説明

{2−アミノ−1,4−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸3−(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル5−イソプロピルエステル}の製造方法

【課題】原料化合物に含まれる特定の不純物が反応して得られる副生物を含む粗アゼルニジピンから純度の高いアゼルニジピンを製造する方法を提供する。
【解決手段】イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量以上50容量部以下含む混合溶媒中に、アゼルニジピン、および下記式(2)
【化1】


で示される化合物が溶解した溶液を調製する調製工程、前記調製工程で得られた溶液中にアゼルニジピンの結晶を析出させる析出工程、および 前記析出工程で得られた結晶を取り出す分別工程とを含むことを特徴とするアゼルニジピンの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、{2−アミノ−1,4−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸 3−(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル 5−イソプロピルエステルの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(1)で示される{2−アミノ−1,4−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸 3−(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル 5−イソプロピルエステル}(以下、アゼルニジピン、または式(1)で示される化合物とする場合もある)は、カルシウム拮抗系の血圧降下剤として使用されている。
【0003】
【化1】

【0004】
このアゼルニジピンは、含まれる不純物により薬害を生じるおそれがあるため、高品質のものが望まれている。具体的には、99.50%以上、さらに好ましくは99.90%以上の純度であるものが必要とされ、さらには1つの不純物の割合が0.1%以下であるものが必要となる。当然のことながら、上記のような純度がより高く、かつ、不純物の割合が低いアゼルニジピンが望まれている。このような高品質のアゼルニジピンを製造するためには、アゼルニジピンの合成方法、および得られたアゼルニジピンの精製方法が重要になる。
【0005】
通常、アゼルニジピンは、以下の方法によって合成されている(特許文献1、2、および非特許文献1参照)。
【0006】
【化2】

【0007】
具体的には、3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルとを反応させることにより製造されている(以下、この反応により得られた精製前のアゼルニジピンを粗アゼルニジピンとする場合もある。)。
【0008】
この粗アゼルニジピンをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したものは、融点が95℃以上98℃以下のアゼルニジピン(以下、I型結晶アゼルニジピンとする場合もある)となることが知られている。また、このI型結晶アゼルニジピンをベンゼン−n−ヘキサンで再結晶することにより、融点が120℃以上124℃以下のアゼルニジピン(以下、II型結晶アゼルニジピンとする場合もある)を製造できる。さらに、I型結晶アゼルニジピンを1,2−ジメトキシエタン−n−ヘキサンで再結晶し、100℃以上の加熱下において、減圧乾燥することにより、融点が158℃以上160℃以下のアゼルニジピン(III型結晶アゼルニジピンとする場合もある)を製造できる(特許文献1参照。)。また、アゼルニジピンをアセトンにより再結晶することにより、融点が196℃(190℃以上200℃以下)のアゼルニジピン(IV型結晶アゼルニジピンとする場合もある)を製造できる(非特許文献2参照)。
【0009】
これらのI型〜IV型結晶アゼルニジピンにおいて、原薬として一般的に使用されているのは、II型結晶アゼルニジピンである。このII型結晶アゼルニジピンの製造において、上記方法(特許文献1に記載の方法)では、ベンゼンを再結晶溶媒としているため、原薬の製造には必ずしも適しているとは言えなかった。そのため、ベンゼンを使用しないその他の方法として、以下の方法が知られている。
【0010】
具体的には、粗アゼルニジピンをメタノールで再結晶し、アゼルニジピンのメタノール付加体を生成し、得られたメタノール付加体とシクロヘキサンとを混合し、50℃以上60℃以下の温度でメタノールとシクロヘキサンと共沸するにより、融点が121℃以上123℃以下のアゼルニジピン(II型結晶アゼルニジピン)を製造する方法である(特許文献2参照)。この方法に従えば、再結晶溶媒としてメタノールを使用し、2回再結晶を行うことにより、高収率で高純度のII型結晶アゼルニジピンを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−253082号公報
【特許文献2】特開平11−116570号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ケミカル アンド ファーマシューティカル ブレティン(Chemical & Pharmaceutical Bulletin) (1995)、43(5)、797−817、Takashi Kobayashi 他
【非特許文献2】Annu.Rep.Sankyo Res.Lab.58,1−73(2006) Sankyo Kenkyusho Nenpo
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、再結晶溶媒としてメタノールを使用する方法では以下の点で改善の余地があることが分かった。
【0014】
本発明者等が上記方法で合成した粗アゼルニジピンをメタノールで再結晶したところ、得られるアゼルニジピンの純度、品質、収量等にバラツキがあることが分かった。この原因を調査したところ、粗アゼルニジピンに下記式(2)
【0015】
【化3】

【0016】
で示される化合物が含まれる場合に、その傾向が高いことが判明した。前記式(2)で示される化合物は、アゼルニジピンの原料である3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩に含まれる不純物が2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルと反応したものと考えられた。
【0017】
該3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩は、特許文献1、非特許文献1に示されている通り、シアノ酢酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステルをジクロロメタン中、塩化水素を吹き込みながらエタノールと反応させ、得られた化合物を酢酸アンモニウムと反応させることにより得ることができる。
【0018】
【化4】

