説明

ワクチンとしての複製欠損RNA−ウイルス

【課題】導入遺伝子を発現させるために、特にワクチン開発の分野で使用できる複製欠損性でかつ転写可能なマイナス鎖RNA−ウイルスを提供する。
【解決手段】二次転写能力を欠損することなく複製能力の欠損を生じる、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに突然変異を有するウイルスゲノムを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入遺伝子を発現させるために、特にワクチン開発の分野で使用できる複製欠損性でかつ転写可能なマイナス鎖RNA−ウイルスに関する。
【背景技術】
【0002】
生ワクチンでの免疫化は、自然感染を手本にして広範囲の免疫応答を形成する。接種の際には、弱めてあるが増殖性のウイルスが使用される。接種ウイルスの増殖は、免疫応答ひいてはウイルスの増殖もしくは除去のコントロールが保証されるようにゆっくり行わなくてはならない。生ワクチンのコンセプトは、種々の従来のグループで使用した際に幾度も成功してきた。ところが、生ワクチンでの免疫化が困難であり、更なる保全対策を必要とする重要な目的グループがある:乳児は移行抗体により生後最初の月に保護される。同時にこれらは生きた免疫化の場合には克服しなくてはならない障壁である。但し、その際に他方では接種ウイルスの過剰な増殖及びこれに関連する接種障害を許容してはならない。もう1つの目的グループは、免疫系がもはや順調ではない年輩の人であるので、接種による過剰な負担と、接種ウイルスの高い増殖による接種障害を生じ得る。よって、特定の目的グループで使用するために免疫学的に卓越した生ワクチン接種をより安全に行い、一般的利用のためにも安全性を高めなくてはならない問題も生じる。
【0003】
マイナス鎖RNA-ウイルス、例えば、狂犬病ウイルス又はセンダイウイルス(SeV)のようなものは、数年来リバースジェネティックスにより目的に合わせて変えられてきた。欧州特許EP-A-0702085(特許文献1)には、クローニングcDNAからの、伝染性複製非セグメント化マイナス鎖RNA−組換えウイルスの製造が記載されている。欧州特許EP-A-0863202(特許文献2)には、そのゲノム中に異種遺伝子が挿入されているか、又は遺伝子が欠失又は不活化されているが、そのゲノム複製は無傷である組換えセンダイウイルスが記載されている。
【0004】
ワクチンのバックボーンとして、マイナス鎖RNA−ウイルスが特に適切である。それというのも、細胞質中でのその増殖がRNA−マイナス鎖上で進行し、かつ遺伝子をウイルス性ゲノムの領域内で簡単に交換できるからである。従って、種々のウイルスタイプの表面タンパク質を有する組換えウイルスを製造し、かつワクチンとして動物実験で使用することは既に成功していた(Schmidt等 J. Virol. 75(2001), 4594-4603(非特許文献1)及び国際公開WO01/42445(特許文献3))。ヒトパラインフルエンザウイルスTyp 3(hPIV3)のF−タンパク質とHN−タンパク質及び呼吸系発疹ウイルス(RSV)のG−タンパク質又はF−タンパク質を、ウシパラインフルエンザウイルスTyp 3(bPIV 3)をベースとするベクター中へ組換え体挿入することにより、ハムスターに適用後hPIV3とRSVに対する粘膜免疫応答を検出できた。従って動物実験で試験した生ワクチンの二価抗原性は既に達成されていた。
【0005】
種のバリアの介在ゆえに、ヒトPIV3表面抗原とRSV表面抗原を有するこれらのウシパラインフルエンザウイルスは、ヒトで使用するために既に十分に弱めておくべきである。野生型への復帰変異は期待できない。それというのも、ウイルス性表面タンパク質の完全遺伝子が交換されているからである。これはワクチンの臨床試験で既に始まっていた。
【0006】
記載したウイルス突然変異体は複製可能であるので、接種を受けるべきヒトにおいて安全にウイルス増殖することになり、確かにその強さはウイルスの修飾により弱められているが、完全に消されてはいない。この場合に見込まれるウイルス血症の濃度、ひいては副作用のある接種を受けるべきヒトの負担は、個々の要因に左右される。
【0007】
本発明の範囲内では、生ワクチン接種の危険性、特に特定の目的グループから接種を受けるべきヒトの危険を実質的に減らすために試験することにした。
【0008】
このための手がかりは、ワクチン接種後のウイルスゲノム複製の抑制にある。これにより、接種を受けるべきヒトの免疫学的能力とは無関係にウイルスの増殖ならびに相応する接種障害を生じることがない。
【0009】
この手がかりの場合に、ウイルスRNA−ポリメラーゼが、ウイルスmRNAの合成と、ウイルス性ゲノムの増殖という2つの役割を行うという難問が原則的にある。新規ワクチンでは、この組合せを取り去らなくてはならない。それというのも、該ワクチンはウイルスmRNAを合成さえすれば良いからである。
【0010】
もう1つの問題は、一般に生ワクチンとして適切であるようにするために、組換えウイルスが効率の良いウイルスmRNA合成を生じるべきであるということにある。従って、安全で、しかし効率の良いマイナス鎖RNA−ウイルスをベースとする生ワクチンを製造する際に著しい困難が予期される2つの矛盾する要求が原則的に存在する。
【0011】
Shoji等, Virology 318(2004), 295-305(非特許文献2)は、P遺伝子が欠損した狂犬病ウイルスの製造とキャラクタリゼーションを記載している。このウイルスの製造は、P−タンパク質発現性ヘルパー細胞を用いて行われる。ウイルスは、P−タンパク質のデノボ合成なしに、一次転写だけを行える。僅かなウイルス遺伝子発現は、免疫蛍光法においてN−タンパク質に極めて弱いシグナルを示し、かつ僅かな細胞の場合だけに、これらの僅かなウイルス遺伝子発現の納得できる検出がPCR−分析により漸くできた。マウスモデルにおける誘発試験でのこれらのウイルス突然変異体の使用は、防御を示すはずであるが、転写不活化ウイルスを用いたコントロール実験では失敗し、かつウイルス誘発用の間隔は短すぎて測定できなかった。誤認された防御期間は調査されなかった。従って、このようなウイルス突然変異体を弱めた狂犬病ワクチンの開発に使用することは、殆ど期待できないと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許EP-A-0702085
【特許文献2】欧州特許EP-A-0863202
【特許文献3】国際公開WO01/42445
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Schmidt等 J. Virol. 75(2001), 4594-4603
【非特許文献2】Shoji等, Virology 318(2004), 295-305
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明につながる試験の範囲内では、パラミクソウイルスの場合に複製と転写の役割の切り離しを、ゲノム複製機能に重要であるポリメラーゼの成分を部分的に取り除くことにより達成できることが見出された。この場合に、これはウイルスタンパク質N、P及びLのうちの1つだけであるか、又はこのようなタンパク質のうち1つの特殊な機能的ドメインであることができる。
【0015】
意外にも、ウイルス遺伝子N、L及び/又はPによりコードされるタンパク質の機能を完全にではなく部分的に欠損する突然変異により、生ワクチン製造を適切にするのに十分な転写機能を有する複製欠損RNA−ウイルスを製造できることが見出された。
【0016】
従って、本発明の対象は、複製欠損性でかつ転写可能な組換えマイナス鎖RNA−ウイルスである。本発明によるウイルスは、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに突然変異を有するウイルスゲノムを含有し、その際、この突然変異は二次的転写能力を欠損することなく、ゲノム複製の欠損を生じる。
【0017】
本発明によるウイルスは、生ワクチンを製造するための、特に衰弱又は損傷した免疫系を有するリスクのある患者に使用するために特に適切である高い安全性を有する生ワクチンを製造するための必要条件である。
【0018】
また本発明は、タンパク質N、L及びPと複合化したウイルスマイナス鎖RNAならびに単離した形の組換えウイルスのマイナス鎖RNAを含めた組換えウイルスのヌクレオカプシドにも関する。
【0019】
本発明のもう1つの対象は、本発明によるマイナス鎖RNA、特にウイルスRNA又は/及びそれに相補性のRNAをコードするcDNAである。
【0020】
本発明のもう1つの対象は、本発明による組換えマイナス鎖RNA−ウイルスを増殖するための細胞株である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、センダイウイルスの構造を表す図である。
【図2】図2は、センダイウイルスの遺伝子配列を表す図である。
【図3】図3は、センダイウイルスの転写様式を表す図である。
【図4】図4は、センダイウイルスの複製様式を表す図である。
【図5】図5は、P−タンパク質の図解を表す図である。
【図6】図6は、PCR X1とPCR X IIによる pSeV-X の製造を表す図である。
【図7】図7は、PCR−反応により製造したpSeV−X−Xを表す図である。
【図8】図8Aは、複製欠損センダイウイルス−ベクター(SeVV)の遺伝子配列を表す図であり、図8Bは、アミノ酸2〜77が欠失した欠失突然変異体pSeVV−eGFP−PΔ2−77の遺伝子配列を表す図である。
【図9】図9は、複製欠損SeVV−eGFP−ΔPの製造を表す図である。
【図10】図10は、BSR-T7細胞内でのタンパク質転写とウイルスゲノムの複製を表す図である。
【図11】図11は、MOI=1の場合のH29細胞とベロ細胞の蛍光細胞のパーセンテージを表す図である。
【図12】図12は、MOI=5の場合の血球吸着(HAD)テストの結果を表す図である。
【図13】図13は、ウイルスコードeGFP−タンパク質(26kDa)のウェスタンブロット分析結果を表す図である。
【図14】図14は、単クローンHN抗体を用いたウイルスコードHN−タンパク質(60kDa)の検出結果を表す図である。
【図15】図15Aは抗hPIV3 IgAの誘発、図15Bは抗hPIV3 IgGと抗RSV IgGの誘発を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による組換えマイナス鎖RNA−ウイルスは、出発ウイルスの突然変異により、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つの中で得られる。出発ウイルスは、天然のマイナス鎖RNA−ウイルス、特にパラミクソウイルス科又はラブドウイルス科系統由来の、又はそれらの組換えウイルスであることができる。特に有利な代表は、パラミクソウイルス、例えば、センダイウイルス、ヒト又はウシパラインフルエンザウイルス、例えば、ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)Typ 1、2、3、4a又は4b、ニューカッスル病ウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス又はヒト呼吸系発疹ウイルス(hRSV)又はラブドウイルス、例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。ウイルスがセンダイウイルス、例えば、Fushimi菌種(ATCC VR105)であるのが特に有利である。さらに、本発明により、予め挙げたウイルスの組換え変異体、例えば、EP-A-702085、EP-A-0863202又はWO 01/42445に記載されているようなものが考慮される。
【0023】
さらに有利なマイナス鎖RNA−ウイルスは、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、ボルナウイルス科、アレナウイルス科又はブニヤウイルス科の代表、例えばVSVである。
