説明

β−アミロイドペプチド結合タンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチド

【課題】 ヒトβ−アミロイドペプチドの沈着に起因する疾患に対処するためのツールの提供。
【解決手段】 ヒトβ−アミロイドペプチドに結合する新規なタンパク質、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド及びこれらのタンパク質の製造方法が提供される。また、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドを用いる診断、治療及びスクリーニング方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリヌクレオチド及びそのようなポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質並びにこれらのポリヌクレオチド及びタンパク質の治療、診断及び研究有用性に関する。特に、本発明はポリヌクレオチド及びそのようなポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質であって、それらのタンパク質がアルツハイマー病と関係するアミロイド沈着物の主要構成成分の一つのβ−アミロイドペプチドに結合するものに関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は脳の一連の構造異常を特徴とする中高年層の進行性痴呆疾患である。中枢神経系(CNS)の多数の領域のニューロンが機能障害になり、死滅し、シナプス入力の改変をもたらす。これらの傷つきやすいニューロンの細胞体及び近位樹状突起はペアードヘリカルフィラメントからなる神経原繊維変化を含み、それらの主要成分はリン酸化された微小管結合タンパク質、すなわちτである。疾病の特徴の一つは老人(または神経突起)斑と呼ばれる脳内の沈着物を含むアミロイドの蓄積である。アミロイド斑の主要成分はβ−アミロイドペプチド(以下「BAP」、Aβ、βAP等とも文献において呼ばれる)であり、それはADの進行中に密な集合体を形成する。
【0003】
BAPはアミロイド前駆体タンパク質(以下「APP」)のタンパク質分解開裂により得られる39−43アミノ酸ペプチドであり、APPの膜貫通ドメインの一部及び管腔/細胞外ドメインからなる。42アミノ酸を含んでなるBAPペプチド(BAP42)がおそらくヒトにおけるいっそう有毒な集合型であると考えられる。APPはいくつかのBAP含有アイソフォームとして生じる。主要な型は695、751及び770アミノ酸からなり、後者の2つのAPPはクニッツ型セリンプロテアーゼインヒビターと構造的及び機能的相同性を共有するドメインを含有する。正常個体では、BAPは蓄積せず、循環する体液から迅速に取り除かれる。しかしながら、ペプチドは異栄養性樹状突起及び軸索、ミクログリア並びに反応性アストロサイトの表面上に斑を形成することができる。神経突起斑におけるBAPの集合及び沈着はADの開始事象の一つとみなされている。BAPの発現及び結果をもたらす事象並びにADにおけるそれらの個々の役割の研究は神経科学研究の主要な焦点である。特に、BAPに結合するタンパク質の発見は、疾病の病因の理解を進めるため及びおそらく新規な治療標的を導入するためにきわめて重要である。
【0004】
本発明まで、ヒトBAPと結合し、そしてADにおけるBAPの生物学的作用に関与する可能性があるタンパク質及びそれらのフラグメントは同定されていない。
【発明の開示】
【0005】
本発明はヒトβ−アミロイドペプチド(BAP)アミノ酸配列に選択的に結合する遺伝子産物をコードする新規な単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0006】
一つの態様として、本発明は:
(a)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(b)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(c)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(d)ヌクレオチド202からヌクレオチド807までの配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(e)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(f)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号:2のアミノ酸68からアミノ酸269までのアミノ酸配列を含んでなる、ヒトβ−アミロイドペプチド結合活性を有する配列番号:2のアミノ酸配列のフラグメントを含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、;
(j)上記の(a)−(f)のポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチド;
(k)上記の(g)−(i)のタンパク質の種相同物をコードするポリヌクレオチド;及び
(l)(a)−(h)において特定されたポリヌクレオチドのいずれかに厳しい条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、
よりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチドを含んでなる組成物を提供する。
【0007】
好ましくは、そのようなポリヌクレオチドは配列番号:1のヌクレオチド配列;受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列;または受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。別の態様は配列番号:1のcDNA配列に対応する遺伝子を提供する。
【0008】
他の態様として、本発明はタンパク質を含んでなる組成物を提供し、その場合、該タンパク質は:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列:
(b)アミノ酸68からアミノ酸269までの配列番号:2のアミノ酸配列;
(c)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるアミノ酸配列;
(d)配列番号:2のアミノ酸185からアミノ酸217までのアミノ酸配列を含んでなる配列番号:2のアミノ酸配列のフラグメント、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0009】
好ましくは、そのようなタンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列またはアミノ酸68からアミノ酸269までの配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなる。また、融合タンパク質も本発明において請求される。 ある好ましい態様として、ポリヌクレオチドを発現制御配列に機能的に連結する。また、本発明はそのようなポリヌクレオチド組成物で形質転換された、バクテリア、酵母、昆虫及び哺乳類細胞を初めとする、宿主細胞も提供する。
【0010】
また、(a)適当な培養培地中で下記の態様3の宿主細胞の培養物を増殖させ;そして(b)培養培地からタンパク質を精製することを含んでなるBBPの製造方法も提供する。
【0011】
また、そのようなBBPと特異的に反応する抗体を含んでなる組成物も本発明により提
供される。
【0012】
ヒトBAPの異常な発現を特徴とする疾病状態を検出するための方法及び診断プロセス並びにBBPの活性を調節する化合物を同定するための方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様は発現制御配列に機能的に連結されたBBPをコードするポリヌクレオチドを含んでなるトランスジェニック動物を含む。
【0014】
後述する図面は本発明のある一定の態様を示す。それらは具体的に説明するためのものにすぎず、他の本明細書に開示される本発明を限定しない。
【0015】
図1は、酵母ツーハイブリッド(Y2H)スクリーニング設計のスキームを示す概略図である。記載されているように、BAP42に融合したGal4 DNA 結合ドメイン(BAPBD;TRP1マーカーを含有するプラスミド)及び非融合BAP42(BAP;URA3マーカーを含有するプラスミド)を発現するY2H宿主株を、Gal4活性化ドメイン融合タンパク質(未知AD)を発現するY2Hヒト胎児脳cDNAライブラリー(LEU2マーカーを含有するプラスミド)で形質転換した。従って、株は示したタンパク質を発現する円で表される3個のエピソームプラスミドを含有した。陽性のタンパク質−タンパク質相互作用は上流活性化配列(GALUAS)でGal4活性を再構成し、それによりレポーター遺伝子HIS3の転写を誘導した。
【0016】
図2は、BBP1/BAP結合の証明をする、酵母ツーハイブリッドアッセイの結果を示す図に代わる写真である。記載されているように、10倍連続希釈を作製し、トリプトファン、ロイシン、ヒスチジンを欠き、25mM 3−アミノ−トリアゾールを含有する合成寒天培地上に5μlを置くことによりヒスチジン原栄養に関してY2H株をアッセイした。ラベルBAPで示されるように、全ての株はBAP融合タンパク質発現プラスミドpEK162を含有する。最初の列(ベクター)はpEK162及び関係のない融合タンパク質を発現するベクターpACT2を保有する独立して得られた株を含む。標的タンパク質を発現する株との比較のバックグラウンドの基準としてこれらを用いる。本文中に記述するように、BBP1Δtmで示したカラムはpEK198から短くしたBBP1を発現する。BAPとBBP1Δtm融合タンパク質の相互作用はGal4活性を再構成し、コントロール株に比較して増大した原栄養増殖として見られる、HIS3レポーター遺伝子の誘導をもたらす(図1参照)。
【0017】
図3は、Gαタンパク質とBBP1の相互作用を示すバイオアッセイの結果を示す図に代わる写真である。Gal4活性化ドメイン融合タンパク質として発現されるラットGαs、GαoまたはGαi2の部分と共にBBP1の予測される細胞内ドメインをGal4
DNA結合ドメインとして発現させた。各株の2つの独立して得られたクローンのY2H反応を、Gタンパク質成分を欠いている細胞の反応(ベクター)と比較した。プロトコルは図2に対する本文の説明文において記述するとおりである。
【0018】
図4は、BBP1とBAPの相互作用の部位を明らかにするためのアッセイ結果を示す図に代わる写真である。本文に記述するようにBBP1Δtmを2つの重複するセグメントに分けた。これらのタンパク質、BBP1ΔCまたはBBP1ΔNをBAPとの相互作用に関してアッセイした。アッセイ方法及びベクターまたはBBP1Δtmで示される株は図2に対する説明文において記述したとおりである。BBP1ΔCまたはBBP1ΔNで示される株は、示したBBP1セグメントを融合タンパク質として発現する。
【0019】
図5は、ヒト組織(A)及び脳領域(B)におけるBBP1 mRNAの発現の結果を示す図面に代わる写真である。示した組織から単離した2μgのサイズ分画したポリ−A
RNAをブロットしたナイロン膜をCLONTECHから入手した。これらに放射性標識したBBP1 cDNAプローブを記述したようにハイブリダイズさせた。1.25kb(分子量マーカー(示されない)から決定した)に相当する顕著なバンドが全てのレーンにおいて見られた。より高分子量のバンドはおそらくヘテロ核RNAに相当し;BBP1遺伝子はいくつかのイントロンを含む。ブロットをはがし、積載及びRNA保全性コントロールとしてβ−アクチンで再検出し;全てのレーンは同等なシグナルを示した(データは示されない)。
【0020】
図6は、海馬の細胞におけるBBP1及びAPPの発現の結果を示す図に代わる写真である。ヒト海馬及び嗅内皮質におけるBBP1(A)及びAPP(B)発現のパターンを示すインサイチューハイブリダイゼーションオートラジオグラムの像。これらの像を生成するために用いた切片を2人の異なる患者から得られた死後標本から作った。略語:DG=歯状回;CA1=海馬部分体(subfield);EC=嗅内皮質。