【0019】
この際、下記式(3)
【0020】
【化5】

【0021】
で示される化合物、および/または式(3)で示される化合物の酢酸塩が製造するものと考えられ、この式(3)で示される化合物が、2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルと反応し、前記式(2)で示される化合物となり、粗アゼルニジピン中に含まれるものと考えられた。
【0022】
したがって、本発明の目的は、高純度のアゼルニジピンを製造する方法を提供することにあり、特に、上記のような原料化合物由来の前記式(2)で示される化合物を不純物として含む粗アゼルニジピンから、高純度のアゼルニジピンを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、イソプロピルアルコール、および特定量のその他の溶媒を含む混合溶媒中で粗アゼルニジピンからアゼルニジピンを結晶化させることにより、前記式(2)で示される化合物を効率よく除去できることを見出した。さらに、得られた結晶は、シクロヘキサンと接触させることにより、容易に混合溶媒を除去することができ、純度の高いアゼルニジピンにできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明は、
イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒中に、下記式(1)
【0025】
【化6】

【0026】
で示される化合物と下記式(2)
【0027】
【化7】

【0028】
で示される化合物が溶解した溶液を調製する調製工程、
前記調製工程で得られた溶液中に前記式(1)で示される化合物の結晶を析出させる析出工程、および
前記析出工程で得られた結晶を取り出す分別工程
とを含むことを特徴とする前記式(1)で示されるアゼルニジピンの製造方法である。中でも、本発明が特に効果を発揮するのは、前記式(1)で示される化合物100質量部に対して、前記式(2)で示される化合物が0.01〜10質量部含まれる場合である。
【0029】
また、本発明において、不純物量がより低減された高純度のアゼルニジピンを効率よく得るためには、前記分別工程で取り出した結晶とシクロヘキサンとを混合した後、50℃未満の温度で前記混合溶媒、およびシクロヘキサンを除去する除去工程を含むことが好ましい。さらに、前記除去工程においては、シクロヘキサンと混合する前記結晶が、前記式(1)で示される化合物100質量部に対して、イソプロピルアルコールを1〜50質量部含む湿体であることが好ましい。
【0030】
本発明の方法によれば、効率よく高純度のII型結晶アゼルニジピン、つまり、融点が120℃以上130℃以下であるアゼルニジピンを製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高純度のアゼルニジピンを容易に製造することが可能である。具体的には、原料化合物に由来する前記式(2)が含まれる粗アゼルニジピンから高純度のアゼルニジピンを容易に製造することができる。つまり、本発明によれば、最終生成物であるアゼルニジピンを製造する際に、原料化合物由来の不純物を効率よく低減できるため、その工業的利用価値は高い。
【0032】
さらに、本発明によれば、50℃未満の温度で容易に溶媒を除去することができるため、分解物の少なく、純度の高い、融点が120〜130℃(II型結晶)のアゼルニジピンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、高純度のアゼルニジピンを製造する方法である。以下、各工程について説明する。
【0034】
(調製工程)
本発明において、調製工程は、イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む中に、下記式(1)
【0035】
【化8】

