説明

X線CT装置

【課題】 回転ベースを大型化することなく、組立やメインテナンス作業での作業性を良好にさせるように回転ベースに所用の機器類を配置可能とすること。
【解決手段】 被検体が挿入される中空部6の形成されている回転体11に、その回転軸を挟んでX線管12とX線検出器13とが対向するように配置されているX線CT装置において、前記回転体に前記X線管が発する熱を伝達させるパイプ20を設けた。
これにより、従来のオイルクーラが不要となり、回転体を大型化することなく回転体に所用の設備を余裕をもって搭載することが可能となり、組立やメインテナンス作業での作業性を極めて向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管から発生する熱を効果的に排除するようにしたX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、X線管によって発生させたX線を被検体の周りに照射して投影データを得、得られた投影データを再構成することによって断層画像を形成している。そして二次元画像のみではなく三次元画像を形成することも行われている。この三次元画像を形成するためには、二次元画像を形成するに要する投影データを、スライス方向に多数収集する必要があるため、X線管からX線を長い時間発生させたり、強いX線を発生させたりする大出力化が進められている。そのため、X線管としては大きな負荷がかかることとなって、発熱量も大きくなる。よって、X線管の高出力動作を安定に維持するためには、X線管が発生する熱を効果的に排除することが不可欠となる。
【0003】
そのため、X線管の傍にはオイルクーラが設けられており、ハウジング容器内でX線管によって温められたオイルを、オイルクーラへ循環させることによって冷却し、冷却されたオイルを再びハウジング容器内へ戻すことによって、X線管の温度上昇を抑制している。さらにオイルクーラの排熱が架台内に滞留しないようにファン等による強制空冷が施されている(例えば、特許文献1参照。)。なおX線管はハウジング容器に収納されているものであり、冷却用のオイルはハウジング容器とオイルクーラとの間を循環している。そして、本明細書では、X線管を収納したハウジング容器を含めてX線管と呼称するものとする。
【0004】
図3は、X線CT装置の架台内に設けられている回転体10の概略を示した斜視図である。この回転体10は円筒形の胴の一端側が開放されたドラム状の回転ベース11から成り、他端側の中心部に被検体を挿通するための貫通穴6が穿設されている。そして回転体10は、図示しないがベアリングなどを介して架台の構造体に支持され、駆動装置によって高速に連続回転させられるものである。
【0005】
回転ベース11の内側には、X線を発生するX線管12と、このX線管12から曝射され被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器13とが、被検体を挟んで対向するように配置されている。また、X線検出器13で検出された信号を増幅する信号増幅器14がX線検出器13の近傍に設けられ、X線管12の近傍には、X線管12を冷却するためのオイルクーラ15が設けられている。さらに、X線管12へ高電圧などを供給するための高電圧発生器16、17と、この高電圧発生器16、17を制御するための電源制御器18や回転ベース11の回転時のバランスを保つための図示しない重りなども適宜の手段で固定されている。
【特許文献1】特許第3403790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転ベース11には、X線管12、X線検出器13、信号増幅器14、オイルクーラ15、高電圧発生器16、17、電源制御器18、重りなど多くのものが取り付けられている。また、X線の大出力化に伴い高電圧発生装置16、17は大型となり、そのため回転ベース11にこれら所用の設備を搭載するスペースが不足することとなる。従って必要な機器類を密集させて配置させることになっており、組立やメインテナンス作業での作業性を損なうという問題があった。
【0007】
必要なスペースを確保するには、回転ベース11を大型化すれば解決できるものの、このことはX線CT装置そのものを大型化させることになるので、X線CT装置を設置する検査室を大きくしなければならなくなるので得策ではない。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被検体が挿入される中空部の形成されている回転体に、その回転軸を挟んでX線管とX線検出器とが対向するように配置されているX線CT装置において、前記回転体に前記X線管が発する熱を伝達させる熱伝達手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線CT装置において、前記熱伝達手段は、前記回転体の回転方向に沿って密に接触させて設けた管路であり、この管路は前記X線管に閉回路を形成するように連結され、この管路内に冷却液が封入されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のX線CT装置において、前記管路には前記冷却液を循環させるための駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のX線CT装置において、前記回転体の胴部には、回転方向を横切る方向に向けて複数のスリットが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、回転体をX線管の放熱器として使用するので、従来のオイルクーラが不要となる。よって、回転体を大型化することなく回転体に所用の設備を余裕をもって搭載することが可能となり、組立やメインテナンス作業での作業性を極めて向上することができる。また、従来のオイルクーラの設置スペースが空くので、空いたスペースに他のユニットを追加して搭載することも可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、管路を回転体の回転方向に沿って設けてあるので、回転体の回転バランスを崩すことなく高速回転が可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、回転体の放熱をも良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るX線CT装置の一実施例について、図1および図2を参照して詳細に説明する。なおこれらの図において。図3と同一部分には同一符号を附して示してある。
【0018】
図1は、X線CT装置の架台部1の外観を示した斜視図であり、図2は架台部1の内部に収納されている回転体10の一実施例を、模式的に示した正面図である。
【0019】
X線CT装置の架台部1の表面は、フロントカバー2、左右のサイドカバー3a、3b、アッパーカバー4およびバックカバー5で覆われている。また、架台部1の中央部には、撮影口Rへ被検体を挿通させるための貫通穴6が形成されており、当然フロントカバー2およびバックカバー5に、その貫通穴6が形成されている。そしてフロントカバー2の周辺部2aは、サイドカバー3a、3bおよびアッパーカバー4へ向けて屈曲されており、その先端部がサイドカバー3a、3bおよびアッパーカバー4の端部に重ね合わされている。さらに、フロントカバー2の屈曲された周辺部2aの一部に通気口7が形成され、アッパーカバー4には排気口9が形成されている。なお、図1において符号8は、架台部1のベースであり、撮影口Rは、貫通穴6を横切るX線の通路を意味している。
