説明

β−ラクタムの鏡像異性体混合物の分離

C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体の鏡像異性体混合物を分離する新規方法を開示する。光学活性プロリンアシル化剤で鏡像異性体混合物を処理して、C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー、またはC3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー混合物を生成し、次いで、未反応鏡像異性体、またはジアステレオマーの1つを、選択的に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、β-ラクタムの鏡像異性体混合物の改良された分離法に関する。
【背景技術】
【0002】
β-ラクタムは、生物活性を有し、種々の他の生物活性化合物の合成中間体として使用されている。これらの生物活性化合物の立体化学がそれらの薬理活性に影響を与えうるので、β-ラクタム化合物の効率的な立体特異的製造法が研究の対象となっている。
【0003】
米国特許第6225463号において、de Vosらは、環形成のジアステレオ選択性を制御するための、キラルイミンと塩化アシルとの反応を記載している。特に、(S)-(−)-1-(p-メトキシフェニル)-プロピル-1-アミンをアルデヒドで処理することによって、キラルイミンを生成している;(S)-(−)-1-(p-メトキシフェニル)-プロピル-1-アミンは、その生成のために、鏡像異性体分離を必要とした。この反応は、結晶化によって分離できるジアステレオマー混合物を生じる。
【0004】
Synlett 1992, 9, 761-763において、Farinaらも、環形成工程のジアステレオ制御のための、キラルイミンと塩化アシルとの反応を記載している。この場合、2-ベンゾキシ-または2-アセトキシ-エタノイルクロリドを、N-(L)-2-シリル化トレオニン-2-フェニルイミンで処理し、それによって、19:1もの高いジアステレオ選択性を有する対応するシス-3-ベンゾキシまたはアセトキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(例えば、(3R,4S)-および(3S,4R)-)を生成している。しかし、β-ラクタムの窒素に結合した(L)-トレオニン基を除去するために、5工程反応手順を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、より少ない工程で鏡像異性的富化βラクタムを製造する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の種々の態様の1つは、鏡像異性的富化β-ラクタムの効率的な製造法である。
【0007】
別の態様は、第一および第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体の鏡像異性体混合物を分離する方法であって、アミンの存在下に光学活性プロリンアシル化剤で鏡像異性体混合物を処理して生成物混合物を形成することを含んで成る方法である。生成物混合物は、第一および第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体を、それぞれ、光学活性プロリンアシル化剤と反応させることによって形成される第一および第二C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーを含有する。生成物混合物は、場合により、未反応第二C3-ヒドロキシβ-ラクタム鏡像異性体を含有することもある。該方法は、未反応第二C3-ヒドロキシβ-ラクタム鏡像異性体または第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタムジアステレオマーから、第一C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーを分離することも含んで成る。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、式4:
【化1】

[式中、
aは、1または2であり、それによって、ヘテロシクロ環はプロリンまたはホモプロリンであり;
破線は、C3およびC4環炭素原子間の任意の二重結合を表し;
Rnは、窒素保護基であり;
X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロまたは-SX7であり;
X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アシルまたはヘテロシクロであるか、またはX5ならびにそれらが結合している炭素および窒素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X5は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、-COX10、-COOX10、-CONX8X10、-SiR51R52R53であるか、またはX3ならびにそれらが結合している窒素および炭素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X7は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;ならびに
R51、R52およびR53は、独立して、アルキル、アリールまたはアラルキルである]
の構造を有するβ-ラクタム化合物である。
【0009】
他の目的および特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によれば、商業的に入手可能な光学的富化プロリンを使用して、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタムの鏡像異性体混合物の分離を可能にする方法が見出された。好都合にも、この方法は、高い鏡像異性体過剰率を有するβ-ラクタムを生じ、従来法より少ない工程で行われる。
【0011】
鏡像異性体は同じ物理的特性、例えば溶解性を有するが、偏光を反対方向に回転させるので、それらを標準的な物理的および化学的方法によって分離することは困難である。しかし、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体をキラル環境に置いた場合、それらの特性は識別可能である。鏡像異性体をキラル環境に置く1つの方法は、それらを光学活性プロリンアシル化剤と反応させて、C3-エステル置換ジアステレオマーを生成することである。反応物(例えば、C3-ヒドロキシ置換鏡像異性体)から生成物(例えば、C3-エステル置換ジアステオマー)への反応の程度によって、(1)鏡像異性体と光学活性プロリンアシル化剤との微分反応度(即ち、動的分離)、または(2)光学活性プロリンアシル化剤との反応による鏡像異性体のジアステレオマーへの変換(即ち、古典的分離)のいずれかを使用して、鏡像異性体を化学的および物理的に区別する。鏡像異性体と光学活性プロリンアシル化剤との微分反応度を使用する方法において、反応条件を変化させて、より高い反応性のC3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体(または、第一C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体)の対応するジアステレオマーへの変換を最大にし、一方、より低い反応性のC3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体(または、第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体)の対応するジアステレオマーへの変換を最少にする。例えば、より高い反応性の鏡像異性体が光学活性プロリンアシル化剤と反応するにつれて、より高い反応性の鏡像異性体の濃度が減少し、対応するジアステレオマーへの変換の速度が遅くなる。それと並行して、光学活性プロリンアシル化剤とより低い反応性の鏡像異性体との反応速度が増加する。
【0012】
例えば、時間、温度および出発物質比に依存して、反応を調節し、それによって、変化する量のより低い反応性の鏡像異性体が、光学活性プロリンアシル化剤と反応してジアステレオマーを形成することができる。例えば、より高い反応性の鏡像異性体が実質的に反応しているが、より低い反応性の鏡像異性体は実質的に未反応である際に反応が終わるように反応進行を合わせ、鏡像異性体間の反応速度差を増大させるために反応温度を下げ、かつ、光学活性プロリンアシル化剤/鏡像異性体混合物の比率を下げること(例えば、0.5:1)は、より低い反応性の鏡像異性体に対応するジアステレオマーの生成より、より高い反応性の鏡像異性体に対応するジアステレオマーの生成に有利である。
【0013】
例えば、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%(重量またはモルベース)の鏡像異性体を、光学活性プロリンアシル化剤と反応させて、C3-エステル置換ジアステレオマーを形成した場合に、より高い反応性の鏡像異性体が実質的に反応している。同様に、例えば、約30%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満(重量またはモルベース)の鏡像異性体が、光学活性プロリンアシル化剤と反応した場合に、より低い反応性の鏡像異性体が実質的に未反応である。
【0014】
あるいは、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体の、対応するC3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーへの実質的に完全な変換に有利になるように、反応時間、反応温度および出発物質比を調節することができる。例えば、反応時間がより長く、反応温度がより高く、光学活性プロリンアシル化剤/鏡像異性体の比がより高い(例えば、1:1)場合、ジアステレオマーへの完全な変換に有利である。次に、これらのジアステレオマーを化学的または物理的に相互に分離して、対応するジアステレオマーの加水分解時に所望の鏡像異性体を得る。
【0015】
さらに、光学活性プロリンアシル化剤の鏡像異性体過剰率が重要である。鏡像異性体過剰率が高いほど、ジアステレオマーの2つの可能な対の一方の対の濃度がより高くなる。動的分離であるかまたは古典的分離であるかによって、ジアステレオマーの実質的に1つまたは1対を形成することによって、形成された生成物の分離が促進される。従って、より低い鏡像異性体過剰率を有する光学活性プロリンアシル化剤の使用が可能であるが、好ましくは、光学活性プロリンアシル化剤は、少なくとも約70%e.e.の鏡像異性体過剰率を有する。
【0016】
動的分離法において、D-プロリンが鏡像異性体対の1つと優先的に反応してエステル誘導体を形成し、一方、L-プロリンは鏡像異性体対の他方と優先的に反応してエステル誘導体を形成する。従って、(i)元の混合物を鏡像異性的富化D-プロリンまたはL-プロリンで処理して、β-ラクタム鏡像異性体の1つを優先的にエステル誘導体に変換し、かつ(ii)未反応鏡像異性体をエステル誘導体から分離することによって、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体のラセミまたは他の鏡像異性体混合物を、鏡像異性体の1つを光学的に富化することができる。
【0017】
本発明の動的分離法の一形態を反応式1に示す。この形態において、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム、シス-1およびシス-2の鏡像異性体混合物を、光学活性L-プロリンアシル化剤3Lおよびアミンで処理して、C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー、シス-4を形成する。好ましくは、光学活性プロリンアシル化剤は、少なくとも約70%の鏡像異性体過剰率(「e.e.」)、即ち、85wt%またはmol%の一方の鏡像異性体および15wt%またはmol%の他方の鏡像異性体を有する。より好ましくは、光学活性プロリンアシル化剤は、少なくとも約90%の鏡像異性体過剰率を有する。さらにより好ましくは、光学活性プロリンは、少なくとも約95%の鏡像異性体過剰率を有する。1つの特に好ましい形態において、光学活性プロリンは、少なくとも約98%の鏡像異性体過剰率を有する。反応式1は下記のとおりである:
【0018】
【化2】

