説明

水性防錆塗料用共重合体ラテックス

【課題】防錆性に優れ、基材への密着性、温冷繰返し後の基材への密着性、水性塗料組成物の乾燥性、水性塗料組成物の安定性に優れた低温乾燥型の水性防錆塗料組成物を実現可能な、水性防錆塗料用共重合体ラテックスを提供する。
【解決手段】(a)共役ジエン系単量体1.0質量部〜60.0質量部、(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体0.5質量部〜10.0質量部、(c)1種又は複数種の他の共重合可能な単量体30.0質量部〜98.5質量部(ただし、(a)+(b)+(c)=100.0質量部)からなる単量体混合物を乳化重合して得られる水性防錆塗料用共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性防錆塗料組成物として好ましく使用される共重合体ラテックスに関する。更に詳しくは、防錆性や基材への密着性等に優れた水性防錆塗料組成物を実現することが可能な、共重合体ラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、各種塗料においては、溶剤系の塗料から水系の塗料への移行が進んでいる。防錆塗料でも溶剤系から水系に移行しつつあるが、従来の水系防錆塗料は、溶剤系防錆塗料に比べて防錆性が劣るという大きな問題点がある。
こうした水系防錆塗料の課題を解決する為、数多くの先行技術が開示されている。例えば、特定の原料単量体を含む共重合体ラテックス(特許文献1)が提案されている。更に、特定のガラス転移温度を有する共重合体ラテックスを含むエマルジョン組成物が提案されている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−35872号公報
【特許文献2】特開2008−19143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶剤系に比べて、防錆性を向上させつつ、同時に塗料としての各種課題、例えば基材への密着性等をバランスよく両立する低温乾燥型(乾燥温度:40〜80℃)の水性防錆塗料組成物を実現する観点からは、まだ十分満足できるものが得られていないのが実情である。
【0005】
そこで本発明は、防錆性に優れ、同時に、基材への密着性、塗料組成物の乾燥性等に優れた低温乾燥型の水性防錆塗料組成物を実現可能な水性防錆塗料用共重合体ラテックスを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、水性防錆塗料組成物の構成材料として用いられる共重合体ラテックスに関し、共役ジエン系単量体及びヒドロキシアルキル基を有する単量体を必須成分とした共重合体ラテックスを用いることに着目し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下の水性防錆塗料用共重合体ラテックス及び水性防錆塗料を提供する。
【0007】
[1](a)共役ジエン系単量体1.0質量部〜60.0質量部、(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体((a)共役ジエン系単量体に該当するものを除く)0.5質量部〜10.0質量部、及び(c)1種又は複数種の他の共重合可能な単量体30.0質量部〜98.5質量部(ただし、(a)+(b)+(c)=100.0質量部)からなる単量体混合物を乳化重合して得られる水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
[2]前記単量体混合物100質量部中の(c1)エチレン系不飽和カルボン酸単量体含有量が0〜1.4質量部である、[1]記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
[3]前記単量体混合物100質量部中の(c1)エチレン系不飽和カルボン酸単量体含有量が0〜1.0質量部である、[1]又は[2]記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
[4]前記単量体混合物100質量部中に前記(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体を1.0質量部〜9.0質量部含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
[5][1]〜[4]のいずれか1つに記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックスを含む水性防錆塗料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性防錆塗料用共重合体ラテックスを水性防錆塗料組成物の構成材料として用いることにより、水性防錆塗料組成物における課題である、防錆性を向上させることが可能である。同時に、基材との密着性等が優れた水性防錆塗料組成物を実現し得る。また、本発明の水性防錆塗料用共重合体ラテックスを用いることにより、水性防錆塗料組成物の安定性が優れ、加温と冷却を繰り返した後(温冷繰返し後)の基材との密着性が優れ、低温乾燥工程において水性防錆塗料組成物の使用が可能になり、工場のライン物塗料として水性防錆塗料組成物の使用が可能になり、有機溶剤に起因して発生するVOC問題等や、塗料の乾燥性が優れることによる乾燥時間の短縮による生産性の改善や乾燥エネルギーコストの削減が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本発明の水性防錆塗料用共重合体ラテックスは、共役ジエン系単量体(a)、ヒドロキシアルキル基を有する単量体(b)、及び当該単量体(a)及び(b)と共重合可能な他の単量体(c)を乳化重合して形成することができる。
【0011】
(a)共役ジエン系単量体
本発明で用いられる共役ジエン系単量体(a)は、共重合体ラテックスに防錆性や柔軟性を付与するために重要な成分である。共役ジエン系単量体(a)の好ましい例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
