説明

車両用空調制御装置

【課題】本発明は、個々のユーザの好みに合わせた制御を簡単に行うことを目的としている。
【解決手段】このため、空調に対するユーザ嗜好に関する質問内容を表示する表示部と、この表示部により表示された質問内容への回答を入力する操作部と、この操作部により入力された回答を取得し、この回答を空調設定に反映して空調を制御する制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用空調制御装置に係り、特に個々のユーザの好みに合わせた制御を簡単に行う車両用空調制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の空調制御(「AUTO A/C制御」ともいう。)は、車両メーカーの設計者が快適と思われる適合値を設定している。
このため、ユーザは設計者が快適と思われる制御内容に従うか、マニュアル操作モードで風量、モード、吹出し温度などを個別に変更し、ユーザ自身が快適であると思われる状態に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−213143号公報
【特許文献2】特開2002−12099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用空調制御装置において、クレームをつけるユーザに対してユーザ各々の好みに合わせた変更を行うという概念(以下、「カスタマイズ設定」ともいう。)は従来から存在するが、ユーザ自身での設定はできず、ディーラーによる特殊操作にて対応することが通常であった。
このような問題に対する解決策として、ユーザによる風量、設定温度スイッチ操作により、快適となる目標値、風量などを学習させていく方法が存在する。
しかし、近年において発展しているカーシェアリングのような、ユーザの入れ替わりが発生する状況においては、ユーザ毎の体感評価やスイッチ操作内容を記憶し、学習することが困難であるという不都合がある。
また、学習機能については、ユーザのスイッチ操作から学習を行うため、本当にユーザが学習機能を意識して行っているかということが明確でないため、学習を行った制御に違和感を与える可能性があるという不都合がある。
【0005】
この発明の目的は、個々のユーザの好みに合わせた制御を簡単に行い得る車両用空調制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、空調に対するユーザ嗜好に関する質問内容を表示する表示部と、この表示部により表示された質問内容への回答を入力する操作部と、この操作部により入力された回答を取得し、この回答を空調設定に反映して空調を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用空調制御装置は、個々のユーザの好みに合わせた制御をすることができる。
また、簡単な質問に対して、「はい」、「いいえ」のみで回答させるため、簡単な操作でカスタマイズを可能にしている。
特に、同一車両を複数のユーザが使用する場合でも簡単な操作でユーザの好みの制御をすることができる。
更に、学習機能のように複雑な制御と学習するまでの時間とを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の実施例を示す車両用空調制御装置の制御用フローチャートである。(実施例)
【図2】図2は車両用空調制御装置のシステム図である。(実施例)
【図3】図3は質問内容の一欄を示す図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図3はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両用空調制御装置である。
この車両用空調制御装置1は、空調(「AUTO A/C」ともいう。)2に対するユーザ嗜好に関する質問内容を表示する表示部3と、この表示部3により表示された質問内容への回答を入力する操作部4と、この操作部4により入力された回答を取得し、この回答を空調設定に反映して空調2を制御する制御部5とを備えている。
【0011】
詳述すれば、前記表示部3及び前記操作部4は、図2に示す如く、表示及び操作スイッチを用いるカーナビゲーション6や、スピードメータ7、携帯電話や携帯音楽プレイヤーなどのその他車両上で表示部、操作部がある部品8などからなる。
このとき、外部インターフェイスは特に問わない。
そして、表示機能と選択するスイッチによる操作機能とがあれば、問題はない。
また、入力、操作部では、操作モードの時の結果だけ送信すればよいため、複雑な制御は必要としない。
更に、空調制御操作部が液晶で表示できるコントローラであれば、直接の操作/表示も可能である。
【0012】
また、前記表示部3に表示される質問内容や前記操作部4により「YES」を選択した場合の動作内容を、以下のようにするとともに、図3に開示する。
なお、図3に開示される質問内容は、質問項目の一例を示すものであり、その他空調に関わる評価項目も、簡単な発問により設定可能となるよう質問に追加することが可能である。
<質問内容の一覧>
(質問1)
・ 内容−−−ユーザが「寒冷地在住」であるか否かの確認
・ 操作−−−「YES」/「NO」の判断
・ YESの場合−−−寒冷地で使用することが多い、デフ、デフ/フットモードの使用を多めにする曇り止めのため、暖房領域でのエアコン(「A/C」ともいう。)稼働率を上げる。
(質問2)
・ 内容−−−ユーザが「寒がり」であるか否かの確認
・ 操作−−−「YES」/「NO」の判断
・ YESの場合−−−設定温度表示を内部計算上、「+2」度設定とする。
(質問3)
・ 内容−−−ユーザが「暑がり」であるか否かの確認
・ 操作−−−「YES」/「NO」の判断
・ YESの場合−−−設定温度表示を内部計算上、「−2」度設定とする。
・ 備考−−−上述の(質問2)がYESの場合には、この(質問3)の処理を行わずに飛ばす。
(質問4)
・ 内容−−−ユーザが「ファン動作低減」を望んでいるか否かの確認
・ 操作−−−「YES」/「NO」の判断
・ YESの場合−−−風量の上限を下げる。
(質問5)
・ 内容−−−ユーザが「エコ(「ECO」とも記載する。)駆動」を望んでいるか否かの確認
・ 操作−−−「YES」/「NO」の判断
