説明

放射性画像診断剤の製造方法及び放射線分解抑制方法

【課題】有効成分の放射線分解を抑制し、より安定性の高い放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする放射性画像診断剤の提供。
【解決手段】放射性画像診断剤に生体認容性の糖又は糖アルコールを放射線分解を抑制するための有効量配合する。糖又は糖アルコールの配合量は、好ましくは10(mmol/L)/GBq/mL以上、より好ましくは50(mmol/L)/GBq/mL以上である。糖は、好ましくは、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトースからなる群より選ばれる。糖アルコールは、好ましくは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールからなる群より選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする、放射性画像診断剤に関する。より詳しくは、糖又は糖アルコールを配合することにより、放射性ハロゲン標識有機化合物の放射線分解が抑制された、放射性画像診断剤に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(以下、「PET」という)及び単一光子放射断層撮影(以下、「SPECT」という)に代表される核医学検査は、癌をはじめとする種々の疾患の診断に有効である。これらの方法は、特定の放射性同位元素でラベルされた薬剤(以下、「放射性医薬品」という)を投与し、該薬剤の投与により直接的または間接的に放出されたγ線を検出する方法である。核医学検査は、疾患に対する特異度や感度が高いという優れた性質を有しているばかりでなく、病変部の機能に関する情報を得ることができるという、他の検査方法にはない特徴を有している。
例えば、PET検査に用いられる放射性医薬品の一つである、2−[18F]フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(以下、「18F-FDG」とする)は、糖代謝の盛んな部位に集積する性質があるため、糖代謝が盛んな腫瘍を特異的に検出することが可能となる。
【0003】
上記の核医学検査のうち、PETは、得られる画像の画質が高いため、従来広く臨床において用いられていたSPECTと比較して、より診断性能の高い画像を提供することができる。そのため、PETは、SPECTに次ぐ新たな診断モダリティとして期待されており、PET用の放射性医薬品の開発が多くの研究施設等により行われている。例えば、種々のレセプターマッピング剤や、血流診断製剤が合成され、臨床応用に向けて研究が行われている。
【0004】
しかし、放射性医薬品は放射線分解により、徐々に純度が低下してしまうという問題がある。特に、上述したPETに用いる製剤は、用いる放射性核種の放射線エネルギーがSPECT用核種に比較して一般に大きいため、放射線分解による純度の低下は、より深刻なものとなる。
このような背景から、放射性医薬品を放射線分解による影響から防護するための技術が、種々検討されている。
【0005】
国際公開第03/090789号パンフレットには、18F-FDG溶液に弱酸ベースの緩衝液を添加することにより、18F-FDGの放射線分解を抑制する方法及び該方法により調製された注射剤が開示されている(特許文献1)。また、国際公開第04/043497号パンフレットには、18F-FDG溶液にエタノールを添加することにより、18F-FDGの放射線分解を抑制し、安定性を向上させた注射剤組成が開示されている(特許文献2)。
さらに、特開平10-147542号公報には、OHラジカル、Hラジカルあるいは水和電子との間の反応速度定数が、1×108〜5×1010 mol-1s-1の範囲である有機化合物を、放射性医薬品の放射線分解を防護するために用いることが開示されている(特許文献3)。
また、Sara Goldsteinらは、マンニトールが水溶液中でOHラジカルのスカベンジャーとして機能することを報告している(非特許文献1)。さらに、Heli Teerijokiら及びA. N. Ouraishiらは、マンニトールがグルコーストランスポーターの基質とならないことを報告し、特にA. N. Ouraishiらはヒト由来の細胞膜の透過性についてマンニトールと2−デオキシグルコース(2-deoxyglucose)とを対比して示している(非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/090789号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/043497号パンフレット
【特許文献3】特開平10-147542号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sara Goldstein et al., Int. J. Radiat. Biol., 46, 6, p.725-729(1984)