共役ジエン系単量体(a)が、全単量体混合物100質量部中に占める割合としては、通常1.0質量部〜60.0質量部、好ましくは3.0質量部〜50.0質量部である。共役ジエン系単量体(a)の使用量の下限を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物の温冷繰返し後の密着性を向上させることができる。また、共役ジエン系単量体(a)の使用量の上限を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物の防錆性を向上させることができる。
【0013】
(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体
前記、ヒドロキシアルキル基を有する単量体(b)は、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物に、例えば基材への優れた密着性と塗料の安定性を発現させる目的で用いられる。
【0014】
ここで、前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体としては、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する単量体であって、上記共役ジエン系単量体(a)に該当しないものであればよく、それ以外に特に制限はない。例えば、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、アリルアルコール、及びN−メチロールアクリルアミド等が挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体としてより具体的には、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0015】
また、前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体(b)が前記全単量体混合物100質量部中に占める割合としては、好ましくは0.5質量部〜10.0質量部、より好ましくは1.0質量部〜9.0質量部、さらに好ましくは2.0質量部〜8.0質量部である。ヒドロキシアルキル基を有する単量体の使用量の下限を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物は、温冷繰返し後の基材への密着性、塗料の安定性を向上させることができる。ヒドロキシアルキル基を有する単量体(b)の使用量の上限を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物は、防錆性、塗料の乾燥性を向上させることができる。
【0016】
(c)他の共重合可能な単量体
本発明で用いられる他の共重合可能な単量体(c)は、その種類を適宜選択することにより、共重合体ラテックスにさまざまな特性を付与できる。他の共重合可能な単量体(c)は、共役ジエン系単量体(a)及びヒドロキシアルキル基を有する単量体(b)と共重合可能な単量体(前記単量体(a)又は(b)に該当するものを除く)であればよく、それ以外に特に制限はない。他の共重合可能な単量体(c)の好ましい例としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c1)、シアン化ビニル系単量体(c2)、芳香族ビニル系単量体(c3)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体(c4)、等が挙げられ、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。他の共重合可能な単量体(c)が、前記全単量体混合物100質量部中に占める割合としては30.0質量部〜98.5質量部である。
【0017】
前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c1)が、前記全単量体混合物100質量部中に占める割合としては、好ましくは0〜1.4質量部、より好ましくは0〜1.0質量部、さらに好ましくは0〜0.7質量部、なお好ましくは0〜0.4質量部、最も好ましくは0〜0.3質量部である。エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c1)の使用量を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物の防錆性と乾燥性を高める効果を得ることができる。
【0019】
前記シアン化ビニル系単量体(c2)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、前記シアン化ビニル系単量体(c2)が、前記全単量体混合物100質量部中に占める割合としては、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以下である。シアン化ビニル系単量体(c2)の使用量を当該範囲に設定する事により、共重合体ラテックスの重合安定性を低下させることなく、共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物の基材との密着性や温冷繰返し後の基材への密着性を高める効果を得ることができる。
【0021】
前記芳香族ビニル系単量体(c3)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体(c4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記単量体混合物には、上述した各種単量体(c1)〜(c4)以外にも、種々の他の共重合可能な単量体(c)を配合することができる。そのような単量体としては、例えば、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能ビニル系単量体;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いる事ができる。
【0024】
得られる共重合体ラテックスの安定性の観点からは、他の共重合可能な単量体(c)として、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリルを配合することが好ましい。
