説明

電気掃除機

【課題】互いに逆方向に回転する一対の回転ブラシを有する床用吸込具であって、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図る電気掃除機を提供する。
【解決手段】電動送風機2を内蔵する掃除機本体1と、一端が掃除機本体1に接続されるホース5と、ホース5の他端に一端が接続される延長管9と、延長管9の他端に接続される床用吸込具14とを備え、床用吸込具14は、底面に吸込口11を有する吸込具本体10と、吸込具本体10内に形成される回転ブラシ収納室12と、回転ブラシ収納室12内に、吸込口11に臨ませて前後方向に略平行に配設され、相互に逆方向に回転する一対の回転ブラシと、回転ブラシを回転駆動する電動機とを有し、一対の回転ブラシは、床用吸込具14を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗を、床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗より大きく形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機は、床用吸込具底面に形成した吸込口に回転ブラシを臨ませ、回転ブラシの回転により被掃除面の塵埃を掻き上げて掃除機本体の集塵室内に集塵するようになっている。回転ブラシは、回転ブラシの回転により、床用吸込具を前進させる方向に推進力が作用するように構成され、使用者の掃除時の操作性を向上させるようになっている。
【0003】
しかしながら、従来の構成では、回転ブラシが一本であるため、被掃除面を一方向から掻き上げるだけであり、掃除作業性が悪いという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、床用吸込具に互いに逆方向に回転する一対の回転ブラシを配設した電気掃除機が提案された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−111449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、一対の回転ブラシによって被掃除面を二方向から掻き上げることができるようになっているが、夫々の回転ブラシによる推進力が相反する方向に作用する。そのため、夫々の回転ブラシと被掃除面との摩擦抵抗が等しいと、床用吸込具を推進する作用が生じず、使用者の掃除操作の負荷を軽減できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、互いに逆方向に回転する一対の回転ブラシを有する床用吸込具であって、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図る電気掃除機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電動送風機を内蔵する掃除機本体と、一端が掃除機本体に接続されるホースと、該ホースの他端に一端が接続される延長管と、該延長管の他端に接続される床用吸込具とを備え、前記床用吸込具は、底面に吸込口を有する吸込具本体と、該吸込具本体内に形成される回転ブラシ収納室と、該回転ブラシ収納室内に、吸込口に臨ませて前後方向に略平行に配設され、相互に逆方向に回転する一対の回転ブラシと、該回転ブラシを回転駆動する電動機とを有し、前記一対の回転ブラシは、床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗を、床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗より大きく形成したことを特徴とする。
【0009】
前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されており、前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、前記起毛布の被掃除面との摩擦抵抗が異なっていることが好ましい。
【0010】
または、前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されており、前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、前記円柱体の径が異なっていることが好ましい。
【0011】
または、前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、回転数が異なるように構成されることが好ましい。
【0012】
さらに、前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されるとともに、前記ブラシが互いに重なり合っていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1によると、床用吸込具には前方へ移動させる推進力が作用するので、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図ることができる等の効果を奏する。
【0014】
請求項2によると、円柱体に配設される起毛布によって、床用吸込具に前方へ移動させる推進力を作用させることができ、回転ブラシのブラシの種類を変える必要がないため、回転ブラシの除塵性能を損なうことなく、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図ることができる等の効果を奏する。
