説明

α−アミノケトン化合物の製造方法

【課題】α−アミノケトン化合物を高収率で高選択的に効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】銅、ニッケル、ルテニウム、アルミニウム及び鉄からなる群から選ばれる一種以上の金属成分を含む触媒(A)の存在下で、3価以上の多価アルコール(B)と第2級アミン化合物(C)とを反応させるα−アミノケトン化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールと第2級アミン化合物とを反応させるα−アミノケトン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−アミノケトン化合物の製造方法として、2−ハロケトン類とアミンとの反応が知られているが、一般的に収率が低い(例えば、特許文献1、非特許文献1)。そこで、副反応を抑制し収率を向上すべく様々な手法が開発されている。特許文献2では、水とアルコールの混合溶媒を用い、溶媒中の2−ハロケトンとアミンのモル比を調整して反応させる方法が開示されている。特許文献3では、アルコール系溶媒を除く種々の有機溶媒中、−30℃〜溶媒の沸点未満の低温で反応させることにより、副反応抑制並びに収率向上が可能であることが開示されている。
【0003】
一方で、2−ハロケトン類を出発原料とせずにα−アミノケトン化合物を製造する方法も開発されており、特許文献4では有機スルフィドと第1級又は第2級炭素原子に結合している脱離基を有する遊離体(ベンジルハライド)とを反応させて形成したスルホニウム塩をケトンと反応させ、得られたオキシランとアミンとの反応からα−アミノアルコールを形成した後、選択的に酸化する工程により、α−アミノケトンを製造する方法が開示されている。
【0004】
また、アルコールとアミンを出発原料とし、金属触媒を用いてアミノ化合物を製造するアルコール法アミン製造法が知られており、その中でも、多価アルコールを原料として用いた例が複数報告されている。例えば、特許文献5では、特定の元素を含有する化合物で修飾されたニッケル触媒を用い、多価アルコールとアンモニアとを反応させてアミノアルコールを得る方法が開示されている。特許文献6では溶媒を含浸させた水素添加触媒並びに水素の存在下、気相でアルコールをアミノ化する方法が開示されている。特許文献7では、銅、ニッケル、カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む特定の処理を施した触媒を用いて、多価アルコールとアンモニアもしくは1級アミン又は2級アミンとを反応させる方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−120845号公報
【特許文献2】特開昭63−192744号公報
【特許文献3】国際公開第2003/91200号パンフレット
【特許文献4】特表2008−505865号公報
【特許文献5】特開平1−242559号公報
【特許文献6】特開平9−20735号公報
【特許文献7】特開2008−44930号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1928,50,2290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、反応の際にハロゲン化水素もしくはその中和塩が等モル量副生するため環境に高い負荷を与え、クリーンではない。また、特許文献2の方法は、多段階反応であるため設備投資、ランニングコスト、廃棄物処理の観点から工業的にも不利であり環境に与える負荷が大きい。
特許文献6及び7に示す方法は、末端ジオールでの実施のみで、より高極性かつ反応制御が困難な3価以上の多価アルコール類における反応例はない。特許文献5ではグリセリンを用いた反応例が報告されているが、転化率及び選択性共に十分なレベルに達しているとは言い難く、工業的に十分満足できる結果ではない。
上記のとおり、3価以上の多価アルコールを原料としたアルコール法アミン製造法によってα−アミノケトン化合物を選択的に合成した例は知られておらず、また多価アルコールをアミノ化する場合、反応の完結に長時間を要したり、多量の副生成物が生成したりするなどの問題があり、目的生成物を高収率で選択性良く製造できない。
そこで、本発明は、3価以上の多価アルコールを用い、α−アミノケトン化合物を高収率で高選択的に効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の金属を含む触媒の存在下、3価以上の多価アルコールと第2級アミン化合物とを反応させることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、銅、ニッケル、ルテニウム、アルミニウム及び鉄からなる群から選ばれる一種以上の金属成分を含む触媒(A)の存在下で、3価以上の多価アルコール(B)と第2級アミン化合物(C)とを反応させるα−アミノケトン化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出発原料の多価アルコールから一段階で選択的に効率良く、さらに副生成物が少なく高収率でα−アミノケトン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[触媒(A)]
本発明の製造方法において、使用される触媒(A)は、主活性金属成分として銅、ニッケル、ルテニウム、アルミニウム及び鉄から選ばれる一種以上の金属成分を含むものであり、銅を必須とすることが活性、選択性、経済性の点で好ましい。また、触媒の活性助成分もしくは複合成分として、主活性金属成分とは異なる種類の金属成分を一種又は複数種含んでいてもよい。
上記触媒の活性助成分や複合成分としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、イリジウム、モリブデン、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛、イットリウム、バナジウム及びジルコニウムなどを挙げることができる。
