説明

ε−カプロラクトンの製造方法

本発明の対象は、液相で150〜400℃で、及び1〜1020hPaの絶対圧力で、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化、環化条件下で揮発性の化合物の分離及び濃縮による、純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法であって、本方法は、環化の残留塔底生成物が少なくとも1つのさらなる反応器中で熱処理され、揮発性化合物が分離及び濃縮され、そして濃縮物からの蒸留によってε−カプロラクトンが得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相で150〜400℃で、及び1〜1020hPaの絶対圧力で、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化、環化条件下で揮発性の化合物の分離及び濃縮による、純度99%超のε−カプロラクトンの改善された製造方法に関し、この製造方法では、環化の残留塔底生成物が少なくとも1つのさらなる反応器中で熱処理され、揮発性化合物が分離及び濃縮され、そして濃縮物からの蒸留によってε−カプロラクトンが得られる。
【0002】
ε−カプロラクトン若しくはε−カプロラクトンから重付加により製造されるポリカプロラクトンは、ポリウレタンの製造に役立つ。
【0003】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルを、気相又は液相で環化してカプロラクトンにすることは公知である。そこでDE 38 23 213は、6−ヒドロキシカプロン酸エステルを気相で酸化触媒及び不活性キャリアガスの存在下で環化して、カプロラクトンにすることを記載している。
【0004】
さらにWO 97/31883からは、シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスで酸化してシクロヘキサノン/シクロヘキサノールにする際に反応混合物の水抽出により副生成物として得られる、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、及び僅少量の1,4−シクロヘキサンジオールを含むカルボン酸混合物から、1,6−ヘキサンジオール及びε−カプロラクトンを製造する方法は公知である。
【0005】
シクロヘキサンからシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンへの酸化の際に副生成物として生じるカルボン酸の水溶液(以降、ジカルボン酸溶液(DCL)と呼ぶ)(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. Ed., 1987, Vol. A8, p49参照)は一般的に、(水不含、質量%で計算して)アジピン酸10〜40%、6−ヒドロキシカプロン酸10〜40%、グルタル酸1〜10%、5−ヒドロキシ吉草酸1〜10%、1,2−シクロヘキサンジオール1〜5%、1,4−シクロヘキサンジオール1〜5%、ギ酸2〜10%、並びに多数のさらなるモノカルボン酸とジカルボン酸、エステル、オキソ化合物とオキサ化合物(これらのそれぞれの含量は、5%を超過しない)を含む。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オキサル酸、マロン酸、コハク酸、4−ヒドロキシ酪酸、及びガンマブチロラクトンが挙げられる。
【0006】
水溶液は脱水後に、低分子量のアルコールでエステル化されて相応するカルボン酸エステルになり、得られるエステル化混合物は第一の蒸留工程で余剰なアルコールと易沸騰性成分を除去する。塔底生成物から第二の蒸留工程で、1,4−シクロヘキサンジオールをほとんど含まないエステル留分と、1,4−シクロヘキサンジオールを少なくとも比較的多く含む留分とに分別されて得られる。第三の蒸留工程によって、主に6−ヒドロキシカプロン酸エステルを含む留分(工程2)が得られ、そして気相、好ましくは液相で環化されてε−カプロラクトンになる。
【0007】
主に6−ヒドロキシカプロン酸エステルを含む流れは、減圧下で200℃超の温度に加熱され、これにより6−ヒドロキシカプロン酸エステルが環化されてカプロラクトンになり、そして環化生成物から蒸留により純粋なカプロラクトンが得られる。液相環化は触媒無しで行うこともできるが、好ましくは触媒の存在下で実施する。たいていの場合、環化反応を高沸点性のモノオール、ジオール、又はポリオールの存在下で行うことが、有利である。
【0008】
カプロラクトンとエステル化アルコールが優位な反応生成物は、気体状で反応混合物から除去及び濃縮される。分別蒸留により、濃縮物からカプロラクトンが得られる。
【0009】
とりわけ工業的な規模でこの方法を実施する際に不利なのは、非常に長い滞留時間、及びこれにより必要となる高価な反応室を回避するために、最大90%、通常は最大80%のカプロラクトン収率しか得られないことである。これはとりわけ、オリゴマー化副反応、及びポリマー化副反応に起因し、これらの反応では、式HO−(CH25−COOR(Rは例えば、C1〜C4アルキル基)の6−ヒドロキシカルボン酸エステルが、式HOCH2−(CH24−COO−(CH25−COORのダイマーを形成し、これらのダイマーから、さらなるヒドロキシエステルによる変換により、オリゴマーとポリマーが生成し得る。