【0036】
で示される化合物と下記式(2)
【0037】
【化9】

【0038】
で示される化合物が溶解した溶液を調製する工程である。
【0039】
前記溶液には、前記式(1)で示されるアゼルニジピン、および前記式(2)で示される化合物(以下、第一副生物とする場合もある)が溶解していればよく、該溶液を調製する方法は、特に制限されるものではない。例えば、第一副生物はアゼルニジピンの原料化合物由来の不純物であるため、前記溶液を調製するには、原料化合物を反応させた際の反応溶液を使用することができる。また、該反応溶液からアゼルニジピン、および第一副生物を含む混合物を取り出し、該混合物を前記混合溶媒に溶解させることもできる。
【0040】
先ず、原料化合物である3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルについて説明する。
【0041】
原料化合物 (3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩)
アゼルニジピンを合成する際の原料化合物である3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩は、前記の通り、公知の方法により製造することができる。前記方法により得られた3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩は、UV検出器(検出波長254nm)では確認できない不純物が含まれる。この不純物は、アゼルニジピンを合成する際、2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルと反応して前記式(2)で示される化合物(第一副生物)へ転化されると考えられる。このような不純物は、前記式(3)で示される化合物(酢酸塩を含む)と考えられる。本発明は、このような前記式(3)で示される化合物を含む粗3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩を原料化合物として得られるアゼルニジピンの製造に適用される。
【0042】
原料化合物 (2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステル)
また、もう一方の原料化合物である2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルも、特に制限されるものではなく、公知の方法により製造することができる。例えば、非特許文献1に示されている通り、3−ニトロベンズアルデヒドとアセト酢酸イソプロピルをピペリジン酢酸塩触媒下、イソプロピルアルコール中で反応させることにより得ることができる。このような反応で得られる2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルは、非常に純度が高く、不純物は殆んど含まれない。
【0043】
次に、上記原料化合物を反応させてアゼルニジピンを合成する方法について説明する。
【0044】
(アゼルニジピンの合成方法)
アゼルニジピンは、特許文献1に記載の方法に従い製造することができる。アゼルニジピンの合成に用いる3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩には、前記式(3)で示される化合物(酢酸塩を含む)が含まれる。3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルの使用量は、2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステル1モルに対して、3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩を0.8〜2.0モルとすることが好ましく、さらには1.0〜1.2モルとすることが好ましい。
【0045】
この反応は、3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルとの反応は、両者を混合することにより実施できる。両者を混合するには、反応溶液中、両者を攪拌混合することが好ましく、この際、加熱することが特に好ましい。反応溶液とする場合は、アルコール系の溶媒を使用することが好ましく、特にイソプロピルアルコールであることが好ましい。イソプロピルアルコールを使用することにより、アゼルニジピン、および第一副生物が前記に溶解した溶液の調製が容易となる。なお、両者の反応は、塩基の存在下で実施することもできるし、塩基を存在させずに実施することもできる。
【0046】
原料化合物を混合して反応させる際の反応温度としては、転換率およびアゼルニジピンの純度の点から40℃〜70℃が好ましく、特に50℃〜60℃が好ましい。反応時間は特に制限はないが、通常0.5〜24時間の範囲で行われる。
【0047】
上記条件に従い3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルとを反応させることにより、アゼルニジピンを合成することができる。この際、原料化合物として、前記式(3)で示される化合物(酢酸塩を含む)を含む粗3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)酢酸塩を使用すると、第一副生物が得られるアゼルニジピンに含まれる。
【0048】
なお、この第一副生物は、実施例に詳述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件において約7分にピークが観察される。そして、LC−MASSの分析結果が((M+1)、390)であり、単離した第一副生物の元素分析結果がC:58.50%(理論値:58.60%)、H:6.05%(理論値:5.95%)、N:10.89%(理論値:10.79%)、O:24.55%(24.65%)であること、および、H−NMRの測定結果(0.95ppm(d,3H)、1.05ppm(t,3H)、1.15ppm(d,3H)、2.27ppm(s,3H)、3.85−3.98ppm(m,2H)、4.75−4.81ppm(m,2H)、6.72ppm(brs,2H)、7.50ppm(t,1H)、7.57−7.59ppm(m,1H)、7.95−7.97ppm(m,2H)、8.72ppm(s,1H))から、前記式(2)で示される構造の化合物であると同定した。
【0049】
本発明においては、上記方法により合成したアゼルニジピン、および第一副生物を使用し、両者が混合溶媒中に溶解した溶液を調製する。この溶液を調製する方法について具体的に説明する。
【0050】
(アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製する方法)
上記の通り、アゼルニジピンを合成する際、反応溶媒としてイソプロピルアルコールを使用した場合には、得られた反応溶液に、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を所定量加えることにより、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製することができる。また、この際、アゼルニジピンに対して溶媒量を調整する必要がある場合には、イソプロピルアルコールを加えるか、濃縮して留去した後、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を加えることもできる。こうすることにより原料化合物を反応させて得られる反応溶液から、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製することができる。
【0051】
ただし、アゼルニジピンを合成する反応において、塩基を使用した場合には、この塩基を洗浄により取り除くことが好ましい。また、塩基を使用しない場合においても、反応溶液には酢酸が含まれるため、反応終了後、この酢酸を中和処理することにより除去することが好ましい。そのため、本発明においては、前記反応溶液から、アゼルニジピン、および第一副生物を含む混合物を取り出し、混合溶媒に溶解させ、溶液を調製することもできる。
【0052】
原料化合物を反応させた反応溶液から、アゼルニジピンと第一副生物とを含む混合物を取り出す方法は、以下の方法を採用することができる。具体的には、反応終了後、使用した反応溶媒、例えば、イソプロピルアルコール等を濃縮して留去する。次いで、得られた濃縮物を水に相溶し難い溶媒、好ましくは酢酸エチルに溶解させ、水洗、または必要に応じて、塩基性水溶液により洗浄する。その後、水に相溶し難い溶媒を濃縮して留去し、アゼルニジピン、および第一副生物を含む混合物を得る方法を採用することが好ましい。この方法を採用することにより、純度の高いアゼルニジピンを操作性よく製造できる。
【0053】
このようにして得られた混合物は、イソプロピルアルコール、酢酸エチルを含んでいてもよい。該混合物がイソプロピルアルコール、および酢酸エチルを含む場合には、含まれるそれらの量を考慮して、イソプロピルアルコール、並びに、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒の量を決定し、該混合物とそれら溶媒とを混合してやればよい。そして、イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒中に、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製してやればよい。
【0054】
また、より純度の高いアゼルニジピンを得るために、上記混合溶媒で再結晶を繰り返し行う場合には、混合溶媒に溶解させる結晶(アゼルニジピンを主成分とし、第一副生物を含む結晶)は、イソプロピルアルコール、並びに、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含んだ湿体であってもよい。この場合も、再度、混合溶媒に溶解させる際、含まれる各溶媒の量を考慮し、イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒中に、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製してやればよい。
【0055】
中でも、最終的に得られるアゼルニジピンの純度を効率よく高くするためには、以下の方法により該溶液を調製することが好ましい。先ず、イソプロピルアルコール中で原料化合物である3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル酢酸塩と2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステルとを反応させて、アゼルニジピン、および第一副生物を合成する。次に、得られた反応溶液と、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒とを混合し、イソプロピルアルコール100容量部に対して、該溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶液(混合溶媒)とする。この混合溶液(混合溶媒)中でアゼルニジピンの結晶を析出させ、第一副生物を含む第一精製アゼルニジピンの結晶を得る。その後、第一精製アゼルニジピンを酢酸エチルに溶解し、水洗後(中和処置後)、酢酸エチルを濃縮して濃縮物(第一副生物とアゼルニジピンとの混合物)を得る。そして、この濃縮物をイソプロピルアルコール100容量部に対して、該溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒に溶解させることにより、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製することが好ましい。この調製の後、析出工程、分別工程を実施することにより、効率よく第一副生物を低減することができ、純度の高いアゼルニジピンを製造することができる。
【0056】
以上説明した何れかの方法を採用することにより、混合溶媒中に、アゼルニジピン、および第一副生物が溶解した溶液を調製することができる。この際、第一副生物の量は、特に制限されるものではないが、通常のアゼルニジピンの製造を考慮すると、アゼルニジピン100質量部に対して、0.01〜10質量部である。第一副生物が上記範囲を満足する場合、本発明の効果が顕著になり、純度の高いアゼルニジピンを製造できる。また、その他の不純物が含まれていてもよいが、この場合、溶媒を除くその他の不純物は、アゼルニジピン100質量部に対して、2.0質量部以下であることが好ましい。
【0057】
次に、前記混合溶媒について説明する。
【0058】
(混合溶媒)
本発明においては、アゼルニジピン、および第一副生物をイソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒中に溶解させることが重要である。メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒は、1種類であってもよいし、2種以上使用してもよい。2種類以上使用する場合には、その合計量が前記範囲を満足すればよい。中でも、収率よく、より高純度のアゼルニジピンを製造するためには、エタノールを使用することが好ましい。
【0059】
前記混合溶媒において、イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒が5容量部未満の場合には、第一副生成物を初めとする不純物低減効果が低下するため好ましくない。一方、50容量部を超えると、高純度化されたアゼルニジピンの収率が低下するため好ましくない。副生成物の低減(アゼルニジピンの高純度化)、アゼルニジピンの収率とを考慮すると、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒は、7容量部以上48容量部以下であることが好ましく、さらには10容量部以上40容量部以下であることが好ましい。なお、この容量部の比は、23℃における溶媒の比である。
【0060】
また、使用する混合溶媒の量は、イソプロピルアルコールとその他の溶媒の使用割合、温度等に影響されるため一義的に決定できるものではないが、アゼルニジピン100質量部に対して、200質量部以上1000質量部以下とすることが好ましい。混合溶媒の量が上記範囲を満足することにより、生成効率が高まり副生成物の残存が少ない高純度のアゼルニジピンを高収率で取得することができる。
【0061】
上記の方法に従い、アゼルニジピン、および第一副生物とが溶解した溶液を調製することができる。より高い純度のアゼルニジピンを製造するためには、得られた溶液は、好ましくは40℃以上90℃以下の温度、さらに好ましくは60℃以上85℃以下の温度に加熱することが好ましい。また、上記温度範囲に加熱する場合には、溶液を攪拌混合しておくことが好ましい。上記温度範囲に加熱する時間は、アゼルニジピンの量、溶媒量、温度等に応じて適宜決定すればよいが、通常、5分から120分である。
【0062】
次に、本発明においては、前記調製工程で調製された溶液中にアゼルニジピンの結晶を析出させる析出工程を行う。析出工程について説明する。
【0063】
(析出工程)