【0024】
センダイウイルスは、他のパラミクソウイルスと同様に、ヘリックスのヌクレオカプシドで被包されたウイルスである(図1)。エンベロープは、宿主細胞の原形質膜に由来する脂質膜から成り、そこからウイルスが放出される。ウイルスのエンベロープ中に膜内外の糖タンパク質、すなわち融合タンパク質(F)と赤血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)が結合している。マトリックスタンパク質(M)は、膜の内側を覆っている。エンベロープ中に含まれたヌクレオカプシドは、核タンパク質(N)(RNAの6個のヌクレオチドはN−タンパク質より結合している)、RNA依存性RNA−ポリメラーゼ(L)及び補助因子リンタンパク質(P)との複合体の形で一本鎖RNAから成る。
【0025】
センダイウイルスのマイナス鎖RNA−ゲノムは、順番に6個の構造タンパク質の遺伝子を含有している:3’−N−P/C−M−F−HN−L−5’(図2)。P/C−遺伝子は、全部で8個のタンパク質、構造リンタンパク質及び全てこれまで公知の非構造タンパク質をコードしている。
【0026】
タンパク質P、N及びLは、機能的転写と複製に重要である(Lamb 等、Paramyxiviridae: The Viruses and their Replication. Fields Virology, 4版 (2001), Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, 1305-1340)。
【0027】
本発明による組換えマイナス鎖RNA−ウイルスは、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに突然変異を有する。突然変異は、遺伝子N、L及びPのうち1つの中での欠失、置換又は/及び挿入であることができ、これらはウイルスの複製欠損を引き起こすが、しかし、転写能力を壊すことはない。突然変異は、複製に必要不可欠である遺伝子N、L及びPによりコードされたタンパク質の部分配列に関わるのに対して、転写に必要不可欠である他の部分配列は機能的に維持されたままである。
【0028】
本発明の有利な1実施態様では、組換えウイルスは、遺伝子P中、そのうちでも特に遺伝子PのN−末端部分配列中に突然変異を有する。この突然変異は、少なくとも複製能力に重要であるタンパク質Pのアミノ酸33〜41の領域に関わる。さらに、C末端領域(アミノ酸320から)に何の転写機能も阻害しない突然変異を有するのが有利である。この突然変異は、アミノ酸2〜77の領域内で複製能力の欠損を導く突然変異であるのが特に有利であり、例えば、(a)遺伝子Pによりコードされたタンパク質のアミノ酸2〜77又は(b)(a)の部分配列の複製能力を欠損するために十分である部分配列の欠失である。相応の突然変異は、他のマイナス鎖RNA−ウイルス、例えば、他のパラミクソウイルス、例えばhPIV3のP−タンパク質中でも行うことができる。
【0029】
本発明による組換えウイルスは、複製欠損性でかつ転写能力がある。複製能力の欠損とは、標的細胞(突然変異により欠損した機能がトランスの形で提供されない細胞)中で、検出可能なウイルスゲノムの増殖が何も見られないことを意味する。その際、複製を行うことができる減少したもしくは条件付きの複製欠損とは異なって何の許容条件も存在しない。複製能力の欠失の測定は、例8に記載されているように行うことができる。しかし、本発明によるウイルスは、感染後に標的細胞中でこれによりコードされる遺伝子産物を転写できるので、1つ以上の異種遺伝性産物を含めてウイルスタンパク質の発現を標的細胞中で行うことができる。本発明による組換えウイルスは、二次転写の能力を有することが重要である。すなわち、本来ヌクレオカプシド中に含有されているタンパク質成分との一次転写により生じるウイルス遺伝子産物が、それ自体二次転写を生じる又は/及び支持できることが重要である。この場合に、二次転写の程度は、相応の野生型ウイルス、すなわち、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに突然変異のないウイルスに対して、有利には少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%又は少なくとも5%のタンパク質合成を生じる。二次転写能力を相応の野生型ウイルスに対して減少させることができるが、しかし、有利には多くとも20倍、特に有利には多くとも10倍である。二次転写能力は、例7.1又は/及び7.3に記載されているように、異種遺伝子産物、例えば、レポータータンパク質の発現を定量的に測定することにより算出できる。
【0030】
突然変異の他に、本発明により組換えウイルスは、有利には少なくとも1つの導入遺伝子、すなわち、少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列を含む。異種遺伝子産物は、タンパク質、例えば、レポータータンパク質、例えば、GFPのような蛍光タンパク質又はそれらの誘導体、又は抗原(これに対して免疫応答が発生する)、又は治療タンパク質、例えば、ウイルス治療用のタンパク質又は官能性RNA−分子、例えばアンチセンスRNA、リボザイム又はRNA干渉作用のあるsiRNA−分子であることができる。異種遺伝子産物は、ウイルス、バクテリア、菌類又は原虫のような病原菌から由来する抗原、腫瘍抗原又は自己抗原であるのが有利である。抗原は、ヒトパラインフルエンザウイルス又はRSVのような異種マイナス鎖RNA−ウイルスから由来するようなウイルス抗原、例えば、hPIV3F及びHNもしくはhRSV F及びGであるのが特に有利である。本発明によるウイルスは、1つ以上の、例えば、2つ又は3つの異種遺伝子産物コード配列を含有できる。
【0031】
異種遺伝子産物コード配列を組換えウイルスのゲノム中に挿入できる。他方で、同種遺伝子産物コード配列、例えば、遺伝子F又は/及びHNも、異種遺伝子産物、例えば、キメラ遺伝子産物をコードする配列により置換できる。また、挿入された導入遺伝子と置換された導入遺伝子の組合せも可能である。
【0032】
このように、例えば、センダイウイルスの配列を、他のマイナス鎖RNAウイルスの異種配列、例えばhPIV3のようなパラインフルエンザウイルスの配列、又は/及びRSVの配列と完全に又は部分的に交換できる。キメラ配列、すなわち、ベースウイルスゲノムの断片からと、異種ウイルスゲノムの断片から成る配列を使用するのが特に有利である。例を挙げると、ベースウイルスゲノム、例えばセンダイウイルスの配列と、異種配列、例えばhPIV3のようなヒトパラインフルエンザウイルスから、又は/及びRSVから成るキメラ遺伝子F又は/及びHNをウイルスゲノムに挿入できる。
【0033】
組換えウイルスは、1つ以上の種々の導入遺伝子を含有できる。複数の導入遺伝子が存在する場合には、例えばこれらは1つ又は複数の異なる病原菌、例えば、ウイルスから由来する同じ又は異なる起源であってよい。従って、複数の、例えば2又は3種の異なる病原菌、有利にはウイルス、特に有利にはマイナス鎖RNA−ウイルス由来の導入遺伝子が存在できる。
【0034】
パラミクソウイルスへの導入遺伝子の挿入については、例えばHasan 等(J. Gen. Virol. 78(1997), 2813-2820)、Bukreyev 等(J. Virol. 70(1996), 6634-6641)、Yu 等(Genes Cells 2(1997), 457-466)、Masaki 等(FASEBVB J. 15(2001), 1294-1296)、Shiotani 等(Gene Therapy 8(2001), 1043-1050)及びBitzer 等(Mol. Therapy 7(2003), 210-217)に記載されている。導入遺伝子をウイルスゲノムの3’−領域内に挿入するのが有利である。挿入は、例えば、転写カセットの形で行われ、その際、ベクター平面上(すなわち、ベクター、例えばマイナス鎖RNAをコードするプラスミドベクターの平面上)で、リーダー領域の直後に、各々の読取り枠を組込むための特異的な制限切断部位を有する1つ以上の転写カセットが挿入される。複数の導入遺伝子の組込みは、有利には、各々独立した転写カセット中で行われる。転写カセットは、有利には異種遺伝子産物コード配列を、転写開始配列及び転写終止配列、有利には翻訳シグナルと作動的に連結した形で含む。
【0035】
本発明のもう1つの対象は、本発明による組換えマイナス鎖RNA−ウイルスゲノム又はその前駆体、又はウイルス−アンチゲノム又はその前駆体をコードする1本鎖又は二本鎖DNA分子、例えば、cDNA分子である。これに関連して、"前駆体"という用語はDNA分子が異種遺伝子産物コード配列を有さず、単にこのような配列を挿入するためのクローニング部位を有することを意味する。クローニング部位は、1つの制限切断部位、例えば、DNA中の特異的又は非特異的な制限切断部位、又は幾つかの連続した制限切断部位、有利には特異的な制限切断部位を有するマルチプルなクローニング部位である。ウイルスゲノム又は/及び相補配列をコードするDNA分子は、有利には適切な発現調節配列と作動的に連結した形で存在する。
【0036】
DNA分子は、有利にはベクター、例えば適切な宿主細胞中、すなわち、ベクター増殖細胞又はプラスミド増殖細胞中、有利には原核細胞、又は真核細胞、特に哺乳類細胞中での繁殖に適切であるプラスミドベクターであり、かつこのために必要不可欠な複製起源、組込配列又は/及び選択マーカー配列のような遺伝子エレメントを有する。
【0037】
DNA分子は、組換えウイルス又は相補配列をコードする配列を有利には転写シグナルの制御下に有するので、ウイルスの初めの製造に適切な宿主細胞中、すなわち、ウイルス産生細胞中でDNA依存性RNA−ポリメラーゼを用いて転写する場合に、ウイルス性マイナス鎖RNAを形成できる。従って、転写シグナルは各々使用される宿主細胞中でDNAの効率的な転写が可能になるように選択される。このために、各々の細胞にとって異種の転写シグナル、例えば、T7−プロモーター又はSP6−プロモーターのようなバクテリオファージプロモーターを使用でき、その際、ウイルス産生細胞は、相応する異種DNA依存性RNA−ポリメラーゼ、例えば、転写を引き起こすT7−又はSP6−RNA−ポリメラーゼも含有しなくてはならない。さらに、DNA分子は転写シグナルの他に、有利には組換えウイルスをコードする配列の3’−末端で転写ターミネーターと、ウイルス配列の末端で転写物の分離を可能にするリボザイム配列を有する。ウイルス産生細胞は、有利には真核細胞、特に哺乳類細胞である。
【0038】
複製欠損パラミクソウイルスをコードするDNAの他に、本発明によるウイルス産生細胞は、さらに補助配列を有し、それらの遺伝子産物は本発明による組換えウイルスRNAの組立てをトランスの形で可能にする。このために、細胞は例えば、N−タンパク質、P−タンパク質又は/及びL−タンパク質をトランスの形で提供する1つ以上のベクターを含有することができる。これにより、宿主細胞中で本発明による組換えウイルスのヌクレオカプシドの組立てが可能になる。
【0039】
はじめにウイルス産生細胞中で組立てられた組換えウイルスの増殖は、本発明によるウイルスに感染させたウイルス増殖細胞中で行われる。さらに、ウイルス増殖細胞は、先に挙げたような補助配列を有し、トランスの形でN−タンパク質、P−タンパク質又は/及びL−タンパク質を提供する。例えば、ゲノム組込みによりヘルパー配列の安定な発現が行われるウイルス増殖細胞を使用するのが有利である。特に有利な増殖細胞は、293細胞、ヒト胚芽腎臓繊維芽細胞株に由来する細胞H29又はこれらから由来する細胞である。細胞H29は、2004年11月5日(DSM ACC 2702)にブタペスト条約の規定により、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(ブラウンシュヴァイク、Mascheroder Weg)のもとで寄託された。さらに、ベロ細胞(アフリカミドリザルの腎細胞株)、又はLLCMK2−細胞(アカゲザルの腎細胞株)に由来する細胞も適切であり、これらは相応の補助配列、例えばSeV N−遺伝子及びP遺伝子で安定にトランスフェクトされる。