【0021】
図7は、ヒトまたは齧歯類BAPとのBBP1相互作用の比較を示すためのアッセイ結果を示す図に代わる写真である。本文中に記述するように齧歯類BAPを作製し、融合タンパク質として発現させた。ヒトBAPで示す株は図2において示したものと同一である。齧歯類BAPで示す株はGal4 DNA結合ドメイン融合物として齧歯類BAPを発現する。ベクターはBAP融合タンパク質に対比させるベクターのみを含有するコントロール株を示し;BBP1はBBP1Δtm融合タンパク質を発現する株を示す。
【0022】
<発明の詳細な説明>
本発明はヒトβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP1)の単離及びクローニングに関する。酵母2ハイブリッドアッセイにおいて融合タンパク質としてBBP1はBAPの42アミノ酸フラグメント(BAP42)に結合すると特性化された。BBP1の発現はヒト組織及び特定の脳領域において示された(図5)。重要なことに、BBP1は齧歯類BAPに比較した場合に酵母2ハイブリッド系においてヒトBAP1を選択的に結合することが示された。これらの結果は、アルツハイマー病の診断及び処置に、そして脳におけるアミロイド含有斑の蓄積を調節するための薬剤の評価及びスクリーニングのために本発明のBBP1を用いることができるという前提を裏付ける。
【0023】
BBP1コーディング配列
BAPのおそらくより有毒な型のヒトBAP42と相互作用するタンパク質を同定するために開発された酵母2−ハイブリッド(Y2H)遺伝子スクリーニングを用いることにより、最初のヒトBBP1クローン(クローン14と称した)を得た。BAP42を酵母Gal4 DNA結合ドメインに融合して発現させ、また遊離ペプチドとしても発現させた(図1)。この株をヒト胎児脳cDNA Y2Hライブラリーで形質転換した。約10の別個の形質転換体から、#14で示される単一クローンが一貫したレポーター遺伝子活性化を示し、GAL4ドメインのものと連続した実質的なオープンリーディングフレームを含有した。cDNAインサートはポリ−A領域で終わる984塩基対を含んでなった。この配列は細胞膜を横切るために十分な長さ及び疎水性の2つの領域を有する202アミノ酸(配列番号:2のアミノ酸68ないしアミノ酸269)をコードした。また、可能性のあるアルパラギン連結グリコシル化部位もある。クローン14をクローンpEK196と称し、ATCC 98399として寄託した。
【0024】
ライブラリー由来のプラスミドをクローン14から単離し、Y2Hアッセイ株を再構築するために用いた。これらの株の試験から、反応は弱いが、BAP融合タンパク質がクローン14タンパク質と特異的に相互作用することが示された。膜貫通領域のような強い疎水性のタンパク質ドメインはY2H反応を妨げるので(Ozenberger、未発表データ)、最も強い疎水性の領域を除くためにクローン14インサートを短くし(BBP1
Δtm;さらなる説明は以下の表2を参照)、BAPとの相互作用に関して再試験した。BBP1Δtmでかなりより強いY2H反応が見られ、削除した配列が可能性のある膜貫通(「tm」)アンカーをコードするという考えを裏付けた。クローン14は融合タンパク質の形態で新規なBAP結合タンパク質を同定する。
【0025】
可能性がある開始メチオニンコドンが存在しなかったので、クローン14中に含まれるBBP1 cDNA配列はタンパク質コーディング領域の5’末端を欠いていると同定された。標準的な逆転写酵素を利用する通常の5’RACE(cDNA末端の迅速増幅)の多数の試みは27ヌクレオチドの付加をもたらしただけであった。従って、以下の実施例2において記述したようなゲノムクローニング法を用いて5’末端を単離した。
【0026】
5’コーディング配列末端はゲノムライブラリーから得られたので、この領域がイントロンを含有する可能性が存在した。この可能性を以下の実施例2において記述したような2つの方法により調べた。得られたデータから、上流配列(ゲノム及びcDNA起源からの両方)並びにこの領域中にイントロンがないことが確かめられた。全長BBP1タンパク質コーディング領域をコードするcDNAインサートを含有するプラスミドBBP1−flをAmerican Type Culture Collectionに受託番号98617で寄託した。全コーディング領域及び推定されるタンパク質配列を配列番号:1及び2に示す。3’非翻訳ヌクレオチド配列は元のクローン14(pEK196)中に含まれる。
【0027】
本発明により、適切な宿主細胞においてBBP1または機能的に活性のあるペプチドの発現を導く組み換えDNA分子を作製するためにBBP1、そのフラグメント、融合タンパク質または機能的同等物をコードするヌクレオチド配列を用いることができる。あるいはまた、BBP1配列の一部にハイブリダイズするヌクレオチド配列を核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、サザン及びノーザンブロットアッセイ等に用いることができる。
【0028】
また、本発明は本明細書に開示されるポリヌクレオチドのものに相補的な配列を有するポリヌクレオチドも含む。
【0029】
また、本発明は引き下げられたストリンジェンシー条件、より好ましくは厳しい条件、最も好ましくは非常に厳しい条件下で本明細書に記述されるポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドも含む。ストリンジェンシー条件の例を以下の表に示し:非常に厳しい条件は例えば条件A−Fと少なくとも同じくらい厳しいものであり;厳しい条件は例えば条件G−Lと少なくとも同じくらい厳しく;そして引き下げられたストリンジェンシー条件は例えば条件M−Rと少なくとも同じくらい厳しい。
【0030】
【表1】

:ハイブリッドの長さはハイブリダイズするポリヌクレオチドのハイブリダイズした領域に対して予想されるものである。未知の配列の標的ポリヌクレオチドにポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さはハイブリダイズするポリヌクレオチドのものであると考えられる。既知の配列のポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる場合、ポリヌクレオチドの配列を整列させ、最適の配列相補性の領域または複数の領域を同定することによりハイブリッドの長さを決定することができる。
:ハイブリダイゼーション及び洗浄バッファー中のSSC(1xSSCは0.15M NaCl及び15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりにSSPE(1xSSPEは0.15M NaCl、10mM NaHPO及び1.25mM EDTA、pH 7.4である)を用いることができ;ハイブリダイゼーションが完了した後に洗浄を15分間実施する。
−T:50塩基対未満の長さであると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度はハイブリッドの融解温度(T)より5−10EC低くなるべきであり、
その場合、Tは以下の式により決定される。18塩基対未満の長さのハイブリッドでは、T(EC)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18ないし49塩基対の間の長さのハイブリッドでは、T(EC)=81.5+16.6{log10[Na]}+0.41(%G+C)−(600/N)、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、そして[Na]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1xSSCの[Na]=0.165M)。
【0031】
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件のさらなる例は、引用することにより本明細書に組み込まれる、Sambrook、J.、E.F.Fritsch及びT.Maniatis、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、第9及び11章並びにCurrent Protocols in Molecular Biology、1995、F.M.Ausubel等、編集、John Wiley &
Sons,Inc.、節2.10及び6.3−6.4中に与えられる。
【0032】
好ましくは、各々のそのようなハイブリダイズするポリヌクレオチドは、それがハイブリダイズする本発明のポリヌクレオチドの長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)である長さを有し、そしてそれがハイブリダイズする本発明のポリヌクレオチドと少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性;最も好ましくは少なくとも90%または95%の同一性)を有し、その場合、配列同一性は、配列のギャップを最小限にしながら重複及び同一性を最大にするように整列した場合にハイブリダイズするポリヌクレオチドの配列を比較することにより決定される。
【0033】
BBP1の発現
タンパク質を組み換え的に生産するために、Kaufman等、Nucleic Acids Res.19、4485−4490(1991)中に開示されたpMT2またはpED発現ベクターのような発現制御配列に本発明の単離されたポリヌクレオチドを機能的に連結することができる。多数の適当な発現制御配列が当該技術分野において知られている。また、組み換えタンパク質を発現させる一般法も知られており、R.Kaufman、Methods in Enzymology 185、537−566(1990)中に例示されている。本明細書に定義される場合「機能的に連結された」は、連結されたポリヌクレオチド/発現制御配列で形質転換(トランスフェクト)されている宿主細胞によりタンパク質が発現されるように本発明の単離されたポリヌクレオチドと発現制御配列がベクターまたは細胞内に位置していることを意味する。
【0034】
BBP1の発現系
多数の型の細胞がタンパク質発現のための適当な宿主細胞の役割を果たすことができる。哺乳類宿主細胞は、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換された霊長類細胞系、正常二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養から得られた細胞系、一次移植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、HaKまたはJurkat細胞を含む。
【0035】
あるいはまた、酵母のような下等真核生物またはバクテリアのような原核生物においてタンパク質を生産することが可能である。潜在的に適当な酵母株はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)株、カンジダ(Candida)または異種起源のタンパ
ク質を発現することができるあらゆる酵母株を含む。潜在的に適当なバクテリア株はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)または異種起源のタンパク質を発現することができるあらゆるバクテリア株を含む。タンパク質が酵母またはバクテリアで作られる場合、機能的タンパク質を得るために、例えば適切な部位のリン酸化またはグリコシル化により、その中で生産されたタンパク質を修飾することが必要である可能性がある。既知の化学的または酵素的方法を用いてそのような共有結合連結を成し遂げることができる。
【0036】
また、1つまたはそれ以上の昆虫発現ベクター中の適当な制御配列に本発明の単離されたポリヌクレオチドを機能的に連結し、そして昆虫発現系を用いることによりタンパク質を生産してもよい。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料及び方法は、例えば、Invitrogen、San Diego、California、U.S.A.からキットの形態(MaxBac7キット)で市販されており、そのような方法は引用することにより本明細書に組み込まれるSummers及びSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)中に記述されたように当該技術分野において周知である。本明細書に用いられる場合、本発明のポリヌクレオチドを発現することができる昆虫細胞は「形質転換」されている。
