説明

α,ω−アミノアルコールエナンチオマーの相乗的活性混合物、その調製、ならびに、昆虫およびダニ忌避剤配合物におけるその使用

【課題】α,ω−アミノアルコールエナンチオマーの相乗的活性混合物、その調製、ならびに、昆虫およびダニ忌避剤配合物におけるその使用を提供する。
【解決手段】1−[(S)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Sと称される)、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Rと称される)、1−[(S)−sec−ブトキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Rと称される)、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Sと称される)からなる群から選択される少なくとも2種のエナンチオマーを、これらのラセミ混合物を除いて含む昆虫およびダニ忌避組成物、その調製方法、ならびに、昆虫およびダニ忌避剤配合物におけるその使用が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物1−sec−ブチルオキシカルボニル−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(1−メチルプロピル2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−カルボキシレート;CAS No.119515−38−7としても公知である)の少なくとも2種のエナンチオマーに基づく鏡像異性的に富化されたα,ω−アミノアルコール誘導体の相乗的活性混合物、その調製、ならびに、昆虫およびダニ忌避剤におけるその使用に関する。1−s−ブチルオキシカルボニル−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンは、以下の式(1)の構造を有する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
化合物(1)のラセミ体は、商品名Saltidin(登録商標)(他の名称:Picaridin、Icaridin、従前はBayrepel(登録商標))により公知である。
【0003】
昆虫またはダニ忌避剤は、事前にこのような忌避剤で処理されている場合に、例えば動物およびヒトの皮膚といった誘引性の表面に対する、有害であるかまたは迷惑な節足動物による接触、ならびに、虫刺されおよび吸血および刺咬を予防するためのものである。
【0004】
数多くの活性処方成分が忌避剤として既に提案されている(例えば、(非特許文献1)を参照)。
【0005】
しばらくの間使用されている特に周知されている例は、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)、ジメチルフタレートおよび2−エチルヘキサン−1,3−ジオールであり、そのうち、特にDEETが実際にかなりの重要性を有している(例えば、(非特許文献2)を参照のこと)。
【0006】
化学合成において得られる個々のエナンチオマーのラセミ混合物の形態での置換α,ω−アミノアルコール誘導体もさらに公知である((特許文献1))。用いられるラセミ異性体混合物の形態においても、これらは、強力な昆虫およびダニ忌避剤作用を有する。既述のSaltidin(登録商標)は、特に有効であることが見出されている。
【0007】
すべての公知の忌避剤の欠点は、時々、作用期間が比較的短い(わずかに数時間)ことである。
【0008】
(特許文献2)には、鏡像異性的に富化されたα,ω−アミノアルコール誘導体の個々の調製、ならびに、昆虫およびダニ忌避剤としての使用が記載されている。個々のエナンチオマーの使用はいくつかの場合においてはラセミ体と比して持続性の効力を示した。しかしながら、個々のエナンチオマーのみしか、ラセミ混合物と比した効力について試験されていない。
【0009】
個々のエナンチオマーの混合物の相乗的作用が、薬理学および毒物学における個別の事例における文献から公知である。例えば、(非特許文献3)には、ベンゾ[a]ピレン4,5−オキシドのエナンチオマーの混合物の相乗的な細胞毒および変異原性作用が記載されている。
【0010】
エナンチオマーの補完的な作用の一例は、対照的に、(非特許文献4)に見出すことが可能である。活性処方成分トラマドールのエナンチオマーのいくつかは、ラセミ体に比して作用の明確な低減を示す(補完的な相互作用)。
【0011】
しかしながら、昆虫およびダニ忌避剤としてのエナンチオマー混合物の相乗的作用はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A−289 842号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−2086327号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】K.H.Buechel,Chemie der Pflanzenschutz− und Schaedlingsbekaempfungsmittel[Chemistry of crop protection compositions and pesticides];編者:R.Wegler,第1巻,Springer Verlag Berlin,Heidelberg,New York,1970年,487ffページ