この析出工程においては、前記調製工程で調製された溶液中にアゼルニジピンの結晶を析出させるものである。アゼルニジピンの結晶を析出させる方法は、特に制限されるものではなく、混合溶媒を濃縮してもよいし、溶液を冷却することもできるし、種結晶を使用することもできる。
【0064】
中でも、より純度の高いアゼルニジピンを製造するためには、該溶液を冷却してアゼルニジピンの結晶を析出させることが好ましい。混合溶媒の使用量をアゼルニジピン100質量部に対して、200質量部以上1000質量部以下とした場合には、その濃度のまま、冷却してアゼルニジピンの結晶を析出させることが好ましい。この析出工程において、特に好ましい態様を説明すると以下の通りである。具体的には、アゼルニジピン100質量部に対して、混合溶媒が200質量部以上1000質量部以下の濃度に溶液を調製し、かつ前記調製工程において、該溶液を40℃以上90℃以下の温度に加熱した後、該溶液を−30℃以上20℃以下、さらに好ましくは、−20℃以上15℃以下の温度まで冷却し、アゼルニジピンの結晶を析出させることが好ましい。この際、種結晶を加えることもできる。冷却到達温度が前記範囲を満足することにより、アゼルニジピンの純度をより高めることができる。また、冷却速度は、特に制限されるものではないが、2℃/時間以上100℃/時間以下とすることが好ましい。また、冷却到達温度に達してからの保持時間も、特に制限されるものではなく、通常0.1時間以上100時間以下である。
【0065】
このような方法に従い、溶液中にアゼルニジピンの結晶を析出させることができる。次に、得られたアゼルニジピンの結晶を取り出す分別工程について説明する。
【0066】
(分別工程)
分別工程においては、特に制限されるものではなく、公知の方法により溶液中の結晶を取り出してやればよい。具体的には、デカンテーション、ろ過等の公知の方法により、アゼルニジピンの結晶と混合溶媒とを分離し、該結晶を取り出せばよい。中でも、ろ過により溶液と結晶とを分別し、得られた結晶を混合溶媒、またはイソプロピルアルコールで洗浄することが好ましい。
【0067】
このようにして得られた結晶は、アゼルニジピンの純度が非常に高い。精製の対象となる不純物を含む粗アゼルニジピンの純度にもよるが、前記の好ましい範囲の第一副生物量、不純物量であれば、実施例で詳述するHPLCの測定結果によれば、純度99.50%以上、最適化を図れば純度99.90以上、さらには純度99.95以上のアゼルニジピンを得ることができる。この際、第一副生物の量は、HPLCの測定結果によれば、0.1%以下、さらには0.05%以下とすることができる。なお、アゼルニジピンの純度を高め、第一副生物の量をより低減するために、上記混合溶媒を使用した溶液の調製、析出工程、分別工程を繰り返し行うこともできる。
【0068】
分別工程を行った後には、得られた結晶を乾燥することによりアゼルニジピンを得ることができる。だだし、上記方法で取り出したアゼルニジピンの結晶を乾燥しただけでは、アゼルニジピンにイソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、酢酸エチル等が包接されて、付加体となる場合がある。そのため、分別工程で得られた結晶は、乾燥する前に、シクロヘキサンと混合し、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、酢酸エチルを除去することが好ましい。次に、これら溶媒を除去する除去工程について説明する。
【0069】
(除去工程)
前記分別工程で取り出した結晶は、溶媒を乾燥する前にシクロヘキサンと混合することが好ましい。アゼルニジピンはシクロヘキサンには溶解しないため、該結晶とシクロヘキサンとを混合することによりスラリーとすることができる。スラリーとすることにより、混合溶媒がシクロヘキサンに移行するため、容易に溶媒の除去ができる。
【0070】
シクロヘキサンと混合する結晶は、特に制限されるものではないが、アゼルニジピンと付加体を形成する溶媒の量が少ない方がその除去が容易となる。そのため、シクロヘキサンと混合する結晶は、アゼルニジピン100質量部に対して、イソプロピルアルコールを1〜50質量部含む湿体であることが好ましい。なお、この湿体には、メタノール、エタノール、酢酸エチルが0.1〜10質量部含まれていてもよい。
【0071】
シクロヘキサンの使用量は、特に制限されるものではないが、アゼルニジピン100質量部に対して、300質量部以上2000質量部以下とすることが好ましく、さらに、400質量部以上1500質量部以下とすることが好ましく、特に、500質量部以上1200質量部以下とすることが好ましい。シクロヘキサンの使用量が、上記範囲を満足することにより、容易にイソプロピルアルコール、およびその他の溶媒を除去することができる。
【0072】
上記結晶とシクロヘキサンとの混合は、特に制限されるものではないが、両者を混合して攪拌しておくことが好ましい。攪拌時間は、特に制限されるものではないが、通常、1.5時間以上24時間以下であればよい。なお、混合時の温度は、イソプロピルアルコールとシクロヘキサンとを除去する際の温度と同じ温度であることが好ましい。具体的には、50℃未満であることが好ましく、10℃以上45℃以下とすることがより好ましく、さらに20℃以上40℃以下とすることが好ましく、特に25℃以上35℃以下とすることが好ましい。この温度で混合することによりアゼルニジピンの分解を防ぐことができる。
【0073】
上記結晶とシクロヘキサンとを混合した後、少なくともイソプロピルアルコール(使用した混合溶媒によっては、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒が含まれる場合もある)とシクロヘキサンとを除去する場合には、50℃未満の温度で両溶媒を除去することが好ましい。50℃未満の温度で両溶媒とアゼルニジピンとを分離することにより、アゼルニジピンン自体の分解物を低減することができる。さらに、50℃未満の温度で処理することにより、容易に純度の高いII型結晶アゼルニジピンを製造することができる。操作性を向上し、アゼルニジピンの分解をより抑制するためには、両溶媒を除去する際の温度は、10℃以上45℃以下とすることがより好ましく、さらに20℃以上40℃以下とすることが好ましく、特に25℃以上35℃以下とすることが好ましい。
【0074】
溶媒を除去する方法は、50℃未満の温度で処理さえすれば、特に制限されるものではない。例えば、上記温度範囲下において、少なくともイソプロピルアルコールとシクロヘキサンとを共沸するか、または、スラリーをろ過して、結晶と溶媒を分離してやればよい。この際、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、酢酸エチルをより低減するためには、ろ過することが好ましい。イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、酢酸エチルが残存するとアゼルニジピンの付加体が形成されるおそれがあるため、この時点で、ろ過し、シクロヘキサンで洗浄することが好ましい。
【0075】
溶媒を除去して得られたアゼルニジピンは、50℃未満の温度で乾燥することが好ましい。この乾燥においては、溶媒を除去した後、得られた塊状のアゼルニジピンを所望の粒度、例えば、平均粒径(中位径、D50)が10μm程度となるように粉砕し、その後、再乾燥することもできる。粉砕後に乾燥することにより、乾燥時間を短くすることができる。
【0076】
少なくともイソプロピルアルコールとシクロヘキサンとを50℃未満の温度で除去することにより、アゼルニジピンの分解を抑制すると共に、II型結晶アゼルニジピン(融点が120℃以上130℃以下のアゼルニジピン)を製造することができる。50℃以上の方法で処理した場合には、例えば、分解が生じたり、融点の高いIII型、IV型結晶アゼルニジピンが得られるようになる。そのため、原薬として有用なII型結晶アゼルニジピンを効率よく製造するためには、さらに、上記方法に従い50℃未満の温度で処理することが好ましい。本発明の方法によれば、アゼルニジピンのイソプロピルアルコール付加体の純度にもよるが、純度が99.50%〜100.0%のII型結晶アゼルニジピンを製造することができる。また、最適化すれば、収率よく、純度が99.90%以上、さらには99.95%以上の高純度のII型結晶アゼルニジピンを製造することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
なお、実施例および比較例における純度評価は、上記のHPLCの分析条件と同様の方法にて実施した。また、融点の測定は、柴田化学株式会社製BUCHI Melting Point B−540装置により日本薬局方に規定する方法で融点を測定した。
【0079】
(HPLCの分析条件)
装置システム:WATERS社製 型式2695−2489。
カラム:INERTSIL ODS(GLサイエンス社製)
−粒子径5μm 内径4.6mm×長さ250mm。
検出波長:254 nm。
カラム温度:40 ℃。
サンプル温度:25 ℃。
移動相:アセトニトリル/10mM KHPO水溶液=70/30(V/V)
流速:1.0mL/min。
この測定条件において、アゼルニジピンは約7分にピークを確認することができる。また、第一副生物は、約16分にピークを確認することができる。
【0080】
なお、アゼルニジピンの質量、第一副生物の量は、以下のようにして求めることができる。先ず、純粋なアゼルニジピン、第一副生物を製造する。そして、これらの成分の内容量(質量)が既知の溶液を調製し検量線を作成する。次に製造で得られた第一副生物を含むアゼルニジピンの組成を定量し、前述の検量線からアゼルニジピン100質量部当たりの第一副生物の量を算出した。その他の不純物についても同様に算出した。
【0081】
実施例1
(粗アゼルニジピンの合成 調製工程1)
窒素雰囲気下、0〜10℃に冷却したイソプロピルアルコール(IPA)2750mL中に2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステル550g(1.98mol)と3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル酢酸塩761g(1.98mol、1.0eq)を加え、0〜10℃の温度を超えないようにトリエチルアミン201g(1.98mol、1.0eq)を滴下し、50℃に昇温後、同温にて4時間反応を行った。反応終了後、反応溶液にイソプロピルアルコール2750mL、およびエタノール(EtOH)550mLを追加した。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:イソプロピルアルコール/エタノール=100容量部/10容量部であり、アゼルニジピン100質量部に対して混合溶媒が424質量部となった。該混合溶媒(溶液)中には、アゼルニジピンが1.94mol(1130.3g)、第一副生物が5.8mmol(2.3g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.2質量部であった。また、該溶液は、HPLC純度 アゼルニジピン99.5%、第一副生物0.3%であった。この溶液の組成を表1の調製工程1に示した。
【0082】
(析出工程1)
調製工程1で得られた溶液を2時間かけて0〜5℃に冷却した。その後、該溶液を0〜5℃の範囲で保持し、15時間攪拌したところ結晶が析出した。
【0083】
(調製工程1(析出工程1)に対する分別工程1)
析出した結晶を濾取し、イソプロピルアルコール1650mLで洗浄し、湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体1237.9gを得た。この湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノールは、アゼルニジピン941g(1.62mol)、第一副生物0.9g(2.3mmol)、イソプロピルアルコール290g、エタノール6gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は81.6%、アゼルニジピンの面積百分率純度99.81%であり、第一副生物含有率(HPLC)は0.14%であった。この湿体(第一精製アゼルニジピン)の組成を表1の分別工程1に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して15質量部、質量が減少した。
【0084】
得られた湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体(第一精製アゼルニジピン)1237.9gに酢酸エチル4750mLを加え溶解し、イオン交換水2375mLを加え30分間攪拌した。静置後、分液を行ない、更にもう一度イオン交換水2375mLを加え同一の操作を繰り返し、有機層を回収した。得られた有機層を30〜50℃で減圧濃縮し、濃縮物を得た。この濃縮物に含まれるアゼルニジピン、第一副生物の量は、表1に示した分別工程1の湿体と変わらなかった。
【0085】
(第一精製アゼルニジピンの再結晶 調整工程2)
減圧濃縮終了後、得られた濃縮物(混合物)にイソプロピルアルコール8550mLを加え、さらに減圧濃縮を行い、イソプロピルアルコール2850mLを回収し、減圧濃縮を終了後、エタノール950mLを追加した。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/17容量部 アゼルニジピン100質量部に対して混合溶媒を558質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピン100質量部に対して、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が2.3mol(0.9g)含まれていた。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.81%、第一副生物0.14%であった。この溶液の組成を表1の調製工程2に示した。
【0086】
(析出工程2)
調製工程2で得られた溶液を80℃に加温した。同温にて30分間保持した後、2時間かけて10℃に冷却した。その後、該溶液を0〜10℃の範囲で保持し、8時間攪拌したところ結晶が析出した。
【0087】
(調製工程2(析出工程2)に対する分別工程2)
析出した結晶を濾取し、イソプロピルアルコール1900mLで洗浄し、湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体1141.2gを得た。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノールの組成は、アゼルニジピン849g(1.46mol)、第一副生物0.17g(0.44mmol)、イソプロピルアルコール285g、エタノール7gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は90.2%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.95%であり、第一副生物含有率(HPLC)は0.03%であった。この湿度の組成を表1の分別工程2に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して13質量部、質量が減少した。
【0088】
【表1】