【非特許文献2】Heli Teerijoki et al., Comparative Biochemistry and Physiology Part B, 128, p.483-491(2001)
【非特許文献3】A. N. Ouraishi et al., Placenta, 20, 167-174(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、18F-FDGを初めとする放射性医薬品を放射線分解による影響から防護し、安定性を向上させるための種々の技術が開示されている。
しかし、国際公開第03/090789号パンフレットに記載のような弱酸ベースの緩衝剤を添加する方法では、調製された注射剤のpHが低下してしまうという問題がある。また、医薬品においては、厳格な品質管理を行う必要があるが、緩衝液は一般に複数の成分により構成されているので、添加した弱酸ベースの緩衝液及びその分解物を製剤中で分析するには煩雑な操作を伴い、一般に困難である。従って、安定化剤としては、できるだけ単一の成分であって、簡便に分析できるものを使用することが望ましい。
また、国際公開第04/043497号パンフレットに記載のようなエタノールを添加する方法は、単一の成分を添加する方法であり、分析が容易であるという特徴を有している。しかし、エタノールは、残留溶媒のガイドライン等に位置付けられており、その添加量はできるだけ少なくする必要がある。
【0009】
一方、特開平10-147542号公報に開示されている放射線防護剤は、中性の有機化合物を選択可能であるため、pHを低下させずに有効成分である放射性同位元素標識有機化合物を放射線分解から防護することが可能である。しかし、放射性ハロゲン標識有機化合物を有効成分とする放射性医薬品における最適の条件については、開示されていない。
また、上記のように、マンニトールがOHスカベンジャーとして機能することを報告する文献があるが、18F-FDGなどの放射性ハロゲン標識有機化合物の安定化剤として使用することについては未だ検討されていない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、放射性フッ素標識有機化合物を初めとする放射性ハロゲン標識有機化合物を有効成分とする放射性医薬品において、該有効成分の放射線分解を抑制し、より安定性を高め得る注射剤組成を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は検討を重ねた結果、糖又は糖アルコールを上記放射性医薬品に配合することにより、有効成分の放射線分解を抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする放射性画像診断剤において、安全性の高い、すなわち、生体認容性の糖又は糖アルコールを、放射線分解を抑制するための有効量配合してなる、放射性画像診断剤である。
放射性ハロゲン標識化合物は、特に限定されるものでなく、典型的には、放射性ハロゲンで標識された有機化合物が用いられ、例えば、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(FDG)及びその他の種々の放射性ハロゲン標識されたグルコース誘導体の他、放射性ハロゲン標識されたアミノ酸誘導体、放射性ハロゲン標識されたコカイン誘導体等が挙げられる。
放射性ハロゲンは、特に限定されるものでなく、18F、34Cl、75Br、76Br、82Br、80Br、123I又は124I等、PET又はSPECT等の放射性画像診断剤に応用される種々の放射性ハロゲンを用いることができる。
【0012】
糖の種類は、水溶性を有している限り特に限定されるものではなく、好ましくは中性の糖を用いることができ、より好ましくは単糖又はオリゴ糖を用いることができる。さらに好ましくは、アルドース又はケトースを用いることができる。特に単糖としては、トリオース、テトロース、ペントース及びヘキソースからなる群より選ばれたものを好ましく用いることができ、より好ましくは、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトースからなる群より選ばれたものを用いることができ、特に好ましくは、エリトロース、トレオース、リボース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、ソルボース及びタガトースからなる群より選ばれたものを用いることができる。
【0013】
糖アルコールとしては、水溶性を有している限り特に限定されるものではなく、好ましくはプロパトール、テトトール、ペントール及びヘキシトールからなる群より選ばれたものを用いることができ、より好ましくは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールからなる群より選ばれたものを用いることができ、特に好ましくは、エリスリトール、キシリトール及びマンニトールからなる群より選ばれたものを用いることができる。
【0014】