【0010】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルがさらにジエステルを、とりわけ不飽和であってもよいアジピン酸ジエステル含む場合、例えばジメチルエステルの場合にはダイマーのエステルCH3OOC−(CH24−COO(CH25−COOCH3が形成され、このエステルから同様にさらなる6−ヒドロキシエステル分子を形成しながら、オリゴマーとポリマーが生成し得る。このジエステルの存在下では、とりわけその含分が1%を越える場合には、カプロラクトンの収率が減少し、とりわけその滞留時間が短い場合に著しく、部分的には70%未満になる。
【0011】
従って本発明の課題は、6−ヒドロキシカプロン酸エステル又はこのエステルを含む混合物を用意することから出発する、とりわけ工業的な実施の際により高いカプロラクトン収率(環化の際に使用される6−ヒドロキシカプロン酸エステルに対して)が得られる、純度99%超のε−カプロラクトンの液相製造方法であった。
【0012】
この課題は、液相で150〜400℃で、及び1〜1020hPaの絶対圧力で、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化、環化条件下で揮発性の化合物の分離及び濃縮による、純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法により解決され、この製造方法は、環化の残留塔底生成物が少なくとも1つのさらなる反応器中で熱処理され、揮発性化合物が分離及び濃縮され、そして濃縮物からの蒸留によってε−カプロラクトンが得られることを特徴とする。
【0013】
さらなる1つの、又は複数の反応器では、環化の圧力条件及び温度条件下で熱処理を行うことができるが、しかしながら好ましくは、より高い温度、例えば50℃高い温度で熱処理する。付加的に圧力を変えることもでき、好ましくは環化の際の圧力よりも低い圧力に調整する。
【0014】
カプロラクトン製造の塔底生成物は、オリゴマーの、及びポリマーのエステルから成る複合混合物であり、この混合物は一般的に、6−ヒドロキシカプロン酸単位、アジピン酸単位、不飽和アジピン酸単位、及びジオール単位、例えば1,4−シクロヘキサンジオールを含む。しかしながらまた、さらに他のアルコール成分、例えば1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ノナノール、トリデカノール、又はペンタデカノールを含むこともでき、これらは事前に添加されたか、及び/又はシステムに内在するもの、例えば1,5−ペンタンジオールであってよい。
【0015】
従って、ε−カプロラクトンへの環化の塔底生成物から、加熱によりさらに付加的な、特筆すべき大量のε−カプロラクトンを得ることが可能なこと、及び加えて純度>99%という生成物に対する高い純度要求を満たすことができることは意外なことであった。
【0016】
本発明によれば、環化条件下で不揮発性の、6−ヒドロキシカプロン酸エステル環化の塔底生成物を、少なくとも1つのさらなる、すなわち環化反応器とは異なる反応器内で非連続的に、又は連続的に熱処理に供する。この際に揮発性の、留去すべき化合物が濃縮される。濃縮物からは、蒸留によって付加的なカプロラクトンが得られ、これによりカプロラクトンの総収率が高まる。
【0017】
熱処理は150〜400℃、好ましくは180〜350℃、特に好ましくは190〜330℃の温度で、そして絶対圧力で1〜1020hPa、好ましくは2〜500hPa、特に好ましくは5〜200hPaの圧力で行う。環化生成物の熱処理は一般的に、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化と同じ温度で、又は好ましくはこれよりも最大100℃高い温度で行う。環化から得られる塔底生成物の熱処理は、6−ヒドロキシカプロン酸エステル環化の温度よりも最大50℃、及びとりわけ好ましくは最大30℃高い温度で行うことが、特に好ましい。熱処理は連続的に、又は非連続的に行うことができる。この際に滞留時間は一般的に、0.1〜24時間、好ましくは最大15時間、特に好ましくは最大10時間である。反応圧力は環化の圧力に相応していてよいが、より低い圧力が好ましい。この圧力は絶対圧で好ましくは50hPa未満、特に好ましくは1〜30hPaである。
【0018】
反応器としては、熱処理のために例えば蒸留塔、ワイプ式膜蒸発器(Wischblattverdampfer)(サンベイ蒸発器)、又は流下薄膜型蒸留器が備え付けられた完全混合容器を使用することができる。さらに好ましくは、気体状の反応生成物を一工程で熱処理に送るのではなく、少なくとも1つの理論的な底部と部分的に液体の生成物循環とを有する分離装置を使用する。このことにより意外なことに、カプロラクトンの収率が上がる。また、熱処理を反応塔内で行うことも可能である。
【0019】
環化の塔底生成物には、溶剤を添加することができる。
【0020】
好ましい実施態様では、環化の塔底生成物に、熱処理の前、又は熱処理の間に高沸点性のモノオール、ジオール、又はポリオールが添加される。ここで高沸点性とは、所与の反応圧力下で沸点が好ましくはカプロラクトンの沸点よりも高いモノオール、ジオール、又はポリオールと理解される。モノオール、ジオール、又はポリオールとしては、デカノール、ウンデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、オクタデカノール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、又はグリセリンを使用することができる。蒸留残留物としてモノオール、ジオール、又はポリオールの合成の際に生じる、同様に適切な高沸点性のモノオール、ジオール、又はポリオールを含む混合物は例えば、ノナノール又はトリデカノール/ペンタデカノールの合成の際に得られる蒸留残留物である。これらの高沸点性のモノオール、ジオール、又はポリオールが、例えばそれぞれ0.1〜90質量%、好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは5〜30質量%の濃度で装入され、及び/又は反応混合物に添加され、又は別個に計量供給される。