【0089】
(除去工程)
上記工程で得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体990.15g(アゼルニジピン737g、第一副生物0.15g、溶媒類253g)にシクロヘキサン7650mLを加え、昇温し、40℃で3時間攪拌した。分散終了後、30℃以下まで冷却し、10〜30℃で1時間攪拌した。攪拌終了後、濾取した結晶を2550mLのシクロヘキサンで洗浄後、40℃以下で乾燥し、アゼルニジピン690.6gを得た。収率93.7%。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)は99.95%であり、第一副生物含有率(HPLC)は0.03%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0090】
製造例1(粗アゼルニジピンの合成)
窒素雰囲気下、0〜10℃に冷却したイソプロピルアルコール27.5L中に2−(3−ニトロベンジリデン)アセト酢酸イソプロピルエステル5.5kg(19.8mol)と3,3−ジアミノアクリル酸(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル酢酸塩7.61kg(19.8mol、1.0eq)を加え、0〜10℃の温度を超えないようにトリエチルアミン2.01kg(19.8mol、1.0eq)を滴下し、50℃に昇温後、同温にて4時間反応を行った。反応終了後、反応溶液にイソプロピルアルコール33.0Lを追加し、得られたイソプロピルアルコール(アゼルニジピン100質量部に対して、イソプロピルアルコールは429質量部となり、このイソプロピルアルコール中には、アゼルニジピンが19.4mol(11.303kg)、第一副生物が58mmol(23g)含まれていた。HPLC純度 アゼルニジピン99.5%、第一副生物0.3%であった。この溶液の組成を表2に示した。
【0091】
得られた溶液を2時間かけて0〜5℃に冷却した。その後、該溶液を0〜5℃の範囲で保持し、15時間攪拌したところ結晶が析出した。
【0092】
析出した結晶を濾取し、イソプロピルアルコール16.5Lで洗浄し、湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール付加体13.5kgを得た。この湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール付加体は、アゼルニジピン10.4kg、第一副生物19g、イソプロピルアルコール3.1kgを含んでいた。アゼルニジピン100質量部に対して第一副生物0.18質量部、イソプロピルアルコール29.8質量部であった。アゼルニジピンの収率は90.0%であり、アゼルニジピンの面積百分率純度99.71%であり、第一副生物含有率(HPLC)は0.26%であった。この湿体の組成を表2に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して14質量部、質量が減少した。
【0093】
【表2】