【0037】
組み換えタンパク質を発現させるために適当な培養条件下で形質転換された宿主細胞を培養することにより本発明のタンパク質を製造することができる。次に、ゲル濾過及びイオン交換クロマトグラフィーのような既知の精製方法を用いてそのような培養物から(すなわち、培養培地または細胞抽出物から)得られた発現タンパク質を精製することができる。また、タンパク質の精製はタンパク質に結合する薬剤を含有するアフィニティーカラム;コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−トヨパール7またはシバクロムブルー(Cibacrom blue)3GAセファロース(Sepharose)7のようなアフィニティー樹脂での1つもしくはそれ以上のカラム工程;フェニルエーテル、ブチルエーテルもしくはプロピルエーテルのような樹脂を用いる疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む1つもしくはそれ以上の工程;または免疫アフィニティークロマトグラフィーを含んでもよい。
【0038】
あるいはまた、精製を容易にする形態で本発明のタンパク質を発現させてもよい。例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)またはチオレドキシン(TRX)のもののような融合タンパク質としてそれを発現させることができる。そのような融合タンパク質の発現及び精製のためのキットは、それぞれ、New England BioLab(Beverly、MA)、Pharmacia(Piscataway、NJ)及びInVitrogenから市販されている。また、タンパク質にエピトープをつけ、続いて、そのようなエピトープに対する特異的抗体を用いることにより精製することもできる。一つのそのようなエピトープ(「フラッグ(Flag)」)はKodak(New Haven、CT)から市販されている。
【0039】
最後に、タンパク質をさらに精製するために疎水性RP−HPLC媒質、例えば、メチルまたは他の脂肪族側基を有するシリカゲルを用いる1つまたはそれ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程を用いることができる。また、実質的に均質な単離された組み換えタンパク質を与えるために前記の精製工程のいくつかまたは全てを様々な組み合わせで用いることもできる。従って、タンパク質は他の哺乳類タンパク質を実質的に含まず、本発明により「単離されたタンパク質」と定義される。
【0040】
また、本発明のタンパク質をトランスジェニック動物の生成物として、例えば、タンパ
ク質をコードするヌクレオチド配列を含有する体細胞または生殖細胞を特徴とするトランスジェニックウシ、ヤギ、ブタまたはヒツジのミルクの成分として発現させることもできる。
【0041】
また、タンパク質を既知の通常の化学合成により製造してもよい。合成手段により本発明のタンパク質を構築するための方法は当業者に知られている。合成的に構築されたタンパク質配列は、タンパク質と共有する一次、二次もしくは三次構造及び/または配座特性のために、タンパク質活性を初めとする生物学的特性をそれらと同様に保有することができる。従って、治療用化合物のスクリーニング及び抗体の開発のための免疫学的工程において天然の精製されたタンパク質の生物学的に活性のあるまたは免疫学的代用品としてそれらを用いることができる。
【0042】
また、本明細書に与えられるタンパク質は、精製されたタンパク質のものに類似したアミノ酸配列を特徴とするタンパク質も含むが、それらに改変が自然に与えられるかまたは故意に作製される。例えば、既知の技術を用いて当業者はペプチドまたはDNA配列における改変を実施することができる。タンパク質配列中の目的の改変はコーディング配列中の選択したアミノ酸残基の変更、置換、交換、挿入または欠失を含むことができる。例えば、分子の配座を変えるために1個またはそれ以上のシステイン残基を欠失させるかまたは他のアミノ酸と交換することができる。そのような変更、置換、交換、挿入または欠失のための技術は当業者に周知である(例えば、米国特許第4,518,584号を参照)。好ましくは、そのような変更、置換、交換、挿入または欠失はタンパク質の適切な活性を保持する。
【0043】
本明細書の開示が与えられれば、当業者は、タンパク質活性を全部または一部保持すると予想され、従って、スクリーニングまたは他の免疫学的方法論に有用な可能性があるタンパク質の配列の他のフラグメント及び誘導体を容易に作製することもできる。そのような改変は本発明により包含されると考えられる。
【0044】
酵母ツーハイブリッドアッセイ
Y2Hアッセイにより、BBP1融合タンパク質とBAPの結合が特異的であることが示された。BAPとBBP1の結合は、BBP1活性がアルツハイマー病の病因において特定の役割を有する可能性があることを示唆する。
【0045】
基本的な局所整列検索手段(BLAST;Altschul等、1990)を用いてBBP1配列をジーンバンク(Genbank)に比較した。BBP1タンパク質及び利用できる発現配列標識の翻訳を整列させ、保存されたセグメントを検索し、MoST(Tatusov等、1994)タンパク質モチーフ検索アルゴリズムにより評価した。これらの分析により、Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーに対する可能性のある進化的関係が示された。具体的には、これらの分析から、BBP1がGタンパク質共役受容体のtmドメイン3及び4に同等な2つの可能性のある膜貫通(tm)ドメインを含むことが示された。介在する親水性ループは十分に特性化された3個のアミノ酸モチーフ、アスパルテート(D)またはグルタメート及びそれに続くアルギニン(R)及び芳香族残基(YまたはF)(一般にDRY配列と呼ばれる)を含み、それはこの受容体ファミリーのほとんど全てのメンバーにおいて保存され、そしてGタンパク質活性化のための分子引き金として働くことが示されている(Acharya及びKarnik、1996)。
【0046】
Y2Hアッセイからのデータ(図2−4を参照)は、BBP1がGタンパク質共役受容体スーパーファミリーのメンバーと共有する機能モジュールをおそらく含有する新規なタンパク質であることを示す。具体的には、BBP1は2つの予測されるtmドメイン間に重要なDRF配列(配列番号:2のアミノ酸199ないしアミノ酸201)を保持し、そ
してGタンパク質調節シグナリング経路に共役する可能性を有すると思われる。
【0047】
APPはGαOと機能的に結合することが示されており(Nishimoto等、1993;Yamatsuji等、1996)、そしてBBP1は関係のあるGタンパク質共役受容体中のGαタンパク質活性化配列であることが知られている構造モチーフを含有する。さらに、BBP1 tmドメインの予測される位置及び方向に基づいた仮説から、BAPと相互作用するタンパク質の領域がAPP中のBAPと同じ位置に構造関係的に拘束されることが示唆される。
【0048】
αタンパク質とBBP1細胞内領域の結合を評価するためにY2Hアッセイ株を作製した。BBP1の予測される細胞内配列を融合タンパク質として発現させ、3つのGαタンパク質のC末端領域との相互作用に関してアッセイした。これらの実験に用いたタンパク質セグメントを以下の表2に挙げる。BBP1細胞内ループは3つ全てのGαタンパク質と相互作用し(図3)、BBP1がGタンパク質活性のモジュレーターとして機能する可能性があるという前提を裏付けた。これらの様々なY2Hアッセイにより、ヘテロ三量体Gタンパク質に共役した最低限で内在性膜タンパク質BBP1及びAPPからなる複数のタンパク質複合体の魅力的なモデルが示唆される。
【0049】
【表2】

【0050】
BBP1のさらなる分析をY2Hアッセイを用いて得た。BBP1Δtmクローン中に含まれるBBP1配列の2つの重複する部分を増幅し、Y2HベクターpACT2中にクローン化した(発現プラスミドpEK216及びpEK219、表2並びに対応するタンパク質BBP1ΔN及びBBP1ΔC(図4))。ΔC構築物は両方のtmドメインを欠き;ΔN構築物は1番目のtmドメインとその前の52アミノ酸をコードした。これらの融合タンパク質をBAP融合タンパク質とアッセイし、より大きいBBP1Δtmタンパク質を発現する株のものに反応を比較した。BBP1ΔCタンパク質は弱いY2H反応を誘導したが(ベクターにBBP1ΔCを比較、図4)、1番目のtmドメインと隣接するアミノ近位配列を含有するBBP1ΔNタンパク質はBBP1Δtmで見られたものよりほんのわずかに弱い反応を生じた(図4)。これらの結果は、BAPとの結合のための主要な決定基が野生型APPタンパク質中のBAPに構造関係に類似していると予測されるBBP1領域内に含まれることを示唆する。
【0051】
齧歯類BAPに比較した場合にヒトBAPへのBBP1結合の選択性及び特異性を示すためにY2H系を利用した。ヒト配列に比較して齧歯類BAP配列には3個のアミノ酸置換がある(G5R、F10Y及びR13H)。実施例6において記述したY2Hアッセイ
において、齧歯類ペプチドは減少した神経毒性及びヒト脳ホモジェネートへの結合の欠如を示す(Maggio等、1992)。それ故、Y2H系においてBBP1と齧歯類BAPの結合を評価することは興味深かった。PCRによるオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発によりpEK162中のヒトBAPの配列を齧歯類ペプチドをコードするように変えた。得られたプラスミドpEK240は、齧歯類ペプチド配列のアミノ酸置換を生じる3つのコドンを除いて、この報告を通して利用されるヒトBAP融合タンパク質発現プラスミドと同一である。BBP1融合タンパク質と齧歯類及びヒトBAP融合タンパク質の相互作用をY2Hバイオアッセイにより比較した。BBP1と齧歯類BAPを発現する株は増殖反応を生じることができなかった(図7)。この結果はBBP1がBAPの神経毒性作用の特異的メディエーターとして働く可能性があるという前提を裏付け、そして齧歯類BAPの減少した神経毒性を説明するための機構を与える。重要なことに、3個のアミノ酸の置換は結合を完全に妨げるために十分であったので、これらのデータはY2HアッセイにおけるBBP1/BAP相互作用の高度の特異性を示すためにも役立つ。
【0052】
単離されたBBP1ポリペプチド
本発明のタンパク質及びタンパク質フラグメントは、開示されたタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であるアミノ酸配列の長さを有し且つ開示されたタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性;最も好ましくは少なくとも90%または95%の同一性)を有するタンパク質を含み、その場合、配列同一性は配列のギャップを最小限にしながら重複及び同一性を最大にするように整列した場合にタンパク質のアミノ酸配列を比較することにより決定される。また、本発明に含まれるものは、開示されたタンパク質のいずれかのそのようないずれかのセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも約85%の同一性;最も好ましくは少なくとも95%の同一性)を共有する好ましくは8個またはそれ以上(より好ましくは20個またはそれ以上、最も好ましくは30個またはそれ以上)の連続したアミノ酸を含んでなるセグメントを含むタンパク質及びタンパク質フラグメントである。
【0053】
