説明

蒸気タービン発電プラント及びその運転方法

【課題】本発明は、大幅な改造や設計の見直しを行うことなく、最低負荷をさらに引下げて運転モードの拡大を行うことができる蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【解決手段】本発明は、復水器10の真空度を調整する復水器真空度調整装置22を、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転中に、最低負荷の引下げ指令があったときに、前記復水器10内に空気を注入するように構成したのである。
このように、復水器10の真空度を故意的に低下させることで、蒸気タービン発電プラントのボイラ1の蒸発量を増加させてボイラの最低給水流量を確保し、最低負荷をさらに引下げることを可能としたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービン発電プラント及びその運転方法に係り、特に、抽出空気配管を介して復水器内に空気を給排することで復水器内の真空度を制御して蒸気タービンのラビング振動を防止し、かつ発電プラントの最低運用負荷を引下げ得る蒸気タービン発電プラント及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービン発電プラントにおいて、部分負荷運用時や、冷却水が低下する冬季運転時には、復水器の真空度が定格真空度以上の高真空度に達してタービンケーシング等を負圧によって変形させることがある。そのため、タービンラビング振動が発生し、タービントリップに至ることがある。このような高真空度に復水器内が至らないように、例えば特許文献1に示すように、復水器の真空度を調整する真空度調整装置を設けている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−113294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術は、復水器の高真空による蒸気タービンのラビング振動防止を主とするものであり、運転モードの拡大についての配慮がなされていなかった。即ち、近年、蒸気タービン発電プラントの運用負荷の増大を図るために、最高負荷と最低負荷を定めた通常モードの運転を行うように定められていても、最低負荷をさらに引下げる要求がある。そのために、蒸気タービン発電プラントの各部の大幅な改造や設計の見直しが必要になる問題がある。
【0005】
本発明の目的は、大幅な改造や設計の見直しを行うことなく、最低負荷をさらに引下げて運転モードの拡大を行うことができる蒸気タービン発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、復水器の真空度を調整する復水器真空度調整装置を、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転中に、最低負荷の引下げ指令があったとき、前記復水器内に空気を注入するように構成したのである。
【0007】
このように、復水器の真空度を故意的に低下させることで、蒸気タービン発電プラントのボイラの蒸発量を増加させてボイラの最低給水流量を確保し、最低負荷をさらに引下げることを可能としたのである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、大幅な改造や設計の見直しを行うことなく、最低負荷をさらに引下げて運転モードの拡大を行うことができる蒸気タービン発電プラントを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明による蒸気タービン発電プラントの一実施の形態を図1及び図2に示す再生・再熱式蒸気タービン発電プラントに基づいて説明する。
【0010】
本実施の形態による蒸気タービン発電プラントは、大きくは、ボイラ1と、高圧タービン2と、この高圧タービン2と同軸の中圧タービン3及び低圧タービン4A,4Bと、前記高圧タービン2と同軸の発電機5とより構成されている。
【0011】
前記ボイラ1で発生した蒸気aは、配管6によって前記高圧タービン2に導入され、仕事をした後、一部は低温再熱蒸気bとして配管7を介してボイラ再熱器8に導入される。低温再熱蒸気bはボイラ再熱器8によって昇温され、高温再熱蒸気cとなって配管9を介して中圧タービン3に導入される。中圧タービン3で仕事をし終えた蒸気dは低圧タービン4A,4Bに導入されて仕事を行う。このように、蒸気を導入することで、高圧タービン2、中圧タービン3、低圧タービン4A,4Bは回転し、それにより発電機5を駆動して発電が行われる。低圧タービン4A,4Bで仕事をなし終えた蒸気の殆どは復水器10内に導入される。
【0012】