触媒(A)の形状は、Raney型、担持型、コロイダル型などに、必要に応じて調製して使用することができ、粉末状で使用しても成型して使用しても良い。
【0010】
触媒の耐久性などの物理的なファクターを改善するための助剤として、あるいは成型する場合、例えば銅、ニッケル、ルテニウム、アルミニウム及び鉄から選ばれる少なくとも1種の金属成分を担持する担体として、例えば、Studies in Surface and Catalysis,1−25,vol51,1989などに記載されているものを用いることができる。具体的には、炭素(活性炭)、珪藻土、粘土、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア及びセリアや、ゼオライトなどのシリカ−アルミナの複合酸化物を用いることができる。これらの中では、特にシリカ、アルミナ、炭素及びシリカ−アルミナの複合酸化物が好ましい。
金属成分の担持量は、触媒活性の点から、担体と担持された金属成分との合計量に基づき、通常、0.10〜70質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜55質量%である。
金属成分を担持した触媒(A)は、市販のものを用いてもよく、また沈殿法、イオン交換法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、混練法など通常採用されている公知の方法にて担体上に金属成分を担持することで調製できる。
【0011】
本発明の製造方法において、使用する触媒(A)は、別途水素ガス及び他の還元剤で還元したものを用いてもよく、高級アルコールや流動パラフィンなど高沸点溶媒中で水素を流通させながら、あるいは他の還元剤を連続的に導入しながら還元処理をした後に濾別したものを用いてもよい。
また、予め還元処理をせずに原料である多価アルコール及び第2級アミン化合物を触媒と一緒に反応器に入れて水素ガスを導入しながら、あるいは反応する第2級アミン化合物がガス状である場合には、水素ガスとガス状アミンの混合ガスを導入しながら、反応温度及び還元に至る温度まで昇温することによって、還元処理し使用することもできる。
なお、還元処理をせずにそのまま反応に用いても差し支えない。
【0012】
触媒に用いる金属成分の使用量は、多価アルコールの種類などに応じて、適宣決定されるが、回分式反応の場合、転化率や選択性などの観点から、多価アルコール1gに対し、金属として、0.0001g以上が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5g、さらに好ましくは0.01〜0.2gの範囲である。
本発明の製造方法において、触媒の仕込み量は任意の量を仕込むことができるが、回分式反応の場合、反応性、選択性及び経済性の観点から、原料の多価アルコールに対し、0.5〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。
【0013】
[3価以上の多価アルコール(B)]
本発明において用いられる出発原料の3価以上の多価アルコール(B)は、グリセリン又はグリセリン構造を末端に有する化合物が好ましく、すなわち下記式(I)で表される多価アルコールであることが好ましい。また、3価以上の多価アルコール(B)の全炭素数は、3〜50であることが好ましく、3〜25であることがさらに好ましい。
グリセリン構造の部分が第2級アミンと反応することによってα−アミノケトン化合物が得られる。
【0014】
【化1】

【0015】
式(I)中、R1は水素原子、又は水素原子の一部ないし全部が水酸基もしくは水酸基の水素原子が置換基により置換された炭化水素基である。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、p−メトキシフェニルベンジル基、メトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トシル基、アセチル基、ベンゾイル基及びトリチル基などが挙げられる。炭化水素基の炭素数は1〜47が好ましく、1〜22がより好ましい。また、R1の水酸基の数は10以下が好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0016】
式(I)で表される多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、1,2,3−オクタントリオール、1,2,3−ノナントリオール、1,2,3−デカントリオール、1,2,3−ウンデカントリオール、1,2,3−ドデカントリオール、1,2,3−トリデカントリオール、1,2,3−テトラデカントリオール、1,2,3−ペンタデカントリオール、1,2,3−ヘキサデカントリオール、1,2,3−ヘプタデカントリオール、1,2,3−オクタデカントリオール、1,2,3−ノナデカントリオール、1,2,3−イコサントリオール、1,2,3,5−ペンタンテトラオール、5−メトキシ−1,2,3−ペンタントリオールなどの脂肪族多価アルコール類及びその類縁化合物、エリトリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール、タリトール、ボレミトール、ペルセイトールなどの各種糖アルコール類及びその類縁化合物などが挙げられる。これら多価アルコールの中でグリセリン又は脂肪族多価アルコール類及びその類縁化合物が好ましく、特にグリセリンが好ましい。
【0017】
[第2級アミン化合物(C)]
本発明において用いられる出発原料の第2級アミン化合物(C)としては、下記式(II)で表すことができる化合物が好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
