説明

X線管格納容器

【課題】X線管格納容器は容器内外を結ぶ接続端子などの構造から複雑な形状となり、一般に鋳造よって造形されている。散乱する不要X線の遮蔽は極めて重要であるがこの形状に合わせて鉛を貼るので、熟練を要している。鉛の数片をバーナー溶接するので作業性、労働安全衛生上からも十二分な配慮が必要である。
【解決手段】帯状の鉛を主構造体、部品に分けて取り付け、これらを組み立てることによって、機能的に不要X線を遮蔽する。また主構造体を規格のパイプを使い鉛の貼り付けを容易にし、パイプその特性を利用してX線管の容器への格納を容易にし、金型代が不要となり大幅なコストダウが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療及び工業検査に用いるX線管の格納容器でその製造技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
X線管は散乱する有害なX線を遮蔽する必要があり、容器は鉛板などの遮蔽材を貼った金属製で筒状に形成されたものを多く用いられる。図1-(a)はX線管を容器に格納した状態での断面図である。図1-(b)は容器そのものの断面図である。容器はこのように鋳造で製作するのが一般的である。鋳造が一般的なのはX線管への電力回路、冷却回路、X線出力光路などを確保するために必要な取り付け部品形状に依存するので、複雑な形状となるからである。また容器の大きさやロット数からも鋳造品が主流を占めている。しかしロット数が減少し多種少量の生産動向に対して、割高になる傾向がある。
【0003】
【特許文献1】特許公開平10−308295 図2は割高を少しでも押さえ込もうと中子を2分割して削り代を少しでも無くし、材料のみならず加工工数を低減して容器の価格を下げる方法である。生産設計の見地からすると容器の主構造体として、規格品のパイプを使う方法がより有効である。課題は電極端子などの部品をパイプ壁面に如何に確実に取り付けるかである。
【0004】
【特許文献2】特許公開平6−181098上記の実例として図3は鋼管を使い、端子取付をパイプ両端の蓋に設けている。また高圧トランス自体パイプの中に格納している。しかしこの場合一体化のメリットはあるが容器が大きくなり、特殊な用途に限定されてしまう。さらにX線管の容器として、散乱するX線遮蔽対策を十分配慮しなくてはならないことがある。これは容器にあっては内壁に鉛などのX線遮蔽材を貼り付ける必要がある。
【0005】
【特許文献3】特許公開平9−237601図4は現状の鉛内貼りの断面図である。貼り付け1はX線排出部を中心とした貼り付け部であり、貼り付け2は電極端子の取り付け部分を中心とした貼り付け部分を示している。鉛材のつなぎの部分とりわけ貼り付け2でのリング同士のつなぎ部の溶接には細心の注意が必要である。そもそも鉛の溶接自体環境問題として捉えた場合、労働衛生法からも作業者の健康管理も含め細心の注意を払わなければならない。結果としてコストアップとなり、熟練者の作業となり、処理ができるところも限られてきて、熟練工不足時代を迎え、今後の大きな課題となりつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は容器の主構造を規格品のパイプを使う際、容器内外に回路をつくるための端子類を如何に確実にパイプ壁に取り付けるか、またX線遮蔽物を通常の作業環境でも如何に安全に貼り付け可能とするかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は安価な規格品パイプに部品取り付け用の孔をパイプ壁面にもうけ、X線遮蔽については遮蔽材は溶接レスとする。
【発明の効果】
【0008】
鉛などの遮蔽材貼り付けにあたり、溶接レスなので、有害な鉛蒸気も発生しないので職場安全衛生上からも著しい改善があり、規格品のパイプを使い、金型を必要としないので安価な容器を提供でき、特に多種少量生産においては大きなコストダウが見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
端子などの取り付けは螺子とナットを使うと多種の材質でもパイプに取り付けることが出来る。このときパイプ取り付け部分のシールは延性のある金属、ゴム、シール剤などを用いても十分機能する。有害X線の遮蔽には筒状の鉛板を組み合わせることによりより確実な遮蔽を実現できた。
【実施例】
【0010】
図5は本発明の1実施例で、容器の全体構成と端子などの取り付け部分を図示している。図6はX線管1を容器に格納した断面図である。容器本体は規格品のパイプ2を主構造体としている。X線管1を発振させるには外部から高圧電気や有効なX線を取り出し窓など外部とのやり取りが必要であり、容器にはこれらの出入り口が必要である。したがってパイプ2はあらかじめこれらに必要な孔を明けておく。図6では電極端子5はリセクタプル4と一体となっているので、保持具3に直接取り付ける。保持具3はパイプ状のもので、この場合、パイプ2とは溶接で結合されている。散乱する有害X線の遮蔽はパイプ2の内壁に位置する鉛遮蔽管A6とリセクタプル4の外周に取り付けた鉛遮蔽管B7とが図のような位置関係として、内部からの有害X線を遮蔽する。これらの鉛はあらかじめ必要な寸法や孔をあけておくので、従来のような鉛を溶融して接合しないので職場安全衛生上からも極めて安全な方法である。
【0011】
X線管1の発振焦点と容器との位置関係は、主構造体がパイプのため内壁の真円度は機械加工なみであり、改めて加工は不要である。ここでは管固定ソケット9、管固定支柱10および管固定ゴムリンク8を使い位置あわせをすることを示している。
ところで、各部品のパイプへの取り付けであるが、図6のようにパイプに溶接した保持具3を介して取り付ける方法は従来の鋳物構造で使用した部品を取り付けるには有利であるが、機能的に無駄がある。すなわち電極端子5やX線放射窓が直接パイプ1に取り付けるほうが無駄がない。これらを模式的に示したのが図5である。断面図が図10である。締結の詳細の一例を図7に示す。締結は穴あきボルト12とナット14で行う。穴あきボルト12の代わりに外周をねじ切りした電縫管などでもよい。ここでは鉛遮蔽管B7はボルト12の内壁に敷設してある。遮蔽材は管状のものだけでなく、帯状のものでもよい。
【0012】
パイプへの取り付け端子は密着度を考えると必要最小限の外径が望ましい。しかしある程度の大きさになるとパイプ2の曲率から漏れの心配が発生する。図8はワッシャー間にパッキング材としての鉛材を入れた場合の図である。鉛は延性があるので有害X線の遮蔽のみならず充填材として使える。もちろん合成ゴムプラスチック類のパッキング材でもよく、シール剤でもよい。さらに密着度を上げるには図9のように(a)亀金ワッシャー(b)塑性変形(c)座ぐり加工などがある。