[式中、
aは、1または2であり、それによって、ヘテロシクロ環はプロリンまたはホモプロリンであり;
破線は、C3およびC4環炭素原子間の任意の二重結合を表し;
Rcは、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、-OC(O)R30であり;
Rnは、窒素保護基であり;
R30は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロまたは-SX7であり;
X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アシルまたはヘテロシクロであるか、またはX5ならびにそれらが結合している炭素および窒素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X5は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、-COX10、-COOX10、-CONX8X10、-SiR51R52R53であるか、またはX3ならびにそれらが結合している窒素および炭素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X7は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;ならびに
R51、R52およびR53は、独立して、アルキル、アリールまたはアラルキルである。]
【0019】
本発明の動的分離法の別の形態を反応式2に示す。この形態において、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム、シス-1およびシス-2の鏡像異性体混合物を、アミンおよび鏡像異性体3Dの鏡像異性体過剰率を有する光学活性プロリンアシル化剤3で処理して、C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー、シス-5を生成する。反応式2は下記のとおりである:
【化3】

[式中、a、破線、Rc、Rn、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して定義したとおりである。]
【0020】
従って、反応式1および2におけるプロリン反応物の鏡像異性体純度を調節することによって、ジアステレオマー、シス-4またはジアステレオマー、シス-5が優先的に形成される。ジアステレオマー、シス-4および鏡像異性体、シス-1(反応式1)は、異なる物理的特性を有するので、鏡像異性体、シス-1を極性非プロトン溶媒から容易に結晶化することができる。同様に、ジアステレオマー、シス-5および鏡像異性体、シス-2(反応式2)は、異なる物理的特性を有するので、鏡像異性体、シス-2を極性非プロトン溶媒から容易に結晶化することができる。
【0021】
古典的分離法において、プロリンアシル化剤が鏡像異性体対の両方と反応して、ジアステレオマー対であるエステル誘導体を形成する。従って、(i)元の混合物を鏡像異性的富化D-プロリンまたはL-プロリンアシル化剤で処理して、β-ラクタム鏡像異性体のそれぞれをエステル誘導体に変換し、それによって、ジアステレオマー混合物を形成し、かつ(ii)物理的に識別可能なβ-ラクタムジアステレオマーを互いに分離することによって、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体のラセミまたは他の鏡像異性体混合物を、鏡像異性体の1つにおいて光学的に富化することができる。
【0022】
本発明の古典的分離法の一形態を反応式1Aに示す。この形態において、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム、シス-1およびシス-2の鏡像異性体混合物を、光学活性L-プロリンアシル化剤3Lで処理して、C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー、シス-4およびシス-4Aを形成する。反応式1Aは下記のとおりである:
【化4】

[式中、a、破線、Rc、Rn、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して定義したとおりである。]
【0023】
あるいは、古典的分離法の別の形態を反応式2Aに示す。この形態において、C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム、シス1-およびシス-2の鏡像異性体混合物を、光学活性D-プロリンアシル化剤3Dで処理して、C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマー、シス-5およびシス-5Aを形成する。反応式2Aは下記のとおりである:
【化5】