【0015】
請求項3によると、円柱体の径を変えることで、床用吸込具に前方へ移動させる推進力を作用させることができ、回転ブラシのブラシの種類を変える必要がないため、回転ブラシの除塵性能を損なうことなく、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図ることができる等の効果を奏する。また、同じ起毛布を円柱体に配設することができ、起毛布の取り違えによる製造不良を防止することができる等の効果を奏する。
【0016】
請求項4によると、回転ブラシの回転数を変えることで、床用吸込具に前方へ移動させる推進力を作用させることができ、回転ブラシのブラシの種類を変える必要がないため、回転ブラシの除塵性能を損なうことなく、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図ることができる等の効果を奏する。また、円柱体と、起毛布と、ブラシとを同じものとすることができ、部品の取り違えによる製造不良を防止することができる等の効果を奏する。
【0017】
請求項5によると、請求項4の効果に加えて、回転ブラシのブラシ同士が擦れ合うため、回転ブラシのブラシに塵埃が絡まることを防止することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における電気掃除機の側面図である。
【図2】同掃除機本体の断面図である。
【図3】同床用吸込具の側方から見た断面図である。
【図4】同床用吸込具の上面図である。
【図5】同床用吸込具の底面側から見た断面図である。
【図6】別の実施形態における床用吸込具の底面側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図1乃至図6に基づいて以下に詳述する。
【0020】
図1に示されるように、1は電動送風機2が内蔵される掃除機本体で、該掃除機本体1内に集塵室3が形成されている。4は前記集塵室3内に着脱自在に収納されるダストカップで、該ダストカップ4内に塵埃を集塵できるように構成されている。5は前記ダストカップ4内に連通するように一端が掃除機本体1に接続されるホースで、可撓性を有している。6は前記ホース5の他端に形成される手元側接続管で、操作パネル7を備えた把持部8が形成されている。前記手元側接続管6には、伸縮自在に構成される延長管9が接続される。
【0021】
図3乃至図5に示されるように、10は横長形状の吸込具本体で、底面に吸込口11が形成されるとともに、前記吸込具本体10内に、前記吸込口11に連通される回転ブラシ収納室12が形成されている。前記吸込具本体10の後方略中央には、前記回転ブラシ収納室12に連通され、該吸込具本体10に対して、上下動自在かつ左右方向に回動自在に構成される回動管13が配設されている。前記吸込具本体10及び前記回動管13によって、床用吸込具14が構成されており、前記回動管13を前記延長管9に接続することで、前記延長管9の他端に床用吸込具14が装着されるようになっている。
【0022】
15は前記吸込口11に臨ませて、前記回転ブラシ収納室12左右両側壁に回転自在に軸支される第一回転ブラシで、前記回転ブラシ収納室12の前方側に配置されている。前記第一回転ブラシ15は、回転軸を有する芯体16と、該芯体16の左右両端に嵌着される円柱体17とで構成される。前記芯体16外周には、螺旋状に溝が形成されており、該溝にブラシ18が挿入されている。前記円柱体17外周には、起毛布Aが巻き付けられており、床用吸込具14の移動を容易とするとともに、起毛布Aによって、被掃除面上の塵埃を除塵することができるようになっている。また、前記第一回転ブラシ15は、吸込具本体10内に配設されるモーター(図示せず)によって、図3において反時計方向に回転し、床用吸込具14を前進させる方向に回転するようになっている。
【0023】
19は前記吸込口11に臨ませて、前記第一回転ブラシ15に対して略平行となるように、前記回転ブラシ収納室12左右両側壁に回転自在に軸支される第二回転ブラシで、前記回転ブラシ収納室12後方側に配設される。前記第二回転ブラシ19は、回転軸を有する芯体20と、該芯体20の左右両端に嵌着される円柱体21とで構成される。前記芯体20外周には、前記第一回転ブラシ15の芯体20とは逆巻きの螺旋状に溝が形成されており、該溝にブラシ22が挿入されている。前記円柱体21外周には、起毛布Bが巻き付けられており、床用吸込具14の移動を容易とするとともに、起毛布Bによって、被掃除面上の塵埃を除塵することができるようになっている。前記起毛布Bは、前記起毛布Aよりも床面に対する摩擦抵抗が小さくなるように、摩擦抵抗の小さな素材で形成されている。
【0024】
前記第一回転ブラシ15と第二回転ブラシ19は、夫々のブラシ同士が噛み合うように構成されており、第一回転ブラシ15の回転に伴って第二回転ブラシ19が第一回転ブラシ15とは逆方向に回転するようになっている。
而して、第一回転ブラシ15が図3において反時計方向に回転すると、第一回転ブラシ15のブラシ18と第二回転ブラシ19のブラシ22とが噛み合うことにより、第二回転ブラシ19は第一回転ブラシ15と逆方向に回転する。起毛布Aと床面との摩擦抵抗が起毛布Bと床面との摩擦抵抗よりも大きくなるように構成されているので、床用吸込具14には前方へ移動させる推進力が作用する。
【0025】
この構成により、床面上の塵埃を効率よく掻き上げるとともに、床用吸込具14に前方へ移動させる推進力が作用するので、使用者の負荷を軽減することができ、使用者の掃除時の操作性を向上させることができる。
【0026】