【0021】
さらなる好ましい実施態様において、環化の塔底生成物の熱処理は、触媒の存在下で行う。この際、とりわけ均一に溶解された触媒を環化で使用する際に、引き続き触媒が熱処理で存在していてよいが、さらなる触媒を添加することもできる。
【0022】
触媒としては、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化のために公知の触媒も、熱処理に適している。触媒として適しているのは、均一に溶解されて、又は不均一に存在することができる触媒である。その例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシラート、又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属のカルボキシラート、ルイス酸又はルイス塩基、好ましくは元素周期表の第III主族及び第IV主族若しくは第I〜第VIII副族から得られるルイス酸又はルイス塩基、又は希土類金属の酸化物、又はこれらの混合物である。例として挙げられるのは、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化ホウ素、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化スズ、酸化ビスマス、酸化銅、酸化ランタン、二酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化黒鉛、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化ネオジムである。酸化物の混合物もまた適しており、これは個々の成分の混合物であってもよく、又はゼオライト、アルミナ、又はヘテロポリ酸中に存在するような混合酸化物であってもよい。好ましいのは、アルミニウム、ジルコニウム、又はチタンベースのルイス酸又はルイス塩基である。
【0023】
有利には、触媒1gあたり、及び1時間あたり出発物質(6−ヒドロキシカプロン酸エステル)0.01〜40g、好ましくは0.05〜20g、とりわけ0.07〜10gという触媒負荷量を維持する。均一系触媒は通常、10〜10,000ppm、好ましくは5〜5000ppm、特に好ましくは100〜1000ppmで使用する。
【0024】
熱処理の間に、揮発性化合物を塔頂生成物として混合物の形態で得ることができ、当該生成物はε−カプロラクトンとして易沸騰性成分、例えば低級アルコールの他に得られる。
【0025】
ε−カプロラクトン収率のさらなる向上のために有意義であり得るのは、熱処理の塔底生成物を還流させること、又はさらなる別個の熱処理に供することである。
【0026】
本発明による方法では熱処理のために、6−ヒドロキシカプロン酸エステルを環化してε−カプロラクトンにする際の塔底生成物を使用する。
【0027】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルとしては通常、1〜12個のC原子を有するアルコールのエステル、5〜7個のC原子を有するシクロアルカノール、7〜8個のC原子を有するアラルカノール、又は6〜8個のC原子を有するフェノールが考慮される。この際に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソープロパノール、n−若しくはi−ブタノール、又は同様にn−ペンタノール、又はi−ペンタノール、又はアルコールの混合物を、しかしながら好ましくは1〜4個のC原子を有するアルコール、特に好ましくはメタノールを使用することができる。ジオール、例えばブタンジオール、又はペンタンジオールも、原則的に考慮される。6−ヒドロキシカプロン酸エステル中のエステル基は、同一であっても、異なっていてもよい。特に好ましい出発物質は、6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルである。
【0028】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルの製造は例えば、DE-A 197 50 532に従って行うことができ、これについてはここではっきりと引用し、かつここで本願に組み込まれるものとする。
【0029】
DE-A 197 50 532によれば6−ヒドロキシカプロン酸エステルは、アジピン酸ジエステル若しくはこのエステルを基本的な成分として含む出発物質流の接触水素化、水素化排出物の蒸留、及びヘキサンジオール及びアジピン酸ジエステルの分離によって得られる。
【0030】
この際に水素化は好ましくは、液相で行う。この方法で水素化触媒として一般的には、不均一系の、しかしながらまた均一系の、カルボニル基の水素化に適した触媒が使用される。これらの触媒は、固定されて配置されて、また可動式で配置されて、例えば流動床反応器内で使用することもできる。このための例は例えば、Houben-Weyl, "Methoden der Organischen Chemie", Band IV/1 c, p16〜26に記載されている。使用すべき水素化触媒のうち好ましいのは、元素周期表のIb、VIb、VIIb、及びVIIIbの群、並びにIIIa、IVa及びVaの群の1つ又は1つより多い元素であり、とりわけ銅、クロム、レニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、鉄、白金、インジウム、スズ、及び/又はアンチモンを含むものである。特に好ましいのは、銅、コバルト、及び/又はレニウムを含む触媒である。