【0094】
得られた湿体の粗アゼルニジピン・イソプロピルアルコール付加体1222.6g(アゼルニジピン941g、第一副生物1.6g、イソプロピルアルコール280g)に酢酸エチル4750mLを加え溶解し、イオン交換水2375mLを加え30分間攪拌した。静置後、分液を行ない、更にもう一度イオン交換水2375mLを加え同一の操作を繰り返し、有機層を回収した。得られた有機層を30〜50℃で減圧濃縮し、濃縮物を得た。
【0095】
以下の実施例、比較例においては、この製造例1で得られた濃縮物を再結晶した。この濃縮物に含まれるアゼルニジピン、第一副生物の量は、表2に示した湿体と変わらなかった。
【0096】
実施例2
(粗アゼルニジピンの再結晶 調製工程)
製造例1で得られた濃縮物(混合物)にイソプロピルアルコール8550mLを加え、さらに減圧濃縮を行った。イソプロピルアルコール2850mLを回収し、減圧濃縮を終了後、エタノール400mLを追加した。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/7容量部 アゼルニジピン100質量部に対して混合溶媒510質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が4.2mmol(1.6g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.17質量部であった。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.60%、第一副生物0.26%であった。この溶液の組成を表3の調製工程に示した。
【0097】
(析出工程)
調製工程で得られた溶液を80℃に加温した。同温にて30分間保持した後、2時間かけて10℃に冷却した。その後、該溶液を0〜10℃の範囲で保持し、8時間攪拌したところ結晶が析出した。
【0098】
(分別工程)
析出した結晶を濾取し、イソプロピルアルコール1900mLで洗浄し、湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体1170.3gを得た。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は、アゼルニジピン894g、第一副生物0.27g、イソプロピルアルコール267g、エタノール9gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は95.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.92%であり、第一副生物含有率(HPLC)は0.05%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.03質量部であった。この湿体の組成を表3の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して12質量部、質量が減少した。
【0099】
【表3】