糖又は糖アルコールの量は、放射線分解を抑制し得る有効量以上である限り特に限定されないが、検定時において10 (mmol/L)/GBq/mL以上であることが好ましく、50 (mmol/L)/GBq/mL以上であることがより好ましく、100 (mmol/L)/GBq/mL以上であることが特に好ましい。ここで、(mmol/L)/GBq/mLとは、放射能濃度1 GBq/mLあたりに配合されるモル濃度をあらわす。従って、上記の配合濃度を放射能濃度92.5 MBq/mLの製剤中における配合濃度に換算すると、それぞれ、約1 mmol/L、約5 mmol/L及び約10 mmol/Lとなる。具体的に例示すると、検定時における放射能量が185 MBqであり、容量2 mLの場合には、配合量は2μmol以上であることが好ましく、10μmol以上であることがより好ましく、20μmol以上であることが特に好ましい。糖又は糖アルコールの量が少ないと、十分な放射線分解抑制効果が得られないため、好ましくない。
ここで、検定時とは、製品に表示された放射能、すなわち規格に規定された放射能を有すべき日時と定義されている。例えば、製品に表示された放射能が185 MBqであり、検定日時が6月4日午後1時の製品は、6月4日午後1時において放射能の規格値である185 MBqを満たすように、製造時における放射能量の調整が行われる。
【0015】
一方、糖又は糖アルコールの量は、注射剤における添加剤として、許容される範囲内とする必要がある。この範囲は、各添加剤の一日許容投与量等を考慮して決定される。例えば、静脈内投与の場合における代表的な糖及び糖アルコールの最大投与量の文献値は、それぞれマンニトール:1.2g、キシリトール:200mg、ソルビトール:1.5g、グルコース:8g、フルクトース:900mg、マルトース:10g、ラクトース:1250mgである(日本医薬品添加剤協会編集、「医薬品添加物辞典2000」、薬事日報社、2000)。従って、これらの糖又は糖アルコールを添加剤として配合させるためには、注射剤中に含まれる最終的な投与量がこの最大投与量を超えないように、配合量を設定する必要がある。
なお、用いる糖又は糖アルコールの種類は、有効成分である放射性ハロゲン標識化合物の種類及び生体内における機能に応じて種々選択される。より具体的には、有効成分の生体内における機能からみて、薬効の発現の障害とならない糖又は糖アルコールを選択することが好ましい。例えば有効成分が18F-FDGである場合は、グルコーストランスポーターの基質とならない化合物より選択する必要があり、フルクトース、リボース、スクロース、マンニトール、キシリトール及びソルビトールからなる群より選択することが好ましく、マンニトールを選択することが特に好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る放射性画像診断剤は、有効成分である放射性フッ素標識有機化合物を初めとする放射性ハロゲン標識化合物の放射線分解を抑制することができ、輸送中又は貯蔵中における純度の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る放射性画像診断剤の製造方法について説明する。
本発明に係る放射性画像診断剤の製造においては、まず、有効成分となる放射性ハロゲン標識化合物の合成を行う。放射性ハロゲン標識化合物の合成は、化合物毎に開示された公知の方法を用いることができる。例えば、放射性ハロゲン標識化合物として用いる化合物が18F-FDGである場合は、一般に、Hamacher等により考案された方法(以下、Hamacher法という)により合成することができる(K. Hamacher et al., Applied Radiation and Isotopes, (Great Britain), Pergamon Press, 1990, 41, 1, p.49-55)。
以下、有効成分となる放射性ハロゲン標識化合物が、[18F]-FDGである場合を例にとり、本発明に係る放射性画像診断剤の製造方法につき説明する。
【0018】
まず、Hamacher法では、18F-FDGの合成に先立ち、ターゲット水(18O濃縮水)にプロトン照射を行い、[18F]フッ化物イオンを、[18F]フッ化物イオン含有ターゲット水として得る。次いで、この[18F]フッ化物イオン含有ターゲット水を、陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液することにより、[18F]フッ化物イオンを陰イオン交換樹脂に吸着捕集する。前記カラムに炭酸カリウム水溶液を通液させることにより、該陰イオン交換樹脂に捕集された[18F]フッ化物イオンを溶離させ、溶出液を反応容器に回収する。
【0019】
次いで、該溶出液に相間移動触媒としてアミノポリエーテルを溶解させたアセトニトリル溶液を加えて蒸発乾固させ、[18F]フッ化物イオンを活性化させる。この残渣に反応基質の1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース(以下、TATMという)を溶解させたアセトニトリル溶液を加えて加熱(例えば、85℃で5分間加熱)して求核置換反応を行わせて1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−フルオロ−2−デオキシグルコース(以下、TAFDGという)を合成する。この反応液を乾固させて有機溶媒を実質的に除去した後、塩酸を添加して加熱(例えば、120℃で15分間加熱)することにより脱保護を行い、[18F]-FDGを得る。得られた18F-FDGにつき精製処理を行った後、生理食塩液等を添加して目的の放射能濃度の18F-FDGを得ることができる。