[式中、a、破線、Rc、Rn、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して定義したとおりである。]
鏡像異性的富化β-ラクタム生成物の特定の合成または生物学的適用のために、所望される立体化学を生じるように、試薬を選択する。
【0024】
鏡像異性的富化β-ラクタム
鏡像異性体、シス-1、またはシス-1のジアステレオマーは、前記のように、反応混合物から結晶化できるので、本発明の1つの態様は、式1:
【化6】

[式中、X2b、X3およびX5は、反応式1に関して定義したとおりである]
に対応するβ-ラクタムの鏡像異性的富化の方法である。
【0025】
同様に、鏡像異性体、シス-2、またはシス-2のジアステレオマーを、前記のように、反応混合物から結晶化できるので、本発明の別の態様は、式2
【化7】

[式中、X2b、X3およびX5は、反応式1に関して定義したとおりである]
に対応するβ-ラクタムの鏡像異性的富化の方法である。
【0026】
X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクロであってよいが、一実施態様において、X2bは、水素、アルキルまたはアリールである。1つの好ましい実施態様において、X2bは水素である。
【0027】
同様に、X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アシルまたはヘテロシクロであってよいか、またはX5ならびにそれらが結合している炭素および窒素と共に、ヘテロシクロを形成してもよいが、一実施態様において、X3は、アルキル、アリールまたはヘテロシクロである。例えば、X3はフェニルであってよい。別の実施態様において、X3はフリルまたはチエニルである。さらに別の実施態様において、X3はシクロアルキルである。
【0028】
前記のように、X5は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、-COX10、-COOX10、-CONX8X10であるか、またはX3ならびにそれらが結合している窒素および炭素と共に、ヘテロシクロを形成してよい。例えば、一実施態様において、X5は水素である。他の実施態様において、X5は-COX10であり、X10は、アルキル、アルケニルまたはアリールであり;例えば、X5は-COX10であってよく、X10はフェニルである。別の実施態様において、X5は-COOX10であり、X10はアルキルであり;例えば、X5は-COOX10であってよく、X10は、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである。さらに別の実施態様において、X5は-COOX10であり、X10はtert-ブチルである。
【0029】
組合せにおいて、好ましい実施態様として挙げられるのは、X2bは水素であり;X3は、アルキル、アリールまたはヘテロシクロ、好ましくはシクロアルキル、より好ましくは、フェニル、フリルまたはチエニルであり;およびX5は、水素、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アロイルまたはアルコキシカルボニル、好ましくは、ベンゾイル、アルコキシカルボニル、より好ましくは、ベンゾイル、n-プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニルまたはtert-ブトキシカルボニルである、式1に対応するβラクタムである。
【0030】
β-ラクタムのジアステレオマー混合物
反応式1に記載したように、動的分離法においてβ-ラクタムジアステレオマー、シス-4を生成し、古典的分離法(反応式1A参照)において、β-ラクタムジアステレオマー(シス-4およびシス-4A)の混合物を生じる。式シス-4およびシス-4Aに対応する構造を下記に示す:
【化8】

[式中、a、破線、Rn、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して定義したとおりである。]
【0031】
反応式2に記載したように、動的分離法においてβ-ラクタムジアステレオマー、シス-5を生成し、古典的分離法(反応式2A参照)において、β-ラクタムジアステレオマー(シス-5およびシス-5A)の混合物を生成する。式シス-5およびシス-5Aに対応する構造を下記に示す:
【化9】

[式中、Rn、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して定義したとおりである。]
【0032】
一実施態様において、Rnはt-ブトキシカルボニルまたはカルボベンジルオキシである。X2b、X3、X5およびX10に好ましい置換基は、式シス-1に関して先に記載したとおりである。
【0033】
好ましい実施態様として挙げられるのは、Rnは、t-ブトキシカルボニルまたはカルボベンジルオキシであり;X2bは、水素であり;X3は、アルキル、アリールまたはヘテロシクロ、好ましくはシクロアルキル、より好ましくは、フェニル、フリルまたはチエニルであり;およびX5は、水素、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アロイルまたはアルコキシカルボニル、好ましくは、ベンゾイル、アルコキシカルボニル、より好ましくは、ベンゾイル、n-プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニルまたはtert-ブトキシカルボニルである、式シス-4およびシス-4Aに対応するβ-ラクタムである。
【0034】
他の実施態様は、Rnはt-ブトキシカルボニルまたはカルボベンジルオキシであり、X2bは水素である、式シス-5およびシス-5Aに対応するβ-ラクタムである。これらの実施態様において、X3は、アルキル、アリールまたはヘテロシクロ、好ましくはシクロアルキル、より好ましくは、フェニル、フリルまたはチエニルであり;およびX5は、水素、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アロイルまたはアルコキシカルボニル、好ましくは、ベンゾイル、アルコキシカルボニル、より好ましくは、ベンゾイル、n-プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニルまたはtert-ブトキシカルボニルである。
【0035】
ジアステレオマー、シス-4、シス-4A、シス-5およびシス-5Aは、以下に詳しく記載するように、各鏡像異性体を光学的富化プロリンアシル化剤3と反応させることによって生成される。
【0036】
β-ラクタムの鏡像異性体混合物
本発明の1つの態様において、本発明の方法を使用して、βラクタム、シス-1およびシス-2:
【化10】

[式中、X2b、X3、X5、X7、X8およびX10は、反応式1に関して先に定義したとおりである]
の鏡像異性体混合物を分離する。
【0037】
好ましい置換基は、式シス-1に関して先に定義したとおりである。
【0038】
一般に、β-ラクタムの鏡像異性体混合物は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5723634号に記載されているように、イミンを塩化アシルまたはリチウムエノラートで処理することによって生成できる。さらに、β-ラクタムの鏡像異性体混合物は、以下に記載するように、アルコキシドまたはシロキシドの存在下に、イミンを(チオ)ケテンアセタールまたはエノラートで処理することによって生成できる。この縮合環化反応の好ましい実施態様を反応式3に示し、該反応式において、イミン12をケテン(チオ)アセタールまたはエノラート13と縮合環化して、β-ラクタム11を生成する。
【化11】