【0031】
さらに6−ヒドロキシカプロン酸エステルの製造は、WO 97/31883に従って行うことができ、これについてはここではっきりと引用し、かつここで本願に組み込まれるものとする。
【0032】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルの製造は、WO 97/31883に従って行い、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、及び僅少量の1,4−シクロヘキサンジオールを含むカルボン酸混合物(シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスでシクロヘキサノン/シクロヘキサノールに酸化する際に反応混合物の水抽出により副生成物として得られるもの)を、低分子量のアルコールでエステル化して相応するカルボン酸エステルにし、そしてこうして得られるエステル化混合物を少なくとも1つの蒸留工程で分別する。
【0033】
好ましい実施態様では、6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルは、
・得られたエステル化混合物から第一の蒸留工程で、余剰のメタノール及び易沸騰性成分を除去し、
・塔底生成物から第二の蒸留工程で、1,4−シクロヘキサンジオールがほとんど無いエステル留分と、1,4−シクロヘキサンジオールを少なくとも比較的多く含む留分への分別を行い、そして
・6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステル流を、第三の蒸留工程でエステル留分から分離する
ことにより得られる。
【0034】
よりよい理解のために、ε−カプロラクトンの製造方法は、WO 97/31883に相応して図1に従って説明するが、この中で個々の方法工程はさらなる工程に分けられており、ここで工程2、3、4、並びに12、13、及び14は、このε−カプロラクトンの製造方法に必要不可欠であり、そして工程3と4は一緒にまとめることもできる。
【0035】
ジカルボン酸溶液(DCL)は一般的に、水含分が20〜80%の水溶液である。エステル化留分は、水が生じる平衡反応なので、とりわけ例えばメタノールによるエステル化の際に存在する水を反応前に除去することが有意義であり、エステル化反応の間に水を、例えば共沸によって除去できない場合には特にそうである。工程1での脱水は例えば、膜システムによって行うことができ、又は好ましくは蒸留装置によって、10〜250℃、好ましくは20〜200℃、特に好ましくは30〜200℃、及び1〜1500hPaの圧力、好ましくは5〜1100hPa、特に好ましくは20〜1000hPaで塔頂を介して水を、及び塔底を介して比較的高級なモノカルボン酸、ジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジオールを分離させることができる。この際に塔底温度は好ましくは、塔底生成物が液状で取り出せるように選択する。塔の塔底における水含分は、0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%であってよい。
【0036】
水の分離は、水がほとんど酸不含で得られるように、又はDCL中に含まれる低級モノカルボン酸(基本的にはギ酸)を大部分、水と共に留去できるように行い、これによって当該カルボン酸はエステル化でエステル化アルコールと結合しない。
【0037】
工程1からのカルボン酸流に、1〜10個のC原子を有するアルコールROHを添加混合する。この際に、メタノール、エタノール、プロパノール、又はi−プロパノール、又はアルコールの混合物を使うことができるが、しかしながら好ましくは一方ではメタノール、又はC4の、及びより高級な、とりわけ4〜8個のC原子有するアルコールを、及び他方では好ましくはn−若しくはi−ブタノールを、又は同様にn−ペンタノール若しくはi−ペンタノールを使うことができる。アルコール対カルボン酸流の混合比(質量比)は、0.1〜30、好ましくは0.2〜20、特に好ましくは0.5〜10であってよい。
【0038】
この混合物は、溶融物又は溶液として工程2の反応器に到達し、そこでカルボン酸がアルコールによりエステル化される。エステル化反応は、50〜4000℃で、好ましくは70〜300℃で、特に好ましくは90〜200℃で行うことができる。
【0039】
外圧を適用することもできるが、好ましくはエステル化は反応システムの原圧下で行う。この際にエステル化装置として、1つの撹拌槽若しくは流管、又はそれぞれ複数を使用してもよい。エステル化に必要な滞留時間は、0.3〜10時間、好ましくは0.5〜5時間である。エステル化反応は、触媒を添加せずに進行させることができるが、好ましくは反応速度の向上のために触媒を添加する。この際にこの触媒は、均一に溶解された、又は固体の触媒であってよい。均一系触媒として例に挙げられるのは、硫酸、リン酸、塩酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、例えばタングステンリン酸、又はルイス酸、例えばアルミニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、ホウ素化合物である。好ましいのは、鉱酸、とりわけ硫酸である。均一系触媒対カルボン酸溶融物の質量比は通常、0.0001〜0.5、好ましくは0.0001〜0.3である。