【0100】
(除去工程)
得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体483.11g(アゼルニジピン369g、第一副生物0.11g、溶媒類114g)にシクロヘキサン3825mLを加え、昇温し、40℃で3時間攪拌した。分散終了後、30℃以下まで冷却し、10〜30℃で1時間攪拌した。攪拌終了後、濾取した結晶を1275mLのシクロヘキサンで洗浄後、40℃以下で乾燥し、アゼルニジピン347gを得た。収率94.0%。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)は99.92%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.05%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0101】
実施例3
(粗アゼルニジピンの再結晶 調製工程)
実施例2の調製工程において、追加したエタノールを2736mLとした以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/48容量部 アゼルニジピン100質量部に対して、混合溶媒713質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が4.2mmol(1.6g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.17質量部であった。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.60%、第一副生物0.26%であった。この溶液の組成を表4の調製工程に示した。
【0102】
(析出工程)
調製工程で得られた溶液を80℃に加温し、実施例2と同様の操作(再結晶)を行った。
【0103】
(分別工程)
分別工程も実施例2と同様の操作を行った。得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は1104.08gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は、アゼルニジピン781g、第一副生物0.08g、イソプロピルアルコール284g、エタノール39gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は83.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.96%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.02%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.01質量部であった。この湿体の組成を表4の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して20質量部、質量が減少した。
【0104】
【表4】

【0105】
(除去工程)
前記湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体1042g(アゼルニジピン737g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作で除去工程を実施した。
【0106】
得られたアゼルニジピンは、694gであり、収率94.2%であった。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.96%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.02%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0107】
実施例4
(粗アゼルニジピンの再結晶 調製工程)
実施例2の調製工程において、追加したエタノールを950mLとした以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/17容量部 アゼルニジピン100質量部に対して、混合溶媒558質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が4.2mmol(1.6g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.17質量部であった。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.60%、第一副生物0.26%であった。この溶液の組成を表5の調製工程に示した。
【0108】
(析出工程)
調製工程で得られた溶液を80℃に加温し、実施例2と同様の操作(再結晶)を行った。
【0109】
(分別工程)
分別工程も実施例2と同様の操作を行った。得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は1064gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は、アゼルニジピン837g、第一副生物0.25g、イソプロピルアルコール210g、エタノール17gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は89.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.94%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.04%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.03質量部であった。この湿体の組成を表5の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して10質量部、質量が減少した。
【0110】
【表5】

【0111】
(除去工程)
前記湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体937.22g(アゼルニジピン737g、第一副生物0.22g、溶媒類200g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作で除去工程を実施した。
【0112】
得られたアゼルニジピンは、682gであり、収率92.5%であった。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.94%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.04%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0113】
実施例5
(粗アゼルニジピンの再結晶(調製工程・析出工程・分別工程)
実施例4において、エタノールを使用した代わりにメタノールを使用した以外は実施例4と同様の操作を行った。調製工程における溶液の組成を表6に示した。
【0114】
得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・メタノール付加体は、1078.47gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・メタノール付加体は、アゼルニジピン818.2g、第一副生物0.27g、イソプロピルアルコール255g、メタノール5gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は87.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.93%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.05%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.03質量部であった。この湿体の組成を表6の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して21質量部、質量が減少した。
【0115】
【表6】