【0039】
ケテンアセタールは商業的に入手可能であるか、またはカルボン酸からインサイチュで生成でき、エノラーチはカルボン酸からインサイチュで生成できる。イミンは、商業的に入手可能なアルデヒドおよびジシラジドからインサイチュで生成しうる。反応式3に関して、X1aは、シリル保護基、金属であるか、またはアンモニウムを含んで成り;X1bは、スルフヒドリルまたはヒドロキシル保護基であり;X2aは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6、-SX7または-NX8X9であり;X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、-OX6または-SX7であり;X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロシクロであり;X6は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、またはヒドロキシル保護基であり;X7は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロ、またはスルフヒドリル保護基であり;X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;X9は、水素、アミノ保護基、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり;R1bは、酸素または硫黄であり;ならびにR51、R52およびR53は、独立して、アルキル、アリールまたはアラルキルである。
【0040】
光学活性プロリンおよびプロリン誘導体
好ましくは、プロリンアシル化剤は式3:
【化12】

[式中、a、破線、RcおよびRnは、反応式1に関して先に定義した通りである]
に対応する。ここで、Rcはヒドロキシであり、プロリンアシル化剤は、プロリン遊離酸を酸アシル化剤で処理することによって生成される。
【0041】
好ましい実施態様において、aは1であり、C3およびC4環炭素原子の間に二重結合がなく、Rcはヒドロキシルであり、Rnはt-ブトキシカルボニルまたはカルボベンジルオキシである。
【0042】
多くの種々の実施態様において、光学活性プロリンアシル化剤は、少なくとも約70%の鏡像異性体過剰率(e.e.)を有し、さらなる実施態様において、少なくとも約90%e.e.、好ましくは少なくとも約95%e.e.、より好ましくは少なくとも約98%e.e.を有する。
【0043】
光学活性プロリンまたはプロリン誘導体を用いた、β-ラクタムの鏡像異性体混合物の処理
反応式1および2に示されているように、動的分離法において、β-ラクタム(シス-1およびシス-2)の鏡像異性体混合物を光学活性プロリンアシル化剤3およびアミンで処理した場合に、ジアステレオマー(シス-4またはシス-5)が生成される。プロリンアシル化剤として使用される光学活性プロリンおよびプロリン誘導体は、遊離酸、酸ハロゲン化物、無水物または混合無水物であってよい。光学活性プロリンまたはプロリン誘導体が遊離酸の形態である場合、得るべき生成物にとって、遊離酸を酸アシル化剤で処理して光学活性プロリンアシル化剤を形成することが必要である。しかし、光学活性プロリンまたはプロリン誘導体が、酸ハロゲン化物、無水物または混合無水物の形態である場合、これらの形態のプロリンは光学活性プロリンアシル化剤であるので、アシル化剤との反応は必要ない。
【0044】
さらに、ジアステレオマー(シス-4もしくはシス-5)またはジアステレオマー混合物(シス-4およびシス-5)を形成するための、β-ラクタム(シス-1およびシス-2)の鏡像異性体混合物の反応は、アミンを必要とする。好ましいアミン塩基は、芳香族アミン塩基、例えば、置換または非置換ピリジン(例えば、ピリジン、N,N’-ジメチルアミノピリジン(DMAP))、または置換または非置換イミダゾール(例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、N,N’-カルボニルジイミダゾール)などである。
【0045】
プロリン遊離酸をプロリンアシル化剤に変換する酸アシル化剤の例は、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)、メタンスルホニルクロリド(MsCl)、蓚酸塩化物、ジ-t-ブチルジカーボネート(Boc2O)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、アルキルクロロホルメート、2-クロロ-1,3,5-トリニトロベンゼン、ポリホスフェートエステル、クロロスルホニルイソシアネート、Ph3P-CCl4などである。好ましくは、酸アシル化剤は、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)、メタンスルホニルクロリド(MsCl)、蓚酸塩化物、またはジ-t-ブチルジカーボネート(Boc2O)である。種々の実施態様において、酸アシル化剤は、p-トルエンスルホニルクロリドまたはメタンスルホニルクロリドである。
【0046】
本発明の一実施態様において、β-ラクタム(シス-1およびシス-2)の鏡像異性体混合物を、アミンの存在下に、L-プロリンアシル化剤と反応させて、β-ラクタムジアステレオマー(シス-4)を形成する。好ましくは、鏡像異性体混合物を、酸アシル化剤(例えば、p-トルエンスルホニルクロリド)およびアミンの存在下に、L-プロリンと反応させる。
【0047】
特に、シス-1およびシス-2の鏡像異性体混合物を、アミンおよび化学量論的に当量未満のp-トルエンスルホニルクロリドの存在下に、L-プロリンで処理した場合、ジアステレオマー、シス-4が得られる。シス-4について、X2bが水素であり、X3がフリルであり、かつX5が水素である場合、所望のシス-1が優先的に結晶化し、酢酸エチルからの再結晶によって、所望のβ-ラクタム生成物が高い鏡像異性体過剰率(例えば、98%e.e.またはそれ以上)で得られうる。
【0048】
エナンチオマー(シス-2またはシス-1)を、当該分野で既知の物理的方法によって、ジアステレオマー(シス-4またはシス-5)から分離することができる。例えば、それらを結晶化、液体クロマトグラフィーなどによって分離することができる。
【0049】
いったん所望のエナンチオマーが結晶化されたら、残りのジアステレオマー(例えば、シス-4)を水性塩基または水性酸と反応させて、対応するC3-ヒドロキシルβ-ラクタムを形成することができる。
【0050】
または、古典的分離法において、シス-1およびシス-2の鏡像異性体混合物を、アミンの存在下に、L-プロリンアシル化剤と反応させて、ジアステレオマー、シス-4およびシス-4Aを得ることができる。X2bが水素であり、X3がフェニルであり、かつX5が水素である場合、ジアステレオマー混合物の一部が温酢酸エチル(40℃)に溶解した際に、所望の3R,4S-ジアステレオマー(シス-4A)が溶液から結晶化した。濾液を室温で数時間にわたって静置した場合に、3S,4R-ジアステレオマー(シス-4)が溶液から結晶化した。光学的に富化されたC3-ヒドロキシルβ-ラクタム、シス-1およびシス-2を生成するための、シス-4またはシス-4Aのプロリンスエステルの除去は、エステル成分の加水分解によって行うことができる。D-プロリンアシル化剤をこの方法に使用した場合、ジアステレオマー、シス-5およびシス-5Aが形成され、光学的に富化されたC3-ヒドロキシルβ-ラクタム、シス-1およびシス-2を同様の方法で得ることができる。
【0051】
定義:
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシル」は、有機カルボン酸の-COOH基からヒドロキシ基を除去することによって生成される基、例えばRC(O)-を意味し、ここで、Rは、R1、R1O-、R1R2N-またはR1S-であり、R1は、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり、R2は、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。
【0052】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アシルオキシ」は、酸素結合(-O-)を介して結合した前記のアシル基、例えばRC(O)O-を意味し、ここで、Rは用語「アシル」に関して定義したとおりである。
【0053】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルキル基は、主鎖に1〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルキルであるのが好ましい。それらは、置換または非置換で、直鎖または分岐鎖または環状であってよく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシルなどを包含する。置換アルキル基は、例えばアリール、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、アミド、カルボキシル、チオ、メルカプトおよびヘテロシクロで置換されていてよい。
【0054】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルケニル基は、主鎖に2〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルケニルであるのが好ましい。それらは、置換または非置換で、直鎖または分岐鎖または環状であってよく、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、へキセニルなどを包含する。
【0055】
他に指定しなければ、本明細書に記載されるアルキニル基は、主鎖に2〜8個の炭素原子、および20個までの炭素原子を含有する低級アルキニルであるのが好ましい。それらは、置換または非置換で、直鎖または分岐鎖であってよく、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、へキシニルなどを包含する。
【0056】
本明細書に記載される「アミノ保護基」は、保護されたアミノ基において反応を遮断する部分であって、さまざまな化合物の他の置換基を損なわないよう、充分穏やかな条件下に容易に除去されるものである。例えば、アミノ保護基は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t-ブトキシカルボニル(t-BOC)、アリルオキシカルボニルなどである。アミノ基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【0057】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「芳香族」は、任意に置換された単素または複素環式芳香族基を意味する。このような芳香族基は、好ましくは環部分に6〜14個の炭素を有する単環式、二環式または三環式基である。用語「芳香族」は、下記に定義する「アリール」および「ヘテロアリール」基を包含する。