【非特許文献2】R.K.Kocher,R.S.Dixit,C.I.Somaya;Indian J.Med.Res.62,1(1974年)
【非特許文献3】Proc Natl Acad Sci 1979年,76(9),4280〜4ページ
【非特許文献4】Pharmacol Exp Ther 1993年,267(1),331〜40ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、これまで公知である忌避剤と比して長期の効力期間を示す昆虫およびダニ忌避剤を見出すことを目的とする。
【0015】
現在、驚くべきことに、式(1)のα,ω−アミノアルコール誘導体の個々のエナンチオマーの特定の混合物は、昆虫およびダニ忌避剤として、ラセミ混合物と比して、作用期間に対して相乗的効果を有することが見出されている。ラセミ混合物に比した作用期間の長期化は、個々のエナンチオマーの作用期間の単純な合算に基づいて予期されるものよりもかなり長かった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、従って、1−[(S)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Sと称される)、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Rと称される)、1−[(S)−sec−ブトキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Rと称される)、1−[(R)−s−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Sと称される)からなる群から選択される少なくとも2種のエナンチオマーを、これらのラセミ混合物を除いて含む昆虫およびダニ忌避組成物を提供する。
【0017】
1−sec−ブチルオキシカルボニル−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンは、式(1)において(*)によって示されている2個の光学的に活性な炭素原子を有する。
【化2】

【0018】
従って、この化合物は、上記の記号を伴う4種のエナンチオマーを有する。個々のエナンチオマーは、本明細書中においては以下、構造に関して、略語S,S;R,R;S,RおよびR,Sによって称される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
4種のエナンチオマーのすべてを(1:1:1:1)の重量比で含むラセミ混合物に比した効力の増加に追加して、本発明の組成物は、非活性なまたは活性に劣るエナンチオマーの使用を回避させ、これは、ヒトにおける許容範囲に関して有利であり得る。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物は2種または3種のエナンチオマーを含み、この場合、特定のエナンチオマーは、互いに広く多様に異なる重量比で2成分または3成分混合物中に存在していてもよい。
【0021】
本発明の2成分混合物の事例においては、各々が、S,S/R,S;S,R/R,S;R,S/R,R;S,S/S,RまたはS,R/R,Rエナンチオマーを1:1の重量比で含むものが好ましい。R,S/R,R;S,S/S,RまたはS,R/R,Rエナンチオマーを含む2成分混合物が特に好ましい。ラセミ混合物と比して、これらの本発明の組成物は、それぞれ、21%、15%および18%の作用期間の増加を示す。
【0022】
本発明の3成分混合物の事例においては、各々が、R,R/R,S/S,R;S,S/R,S/S,R;S,S/S,R/R,RまたはS,S/R,R/R,Sエナンチオマーを1:1:1の重量比で含むものが好ましい。エナンチオマーS,S/S,R/R,R;S,S/R,R/R,SまたはS,S/R,S/S,Rを含む3成分混合物が特に好ましい。ラセミ混合物と比して、これらの本発明の組成物は、それぞれ、28%、25%および13%の作用期間の増加を示す。
【0023】
個々のエナンチオマーは、例えば、欧州特許出願公開第A−2086327号明細書に記載されているとおり、光学的に活性なα,ω−アミノアルコール(例えば、(S)−または(R)−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン)と、それ自体公知であり、光学的に活性な(R)−または(S)−sec−ブチルラジカルを含有するクロロ炭酸エステルとを反応させることにより得られる。
【0024】