【0116】
(除去工程)
前記精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・メタノール付加体958g(アゼルニジピン737g、第一副生物0.24g)を使用した以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0117】
得られたアゼルニジピンは685gであり、収率93.0%であった。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.93%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.05%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0118】
実施例6
(粗アゼルニジピンの再結晶 調製工程・析出工程・分別工程)
実施例4において、エタノールを使用した代わりに酢酸エチルを使用した以外は実施例4と同様の操作を行った。調製工程における溶液の組成を表7に示した。
【0119】
得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・酢酸エチル付加体は、1078.47gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・酢酸エチル付加体は、アゼルニジピン818.2g、第一副生物0.27g、イソプロピルアルコール255g、酢酸エチル5gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は87.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.93%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.05%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.03質量部であった。この湿体の組成を表7の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して21質量部、質量が減少した。
【0120】
【表7】

【0121】
(除去工程)
前記精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・酢酸エチル付加体958g(アゼルニジピン737g、第一副生物0.24g)を使用した以外は、実施例4と同様の操作を行った。
【0122】
得られたアゼルニジピンは685gであり、収率93.0%であった。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.93%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.05%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0123】
比較例1
(粗アゼルニジピンの再結晶 調製工程)
実施例2の調製工程において、追加したエタノールを60mLとした以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/1.1容量部 アゼルニジピン100質量部に対して、混合溶媒481質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が4.2mmol(1.6g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.17質量部であった。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.60%、第一副生物0.26%であった。この溶液の組成を表8の調製工程に示した。
【0124】
(析出工程)
調製工程で得られた溶液を80℃に加温し、実施例2と同様の操作(再結晶)を行った。
【0125】
(分別工程)
分別工程も実施例2と同様の操作を行った。得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は1167gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は、アゼルニジピン895g、第一副生物0.63g、イソプロピルアルコール270g、エタノール2gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は95.1%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.88%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.10%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.07質量部であった。この湿体の組成を表8の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して13質量部、質量が減少した。
【0126】
【表8】

【0127】
(除去工程)
前記湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体961g(アゼルニジピン737g)を使用した以外は、実施例2と同様の操作で除去工程を実施した。
【0128】
得られたアゼルニジピンは、678gであり、収率92.0%であった。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.88%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.10%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。
【0129】
比較例2
(粗アゼルニジピンの再結晶 調整工程)
実施例2の調製工程において、追加したエタノールを3420mLとした以外は、実施例2と同様の操作を行った。得られたイソプロピルアルコール/エタノール溶液は、混合溶媒比:100容量部/60容量部 アゼルニジピン100質量部に対して、混合溶媒772質量部であった。そして、この溶液には、アゼルニジピンが1.62mol(941g)、第一副生物が4.2mmol(1.6g)含まれていた。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物は0.17質量部であった。また、HPLC純度 アゼルニジピン99.60%、第一副生物0.26%であった。この溶液の組成を表9の調製工程に示した。
【0130】
(析出工程)
調製工程で得られた溶液を80℃に加温し、実施例2と同様の操作(再結晶)を行った。
【0131】
(分別工程)
分別工程も実施例2と同様の操作を行った。得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は647gであった。この湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体は、アゼルニジピン471g、第一副生物0.05g、イソプロピルアルコール156g、エタノール20gを含んでいた。アゼルニジピンの収率は50.0%であり、アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)99.96%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.02%であった。アゼルニジピン100質量部に対する第一副生物の量は0.01質量部であった。この湿体の組成を表9の分別工程に示した。また、一部乾燥を行ったところ、アゼルニジピン100質量部に対して15質量部、質量が減少した。
【0132】
【表9】

【0133】
(除去工程)
得られた湿体の精製アゼルニジピン・イソプロピルアルコール・エタノール付加体568g(アゼルニジピン369g)にシクロヘキサン3825mLを加え、昇温し、40℃で3時間攪拌した。分散終了後、30℃以下まで冷却し、10〜30℃で1時間攪拌した。攪拌終了後、濾取した結晶を1275mLのシクロヘキサンで洗浄後、40℃以下で乾燥し、アゼルニジピン347gを得た。収率94.0%。アゼルニジピンのHPLC純度(面積百分率純度)は99.96%であり、第一副生物含有率(HPLC)0.02%であった。得られたアゼルニジピンの融点は125〜127℃であり、NMRスペクトル、IRスペクトル、XRDからアゼルニジピンであることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロピルアルコール100容量部に対して、メタノール、エタノール、および酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を5容量部以上50容量部以下含む混合溶媒中に、下記式(1)
【化1】

で示される化合物と下記式(2)
【化2】

で示される化合物が溶解した溶液を調製する調製工程、
前記調製工程で得られた溶液中に前記式(1)で示される化合物の結晶を析出させる析出工程、および
前記析出工程で得られた結晶を取り出す分別工程
とを含むことを特徴とする前記式(1)で示される{2−アミノ−1,4−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸 3−(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル 5−イソプロピルエステル}の製造方法。
【請求項2】
前記調製工程において、前記式(1)で示される化合物100質量部に対して、前記式(2)で示される化合物が0.01〜10質量部の割合で含まれる溶液を調製することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記分別工程で取り出した結晶とシクロヘキサンとを混合した後、50℃未満の温度で前記混合溶媒、およびシクロヘキサンを除去する除去工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記除去工程において、シクロヘキサンと混合する前記結晶が、前記式(1)で示される化合物100質量部に対して、イソプロピルアルコールを1〜50質量部含む湿体であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記除去工程で得られる前記式(1)で示される化合物の融点が120℃以上130℃以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−20970(P2012−20970A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160477(P2010−160477)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】