復水器10内に導入された蒸気は、冷却器11によって冷却され、復水eとなる。復水器10内の復水eは、復水ポンプ12にて昇圧され、配管13を経由し、低圧供給水加熱器14にて昇温される。この低圧供給水加熱器14は、低圧タービン4Aからの抽気fを配管15を介して導いて復水eを昇温させるものである。昇温された復水eは、中圧タービン3からの低温再熱蒸気gと共に脱気器16で脱酸素後、ボイラ給水ポンプ17で昇圧され、さらに、前記低温再熱蒸気bにより加熱される第2高圧給水加熱器18及び高圧タービン2からの抽気hにより加熱される第1高圧給水加熱器19で昇温された後、ボイラ1に給水される。
【0013】
一方、前記復水器10は、抽出空気配管20を介して連結された空気抽出器21により、抽気することで所定の真空度を維持するようにしている。さらに、前記空気抽出器21の上流側の抽出空気配管20には、復水器真空度調整装置22が設けられており、部分負荷運用時や冷却水が低下する冬季運転時における復水器10の真空度の変化を調整している。
【0014】
前記復水器真空度調整装置22は、空気吸込み口23を先端に備えた空気吸込み管24を前記抽出空気配管20の前記空気抽出器21よりも上流側に連結しており、この空気吸込み管24には復水器真空調整弁25と復水器真空調整止弁26とが空気流入方向の順に設けられている。前記復水器真空調整弁25は、圧力調整器27と圧力発信器28とによって開度を調整され、前記復水器真空調整止弁26は前記復水器真空調整弁25と電気的又は機械的に連動して開閉すると共に、緊急時には圧力スイッチ29の作動に伴って全閉するようにしている。前記圧力発信器28と圧力スイッチ29とは、配管30を介して復水器10内の圧力によって作動するように構成されている。
【0015】
上記構成の復水器真空度調整装置22の運転は、図2及び図3に示すように、蒸気タービン発電プラントの通常運転時には、復水器10の真空度を維持するために、復水器10の胴体から抽出空気配管20を経由して空気抽出装置21によって復水器10内部の非凝縮ガスや微少な空気漏れを外部に放出している。一方、復水器10内の真空度が定格真空度以上の第1高真空度(例えば735mmHg)に達したことを圧力発信器28が検出すると、圧力発信器28は圧力調整器27を介して復水器真空調整弁25に開指令を与えて開かせ、さらに第1高真空度を超えて第2高真空度(例えば740mmHg)になった場合には、復水器真空調整弁25を全開するように弁開度を制御するように構成されている。このような復水器真空調整弁25に連動して復水器真空調整止弁26の開度も制御される。他方、復水器10内の真空度制御が不調となって真空度が低下した場合には、真空極低トリップを回避するために、圧力スイッチ29によって、復水器真空調整弁25との連動よりも優先させて復水器真空調整止弁26を強制的に閉じさせる(保護インターロック)。
【0016】
以上が予め設定された最高負荷(100%)と最低負荷(例えば30%)の範囲で運転が行われる第1運転である。
【0017】
次に、上記第1運転中に最低負荷を引下げて運転することの要求があった場合の第2運転について、図4及び図5に基づいて説明する。
【0018】
図3に示す通常運転モードでの第1運転をしているとき(図5のS10)に、通常運転モードで定めた最低負荷30%を、さらに引下げて例えば25%となるように、最低負荷運転の変更指示があった場合(図5のS11)には、25%の最低負荷運用モードの切替えを手動あるいは自動的に行う(図5のS12)。この切替えにより、例えば50%負荷以下である48%負荷から要求された25%負荷の間を真空度可変設定範囲となるように前記復水器真空調整弁25を開いて復水器10内へ空気を流入させて真空度を低下させる(図5のS13)。そして、変更要求があった25%の最低運用負荷に達したら、復水器真空調整弁25の開状態を維持する(図5のS14)。このように、復水器10の真空度を低下させることで、ボイラ1への給水流量を多くすることができ、設定された最低負荷をさらに引下げることができる。
【0019】
このように、最低負荷の引下げ要求があった場合、復水器真空度調整装置22の復水器真空調整弁25を開いて復水器10の真空度を低下させることで、ボイラ1への給水流量を多くすることができるので、引下げた最低負荷での運転が可能となるのである。
【0020】
このように、最低負荷の引下げ要求に応じた運転中に、当所設定された通常運転範囲での運転に復帰する要求があった場合には、復水器真空調整弁25を閉じて空気抽出装置21を駆動させ、復水器10内の空気を抽出して所定の真空度に戻すことで復帰することができる。この復帰運転が本発明による第3の運転になる。
【0021】
尚、復水器10の真空度の低下させるため一例として、48%負荷〜25%負荷の間を真空度可変設定範囲となるように前記復水器真空調整弁25を開いて復水器10内へ空気を流入させるようにしたが、蒸気タービン発電プラントの容量や構成機器によっては、前記真空度可変設定範囲が48%負荷〜25%負荷以外になることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による蒸気タービン発電プラントの一実施の形態を示すブロック図。