【0040】
従って、本発明のもう1つの対象は、
(i)本発明による組換えウイルスのゲノム又は/及びその相補配列又はその前駆体をコードするDNA分子
又は/及び
(ii)本発明によるウイルスのRNA−ゲノム
を有する真核細胞、特に有利には哺乳類細胞である。この細胞は、先に説明したようなベクター増殖細胞、ウイルス産生細胞又はウイルス増殖細胞であってよい。
【0041】
細胞がベクター増殖細胞、例えば、プラスミド増殖細胞である場合には、相応のベクターの増殖に適切な細胞を任意に使用できる。例えば、形質転換したE. Coli細胞のような原核細胞も使用できる。
【0042】
細胞がウイルス産生細胞又は増殖細胞である場合には、これはトランスの形でウイルスタンパク質N、P又は/及びLを製造するための補助配列を有する。ウイルス産生細胞中に挿入されるDNAは、有利には異種の転写シグナルをコントロールしながら存在し、その際、この細胞は有利な方法で異種DNA依存性RNA−ポリメラーゼをコードするDNAをさらに有し、異種の転写シグナルを認識し、かつ組換えマイナス鎖RNA−ウイルスをコードするDNAの転写を引き起こす。
【0043】
細胞がウイルス増殖細胞である場合には、これはゲノムウイルスRNA−分子と、例えば、ヌクレオカプシドの形で感染し、かつ補助配列を安定に発現可能な形で有する。
【0044】
本発明の更なる対象は、次の工程:
(a)遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに、転写能力を欠損することなく、ゲノム複製能力の欠損を生じる突然変異、及び場合により少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列を含んでいる、マイナス鎖RNA−ウイルスのゲノムをコードするDNA分子でトランスフェクトしたウイルス産生細胞を準備し、かつ
(b)(a)によりDNA分子の転写が行われる条件下に宿主細胞を培養し、かつ組換えマイナス鎖RNAウイルスが初めに形成される
を含む本発明による組換えマイナス鎖RNA−ウイルスの製法である。
【0045】
宿主細胞は、例えば、タンパク質N、P又は/及びLをコードする配列を有する相応のヘルパープラスミドとのトランスフェクションにより、有利にはトランスの形でN−タンパク質、P−タンパク質及び/又はL−タンパク質を提供できる。
【0046】
大量のヌクレオプラスミドもしくはウイルス粒子を製造するために、マイナス鎖RNAウイルスのタンパク質N、L又は/及びP、有利には少なくともタンパク質Pが構成的又は誘発的に安定に発現する細胞が有利に使用される。従って、本発明は、次の工程:
(a)遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに、転写能力を欠損することなく、ゲノム複製能力の欠損を生じる突然変異、及び場合により少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列を含んでいる、マイナス鎖RNAウイルスのゲノムに感染させたウイルス増殖細胞を準備し、かつ
(b)前記ウイルスの増殖が行われる条件下に宿主細胞を培養する
を含む本発明による組換えマイナス鎖RNAウイルスを増殖する方法にも関する。
【0047】
本発明のもう1つの対象は、先に挙げたような複製欠損性でかつ転写可能な組換えマイナス鎖RNAウイルス、又はそのヌクレオカプシドを作用物質として、ならびに場合により製剤的に通常の担体又は/及び助剤として含有している医薬組成物である。医薬組成物は、人類医学及び獣医学で使用するために適切である。これらは特にワクチンとして、又は抗腫瘍治療用に使用でき、特に子供、老人又は/及び損傷もしくは衰弱した免疫系を有する人のようにリスクのある患者で使用するためのワクチンとして使用できる。この場合に医薬組成物は、マイナス鎖RNAウイルスをその元のウイルスエンベロープ中に含有できる。
【0048】
ワクチンとしての使用、例えば、ウイルス、バクテリア又は原生動物のような病原菌に対するワクチンとしての使用が特に有利である。組換えウイルスが同じ起源の1つの導入遺伝子もしくは複数の導入遺伝子、例えば、たった1つの病原菌からのものである場合には、これは単価ワクチンである。組換えウイルスが異なる起源の導入遺伝子を有する場合には、これは多価ワクチンとして、例えば、二価もしくは三価ワクチンとして使用できる。例えば、多価ワクチンは、複数の病原菌ウイルスに対して、例えば、ヒトパラインフルエンザウイルス及びRSVのような複数の病原菌マイナス鎖RNAウイルスに対して産生できる。
【0049】
本発明によるワクチンは、体液性免疫応答、有利には中和抗体の形成又は/及びT細胞−免疫応答を引き起こすことができる。体液性免疫応答とT細胞免疫応答を引き起こすのが特に有利である。
【0050】
医薬組成物は、溶液、懸濁液、親液性物質の形で、又は各々他の適切な形で存在できる。作用物質の他に、該組成物はpH値、緩衝液を調節する試剤、張度、湿潤剤及びそのようなものを調節する試剤ならびに補助剤を含有できる。投薬は、通常の方法、例えば、経口、局所、鼻、肺などに、エーロゾル、液体、粉末などの形で行うことができる。この場合に、ウイルスの治療有効量が患者に投薬され、その際、これらの用量は、その時々の用途(例えば、ウイルス治療又はワクチン)、疾患の種類、健康状態及び患者の体重、投薬の種類及び調製物などによる。通常、1投与あたり103〜107個のウイルス粒子、特に有利には約104〜106個のウイルス粒子が投薬される。場合により、例えば、混合ワクチンの場合には複数の種々のウイルス粒子を一緒に投薬できる。投薬は、必要に応じて1回又は数回行うことができる。
【0051】
有利な利用分野は、例えば呼吸器ウイルス疾患の予防もしくは治療である。
【0052】
さらに本発明を以下の図と実施例により説明する。
【実施例】
【0053】
1.概要
図1は、フィールドによるセンダイウイルス(SeV)の形態を示している(Virology. Lippincott, Williams und Wilkins(2001), 第4版;改訂)。このゲノムは、タンパク質N、P及びLとヌクレオカプシドの形で存在する一本鎖RNAから成る。ヌクレオカプシドは、タンパク質HNとF(それぞれF1−とF2−サブユニットから成っている)が挿入した膜エンベロープにより包囲されている。膜の内側はタンパク質Mと会合していて、これは同時にヌクレオカプシド成分と結合した形でも存在する。
【0054】
センダイウイルス−野生型のマイナスに配向した一本鎖RNAゲノムは、15384ヌクレオチドから成る。その上に6個の構造タンパク質の遺伝子が3’−N−P/C−M−F−HN−L−5’ の順番で存在する(図2)。遺伝子の間には、それぞれ22ヌクレオチドの強い保存領域を有する50〜80ヌクレオチドから成る連結部がある:先行遺伝子の終止シグナル、遺伝子間配列及び後続遺伝子の開始シグナル。開始シグナル、オープンリーディングフレーム(ORF)、場合により非翻訳領域及び終止シグナルから成る1つの単位は、転写カセットと称される。N−遺伝子の前には、転写されるが翻訳されない長いリーダー配列(ld)55ヌクレオチドがある。L−遺伝子の後ろには、54ヌクレオチドの長いトレーラー配列(tr)がある。このld領域とtr領域は、ゲノムもしくはアンチゲノムを複製するためのゲノム及びアンチゲノムプロモーターとして働く。転写により形成されるmRNA分子は、P/C−RNAを除いて単シストロン性である。
【0055】
センダイウイルスの増殖サイクルには、宿主細胞中への進入、転写と翻訳ならびに複製及びウイルス成熟に引き続く新たに産生されるウイルスの輸送が含まれる。転写のプロセスに特にタンパク質N、P及びLが関わり、その際、Lは全ての触媒活性を有するウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼである。センダイウイルスのゲノムはマイナス鎖に配向して存在するので、ウイルスRNAはタンパク質に直接翻訳できない。まず、ヌクレオカプシドと結合して細胞中に送られるRNAポリメラーゼによりmRNAsへの一次転写が行われる。
【0056】
図3は、センダイウイルスの転写様式の図解を示している。この場合にLタンパク質とPタンパク質のホモテトラマーから成るポリメラーゼ複合体は、Nタンパク質で包まれたRNA上を5’末端の方向に沿って移動する。その際に、遺伝子情報がゲノムマイナス鎖RNA上で読み取られ、かつプラス鎖mRNAに転写される。
【0057】
ゲノムの複製には、マイナスの極性を有する新たなウイルスゲノムの製造が含まれる。このために、まずアンチゲノムが形成され、これが次にゲノムを形成するための鋳型として利用される。ゲノムの3’末端(ld)で転写が開始するので、複製様式において転写様式のシフトが必要である。このシフトは、細胞中の遊離N−タンパク質の量により決定される。mRNA分子の翻訳後に十分なN−タンパク質が形成されると、ようやく複製を行うことができる。その全長にわたりN−タンパク質と複合化しているアンチゲノムが提供された後に、これを更なるゲノムを製造するための鋳型として利用できる。これらは、同様にN−タンパク質で直接に包まれる。複製のプロセスには、またしてもタンパク質N、P及びLが重要である(図4)。
【0058】
ウイルス複製の間に、mRNA分子の数を増大することにより、ウイルスタンパク質を増大して合成できる。従って、ウイルスRNAとウイルスタンパク質(ヌクレオカプシド)から成る複合体は、分泌小胞の形で細胞質膜に輸送され、そこでウイルス性表面タンパク質での被覆とウイルス粒子の出芽を生じる。
【0059】
本発明の範囲内では、転写と複製の機能が切り離された組換えウイルス突然変異体を提供する。すなわち、該ウイルスは転写可能であるが複製欠損性である。欠損したゲノム複製機能は、ウイルス粒子もしくはそれらのヌクレオカプシドを製造するために、欠損又は機能欠陥したウイルスタンパク質をトランスの形で補足するヘルパー細胞により補わなくてはならない。このような有利なヘルパー細胞は、細胞株H29である(Willenbrink and Neubert, J. Virol. 68(1994), 8413-8417)。この細胞株は、本出願の範囲内で、ブタペスト条約の規定によりDSM ACC2702の登録番号で2004年11月5日に寄託してある。複製欠損した、しかし転写可能なウイルスを製造するために、P−タンパク質をコードする遺伝子は完全に除去されるのではなく、単にゲノム複製に必須のドメインだけが除去される。以前の論文(Curran, Virology 221(1996), 130-140; Curran 等、 J. Virol. 69(1995), 849-855)からは、in vitro系ではタンパク質Pのアミノ酸2〜77の欠失の際に、ゲノム複製が阻害されるのに対して、ウイルス転写は活性のままであることが公知であった。
【0060】
図5は、N−末端とC−末端のドメイン(PNT、PCT)、四量化ドメイン(アミノ酸320〜446)、P:L−ドメイン(アミノ酸441〜445)及びP:RNP−結合ドメイン(アミノ酸479−568)を有するP−タンパク質の図解を示している。ウイルスゲノム複製機能を遮断すると同時にウイルスmRNA合成能力を維持するために、タンパク質Pの初めの77個のアミノ酸の欠失が選択された。この場合に、P-ORFの5’−末端領域が欠失した相応のセンダイウイルス突然変異体(SeV-PΔ2-77)が最初に作成された。これらのウイルスにより、N末端だけが短くなったP−タンパク質だけをコードできた。感染試験により細胞培養中のウイルス突然変異体は増殖能力がないことが示された。とりわけ必要な野生型P−タンパク質を提供するヘルパー細胞株H29(DSM ACC2702)を用いてウイルス突然変異体の増殖を達成できた。ウイルス増殖の効率は、野生型のセンダイウイルスと比べて約45%であった。
【0061】