また、開示されたポリヌクレオチド及びタンパク質の種相同物も本発明により提供される。本明細書に用いられる場合、種相同物は既定のタンパク質またはポリヌクレオチドのものと異なる種の起源を有するが、既定のタンパク質またはポリペプチドに著しい配列類似性を有するタンパク質またはポリヌクレオチドである。好ましくはポリヌクレオチド種相同物は既定のポリヌクレオチドと少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性;最も好ましくは少なくとも90%の同一性)を有し、タンパク質種相同物は既定のタンパク質と少なくとも30%の配列同一性(より好ましくは少なくとも45%の同一性;最も好ましくは少なくとも60%の同一性)を有し、その場合、配列同一性は配列のギャップを最小限にしながら重複及び同一性を最大にするように整列した場合にポリヌクレオチドのヌクレオチド配列またはタンパク質のアミノ酸配列を比較することにより決定される。本明細書に与えられる配列から適当なプローブまたはプライマーを作製し、適切な種からの適当な核酸源をスクリーニングすることにより種相同物を単離し、同定することができる。好ましくは、種相同物は哺乳類種から単離されたものである。最も好ましくは、種相同物は、例えば、パン・トログロディテス(Pan troglodytes)、ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla)、ポンゴ・ピグミウス(Pongo pygmaeus)、ヒロバテス・コンカラー(Hylobates
concolor)、マカカ・ムラータ(Macaca mulatta)、パピオ・パピオ(Papio papio)、パピオ・ハマドリアス(Papio hamadryas)、セルコピテカス・エチオプス(Cercopithecus aethiops)、セブス・カプシナス(Cebus capucinus)、アオタス・トリビルガタス(Aotus trivirgatus)、サングイナス・オイディプス(Sanguinus oedipus)、ミクロセバス・ムリナス(Microcebus mu
rinus)、ムス・ムスクラス(Mus musculus)、ラタス・ノルベギカス(Rattus norvegicus)、クリセツラス・グリセウス(Cricetulus griseus)、フェリス・カトゥス(Felis catus)、ムステラ・ビソン(Mustela vison)、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)、オリクトラガス・クニクラス(Oryctolagus cuniculus)、ボス・タウラス(Bos taurus)、オビス・アリエス(Ovis
aries)、サス・スクロファ(Sus scrofa)及びエクウス・カバラス(Equus caballus)のようなある哺乳類種から単離されたものであり、それらには遺伝子地図が作製されており、ある種の遺伝子のゲノム構成と別の種の関係のある遺伝子のゲノム構成の間のシンテニィ関係を同定できる(O’Brien及びSeuanez、1988、Ann.Rev.Genet.22:323−351;O’Brien等、1993、Nature Genetics 3:103−112;Johansson等、1995、Genomics 25:682−690;Lyons等、1997、Nature Genetics 15:47−56;O’Brien等、1997、Trends in Genetics 13(10):393−399;Carver及びStubbs、1997、Genome Research 7:1123−1137;それらの全ては引用することにより本明細書に取り込まれる)。
【0054】
また、本発明は開示されたポリヌクレオチドまたはタンパク質の対立遺伝子変異体;すなわち、開示されたポリヌクレオチドによりコードされるものに同一であるかまたは著しく類似した配列を有するタンパク質を同様にコードする単離されたポリヌクレオチドの天然に存在する代替形も包含する。好ましくは、対立遺伝子変異体は既定のポリヌクレオチドと少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも75%の同一性;最も好ましくは少なくとも90%の同一性)を有し、その場合、配列同一性は配列のギャップを最小限にしながら重複及び同一性を最大にするように整列した場合にポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を比較することにより決定される。本明細書に与えられた配列から適当なプローブまたはプライマーを作製し、適切な種の個体からの適当な核酸源をスクリーニングすることにより対立遺伝子変異体を単離し、同定することができる。
【0055】
また、本発明は本明細書に開示されたポリヌクレオチドのものに相補的な配列を有するポリヌクレオチドも含む。
【0056】
用途
本開示に基づいて当業者に慣例の様々な用途に本発明のBBP1タンパク質を用いることができる。具体的には、クローン化されたポリペプチドに対して特異的な抗体を作製するための免疫原としてBBPを用いることができる。BBP1タンパク質に対する抗体の製造のために当該技術分野で知られている様々な方法を用いることができる。そのような抗体はポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fabフラグメント及びFab発現ライブラリーを含むがそれらに限定されない。抗体の製造のために、ウサギ、マウス及びラットを初めとするがそれらに限定されない様々な宿主動物にBBPを注入する。一つの態様として、特異的免疫活性能力があるポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントを免疫原性担体に結合させる。また、宿主動物の免疫学的応答を上げるためにアジュバントをポリペプチドと共に投与してもよい。用いることができるアジュバントの例は完全及び不完全フロイント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、スカシガイ(keyhole limpet)ヘモシアニン及びジニトロフェノールを含むがそれらに限定されない。
【0057】
培養における連続細胞系による抗体の生産を規定するあらゆる技術を用いて本発明のBBP1タンパク質に対するモノクローナル抗体を調製することができる。そのような技術
は当業者に周知であり、Kohler及びMilstein(Nature 1975、256、4202−497)により最初に記述されたハイブリドーマ技術、Kosbor等(Immunology Today 1983、4、72)により記述されたヒトB細胞ハイブリドーマ技術並びにCole等(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、pp77−96)により記述されたEBV−ハイブリドーマ技術を含むがそれらに限定されない。
【0058】
次に、生物学的サンプルにおける類似したポリペプチドの存在及び細胞以下分布に関してスクリーニングするために本発明のポリペプチドに免疫反応する抗体を用いることができる。さらに、本発明のBBP1タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を治療法として用いることができる。
【0059】
また、請求したペプチドと免疫反応する抗体の存在を測定する固相アッセイに有用な抗原としてもBBP1タンパク質を用いることができる。生物学的サンプルにおけるクローン14に関連した抗原の免疫学的量を測定するために固相競合アッセイを用いることができる。この測定は本発明のポリペプチドの細胞機能または複数の機能の完全な特性化を容易にすることに有用なだけでなく、これらのタンパク質の異常な量を有する患者を同定するためにも用いることができる。
【0060】
また、ADのマーカーとしてのBAP及びBAP集合体の検出のためのアフィニティークロマトグラフィーにおける捕捉試薬としても本発明のBBP1タンパク質を用いることができる。
【0061】
さらに、これらのBBP1はBAPとクローン化されたタンパク質の相互作用に影響を与える候補分子を同定するためのアッセイにおける試薬として有用である。この結合を特異的に妨げる化合物はADの処置または予防に有用である可能性がある。
【0062】
また、これらのBBP1は、BAPまたはBAP集合体へのこれらのβ−アミロイドペプチド結合タンパク質の結合の化合物による改変を測定する非細胞インビトロ結合アッセイにも有用である。非細胞アッセイは生細胞を用いるアッセイより費用効果的であり、実施するのが容易であるのでこれらのアッセイはかなり多数の化合物をスクリーニングすることに非常に有用である。本発明のポリペプチドの開示により、これらのアッセイの開発は当業者にとって慣例的である。そのようなアッセイでは、BBP1またはBAPのいずれかが標識される。そのような標識は放射性標識、抗体及び蛍光または紫外線標識を含むがそれらに限定されない。まず、BAPまたはBAP集合体へのBBP1の結合をあらゆる試験化合物なしで測定する。次に、試験される化合物をアッセイに添加してそのような化合物がこの相互作用を改変するかどうかを測定する。
【0063】
実施例
本発明は以下の実施例によりさらに説明される。それらの実施例は特定の態様に関して本発明を具体的に示すためにのみ与えられる。これらの例示は、本発明のある特定の態様を具体的に示すが、限定を表さず、または本発明の範囲を制限しない。
【0064】
酵母ツーハイブリッド系(以下、「Y2H」)
Y2H発現プラスミドを(WadeHarper等、1993中に記述された)ベクターpAS2及びpACT2並びに(Ozenberger及びYoung、1995中に記述された)pCUPにおいて構築した。酵母株CY770(Ozenberger及びYoung、1995)を全ての2Hアッセイの宿主として用いた。
【0065】
遺伝子スクリーニング:BAPをコードする配列を増幅及び改変するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いた。鋳型として、改変されたヒトAPPクローンのpCLL621(Jacobsen等、1994)を用いてBAPを増幅するためにオリゴヌクレオチド#1(5’−CC ATG GAT GCA GAA TTC CGA C)及び#3(5’−AAGCTTGTCGAC TTA CGC TATGAC AAC ACC GC)を用いた。増幅されたDNAは以下の改変を含むAPP前駆体タンパク質の(BAP42をコードする)コドン389ないし430からなる。センス鎖プライマーはpAS2中のNcoI部位と同じ翻訳読み枠で5’NcoI制限部位を付加した。アンチセンス鎖プライマーは終止コドン並びにクローニングのためのHindIII及びSalI部位を付加した。この増幅からの産物をTAクローニング系(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)に連結し、続いて、NcoI及びSalIでの消化により取り出した。このフラグメントをNcoISalIで切断したpAS2中にクローン化した。得られたプラスミド、pEK162をGAL4/BAP連結点を通ってDNAシークエンシングにより確かめた。pEK162から発現されるタンパク質(BAPBD;図1)はカルボキシ末端にBAPの42アミノ酸を付加した(機能活性化配列を欠いている)酵母転写活性化タンパク質Gal4のDNA結合ドメインを含有する融合タンパク質を含んでなった。未改変のBAP42の発現をもたらす発現プラスミドを開発した。上記のようなPCRにおいてオリゴ#2(5’−AAGCTTAAG ATG GAT
GCA GAA TTC CGA C)をオリゴ#3と対にした。この増幅の産物は5’HindIII部位及びサッカロミセス・セレビシエにおける発現のために最適化された翻訳開始シグナルを含む。
【0066】
再び、DNAフラグメントをTA系にクローン化した。次に、それをHindIIIフラグメント上で単離し、HindIIIで切断したpCUP中にクローン化した。得られたプラスミド、pEK149(BAP;図1)中のBAP遺伝子の方向をDNAシークエンシングにより確かめた。BAP発現プラスミドpEK149(選択マーカーとしてURA3を用いた)及びpEK162(選択マーカーとしてTRP1を用いた)を酵母宿主CY770(Ozenberger及びYoung、1995)中に形質転換した。両方のプラスミドを含有する株をCY2091と称した。酵母2−ハイブリッド発現ベクターpACT2(選択マーカーとしてLEU2を用いた)中にクローン化されたヒト胎児脳から単離されたcDNAフラグメントからなるプラスミドライブラリーをClontech Laboratories,Inc.(Palo Alto、CA)から購入した。ライブラリー由来のタンパク質を図1において未知ADとして示す。このライブラリーを用いてCY2091を形質転換した。3つ全てのプラスミドを含有する細胞を選択するためにウラシル、トリプトファン及びロイシンを欠いている合成完全(SC)酵母増殖培地上にサンプルを広げた。また、培地はヒスチジンも欠き、そして酵母HIS3遺伝子の産物のインヒビターの3−アミノ−トリアゾールを25mMの濃度で含有した。HIS3レポーター遺伝子の低レベルの構成的発現からの活性を減らすために3−アミノ−トリアゾールを利用した。プレートを30℃で12日間インキュベートした。増加したヒスチジン原栄養を示す24個のコロニーを単離した。形質転換コントロールにより、スクリーニングが10の別個のクローンをアッセイしたことが示された。陽性クローンの中身を素早く決定するためにPCR法を利用した。標準法により各陽性株から全DNAを単離した。ライブラリーベクターpACT2のクローニング領域に隣接するオリゴ#4(5’−TTTAATACCA CTACAATGGA T)と#5(5’−TTTTCAGTAT CTACGATTCA T)を用いるPCRの鋳型としてこの材料を用いた。DNAフラグメントをTA系に連結し、DNAシークエンシングにより調べた。(上記のような)クローン#14中に含まれるライブラリープラスミドをエシェリキア・コリ中に往復させることにより単離した。ヒトcDNA配列のヌクレオチド配列を決定し、最初のPCR産物の配列を確認した。