【0025】
本実施の形態において、本願発明の共重合体中のトルエン不溶分としては、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。トルエン不溶分の上限を上記範囲に調整することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物は、防錆性を向上させることができる。トルエン不溶分は公知の方法で制御できるが、連鎖移動剤の量により調整することが実用上重要な手段である。
【0026】
上記共重合体ラテックスの重合には連鎖移動剤を用いる。連鎖移動剤は特に限定されないが、例えば、核置換α−メチルスチレンの二量体のひとつであるα−メチルスチレンダイマー;n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類;テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどが挙げられる。これらの中でもメルカプタン類が好適に使用できる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
連鎖移動剤の使用量は、前記単量体混合物100質量部に対し、割合としては通常0.1質量部〜4.0質量部、好ましくは0.1質量部〜3.0質量部、さらに好ましくは0.2〜2.5質量部である。連鎖移動剤の使用量を上記範囲に設定することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスのトルエン不溶分を上記範囲に設定することができる。
【0028】
連鎖移動剤の添加方法としては、例えば、一括添加、回分添加、連続添加、あるいはこれらの組み合わせなど公知の添加方法が用いられる。
【0029】
本実施の形態における共重合体ラテックスは、示差走査熱量測定において、ガラス転移温度が好ましくは−40℃〜70℃、より好ましくは−30〜60℃、さらに好ましくは−20〜50℃の範囲にあることが好ましい。共重合体ラテックスのガラス転移温度を上記範囲に調整することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを用いた水性塗料組成物は、防錆性、基材への密着性、温冷繰返し後の基材への密着性を向上させることができる。示差走査熱量曲線の微分曲線(温度−電力/時間曲線)におけるピークを検出することができるが、ピークが1点のもの、2点以上あるもの、又は明確なピークを示さず台形状の曲線を示すもの、いずれでも構わない。本実施の形態における共重合体ラテックスのガラス転移温度は、ASTM法より算出したガラス転移温度である。
【0030】
本実施の形態の共重合体ラテックスを製造するに際し、乳化重合の系内に単量体混合物を添加する方法についても種々の方法を採用し得る。例えば、単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的もしくは間欠的に仕込む方法が挙げられる。また、単量体混合物を最初から連続的又は間欠的に仕込む方法が挙げられる。これらの重合方法は組み合わせることも可能である。
【0031】
また単量体混合物を添加する工程において、単量体混合物の組成が連続的に変化するような、いわゆるパワーフィード法を用いることも可能である。
【0032】
本実施の形態において、共重合体ラテックスの数平均粒子径としては、好ましくは50nm〜500nmであり、より好ましくは60nm〜400nm、さらに好ましくは70nm〜350nm、最も好ましくは80nm〜330nmである。数平均粒子径を上記範囲に調製することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物は、防錆性、基材への密着性、温冷繰返し後の基材への密着性、塗料の乾燥性、塗料の安定性を向上させることができる。
【0033】
数平均粒子径は、乳化重合により製造する際の、乳化剤の使用量を調節する方法や公知のシード重合法を用いることで調整することが可能である。シード重合法としては、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を、適宜選択して用いることができる。
【0034】
本実施の形態において、共重合体ラテックスの製造法については、例えば、水性媒体中で乳化剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行う等の方法を採用することができる。
【0035】
ここで、使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、ノニオン性乳化剤に挙げられる非反応性乳化剤、親水基と親油基を有する乳化剤の化学構造式の中にエチレン性2重結合を導入した、いわゆる反応性乳化剤を用いることができる。
【0036】
非反応性乳化剤としては、例えば非反応性のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン性乳化剤が挙げられ、また非反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン性乳化剤が挙げられる。
【0037】
反応性乳化剤としては、例えばアニオン性反応性乳化剤としては、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体であり、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。例えばアルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば三洋化成(株)エレミノール(商標)JS−2、JS−5、例えば花王(株)製ラテムル(商標)S−120、S−180A、S−180等が挙げられる)、例えばポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば第一工業製薬(株)製アクアロン(商標)HS−10、HS−1025等が挙げられる)、例えばα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば旭電化工業(株)製アデカリアソープ(商標)SE−1025N等が挙げられる)、例えばアンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば第一工業製薬(株)製アクアロンKH−10などが挙げられる)など、スチレンスルホン酸塩が挙げられる。