尚、上記実施形態では、起毛布Aは、起毛布Bよりも摩擦抵抗の大きな素材で形成されているが、毛の長さや毛の太さを変えることで、起毛布Aの摩擦抵抗が起毛布Bの摩擦抵抗よりも大きくなるように構成してもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、起毛布Aは、床面に対する摩擦抵抗が起毛布Bよりもおおきくなるように構成されているが、図6に示すように、円柱体17と円柱体21との径を異ならせ、第一回転ブラシ15に嵌着される円柱体17の径の方が大きくなるように構成してもよい。径を大きくすることで、床面に当接する起毛布の毛の数が変わるため、第一回転ブラシ15による摩擦抵抗の方が第二回転ブラシ19よりも強くなる。この構成によっても、床用吸込具14に前方へ移動させる推進力を作用させることができる。また、同じ起毛布を使用することができるので、円柱体17または円柱体19に配設する起毛布を間違える等といった製造不良を防止することができる。
【0028】
さらに、別の実施形態として、ギアなどによって第一回転ブラシと第二回転ブラシの単位時間あたりの回転数を異ならせる減速機を配設する構成としても良い。回転数が多いほうが、推進力が強くなるので、第一回転ブラシの方が第二回転ブラシよりも回転数が多くなるように構成することで、床用吸込具14に前方へ移動させる推進力を作用させることができる。
【0029】
この構成によると、起毛布の種類や円柱体の径を変える必要がないため、例えば組み立て時などに、部品を取り違える等といった製造不良を防止することができる。さらに回転数が異なっていることで、第一回転ブラシのブラシと第二回転ブラシのブラシとが擦れ合い、回転ブラシのブラシに塵埃が絡まることを防止することができる。
【0030】
上記実施形態はすべて、第一回転ブラシ15及び第二回転ブラシ19のブラシとして、同じブラシを使用することができる構成であるため、芯体に配設されるブラシは、第一回転ブラシ15と第二回転ブラシ19とで同じものを使用することができ、被掃除面上の塵埃を効率よく除去することができる。
この構成により、回転ブラシのブラシの種類を変える必要がないので、回転ブラシの除塵性能を損なうことなく、床用吸込具の推進作用により使用者の負荷の軽減を図ることができる
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、二本の回転ブラシを備えた床用吸込具を有する電気掃除機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 掃除機本体
2 電動送風機
3 集塵室
4 ダストカップ
5 ホース
6 手元側接続管
7 操作パネル
8 把持部
9 延長管
10 吸込具本体
11 吸込口
12 回転ブラシ収納室
13 回動管
14 床用吸込具
15 第一回転ブラシ
16 芯体
17 円柱体
18 ブラシ
19 第二回転ブラシ
20 芯体
21 円柱体
22 ブラシ
A 起毛布
B 起毛布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵する掃除機本体と、一端が掃除機本体に接続されるホースと、該ホースの他端に一端が接続される延長管と、該延長管の他端に接続される床用吸込具とを備え、
前記床用吸込具は、底面に吸込口を有する吸込具本体と、該吸込具本体内に形成される回転ブラシ収納室と、該回転ブラシ収納室内に、吸込口に臨ませて前後方向に略平行に配設され、相互に逆方向に回転する一対の回転ブラシと、該回転ブラシを回転駆動する電動機とを有し、
前記一対の回転ブラシは、床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗を、床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシの被掃除面との摩擦抵抗より大きく形成したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されており、
前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、前記起毛布の被掃除面との摩擦抵抗が異なることを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されており、
前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、前記円柱体の径が異なることを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記床用吸込具を前方向に進行させる回転方向の回転ブラシと、前記床用吸込具を後方向に進行させる回転方向の回転ブラシとで、回転数が異なるように構成されることを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記一対の回転ブラシはともに、ブラシが配設される芯体と、該芯体の左右両端に嵌着され、床面との接触面に起毛布が配設される円柱体とで構成されるとともに、前記ブラシが互いに重なり合うことを特徴とする請求項4記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16470(P2012−16470A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155450(P2010−155450)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】