【産業上の利用可能性】
【0013】
対象となる容器は冷却用循環油ポートなどがある場合のみならず、遮蔽を要する小型のX線管容器まで幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の一般的なX線管とその容器で(a)は断面図(b)は容器のみの断面図である。
【図2】2段式の中子を使った鋳造容器の断面図である。
【図3】鋼管を用いた容器の実例である。
【図4】従来品での鉛貼り図である。
【図5】主構造を規格品のパイプを使用した場合の概念図で部品締結は螺子とナット方式で説明している。
【図6】本発明を使いX線管を格納した容器の断面図である。
【図7】螺子とナットによる締結の断面図である。
【図8】パッキング材を挿入して部品締結したときの断面図である。
【図9】曲率面に対してより密着する方法の説明図である。(a)亀金(b)塑性変形(c)座ぐり加工
【図10】本発明を使い、部品を直接パイプに取り付ける構造を持った、X線管を格納容器の断面図である。
【図11】鉛遮蔽管Bの取り付け位置の事例を示す。
【符号の説明】
【0015】
1 X線管
2 パイプ(主構造体)
3 リセクタプル保持具
4 リセクタプル
5 電極端子
6 鉛遮蔽管A
7 鉛遮蔽管B
8 管固定ゴムリンク
9 管固定ソケット
10 管固定支柱
11 管固定蓋
12 穴あきボルト
13 ワッシャー
14 ナット
15 パッキング材
16 X線放射窓


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の保護、使用上の安全確保のためのX線管の格納容器にあって、その主構造をパイプとし、内壁をX線管の基準位置決めに使い、パイプ壁に貫通孔または保持具をとりつけた構造としたX線管格納容器。
【請求項2】
X線管と外部との接続回路に必要な端子又はX線透過窓を螺子とナットで締結するにあたり、パイプ壁との密閉にシール剤もしくは延性のあるX線遮蔽材料を用いることを特徴とした請求項1のX線管格納容器。
【請求項3】
容器の壁および壁に取りつけた部品又は部品保持具の内または外側に、有害X線漏洩防止のための遮蔽材料を帯状にまき又は筒状にしたものを敷設して、相互が遮蔽機能を補完しあう構造としたX線管格納容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−73477(P2010−73477A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239436(P2008−239436)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(399052202)
【Fターム(参考)】