説明

無線ワイヤーロック錠

【課題】 工事現場、倉庫、自転車、オートバイ、自動販売機等に使用するワイヤーロック錠においてワイヤーが切断された時に警報を発し、盗難を断念させると共に管理者に知らせる事ができるセキュリティーシステムを提供する。
【解決手段】 ワイヤーに電流を流し切断を検出する電子回路と無線通信機能を備えたワイヤーロック錠と、無線通信機能と警報機能を備えた遠隔警報装置と、無線通信機能と電気通信回線に接続して電子メールを送信する外部通信機能を備えた管理装置からなるシステムを構成し、ワイヤーが切断されたワイヤーロック錠は、切断情報を無線で遠隔警報装置と管理装置に通知する。知らせを受けた警報装置は、警報音で犯人を威嚇すると共に周囲に異常を通報し、知らせを受けた管理装置は、電気通信回線を通じて切断情報を管理者宛に電子メールを送信する盗難防止システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場、倉庫、自転車、オートバイ、自動販売機等の盗難防止具として使用するワイヤーロック錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
盗難防止用のワイヤーロック錠は、特開2001−65219、実用新案登録第3024157号に示されるワイヤー錠、実開昭63−201174号に示される自転車錠の公知例があり、若干長のワイヤーロープからなるロープ体の両端に、相互に嵌合できる錠止部材を設けた基本形態を有し、そのロープ体を丸めて車輪に通して車体に巻き掛けして車輪を回転不能に施し、盗難防止を図るようになっている。
【0003】
上記ワイヤーは、容易に切断されないように鋼鉄製ワイヤーや金属製チェーンなど材質や形状が工夫されているが、近年ではワイヤーの切断を電気信号で検出し警報を鳴らし犯人を威嚇する機能を有する盗難防止具(特開2001−342771等)が考案されている。
【0004】
このようなワイヤーロック錠は、機械的強度を高めることによる盗難抑止効果や警報音などで犯人を威嚇する機能を有するものであり、構造が単純であることから応用範囲は広い。しかし施錠対象が大規模建設工事現場や倉庫の出入り口の場合、施錠箇所が広範囲に複数存在するため、威嚇の警報音はかなりの大音量が必要となり、施錠箇所と離れたところに警報装置を設置することも必要とされる。
【0005】
更に異常発生を施錠箇所から離れた管理事務所に知らせるたり、夜間や休業日などは現場に不在の管理責任者へ盗難発生を電子メールなどで伝えるための通信機能が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、無線で遠隔監視を行うセキュリティーシステムとして使用できるワイヤーロック錠を提供し、施錠箇所から離れた場所に警報装置を設置可能にして、離れた場所にある管理事務所等への通報や電子メール送信などを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では以下の手段をもって上記課題を解決する。ワイヤーとして同軸ケーブルまたはシールドケーブルを用い、その片端または両端に同軸コネクタを接続して本体との脱着を容易にし、前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルが本体に接続された状態でその一端の中心導体とシールド導体間に電圧が印加され、もう一端には負荷抵抗が接続され、本体内に前記負荷抵抗に生じる電圧を監視することで前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルの接続状態(接続、切断、短絡)を判定する電子回路と判定結果を無線で通知するための無線通信機能を備えたことを特長とするワイヤーロック錠とする。
【0008】
前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルをチェーンに絡ませるように通し、耐久性および切断強度を増強することもある。
【0009】
前記同軸コネクタが容易に外されないようにロック機構を設けることもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数のワイヤーロック錠の状態を施錠箇所から離れた所で監視可能であり、管理者が現場に不在のときでも電子メールなどで状態を確認できる。また施錠箇所から離れたところにも警報装置を設置できるので広範囲に警報音を伝えられる。本発明のワイヤーロック錠と管理装置、警報装置、中継装置などを組み合わせて設置が容易で広範囲にわたる施錠箇所の管理が可能なセキュリティーシステムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0011】
以下に本発明の詳細を具体的事例で説明する。図1は、本発明のワイヤーロック錠の外観を示したものである。図1で1はワイヤーとなる同軸ケーブルまたはシールドケーブル、2は本体、3は同軸コネクタ、4は同軸リセプタクルである。
【0012】
図7は、本発明のワイヤーロック錠を使用した基本システムを示している。施錠対象物にワイヤー(同軸ケーブルまたはシールドケーブル1)を通して同軸コネクタ3と同軸リセプタクル4を嵌合させ、無線を介して管理装置14から施錠信号を送信することで施錠が完了する。解錠は、管理装置14から解除信号を送信した後同軸コネクタ3と同軸リセプタクル4の嵌合を解く。
【0013】
施錠状態で同軸ケーブルまたはシールドケーブル1が切断されると本体に内蔵された検出回路が動作し無線で管理装置14および警報装置15に異常を通報する。管理装置14は、電気通信回線に接続されており、自動的にあらかじめ設定されたメールアドレスへ異常を知らせる電子メールを送信する。警報装置15は、大音量の警報音を発する。
【0014】
これらの機器間は、無線で通信しているので電波の届く範囲内であれば設置場所を制限しない。また図には示していないが、中継装置を使って無線の届く範囲を拡大することもできる。これらの各装置は、電波の届く範囲内に複数存在してもかまわない。無線を使用することで配線の手間が不要なので設置場所の変更も容易である。
【0015】