【図2】図1に示された復水器真空度調整装置の詳細図。
【図3】図1に示された蒸気タービン発電プラントの通常運転モードにおける復水器真空度設定図。
【図4】図1に示された蒸気タービン発電プラントの最低負荷引下げ後の運転モードにおける復水器真空度設定図。
【図5】図1に示された蒸気タービン発電プラントの最低負荷引下げ運転を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0023】
1…ボイラ、2…高圧タービン、3…中圧タービン、4A,4B…低圧タービン、5…発電機、8…ボイラ再熱器、10…復水器、11…冷却器、14…低圧供給水加熱器、16…脱気器、17…ボイラ給水ポンプ、18…第2高圧給水加熱器、19…第1高圧給水加熱器、20…抽出空気配管、21…空気抽出器、22…復水器真空度調整装置、23…空気吸込み口、24…空気吸込み管、25…復水器真空調整弁、26…復水器真空調整止弁、27…圧力調整器、28…圧力発信器、29…圧力スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水器を備えた蒸気タービン発電設備と、前記復水器内から抽出空気配管を介して空気を抽出する空気抽出装置と、この空気抽出装置の上流側の前記抽出空気配管に接続され前記復水器の真空度を調整する復水器真空度調整装置とを有する蒸気タービン発電プラントにおいて、前記復水器真空度調整装置は、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転中に、最低負荷の引下げ指令があると、前記復水器内に空気を注入して前記最低負荷より低負荷での運転が行われるように構成されていることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項2】
復水器を備えた蒸気タービン発電設備と、前記復水器内から抽出空気配管を介して空気を抽出する空気抽出装置と、この空気抽出装置の上流側の前記抽出空気配管に接続され前記復水器の真空度を調整する復水器真空度調整装置とを有する蒸気タービン発電プラントにおいて、前記復水器真空度調整装置は、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転中に、最低負荷の引下げ指令があると、前記復水器内に空気を注入して前記最低負荷より低負荷での運転が行われるように構成されており、また前記空気抽出装置は、前記最低負荷より低負荷での運転が行われるときに、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転する指令があると、前記復水器内の空気を抽出するように構成されていることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項3】
復水器を備えた蒸気タービン発電設備と、前記復水器内から抽出空気配管を介して空気を抽出する空気抽出装置と、この空気抽出装置の上流側の前記抽出空気配管に接続され前記復水器の真空度を調整する復水器真空度調整装置とを有する蒸気タービン発電プラントの運転方法において、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転する第1運転と、この第1運転中に、最低負荷の引下げ指令があると、前記復水器真空度調整装置によって前記復水器内に空気を注入して前記最低負荷より低負荷で運転する第2運転とで運転することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの運転方法。
【請求項4】
復水器を備えた蒸気タービン発電設備と、前記復水器内から抽出空気配管を介して空気を抽出する空気抽出装置と、この空気抽出装置の上流側の前記抽出空気配管に接続され前記復水器の真空度を調整する復水器真空度調整装置とを有する蒸気タービン発電プラントの運転方法において、予め設定された最高負荷と最低負荷の範囲で運転する第1運転と、この第1運転中に、最低負荷の引下げ指令があると、前記復水器真空度調整装置によって前記復水器内に空気を注入して前記最低負荷より低負荷で運転する第2運転と、この第2運転中に、前記第1運転に復帰する指令があると、前記空気抽出装置を駆動して前記復水器内の空気を抽出して前記第1運転に復帰する第3運転とで運転することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312882(P2006−312882A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134939(P2005−134939)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)