【0067】
バイオアッセイ
ロイシン及びトリプトファンを欠いている2mlのSC培地中で株を約7x10細胞/mlの密度まで一晩増殖させた。細胞を数え、滅菌水中で10から10細胞/mlまで10倍連続希釈物を作製した。ロイシン、トリプトファン及びヒスチジンを欠き、25mM 3−アミノ−トリアゾールを含有するSC培地上にこれらのサンプルを5μlアリコートで置いた。プレートを30℃で2ないし3日間インキュベートした。Gal4 DNA結合ドメイン融合タンパク質と関係のない転写活性化ドメイン融合タンパク質を発現する(または単に挿入された配列のないpACTベクターを含有する)コントロール株に比較して増加した原栄養増殖により陽性のタンパク質/タンパク質相互作用を同定した。これらのコントロール株を上記の図においてラベル「ベクター」として示した。このアッセイ法は非常に再現性があり、標的タンパク質間の特異的相互作用によりもたらされる増殖の微妙な誘導の検出を与えた。BBP1Δtmを発現するようにタンパク質産物を短くするためのPCR鋳型として、pEK196と称し、ATCC 98399として寄託した元のBBP1クローン(本明細書においてクローン14と呼ばれる)を用いた。センスプライマー#6(5’−TTTAATACCA CTACAATGGA T)はpACT2中のGAL4配列にアニーリングした。アンチセンスプライマー#7(5’−CTCGAG TTA AAA TCG ATC TGC TCC CAA CC)はBBP1のDRFモチーフをコードする配列のすぐ3’に3’終止コドン及びXhoI部位を含んだ。PCR産物をTAクローニングベクターに連結し、続いて、EcoRIXhoIで消化し、pACT2中にクローン化した。このプラスミド(pEK198)から発現されるハイブリッド産物をBBP1Δtmで示した。同様に、BBP1ΔN発現プラスミドpEK216を作製するためにプライマー#7をプライマー#8(5’−GAATT CCA AAA ATA AAT GAC GCT ACG)と対にした。再び、PCR産物をTA系に連結し、BBP1フラグメント(コドン123−202)を含む得られたプラスミドをEcoRIXhoIで消化し、最後に同じ酵素で消化したpACT2に連結した。pACT2特異的オリゴ#6をアンチセンスオリゴ#9(5’−CTCGAG TCA AGA TAT GGG CTT GAA AAA AC)と共に用いることによりBBP1ΔCを作製した。TAクローニング、EcoRIXhoIフラグメントの単離及びpACT2中へのクローニング後に、得られたプラスミド、pEK219は残基68から175までのBBP1を発現した。オリゴヌクレオチド#10(5’−CCTTCC
ATG GAA GTG GCA GTC GCA TTG TCT)と#11(5’−AACACTCGAG TCA AAA CCC TAC AGT GCA AAA C)を用いてBBP1細胞内ループをコードする配列を増幅した。BBP1コドン185ないし217を含有するこの産物をNcoIXhoIで消化し、NcoISalIで切断したpAS2中にクローン化してpOZ339を作製した。全てのGαタンパク質発現プラスミドの構築はpACT2における融合の部位として各ラットcDNA配列(Kang等、1990)の中心近くのBamHI部位を利用した。センスプライマーはBamHI部位の5’の配列にアニーリングし;アンチセンスプライマーは終止コドンの3’の配列にアニーリングし、SalI制限部位を含んだ。プライマーは:Gαo、センス(#17)=5’−GTGGATCCAC TGCTTCGAGG AT、アンチセンス(#18)=5’−GTCGACGGTT GCTATACAGG ACAAGAGG;Gas、センス(#19)=5’−GTGGATCCAG TGCTTCAATG AT、アンチセンス(#20)=5’−GTCGACTAAA TTTGGGCGTT CCCTTCTT;Gai2、センス(#21)=5’−GTGGATCCAC TGCTTTGAGG GT、アンチセンス(#22)=5’−GTCGACGGTC TTCTTGCCCC CATCTTCCであった。PCR産物をTAベクター中にクローン化した。Gα配列をBamHISalIフラグメントとして単離し、BamHISalIで消化したpACT2中にクローン化した。プラスミド名称は表2を参照。最後に、ヒトBAPの齧歯類配列への転化のためにオリゴヌクレオチド#23を合成した。このプライマーは配列5’−ATATGGCCATG GAT GCA GAA TTC GA CAT
GAC TCA GGA TT GAA GTT CTを有する。トリプレットはBAPの最初の13コドンを表し;齧歯類配列を生じるように変えた3個のヌクレオチドに下線を引く。鋳型としてpEK162を用いるPCRにおいてクローニング部位の3’であるY2Hベクターの領域にアニーリングする#24(5’−TGACCTACAG GAAAGAGTTA)とオリゴ#23を対にした。産物をNcoISalIで切断し、pAS2に連結してpEK240を作製した。齧歯類BAPをコードするセグメントのヌクレオチド配列を確認した。
【0068】
ゲノムクローニング;RACE(cDNA末端の迅速増幅)
ヌクレオチド187−600(図2)に相当するランダムにプライミングされたEcoRI/ClaIフラグメントプローブで、2.0x10pfuに相当するヒトゲノムラムダライブラリー(Stratagene)をスクリーニングした。製造業者(Pharmacia)のプロトコルに従ってT7QuickPrimerキットを用いてプローブを[32P]−CTPで標識した。高ストリンジェンシー下:50%ホルムアミド、0.12M NaHPO、0.25M NaCl、7% SDS及び25mg/mlの超音波処理したサケ精子DNA中40℃でフィルターをハイブリダイズさせ、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する0.1 x SSC中65℃で洗浄し、Kodak BioMax MSフィルムに露出させた。プローブにハイブリダイズするラムダファージクローンを連続平板培養及び再スクリーニングによりプラーク精製した。10個の陽性クローンを精製し、元のcDNAクローンから既知の最も5’の配列に対する45ntオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによるさらなる分析に供した。このオリゴヌクレオチドはヌクレオチド157−201(図2)の逆相補物であり、配列5’−CCAGGCGGCC GCCATCTTGG AGACCGACAC TTTCTCGCCA CTTCCを有する。標準的な分子生物学技術によりラムダファージDNAを単離し、ABI373シーケンサーで蛍光ジデオキシサイクルシークエンシングを用いた直接シークエンシングに供した。
【0069】
RACE:第一鎖DNA合成を、rTth熱安定性ポリメラーゼ系(Perkin Elmer)を用いて実施した。以下の試薬:1X 逆転写バッファー、1mM MnCl、1.6mM dNTPミックス、2.5U rTthポリメラーゼ、100ngヒト海馬ポリARNA(Clontech)、10mMオリゴヌクレオチド(nt429−452、図2;5’−GTTATGTTGG GTGCTGGAAA ACAG)を、10μl容量を与えるように1.5mLチューブ中で合わせた。反応を70℃で15分間インキュベートし、すぐに氷上に置いた。第二鎖cDNA生成のためにMarathon cDNA合成キット(Clontech)を用いた。第一鎖反応からの全10μlを以下の試薬:1X 第二鎖バッファー、0.8mM dNTPミックス、4X 第二鎖カクテル(エシェリキア・コリDNAポリメラーゼI、エシェリキア・コリDNAリガーゼ、エシェリキア・コリRNaseH)及び80μlの容量までのdHOと合わせた。チューブを16℃で1.5時間インキュベートし、その後、T4 DNAポリメラーゼ(10U)を添加し、16℃でさらに45分間インキュベートした。反応を停止するために、4μlの20X EDTA/グリコーゲン(0.2M EDTA/2mg/mlグリコーゲン)を反応混合物に添加し、続いて、酵素及び他の不純物を除くためにフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出した。0.1X 容量の3M酢酸Na pH 5.2及び2.5X 容量の試薬等級EtOHを添加し、−70℃に置くことによりDNAを沈殿させた。DNAを70% EtOHで1回洗浄し、乾燥させ、10μlのdHO中に再懸濁した。以下のようにClontechプロトコルに従って次のRACE PCR反応に用いるためにDNAの半分をMarathonアダプターライゲーションに用いた:5μlのcDNAを2μl(10mM)Marathon(5’−CTAATACGAC TCACTATAGG GCTCGAGCGG CCGCCCGGGC AGGT)、1X DNAライゲーションバッファー及び1μl(1U)T4 DNAリガーゼに添
加した。反応混合物を16℃で一晩インキュベートした。混合物を最初のRACE反応のために1:50希釈し、以下のもの:40μl dHO、1μl 10X Klentaq DNAポリメラーゼ(Clontech)、1μl(10mM)AP1プライマー(5’−CCATCCTAAT ACGACTCACT ATAGGGC)、1μl(10mM)BBP1特異的プライマー(nts.187−209に相当する、図2;5’−CCAGACGGCCA GGCGGCCGCC AT)、5μl 10X Klentaqポリメラーゼバッファー、1μl 10mM dNTPミックス、1μlの上記の反応からの希釈したcDNAと共に0.2mL PCRチューブ中で合わせた。Perkin Elmer GeneAmp PCRシステム2400サーモサイクラーを用いて以下のサイクリング条件:94℃で1分間の変性サイクル、続いて、94℃で30秒、72℃で3分を5サイクル、94℃で30秒、70℃で3分を5サイクル、続いて、94℃で30秒、68℃で3分を25サイクル、72℃で7分の最後の伸長を実施した。これに以下のようなネスティッド(nested)RACE PCR反応を続けた:40μl dHO、1μl(1U)10X AmplitaqGold DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)、1μl(10mM)AP2プライマー(5’−ACTCACTATA GGGCTCGAGC GGC)、1μl(10mM)BBP1特異的プライマー(nts.172−194に相当する、図2;5’−GCCGCCATCT TGGAGACCGA CAC)、5μl 10X Amplitaqポリメラーゼバッファー、1μl 10mM dNTPミックス、1μlの一次RACE産物。PCRサイクリング条件は94℃で9分の初期変性サイクル、94℃で30秒、68℃で30秒、72℃で2分を25サイクル、続いて7分間の72℃伸長であった。PCR産物を1X TBEバッファー中で1%アガロースゲルで泳動した。得られた350塩基対の産物をゲル精製し、TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて直接クローン化した。ライゲーション混合物をOneShot細胞(Invitrogen)中に形質転換し、X−galを含有するLB−アンピシリン(100μg/ml)寒天プレート上で平板培養した。ミニプレップDNAを得、ABI 373シーケンサーで蛍光ジデオキシサイクルシークエンシングにより調べた。
【0070】
ノーザン分析.