【0020】
本発明に係る放射性画像診断剤は、上記のようにして得られた放射性フッ素標識化合物に対し、必要量の糖又は糖アルコールを混合することにより得られる。混合するタイミングは最終剤に必要量の糖又は糖アルコールが配合される限りにおいて特に限定されるものではない。例えば、予め高濃度に調整された18F-FDG溶液と、同じく高濃度に調整された糖又は糖アルコール溶液とを、最終製剤中の18F-FDG及び糖又は糖アルコールの濃度が、それぞれ目的とする濃度となるように、適宜割合を調整して混合する方法が考えられる。具体的には、700 MBqの18F-FDG溶液に、マンニトール濃度15 mmol/Lとなるようにマンニトールを配合させる場合は、1.4 GBqに調整された18F-FDG溶液と、30 mmol/Lに調整されたマンニトール溶液を、当量ずつ混合すればよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等になんら制限されるものではない。
【0022】
(実施例1〜12、比較例1)
下記の工程に従い、18F-FDG溶液を調製した。
まず、18Oが濃縮されたターゲット水にプロトン照射を行い、[18F]フッ化物イオンを、[18F]フッ化物イオン含有ターゲット水として得た。これを、強陰イオン交換樹脂に通液し、[18F]フッ化物イオンを吸着捕集した後炭酸カリウム溶液を通液することにより[18F]フッ化物イオンを溶出した。
【0023】
この[18F]フッ化物イオンを含む溶出液に、クリプトフィックス222(製品名、メルク社製)のアセトニトリル溶液を添加し、加熱して蒸散乾固させた後、TATMのアセトニトリル溶液を加え加熱することによりF-18標識した。その後、塩酸加水分解により脱保護を行い、この反応液につき、ODSカラム及びアルミナカラムなどを用いて精製を行い、18F-FDG原液を得た(放射能量:104.3 GBq)。18F-FDG原液につき製造4.5時間後において92.5MBq/mLとなるよう生理食塩液を加えて希釈し、18F-FDG溶液とした。
【0024】
調製した18F-FDG溶液各2mLに対し、それぞれ表1記載の濃度の糖又は糖アルコール溶液を表1記載の量添加し、室温下で混合して試料溶液を得た。
【0025】
【表1】

【0026】
調製した試料につき、18F-FDG溶液製造直後(比較例1のみ実施)、製造4.5時間後及び8.5時間後において、下記に示す条件にてTLC分析を行い、18F-FDGピークの面積百分率を求め、放射化学的純度とした。各時間点における放射化学的純度を比較し、安定化の効果を評価した。
【0027】
TLC条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:アセトニトリル/水=19:1
展開長:10 cm
検出器:Rita Star(製品名、raytest社製)
【0028】
結果を、表2に示す。
表2より明らかなように、各糖又は糖アルコールを添加した18F-FDG溶液(実施例1〜12)は、添加していない18F-FDG溶液(比較例1)と比較して、製造4.5時間後及び8.5時間後における放射化学的純度が高く、顕著な分解抑制効果を示していた。
以上の結果より、実施例1〜12に用いた糖又は糖アルコールを添加することにより、放射線分解に起因する、18F-FDGの放射化学的純度の低下を、抑制し得ることが示された。
【0029】
【表2】

【0030】
(実施例13〜18、比較例2)
比較例1及び実施例1〜12と同様の操作を行い、18F-FDG原液を得た(放射能量:126.3 GBq)。18F-FDG原液につき、製造4.5時間後において92.5 MBq/mLとなるように生理食塩液を加えて希釈し、18F-FDG溶液とした。
【0031】
調製した18F-FDG溶液各2 mLに対し、それぞれ表3記載の濃度のマンニトール溶液を表3記載の量添加し、室温下で混合して試料溶液を得た。
【0032】
【表3】

【0033】
調製した試料につき、18F-FDG溶液製造直後(比較例2のみ)、製造4.5時間後及び8.5時間後において、下記に示す条件にてTLC分析を行い、18F-FDGピークの面積百分率を求め、放射化学的純度とした。各時間点における放射化学的純度を比較し、安定化の効果を評価した。
【0034】
TLC条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:アセトニトリル/水=19:1
展開長:10 cm
検出器:ラジオクロマナイザー(アロカ株式会社製、JTC-R75-21361型)
【0035】
結果を、表4に示す。
表4より明らかなように、マンニトールを添加した試料における放射化学的純度(実施例例13〜18)は、添加していない試料(比較例2)と比較して、製造4.5時間後及び8.5時間後共に、明らかに高い値を示していた。