【0038】
また、反応性乳化剤でノニオン性反応性乳化剤としては、例えばα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば旭電化工業(株)製アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等が挙げられる)、例えばポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば第一工業製薬(株)製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等が挙げられる)などが挙げられる。
【0039】
使用される乳化剤の量としては、前記単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5.0質量部、より好ましくは0.1質量部〜4.5質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜4.0質量部である。乳化剤は、非反応性乳化剤及び反応性乳化剤の中から選ばれる1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
非反応性乳化剤は、単量体混合物100質量部に対して好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0.4質量部以下を用いることができる。反応性乳化剤は、全単量体混合物100質量部に対して好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下を用いることができる。乳化剤を上記範囲に設定する事により、本実施の形態の共重合体ラテックスは重合の安定性を向上させることができ、また、本実施の形態の共重合体ラテックスを用いた水性防錆塗料組成物は、防錆性を向上させることができる。
【0041】
ラジカル開始剤としては、熱又は還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい開始剤の例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができる。
【0042】
このような開始剤としてより具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を上述の重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
【0044】
共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度としては、例えば、40℃〜100℃である。ここで、生産効率と、得られる共重合体ラテックスの柔軟性等の品質の観点から、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間における重合温度として、好ましくは45℃〜95℃、より好ましくは55℃〜90℃である。
【0045】
また、全単量体混合物を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げる為に重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を採用する事も可能である。このような工程における重合温度としては、好ましくは80℃〜100℃である。
【0046】
共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度(重合が完結した際の固形分濃度。乾燥により得られた固形分質量の、元の共重合体ラテックス(水等を含む)質量に対する割合をいう。)としては、生産効率と乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは40質量%〜60質量%、より好ましくは43質量%〜57質量%である。
【0047】
前記共重合体ラテックスの製造に際しては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を乳化重合時又は乳化重合終了時に用いることができる。例えばpH調整剤、キレート化剤、などを使用することができる。
【0048】
pH調整剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミンやジメチルエタノールアミンやトリエタノールアミンやトリエチルアミンなどのアミン類等が挙げられる。これらの中でも水酸化アンモニウムや、モノエタノールアミンやジメチルエタノールアミンやトリエタノールアミンやトリエチルアミンなどのアミン類を用いるのが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
本実施の形態の共重合体ラテックスは、通常、溶媒中に分散された状態で最終製品として提供される。この場合の固形分濃度としては、好ましくは40質量%〜60質量%である。
【0051】
ここで、本実施の形態の共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加したり、あるいは他のラテックスを混合して用いたりすることができる。例えば乳化剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、増粘剤、保水剤、印刷適性剤、滑剤、架橋剤などを添加することができる。また、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料、ウレタン樹脂ラテックス、アクリル樹脂系ラテックスなどを混合して用いることもできる。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、他の(ジエン系)共重合体ラテックスを併用してもよい。
【0052】