【0058】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「アリール」または「アル(ar)」は、任意に置換された単素環式芳香族基、好ましくは環部分に6〜12個の炭素を有する単環式または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルを意味する。フェニルおよび置換フェニルがより好ましいアリールである。
【0059】
本明細書において使用される用語「アラルキル」は、アリール基で置換された、任意に置換されたアルキル基を意味する。アラルキル基の例は、置換または非置換ベンジル、エチルフェニル、プロピルフェニルなどである。
【0060】
用語「カルボン酸」は、RC(O)OH化合物を意味し、ここでRは、水素、または置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、置換アリールであってよい。
【0061】
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味する。
【0062】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ヘテロシクロ」または「複素環式」は、任意に置換され、完全に飽和されているかまたは不飽和の、単環式または二環式、芳香族または非芳香族基であって、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、各環に好ましくは5または6個の原子を有する基を意味する。ヘテロシクロ基は、1または2個の酸素原子、および/または1〜4個の窒素原子を環に有するのが好ましく、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りに結合する。例示的なへテロシクロ基は、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピロリル、テトラヒドロピラニル、および下記のようなヘテロ芳香族基を包含する。例示的な置換基は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルの1つまたはそれ以上である。
【0063】
本明細書において単独でまたは他の基の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、任意に置換された芳香族基であって、少なくとも1個の環に少なくとも1個のヘテロ原子を有し、各環に好ましくは5または6個の原子を有する基を意味する。ヘテロアリール基は、1または2個の酸素原子、および/または1〜4個の窒素原子、および/または1または2個の硫黄原子を環に有するのが好ましく、炭素を介して分子の残りに結合する。例示的なへテロアリールは、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ビフェニル、ナフチル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリルなどである。例示的な置換基は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルの1つまたはそれ以上である。
【0064】
本明細書に記載される用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、元素炭素および水素のみから成る有機化合物または基を意味する。これらの基は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を包含する。これらの基は、他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、例えば、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリールも包含する。他に規定しない限り、これらの基は、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する。
【0065】
本明細書に記載される「置換ヒドロカルビル」基は、少なくとも1個の炭素以外の原子で置換されたヒドロカルビル基であり、炭素鎖原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、珪素、燐、硼素、硫黄またはハロゲン原子で置換された基を包含する。これらの置換基は、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルを包含する。
【0066】
本明細書に記載される用語「ヒドロキシ保護基」は、保護されたヒドロキシ基において反応を遮断する部分であって、さまざまな化合物の他の置換基を損なわないよう、充分穏やかな条件下に容易に除去されるものである。ヒドロキシ保護基の例は、次のような基である:エーテル(例えば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、p-メトキシフェニル(PMP))、アセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)、β-メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2-メトキシ-2-プロピル(MOP)、2-トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(例えば、ベンゾエート(Bz)、アリルカーボネート、2,2,2-トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2-トリメチルシリルエチルカーボネート)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))など。ヒドロキシ基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【0067】
本明細書に記載される用語「スルフヒドリル保護基」は、保護されたスルフヒドリル基において反応を遮断する部分であって、さまざまな化合物の他の置換基を損なわないよう、充分穏やかな条件下に容易に除去されるものである。スルフヒドリル保護基の例は、シリルエステル、ジスルフィドなどである。とりわけ、チオール保護基のトリフェニルメチル、アセタミドメチル、ベンズアミドメチル、および1-エトキシエチル、ベンゾイルおよび保護チオール基のアルキルチオ、アシルチオ、チオアセタール、アラルキルチオ(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、ノニルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオおよびシクロヘキシルチオ、ベンジルチオ、フェネチルチオ、プロピロニルチオ、n-ブチリルチオ、およびイソブチリルチオ)。スルフヒドリル基の種々の保護基、およびそれらの合成は、「Protective Gropus in Organic Synthesis」, T.W. GreeneおよびP.G.M Wuts, John Wiley & Sons, 1999に見出される。
【実施例】
【0068】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0069】
実施例1:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オンの分離
(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オン(500g、3.265mol)を、0.5当量のp-トルエンスルホニルクロリド(335.53g、1.76mol)および1-メチルイミダゾール(303.45g、3.7mol)の存在下に、-78℃で12時間にわたってN-t-Boc-L-プロリン(378.83g、1.76mol)で処理した。混合物をシリカゲル5kgで濾過した。t-Boc-L-プロリンエステルの望ましくない(-)-β-ラクタムエナンチオマーを、水でのトリチュレーションによって除去した。2-メチル-1-プロパノールを用いた水の共沸除去によって所望のエナンオマーを回収し、酢酸エチルから再結晶して、所望の(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-(2-フリル)-アゼチジン-2-オンを得た。酢酸エチルからの再結晶後の光学純度は98%超であった。融点:133〜135℃。[α]20D=+109.5(MeOH, c=1.0)、1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.69(bs, 1H), 4.91(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(bs, 1H), 6.10(bs, 1H), 6.34(dd, J=3.32, 3.32Hz, 1H), 6.47(d, J=3.32Hz, 1H), 7.49(m, 1H)
【0070】
実施例2:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの分離
(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(60g、0.368mol)を、0.5当量のp-トルエンスルホニルクロリド(35g、0.184mol)および1-メチルイミダゾール(45mL、0.56mol)の存在下に、-78℃で12時間にわたってN-cBz-L-プロリン(45g、0.184mol)で処理した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルで濾過して、1-メチルイミダゾリウムトシラート塩を除去した後に、所望のジアステレオマーを酢酸エチルから結晶化して、白色固形物14.5g(48%)を得た。このプロトコールはエナンチオマー混合物の動的分離を生じて、所望の(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンを与えた。酢酸エチルからの再結晶後の光学純度は98%超であった。融点:175〜180℃;[α]57820=+202(MeOH, c=1.0)、1H NMR(400MHz、CDCl3)(ppm):2.26(d, J=9.4Hz, 1H), 4.96(d, J=4.96Hz, 1H), 5.12(m, 1H), 4.15(bm, 1H), 7.41(m, 5H)
【0071】
実施例3:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの動的分離
【化13】