感染後に本発明によるウイルス突然変異体は、感染細胞中でウイルスコード導入遺伝子を発現できる。ウイルス突然変異体から提供される短くなったタンパク質Pは、二次的ウイルスmRNA合成を十分に促進した。ウイルスコードタンパク質の合成は、感染細胞中で数日にわたり伸び、かつウイルス野生型に対して約10倍だけ減少したので、ワクチンとして突然変異体を使用することにより十分な免疫応答を確実に期待できる。
【0062】
2.複製欠損性センダイウイルスベクター(SeVV)のベース構築物の製造
2.1 cDNA−構築物pSeV-Xの製造
コード転写カセットをSeV、フシミ菌種(ATCC VR105)の3’−領域に挿入した。ゲノムの全ての操作の際には、組換えSeVゲノムのヌクレオチドの総数が必ず6で割り切れる("rule of six")ように注意を払わなくてはならない。
【0063】
鋳型として使用されるcDNA pSeVから出発して、2つのPCR断片であるPCR XIとPCR X IIをpSEV-X の製造用に準備した(図6)。
【0064】
PCR XI(370 bp)は、T7−プロモーター(T7-Prom.)の配列、リーダー(ld)配列、5’−NTRを有するN−転写開始からN−ORF(オープンリーディングフレーム)の開始コドンの前までから成る。リバース−プライマーXI(+)により(表3)、特異的NotI−制限切断部位とN−転写終止配列の24ヌクレオチドが付加される。変異誘発プライマーXI(+)により挿入されたPCR XIのN−転写終止配列の24ヌクレオチドは、それに続く融合工程においてPCR X IIと重複した領域として寄与する。
【0065】
PCR X II(970bp)は、N−転写開始とN−ORFの初め三分の一の配列から成る。フォワード−プライマーX IIにより、3’−NTR Nの配列とNの転写終止配列は、遺伝子間領域(IR)のように付加される。リバース−プライマー XII(+)は、SeVゲノム中の特異的Sphl切断部位のすぐ後ろで、N−ORFの初めの三分の一に結合する。PCR X Iアプリコンは、3’−領域でPCR X IIの5’−領域に相補的であった。この重複領域により、両方のPCR−断片X IとX IIを融合できた。PCRを行った後に、融合産物(1310 bp)は、酵素MluIとSphIでの制限的切断により、同じくMluIとSphIで処理したベクターpSeVに挿入した。得られたクローンから、プラスミドプレパレーションによりプラスミドDNAが単離され、制限分析とシーケンシングにより、転写カセットの正確な挿入が調査された。従って、cDNA構築物pSeV-Xが増殖した。
【0066】
組換えウイルスの作製を容易に実践できるようにするために、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)の遺伝子をpSeV-Xの空のカセットに挿入した。PCRによりeGFP−ORFを発現プラスミドpEGP−N1(Colontech社)から増幅し、その際、変異誘発プライマーにより、"rule of six"の維持と2個の両側に並ぶNotI切断部位の付加が達成された。得られた771 bpの大きなPCR−断片を制限酵素NotIで切断し、かつゲル化により738 bpの大きな断片を単離し、これをpSEV−XのNotI断片部位によりその"空の"転写カセットpSeV−Xに挿入した。E.coliの形質転換、プラスミドプレパレーション、それに続くPCRによって挿入されたeGFP−読取り枠のシーケンシングの後に、cDNA構築物pSeV-eGFPを準備できた。
【0067】
2.2 cDNA構築物pSeV−X−Xの製造
構築物pSeV−X−Xにより、2つの導入遺伝子を挿入できる2つの更なる転写カセットを準備することにした。複製欠損ベクターを製造するためのベースベクターとしてpSeV−X−Xを使用し、ベクターに多価、例えば、2価の特性を備えることができた。
【0068】
pSeV−Xを鋳型として使用してpSeV−X−XをPCR−反応により製造した(図7)。NotI−切断部位と組込むべき2つ目の転写カセットの3’−NTR領域内で、プライマーXX−フォワードをpSeV−Xとハイブリダイズした。特異的SgrAI−制限切断部位は、XX−フォワードプライマーを用いて、NotI−切断部位と3’−NTRの間に挿入した。これを導入遺伝子のORFを後で挿入するための特異的な制限切断部位として利用した。PCR−産物XX中では転写終止、遺伝子間領域(IR)、転写開始及び5’−NTRが続く。5’−NTRとハイブリダイズしたプライマーXX(+)により、特異的な制限切断部位FseIとNru Iを挿入した。FseI切断部位は、2番目の導入遺伝子のORFの挿入に利用した。特異的なNru I−切断部位は、必要な場合に三番目の転写カセットを組込めるように予定的にクローニングした。プライマーXX(+)を、3’−領域内でpSeV−XのNotI−切断部位の配列とハイブリダイズした。PCR−産物XX(220 bp)を制限酵素NotIで処理し、かつ144bpの断片をゲル抽出により単離した。"rule of six"を維持しながら構想されたこの断片は、同じくNotIで処理したプラスミドpSeV−Xに挿入できた。NotI PCR断片XXの正確な配向と、配列の検証が検査された後、プラスミドpSeV−X−Xが提供された。特異的な切断部位SrgAlとFseI中では、任意の導入遺伝子が挿入できる。
【0069】
この研究を調査するに当たり、pSeV−X−Xの両方の転写カセット(X)に2個の異なる蛍光タンパク質の読取り枠が付加された。一方の蛍光タンパク質eGFPの読取り枠は、PCR−反応により発現プラスミドpEGFP−N1から"rule of six"を維持しながら増幅し、その際、変異誘発プライマーを用いて、2個の両側に並ぶSgrAI−切断部位を挿入した。SgrAIでの制限的切断とゲル溶出の後に、約738bpの大きな断片が、pSeV−X−Xの1つ目の転写カセット中に挿入された(pSeV−eGFP−X)。
【0070】
同様に、もう一方の蛍光タンパク質DsRed(プラスミド"pDsRed"由来、Colontech社)のORFは、"rule of six"を維持しながらPCR反応によりFselの制限切断部位を付与し、DNAを切断し、ゲル溶出し、かつ引き続きこの断片(702 bp)をpSeV−eGFP−Xの3’−領域内の2番目の転写カセットに組込みクローニングした。これはゲノムSeV cDNA構築物pSeV−eGFP−DsRedを生じた。
【0071】
3.複製欠損センダイウイルス−ベクター(SeVV)の製造
それぞれタンパク質N、P及びLの遺伝子が欠失した複製欠損センダイウイルスをコードするcDNA構築物pSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLを製造した。このために、rule of sixを維持しながら、それぞれ遺伝子N、P又はLの読取り枠を欠失しなくてはならず、その際、非コード転写カセットは適切な位置で保持されたままでなくてはならなかった(図8A)。
【0072】
欠失したORFの代わりに制限切断部位の挿入により、各cDNA構築物pSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔL中に後で使用するために、もう1つの機能的転写カセットを提供することにした。必要な場合には、この中にもう1つの導入遺伝子を挿入できる。
【0073】
複製欠損SeVVの更なる変異体として、N−末端の短くなったPタンパク質をコードし、アミノ酸2〜77が欠損している欠失突然変異体pSeVV−eGFP−PΔ2−77を製造した(図8B)。
【0074】
pSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLのクローニングは全て同じ原則に従って実施した。pSeVV−eGFP−ΔPのクローニングは、実例を挙げて以下のパラグラフで詳細に説明することにする。これに関連して、pSeVV−eGFP−ΔNと−ΔLのクローニングにおける違いだけを表にまとめた。
【0075】
3.1 cDNA構築物pSeVV−eGFP−ΔPとpSeVV−eGFP−PΔ2-77のクローニング
P−タンパク質のORFを、複製可能なウイルスpSeV−eGFPのcDNA構築物から取り除き、複製欠損ベクターをコードする新たなcDNA pSeVV−eGFP−ΔPを製造した。P−ORFの代わりに、XhoI−制限切断部位を組込んだ。
【0076】
pSeVV−eGFP−ΔPのクローニングに関して、PCR ΔP IとPCR ΔP IIという名称の2個のPCR−断片を製造し、引き続き融合した。両方のPCR−反応のための鋳型としてpSeV−eGFPを使用した。断片PCRΔP I(1272 bp)では、フォワード−プライマーΔP I(=N−578;表3)により、特異的SphI−部位の前のN ORFの領域内で、鋳型とのハイブリダイゼーションが達成された。リバース−プライマーΔP I(+)は、P遺伝子の5’−NTR領域内でPのATG−コードの前まで鋳型とハイブリダイズされ、かつそこで制限切断部位XhoIが挿入された。
【0077】
断片PCRΔP IIは1938 bpから成り、ここでも鋳型としてpSeVを使用した。フォワード−プライマーΔP IIをP配列の5’−NTRの一部とハイブリダイズし、かつXhoI−切断部位につなげた。PCR ΔP II(+)のリバース−プライマーは、特異的Eco47 III部位の後ろのF遺伝子のORF内で結合し、さらに1つの人工的なMluI−部位を有した。
【0078】
2のPCR−断片ΔPIとΔP IIをXhoI−部位により組合せた。N ORFの部分配列、組込まれたXhoI−制限切断部位を有する非コードP−転写カセット、MならびにF ORFの四分の一から成る融合産物を制限酵素SphI及びMiuIで切断し、中間クローニングし、かつ配列が正しいことが証明された。正しい配列を有するサブクローンから、3006 bpの大きなSphI―Eco47III断片を切断し、これは同じ処理をしたベクターpSeV−eGFP中にライゲーションした。配列検査後に相応のpSeVV−eGFP−ΔPクローン(ゲノムウイルスcDNA)を複製欠損SeVV−eGFP−ΔPの製造用に準備した(図9)。
【0079】
欠失突然変異体pSeVV−eGFP−PΔ2−77をクローニングするために、2個の変異誘発プライマーを用いるPCRを使用した。フォワードプライマー"XhoI PΔ2−77"は、XhoI−部位を有し、ATG−開始コドンならびにPタンパク質のアミノ酸78〜86のコドンが続いていた。リバースプライマー"PΔ2−77(+)XhoI"は、Pタンパク質の最後の10コドンとXhoI−部位を有した。アミノ酸76個だけ短くなったPタンパク質のN末端の読取り枠は、鋳型pSeVから出発してrule of sixを維持しながらPCRにより製造した。2つのクローニング工程により、XhoIで切断された1488bpの大きな断片を元のP−ORFの位置でpSeVV−eGFP−ΔPの非コード転写カセット中に挿入した。配列検査後にゲノムcDNAクローンも複製欠損SeVV−eGFP−PΔ2−77の製造用に準備した(図9)。
【0080】
P ORF中のコドン2〜77の欠失は、非構造タンパク質の場合にV及びWタンパク質でもN−末端が短くなる結果となり、かつC−ファミリーまたC’だけ(同様に切断された)によりコードされたままであった;タンパク質C、Y1及びY2は、欠失した開始コドンゆえに、もはや短くなったmRNAから翻訳されることができなかった。
【0081】
3.2 cDNA構築物pSeVV−eGFP−ΔNと−ΔLのクローニング
pSeVV−eGFP−ΔNとpSeVV−eGFP−ΔLの製造は、pSeVV−eGFP−ΔPのクローニングと同じ方策により行った。クローニング法をまとめるために、表1に重要なパラメーターが全て記載されている。
【0082】