本実施の形態の水性防錆塗料用共重合体ラテックスは、そのままコーティング剤としてクリヤー皮膜を形成させるために使用することもできるし、各種充填剤、添加剤、他種エマルジョン、有機材料等が添加されて、水性防錆塗料(組成物)として使用してもよい。
【0053】
塗料組成物中に用いられる充填剤の例としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、珪藻土、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、セピオライト、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、ベンガラ等の無機顔料;ガラスビーズ、発泡ガラスビーズ、火山ガラス中空体、ガラス繊維等のガラス材料;カーボンブラック等の有機顔料、トリポリリン酸二水素アルミニウム等の防錆顔料が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0054】
また、塗料組成物中に用いられる充填剤の添加量としては、共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、好ましくは400質量部以下である。このような範囲とする事で、得られた塗料組成物は、防錆性、基材への密着性、温冷繰返し後の基材への密着性、塗料の乾燥性、塗料の安定性を向上させることができる。
【0055】
塗料組成物中に用いられる添加剤としては、例えば、可塑剤、タレ防止剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、発泡剤、コロイド安定剤、防腐剤、PH調整剤、老化防止剤、着色剤、架橋剤、硬化剤、保水剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して使用する事が可能である。
【0056】
塗料組成物中に用いられる増粘剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩類、ウレタン会合型、ポリエーテルタイプ、セルロースエーテル、ポリアクリル型、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。
【0057】
塗料組成物中に用いられる架橋剤・硬化剤としては、例えば、多官能エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、メラミン樹脂、オキソザリン化合物等を挙げることができる。
【0058】
塗料組成物中に用いられる発泡剤としては、例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の化合物を挙げる事ができる。
【0059】
塗料組成物中に用いられる他種エマルジョンとしては、例えば、天然ゴムラテックス、アクリル樹脂系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン樹脂ラテックス、エポキシ樹脂ラテックス等が挙げられる。
【0060】
また、塗料組成物中に用いられる有機材料としては、例えば、各種樹脂粉末、ゴム粉末、ポリエチレングリコール、カーボンブラック、ホワイトカーボン、セルロースパウダー、澱粉等を挙げる事ができる。
【0061】
本実施の形態の共重合体ラテックスを用いて塗料組成物を調製する場合、従来公知の各種分散装置を用いることができる。分散装置としては、例えばバタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ロータリーミキサー、ニーダー、ディゾルバー、ペイントコンディショナー等を使用する事ができる。
【0062】
また、本実施の形態の共重合体ラテックスを使用した塗料組成物は、従来公知の方法、例えば、ヘラ、刷毛、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン、ロール塗工機等を用いて基材に塗布する事が可能である。
【0063】
本実施の形態の共重合体ラテックスは、水性塗料用として好ましく用いる事ができるが、さらに好ましくは水性防錆塗料用として用いる事ができる。また、工場のライン物塗料用として用いることができ、さらに他の用途として船底防汚塗料、カーペットバッキング剤、オレフィン等を基材とする各種接着剤、各種塗料、塗工紙用バインダー、各種コーティング剤などにも用いる事ができる。
【実施例】
【0064】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、各物性の評価は、以下の通りの方法で行った。
(1)トルエン不溶分:
pH9に調製した共重合体ラテックスを130℃で30分間乾燥し、乾燥物(ラテックスフィルム)を得た。このラテックスフィルム0.5gをトルエン30mlと混合して3時間振とうした後、目開き32μmの金属網にてろ過し、残留物の乾燥質量を秤量した。もとのラテックスフィルム質量に対する残留物の乾燥質量の割合をトルエン不溶分(質量%)とした。
(2)ガラス転移温度:
pH9に調製した共重合体ラテックスを130℃で30分間乾燥し、乾燥物を得た。示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製;DSC6220)を使用し、ASTM法(D3418−97)に従い、温度−120℃から+160℃まで、20℃/min.の速度で昇温し、本発明共重合体ラテックスの示差走査熱量曲線を得て、ガラス転移温度を求めた。
(3)共重合体ラテックスの数平均粒子径:
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により、光散乱光度計(シーエヌウッド社製、モデル6000)を用いて、初期角度45度−測定角度135度で測定した。
(4)防錆性評価:
アセトンで洗浄した鉄板(SPCC−SD、0.8mm×70mm×150mm)に、乾燥膜厚が30μmとなるよう各共重合体ラテックスを含む塗料組成物を塗布し、熱風乾燥機を用いて、60℃で20分間乾燥し、乾燥塗膜を得た。乾燥塗膜にカッターナイフを用いてクロスカットを入れた。この場合、鉄板と乾燥塗膜との界面までナイフが入るようにした。5%の塩化ナトリウム水溶液中にクロスカットを入れた乾燥塗膜を入れ、23℃で1週間浸漬した。防錆性を以下に示す方法で判定した。防錆性は△以上であることが好ましい。より好ましくは○である。