あるいは、個々のエナンチオマーはまた、例えば好適な光学的に活性なキャリアでのクロマトグラフィといったそれ自体公知である方法によって、ラセミ混合物から単離されることも可能である。次いで、本発明の組成物は、個々のエナンチオマーを所望の重量比でブレンドすることにより調製される。
【0025】
本発明は、1−[(S)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、1−[(S)−sec−ブトキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンおよび1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンからなる群から選択される2種または3種のエナンチオマーを含む昆虫およびダニ忌避組成物を調製するための方法をさらに提供し、ここで、2成分混合物のための2種のエナンチオマーおよび3成分混合物のための3種のエナンチオマーは、任意により例えば水といった溶剤中で、互いに混合される。昆虫およびダニ忌避組成物を調製する本発明による方法は、例えばS,S/R,S;S,R/R,S;R,S/R,R;S,S/S,RまたはS,R/R,Rエナンチオマーといった2成分混合物のための2種のエナンチオマーが1:1の比で互いに混合され、および、例えばR,R/R,S/S,R;S,S/R,S/S,R;S,S/S,R/R,RまたはS,S/R,R/R,Sエナンチオマーといった3成分混合物のための3種のエナンチオマーが1:1:1の比で互いに混合されるように実施されることが好ましい。2成分混合物を調製するための本発明による方法におけるR,S/R,R;S,S/S,RまたはS,R/R,Rエナンチオマーの使用、および、3成分混合物を調製するための本発明による方法におけるS,S/S,R/R,R;S,S/R,R/R,SまたはS,S/R,S/S,Rエナンチオマーの使用が特に好ましい。
【0026】
本発明の組成物の昆虫およびダニ忌避作用は、相乗的活性混合物として持続性である。従って、これらは、有害であるかまたは迷惑な、吸血昆虫類および刺咬昆虫類およびダニ類の忌避に良好に用いられることが可能である。
【0027】
吸血昆虫としては、基本的に、蚊(例えば、ヤブカ属(Aedes spp.)、イエカ属(Culex spp.)およびハマダラカ属(Anopheles spp.)、スナバエ(サシチョウバエ属(Phlebotoma))、クロヌカカ(サシバエ属(Culicoides spp.))、ブユ(ブユ属(Simulium spp.))、サシバエ(例えばサシバエ(Stomoxys calcitrans))、ツェツェバエ(ツェツェバエ属(Glossina spp.))、ウマバエ(アブ属(Tabanus spp.)、ゴマフアブ属(Haematopota spp.)およびメクラアブ属(Chrysops spp.))、一般的なイエバエ(例えばイエバエ(Muca domestica)およびヒメイエバエ(Fannia canicularis))、ニクバエ(例えばニクバエの一種(Sarcophaga carnaria))、蝿蛆症の原因となるハエ(例えばヒツジキンバエ(Lucilia couprina)、オビキンバエ(Chrysomyia chloropyga)、ウシバエ(Hypoderma bovis)、キスジウシバエ(Hypoderma lineatum)、ヒトヒフバエ(Dermatobia hominis)、ヒツジバエ(Oestrus ovis)、ウマバエ(Gasterophilus intestinalis)、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax))、カメムシ(例えばトコジラミ(Cimex lectularius)、ベネズエラサシガメ(Rhodnius prolixus)、サシガメ(Triatoma infestans))、シラミ(例えばヒトジラミ(Pediculus humanus)、ブタジラミ(Haematopinus suis)、ウシハジラミ(Damalina ovis))、シラミバエ(例えばヒツジシラミバエ(Melophagus ovinus)、ノミ(例えばヒトノミ(Pulex irritans)、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis))およびスナノミ(例えばデルマトフィルスペネトランス(Dermatophilus penetrans))が挙げられる。
【0028】
刺咬昆虫としては、基本的に、ゴキブリ(例えばチャバネゴキブリ(Blattela germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)、スペラスペレクチリウム(Supella supellectilium))、甲虫(例えば、オサゾウムシ(Sitophilus granarius)、チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、オビカツオブシムシ(Dermestes lardarius)、ジンサンシバンムシ(Stegobium paniceum)、シバンムシの一種(Anobium punctactum)、ヨーロッパイエカミキリ(Hylotrupes bajulus))、シロアリ(例えばレティキュリテルメスルシフグス(Reticulitermes lucifugus))およびアリ(例えばトビイロケアリ(Lasius niger))が挙げられる。