【0020】
架台部1の内部に図2に示す回転体10が収納されている。この回転体10は例えばアルミを材料とした円筒形の胴の一端側が開放されたドラム状の回転ベース11から成り、他端側の中心部に被検体を挿通するための貫通穴6が穿設されている。そして回転体10は、図示しないが、ベアリングなどを介して架台部1の構造体に支持され、駆動装置によって高速に連続回転させられるものである。
【0021】
回転ベース11の内側には、X線を発生するX線管12と、このX線管12から曝射され被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器13とが、被検体を挟んで対向するように配置されている。また、X線検出器13で検出された信号を増幅する信号増幅器14がX線検出器13の近傍に設けられている。さらに、X線管12へ高電圧などを供給するための高電圧発生器16、17と、この高電圧発生器16、17を制御するための電源制御器18や回転ベース11の回転時のバランスを保つための図示しない重りなども適宜の手段で固定されている。
【0022】
そして、回転ベース11の胴部にはその外周に沿って金属製のパイプ20が密に接触させて設けられており、このパイプ20の両端は、回転ベース11の胴部の切り欠きを通して内側へ導かれ、X線管12に接続されて(正確に表現するならば、X線管を収納しているハウジング容器に接続されることになる。)閉回路を形成している。このX線管12に連結されたパイプ20内には、冷却用のオイルが封入されている。また、図示を省略したが、X線管12とパイプ20との連結部あるいはパイプ20の中間部に、冷却用のオイルを循環させるためのポンプが設けられている。
【0023】
本発明は上記のような構成になるものであり、X線管12で発生する熱によって加熱されたオイルが、パイプ20内を通って回転ベース11の胴部を一周することによって、回転ベース11の胴部との間で熱交換されるために放熱され、温度が低下する。従って、冷却されたオイルが再びX線管12に達し、X線管12とパイプ20内のオイルとの熱交換がなされてX線管12を冷却し、X線管12の温度上昇を抑制して、動作が不安定になることを防止する。また、回転ベース11の胴部を取り巻くようにパイプ20を設けたので、回転ベース11の回転のバランスを崩すことがない。
【0024】
なお、オイルとの熱交換によって回転ベース11の温度が上昇することになるが、架台部1の内部に通常備えられているファンを駆動することによって、架台部1の周辺部2aに形成された通気口7やベース8にある隙間から吸気し、アッパーカバー4の排気口9から排気されるので、回転ベース11は強制的に空気冷却されることになる。また、回転ベース11は高速に回転するので、胴部に回転方向を横切る方向へ向けて複数のスリットを形成しておくことにより、回転ベース11の冷却効果をさらに増大させることができる。
【0025】
以上詳述したように本発明によれば、従来設けられていたオイルクーラに代えて、回転ベース11に回転方向に沿って金属製のパイプ20を密に接触させて設け、このパイプ20内にX線管20を冷却するためのオイルを通して熱交換させるようにしたものである。よって、従来設けられていたオイルクーラの設置スペース15a(図2に点線で示してある。)が不要となり、回転ベース11を大型化することなく回転ベース11に所用の設備を余裕をもって搭載することが可能となる。そのため、組立やメインテナンス作業での作業性を極めて向上することができる。また、従来のオイルクーラの設置スペースが空くので、空いたスペースに他のユニットを追加して搭載することも可能となる。
【0026】
なお、本発明は上述の実施例に限定されることなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、一般にX線CT装置では、撮影プランの実行中のみ回転ベース11が回転し、撮影プランの終了により回転ベース11の回転が止るようになっているが、回転ベース11の回転が止ることによってX線管12の冷却効果が十分発揮できないような場合には、回転ベース11を常時回転させるようにするのがよい。或いは、回転ベース11またはX線管12の温度が所定温度以上のときは、撮影プランの実行または終了に拘わらず回転ベース11を回転させ続け、撮影プランが終了しかつ回転ベース11またはX線管12の温度が所定温度以下のときに回転ベース11の回転を止るようにしてもよい。
【0027】
また、図2には、冷却用のオイルを循環させる金属製のパイプ20を、回転ベース11の胴部の外周を1周するように設けるように示してあるが、必ずしも1周だけでなく、2周以上巻かれていてもよい。さらにパイプ20は回転ベース11の胴部の外周だけではなく、回転ベース11の被検体を挿通するための貫通穴6の穿設されている端面部に回転方向に沿ってリング状に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るX線CT装置の架台部の外観を示した斜視図である。
【図2】架台部内に収納されている回転体の一実施例を模式的に示した正面図である。
【図3】X線CT装置の架台部内に設けられている従来の回転体の概略を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 架台部
6 貫通穴
10 回転体
11 回転ベース
12 X線管
13 X線検出器
14 信号増幅器
16 高電圧発生器
17 高電圧発生器
18 電源制御器
20 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が挿入される中空部の形成されている回転体に、その回転軸を挟んでX線管とX線検出器とが対向するように配置されているX線CT装置において、前記回転体に前記X線管が発する熱を伝達させる熱伝達手段を設けたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記熱伝達手段は、前記回転体の回転方向に沿って密に接触させて設けた管路であり、この管路は前記X線管に閉回路を形成するように連結され、この管路内に冷却液が封入されていることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記管路には前記冷却液を循環させるための駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記回転体の胴部には、回転方向を横切る方向に向けて複数のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−230783(P2006−230783A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51360(P2005−51360)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】