ヒトの複数の組織及び複数の脳組織のmRNAノーザンブロットをClontech(Palo Alto、CA)から入手した。元の融合連結点からポリ−A領域までに及ぶBBP1配列をpEK196から得られたTAクローンからEcoRIフラグメント上で単離した。β−アクチンDNAは製造業者により供給された。32P−dCTP(Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)を取り込むためにランダムプライミング法を用いてこれらのDNAから放射性標識されたプローブを生成した。ハイブリダイゼーションをExpress Hyb溶液中、68℃で製造業者(Clontech)の説明書に従って実施した。ブロットを2xSSC(1XSSCは0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウムである)、0.05% SDS中で室温で洗浄し、続いて、0.1xSSC、0.1% SDS中、50℃で2回洗浄した。Kodak BioMaxフィルムへの露出によりハイブリダイゼーションシグナルを視覚化した。
【0071】
インサイチューハイブリダイゼーション
全長ヒトBBP cDNAを含有するプラスミドクローンを用いてPCRによりリボプローブ合成のためのDNA鋳型を調製した。cDNAの3’UTRを標的とする単一リボプローブを用いた。プローブ配列をジーンバンクデータベースに対して照合してそれらが全ての寄託配列の中で適切な標的のみを認識することを確実にした。BBP1のリボプローブを生成するために、BBP1 cDNAの3’UTRからの275塩基対領域を増幅し、さらに、T7(センス)及びT3(アンチセンス)ポリメラーゼのプロモーター配列を付加するように1組のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。これらのプライマー
は以下の配列:5’−TAATACGACT CACTATAGGG TTAGAAGAAA CAGATTTGAG(フォワード);5’−ATTAACCCTC ACTAAAGGGA CAAGTGGCAA CTTGCCTTTG(リバース)を含んだ。PCR産物を1.5%低融点アガロースゲルでゲル精製し、産物を含有するバンドを切り出し、フェノール及びフェノール−クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させた。ペレットを乾燥させ、1X TEバッファー(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH 7.4)中に再懸濁した。APPリボプローブ鋳型はJacobsen等(1991)により記述されたように、タンパク質コーディング領域からのDdeIXhoIフラグメントからなった。(35S)−CTP(New England Nuclear、Boston、MA)及びリボプローブGeminiTM(商標)システム(Promega、Madison、WI)を用いた転写反応のために50ngのDNA鋳型を用いた。 死後ヒト海馬の切片を用いたインサイチューハイブリダイゼーション組織化学を以前に記述されたように実施した(Rhodes、1996)。Hacker−Brightsクリオスタットで10μmで切片を切断し、Vectabond試薬(Vector Labs、Burlingame、CA)で被覆した冷却(−20℃)スライド上に融解固定した。全ての溶液を0.1%(v/v)ジエチルピロカーボネートで処理したdHO中に調製し、オートクレーブした。PBS(pH7.4)中4%のパラホルムアルデヒド中に浸すことにより切片を固定し、次に、連続して2xSSC、dHO及び0.1Mトリエタノールアミン、pH 8.0中に浸した。次に、0.25%(v/v)無水酢酸を含有する0.1Mトリエタノールアミン中に浸すことにより切片をアセチル化し、0.2xSSC中で洗浄し、50、70及び90%エタノール中で脱水し、迅速に乾燥させる。10mM Tris(pH 7.6)中に0.9M NaCl、1mM EDTA、5xデンハルト、0.25mg/ml一本鎖ニシン精子DNA(GIBCO/BLR、Gaithersberg、MD)、50%脱イオンホルムアミド(EM Sciences、Gibbstown、NJ)を含有する1mlのプレハイブリダイゼーション溶液を各スライド上にピペットで移し、スライドを給湿箱中で50℃で3時間インキュベートした。次に、50、70及び90%エタノール中に浸すことにより切片を脱水し、風乾させた。10mM Tris(pH 7.6)中に0.9M NaCl、1mM EDTA、1xデンハルト、0.1mg/ml酵母tRNA、0.1mg/ml一本鎖サケ精子DNA、デキストラン硫酸(10%)、0.08% BSA、10mM DTT(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)及び50%脱イオンホルムアミドを含有するハイブリダイゼーション溶液に標識したリボプローブを50,000cpm/μlの最終濃度で添加した。次に、プローブを95℃で変性させ(1分)、氷上に置き(5分)、切片上にピペットで移し、給湿室中で55℃で一晩ハイブリダイズさせた。続いて、切片を10mM DTTを含有する2xSSC中、37℃で1x45分、続いて、50%ホルムアミドを含有する1xSSC中、37℃で1x30分、そして2xSSC中、37℃で1x30分洗浄した。ウシ膵臓RNAseA(Boehringer
Mannheim;40mg/ml)、0.5M NaCl及び1mM EDTAを含有する10mM Tris pH8.0中に浸すことにより一本鎖及び非特異的にハイブリダイズしたリボプローブを消化した。切片を2xSSC中、60℃で1時間、続いて0.5%(w/v)チオ硫酸ナトリウムを含有する0.1xSSC中、60℃で2時間洗浄した。次に、0.3M酢酸アンモニウムを含有する50、70、90%エタノール中で切片を脱水し、乾燥させた。スライドをX線カセット中に置き、Hyperfilm b−Max(Amersham)に14−30日間対置した。いったん十分な露出が得られると、核トラック感光乳剤(NTB−2;Kodak)でスライドを覆い、4℃で7−21日間露出させた。乳剤オートラジオグラムを現像し、製造業者の説明書に従って固定し、下にある組織切片をヘマトキシリンで染色した。非特異的標識化を評価するために、リボプローブGeminiTMシステムキット(Promega)中に供給される鋳型からコントロールプローブを作製した。ScaIを用いてこのベクターを直鎖状にし、T3ポリメラーゼを用いて転写した。得られた転写反応はベクター配列のみを含有する2つの産物
、250塩基及び1,525塩基のリボプローブを生成する。このコントロールプローブ混合物を上記のように標識し、50,000cpm/μlの最終濃度でハイブリダイゼーション溶液に添加した。コントロール切片では特異的ハイブリダイゼーションは見られず、すなわち、これらの切片は神経解剖学的標識構造に従わない非常に弱い均一なハイブリダイゼーションシグナルを与えた(データは示されない)。
【実施例1】
【0072】
BAP結合タンパク質(BBP1)のクローニング及び単離
おそらくBAPのいっそう有毒な集合型であると考えられるAPPの42アミノ酸のタンパク質分解フラグメント、ヒトBAP42と相互作用するタンパク質を同定するために酵母2−ハイブリッド(Y2H)遺伝子スクリーニングを開発した。BAP42を酵母Gal4 DNA結合ドメインに融合して発現させ、また、遊離ペプチドとしても発現させた(図1)。この株をヒト胎児脳cDNA Y2Hライブラリーで形質転換した。約10の別個の形質転換体から、上に特定したクローン14と称した単一クローンが一貫したレポーター遺伝子活性化を示し、Gal4ドメインのものと連続した実質的なオープンリーディングフレームを含有した。cDNAインサートはポリ−A領域で終わる984塩基対を含んでなった。この配列は細胞膜を横切るために十分な長さ及び疎水性の2つの領域を有する201アミノ酸(配列番号:2;アミノ酸残基68ないし269)をコードした。
【0073】
ライブラリー由来のプラスミドをクローン14から単離し、Y2Hアッセイ株を再構築するために用いた。これらの株の試験から、反応は弱いが、BAP融合タンパク質がクローン14タンパク質と特異的に相互作用することが示された。膜貫通領域のような強い疎水性のタンパク質ドメインはY2H反応を妨げるので(Ozenberger、未発表データ)、最も強い疎水性の領域を除くためにクローン14インサートを短くし(以下、BBP1Δtm)、BAPとの相互作用に関して再試験した。BBP1Δtmでかなりより強いY2H反応が見られ(図2)、削除した配列が可能性のある膜貫通(「tm」)アンカーをコードするという考えを裏付けた。クローン14のヌクレオチド配列をジーンバンクに対して検索し;このようにしてBAP結合タンパク質(BBP1)は新規であるようであると同定された。
【実施例2】
【0074】
BBP1の5’末端の単離及び確認
上記の実施例1に記述したクローン14中に含まれるBBP1 cDNA配列は、可能性のある開始メチオニンコドンが存在しなかったのでタンパク質コーディング領域の5’末端を欠いていた。標準的な逆転写酵素を利用する通常の5’RACE(cDNA末端の迅速増幅)の多数の試みは27ヌクレオチドの付加をもたらしただけであった。これらの配列はATGを含んだが、これが開始コドンであるという確信を与えるための同じ翻訳読み枠の上流終止コドンを含まなかった。BBP1遺伝子の5’末端を単離するためにゲノムクローニング法を開始した。
【0075】
クローン14の5’配列の400塩基対(bps)に相当するランダムにプライミングされたプローブでのヒトゲノムラムダライブラリーのハイブリダイゼーションは10個の陽性クローンの同定をもたらした。クローン14の最も上流のBBP1配列に対する(そして、400塩基対プローブの5’上流配列に相当する)45塩基オリゴヌクレオチドプローブを用いるこれらのクローンのさらなる特性化により、10個のうち6個のクローンが先に同定されたものの中に含まれる末端の5’配列を含むことが示された。他の4個のラムダクローンは元の400塩基対のランダムにプライミングされたcDNA由来のプローブ内に含まれる他のエキソンに相当することが決定された(データは示されない)。BBP1の5’末端に相当する代表的なクローンからのラムダファージDNAの直接サイク
ルシークエンシングにより、クローン14で既知の配列の上流でそれと重複する500ヌクレオチドが示された。おそらくこの付加配列はイン−フレームの終止コドンが前にあるMETに到達する前に先に特性化されたMETの上流に62個のさらなるアミノ酸をコードする。最も遠い上流のMETから下流に2個のMET残基が存在するが、標準的慣例により、イン−フレームの終止コドンに続く最初の5’METを含むようにヒトBBP1遺伝子のアミノ末端の配列を仮に特定した。全コーディング領域及び推定されるタンパク質配列を配列番号:1及び2に示す。このアミノ酸配列を含有する(BBP1−flで示される)プラスミドを受託番号98617でAmerican Type Culture Collectionに寄託した。