・ YESの場合−−−エアコンON稼働率、補助ヒータ駆動を下げる。
(質問6)
・ 内容−−−変更ユーザが「表示の設定温度表示変更」を望んでいるか否かの確認
・ 操作−−−「°C:摂氏」/「°F:華氏」表示の切替
・ YESの場合−−−「°F:華氏」で設定温度を表示する。
【0013】
前記表示部3及び前記操作部4が接続して前記空調2を制御する制御部5は、前記操作部4からユーザが入力した内容、つまり質問に対する回答をユーザ設定に反映させるとともに、保存を行う。
そして、必要に応じて、特殊ツール9によって外部出力を行う。
【0014】
従って、前記車両用空調制御装置1は、個々のユーザの好みに合わせた制御をすることができる。
また、前記車両用空調制御装置1は、簡単な質問に対して、「はい(YES)」、「いいえ(NO)」のみで回答させるため、前記操作部4の簡単な操作でカスタマイズが可能となり、使い勝手を向上させている。
そして、同一車両を複数のユーザが使用する場合でも簡単な操作でユーザの好みの制御をすることができる。
更に、学習機能のように複雑な制御と学習するまでの時間とを必要としないため、簡略な構成を維持することも可能である。
【0015】
追記すれば、前記車両用空調制御装置1は、ユーザの回答を前記表示部3及び前記操作部4から前記制御部5に送信し、この制御部5側で制御内容に反映させている。
そして、ユーザの意思を聞くという工程を踏んでいるため、複数のユーザの体感の差により発生する問題を防ぐことが可能となり、設計者が快適と思われる空調制御に不満を持つユーザのクレームにも対応可能である。
また、ユーザの回答を前記表示部3及び前記操作部4から通信にて前記制御部5に送信するため、従来の学習機能に必要となる時間及び複雑な制御を用いることなく、各ユーザが希望する制御結果を反映させることができる。
このとき、ユーザ側は前記表示部3に表示される簡単な質問に対して前記操作部4から「YES」または「NO」を回答するため、操作性を向上させている。
更に、車両メーカとしては、前記特殊ツール9によってユーザのデータを外部出力、つまり取り出すことにより、市場評価を取得し難い前記空調2関係のデータを得ることができる。
更にまた、現在、カーシェアリングなどのように、同一車両を複数のユーザが使用する場合やレンタカーで使用する場合などにおいても、簡単な操作で各ユーザの好みの制御を実現することが可能である。
また、車両を所有するユーザにとっては、カスタマイズ設定をユーザ自身に設定させることにより、ユーザ好みの空調制御を実現し、「他の同じ車種とは違う」という認識をユーザに持たせることが可能となり、車両に対する付加価値を付けることが可能である。
【0016】
次に、図1の車両用空調制御装置1の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0017】
前記車両用空調制御装置1の制御用プログラムがスタート(101)すると、設定モード(「設定MODE」)であるか否かの判断(102)に移行する。
そして、この設定モードであるか否かの判断(102)において、判断(102)がNOの場合には、そのまま後述する前記車両用空調制御装置1の制御用プログラムのリターン(112)に移行し、判断(102)がYESの場合には、質問1の回答に対する判断(103)に移行する。
このとき、質問1は、ユーザが「寒冷地在住」であるか否かの確認を行うためのものであるため、質問1の回答に対する判断(103)において、判断(103)がNOの場合には、
「カスタマイズ1=$0(OFF)」
とし、暖房領域でのエアコン稼働率を変化させない処理(104)に移行する。
上述の質問1の回答に対する判断(103)がYESの場合には、
「カスタマイズ1=$1(ON)」
とし、暖房領域でのエアコン稼働率を上げる処理(105)に移行する。
また、上述の処理(104)及び処理(105)の後には、質問2の回答に対する判断(106)に移行する。
このとき、質問2は、ユーザが「寒がり」であるか否かの確認を行うためのものであるため、質問2の回答に対する判断(106)において、判断(106)がNOの場合には、
「カスタマイズ2=$0(OFF)」
とし、設定温度表示を変更しない処理(107)に移行する。
上述の質問2の回答に対する判断(106)がYESの場合には、
「カスタマイズ2=$1(ON)」
とし、設定温度表示を内部計算上、「+2」度設定とする処理(108)に移行する。
更に、上述の処理(107)及び処理(108)の後には、質問2以降の質問の回答を行う。
そして、各質問に対する回答が進行した後に、質問6の回答に対する判断(109)に移行する。
このとき、質問6は、変更ユーザが「表示の設定温度表示変更」を望んでいるか否かの確認を行うためのものであるため、質問6の回答に対する判断(109)において、判断(109)がNOの場合には、
「カスタマイズ6=$0(OFF)」
とし、「°C:摂氏」表示を設定する処理(110)に移行する。
上述の質問6の回答に対する判断(109)がYESの場合には、
「カスタマイズ6=$1(ON)」
とし、「°F:華氏」表示を設定する処理(111)に移行する。
そして、上述の処理(110)及び処理(111)の後には、前記車両用空調制御装置1の制御用プログラムのリターン(112)に移行する。
【符号の説明】
【0018】
1 車両用空調制御装置
2 空調(「AUTO A/C」ともいう。)
3 表示部
4 操作部
5 制御部
6 カーナビゲーション
7 スピードメータ
8 その他車両上で表示部、操作部がある部品
9 特殊ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調に対するユーザ嗜好に関する質問内容を表示する表示部と、この表示部により表示された質問内容への回答を入力する操作部と、この操作部により入力された回答を取得し、この回答を空調設定に反映して空調を制御する制御部とを備えることを特徴とする車両用空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61930(P2012−61930A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206722(P2010−206722)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】