設置の一例を挙げると、工事現場の複数あるゲートに本発明のワイヤーロック錠を設置して、事務所に管理装置14を設置する。現場には警報装置15も設置する。現場責任者は、携帯電話で管理装置14からの電子メールを受け取れるように設定しておく。現場の最終退場者は、ゲートにワイヤーロック錠をかけた後、管理装置14から施錠のための制御信号を送信して退場する。万一ゲートのワイヤーが切断された場合は、現場責任者へ電子メールで異常が通報される。また現場に設置した警報装置が大音量で威嚇、通報する。
【0016】
図2に示すのは、本発明のワイヤーロック錠のブロックダイヤグラムである。この図を使って異常検出の動作原理を説明する。電源回路9の電圧を本体外部に接続された同軸ケーブル1を介して電圧検出回路5に入力する。電圧検出回路5で基準電圧11と同軸ケーブル1からの電圧を比較し、その結果をCPU6が異常と判断した場合は、無線トランシーバー7により通信を行う。無線トランシーバー7は、管理装置との間で施錠、解錠などの制御信号の通信も行う。
【0017】
図3で電圧検出回路5の詳細な動作を説明する。同軸ケーブルまたはシールドケーブル1を介して供給される電源電圧は、抵抗R1(16)と抵抗R2(17)で分圧されて電圧比較器18のプラス入力に接続される。電圧比較器18のマイナス入力には基準電圧11が入力される。
【0018】
一例として基準電圧を電源電圧Vの1/2、抵抗R1(16)と抵抗R2(17)の抵抗比を1:2とすると、同軸ケーブル1が正常に接続されているとき電圧比較器18のプラス入力はV×R2/(R1+R2)=V×2/3、マイナス入力はV×1/2であるから2/3>1/2となり電圧比較器18の出力はHiになる。同軸ケーブル1が切断されたり外部導体と内部導体がショートしたとき電圧比較器18のプラス入力電圧は0ボルトになるので、0<1/2となり電圧比較器18の出力はLoになる。従って電圧比較器18の出力レベルによって同軸ケーブル1の状態を監視できる。
【0019】
前記の動作原理でワイヤーは、同軸ケーブルまたはシールドケーブルである必要はなく単芯の電線でよい。しかし単芯電線の場合、被覆を剥がして心線を露出させ別の電線を使って電気の流れをバイパスさせることは比較的容易に行えるため、防犯のレベルが低下する。本発明は、この点に着目しワイヤーとして同軸ケーブルやシールドケーブルの2芯ケーブルを使用した。
【0020】
これらのケーブルは、被覆に加えて外部導体である偏組線が心線を覆っているため、心線を露出させることは容易ではない。また心線を露出させる過程でナイフや針などなどの金属物が外部導体と心線をショートした場合でも電圧比較器18の出力がLoになり異常として検出できるので不正な解錠を通報できる可能性が高い。
【0021】
同軸ケーブルまたはシールドケーブルは、ニッパーなどの工具によって容易に切断できるため短時間で不正解錠される可能性がある。そこで図6のようにチェーンに同軸ケーブルを絡ませるように通すことによって機械的強度を増強し不正解錠に要する時間を長くすることができる。また見た目にも切断が容易でないことを示すことで不正解錠の抑止効果も期待できる。
【0022】
図4に示すようなロック機構12を追加することで同軸コネクタ3と同軸リセプタクル4の嵌合部の強度補強と、電池蓋ネジ13の脱落を防止できる。同軸コネクタ3と同軸リセプタクル4を嵌合した後、ロック機構12を図のように回転させて嵌合部と電池蓋ネジ13を覆うように取付ける。ロック機構12の溝は、同軸コネクタ3のツバ(図中で斜線で示した部分)の直径より小さくしてあるので、取付けた後は図5に示すように同軸コネクタ3のツバがロック機構12で押さえられて同軸リセプタクル4から容易に抜けないようにできる。電池蓋ネジ13もロック機構12で前面から押さえられるので脱落が防止できる。
【0023】
ワイヤーロック錠は、屋外でも使用されるため、本体2、同軸コネクタ3および同軸リセプタクル4には防水機能を有するものを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 無線ワイヤーロック錠の外観
【図2】 本体ブロックダイヤグラム
【図3】 電圧検出回路
【図4】 ロック機構概略図
【図5】 ロック機構詳細図
【図6】 チェーンによる補強
【図7】 セキュリティーシステム概略図
【符号の説明】
【0025】
1 同軸ケーブルまたはシールドケーブル
2 本体
3 同軸コネクタ
4 同軸リセプタクル
5 電圧検出回路
6 CPU
7 無線トランシーバー
8 アンテナ
9 電源回路
10 電池
11 基準電圧
12 ロック機構
13 電池蓋ネジ
14 管理装置
15 警報装置
16 抵抗R1
17 抵抗R2
18 電圧比較器
19 チェーン
20 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で遠隔監視を行うセキュリティーシステムに使用するワイヤーロック錠であり、ワイヤーとして同軸ケーブルまたはシールドケーブルを用い、その片端または両端に同軸コネクタを接続して本体との脱着を容易にし、前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルが本体に接続された状態でその一端の中心導体とシールド導体間に電圧が印加され、もう一端には負荷抵抗が接続され、本体内に前記負荷抵抗に生じる電圧を監視することで前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルの接続状態(接続、切断、短絡)を判定する電子回路と判定結果を無線で通知するための無線通信機能を備えたことを特長とするワイヤーロック錠。
【請求項2】
前記同軸ケーブルまたはシールドケーブルをチェーンに絡ませるように通し、耐久性および切断強度を増強した請求項1のワイヤーロック錠。
【請求項3】
前記同軸コネクタが容易に外されないようにロック機構が設けられた請求項1のワイヤーロック錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−196451(P2010−196451A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65156(P2009−65156)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(593036051)ジーコム株式会社 (20)