乾燥250mL丸底フラスコに、アセトニトリル(50mL)および1-メチル-イミダゾール(28g、0.2mol)を窒素下に添加し、混合物を0〜5℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(MsCl、17.44g、0.1mol)を混合物にゆっくり添加して、発熱反応を調節した。反応温度が0〜-5℃に低下した後に、N-cBz-L-プロリン(25g、0.1mol)を添加し、混合物をこの温度で30分間攪拌した。分離3Lフラスコにおいて、窒素下に、ラセミ(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(16.3g、0.1mol)をアセトン(1L)に溶解し、-65〜-78℃に冷却し、機械的に攪拌した。温度が-65℃未満に達したら、プロリン試薬を含有するフラスコの含有物を、ラセミ出発物質のアセトン溶液に添加した。混合物をこの温度で最低6時間維持し、白色沈殿物が観察された。沈殿物を沈降させ、上澄みを、真空吸引によって浸漬フィルターを経て冷溶液(約-45℃)として回転蒸発器に移した。アセトンを除去し、酢酸エチル(500mL)およびトリエチルアミン(50g、5当量)塩基と交換した。得られた塩を濾過によって除去し、濾液を約100mLに濃縮し、結晶形成を生じさせた。結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、冷酢酸エチルで洗浄し、真空下(0.1mmHg)に周囲温度で7.5g(46%)の恒量になるまで乾燥した。
【0072】
式4に従って、1H NMRによって、Boc-L-プロリンを使用して、β-ラクタムのジアステレオマーエステルの比率(SSS:RRS)によって、動的分離の有効性を確認した。表において、TsClはトシルクロリドであり、Boc2Oはジ-tert-ブチルジカーボネートであり、MsClはメシルクロリドであり、MstClはメシチルクロリドである。
【化14】