二組の融合可能なPCR−産物PCRIとPCR IIの製造により、rule of sixを考慮して、遺伝子N又はLのORFをpSeV−eGFPから取り出し、かつそれらの部位に特異的ApaI−制限切断部位をpSeVV−eGFP−ΔNとpSeVV−eGFP−ΔLの両方に挿入した。プライマーの配列をpSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLをクローニングするプライマーの配列は、使用されたDNA−オリゴヌクレオチドの一覧表にリストアップされている(表3)。製造されたPCR産物PCRIとPCR IIは融合し、かつPCRIのフォワード−プライマーとPCR IIのリバース−プライマーを用いて増幅した。引き続き、pSeV−gGFP中に特異的に存在し、かつpSeV−gGFP中で相応の融合産物の挿入を可能にする融合−PCR産物を制限酵素で切断した(例えば:NarI pSeVV−eGFP −ΔNのクローニング、表1参照)。精製した切断生成物のライゲーションにより、同様に相応の酵素で消化したベクターpSeV−gGFP中に挿入した。
【0083】
【表1】

【0084】
E.coli細胞をライゲーション調製物の一部で形質転換し、かつ得られたクローンのプラスミド−DNAをプラスミド−ミニプレパレーションにより単離した。制限分析による正確な配列の検査とシーケンシングの後、陽性クローンそれぞれからプラスミドプレパレーションが用意され(DNA Maxi Prep-kit, Qiagwn)、よって組換え欠失突然変異体を製造するための種々のpSeVV−gGFP−ΔXが準備された。
【0085】
4.複製欠損ウイルス突然変異体の製造
cDNA構築物pSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLから、複製欠損したSeV−ベクター(SeVV−eGFP−ΔX)を細胞培養で製造した。
【0086】
4.1 SeVV−eGFP−ΔXの初めの製造
完全ゲノムを有する組換えSeVを製造するために、
− T7 RNA−ポリメラーゼを安定に発現する細胞株"BSR-T7"(Buchholz等(1999) J. Virol. 73, 251-259)又は細胞培養を、T7 RNA−ポリメラーゼを発現する組換えワクチニアウイルスMVA-T7に感染させ(Sutter等(1995)FEBS 371, 9-12)、かつ
− ウイルスゲノム(pSeV)のcDANならびにプラスミド−コード遺伝子N、P及びLでトランスフェクトした(pTM-N、-P、-L;Elroy-Stein等(1989) PNAS 86, 6126-6130)。T7−ポリメラーゼはウイルスアンチゲノム又は/及び相補配列ならびに遺伝子N、P及びLを転写した。pTM−Nにより発現したN−タンパク質は、合成ウイルスアンチゲノム又は/及び相補性RNAを包み、かつこれらのヌクレオカプシドコア(RNP)はタンパク質PとLと一緒に複製複合体を形成し、これにより再びゲノムRNAが製造され、かつヌクレオカプシドに包まれることができる(Leyrer 等、 J. Virol. Meth. 75(1998), 47-55)。これに引き続き、全てのウイルスコードタンパク質の転写と更なるウイルスゲノムの複製が行われた(図10)。
【0087】
完全ゲノムを有する組換えSeV wtの上記製造とは異なり、pSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLのプラスミドコードcDNA中では各遺伝子N、P又はLのうち1つの遺伝子情報が欠損していた。その結果、初めに製造されたヌクレオカプシドは、遺伝子N、P又はLの2個だけが発現できていた。従って、SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLを増殖するために、欠失したタンパク質の必要量は、専らプラスミドコード遺伝子N、P又はLのT7−プロモーター制御発現を上回って準備されなくてはならない。
【0088】
複製欠損SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLの製造を、複製可能なSeV変異体の製造と同様にHeLa−細胞(ATCC CCL2)又はBSR−T7−細胞中で行った。HeLa−細胞を48時間インキュベートした後に、SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLのウイルス粒子が培養上澄み中に放出されたかどうか、かつどれくらい初めに欠失突然変異体が生じたのかを試験した。
【0089】
4.2 初めに製造されたSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLの検出
初めにSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLを製造しておいたHeLa細胞又はBSR−T7細胞の上澄みを、ウイルスベクターの存在で調べた。組換えSeVwtとは異なり、SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP又は−ΔLは、3’−領域内でeGFPのレポーター遺伝子に挿入されていた。今度はこの検出マーカーを使用して、どれくらいのSeVV−eGFP−ΔXが形成されていたのかを分析した。
【0090】
平行調製物中で5×105個のベロ細胞(ATCC CCL18)を、各1mlのSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLを初めに製造した際にトランスフェクトしたHeLa細胞の細胞培養の上澄みと同時に、SeV wt(MOI=3)で同時感染させ、欠失したタンパク質をトランス相補化した。コントロールとして、ベロ細胞を、各1mlの初めに製造したSeV−eGFPだけで、又は初めに製造したSeV−eGFPと同時にSeV wt(MOI=3)に感染させた。
【0091】
SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP又は−ΔL製造の培養上澄みと、SeV wtでの細胞の同時感染の結果は、3種の全てのウイルス突然変異体SeVV−eGFP−ΔXが初めに製造可能であり、かつ初めの製造の後でも細胞を感染させることができることを示した。このことは、検出可能なeGFP−導入遺伝子発現により検出できた。初めに約13×102個のSeV−eGFP、6.7×102個のSeVV−eGFP−ΔN、3.2×102個のSeVV−eGFP−ΔP及び0.55×102個のSeVV−eGFP−ΔLウイルス突然変異体を製造することができた。
【0092】
5.SeVV−eGFP−ΔXの増殖
ベクターSeVV−eGFP−ΔXが増殖可能であるか、すなわち生物学的に機能的であるかどうかを試験した。複製能力は、まず欠損した遺伝子N、P又はLのタンパク質を準備するか、又はSeVでのウイルストランス相補化により調べた。
【0093】
5.1 SeVV−eGFP−ΔXの増殖性の検出
まず、突然変異体がSeV wtウイルスによる相応のトランス相補化の際に増殖でき、かつその際に周辺の細胞を感染させたことを検出しなくてはならなかった。またしてもSeVV−eGFP−ΔXの増殖性の試験は、SeVV−eGFP−ΔXとSeV wtでの細胞の同時感染に適当であった。前記細胞を同じ試験において低いMOIのSeV wtに感染させ、SeVV−eGFP−ΔXに同時感染させ、かつ数日にわたりインキュベートし、SeVV−eGFP−ΔXが拡がるほど増大する蛍光細胞の数によりベクターが検出できた。
【0094】
5×105個のベロ細胞を初めに製造した平均100個のSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP又は−ΔLとSeV wt(MOI=0.2)に同時に感染させた。陽性コントロールとして、複製可能なウイルスSeV−eGFPとSeV wtの約100個の粒子でのベロ細胞の同時感染を利用した。48時間のインキュベーションフェーズの間に、3種全ての欠失突然変異体の増殖が観察できた:まずSeVV−eGFP−ΔXとSeV wtに同時感染させておいた若干のベロ細胞だけが蛍光を発した。約24時間後に、これらの細胞から隣接する細胞に浸透できる新たな合成ウイルス粒子が放出された。再びこれらの細胞をSeVV−eGFP−ΔXとSeV wtで同時に感染させた場合には、同様にこのような細胞中で検出可能な蛍光現象を生じた。wtに同時感染させた細胞中でのSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLの増殖は、"テイル形成"蛍光細胞(p.i. 48時間)により、さらに検出された。
【0095】
この試験により、SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLが生じるゲノムcDNA構築物が全ての領域で機能的であることが証明された。さらに、ウイルス突然変異体の増殖は、欠失したウイルスタンパク質を添加する場合に可能になることを示すことができた。専ら、wtウイルスにより準備されたタンパク質(例えばP)は、欠失突然変異体とwtの両方を増殖するために十分である。すなわち、場合によっては最適以下の量のPタンパク質でも、SeV wtとSeVV−eGFP−ΔPの機能的ヌクレオカプシドの形成をもたらす。トランス相補化の相手SeV wtによる欠失したタンパク質の準備により、培養調製物中で増大する蛍光細胞が測定でき、全てのSeVV−eGFP−ΔXの明らかな増殖を達成することができた。
【0096】
5.2 SeVV−eGFP−ΔXを増殖するために必要なタンパク質の測定
次に、SeVV−eGFP−ΔN、−ΔP及び−ΔLを個々に増殖する際に、どのタンパク質をヘルパー細胞により増殖させておくべきか、SeVタンパク質N、P及びLとは相互に独立に合成できたのかを試験した。SeVタンパク質N、P及びLを独立に合成するために、SeVタンパク質N、P及びLを組換え発現した3種の組換えワクチンウイルス(VV)であるVV−N、VV−P、VV−Lを準備した(Greaf, H. (1994) Funktionelle Charakterisierung des rekombinanten Sendai-Virus Large(L) Proteins. Dissertation, Eberhard-Karls-Universitaet Tuebingen)。
【0097】
1×106個のベロ細胞を同時にSeVV−eGFP−ΔX又はSeV−eGFP(MOI=0.01)及びVVと同時感染させた。この場合に、VV−N、VV−P及びVV−Lは、単独で又は組合せて使用した(MOI=0.5)。1時間の吸着時間の後に、DMEM+10%無菌子牛血清(FCS)+シトシンアラビノシド(AraC)(100μg/ml)含有の培地交換を行い、かつ細胞を33℃で72時間インキュベートした。その際、この培地を毎日洗浄して新たなAraCを添加した。
【0098】
SeVV−eGFP−ΔXの伝播は、eGFP発現により72時間後に分析した。この時間で、陽性調製物中で初めの細胞から10〜30個の隣接する緑蛍光細胞の増殖が観察された。
【0099】
どのSeVタンパク質がベロ細胞中でSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP又は−ΔLを増殖するために必要であるかの試験結果は表2にまとめられている。VV−NによるSeV Nの唯一の発現は、SeVV−eGFP−ΔNの増殖を生じなかった。SeVV−eGFP−ΔNは、SeVタンパク質NとPが組換えワクチンウイルスVV−N及びVV−Pを用いて感染細胞中で同時に発現した場合にだけ増殖した。SeVV−eGFP−ΔPはVV−Pを用いるSeV Pタンパク質の発現によってのみ増殖できる。SeVV−eGFP−ΔLを増殖するためには、VVによるタンパク質PとLの同時合成が必要である。SeVV−eGFP−ΔLならびにVV−L感染ベロ細胞では、SeVV−eGFP−ΔLの増殖は何も行われなかった。
【0100】
【表2】

【0101】
SeVV−eGFP−ΔNを増殖するために、ヘルパー細胞はSeVタンパク質NとPを同時に発現させなくてはならない。SeVV−eGFP−ΔPを増殖するために、ヘルパー細胞中でのSeV Pタンパク質の発現は十分であり、かつSeVV−eGFP−ΔLの増幅は、SeVタンパク質PとLの細胞発現により可能である。
【0102】
5.3 H29ヘルパー細胞によるSeVV−eGFP−ΔXの増幅のサポート