○:カット部の錆の発生幅が片側2mm以内
△:カット部の錆の発生幅が片側3〜5mm
×:カット部の錆の発生幅が片側5mm以上
(5)密着性
アセトンで洗浄した鉄板(SPCC−SD、0.8mm×70mm×150mm)に、乾燥膜厚が30μmとなるよう各共重合体ラテックスを含む塗料組成物を塗布し、熱風乾燥機を用いて、60℃で20分間乾燥し、乾燥塗膜を得た。乾燥塗膜の表面に、カッターナイフを用いて等間隔で1mmクロスカットを入れた。この場合、鉄板と乾燥塗膜との界面までナイフが入るようにした。次にクロスカット部の中心にセロハンテープを貼り付け、セロハンテープを一定の力で引き剥がした。引き剥がした後の乾燥塗膜の状態を目視にて観察し、以下に示す基準で評価した。密着性は△以上であることが好ましい。より好ましくは○である。
○:1mmクロスカット部が鉄板上に全て残っていた。
△:1mmクロスカット部が一部剥がれていた。
×:1mmクロスカット部が半分以上剥がれていた。
(6)温冷繰返し後の密着性:
アセトンで洗浄した鉄板(SPCC−SD、0.8mm×70mm×150mm)に、乾燥膜厚が30μmとなるよう各共重合体ラテックスを含む塗料組成物を塗布し、熱風乾燥機を用いて、60℃で20分間乾燥し、乾燥塗膜を得た。乾燥塗膜にカッターナイフを用いてクロスカットを入れた。この場合、鉄板と乾燥塗膜との界面までナイフが入るようにした。次に乾燥塗膜について、23℃3時間→60℃3時間を1サイクルとする温冷繰返し試験を10サイクル行った後、乾燥塗膜の鉄板からのハガレやヒビ割れを観察した。ハガレやヒビ割れがあるものを×と判定した。乾燥塗膜の鉄板からのハガレやヒビ割れがないものは、さらにクロスカット部の中心にセロハンテープを貼り付け、セロハンテープを一定の力で引き剥がした。引き剥がした後の乾燥塗膜の状態を目視にて観察し、ハガレやヒビ割れがないものを○、ハガレやヒビ割れがあるものを△で判定した。温冷繰返し後の密着性は△以上であることが好ましい。より好ましくは○である。
(7)乾燥性:
アセトンで洗浄した鉄板(SPCC−SD、0.8mm×70mm×150mm)に、乾燥膜厚が30μmとなるよう各共重合体ラテックスを含む塗料組成物を塗布し、熱風乾燥機を用いて、温度60℃、湿度20%で5分間乾燥した。乾燥後、塗膜の中央を指先で軽く触れて、指先の汚れ状態を観察し、以下の基準で判定した。乾燥性は△以上であることが好ましい。より好ましくは○である。
○:指先が汚れない
△:指先の一部が汚れる
×:指先の全面が汚れる
(8)塗料安定性:
アセトンで洗浄した鉄板(SPCC−SD、0.8mm×70mm×150mm)に、乾燥膜厚が30μmとなるよう各共重合体ラテックスを含む塗料組成物を塗布した。塗布した塗料組成物中に、凝集物があるかを目視で観察し、以下の基準で判定した。塗料安定性は△以上であることが好ましい。より好ましくは○である。
○:塗料組成物中に凝集物がない
△:塗料組成物中に凝集物が10箇所以下ある
×:塗料組成物中に凝集物が10箇所以上ある
【0065】
[製造例A1]
耐圧反応容器に重合初期原料として水75質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1質量部、イタコン酸0.1質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、80℃にて十分に攪拌した。次いで、表1記載の単量体混合物と連鎖移動剤との混合物(以下、「単量体等混合物」と略記する)を、6時間かけてこの耐圧容器内に連続的に添加した。一方、単量体等混合物の添加開始から10分後より、水20質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.1質量部からなる水系混合物の添加を開始し、重合反応を開始させた。この水系混合物については、6時間50分かけて連続的に添加した。
【0066】
水系混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を90℃に昇温させ、重合反応を継続させて重合転化率を高めた。重合反応を終了した時の重合転化率は95%以上であった。
【0067】
この共重合体ラテックスに、水酸化アンモニウムを添加してpHを9.0に調整し、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、水性防錆塗料用共重合体ラテックスA1を得た。水性防錆塗料用共重合体ラテックスA1の各物性の評価結果を表1に記載する。
【0068】
[製造例A2、A4−A13、B2−B4]
重合初期原料、単量体等混合物、水系混合物の組成を、表1に記載した通りに変更した事以外は、全て製造例A1と同じ手順で水性防錆塗料用共重合体ラテックスA2、A4−A13、B2−B4を製造した。これらの各物性の評価結果を表1に記載する。
【0069】
[製造例A3]
耐圧反応容器に重合初期原料として水75質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1質量部、数平均粒子径40nmのポリスチレン製シードラテックス0.2質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、80℃にて十分に攪拌した。次いで、表1記載の単量体等混合物を、6時間かけてこの耐圧容器内に連続的に添加した。一方、単量体等混合物の添加開始から10分後より、水20質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.1質量部からなる水系混合物の添加を開始し、重合反応を開始させた。この水系混合物については、6時間50分かけて連続的に添加した。
【0070】
水系混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を90℃に昇温させ、重合反応を継続させて重合転化率を高めた。重合反応を終了した時の重合転化率は95%以上であった。
【0071】