式(II)中、R2及びR3は、それぞれ置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、また、互いに直接結合又はヘテロ原子(O、N、Sなど)を介して結合し、環構造を形成してもよく、結合の様式は飽和であっても不飽和であっても良い。置換基としては、例えば、水酸基もしくは水酸基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、p−メトキシフェニルベンジル基、メトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トシル基、アセチル基、ベンゾイル基及びトリチル基などに置換されたものや、ジアルキルアミノ基などが挙げられる。炭化水素基の炭素数は1〜40が好ましく、1〜20がより好ましい。
【0020】
式(II)で表される第2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルヘプチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルドデシルアミン、メチルステアリルアミンなどのジアルキルアミン及びその類縁化合物、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミンなどのジアリールアミン及びその類縁化合物、アリールアルキルアミン及びその類縁化合物、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、イソインドリンなどの環状アミン及びその類縁化合物、プロリンなどの2級アミノ基を有するアミノ酸及びその類縁化合物などが挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法において、3価以上の多価アルコール(B)に対する第2級アミン化合物(C)の仕込み量は、反応性及び目的生成物の収率の観点から、好ましくはモル換算で0.7当量以上が好ましく、0.8当量以上がより好ましい。また、アミン化合物の不均化や副反応抑制の観点から、モル換算で20当量以下が好ましく、10当量以下がより好ましい。
また、第2級アミン化合物(C)は連続的に加えても、最初から仕込んでも、あるいは一定量ずつ分割して適宜反応系内に導入してもよく、その導入方法に特に制限はない。
【0022】
[反応条件]
本発明の製造方法において、還元性気体及び/又は不活性気体を、例えば断続的又は連続的に反応系内へ導入することが好ましい。該気体を導入し、流通させることで、3価以上の多価アルコール(B)と第2級アミン化合物(C)との反応で生成する水を反応水蒸気として気相へ誘導し、反応系外へ留出することができ、これによって反応を促進させることができる。この場合、還元性気体としては、通常、水素を用いることができ、不活性気体としては、通常、窒素、アルゴンなどを用いることができる。これら還元性気体及び不活性気体は、単独あるいは組み合わせて使用できる。
上記気体の導入及び流通は反応中断続的に行っても連続的に行ってもよく、副生成した水が長時間反応系中に存在せず適宜除去されればよいが、水をその都度連続的に除去することが望ましい。具体的には反応中に適当量の不活性気体及び/又は還元性気体を反応系内に導入し、水を不活性気体及び/又は還元性気体と共に反応系外に留出させる手法が一般的である。凝縮器で副生成した水を濃縮分離することで循環気体を再使用することもでき、水の除去手法は記載した限りではない。
【0023】
本発明の製造方法において、反応温度は、触媒(A)、3価以上の多価アルコール(B)、第2級アミン化合物(C)の種類により適宜決定すればよく、例えば、3価以上の多価アルコール(B)が、グリセリン、1,2,3−ブタントリオールもしくはエリスリトールであって、第2級アミン化合物(C)が、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジヘキシルアミンもしくはジデシルアミンの場合、100〜350℃が好ましく、150〜250℃がより好ましく、170〜230℃がさらに好ましい。
100℃以上であれば十分な触媒活性を発揮することができ、350℃以下であれば3価以上の多価アルコール(B)や第2級アミン化合物(C)並びに生成物の分解や過反応抑制の点で好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において、反応圧力に特に制限はないが、触媒(A)、3価以上の多価アルコール(B)、第2級アミン化合物(C)の種類及び反応温度との兼ね合いで適宜決定することができる。回分式で反応を行う場合は、水が系内に残り易いことから、気体を導入し流通させて反応中の水分を低減させることが好ましく、気体圧は、例えば、3価以上の多価アルコール(B)が、グリセリン、1,2,3−ブタントリオールもしくはエリスリトールであって、第2級アミン化合物(C)が、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジヘキシルアミンもしくはジデシルアミンの場合、工業化の観点からより0.001〜30MPaが好ましく、0.01〜15MPaがより好ましく、0.1〜5MPaがさらに好ましい。30Mpa以下であれば高収率、高選択率で目的物を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、多価アルコールの転化率ならびにα−アミノケトン化合物の生成確認及び収率決定は、ガスクロマトグラフィー(GC)及びガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)を用いて行った。
【0026】
実施例1
生成した水を分離するための凝縮器及び分離器、反応混合物サンプリング器、排ガス出口管、ガス導入管、撹拌器、温度計を設けた500mLセパラブルフラスコに、グリセリン(100g)、予め水素還元処理を行った日揮化学株式会社製のCu/SiO2触媒(10g、触媒中のCu比率54質量%、グリセリンに対して10質量%)、ジヘキシルアミン(201g、グリセリンに対して1モル当量)を仕込み蓋をした。次いでフラスコ内に窒素を大気圧下、6L/時間の流速でバブリングするよう流通させ、充分に攪拌しながら昇温した。反応温度が190℃になった時点を反応開始時間とし、190℃で3.5時間反応させた。反応液を分析した結果、グリセリンの転化率が>99%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが81%生成した。