【0076】
5’コーディング配列はゲノムライブラリーから得られたので、この領域がイントロンを含む可能性が存在した。この可能性を2つの方法により調べた。第一に、5’METの領域に対するフォワードプライマー及び元のクローン14内のリバースプライマーを利用して脳cDNA及びゲノムDNAから配列を増幅させた。両方のサンプルから同じ大きさの産物が生成され、この領域内にイントロンがないことが示され、そして元の配列と上流配列の連結が確かめられた。第二に、改変された5’RACE実験において(上記の材料及び方法を参照)ゲノムクローンから得られたものに同一であるcDNA配列が単離された。これらの結果から、(ゲノム及びcDNA起源からの両方の)上流配列及びこの領域中にイントロンがないことが確認された。
【実施例3】
【0077】
BBP1の特性化
基本的な局所整列検索手段(BLAST;Altschul等、1990)を用いてBBP1配列をジーンバンクに比較した。2つのセノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)及び1つのドロソフィラ・メラノガスタ(Drosophila melanogaster)ゲノム配列並びに多数のヒト、マウス及び他の哺乳類の発現配列標識が同定された。しかしながら、完全なcDNA配列も遺伝子に起因すると考えられるいかなる機能データも入手できなかった。BBP1タンパク質及び利用できる発現配列標識の翻訳を整列させ、保存されたセグメントを検索し、MoST(Tatusov等、1994)タンパク質モチーフ検索アルゴリズムにより評価した。これらの分析により、Gタンパク質共役受容体ファミリーに対する可能性のある進化関係が示された。具体的には、これらの分析から、BBP1がGタンパク質共役受容体のtmドメイン3及び4に同等な2つの可能性のある膜貫通(tm)ドメインを含むことが示された。介在する親水性ループは十分に特性化された3個のアミノ酸モチーフ、アスパルテート(D)またはグルタメート及びそれに続くアルギニン(R)及び芳香族残基(YまたはF)(一般にDRY配列と呼ばれる)を含有し、それはこの受容体ファミリーのほとんど全てのメンバーにおいて保存され、そしてGタンパク質活性化のための分子引き金として働くことが示されている(Acharya及びKarnik、1996)。これらのデータは、BBP1がGタンパク質共役受容体スーパーファミリーのメンバーと共有する機能モジュールをおそらく含有する新規なタンパク質であることを示す。具体的には、BBP1は2つの予測されるtmドメイン間に重要なDRF配列を保持し、それ故、Gタンパク質調節シグナリング経路に共役する可能性を有するようである。
【0078】
BBP1の構造分析により、それが関係のあるGタンパク質共役受容体中のGαタンパク質活性化配列であることが知られている構造モチーフを含有することが示された。Gタンパク質共役受容体の様々なメンバーとBBP1の相互作用を示すY2Hアッセイを図3に示す。構造予測に基づいて、BBP1は両末端を管腔区画に有して膜を2回横切るように表される。他の配置を完全に除外することはできない。上に記述した可能性のあるタンパク質相互作用をY2Hアッセイにおいて調べた。BBP1Δtmクローン中に含まれるBBP1配列の2つの重複する部分を増幅し、Y2HベクターpACT2中にクローン化
した(発現プラスミドpEK216及びpEK219、表2並びに対応するタンパク質BBP1ΔN及びBBP1ΔC、図4)。ΔC構築物は両方のtmドメインを欠いており;ΔN構築物は1番目のtmドメインとその前の52アミノ酸をコードする。これらの融合タンパク質をBAP融合タンパク質と共にアッセイし、より大きいBBP1Δtmタンパク質を発現する株のものに反応を比較した。これらの結果は、BAPとの結合のための主要な決定基が、野生型APPタンパク質中のBAPに構造関係的に類似していると予測されるBBP1領域内に含まれることを示唆する。
【実施例4】
【0079】
ヒトBBP1発現の組織分布
BBP1 mRNAの発現を遺伝子及びその産物の活性を解明することにおける最初の段階として評価した。全ての組織で1.25kbの主要な転写産物が見られた(図5A)。心臓において高レベルの発現があった。全脳は中間レベルの発現を示した。別の脳領域から得られたサンプルは全てBBP1発現を示した(図5B)。興味深いことに、大脳辺縁領域は比較的多量のBBP1 mRNAを含有した。これらはBAP集合及び関連する神経毒性が最初に起こる脳の領域である。BBP1特異的リボプローブを用いて得られたインサイチューハイブリダイゼーションオートラジオグラムの分析から、ヒト海馬及び嗅内皮質において、BBP1 mRNAがグリア細胞とは対照的にニューロンにおける発現と一致したパターンで中間ないし大きい細胞で発現されることが示された(図6)。さらに、BBP1 mRNAは実質的に全ての海馬及び嗅内ニューロンで発現され、すなわち、ハイブリダイゼーションシグナルの強さのいかなる実質的または薄片(laminar)差もないようである。興味深いことに、BBP1発現のパターンはアミロイド前駆体タンパク質APPのmRNAに対するリボプローブを用いて見られたパターンに顕著に類似した(図6)。要約すると、BBP1 mRNAは調べられた全ての組織及び全ての脳領域において見られた。また、BBP1 mRNA発現のインサイチュー分析も海馬領域における多量の発現を示した。
【実施例5】
【0080】
BBP1発現の細胞系分布
BBP1発現を多数の細胞系においても調べ、National Center for Biotechnology Informationからの発現配列標識の収集、dbESTからデータを抽出した。組み換えタンパク質発現のために一般に利用される細胞系及び様々な癌細胞系におけるBBP1 mRNA発現を定性的に評価するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法を利用した。BBP1はハムスターCHO及びヒトHEK293細胞において見られた。シグナルは胚幹細胞系Ntera−2並びに神経芽細胞腫系IMR32及びSK−N−SHにおいて見られた。BBP1発現は以下の組織起源に相当する癌細胞系において見られた:結腸(Cx−1、Colo205、MIP101、SW948、CaCo、SW620、LS174T)、卵巣(A2780S、A2780DDP)、胸(MCF−7、SKBr−3、T47−D、B7474)、肺(Lx−1、A5439)、黒色腫(Lox、Skmel30)、白血病(HL60、CEM)、前立腺(LNCAP、Du145、PC−3)。以下の癌細胞系から単離されたmRNAを検出するノーザンブロットは全てのサンプルにおいてBBP1発現を示した:前骨髄性白血病(HL−60)、癌腫(HeLa S3)、慢性骨髄性白血病(K−562)、リンパ芽球性白血病(MOLT−4)、バーキットリンパ腫(Raji)、結腸腺癌(SW480)、肺癌(A549)及び黒色腫(G361)。
【実施例6】
【0081】
齧歯類BAPに対してヒトBAPとBBP1の選択的相互作用
ヒト配列に比較して齧歯類BAP配列には3個のアミノ酸置換がある(G5R、F10Y及びR13H)。齧歯類ペプチドは減少した神経毒性及びヒト脳ホモジェネートへの結
合の欠如を示す(Maggio等、1992)。それ故、Y2H系においてBBP1と齧歯類BAPの結合を評価することは興味深かった。上記のPCRによるオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発によりpEK162中のヒトBAPの配列を齧歯類ペプチドをコードするように変えた。得られたプラスミドpEK240は、齧歯類ペプチド配列のアミノ酸置換を生じる3つのコドンを除いて、本発明を通して利用されるヒトBAP融合タンパク質発現プラスミドに同一であった。BBP1融合タンパク質と齧歯類及びヒトBAP融合タンパク質の相互作用をY2Hバイオアッセイにより比較した。BBP1と齧歯類BAPを発現する株は増殖反応を示すことができなかった(図7)。この結果はBBP1がBAPの神経毒性作用の特異的メディエーターとして働く可能性があるという前提を裏付け、そして齧歯類BAPの減少した神経毒性を説明するための機構を与える。重要なことに、3個のアミノ酸の置換は結合を完全に妨げるために十分であった(図7)ので、これらのデータはY2HアッセイにおけるBBP1/BAP相互作用の高度の特異性を示すためにも役立つ。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
以下、本発明の主要な態様または特徴について列挙する:
1.(a)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(b)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(c)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(d)ヌクレオチド202からヌクレオチド807までの配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(e)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(f)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号:2のアミノ酸68からアミノ酸269までのアミノ酸配列を含んでなる、ヒトβ−アミロイドペプチド結合活性を有する配列番号:2のアミノ酸配列のフラグメントを含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j)上記の(a)−(f)のポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチド;
(k)上記の(g)−(h)のタンパク質の種相同物をコードすポリヌクレオチド;及び(l)(a)−(h)において特定されたポリヌクレオチドのいずれかに厳しい条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、
よりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチド。
【0087】
2.該ポリヌクレオチドが少なくとも1つの発現制御配列に機能的に連結されている態
様1のポリヌクレオチド。
【0088】
3.態様2のポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞。
【0089】
4.該細胞が原核または真核細胞である態様3の宿主細胞。
【0090】
5.態様2のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の製造方法であって、(a)適当な培養培地中で態様3の宿主細胞の培養物を増殖させ;そして(b)培養培地からタンパク質を精製することを含んでなる方法。
【0091】
6.態様5の方法により製造されるタンパク質。
【0092】