この共重合体ラテックスに、水酸化アンモニウムを添加してpHを9.0に調整し、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、水性防錆塗料用共重合体ラテックスA3を得た。水性防錆塗料用共重合体ラテックスA3の各物性の評価結果を表1に記載する。
【0072】
[製造例A14、B1]
重合初期原料、単量体等混合物、水系混合物の組成を、表1に記載した通りに変更した事以外は、全て製造例A3と同じ手順で水性防錆塗料用共重合体ラテックスA14、B1を製造した。これらの各物性の評価結果を表1に記載する。
【0073】
[実施例1]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスA1と以下の構成材料とを使用し、均一に混合して水性防錆塗料組成物を調製した。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
共重合体ラテックス(A1) 100質量部
増粘剤 0.3質量部
なお、増粘剤としては商品名SNシックナー634(サンノプコ社製)を使用した。この水性防錆材の固形分濃度は約50%であった。
【0074】
次いで、このようにして得られた水性防錆塗料組成物を、上記(4)から(8)に記載の条件で、塗布、乾燥し、防錆性、密着性、温冷繰返し後の密着性、乾燥性、及び塗料安定性の評価を行った。結果を表2に記載する。
【0075】
実施例1で得られた塗膜は、防錆性、密着性、温冷繰返し後の密着性、乾燥性、塗料安定性をバランスよく両立する塗膜であった。
【0076】
[実施例2〜14]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスをA1に代えてA2〜A14に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で水性防錆塗料組成物を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表2に記載する。実施例2〜14で得られた塗膜は、防錆性、密着性、温冷繰返し後の密着性、乾燥性、塗料安定性をバランスよく両立する塗膜であった。
【0077】
[比較例1]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスをA1に代えてB1に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で水性防錆塗料組成物を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表2に記載する。比較例1で得られた塗膜は、温冷繰返し後の密着性が劣る塗膜であった。
【0078】
[比較例2]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスをA1に代えてB2に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で水性防錆塗料組成物を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表2に記載する。比較例2で得られた塗膜は、防錆性が劣る塗膜であった。
【0079】
[比較例3]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスをA1に代えてB3に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で水性防錆塗料組成物を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表2に記載する。比較例3で得られた塗膜は、温冷繰返し後の密着性、塗料安定性が劣る塗膜であった。
【0080】
[比較例4]
水性防錆塗料用共重合体ラテックスをA1に代えてB4に変更した事以外は、全て実施例1と同じ条件で水性防錆塗料組成物を調製し、乾燥させて塗膜を形成させた。結果を表2に記載する。比較例4で得られた塗膜は、防錆性、乾燥性が劣る塗膜であった。
【表1−1】


【表1−2】


【表2】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の水性防錆塗料用共重合体ラテックスは、防錆性、基材との密着性等に優れた水性防錆塗料を実現し得るので、産業の各分野において、高い利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共役ジエン系単量体1.0質量部〜60.0質量部、(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体((a)共役ジエン系単量体に該当するものを除く)0.5質量部〜10.0質量部、及び(c)1種又は複数種の他の共重合可能な単量体30.0質量部〜98.5質量部(ただし、(a)+(b)+(c)=100.0質量部)からなる単量体混合物を乳化重合して得られる水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
【請求項2】
前記単量体混合物100質量部中の(c1)エチレン系不飽和カルボン酸単量体含有量が0〜1.4質量部である、請求項1記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
【請求項3】
前記単量体混合物100質量部中の(c1)エチレン系不飽和カルボン酸単量体含有量が0〜1.0質量部である、請求項1又は2記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
【請求項4】
前記単量体混合物100質量部中に、前記(b)ヒドロキシアルキル基を有する単量体を1.0質量部〜9.0質量部含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性防錆塗料用共重合体ラテックスを含む水性防錆塗料。

【公開番号】特開2012−236876(P2012−236876A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105200(P2011−105200)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】