以上の結果より、マンニトールは、2.5 mmol/L以上の濃度において、18F-FDGの放射線分解に起因する放射化学的純度の低下を抑制し得ることが示された。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする放射性医薬品の放射線分解を抑制するために有用であり、核医学の分野において利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性ハロゲン標識化合物に、生体認容性の糖又は糖アルコールを、放射線分解を抑制するための有効量配合することを特徴としてなる、放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする放射性画像診断剤の製造方法。
【請求項2】
放射性ハロゲン標識化合物に、生体認容性の糖又は糖アルコールを、放射線分解を抑制するための有効量配合することを特徴としてなる、放射性ハロゲン標識化合物を有効成分とする放射性画像診断剤の放射線分解抑制方法。
【請求項3】
放射性ハロゲンが、18F、34Cl、75Br、76Br、82Br、80Br、123I及び124Iからなる群より選ばれたものである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
糖又は糖アルコールを、10 (mmol/L) /GBq/mL以上含有せしめることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
糖又は糖アルコールを、50 (mmol/L) /GBq/mL以上含有せしめることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
糖又は糖アルコールを、92.5 MBq/mLの製剤中、1 mmol/L以上の濃度で含有せしめることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
糖又は糖アルコールを、92.5 MBq/mLの製剤中、5 mmol/L以上の濃度で含有せしめることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
糖が、中性糖である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
糖が、単糖又はオリゴ糖である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
糖が、アルドース又はケトースである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
糖が、トリオース、テトロース、ペントース及びヘキソースからなる群より選ばれたものである、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
糖が、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトースからなる群より選ばれたものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
糖が、エリトロース、トレオース、リボース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、ソルボース及びタガトースからなる群より選ばれたものである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
糖アルコールが、プロパトール、テトトール、ペントール及びヘキシトールからなる群より選ばれたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
糖アルコールが、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールからなる群より選ばれたものである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
糖アルコールが、エリスリトール、キシリトール及びマンニトールからなる群より選ばれたものである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記放射性ハロゲン標識化合物が18F−FDGであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2012−229256(P2012−229256A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159089(P2012−159089)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2007−521259(P2007−521259)の分割
【原出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】