【0027】
実施例2
水素を10L/時間の流速で供給した以外は、実施例1と同様にして3.7時間反応させた。その結果、グリセリンの転化率が>99%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが79%生成した。
【0028】
実施例3
反応温度を200℃とした以外は実施例2と同様にして2.0時間反応させた。その結果、グリセリンの転化率が>99%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが74%生成した。
【0029】
実施例4
反応に用いる触媒を特開平3−83955号公報の明細書中記載の手法を参照し調製したCu−Ni−Ru/ゼオライト(モル比;Cu:Ni:Ru=4:1:0.25)とした以外は実施例1と同様にして5.0時間反応させた。その結果、グリセリンの転化率が87%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが67%生成した。
【0030】
実施例5
反応混合物サンプリング器、排ガス出口管、ガス導入管、撹拌器、温度計を設けたSUS製の500mL電磁弁式オートクレーブに、グリセリン(40g)、予め水素還元処理を行った日揮化学株式会社製のCu/SiO2触媒(1.2g、触媒中のCu比率50質量%、グリセリンに対して3質量%)、ジヘキシルアミン(97g、グリセリンに対して1.2モル当量)を仕込み、密閉した。水素で数回内部雰囲気を置換し、その後0.5MPaの圧力で水素を充填した。次いで十分に攪拌しながら昇温した。内部温度が200℃になった時点で即座に水素を1.5MPa追加充填し、充填終了時を反応開始時間とした。200℃で5時間反応させた後の反応液を分析した結果、グリセリンの転化率が81%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが28%生成した。
【0031】
実施例6
実施例5と同様の電磁弁式オートクレーブに、グリセリン(40g)、予め水素還元処理を行った日揮化学株式会社製のCu/SiO2触媒(0.76g、触媒中のCu比率50質量%、グリセリンに対して1.9質量%)、ジヘキシルアミン(97g、グリセリンに対して1.2モル当量)を仕込み、密閉した。窒素で数回内部雰囲気を置換し、密閉した。次いで十分に攪拌しながら昇温した。内部温度が200℃になった時点を反応開始時間とした。200℃で5時間反応させた後の反応液を分析した結果、グリセリンの転化率が51%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが38%生成した。
【0032】
実施例7
反応に用いる触媒を、還元処理していない無水酢酸銅(II)(1.2g、グリセリンに対して3質量%)、反応温度を250℃とした以外は実施例6と同様にして5.0時間反応させた。その結果、グリセリンの転化率が45%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが13%生成した。
【0033】
実施例8
反応に用いる触媒を特開平4−22437号公報の実施例1記載のCu-Fe-Alとした以外は実施例5と同様にして5.0時間反応させた。その結果、グリセリンの転化率が38%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが26%生成した。
【0034】
比較例1
反応混合物サンプリング器、排ガス出口管、ガス導入管、撹拌器、温度計を設けたSUS製の500mL電磁弁式オートクレーブに、グリセリン(40g)、エヌ・イー ケムキャット社製のPt/C触媒(1.2g、触媒中のPt比率5質量%、グリセリンに対して3質量%)、ジヘキシルアミン(97g、グリセリンに対して1.2モル当量)を仕込み、密閉した。水素で数回内部雰囲気を置換し、その後0.5MPaの圧力で水素を充填した。次いで十分に攪拌しながら昇温した。内部温度が200℃になった時点で即座に水素を1.5MPa追加充填し、充填終了時を反応開始時間とした。200℃で5時間反応させた後の反応液を分析した結果、グリセリンの転化率が2%、N,N−ジへキシルアミノアセトンが0.5%生成した。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のα−アミノケトンの製造方法は、経済的かつ環境負荷が少なくクリーンな方法であり、光重合開始剤あるいは医薬及び農薬などの各種合成中間体として重要なα−アミノケトン類の製造方法として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、ニッケル、ルテニウム、アルミニウム及び鉄からなる群から選ばれる一種以上の金属成分を含む触媒(A)の存在下で、3価以上の多価アルコール(B)と第2級アミン化合物(C)とを反応させるα−アミノケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
3価以上の多価アルコール(B)が、グリセリン、又はグリセリン構造を末端に有する化合物である請求項1に記載のα−アミノケトン化合物の製造方法。
【請求項3】
還元性気体及び/又は不活性気体を反応系内へ導入する請求項1又は2に記載のα−アミノケトン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−120886(P2010−120886A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296815(P2008−296815)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】