【0029】
ダニとしては、マダニ類(例えば、カズキダニ(Ornithodorus Moubata)、マダニ(Ixodes ricinus)、オウシマダニ(Boophilus microplus)、アンブリオマヘブレウム(Amblyomma hebreum))、および、狭義でのダニ(例えば、ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)、ワクモ(Dermanyssus gallinae))が挙げられる。
【0030】
それ故、本発明はまた、昆虫およびダニ忌避のための上記本発明の組成物の使用に関する。
【0031】
本発明は、上記本発明の組成物、ならびに、任意によりさらなる活性処方成分、キャリア、溶剤および/または分散剤、界面活性剤およびさらなる添加剤を含む、昆虫およびダニ忌避のための配合物にさらに関する。
【0032】
本発明の配合物はまた、さらなる昆虫忌避剤を本発明の組成物と共に含んでいてもよい。ここでは、事実上すべての通例の忌避剤が有用である。
【0033】
忌避剤の組み合わせの事例においては、上記本発明の組成物を、2成分または3成分混合物として、忌避剤カルボキサミド類、1,3−アルカンジオール類およびカルボン酸エステル類と一緒に用いることが好ましい。以下の:N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)、2−エチルヘキサン−1,3−ジオールおよびジエチルフタレートを特に言及しておくべきである。
【0034】
本発明の配合物は、例えば、溶液、エマルジョン、ゲル、軟膏、ペースト、クリーム、粉末、スティック、スプレーまたはスプレー缶からのエアロゾルの形態といった、化粧品における通例のすべての投与形態で製造されることが可能である。
【0035】
非化粧品分野における使用については、本発明の配合物は、例えば、顆粒、油スプレーまたは緩効性配合物の形態で用いられることが可能である。
【0036】
本発明は、昆虫およびダニ忌避のための配合物を生成するための方法をさらに提供し、ここで、上記の本発明の組成物は、溶剤および/または分散剤、キャリアおよび/または界面活性剤と、ならびに、任意によりさらなる活性処方成分および/または添加剤と混合される。
【0037】
本発明の配合物は、本発明の組成物を、溶剤(例えば、キシレン、クロロベンゼン類、パラフィン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水)、キャリア(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリール)および/または界面活性剤、ならびに、任意により添加剤と混合することにより生成されることが好ましい。
【0038】
これらの配合物は、通常、配合物全体を基準として、0.1〜95重量%、好ましくは0.5〜90重量%、より好ましくは1〜50重量%の本発明の組成物を相乗的に活性な2成分または3成分混合物として含有する。
【0039】
吸血昆虫類またはダニ類に対する保護のために、本発明の配合物がヒトもしくは動物の皮膚に適用されるか、または、衣料品もしくは他の物品が本発明の配合物で処理される。本発明の配合物はまた、例えば、生地シート、衣料品、包装材材料用の含浸剤の添加剤として、ならびに、研磨剤、清浄剤およびウインドクリーナーへの添加剤として好適である。
【実施例】
【0040】
忌避テスト:
ヒトの腕での蚊に対する使用についての配合物の忌避有効性:
活動的に刺咬性の個体群(雌雄両方のおよそ1000匹の蚊)としての昆虫を、前面に2枚の軽布の入口を有するケージ(長さ90cm、幅30cm、高さ40cm、ガーゼ製の側壁)中に飼育した。これらの昆虫に、主に砂糖水(10% Dextropur)を与えた。これらの昆虫の齢数は少なくとも7日齢であり;昆虫の数は週に2回、3日齢の完全に成長した昆虫によって調整した。
【0041】
刺咬活性は、未処理の腕を昆虫にさらすことにより、テスト期間の最中は1時間毎に連続的に確認した(選択されたボランティアによって追加的な内部製品規格が用いられた)。
【0042】
ケージの低い電灯照明を午前6時から午後6時の間点灯させ、午後6時から午前6時は灯りを点けた。温度は25〜27℃であり;相対湿度は50〜70%であった。
【0043】
テスト対象者の前腕を、無香性の石鹸で洗浄し、水ですすぎ、次いで、70%エタノールおよび30%水の溶液ですすぎ、タオルで乾燥させた。
【0044】
テスト対象者の各前腕の90cmに、150μl(または150mg)のテスト製品を均一に塗布した。配合物が乾燥した直後に(およそ5分後)、3.1×8cm(25cm)の開口部を有するスリーブを、開口部が完全に処理した表面上に位置するよう腕に結びつけた。スリーブの開口部の角部にも同様に、角部での刺咬を防止するためにテスト材料(200μl)を1cm幅で塗布した。スリーブより上の領域は蚊が貫通不可能なタオルで保護した。手はラテックス製手袋で保護した。