H29細胞株を用いてSeVV−eGFP−ΔXを増殖する試験に関して、1×106個のH29細胞を4つの異なる調製物中で、初めにHeLa細胞中で製造したSeVV−eGFP−ΔN、−ΔP又は−ΔLウイルス粒子それぞれ約100個に感染させるか、もしくは成功した増殖のコントロールとして、複製可能なSeVをH29細胞中でSeV−eGFPウイルス粒子約100個に感染させた。p.i. 1〜10日の期間で、初めに感染したH29細胞から出発して、蛍光細胞のテイルのような伝播(スポット形成)を検出することにより、SeVV−eGFP−ΔXの増殖に関する試験を行った。
【0103】
コントロール調製物中では、特異的蛍光細胞(p.i.1日目)から出発して、50個までの蛍光細胞(p.i.3日目)を有するスポットのSeV−eGFPの増殖が観察できた。これにより、選択された試験構成によりSeVの増大を生じたことが証明された。
【0104】
SeVV−eGFP−ΔNに感染させたH29細胞中も同様にウイルス増殖を生じた。H29(ヒト293−腎細胞の誘導体)の他に、ベロ細胞の誘導体(アフリカミドリザルの腎細胞)とLLCMK2−細胞の誘導体(アカゲザルの腎細胞)もSeV P遺伝子とN遺伝子で安定にトランスフェクトして、ウイルス増殖に適切であった。
【0105】
SeVV−eGFP−ΔPを有する調製物中では、p.i.1日目に初めに感染した単細胞100個を検出できた。p.i.3日目では、蛍光単細胞の約70%がスポットに成長し、30個の蛍光細胞まで成長した。これにより、SeVV−eGFP−ΔPの分布が周辺のH29細胞において明らかに観察できた。従って、そのP−ORFが欠失したウイルスSeVベクターが増殖することが初めて可能である。SeVV−eGFP−ΔPの増殖のキャラクタリゼーションについては、以下の項目で検討する。
【0106】
5.4 H29細胞におけるSeVV−eGFP−ΔPの増殖
SeVV−eGFP−ΔPは、H29ヘルパー細胞から産生されたSeV Pタンパク質により増幅できた。遊離したP−欠失突然変異体は、周辺のH29細胞を感染できた。次にSeVV−eGFP−ΔPの伝播を複製可能なSeVV−eGFPの伝播と比較して分析した。
【0107】
このために、1×106個のH29細胞を、平均して100個のSeVV−eGFP−ΔP又はSeV−eGFPに感染させた。p.i.3日、5日及び10日目に、蛍光顕微鏡を用いて緑蛍光細胞の検出を行った。
【0108】
SeVV−eGFP−ΔPの増殖は、SeV Pタンパク質を細胞状に効果的に提供することにより実施できた。全ての試験の時点で、SeVV−eGFP−ΔPとSeV−eGFPがH29細胞において首尾良く増殖したことが認識できた。
【0109】
これに対して、欠失したPタンパク質を提供しない細胞("標的細胞"例えば、ベロ細胞)におけるSeVV−eGFP−ΔPの伝播は観察できなかった。このことはSeVV−eGFP−ΔPの複製欠損を証明した(項目8参照)。
【0110】
5.5 感染した標的細胞中でのSeVV−eGFP−ΔPの遺伝子発現
Pタンパク質をトランスの形で提供しない細胞タイプにおけるSeVV−eGFP−ΔPの増殖が起こらないことを証明できた。同時に、発現能力は期待するに及ばなかった。
【0111】
狂犬病ウイルスΔP突然変異体(Shoji等(2004)Virology 318, 295-305)の場合と同様に、統計学上MOI=1の場合に細胞の約70%が各ウイルス粒子に感染したにもかかわらず、僅かな感染細胞だけが弱いeGFP蛍光を示した(5%未満;図11参照)。高いMOI=5の場合にも、SeVV−eGFP−ΔPにより散発的に緑色に光るベロ細胞が観察された(図12、左上参照)。
【0112】
細胞をP遺伝子欠失ウイルスに感染させた後に、ウイルス粒子から持ち込まれるポリメラーゼ複合体により一次転写だけが可能であるという仮定が正しいことを確認した。これに対して、SeVΔP突然変異体の場合には、幾つかの転写可能なヌクレオカプシドが1つの細胞中に同時に存在する場合には、外見上僅かなパーセントの感染粒子が遺伝子発現することが観察できただけであった。
【0113】
この複製欠損SeVVの治療的使用に関しては、発現能力が弱すぎるか、もしくは極端に多くのSeVV ΔPの粒子を患者ごとに適用しなければならないようである。従って、二次転写も果たす複製欠失SeV変異体を使用することが望ましい。これは、ウイルスゲノムを複製できないが、しかし治療遺伝子もしくは抗原の増大発現を可能にする更なる変性ポリメラーゼ複合体の開発につながる。
【0114】
6.変性SeVV−eGFP−ΔPcDNA構築物の製造
標的細胞中でP遺伝子欠失SeVVの転写能力を場合によっては改善するために、元のP−読取り枠の位置で、N末端がアミノ酸76個だけ短くなった形のPタンパク質をコードする、もう1つの組換え構築物を製造した("pSeVV−eGFP−PΔ2-77";項目3.1と図8B参照)。
【0115】
SeVV−eGFP−PΔ2-77粒子の産生とそれらの増殖は、項目4.1及び5.4と同様に行った。
【0116】
6.1 H29ヘルパー細胞中でのSeVV−eGFP−PΔ2-77の成長挙動
SeVV−eGFP−PΔ2-77に感染したH29ヘルパー細胞中では、N末端がアミノ酸76個たけ短くなったウイルスコードPΔ2-77タンパク質を細胞性コードPタンパク質と一緒に合成した。
【0117】
ウイルス複製に対する短くなったPタンパク質PΔ2-77の発現の影響を調べるために、SeVV−eGFP−ΔPの成長速度で記載した方法と同様に、SeVV−eGFP−PΔ2-77、SeV−eGFP−ΔP又はコントロールウイルスSeV−eGFPでH29細胞の感染(MOI=3)を実施した。個々の調製物の上澄みを120時間にわたり、後代ウイルス滴定量の細胞感染価試験により、eGFP発現細胞の数について測定した。
【0118】
SeV−eGFP感染H29細胞(陽性コントロール)から、120時間の期間内に平均して80個のウイルス粒子が遊離されたが、その際にH29細胞によるPタンパク質のトランス相補化は、この場合には必要ではなかった。SeVV−eGFP−PΔ2-77は、SeV−eGFP−ΔPのようにほぼ同じ効率でH29トランス相補化系において増殖できた:感染したH29細胞から120時間後に約20×106個のウイルス粒子がSeVV−eGFP−ΔP又はSeVV−eGFP−PΔ2-77から遊離され、これはH29細胞1つ当たり、P突然変異体の遊離ウイルス粒子約40個の数に相当した。
【0119】
7.SeVV−eGFP−ΔPとSeVV−eGFP−PΔ2-77の遺伝子発現の比較ならびに感染した標的細胞中でのタンパク質合成の定量化
感染した標的細胞中でベクターSeVV−eGFP−PΔ2-77がSeVV−eGFP−ΔPと比べて強い導入遺伝子発現を示すかどうかを調べるために、レポーター遺伝子eGFPならびにHNタンパク質のウイルスコード発現を詳細にキャラクタリゼーションした。
【0120】
5×105個のベロ細胞をSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染させ(MOI=1)、その際、p.i.2日目に、約70%蛍光ベロ細胞が観察できた(記載なし)。このことは、これらのウイルスベクター変異体の殆どのRNP−複合体が標的細胞中で測定可能な転写を誘発できることを意味する。
【0121】
7.1 FACS−分析によるeGFP発現の定量化
レポーター遺伝子eGFPがSeVV−eGFP−PΔ2-77中に挿入された転写カセットは、後で医学分野で使用する際に病原体、例えば、所望のウイルスの抗原をコードするべきである。これらの抗原発現は、患者において保存的免疫応答を引き起こすために十分でなくてはならない。
【0122】
標的細胞を感染した各SeVV−eGFP−PΔ2-77ヌクレオカプシドが検出可能な導入遺伝子発現を行えることを証明するために、同じ数のH29とベロ細胞を同量のウイルス粒子に感染させ、かつFACS(蛍光活化細胞選別)分析によりFACS−フローサイトメターを使用しながら、eGFP発現H29細胞もしくはベロ細胞の数を比較した。全細胞数に対する感染細胞の蛍光シグナルをプロットすることにより、データをコンピューターヒストグラム法により評価した。
【0123】
2.5×105個のベロ細胞又はH29細胞をSeVV−eGFP−PΔ2-77又はP遺伝子欠失ウイルスSeVV−eGFP−ΔP(MOI=1)に感染させた。プローブのFACS分析は、感染の24時間後に行った。感染細胞をPBS中に取り、かつフローサイトメトリーにより蛍光細胞の数を計算した。結果は、蛍光ベロ細胞とH29細胞の割合[%]として図11に挙げられている。
【0124】
H29ヘルパー細胞をSeVV−eGFP−ΔPに感染させた24時間後に、eGFP−発現H29細胞の86%がFACS分析により検出できた。ここで、Pタンパク質の細胞性合成は、新たなP:L−複合体の形成、ひいては新たなmRNAの産生を促進した。このことは、感染細胞中でeGFP−タンパク質の合成を生じた。これに対してベロ細胞をSeVV−eGFP−ΔPに感染させた場合には、p.i.24時間目でも、それ以降の時点でも更なる試験調製物中でeGFP−タンパク質の発現は検出できなかった。SeVV−eGFP−ΔPヌクレオカプシドによりトランスフェクトしたP:L−複合体は、MOI=1で感染させた場合には感染したベロ細胞中で検出可能な発現を引き起こすことができなかった。
【0125】
これに対してSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染した24時間後に、FACS分析により80%弱のeGFP発現H29細胞及び同じく75%のeGFP発現ベロ細胞を同定できた。H29細胞の感染の際に、eGFPmRNAの転写をPタンパク質の細胞合成により、ひいては新たなP:L−複合体により促進できる。ベロ細胞をSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染させた際に、N末端が短くなったPタンパク質PΔ2-77の新たな合成により転写が強くなった。
【0126】
この結果から、転写能力のあるSeVV−eGFP−PΔ2-77の数により重要な確証が得られた:H29細胞とベロ細胞はMOI=1で感染した。理論的に生じる細胞の多重感染は、両方の調製物中で統計的に同様に殆ど可能性がなかった。p.i.24時間目では、80%弱のeGFP−発現H29細胞と、約75%のeGFP−発現ベロ細胞が同定された。これにより、Pヘルパー細胞中で導入遺伝子発現が可能な短いP変異体PΔ2-771を有する各RNP−複合体は、感染した標的細胞中でも同様に導入遺伝子発現をもたらすという推論を導き出すことができた。これに対してP ORFの完全欠失がある変異体SeVV−eGFP−ΔPは、この特性を満たさなかった。
【0127】
7.2 感染した標的細胞中で発現したHN−タンパク質の機能試験
血球吸着(HAD)試験を用いて、個々の感染細胞においてヒト赤血球の結合の効果及びウイルスHN−タンパク質の露出の効果を検出した(図12)。
【0128】
5×105個のベロ細胞を低いMOI=0.5でSeVV−eGFP−PΔ2-7に感染させた。これに対して、SeVV−eGFP−ΔPの場合に個々の蛍光細胞を総じて観察できるようにするために、10倍高いMOI=5でベロ細胞を感染させなくてはならなかった。吸着1時間後に、DMEM+10%FCS含有の培地交換を行った。引き続き、細胞を33℃で数日インキュベートした。両方のベクター変異体の導入遺伝子発現は、まずeGFP−蛍光により再び追跡した。p.i.5日目と9日目に、HAD−試験系列を実施し、ヒト赤血球の形成を手かがりにウイルスHNタンパク質の露出を分析した。
【0129】
MOI=5のSeVV−eGFP−ΔPの場合に、統計的にベロ細胞の99.3%が感染したにもかかわらず、顕微鏡で0.01%のeGFP−陽性細胞だけが観察できるに過ぎなかった(図12左上)。これに対して、SeVV−eGFP−PΔ2-77では、MOI=5の場合に緑色蛍光が期待通りに細胞の40%で見られた(図12左下)。
【0130】