【0073】
【表1】

【0074】
実施例4:(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンの古典的分離
【化15】

前記の動的分離の代替法として、プロリンエステルのジアステレオマー混合物を、酢酸エチルからの再結晶によって分離した。次にプロリンエステルを別々に加水分解して、β-ラクタムの両方のエナンチオマーを得、キラルアミノ酸を回収する。従って、アセトニトリル(80mL)中のN-メチル-イミダゾール(12g、150mmol)の溶液に、0℃で、メタンスルホニルクロリド(MsCl、5.7g、50mmol)を添加し、発熱反応温度が0℃で安定するまで15分間攪拌した。この溶液に、N-Boc-L-プロリン(11g、50mmol)を少しずつ添加し、0℃で30分間攪拌した。ラセミ(±)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(8.2g、50mmol)を少しずつ添加し、TLCモニタ(3:1 酢酸エチル:ヘキサン)が1時間後にエステル生成物への完全な変換を示すまで、混合物をこの温度で攪拌した。アセトニトリル溶媒を40℃で回転蒸発下に除去し、残渣を酢酸エチル(500mL)に取り、水(100mL)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を真空濾過によって除去し、濾液を濃縮して固形物18gを得た。混合物の一部(7g)を40℃の酢酸エチル(60mL)に取り、結晶(1.5g)を40℃で形成し、結晶を収集し、該結晶は(2S)-tert-ブチル(3R,4S)-2-オキソ-4-フェニルアゼチジン-3-イルピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの所望の3R,4S-ジアステレオマーであることが示された。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):このジアステレオマーは、5.12ppm低磁場における多重項から、エステル化生成物における二重項の二重項対(J=4.68, 2.57Hz)としての5.8ppmへの出発物質C(3)-カルビノールプロトンの特徴的化学シフト変化によって典型的に表されるようなNMR時間スケールにおいて1.7:1(δ(ppm)5.84:5.87)ジアステレオマー対として存在する。
【0075】
濾液を周囲温度で5時間静置して、第二結晶形を得(2.4g)、該結晶は(2S)-tert-ブチル(3S,4R)-2-オキソ-4-フェニルアゼチジン-3-イルピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの3S,4R-ジアステレオマーであることが示された。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):このジアステレオマーは、5.12ppm低磁場における多重項から、エステル化生成物における二重項の二重項対(J=4.68, 2.57Hz)としての5.9ppmへの出発物質C(3)-カルビノールプロトンの特徴的化学シフト変化によって典型的に表されるようなNMR時間スケールにおいて1:1.9(δ(ppm)5.90:5.94)ジアステレオマー対として存在する。
【0076】
古典的熱力学支配分離が動的分離と異なる点は、理論量の試薬が使用され、注意深い低温調節が不可欠でないことである。しかし、古典的分離は、所望のC3-ヒドロキシ置換β-ラクタムを回収するために、ジアステレオマーエステルを脱エステル化する1つの付加的工程を必要とする。
【0077】
実施例5:光学活性(+)-シス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化16】

光学活性(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(3.4g、20.8mmol)を、トリエチルアミン(5.8g、57.4mmol)およびDMAP(76mg、0.62mmol)と共に、0℃でTHF(30mL)に溶解した。トリメチルシリルクロリド(2.4g、22mmol)を滴下し、混合物を30分間攪拌した。TLC(3:1 酢酸エチル:ヘプテン)は、より低い極性の生成物への完全な変換を示した。混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(15mL)、塩水(15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(5g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、濾液を濃縮し、溶媒をヘプタン(50mL)と交換して、白色粉末を得た。粉末を、ブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、真空下に(<1mmHg)周囲温度で乾燥して、3.45g(収率72%)の恒量になるまで乾燥した。融点:120〜122℃。[α]22578=+81.9(MeOH, 1.0)、1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm):-0.08 (s, 9H), 4.79 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 5.09 (dd, J=4.4, 2.7 Hz, 1H), 6.16 (bm, 1H), 7.3 to 7.4 (m, 5H)
【0078】
実施例6:光学活性(+)-シス-N-t-ブトキシカルボニル-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化17】

THF(10mL)中の光学活性(+)-シス-3-トリメチルシリルオキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(0.95g、4mmol)の溶液に、トリエチルアミン(1.1g、5mmol)、DMAP(15mg、0.12mmol)およびジ-tert-ブチルジカーボネート(Boc2O、5.04g、5mmol)を添加した。混合物を、ガスの発生が止むまで周囲温度で攪拌し、より低い極性の生成物への完全な変換が、TLC(2:1 酢酸エチル:ヘプタン)によって観察された。反応混合物をヘプタン(20mL)で希釈し、シリカゲル(10g)のパッドで濾過し、結晶形成が生じるまで30℃で回転蒸発器において濃縮した。結晶をブフナー漏斗での真空濾過によって収集し、冷ヘプタンで洗浄し、真空下に(<1mmHg)周囲温度で乾燥して、0.87g(65%)の恒量になるまで乾燥した。融点:85〜88℃。[α]22578=+106.9(MeOH, 1.0)、1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm):-0.07 (s, 9H), 1.38 (s, 9H), 5.01 (d, J=5.6 Hz, 1H), 5.06 (d, J=5.6 Hz, 1H), 7.26 to 7.38 (m, 5H)
【0079】
実施例7:(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オンからの(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オン
【化18】