【0045】
両方の腕を布の入口を通してケージ中に入れて、腕当たりの刺咬数(および、必要に応じて着地数)を3分間のテスト期間の間記録した。このテストを1時間毎に8回以下で繰り返したか、または、効果が消失(3分間以内に、または、2回の連続するテスト手順の最中に3回以上の刺咬)したらその前に終了した。
【0046】
各テストは5人のテスト対象者で構成した。
【0047】
エタノール/水(1:1)配合物中の構造(1)のアミノアルコールの2種または3種のエナンチオマーの混合物を用いた。光学分割による構造(1)の個々のエナンチオマーの合成および単離、ならびに、アミノアルコールの絶対配置の解明が、欧州特許出願公開第A−2086327号明細書に記載されている。
【化3】

【0048】
結果が表Aに集計されている。用いられた比較標準は4種のエナンチオマーすべてのラセミ混合物である。
【0049】
表A:ヒト前腕での蚊に対する忌避剤テスト
各事例における第1の記述子はsec−ブトキシカルボニル単位における絶対配置を示し、第2の記述子は、2−ヒドロキシエチルピペリジン環における絶対配置を示している。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−[(S)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Sと称される)、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Rと称される)、1−[(S)−sec−ブトキシカルボニル]−2−(R)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、S,Rと称される)、1−[(R)−sec−ブチルオキシカルボニル]−2−(S)−(+)−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン(本明細書において、以下、R,Sと称される)からなる群から選択される少なくとも2種のエナンチオマーを、これらのラセミ混合物を除いて含む昆虫およびダニ忌避組成物。
【請求項2】
前記組成物が、2種のエナンチオマーを1:1の重量比で、または、3種のエナンチオマーを1:1:1の重量比で含むことを特徴とする、請求項1に記載の昆虫およびダニ忌避組成物。
【請求項3】
前記組成物が、2種のエナンチオマーS,S/R,S;S,R/R,S;R,S/R,R;S,S/S,RまたはS,R/R,Rを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の昆虫およびダニ忌避組成物。
【請求項4】
前記組成物が、3種のエナンチオマーR,R/R,S/S,R;S,S/R,S/S,R;S,S/S,R/R,RまたはS,S/R,R/R,Sを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の昆虫およびダニ忌避組成物。
【請求項5】
前記エナンチオマーの前記群S,S;R,R;S,R;R,Sからの2種のエナンチオマーまたは3種のエナンチオマーが、任意により溶剤中で、互いに混合されることを特徴とする昆虫およびダニ忌避組成物の調製方法。
【請求項6】
昆虫およびダニ忌避のための請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物、ならびに、任意により、さらなる活性処方成分、キャリア、溶剤および/または分散剤、界面活性剤またはさらなる添加剤を含む昆虫およびダニ忌避用配合物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を、前記配合物全体を基準として0.1〜95重量%の範囲の量で含むことを特徴とする、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記配合物が、溶液、エマルジョン、ゲル、軟膏、ペースト、クリーム、粉末、スティックまたはスプレーの投与形態であることを特徴とする、請求項7または8に記載の配合物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物が、溶剤および/または分散剤、キャリアおよび/または界面活性剤、および、任意により、さらなる活性処方成分および/または添加剤と混合されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の昆虫およびダニ忌避用配合物の生成方法。

【公開番号】特開2012−1541(P2012−1541A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−130414(P2011−130414)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(506207853)サルティゴ・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】