【0040】
固体触媒としては、酸の又は超酸の材料、例えば酸又は超酸の金属酸化物、例えばSiO2、Al23,ZrO2、層状ケイ酸塩又はゼオライト(これらはすべて、酸強化のために鉱酸エステル、例えば硫酸エステル又はリン酸エステルでドープされていてよい)が適しており、又はスルホン酸基若しくはカルボン酸基を有する有機イオン交換体が適している。固体触媒は固定床として設置することができ、又は懸濁液として使用することができる。
【0041】
反応の際に形成される水は、適切に連続的に、例えば膜又は蒸留によって除去する。
【0042】
カルボン酸溶融物中に存在する遊離カルボキシ基の変換の完全性は、反応後に測定される酸価(mg KOH/g)により確認される。この酸価は、場合により触媒として添加される酸を差し引いて、0.01〜50、好ましくは0.1〜10である。この際に、システム内にあるすべてのカルボキシ基が、使用されるアルコールのエステルとして存在する必要はなく、一部がヒドロキシカプロン酸のOH末端とのダイマーエステル、又はオリゴマーエステルの形で存在していてよい。
【0043】
エステル化混合物は工程3(膜システム、又は好ましくは蒸留塔)で供給する。エステル化反応のために溶解された酸を触媒として使用した場合、このエステル化混合物は塩基によって適切に中和し、この際に触媒の酸当量あたり1〜1.5の塩基当量を添加する。塩基としては通常、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸水酸化物、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコラート、又はアミンを物質中、又はエステル化アルコール中に溶解させて使用する。しかしながら、塩基性イオン交換体により中和してもよい。
【0044】
工程3で塔が使用される場合、塔への供給は、有利には塔頂流と塔底流との間で行われる。塔頂部を介して、1〜1500hPa、好ましくは20〜1000hPa、特に好ましくは40〜800hPaの圧力及び0〜150℃、好ましくは15〜90℃及びとりわけ25〜75℃の温度で、過剰のエステル化アルコールROH、水並びに相応するギ酸のエステル、酢酸及びプロピオン酸が取り出される。この流れは、焼却されるか、又は好ましくは、工程11において更に後処理されるかの何れかであってよい。
【0045】
塔底液として、主に、使用されるアルコールROHとジカルボン酸、例えばアジピン酸及びグルタル酸、ヒドロキシカルボン酸、例えば6−ヒドロキシカプロン酸及び5−ヒドロキシ吉草酸とのエステルから、並びにオリゴマーの及び遊離若しくはエステル化された1,4−シクロヘキサンジオールから成るエステル混合物が得られる。水及び/又はアルコールROHの残留含分を、エステル混合物中でその都度4質量%まで許容することが有意義であり得る。塔底温度は70〜250℃、好ましくは80〜220℃、特に好ましくは100〜190℃である。
【0046】
実質的に水及びエステル化アルコールROHが除去された工程3からの流れが、工程4に供給される。それは蒸留塔であり、この蒸留塔で易沸騰性成分と難沸騰性成分の間で供給が行われる。この塔は、10〜300℃、好ましくは20〜270℃、特に好ましくは30〜250℃の温度及び1〜1000hPa、好ましくは5〜500hPa、特に好ましくは10〜200hPaの圧力で運転される。
【0047】
塔頂留分は、主として残留水及び残留アルコールROH、該アルコールROHとモノカルボン酸とのエステル、主としてヒドロキシカルボン酸、例えば6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸を有するC3〜C6−モノカルボン酸エステル、並びに、とりわけジカルボン酸、例えばアジピン酸、グルタル酸及びコハク酸とのジエステル、シクロヘキサンジオール、カプロラクトン及びバレロラクトンから成る。
【0048】
上記成分は、一緒に塔頂部を介して分離することができ、又はさらなる好ましい一実施態様において工程4の塔内で、主として残留水及び残留アルコール並びに上述の3〜5個のC原子を有する成分を含有する塔頂流と、主として上述のC6エステルの成分を含有する側流とに分別することができる。次いで、C6酸のエステルを含有する流れは、全体の塔頂流として、又は側流としての何れかで、どのくらいのε−カプロラクトンが製造されるべきかに応じて、WO97/31883に従って好ましい方法により、部分的にのみ、又は全体流として工程12に供給することができる。
【0049】
主としてダイマー又はオリゴマーのエステル、シクロヘキサンジオール並びに、より詳しくは定義されなかったDCLの部分的なポリマー成分から成る工程4からの流れの難沸騰性成分は、工程4の塔の蒸留分離部を介して分離され、焼却されるか、又は好ましい一実施態様において、いわゆるエステル交換反応のためにWO97/31883に記載された工程8に到達するかの何れかであってよい。
【0050】
工程3及び4はとりわけ、比較的少量のみが処理される場合、一つにまとめてよい。そのために例えば、断続的に実施される分別蒸留でC6エステル流を得ることができる。
【0051】