7.(a)配列番号:2のアミノ酸配列:
(b)アミノ酸68からアミノ酸269までの配列番号:2のアミノ酸配列;
(c)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるアミノ酸配列;
(d)配列番号:2のアミノ酸185からアミノ酸217までのアミノ酸配列を含んでなる配列番号:2のアミノ酸配列のフラグメント、
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
【0093】
8.該タンパク質が配列番号:2のアミノ酸配列含んでなる態様7のタンパク質。
【0094】
9.異種起源のタンパク質またはペプチド配列に連結されたBBP1を含んでなる融合タンパク質。
【0095】
10.BBP1が配列番号:2のアミノ酸配列を有する態様9の融合タンパク質。
【0096】
11.配列番号:1のBBP1配列の一部に相補的なアンチセンス配列をコ−ドし、BBP1遺伝子の発現を妨げるオリゴヌクレオチド。
【0097】
12. サンプル中のβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコ−ドするポリヌクレオチドの確認方法であって、(a)該ポリヌクレオチドに特異的なプローブを、該プローブが該ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするために有効な条件下でサンプルにハイブリダイズさせ;そして(b)サンプル中のポリヌクレオチドへの該プローブのハイブリダイゼーションを確認する工程を含んでなり、その場合、該プローブが配列番号:1のポリヌクレオチド配列に少なくとも90%同一の20またはそれ以上の塩基対の領域を有する核酸配列を含んでなる方法。
【0098】
13.サンプル中のβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコ−ドするポリヌクレオチドの確認方法であって、(a)該ポリヌクレオチドに特異的なプローブを、該プローブが該ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするために有効な条件下でサンプルにハイブリダイズさせ;そして(b)サンプル中のポリヌクレオチドへの該プローブのハイブリダイゼーションを確認する工程を含んでなり、その場合、該プローブがATCC 98617またはATCC 98399のcDNAインサートのポリヌクレオチド配列に少なくとも90%同一の20またはそれ以上の塩基対の領域を有する核酸配列を含んでなる方法。
【0099】
14.配列番号:2のアミノ酸配列に配列が少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【0100】
15.ATCC 98617のcDNAインサートによりコ−ドされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質のアミノ酸配列に配列が少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【0101】
16.配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドをサンプルにおいて検出するための方法であって、(a)特異的結合のために有効な条件下で該ポリペプチドに特異的に結合する試薬をサンプルとインキュベートし;そして(b)サンプル中の該ポリペプチドへの該試薬の結合を確認することを含んでなる方法。
【0102】
17.ATCC 98617のcDNAインサートによりコ−ドされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質のアミノ酸配列に配列が少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドをサンプルにおいて検出するための方法であって、(a)特異的結合のために有効な条件下で該ポリペプチドに特異的に結合する試薬をサンプルとインキュベートし;そして(b)サンプル中の該ポリペプチドへの該試薬の結合を確認することを含んでなる方法。
【0103】
18.(a)配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドを含んでなる試薬とヒトβ−アミロイドペプチドの異常な発現を示すサンプルを該ヒトβ−アミロイドペプチドへの該試薬の特異的結合のために有効な条件下でインキュベートし;そして(b)サンプル中の該ペプチドへの該試薬の結合を確認することを含んでなる、ヒトβ−アミロイドペプチド(BAP)の異常な発現を特徴とする疾病の診断方法。
【0104】
19.(a)ATCC 98617のcDNAインサートによりコ−ドされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドを含んでなる試薬とヒトβ−アミロイドペプチドの異常な発現を示すサンプルを該ヒトβ−アミロイドペプチドへの該試薬の特異的結合のために有効な条件下でインキュベートし;そして(b)サンプル中の該ペプチドへの該試薬の結合を確認することを含んでなる、ヒトβ−アミロイドペプチドの異常な発現を特徴とする疾病の診断方法。
【0105】
20.宿主から得られたサンプル中の態様1のポリヌクレオチドの存在を分析することを含んでなる診断方法。
【0106】
21.β−アミロイドペプチド結合タンパク質の活性を調節する化合物の同定方法であって、(a)該試験化合物を含有する試験媒質中にヒトβ−アミロイドペプチドを含んでなるサンプルと配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドを含んでなる試薬を該ヒトβ−アミロイドペプチドへの該試薬の特異的結合のために有効な条件下でインキュベートし;(b)該試験化合物の有無でサンプル中の該ペプチドへの該試薬の結合を比較し;そして(c)工程(b)における結合の差をβ−アミロイドペプチド結合タンパク質の活性を調節する試験化合物に結び付けることを含んでなる方法。
【0107】
22.β−アミロイドペプチド結合タンパク質の活性を調節する化合物の同定方法であって、(a)該試験化合物を含有する試験媒質中にヒトβ−アミロイドペプチドを含んでなるサンプルとATCC 98617のcDNAインサートによりコ−ドされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも90%同一の領域を含んでなるポリペプチドを含んでなる試薬を該ヒトβ−アミロイドペプチドへの該試薬の特異的結合のために有効な条件下でインキュベートし;(b)該試験化合物の有無でサンプル中の該ペプチドへの該試薬の結合を比較し;そして(c)工程(b)における結合の差をβ−
アミロイドペプチド結合タンパク質の活性を調節する試験化合物に結び付けることを含んでなる方法。
【0108】
23. 態様7のポリペプチドの治療的に有効な量を患者に投与することを含んでなる、脳におけるβ−アミロイドペプチド蓄積を妨げる必要がある患者の処置方法。
【0109】
24. 態様2のポリヌクレオチドを含んでなるトランスジェニックまたはキメラ動物。
【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
【表9】

【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

【0115】
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】酵母ツーハイブリッド(Y2H)スクリーニング設計のスキームを示す概略図である。
【図2】BBP1/BAP結合の証明をする、酵母ツーハイブリッドアッセイの結果を示す図に代わる写真である。
【図3】Gαタンパク質とBBP1の相互作用を示すバイオアッセイの結果を示す図に代わる写真である。
【図4】BBP1とBAPの相互作用の部位を明らかにするためのアッセイ結果を示す図に代わる写真である。
【図5】ヒト組織(A)及び脳領域(B)におけるBBP1 mRNAの発現の結果を示す図面に代わる写真である。
【図6A】海馬の細胞におけるBBP1の発現の結果を示す図に代わる写真である。略語:DG=歯状回;CA1=海馬部分体(subfield);EC=嗅内皮質。
【図6B】海馬の細胞におけるAPPの発現の結果を示す図に代わる写真である。略語:DG=歯状回;CA1=海馬部分体(subfield);EC=嗅内皮質。
【図7】ヒトまたは齧歯類BAPとのBBP1相互作用の比較を示すためのアッセイ結果を示す図に代わる写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(b)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(c)受託番号ATCC 98617で寄託されたクローンBBP1−flのcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(d)ヌクレオチド202からヌクレオチド807までの配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(e)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド;
(f)受託番号ATCC 98399で寄託されたクローンpEK196のcDNAインサートによりコードされるβ−アミロイドペプチド結合タンパク質(BBP)をコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号:2のアミノ酸68からアミノ酸269までのアミノ酸配列を含んでなる、ヒトβ−アミロイドペプチド結合活性を有する配列番号:2のアミノ酸配列のフラグメントを含んでなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(j)上記の(a)−(f)のポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチド;
(k)上記の(g)−(h)のタンパク質の種相同物をコードするポリヌクレオチド;及び
(l)(a)−(h)において特定されたポリヌクレオチドのいずれかに厳しい条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、
よりなる群から選択される単離されたポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−253275(P2008−253275A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159606(P2008−159606)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願平10−544196の分割
【原出願日】平成10年4月14日(1998.4.14)
【出願人】(598014180)
【Fターム(参考)】