して執行する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項5】
前記注文情報管理部は、前記今回計算された出来高加重平均価格と前記今回受信された相場情報に記述された約定価格との差が所定の閾値以上のときは前記約定処理を執行しない
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項6】
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理部と、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、前記注文情報データベースにおいて前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備えたVWAP取引市場システム。
【請求項7】
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理ステップと、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備えたVWAP取引方法。
【請求項8】
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにより受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理ステップと、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備えたVWAP取引方法。
【請求項1】
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理部と、
前記注文情報データベースにおいて前記第1の価格関係または前記第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備えたVWAP取引市場システム。
【請求項2】
前記注文データは、前記第1および第2の価格関係のうちいずれか任意の一方が成立したときに前記約定処理の執行を要求する第1の執行条件、前記第1の価格関係が成立したときに前記約定処理の執行を要求し前記第2の価格関係が成立したときは前記約定処理の執行を要求しない第2の執行条件、および前記第2の価格関係が成立したときに前記約定処理の執行を要求し前記第1の価格関係が成立したときは前記約定処理の執行を要求しない第3の執行条件のいずれかの指定を含み、
前記注文情報管理部は、前記第1の価格関係が成立したときは前記第1および第2の執行条件を指定した注文データの約定処理を執行し、前記第2の価格関係が成立したときは前記第1および第3の執行条件を指定した注文データの約定処理を執行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項3】
前記注文データは、第1〜第N(Nは2以上の整数)の注文数量の指定を含み、
前記注文情報管理部は、前記第1〜第Nの注文数量を、前記注文データで指定された執行条件が成立するごとに順番に約定処理の対象とする
ことを特徴とする請求項2に記載のVWAP取引市場システム
【請求項4】
VWAP取引市場への参加資格を有する取引参加者のシステムから前記注文データを受信する注文・約定インターフェースをさらに備え、
前記注文情報管理部は、前記注文データの受付処理を行い、受け付けた注文データを受付時刻とともに前記注文情報データベースに格納し、
前記注文情報管理部は、前記注文データの約定処理を前記受付時刻の早いものほど優先して執行する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項5】
前記注文情報管理部は、前記今回計算された出来高加重平均価格と前記今回受信された相場情報に記述された約定価格との差が所定の閾値以上のときは前記約定処理を執行しない
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のVWAP取引市場システム。
【請求項6】
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースと、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信するオークション相場報道インターフェースと、
前記オークション相場報道インターフェースにより受信された前記相場情報を蓄積する価格情報データベースと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理部と、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、前記注文情報データベースにおいて前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理部と、
を備えたVWAP取引市場システム。
【請求項7】
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記相場情報が受信されるごとに前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、
今回計算された出来高加重平均価格が今回受信された相場情報に記述された約定価格より小さくかつ前回計算された出来高加重平均価格が前回受信された相場情報に記述された約定価格より大きい第1の価格関係、および
前記今回計算された出来高加重平均価格が前記今回受信された相場情報に記述された約定価格より大きくかつ前記前回計算された出来高加重平均価格が前記前回受信された相場情報に記述された約定価格より小さい第2の価格関係
のうちいずれか一方が成立するか否かを判定する価格情報管理ステップと、
取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記第1または第2の価格関係が成立した銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記今回受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備えたVWAP取引方法。
【請求項8】
コンピュータが実行するVWAP取引方法であって、
オークション取引市場における金融商品の取引を管理するオークション取引市場システムから、前記オークション取引市場で約定した金融商品の銘柄と約定価格と数量とを記述した相場情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにより受信された前記相場情報を価格情報データベースに格納する記憶ステップと、
前記受信された相場情報に記述された銘柄の金融商品の出来高加重平均価格を前記価格情報データベースに基づき計算し、計算された出来高加重平均価格と前記受信された相場情報に記述された約定価格との差の大きさが閾値以下であるか否かを判定する価格情報管理ステップと、
前記差の大きさが閾値以下であると判定されたとき、取引参加者識別情報と、金融商品の銘柄と、注文数量と、売買区分と、を指定した注文データを記憶する注文情報データベースにアクセスして前記受信された相場情報に記述された銘柄を指定した注文データを特定し、特定した注文データの約定処理を執行し、約定した注文データの取引価格を前記受信された相場情報に記述された約定価格と同一価格に設定する注文情報管理ステップと、
を備えたVWAP取引方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図17】
【公開番号】特開2011−150652(P2011−150652A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13367(P2010−13367)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(591115475)株式会社三菱総合研究所 (12)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(591115475)株式会社三菱総合研究所 (12)
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