ε−カプロラクトン製造のために、主としてC6酸のエステルを含有する工程4からの流れが使用される。そのためにこの流れは、工程12(蒸留塔)において、塔頂部を介して、主としてアジピン酸ジエステルを含有する流れと、塔底部を介して、主として6−ヒドロキシカプロン酸エステルを含有する流れとに分離される。この塔は、絶対圧力で1〜500hPa、好ましくは5〜350hPa、特に好ましくは10〜200hPaの圧力及び80〜250℃、好ましくは100〜200℃、特に好ましくは110〜180℃の塔底温度で運転される。その際、塔頂温度が相応して調節される。
【0052】
ε−カプロラクトンの高純度及び高収率にとって大事なことは、ヒドロキシカプロン酸エステルからの1,2−シクロヘキサンジオールの分離である。なぜなら、これらの成分は共沸混合物を互いに形成するからである。この工程12では、1,2−シクロヘキサンジオール及びヒドロキシカプロン酸エステルの分離が完全に、なかでも、エステルとして好ましいメチルエステルが使用される場合に成功することは想定されていなかった。
【0053】
工程12で、アジピン酸ジエステルと一緒に幾らかのヒドロキシカプロン酸エステルも分離することが有利であり得る。ヒドロキシカプロン酸エステルのアジピン酸エステル含分は、アジピン酸ジエステルが1,6−ヘキサンジオールへと水素化されるべき場合、その際、有利には0.2〜7質量%である。該エステルのアルコール成分に応じて、ヒドロキシカプロン酸エステルのこの割合は、アジピン酸ジエステルと一緒に塔頂部を介して(例えばメチルエステル)又は塔底部を介して(例えばブチルエステル)分離される。
【0054】
6−ヒドロキシカプロン酸エステルを含む流れは、液相中でアルコールとε−カプロラクトンに変換される。この流れはさらなる成分を含むことができ、当該成分の質量割合は最大20%であってよいが、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満であってよい。これらの成分は例えば、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、不飽和アジピン酸ジエステル、ピメリン酸ジエステル、ε−カプロラクトン、5−ヒドロキシカプロン酸エステル、並びにとりわけ6−ヒドロキシカプロン酸エステルベースのジエステルである。
【0055】
この反応は、触媒無しで行うが、好ましくは触媒の存在下で行う。触媒として適しているのは、均一に溶解されて、又は不均一に存在していてよい酸性又は塩基性の触媒である。その例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシラート、又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属のカルボキシラート、酸、例えば硫酸又はリン酸、有機酸、例えばスルホン酸又はモノカルボン酸又はジカルボン酸、若しくは上記酸の塩、ルイス酸又はルイス塩基、好ましくは元素の周期律表の第III主族及び第IV主族若しくは第I副族〜第VIII副族からのものである。
【0056】
好ましくは、工程8でも使用される触媒と同一の触媒を使用する。と言うのも、工程13の高沸点性排出流は、有利には工程8を介して再度活用可能なオリゴマーのヒドロキシカプロン酸単位を含むからである。不均一系触媒を使用する場合、触媒負荷は通常、0.05〜5kg出発物質/触媒1l及び時間である。均一系触媒の場合、触媒は好ましくは出発物質に添加混合する。この際に濃度は通常、10〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppm、特に好ましくは100〜1000ppmである。反応は通常、150〜400℃、好ましくは180〜350℃、特に好ましくは190〜330℃で、及び圧力は1〜1020hPa、好ましくは5〜500hPa、特に好ましくは10〜200hPaで行う。
【0057】
多くの場合に有利なのは、環化反応を高沸点性のモノオール、ジオール、又はポリオール、例えばデカノール、ウンデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、オクタデカノール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、又はグリセリンの存在下で行うことである。
【0058】
この高沸点性アルコール又はポリオールは、例えばその都度0.1〜90質量%、好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは5〜30質量%の濃度で装入する、及び/又は反応混合物に添加する、又は別個に計量供給する。
【0059】
反応混合物、主にエステル化アルコールROHとε−カプロラクトンは、主に気体状で反応混合物から除去する。有利なのは、未変換の出発物質を反応システム内に保つことができ、かつ塔頂を介してアルコールとε−カプロラクトンを取り出す、反応槽に設置された塔である。この際に生成物流の濃縮は、分別濃縮されるように、すなわちまず主にε−カプロラクトンが、それからエステル化アルコールが濃縮されるように行う。もちろんまた、アルコールのみを塔頂を介して、これに対してε−カプロラクトンを側流で得ることもできる。アルコール流は有利には、工程2、8、又は11に還流させることができる。環化の塔底生成物は、オリゴマー及びポリマーから成る複合混合物から成る。
【0060】
反応槽への供給は、予備加熱無しで行うことができる。均一系触媒を使用する場合、出発物質流を環化塔底で投入することが有利である。この際に触媒は、反応前に既に原料に添加することができ、又は反応槽に直接加えることができる。
【0061】