(+)-シス-3-ヒドロキシ-4-フェニル-アゼチジン-2-オン(13.67g、83.8mmol)を、無水THF(275mL)に、窒素下に20mL/gの濃度で溶解し、-15〜-10℃に冷却し、TsOH一水和物(0.340g、1.8mmol)を添加した。この温度で、2-メトキシプロペン(6.49g、90mmol)を反応に滴下した。反応混合物の試料を酢酸エチル中の5%TEAで鎮め、中間体への変換をTLC(3:1 酢酸エチル:ヘプタン)によってモニタした。反応が終了した時点で、トリエチルアミン(25.5g、251mmol)およびDMAP(0.220g、1.8mmol)を添加した。塩化ベンゾイル(12.95g、92.18mmol)を反応混合物に添加し、次に、周囲温度に温め、(+)-シス-N-ベンゾイル-3-(2-メトキシ-2-プロポキシ)-4-フェニル-アゼチジン-2-オンへの変換が終了するまで(3〜5時間)攪拌した。混合物を、THFと同量のヘプタンで希釈した。固体塩を濾過によって除去し、混合物を、水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液および塩水で洗浄した。有機相をシリカゲルで濾過し、結晶が形成されるまで濾液を濃縮した。固形物を真空濾過によって収集し、ヘプタン:トリエチルアミン(95:5)で洗浄して白色固形物(21.0g、61.9mmol、収率74%)を得た。融点:98〜100℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ (ppm): 0.99 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.15 (s, 3H), 5.27 (d, J=6.3 Hz, 1H), 5.41 (d, J=6.3 Hz, 1H), 7.30 to 7.43 (m, 5H), 7.47 (t, J=7.54 Hz, 2H), 7.59 (m, J=7.54 Hz, 1H)), 8.02 (m, J=7.54 Hz, 2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体の鏡像異性体混合物を分離する方法であって、
(a)アミンの存在下に光学活性プロリンアシル化剤で鏡像異性体混合物を処理して生成物混合物を形成し、生成物混合物は、第一および第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタム鏡像異性体を、それぞれ、光学活性プロリンアシル化剤と反応させることによって形成される第一および第二C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーを含有し、生成物混合物は、場合により、未反応第二C3-ヒドロキシβ-ラクタム鏡像異性体を含有することもある工程、および
(b)未反応第二C3-ヒドロキシβ-ラクタム鏡像異性体または第二C3-ヒドロキシ置換β-ラクタムジアステレオマーから、第一C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーを分離する工程
を含んで成る方法。
【請求項2】
反応混合物中において、鏡像異性体混合物の第一鏡像異性体は実質的に完全に第一C3-エステル置換β-ラクタムジアステレオマーに変換するが、鏡像異性体混合物の第二鏡像異性体は実質的に完全に未反応にとどめる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生成物混合物中において、鏡像異性体混合物の第一および第二鏡像異性体を、実質的に完全に第一および第二C3-エステル置換β-ラクタムに変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
光学活性プロリンアシル化剤が、光学活性プロリンまたはプロリン誘導体を酸アシル化剤およびアミンで処理することによって生成される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
未反応鏡像異性体をジアステレオマーから結晶化によって分離する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ジアステレオマーを結晶化によって分離する、請求項1または3に記載の方法。
【請求項7】
光学活性プロリンアシル化剤が、N-t-ブトキシカルボニル-L-プロリンまたはN-カルボベンジルオキシ-L-プロリンの酸ハロゲン化物、無水物または混合無水物である、請求項1〜3、5および6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
光学活性プロリンアシル化剤が、N-t-ブトキシカルボニル-L-プロリンまたはN-カルボベンジルオキシ-L-プロリンを酸アシル化剤およびアミンで処理することによって生成される、請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
光学活性プロリンアシル化剤が、N-t-ブトキシカルボニル-L-プロリンの酸ハロゲン化物、無水物または混合無水物である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
光学活性プロリンが、N-カルボベンジルオキシ-L-プロリンの酸ハロゲン化物、無水物または混合無水物である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
酸アシル化剤が、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)、メタンスルホニルクロリド(MsCl)、蓚酸塩化物、ジ-t-ブチルジカーボネート(Boc2O)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、アルキルクロロホルメート、2-クロロ-1,3,5-トリニトロベンゼン、ポリホスフェートエステル、クロロスルホニルイソシアネート、Ph3P-CCl4、またはそれらの組み合わせである、請求項4または8に記載の方法。
【請求項12】
アミンが芳香族アミンである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
芳香族アミンが、置換または非置換ピリジン、置換または非置換イミダゾール、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
芳香族アミンが、ピリジン、N,N’-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、N,N’-カルボニルジイミダゾール、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鏡像異性体混合物がシス-β-ラクタムの混合物である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
鏡像異性体混合物中のβラクタムが、式シス-1およびシス-2:
【化1】

[式中、
X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロまたは-SX7であり;
X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アシルまたはヘテロシクロであるか、またはX5ならびにそれらが結合している炭素および窒素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X5は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、-COX10、-COOX10、-CONX8X10、-SiR51R52R53であるか、またはX3ならびにそれらが結合している窒素および炭素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X7は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;ならびに
R51、R52およびR53は、独立して、アルキル、アリールまたはアラルキルである]
の構造を有する、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
X2bが水素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
X3がアリールである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
X3がヘテロシクロである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
X3がフェニルである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項21】
X3がフリルである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
X3がチエニルである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項23】
X3がシクロプロピルである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項24】
X5が水素である、請求項16〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
X5が-COX10で、X10がアルキル、アルケニルまたアリールである、請求項16〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
X5が-COX10で、X10がフェニルである、請求項16〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
X5が-COOX10で、X10がn-プロピル、イゾプロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである、請求項16〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
X5が-COOX10で、X10がtert-ブチルである、請求項16〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
X5が-SiR51R52R53である、請求項16〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
R51、R52およびR53が、独立して、メチル、エチル、プロピル、フェニルまたはベンジルである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
R51、R52およびR53がメチルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
式4:
【化2】

[式中、
aは、1または2であり、それによって、ヘテロシクロ環はプロリンまたはホモプロリンであり;
破線は、C3およびC4環炭素原子間の任意の二重結合を表し;
Rnは、窒素保護基であり;
X2bは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロまたは-SX7であり;
X3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシルオキシ、アルコキシ、アシルまたはヘテロシクロであるか、またはX5ならびにそれらが結合している炭素および窒素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X5は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、-COX10、-COOX10、-CONX8X10、-SiR51R52R53であるか、またはX3ならびにそれらが結合している窒素および炭素と共に、ヘテロシクロを形成し;
X7は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X8は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;
X10は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルまたはヘテロシクロであり;ならびに
R51、R52およびR53は、独立して、アルキル、アリールまたはアラルキルである]
の構造を有するβ-ラクタム化合物。
【請求項33】
Rnがt-ブトキシカルボニルである、請求項32に記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項34】
Rnがカルボベンジルオキシである、請求項32に記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項35】
X2bが水素である、請求項32〜34のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項36】
X3がアリールである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項37】
X3がヘテロシクロである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項38】
X3がフェニルである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項39】
X3がフリルである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項40】
X3がチエニルである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項41】
X3がシクロアルキルである、請求項32〜35のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項42】
X5が水素である、請求項32〜41のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項43】
X5が-COX10で、X10がアルキル、アルケニルまたはアリールである、請求項32〜41のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項44】
X5が-COX10で、X10がフェニルである、請求項32〜41のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項45】
X5が-COOX10で、X10がn-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルである、請求項32〜41のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項46】
X5が-COOX10で、X10がtert-ブチルである、請求項32〜41のいずれか1つに記載のβ-ラクタム化合物。
【請求項47】
X5が-SiR51R52R53である、請求項32〜41のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
R51、R52およびR53が、独立して、メチル、エチル、プロピル、フェニルまたはベンジルである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
R51、R52およびR53がメチルである、請求項48に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546646(P2008−546646A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515913(P2008−515913)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/022266
【国際公開番号】WO2006/135669
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(501304467)フロリダ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Florida State University Research Foundation, Inc.
【Fターム(参考)】