SeVV−eGFP−ΔPに感染した2日後には、半分のeGFP−陽性細胞(感染した5×105 のうち25個)は、赤血球がその表面上に結合できた(図12上中央)。更なるインキュベーションと再度HAD試験の後には、感染細胞上で赤血球吸着は何も起こらなかった。2番目の複製欠損SeVV変異体SeVV−eGFP−PΔ2-77では、はるかに改善された結果が得られた:感染5日後に、感染細胞(MOI=0.5)の約40%は、赤血球がその表面に結合できた(図12下中央)。この場合に、個々の細胞では、10〜70個の複合赤血球の様々な結合活性が観察できた。従って、SeVV−eGFP−PΔ2-77に感染した細胞(p.i.5日目)はHNタンパク質が細胞表面上に露出でき、機能的HAD−試験は陽性として評価できることが示された。同時に、様々な量の結合赤血球を手がかりに、感染細胞中でHN−タンパク質の効果的発現を算出できた。
【0131】
感染細胞を33℃でさらにインキュベートし、その際、HN−タンパク質のノイラミニダーゼ活性が感染細胞に結合した赤血球の剥離を生じた。前記細胞を洗浄して剥離した赤血球を取り除き、かつさらに33℃で4日間インキュベートした。p.i.9日目に、さらにHAD−試験を実施した。今度は約30%のHAD−陽性ベロ細胞だけが検出された。この場合に結合した赤血球の数は、細胞1つ当たり赤血球5〜20個に減った。
【0132】
またp.i.9日目では、複製欠損変異体SeVV−eGFP−PΔ2-77により依然として十分な機能性HNが合成された。これに対して、P ORFの完全欠失がある変異体SeVV−eGFP−ΔPは、この特性を満たさなかった。
【0133】
7.3 ウェスタンブロット分析によるeGFP発現の定量化
細胞の全タンパク質の一連の希釈系列を用いてウェスタンブロット分析により、複製可能なSeV−eGFPと比較して、複製欠損SeV−ベクターのeGFP発現の半定量的評価を実施した。
【0134】
5×105個のベロ細胞をSeV−eGFP又はSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染させた(MOI=3)。p.i.24時間目に、細胞の溶解を行った;細胞抽出物を一連の希釈系列(1:2)で20μgから2.5μgの全体量までSDS−PAGE中で解かした。タンパク質をPVDF膜上にトランスフェクトし、かつ初めにウイルスコードeGFP−タンパク質(26kDa)をウェスタンブロット分析により検出した(図13)。
【0135】
蛍光タンパク質eGFPは、ウェスタンブロット分析を用いて、SeV−eGFP及びSeVV−eGFP−PΔ2-77感染ベロ細胞中の両方で検出できた。eGFPシグナルの強さの比較により、複製欠損SeVV−eGFP−PΔ2-77から算出した発現が複製可能なSeV−eGFPに比べて約16倍減少したと言うことができる。
【0136】
この場合に16倍の減少は僅かであり、かつ変性Pタンパク質であるにもかかわらず、SeVV−eGFP−PΔ2-77は極めて効果的な二次転写をもたらしたと言うことができる。
【0137】
7.4 ウェスタンブロット分析によるHN−発現の評価
SeV HN−タンパク質はeGFPタンパク質とは異なり膜貫通型の表面タンパク質であり、かつ重要な抗原決定因子である。SeVV−eGFP−PΔ2-77感染細胞中でHN−タンパク質の発現強さを相対的に定量化することにより、SeV HN−抗原の発現の強さについて証言が可能である。
【0138】
細胞の全タンパク質の一連の希釈系列を用いてウェスタンブロット分析により、複製可能なSeV−eGFPと比較して、複製欠損SeV−ベクターのHN発現の半定量的評価を実施した。ベロ細胞5×105個ごとに、2つの平行調製物中で、SeV−eGFP又はSeVV−eGFP−PΔ2-77(MOI=1)に感染させ、かつ24時間もしくは48時間インキュベートした。この後に、細胞の溶解を行った;細胞抽出物を一連の希釈系列(1:2)で16μgから2μgの全体量までSDS−PAGE中で溶かした。タンパク質をPVDF膜上にトランスフェクトし、かつウイルスコードHN−タンパク質(60kDa)を単クローンHN抗体を用いて検出した(図14)。
【0139】
HNタンパク質は、SeV−eGFP感染ベロ細胞の場合に両方のインキュベーション時間の後に全てのレーン中(16〜2μg全タンパク質;左右のレーン2〜5番目)で効果的に検出できた。SeVV−eGFP−PΔ2-77の場合には、HNタンパク質のバンドが16μg及び8μgの全タンパク質を有するレーン(レーン7、8)でも目視できたが、弱い強さであった。SeV−eGFP−に対するSeVV−eGFP−PΔ2-77感染ベロ細胞中でのHN発現の相対的定量化は、16及び8μgの全タンパク質対2μgの全タンパク質の比較により行い(左右のレーン7と8、対レーン5)、かつインキュベーション時間とは無関係にP欠失変異体の8〜16倍のHN発現の推定した減少を可能にした。これは、SeVV−eGFP−PΔ2-77感染標的細胞中で比較的に高い転写率を生じ、ひいては一般にウイルス複製欠損ベクターの高い導入遺伝子発現を生じさせることができる。
【0140】
両方の測定値(eGFPタンパク質とHNタンパク質)を含めて、平均して10倍の発現の減少から始めることができる。
【0141】
8.標的細胞中でのSeVV−eGFP−PΔ2-77の複製欠損
ベロ細胞を複製可能なSeV−eGFPに感染させた場合には、これに続いて2日で初めに感染した強い蛍光細胞の周辺に、1000個までの更なる蛍光細胞から成るスポットが生じた。ベロ細胞中でSeVV−eGFP−PΔ2-77の複製欠損を立証するために、ベロ細胞の自然な分裂速度を考慮して、初めに感染した標的細胞の周辺で緑色蛍光細胞が生じないことを確認することにした。ベロ細胞は平均して24時間ごとに分裂した。ベロ細胞をSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染させた場合には、約24時間後に検出可能なeGFP−発現が見られた。さらにインキュベーションフェーズの24時間後にも、これらの初めに感染した蛍光ベロ細胞から、自然分裂により幾つかの場合に2つの(弱い)蛍光娘細胞が生じた。この観察結果は、101〜104個のウイルス粒子が感染した標的細胞から生じたウイルス増殖とは関係がなく、よって隣接する細胞を感染できる。他方で、感染細胞の自然な分裂速度は、細胞分裂の数が増すにつれて減少したeGFP−発現強さに影響を与えた。この観察結果は、ウイルスベクターSeVV−eGFP−PΔ2-77がゲノム複製欠損であるということ、すなわち、新たなゲノムが何も合成されていないことを示している。感染細胞の幾つかの連続した細胞分裂が、最後には停止するまで蛍光強さの連続的な減少を生じる場合には、ウイルス増殖は排除されることになる。
【0142】
標的細胞中でSeVV−eGFP−PΔ2-77の複製欠損を最終的に持続させるために、最後の試験を実施した:
T75−フラスコを〜20×106個のベロ細胞で覆った。これらの細胞はインキュベーションフェーズを開始するために既に高密度で播かれていたので、その結果もはや強い分裂活性はなかった。これらのベロ細胞をMOI=0.001でSeVV−eGFP−PΔ2-77に感染させた。1時間のインキュベーション時間の後、5%FCS含有DMEM(少ない分裂活性)による培地交換を行い、かつベロ細胞を33℃でインキュベートした(P1)。p.i.2日目では、選択したMOIに相応して、初めに個々に存在する数千の感染蛍光ベロ細胞が観察できた。高い細胞密度ゆえに、それに続く4日のインキュベーションで、殆ど細胞分裂しなかった。すなわち、初めの感染細胞の数は、蛍光により一定のままで検出された。この時間内にウイルス粒子が形成された場合には、これに隣接する細胞を感染させることができた。このことは、蛍光の増大により反映されていた。8日後にも、周辺細胞の欠損した新たな感染ゆえにウイルスベクターの伝播を排除できた。細胞に新たな培地を与えるために、上澄液を取り出し、かつベロ細胞を新たな培地で覆った。インキュベーション開始から12日後に、培地の底からベロ細胞が剥がれた。全体の試験期間の間に、ウイルスベクターの複製は増大する蛍光細胞の形で観察することができなかった。従って、隣接するベロ細胞における一次感染細胞によるSeVV−eGFP−PΔ2-77の伝播を新規ウイルスゲノムならびにウイルス粒子の産生により排除できた。よって、SeVV−eGFP−PΔ2-77を複製欠損ウイルスベクターと称するべきである。
【0143】
結論:
先に挙げた結果は、標的を定めたポリメラーゼ複合体の成分の遺伝子操作により、ウイルスコード遺伝子を転写できるが、ウイルスゲノムをもはや複製しない複製欠損マイナス鎖RNAウイルスを製造できたということを示している。
【0144】
センダイウイルスの場合には、ポリメラーゼ補助因子リンタンパク質の遺伝子が完全に欠損しているか("SeVV−eGFP−ΔP")又はアミノ酸2〜77のコドンが取り除かれていた("SeVV−eGFP−PΔ2-77")特殊な2つの変異体をさらに詳しく試験した。2つのSeVベクターは、Pタンパク質をトランスの形で提供しない細胞(いわゆる標的細胞)中で複製欠損であるが、しかしその遺伝子発現性が著しく異なる。
【0145】
MOI=5のSeVV−eGFP−ΔPの場合には、統計的にベロ細胞の0.7%だけが感染せずに残った(99.3%は少なくとも1つのRNP複合体を含有した)にもかかわらず、顕微鏡では0.01%だけのeGFP−陽性細胞が観察できた。このことから、SeVV−eGFP−ΔPの15以上のRNPが1つの感染した標的細胞中に同時に存在する場合に、目視可能な導入遺伝子発現を生じることが計算により結論付けられた。
【0146】
このP遺伝子欠損SeVVは、類似した狂犬病ΔP変異体のように似た弱い発現を示した(上記Shoji等)。両方のベクターは感染した標的細胞中で、ウイルス粒子から持ち込まれたポリメラーゼ複合体により一次転写できるだけである。しかしベクターの治療用途には、コードした導入遺伝子もしくは抗原の強い発現が望ましい。この条件は、複製欠損変異体SeVV−eGFP−PΔ2-77を用いて満たすことができ、これは複製可能なSeV と比べて、平均して10倍少ない発現能力を標的細胞中でもたらす。ベクターゲノム中、N末端が短くなったPタンパク質の遺伝子の存在により、一次転写だけではなく、二次転写も可能である。これは、新たに生じるベクターコードPΔ2-77タンパク質を含有する変性ポリメラーゼ複合体により成就するが、これらはポリメラーゼの複製様式は促進しない。
【0147】
感染した標的細胞中のタンパク質合成の定量化により、複製欠損ウイルスベクターSeVV−eGFP−PΔ2-77が、ウイルスコード遺伝子の効果的な転写と発現を実行できることが証明された。この場合に、3’近位の導入遺伝子(eGFP)が効果的に合成されるだけではなく、ゲノム位置6に存在するHN−遺伝子も感染の少なくとも9日後に転写され、かつタンパク質が感染した標的細胞において機能的に露出した。
【0148】
9.複製欠損RNA−ワクチンによるマウスモデル中で誘発した免疫応答の測定
特にP遺伝子中の欠失("PΔ2-77")により、新たなゲノムの合成を可能にしない変性ウイルスポリメラーゼ複合体を生じることが示された。同時に、このような複製欠損ウイルスに感染した後に、標的細胞中で媒介されたウイルス遺伝子発現は、複製可能なウイルスでの感染と比べて約10倍低かった。
【0149】
ワクチンベクターとして複製欠損マイナス鎖RNAウイルスの十分なイムノゲンの特性を検出するために、2組の異種ウイルスの抗原もしくは抗原決定基(ヒトパラインフルエンザウイルスTyp 3、hPIV3及び呼吸系発疹ウイルス、RSV)をウイルスゲノム中に挿入した:このために、元の表面タンパク質FとHNの遺伝子がキメラFタンパク質とHNタンパク質SeV/hPIV3をコードする遺伝子と置換されている複製欠陥SeV PΔ2-77を構築した。キメラのFタンパク質は、558個のアミノ酸を有し、かつhPIV3の細胞外ドメイン(アミノ酸493個)、SeVの膜間ドメイン(アミノ酸23個)及びSeVの細胞質ドメイン(アミノ酸42個)から成る。キメラのHNタンパク質は、579個のアミノ酸を有し、かつSeVの細胞質ドメイン(アミノ酸35個)、SeVの膜間ドメイン(アミノ酸25個)ならびにhPIVの細胞外ドメイン(アミノ酸519個)から成る。キメラのFタンパク質とキメラHNタンパク質のアミノ酸配列は、配列プロトコールでは配列番号27及び28と称した。