しかしながら、とりわけ触媒がすでに溶解されている、及びC1〜C5アルコール成分を有するヒドロキシカプロン酸エステルを使用する場合には、供給物を予備加熱することが有利である。この際に予熱温度は、100〜300℃、好ましくは130〜270℃、特に好ましくは150〜250℃である。これらの温度でヒドロキシカプロン酸エステルはすでに一部反応して、アルコール、ε−カプロラクトン、及びダイマー若しくはオリゴマーのヒドロキシカプロン酸エステルになっている。このことにより、僅かなヒドロキシカプロン酸エステルのみが、熱い反応槽に到達すると直ちに反応塔底から留去されうることになる。このようにして、塔床が節約される。
【0062】
さらに有利な可能性は、エステル化アルコールの主要な部分をε−カプロラクトンの後処理前に得ることであり、とりわけアルコール、例えばメタノールが低温で沸騰し、そしてその結果高いコストをかけないと濃縮できなくなるような場合には、有利である。このためにヒドロキシカプロン酸メチルエステルを触媒、例えば先に挙げた触媒の存在下で予備加熱し、この際にすでに遊離されたアルコールを留去する。これは有利には、100〜1100hPaの絶対圧力、エステルアルコールが容易に濃縮可能な圧力で起こる。この手法は好ましくは、上記高沸点性アルコールの存在下で可能である。
【0063】
本発明によれば、6−ヒドロキシカプロン酸エステル環化の不揮発性塔底生成物は、反応槽内で低減された圧力で、非連続的に、又は連続的に熱処理に供される。
【0064】
環化の塔頂流(図1、工程13)は、工程14での濃縮後、さらに後処理する。この際にこれは、1つ又は1つより多い塔であってよい。塔を使用する場合には、塔頂を介して、場合によりなお存在するエステル化アルコール、並びに他のC1〜C6易沸騰性成分が分離され、側流を介して純粋なε−カプロラクトンが分離され、そして塔底を介して場合によりなお未変換のヒドロキシカプロン酸エステルが分離され、この未変換のものは還流される。
【0065】
工程14で言及した易沸騰性成分を第一の塔で塔頂を介して、そしてε−カプロラクトンと他の高沸点製成分は、塔底を介して第二の塔(ここでε−カプロラクトンを塔頂を介して取り出す)へ供給すれば、高純度のε−カプロラクトンが得られる。この際に得られるε−カプロラクトン流が比較的少量でしかない場合、ε−カプロラクトンは塔で断続的に分別される蒸留によって得ることができる。
【0066】
濃縮された熱処理の塔頂生成物(主にε−カプロラクトンを含む、熱処理条件下で揮発性の化合物)は、濃縮された環化生成物(環化条件下で揮発性の化合物)と同じ方法で蒸留により後処理して、高純度のε−カプロラクトンにすることができる。
【0067】
この際に、両方の成分を1つにし、そして先に記載したように蒸留により一緒に後処理することが、有意義であり得る。
【0068】
しかしながらまた、両方の成分を別々に高純度のε−カプロラクトンに後処理することも有利であり得る。
【0069】
カプロラクトン精製のための単段又は多段の蒸留は、70〜250℃、好ましくは90〜230℃、特に好ましくは100〜210℃の塔底温度及び絶対圧力で1〜500hPa、好ましくは5〜200hPar、特に好ましくは10〜150hPaの圧力で行う。
【0070】
本方法を後続の実施例によって、より詳細に説明するが、これによっていかなる制限を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるε−カプロラクトン製造方法の工程を示す。
【0072】
実施例
実施例1
環化
WO 97/31 883に相応して製造される、6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステル約93%、アジピン酸ジメチルエチルエステル1.0%、1,4−シクロヘキサンジオール1.6%、1,5−ペンタンジオール1.4%、不飽和アジピン酸エステル0.3%、ピメリン酸ジメチルエステル0.2%、ダイマーのエステル1.6%、並びにその都度量に応じて存在していたさらなる化合物0.1%未満からなる混合物1000g/hを、チタナート(イソ−プロピル(80%)とn−ブチルチタナート(20%)から成る混合物)1000ppm並びに1,6−ヘキサンジオール50g/hと一緒に、環化のために塔を備える5リットルの反応器に給送した。反応器内のレベルは、制御装置を用いて約40%に維持した。余剰の反応内容物は、排出した。反応内容物は循環され、この際に循環サイクル内で熱交換器がシステムにエネルギーを供給した。反応温度は約220℃、そして圧力は絶対圧力40hPaで、1時間あたり返送比5:1で、主にメタノールとε−カプロラクトンを留去した。蒸留流は約10℃で濃縮した。ガスクロマトグラフィー分析によると、65mol%のε−カプロラクトン収率が得られた。
【0073】
熱処理
環化反応器からの液体状反応排出物(環化の塔底生成物)を集め、そして断続的にさらなる1000ppmのチタナートを添加しながら、2リットルの内容物を有する蒸留釜、並びに設置された塔(返送比1:1)で250℃で、及び絶対圧10hPaで3時間加熱した。この際に生成する蒸留生成物は、この際に主にε−カプロラクトン、並びに1,6−ヘキサンジオールを含んでいた。モルのε−カプロラクトン収率は、この第二の反応工程でそれぞれの変換で25%ε−カプロラクトンであり、その結果、方法全体にわたる収率は、90mol%に達した。環化及び熱処理の際に生じる生成物は、断続的に約40mbarで蒸留した。この際、純度99.90%のカプロラクトンが得られた。
【0074】
実施例2
熱処理