【0150】
ウイルスゲノム中へのキメラ遺伝子の挿入により、新たな抗原性が作られると同時にそれらの産生の際にウイルス粒子の効率的な組立てが保障された。
【0151】
2つのウイルス遺伝子の間に組込まれた更なる発現カセット中で、RSVの表面タンパク質Fのコード化を行った。これにより、構築物が二価ワクチンに広げられた。
【0152】
これらの新規ワクチンを動物モデルでテストした。Balb/Cマウスのグループを3週間の間隔で、2種の異なるウイルスプレパレーション(グループAもしくはC、それぞれ104感染単位)で3回鼻腔内免疫し、コントロール群(B)はワクチンの代わりにPBSを含有させた。3回目の免疫化の後に、粘膜免疫応答の分析のために鼻洗浄液(NW)を獲得し、ならびに気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、かつ体液性免疫応答を分析するために血清を単離した。hPIV3ならびにRSVに対して特異的に誘発された免疫グロブリンIgAとIgGの量をELISAにより測定した。複製欠損ワクチンプロトタイプは、hPIV3に対して特異的なIgA抗体の著しい誘発を引き起こし(図15A)、抗RSV IgA抗体の誘発は僅かであった(表示無し)。体液性免疫応答の誘発は、両方のウイルスの表面抗原に対して、特異的IgGの量が2倍異なる比較可能な滴定量をもたらした(図15B)。抗hPIV3−IgGの更なる分析は、誘発された抗体が中和特性(滴定量1/64)を有することを示した。これに対して、予想通りに、コンロトールグループでは何の特異的IgAもしくはIgG誘発も確認できなかった。
【0153】
本発明によるワクチンは、体液性ウイルス抗原に対して特異的粘膜応答と体液免疫応答を誘発できた。更なる実験は、リンパ球免疫マウスがインターフェロンγを産生したのに対して、IL-5は検出できなかったことを示した。この調査結果は、二価の複製欠損RNAワクチンが長い持続的免疫性にとって必要条件であるT細胞免疫応答を引き起こせることを示している。
【0154】
結論
抗原のコード配列中に2組の異種ウイルスを挿入した変性ベクターで実験動物を感染させた後、中和抗体の誘発が検出された。このことは、新しいタイプのワクチンを開発するための複製欠陥マイナス鎖RNAウイルスの可能性を示している。
【0155】
10.使用したDNAオリゴヌクレオチドの作成
上記の実施例で使用したDNAオリゴヌクレオチドを以下の表3に挙げてある。
【0156】
【表3−1】

【0157】
【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次転写能力を欠損することなく複製能力の欠損を生じる、遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに突然変異を有するウイルスゲノムを含有している組換えマイナス鎖RNAウイルス。
【請求項2】
パラミクソウイルスであることを特徴とする、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
センダイウイルスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のウイルス。
【請求項4】
突然変異を遺伝子P中に有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項5】
突然変異は、遺伝子Pにコードされるタンパク質のN末端部分配列に関することを特徴とする、請求項4に記載のウイルス。
【請求項6】
突然変異は、
(a)遺伝子Pにコードされるタンパク質のアミノ酸2〜77又は
(b)複製能力を欠損するために十分な(a)の部分配列
の欠失を含むことを特徴とする、請求項5に記載のウイルス。
【請求項7】
ウイルスゲノムは、異種遺伝子産物をコードする配列を少なくとも1つ含有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項8】
異種遺伝子産物は、タンパク質、リボザイム、アンチセンス分子又はsiRNA分子であることを特徴とする、請求項7に記載のウイルス。
【請求項9】
異種遺伝子産物は、レポータータンパク質、抗原又は治療タンパク質であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のウイルス。
【請求項10】
異種遺伝子産物は、ウイルス、バクテリア及び原生動物から選択される異種病原体の抗原であることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項11】
異種遺伝子産物は、ウイルス抗原であることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項12】
ウイルスゲノムは、同じ又は異なるウイルス由来の幾つかの異種抗原をコードすることを特徴とする、請求項11に記載のウイルス。
【請求項13】
少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列が、ウイルスゲノム中に挿入されている又は/及び同種遺伝子産物コード配列が置換されていることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項14】
ウイルスは、野生型と比べて多くとも20倍弱い転写能力を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のマイナス鎖RNAウイルスのヌクレオカプシド。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のマイナス鎖RNAウイルスのゲノム。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の組換えマイナス鎖RNAウイルスのゲノム又は/及びアンチゲノムをコードするDNA分子。
【請求項18】
転写シグナルと作動的に連結した状態であることを特徴とする、請求項17に記載のDNA分子。
【請求項19】
転写シグナルは、バクテリオファージプロモーター、例えば、T7−プロモーター又はSP6−プロモーターであることを特徴とする、請求項18に記載のDNA分子。
【請求項20】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のウイルス、請求項15に記載のヌクレオカプシド、請求項16に記載のゲノム又は請求項17から19までのいずれか1項に記載のDNA分子を含有している細胞。
【請求項21】
ベクター増殖細胞であることを特徴とする、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
ウイルス産生細胞であることを特徴とする、請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
さらに異種DNA依存性RNAポリメラーゼをコードするDNA分子を含有し、これは組換えマイナス鎖RNAウイルスをコードするDNA分子の転写を引き起こすことを特徴とする、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
ウイルス増殖細胞であることを特徴とする、請求項20に記載の細胞。
【請求項25】
さらにウイルスL、N又は/及びPタンパク質をコードするDNA分子を含有していることを特徴とする、請求項20から24までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項26】
次の工程:
(a)遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに、二次転写能力を欠損することなく、ゲノム複製能力の欠損を生じる突然変異、及び場合により少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列を含んでいる、マイナス鎖RNA−ウイルスのゲノムをコードするDNA分子でトランスフェクトした細胞を準備する工程、及び
(b)(a)によりDNAの転写が行われる条件下に細胞を培養し、かつ組換えマイナス鎖RNAウイルスが形成される工程
を含む請求項1から14までのいずれか1項に記載のマイナス鎖RNA−ウイルスの製造方法。
【請求項27】
ヌクレオカプシドの獲得又はマイナス鎖RNAウイルスからのウイルスゲノムの獲得を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
次の工程:
(a)遺伝子N、L及びPのうち少なくとも1つに、二次転写能力を欠損することなく、ウイルスゲノム複製能力の欠損を生じる突然変異、及び場合により少なくとも1つの異種遺伝子産物コード配列を含んでいる、マイナス鎖RNA−ウイルスに感染させた細胞を準備する工程、及び
(b)ウイルスの増殖が行われる条件下に細胞を培養する工程
を含む請求項1から14までのいずれか1項に記載のマイナス鎖RNAウイルスの増殖方法。
【請求項29】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の組換えマイナス鎖RNAウイルス、請求項15に記載のヌクレオカプシド又は請求項16に記載のウイルスゲノムを作用物質として、ならびに場合により製剤学的に通常の担体又は/及び助剤を含有していることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項30】
ワクチンとして使用するための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
単価又は多価ワクチンとしての請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ウイルス感染に対するワクチンとしての、例えば、病原性マイナス鎖RNAウイルスでの感染に対するワクチンとしての、請求項30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
抗腫瘍治療に使用するための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項34】
リスクのある患者で使用するための請求項29から33までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ヌクレオカプシドを天然ウイルスのエンベロープ中に含んでいる、請求項29から34までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の組換えマイナス鎖RNAウイルス、請求項15に記載のヌクレオカプシド又は請求項16に記載のウイルスゲノムを製造又は増殖するための、マイナス鎖RNAウイルスのタンパク質N、L又は/及びPを構成的又は誘発的に安定に発現した細胞の使用。
【請求項37】
細胞は哺乳類細胞であることを特徴とする、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
細胞は、細胞H29(DSM ACC2702)から選択されるか、又はこれに由来する細胞であることを特徴とする、請求項36又は37に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−213407(P2012−213407A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162993(P2012−162993)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2007−554510(P2007−554510)の分割
【原出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【Fターム(参考)】