実施例1を繰り返したのだが、その相違点は、断続的に行う熱処理で、環化反応器からの液状反応排出物1kgあたり、C15アルコール0.2kgを添加したことである。このことにより、熱処理でのカプロラクトン収率は、約30%上昇した。
【0075】
実施例1と同様の精製蒸留により、99.92%のカプロラクトン純度が得られた。
【0076】
実施例3
環化
6−ヒドロキシカプロン酸20kgを含む実施例1に倣った出発物質を、1,5−ペンタンジオール5kgと混合し、チタナート1000ppm(イソプロピル及びn−ブチルチタナートから成る混合物)の添加後、常圧で1800℃で5時間加熱した。この間に、主なメタノールを留去した。残っている残留物は、連続的に絶対圧20mbarで及び240℃でワイプ式蒸発器(サンベイ)に送った。この際に生じる留出物は、主にカプロラクトンと1,5−ペンタンジオールを含んでいた。カプロラクトンの収率は、約80mol%であった。
【0077】
熱処理
もう一度1000ppmのチタナートを添加した後、残っている環化塔底生成物を、塔が設置された5リットルの反応器内で熱処理した。反応内容物は循環され、この際に循環サイクル内で熱交換器がシステムにエネルギーを供給した。反応温度は約230℃、そして圧力は絶対圧10hPaで、1時間あたり返送比1:1で、主にε−カプロラクトンを留去した。そこから得られる留出物には、さらになお12mol%のカプロラクトンが存在していた。実施例1と同様の精製蒸留により、99.89%のカプロラクトン純度が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相で150〜400℃で、及び1〜1020hPaの絶対圧力で、6−ヒドロキシカプロン酸エステルの環化、環化条件下で揮発性の化合物の分離及び濃縮による、純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法において、
環化の残留塔底生成物が少なくとも1つのさらなる反応器中で熱処理され、揮発性化合物が分離及び濃縮され、そして濃縮物からの蒸留によってε−カプロラクトンが得られることを特徴とする、純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項2】
環化の塔底生成物の熱処理が、環化温度を最大100℃超える温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項3】
50hPa未満の圧力下で熱処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項4】
環化の塔底生成物が、0.1〜24時間、熱処理されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項5】
前記熱処理が、0.1〜90質量%のモノオール、ジオール、又はポリオールの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項6】
環化に適した触媒の存在下で熱処理されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項7】
前記熱処理が、連続的に、又は非連続的に行われることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項8】
シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスで酸化してシクロヘキサノン/シクロヘキサノールにする際に反応混合物の水抽出により副生成物として得られる、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、及び僅少量の1,4−シクロヘキサンジオールを含むカルボン酸混合物を、低分子量のアルコールでエステル化して相応するカルボン酸エステルにし、こうして得られるエステル化混合物を少なくとも1つの蒸留工程で、6−ヒドロキシカプロン酸エステルを含む流れが得られるように分別することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項9】
6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステルを製造するために、
得られたエステル化混合物から第一の蒸留工程で、余剰なメタノール及び易沸点性成分を除去し、
塔底生成物から第二の蒸留工程で、1,4−シクロヘキサンジオールをほとんど含まないエステル留分と、1,4−シクロヘキサンジオールを少なくとも比較的多く含む留分への分別が行われ、
6−ヒドロキシカプロン酸メチルエステル流を、第三の蒸留工程でエステル留分から分離する、
請求項8に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。
【請求項10】
前記環化が1,6−ヘキサンジオールの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の純度99%超のε−カプロラクトンの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503021(P2011−503021A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532546(P2010−532546)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064608
【国際公開番号】WO2009/059913
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】